説明

吸収剤組成物およびその製造方法、並びに、吸収剤組成物を含む吸収物品

【課題】一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂100重量部に対して非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部および/または重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cmの荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である。但し、拡散吸収指数および拡散吸収倍率は明細書に記載されている方法によって規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙オムツ(使い捨てオムツ)や生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等に好適に用いられる吸収剤組成物およびその製造方法、並びに、吸収剤組成物を含む吸収物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、その構成材として、体液を吸収させることを目的とする吸水性樹脂が幅広く利用されている。
【0003】
上記の吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体(特開昭55−84304号公報、特開昭55−108407号公報、特開昭55−133413号公報)、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物(特開昭46−43995号公報)、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物(特開昭51−125468号公報)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物(特開昭52−14689号公報)、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物(特開昭53−15959号公報)またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体(特開昭58−154709号公報、特開昭58−154710号公報)等が知られている。
【0004】
上記の吸水性樹脂が備えるべき特性としては、体液等の水性液体に接した際の優れた吸収量や吸収速度、ゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力等が挙げられる。そして、従来、これら吸収特性の中から種々の特定範囲の物性を複数併せ持ち、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生材料に用いられた場合に、優れた性能(吸収特性)を示す吸水性樹脂、または、該吸水性樹脂を用いた吸収体や吸収物品が種々提案されている。
【0005】
上記の吸水性樹脂、吸収体、または吸収物品としては、例えば、特定のゲル容量や剪断弾性率、抽出性重合体含量を組み合わせた吸水性樹脂(米国特許第4,654,039号)、吸収量や吸収速度、ゲル強度を特定した吸水性樹脂、および、該吸水性樹脂を用いた紙オムツや生理用ナプキン(特開昭60−185550号公報、特開昭60−185551号公報、特開昭60−185804号公報)、特定の吸収量や吸収速度、ゲル安定性を有する吸水性樹脂を用いた紙オムツ(特開昭60−185805号公報)、吸収量や吸引力、水可溶成分量を特定した吸水性樹脂を配した吸水性物品(特開昭63−21902号公報)、吸収量や加圧下の吸収量、ゲル破壊強度を特定した吸水性樹脂を含有する吸水性衛生用品(特開昭63−99861号公報)、吸収量や加圧下の吸収速度を特定した吸水性樹脂を含有する紙オムツ(特開平2−34167号公報)、加圧下の吸収量や、その粒子径を特定した吸水性樹脂を含有する吸収剤(欧州特許第339,461号)、吸収速度や短時間での加圧下の吸収量を特定した吸水性樹脂を特定量以上含有する吸収剤(欧州特許第443,627号)、負荷時の変形や吸い上げ指数を特定した吸水性樹脂を特定量以上含有する吸水性複合材料(欧州特許第532,002号)等が知られている。
【0006】
一方、近年、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生材料は、高機能化かつ薄型化が進み、衛生材料一枚当たりの吸水性樹脂の使用量、または、主に吸水性樹脂と親水性繊維とからなる吸収体における吸水性樹脂の重量%(以下、樹脂濃度と称する)が増える傾向にある。つまり、かさ比重の小さい親水性繊維を少なくし、吸収性に優れ、かつ、かさ比重の大きい吸水性樹脂を多くすることにより、吸収体における吸水性樹脂の比率を高め、これにより吸収量を低下させることなく衛生材料の薄型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−84304号公報
【特許文献2】特開昭55−108407号公報
【特許文献3】特開昭55−133413号公報
【特許文献4】特開昭46−43995号公報
【特許文献5】特開昭51−125468号公報
【特許文献6】特開昭52−14689号公報
【特許文献7】特開昭53−15959号公報
【特許文献8】特開昭58−154709号公報
【特許文献9】特開昭58−154710号公報
【特許文献10】米国特許第4,654,039号
【特許文献11】特開昭60−185550号公報
【特許文献12】特開昭60−185551号公報
【特許文献13】特開昭60−185804号公報
【特許文献14】特開昭60−185805号公報
【特許文献15】特開昭63−21902号公報
【特許文献16】特開昭63−99861号公報
【特許文献17】特開平2−34167号公報
【特許文献18】欧州特許第339,461号
【特許文献19】欧州特許第443,627号
【特許文献20】欧州特許第532,002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本願発明者等が、衛生材料の吸収量を増加させるために、例えば吸収体における樹脂濃度を増加させるべく種々検討した結果、従来よりも樹脂濃度を高くした吸収体を用い、かつ、衛生材料からの水性液体の漏れ等の不都合を防止するには、上述した吸収量や吸収速度、ゲル強度、吸引力等の特性を制御するだけでは不充分であることが見出された。例えば、近年、特に注目されている、加圧下の吸収量のみが非常に大きい吸水性樹脂においては、樹脂濃度を高くすると、吸収体での液拡散性が極端に低下する現象、また、吸収体が水性液体を吸収するのに長時間を要する等の問題点を有している。
【0009】
また、本願発明者等は、従来よりも樹脂濃度を高くした吸収体の吸収特性に着目して種々検討した結果、公知の吸水性樹脂と親水性繊維とを混合した混合物を吸収体として用いると、樹脂濃度が低い場合には一定レベルの吸収特性を示すものの、樹脂濃度が40重量%を越えると液拡散性が急激に低下し、吸収体の単位重量当たりの吸収量が低下することを見出した。即ち、公知の吸水性樹脂と親水性繊維とを混合した混合物を吸収体として用いると、上記の問題点が生じることとなる。
【0010】
従って、本発明の目的は、上述した問題点を解決し、例えば、吸収体や吸収物品における吸水性樹脂の重量%を高くしても、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、吸収体や吸収物品の単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物およびその製造方法、並びに、吸収剤組成物を含む吸収物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、上記目的を達成すべく、吸収剤組成物およびその製造方法、並びに、吸収剤組成物を含む吸収物品について鋭意検討した。その結果、特定の条件下において吸収剤組成物が水性液体を吸収する際の液拡散速度を評価するのに好適な物性値である拡散吸収指数を見出した。上記拡散吸収指数に優れた吸収剤組成物は、拡散吸収倍率が特定値以上の吸水性樹脂に特定化合物を混合したり、特定条件下で吸水性樹脂表面近傍を架橋処理したりすることにより、得ることができる。
【0012】
そして、上記拡散吸収指数に優れた吸収剤組成物が、吸収体や吸収物品における吸水性樹脂の重量%が高い場合においても、一度に添加された多量の水性液体を素早く吸収することができ、かつ、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、吸収体や吸収物品の単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことを見出した。また、これにより、吸収特性に優れた吸収体および吸収物品が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明にかかる吸収剤組成物は、上記の課題を解決するために、ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂100重量部に対して非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上であることを特徴としている。
【0014】
本発明にかかる吸収剤組成物は、上記の課題を解決するために、ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂100重量部に対して重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上であることを特徴としている。
【0015】
本発明にかかる吸収剤組成物は、上記の課題を解決するために、ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂100重量部に対して非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部および重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上であることを特徴としている。
【0016】
但し、拡散吸収指数および拡散吸収倍率は明細書に記載されている、内径60mmの支持円筒中の吸収剤組成物1.5gに、直径18mmの開口部から通過した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を、吸収剤組成物の横方向に拡散させながら荷重20g/cmにて吸収させる方法、によって規定される。
【0017】
拡散吸収倍率(g/g)=重量W(g)/吸収剤組成物の重量(g)、Wは60分で吸収剤組成物が吸収した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の重量(g)
拡散吸収指数(g/g/min)は拡散吸収倍率での単位時間当たりの最大吸収量。
【0018】
また、本発明にかかる吸収剤組成物は、上記ポリアミン化合物は、酸性化合物によって完全中和または部分中和されていることがより好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物を提供することができる。
【0020】
本発明にかかる吸収剤組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記吸収剤組成物を製造する方法であって、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部を添加することを特徴としており、また、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を添加することを特徴としており、さらに、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部および重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を添加することを特徴としている。
【0021】
また、本発明にかかる吸収剤組成物の製造方法は、拡散吸収倍率が25g/g以上である上記吸水性樹脂は、平均粒子径が200〜600μmの範囲内で、粒子径が106μm未満の粒子の割合が10重量%以下である吸水性樹脂前駆体を、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2以上の第一表面架橋剤、および、12.5(cal/cm1/2未満の第二表面架橋剤の存在下で加熱処理してなることが好ましい。
【0022】
本発明にかかる吸収剤組成物の製造方法は、上記吸水性樹脂前駆体は、アクリル酸またはその塩を主成分とする親水性不飽和単量体の重合によって得られ、その形状が、球状、燐片状、不定形破砕状、顆粒状、略球状から選ばれることが好ましい。
【0023】
上記の方法によれば、一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物の製造方法を提供することができる。
【0024】
本発明にかかる吸収物品は、上記の課題を解決するために、上記吸収剤組成物を含む吸収体を、透液性を有するシートと、不透液性を有するシートとで挟持してなり、該吸収体における吸収剤組成物の含有量が40重量%以上であることを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、液拡散性や吸収量等の吸収特性に優れた衛生材料等の吸収物品を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる吸収剤組成物は、以上のように、吸水性樹脂100重量部に対して非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である構成である。
【0027】
本発明にかかる吸収剤組成物は、以上のように、吸水性樹脂100重量部に対して重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である構成である。
【0028】
本発明にかかる吸収剤組成物は、以上のように、吸水性樹脂100重量部に対して非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部および重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である構成である。
【0029】
本発明にかかる吸収剤組成物は、以上のように、上記ポリアミン化合物は、酸性化合物によって完全中和または部分中和されている構成である。
【0030】
上記の構成によれば、一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0031】
本発明にかかる吸収剤組成物の製造方法は、以上のように、上記吸収剤組成物を製造する方法であって、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部を添加することを特徴としており、また、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を添加することを特徴としており、さらに、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部および重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を添加する構成である。
【0032】
本発明にかかる吸収剤組成物の製造方法は、以上のように、拡散吸収倍率が25g/g以上である上記吸水性樹脂は、平均粒子径が200〜600μmの範囲内で、粒子径が106μm未満の粒子の割合が10重量%以下である吸水性樹脂前駆体を、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2以上の第一表面架橋剤、および、12.5(cal/cm1/2未満の第二表面架橋剤の存在下で加熱処理してなる構成である。
【0033】
本発明にかかる吸収剤組成物の製造方法は、以上のように、上記吸水性樹脂前駆体は、アクリル酸またはその塩を主成分とする親水性不飽和単量体の重合によって得られ、その形状が、球状、燐片状、不定形破砕状、顆粒状、略球状から選ばれる構成である。
【0034】
上記の方法によれば、一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、常時、非常に高い液拡散性を維持すると共に、単位重量当たりの吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる吸収剤組成物の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0035】
本発明にかかる吸収物品は、以上のように、上記吸収剤組成物を含む吸収体を、透液性を有するシートと、不透液性を有するシートとで挟持してなり、該吸収体における吸収剤組成物の含有量が40重量%以上である構成である。
【0036】
上記の構成によれば、一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、液拡散性や吸収量等の吸収特性に優れた衛生材料等の吸収物品を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明における吸収剤組成物が示す性能の一つである拡散吸収倍率の測定に用いる測定装置の概略の断面図である。
【図2】上記測定装置の要部の断面図である。
【図3】上記測定装置において、生理食塩水の拡散方向を説明する説明図である。
【図4】吸収体が示す性能の一つである拡散吸収倍率の測定に用いる測定装置の概略の断面図である。
【図5】図4の測定装置における要部の断面図である。
【図6】図4の測定装置において、生理食塩水の拡散方向を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0039】
本発明における拡散吸収指数とは、吸水性樹脂または吸収剤組成物(以下、説明の便宜上、吸水性樹脂を例示して説明する)の坪量が高く、かつ、外力によって吸水性樹脂の粒子同士が密着している状態において、吸水性樹脂が水性液体を吸収する際の液拡散速度を評価するための新規な物性値である。上記の拡散吸収指数は、所定条件下での測定における、吸水性樹脂が水性液体を吸水性樹脂層方向(以下、横方向と称する)に吸収する際の最大吸収速度の測定値から算出される。尚、拡散吸収指数の測定方法については、後段の実施例にて詳述する。
【0040】
上記の拡散吸収指数により、吸水性樹脂が水性液体をどの程度速やかに吸収し、かつ、吸水性樹脂が水性液体を横方向にどの程度均一に素早く拡散させることができるかを評価することができる。水性液体の横方向への液拡散性(液拡散能力および液伝達能力)は、水性液体を多量に吸収する上において、特に重要な因子である。そして、上記評価の結果から、例えば、主に吸水性樹脂と親水性繊維とからなる吸収体、特に、吸水性樹脂の重量%(以下、樹脂濃度と称する)が高い吸収体における吸水性樹脂の吸収挙動をも容易に予測することができる。尚、吸収体の構成については後述する。
【0041】
本発明において、吸収剤組成物が有するより好ましい物性値として挙げられる拡散吸収倍率とは、吸水性樹脂の坪量が高く、かつ、外力によって吸水性樹脂の粒子同士が密着している状態における水性液体の拡散力を加味した、吸水性樹脂の吸収量を評価するための物性値である。上記の拡散吸収倍率は、所定条件下での測定における、吸収開始から所定時間経過後、例えば60分経過後の測定値から算出される。尚、拡散吸収倍率の測定方法については、後段の実施例にて詳述する。
【0042】
尚、上述した先行出願には、吸収速度を評価している文献が見受けられるが、加圧状態下で、水性液体を横方向に拡散させながら吸収する際の最大吸収速度を評価している文献は無い。即ち、該加圧下の吸収速度の従来の評価は、水性液体が吸水性樹脂層方向と直交する方向(以下、縦方向と称する)に、短い距離を移動する場合についてのみ行われているだけである。従って、上記従来の評価の結果のみからでは、例えば樹脂濃度が高い吸収体を用いた紙オムツ等における、該吸収体の吸収挙動を正確に予測することができない。
【0043】
本発明にかかる吸収剤組成物は、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上、より好ましくは3.0g/g・min以上である。また、この吸収剤組成物は、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上であることが好ましく、さらに、26.9g/g以上であることがより好ましい。
【0044】
具体的には、本発明にかかる吸収剤組成物は、例えば、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂に、微粒子状の水不溶性無機粉体(以下、単に水不溶性無機粉体と記す)を添加することにより得られる。また、本発明にかかる吸収剤組成物は、例えば、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂に、重量平均分子量(Mw)5,000以上のポリアミン化合物(以下、単にポリアミン化合物と記す)を添加することにより得られる。さらに、本発明にかかる吸収剤組成物は、例えば、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂に、水不溶性無機粉体とポリアミン化合物とを添加することにより得られる。
【0045】
また、吸収剤組成物は、後述する特定の架橋剤を組み合わせて得られる表面架橋剤によって表面近傍が加熱処理されてなる吸水性樹脂表面を、さらに表面架橋剤と混合し、加熱処理する方法によっても得られる。
【0046】
上記の吸水性樹脂としては、例えば、カルボキシル基を含有する吸水性架橋重合体が好適である。該吸水性架橋重合体は、例えば、アクリル酸またはその塩を主成分とする親水性不飽和単量体を(共)重合(以下、単に重合と記す)させることにより得られる。そして、該吸水性架橋重合体のうち、ポリアクリル酸塩の架橋重合体がさらに好ましい。また、ポリアクリル酸塩の架橋重合体は、該架橋重合体中の酸基のうち、50モル%〜90モル%が、例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩、アミン塩等によって中和されていることがより好ましい。
【0047】
尚、上記の吸水性樹脂として、例えば、ポリアクリル酸の部分中和物架橋体(米国特許第4,625,001号、米国特許第4,654,039号、米国特許第5,250,640号、米国特許第5,275,773号、欧州特許第456136号等)、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の部分中和物架橋体(米国特許第4, 076, 663号)、イソブチレン−マレイン酸共重合体(米国特許第4, 389, 513号)、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体のケン化物(米国特許第4, 124, 748号)、アクリルアミド(共)重合体の加水分解物(米国特許第3, 959, 569号)、アクリロニトリル重合体の加水分解物(米国特許第3, 935, 099号)等の、公知の吸水性樹脂を採用することもできる。
【0048】
上記の親水性不飽和単量体は、必要に応じて、アクリル酸またはその塩以外の不飽和単量体(以下、他の単量体と記す)を含有していてもよい。他の単量体としては、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等の、アニオン性不飽和単量体およびその塩;
アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等の、ノニオン性の親水基含有不飽和単量体;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および、これらの四級塩等の、カチオン性不飽和単量体;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら他の単量体を併用する場合の使用量は、親水性不飽和単量体全体の30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0049】
親水性不飽和単量体を重合させて得られる吸水性樹脂前駆体は、カルボキシル基を有している。該吸水性樹脂前駆体を得る際には、内部架橋剤を用いて架橋構造を内部に導入することが望ましい。上記の内部架橋剤は、重合性不飽和基および/または反応性基を一分子中に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。つまり、内部架橋剤は、親水性不飽和単量体と共重合および/または反応する置換基を一分子中に複数有する化合物であればよい。尚、親水性不飽和単量体は、内部架橋剤を用いなくとも架橋構造が形成される自己架橋型の化合物からなっていてもよい。
【0050】
内部架橋剤としては、具体的には、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら内部架橋剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。そして、上記例示の内部架橋剤のうち、重合性不飽和基を一分子中に複数有する内部架橋剤を用いることにより、得られる吸水性樹脂の吸収特性等をより一層向上させることができる。
【0051】
内部架橋剤の使用量は、親水性不飽和単量体に対して、0.005モル%〜3モル%の範囲内がより好ましく、0.01モル%〜1.5モル%の範囲内がさらに好ましい。内部架橋剤の使用量が0.005モル%よりも少ない場合、並びに、3モル%よりも多い場合には、所望の吸収特性を備えた吸水性樹脂が得られないおそれがある。
【0052】
尚、親水性不飽和単量体を重合させて吸水性樹脂前駆体を得る際には、反応系に、澱粉、澱粉の誘導体、セルロース、セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子;次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤;水溶性若しくは水分散性の界面活性剤等を添加してもよい。
【0053】
親水性不飽和単量体の重合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、水溶液重合、逆相懸濁重合、バルク重合、沈澱重合等の公知の方法を採用することができる。このうち、重合反応の制御の容易さ、および、得られる吸水性樹脂の性能面から、親水性不飽和単量体を水溶液にして重合させる方法、即ち、水溶液重合および逆相懸濁重合が好ましい。反応温度や反応時間等の反応条件は、親水性不飽和単量体の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0054】
尚、親水性不飽和単量体の重合方法として、公知の重合方法(例えば、米国特許第4,625,001号、米国特許第4,769,427号、米国特許第4,873,299号、米国特許第4,093,776号、米国特許第4, 367,323号、米国特許第4, 446, 261号、米国特許第4, 683, 274号、米国特許第4, 690, 996号、米国特許第4, 721, 647号、米国特許第4, 738, 867号、米国特許第4, 748, 076号等)を採用することもできる。
【0055】
親水性不飽和単量体を重合させる際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤;紫外線や電子線等の活性エネルギー線;等を用いることができる。また、酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合には、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合を行ってもよい。これら重合開始剤の使用量は、0.001モル%〜2モル%の範囲内が好ましく、0.01モル%〜0.5モル%の範囲内がより好ましい。
【0056】
上記の重合方法によって得られる吸水性樹脂前駆体は、必要に応じて分級等の操作により、その粒子径が調整される。吸水性樹脂前駆体は、球状、鱗片状、不定形破砕状、繊維状、顆粒状、棒状、略球状、扁平状等の種々の形状であってもよい。
【0057】
本発明に用いられる、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂は、上記の吸水性樹脂前駆体を、特定の表面架橋剤の存在下に処理し、表面架橋することによって得ることができる。吸水性樹脂を得る方法としては、具体的には、例えば、吸水性樹脂前駆体の粒子径を、分級等の操作により、平均粒子径が200μm〜600μmの範囲内で、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が10重量%以下となるように調整した後、該吸水性樹脂前駆体を、第一表面架橋剤および第二表面架橋剤を組み合わせてなる表面架橋剤(後述する)の存在下で加熱処理する方法(特願平7−145012号)等が挙げられる。上記の方法により、吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を内部よりも高くすることができるので、拡散吸収倍率に優れた吸水性樹脂を得ることができる。尚、吸水性樹脂前駆体の平均粒子径が200μm〜600μmの範囲外である場合や、粒子径が106μm未満の粒子の割合が10重量%を越える場合には、拡散吸収倍率に優れた吸水性樹脂を得ることが困難となるおそれがある。
【0058】
表面架橋剤は、吸水性樹脂前駆体が有するカルボキシル基と反応可能な化合物の混合物であり、溶解度パラメータ(SP値)が互いに異なる第一表面架橋剤および第二表面架橋剤を組み合わせてなる。尚、上記の溶解度パラメータとは、化合物の極性を表すファクターとして一般に用いられる値である。本発明においては、上記の溶解度パラメータに対して、ポリマーハンドブック第3版(WILEY INTERSCIENCE社発行)527頁〜539頁に記載されている溶媒の溶解度パラメータδ(cal/cm1/2((J/m1/2)の値を適用することとする。また、上記の頁に記載されていない溶媒の溶解度パラメータに関しては、該ポリマーハンドブックの524頁に記載されているSmallの式に、同525頁に記載されているHoyの凝集エネルギー定数を代入して導かれる値を適用することとする。
【0059】
上記の第一表面架橋剤は、吸水性樹脂前駆体が有するカルボキシル基と反応可能な、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2(0.0256(J/m1/2)以上の化合物が好ましく、13.0(cal/cm1/2(0.0266(J/m1/2)以上の化合物がより好ましい。上記の第一表面架橋剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレンカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン)、プロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)等が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。これら第一表面架橋剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0060】
上記の第二表面架橋剤は、吸水性樹脂前駆体が有するカルボキシル基と反応可能な、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2(0.0256(J/m1/2)未満の化合物が好ましく、9.5(cal/cm1/2 〜12.0(cal/cm1/2(0.0194(J/m1/2)〜0.0246(J/m1/2)の範囲内の化合物がより好ましい。上記の第二表面架橋剤としては、具体的には、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。これら第二表面架橋剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0061】
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂前駆体の固形分100重量部に対して、第一表面架橋剤の使用量が0.01重量部〜5重量部の範囲内、かつ、第二表面架橋剤の使用量が0.001重量部〜1重量部の範囲内が好ましく、第一表面架橋剤の使用量が0.1重量部〜2重量部の範囲内、かつ、第二表面架橋剤の使用量が0.005重量部〜0.5重量部の範囲内がより好ましい。表面架橋剤の使用量が上記範囲を越える場合には、不経済となるばかりか、吸水性樹脂における最適な架橋構造を形成する上で、表面架橋剤の量が過剰となるため、好ましくない。また、表面架橋剤の使用量が上記範囲よりも少ない場合には、吸水性樹脂における拡散吸収倍率等の性能を向上させる上で、その改良効果が得られ難いため、好ましくない。
【0062】
吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤とを混合する際には、溶媒として水を用いることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂前駆体の種類や粒子径等にもよるが、吸水性樹脂前駆体の固形分100重量部に対して、0を越え、20重量部以下が好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0063】
また、吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤とを混合する際には、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いてもよい。上記の親水性有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アルコキシポリエチレングリコール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂前駆体の種類や粒子径等にもよるが、吸水性樹脂前駆体の固形分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、0.1重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0064】
そして、吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤とを混合する際には、例えば、前記例示の親水性有機溶媒に吸水性樹脂前駆体を分散させた後、表面架橋剤を混合してもよいが、混合方法は、特に限定されるものではない。種々の混合方法のうち、必要に応じて水および/または親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を、吸水性樹脂前駆体に直接、噴霧若しくは滴下して混合する方法が好ましい。
【0065】
吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤とを混合する際に用いられる混合装置(以下、混合装置aと記す)は、両者を均一にかつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。上記の混合装置aとしては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーデスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が好適である。
【0066】
吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤とを混合した後、加熱処理を行い、吸水性樹脂前駆体の表面近傍を架橋させる。上記加熱処理の処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、160℃以上、250℃以下が好ましい。処理温度が160℃未満の場合には、均一な架橋構造が形成されず、従って、拡散吸収倍率に優れた吸水性樹脂を得ることができないため、好ましくない。また、加熱処理に時間がかかるので、生産性の低下を引き起こす。処理温度が250℃を越える場合には、吸水性樹脂前駆体の劣化を引き起こし、従って、吸水性樹脂の性能が低下するため、好ましくない。
【0067】
上記の加熱処理は、通常の乾燥機または加熱炉を用いて行うことができる。上記の乾燥機としては、例えば、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、デスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、赤外線乾燥機等が挙げられる。
【0068】
本発明にかかる吸収剤組成物に必要に応じて含まれる水不溶性無機粉体としては、具体的には、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、珪酸、珪酸塩、粘土、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、ハイドロタルサイト、活性白土等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水不溶性無機粉体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の水不溶性無機粉体のうち、微細な非晶質二酸化ケイ素がより好ましい。また、該非晶質二酸化ケイ素の粒子径は、1,000μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。
【0069】
水不溶性無機粉体の使用量は、吸収剤組成物の用途等にもよるが、吸水性樹脂100重量部に対して、0.05重量部〜2重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜1重量部の範囲内がより好ましい。水不溶性無機粉体の使用量が0.05重量部よりも少ない場合には、所望の拡散吸収指数を備えた吸収剤組成物が得られないおそれがある。また、水不溶性無機粉体の使用量を2重量部よりも多くしても、該使用量に見合った効果が得られ難いので、経済的に不利となるおそれがある。
【0070】
吸水性樹脂と水不溶性無機粉体とを混合する際に用いられる混合装置(以下、混合装置bと記す)としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機等が好適である。混合速度は、高速であってもよく、また、低速であってもよい。尚、水不溶性無機粉体は、溶媒を用いないで混合すること、つまり、ドライブレンドが好ましいが、上記溶媒を用いたエマルションの状態で吸水性樹脂と混合することもできる。
【0071】
本発明にかかる吸収剤組成物に必要に応じて含まれるポリアミン化合物は、重量平均分子量が5,000以上であればよく、特に限定されるものではない。ポリアミン化合物は、一級アミノ基、二級アミノ基、および三級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ基を分子中に有していればよく、特に限定されるものではない。
【0072】
上記のポリアミン化合物としては、例えば、(1) モノアリルアミン誘導体の単独重合体,ジアリルアミン誘導体の単独重合体;(2) 二種類以上のモノアリルアミン誘導体の共重合体,二種類以上のジアリルアミン誘導体の共重合体,モノアリルアミン誘導体とジアリルアミン誘導体との共重合体;(3) モノアリルアミン誘導体および/またはジアリルアミン誘導体と、ジアルキルジアリルアンモニウム塩との共重合体;(4) 三級アミノ基を有する不飽和カルボン酸誘導体(以下、不飽和カルボン酸誘導体aと記す)の単独重合体;(5) 二種類以上の不飽和カルボン酸誘導体aの共重合体;(6) 不飽和カルボン酸誘導体aと、三級アミノ基がプロトン化および/またはアルキル化されてなる四級アンモニウム塩、および/または、ジアルキルジアリルアンモニウム塩を置換基として有する不飽和カルボン酸誘導体(以下、不飽和カルボン酸誘導体bと記す)との共重合体;(7) 不飽和カルボン酸誘導体a、不飽和カルボン酸誘導体b、および、これら不飽和カルボン酸誘導体a・bと共重合可能なビニル単量体の三元共重合体;(8) 不飽和カルボン酸、および、該不飽和カルボン酸と共重合可能な不飽和単量体を共重合させて共重合体を得た後、該共重合体が有するカルボキシル基をアルキレンイミンと反応させてなる重合体;(9) ポリアルキレンイミン;(10)ポリアルキレンイミン・エピハロヒドリン樹脂;(11)ポリアルキレンポリアミン;(12)(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンイミンの重合体,(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンイミン、および、該(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンイミンと共重合可能な不飽和単量体の共重合体;(13)ポリアミドポリアミン;(14)ポリアミドアミン・エピハロヒドリン樹脂;(15)ポリアクリルアミドのマンニッヒ反応変性物,ポリメタクリルアミドのマンニッヒ反応変性物;(16)ポリビニルアミン,ビニルアミン、および、該ビニルアミンと共重合可能な不飽和単量体の共重合体;(17)ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物;等が挙げられる。
【0073】
このようなポリアミン化合物としては、具体的には、例えば、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリ(N−アルキルアリルアミン)、ポリ(アルキルジアリルアミン)、モノアリルアミン−ジアリルアミン共重合体、N−アルキルアリルアミン−モノアリルアミン共重合体、モノアリルアミン−ジアルキルジアリルアンモニウム塩・共重合体、ジアリルアミン−ジアルキルジアリルアンモニウム塩・共重合体、ポリジメチルアミノエチルアクリレート、ポリジエチルアミノエチルアクリレート、ポリジメチルアミノエチルアクリルアミド、直鎖状ポリエチレンイミン、分岐鎖状ポリエチレンイミン、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミジン等が挙げられる。また、ポリアクリルアミドまたはポリメタクリルアミドに、ホルムアルデヒドとジエチルアミンとを反応させてなる、アミノ化された変性体等も挙げられる。
【0074】
また、ポリアミン化合物は、酸性化合物によって完全中和または部分中和されていてもよい。酸性化合物は、ポリアミン化合物を中和することができる化合物、即ち、無機酸および有機酸であればよく、特に限定されるものではない。無機酸としては、具体的には、例えば、炭酸;塩酸、フッ化水素酸等の水素酸;硫酸、亜硫酸、硝酸、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸等のポリリン酸、トリポリリン酸、ウルトラリン酸(酸性メタリン酸)、過塩素酸等の酸素酸;上記酸素酸の塩;等が挙げられる。有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルフィン酸、スルホン酸、フェノール酸、エノール(カルボニル化合物の互変異性体)、メルカプタン、イミド(酸イミド)、オキシム、スルホンアミド等の、酸性の官能基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、グリコール酸、乳酸、トリクロロ乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、タルトロン酸、没食子酸等のオキシ酸;アスパラギン酸等のアミノ酸;等が挙げられる。これら酸性化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0075】
ポリアミン化合物の重量平均分子量は5,000以上であり、10,000〜10,000,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が5,000未満のポリアミン化合物は、所望の拡散吸収指数を備えた吸収剤組成物が得られないことがあり、好ましくない。ポリアミン化合物の使用量は、吸収剤組成物の用途等にもよるが、吸水性樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部の範囲内が好ましい。
【0076】
吸水性樹脂とポリアミン化合物とを混合する際には、例えば、水および/または前記例示の親水性有機溶媒にポリアミン化合物を溶解若しくは分散させることにより溶液若しくは分散液を調製した後、該溶液若しくは分散液を吸水性樹脂に噴霧若しくは滴下して混合する方法が好適である。そして、両者を混合する際には、前記例示の混合装置bを用いることができる。混合速度は、高速であってもよく、また、低速であってもよい。
【0077】
上記の水不溶性無機粉体およびポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、必要に応じて併用してもよい。また、吸水性樹脂と、これら水不溶性無機粉体およびポリアミン化合物とを混合する順序は、特に限定されるものではない。
【0078】
また、前述したように、吸収剤組成物を得る他の方法としては、具体的には、例えば、次に示す方法等が挙げられる。即ち、(1) 先ず、カルボキシル基を有し、平均粒子径が200μm〜600μmの範囲内で、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が10重量%以下となるように調整された吸水性樹脂前駆体を、該カルボキシル基と反応可能な、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2(0.0256(J/m1/2)以上の第一表面架橋剤、および、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2(0.0256(J/m1/2)未満の第二表面架橋剤の存在下、160℃以上で加熱処理することにより、吸水性樹脂を得る;(2) 次に、この吸水性樹脂に、さらに、表面架橋剤、より好ましくは溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2(0.0256(J/m1/2)以上の第一表面架橋剤と、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2(0.0256(J/m1/2)未満の第二表面架橋剤とを添加・混合した後、160℃以上で加熱処理する;という方法により、吸収剤組成物を得ることもできる。
【0079】
上記の各種方法により得られる吸収剤組成物は、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上である。このため、上記の吸収剤組成物は、上述したような優れた吸収特性を備えている。
【0080】
吸収体は、上記の吸収剤組成物を少なくとも一種類含み、かつ、該吸収剤組成物の含有量が40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
【0081】
拡散吸収指数が1.5g/g・min未満である吸収剤組成物を含む吸収体は、一度に多量の水性液体が添加された場合には、該水性液体を素早く吸収することができない。つまり、このような吸収剤組成物を含む吸収体は、拡散吸収指数が低いので液拡散性が極端に劣っており、一度に多量の水性液体が添加された場合には、該水性液体を素早く吸収して吸収体中に拡散させることができない。その結果、吸収体は、水性液体を吸収するのに長時間を要し、吸収体全体の吸収容量が小さくなる。また、吸収体を含む吸収物品は、一度に多量の水性液体が添加された場合には、上記原因等により、該水性液体の漏れ等の不都合を生じる。特に、吸収物品における同一箇所に多量の水性液体が繰り返し添加された場合には、上記漏れ等の不都合が顕著に生じることとなる。
【0082】
吸収体は、吸収剤組成物の他に、必要に応じて、親水性繊維を含んでいてもよい。そして、吸収体が例えば吸収剤組成物と親水性繊維とからなる場合には、吸収体の構成としては、例えば、吸収剤組成物と親水性繊維とを均一に混合した構成;層状に形成した親水性繊維間に吸収剤組成物を挟持した構成;吸収剤組成物と親水性繊維とを均一に混合して層状に形成し、この上に、層状に形成した親水性繊維を積層した構成;吸収剤組成物と親水性繊維とを均一に混合して層状に形成し、これと、層状に形成した親水性繊維との間に吸収剤組成物を挟持した構成;等が挙げられる。さらに、吸収体の構成としては、例えば、吸収剤組成物に特定量の水を配合することによって該吸収剤組成物をシート状に形成した構成であってもよい。上記構成とすることにより、吸収体は、その吸収特性をより一層充分に発揮することができる。
【0083】
そして、上記例示の構成のうち、吸収体における吸収剤組成物の含有量(割合)が40重量%以上となるようにして、吸収剤組成物と親水性繊維とを均一に混合した構成がより好ましい。また、上記例示の構成のうち、吸収剤組成物と親水性繊維との合計量に対する吸収剤組成物の割合が50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上となるようにして、吸収剤組成物と親水性繊維とを均一に混合した構成がさらに好ましい。吸収体における樹脂濃度が高い程、吸収体の吸収特性は顕著に現れる。尚、吸収体の構成は、上記例示の構成に限定されるものではない。
【0084】
上記の親水性繊維としては、例えば、木材から得られるメカニカルパルプやケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維;レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維;等が挙げられる。上記例示の繊維のうち、セルロース繊維がより好ましい。また、親水性繊維は、ポリアミドやポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維を含有していてもよい。尚、親水性繊維は、上記例示の繊維に限定されるものではない。
【0085】
また、吸収体における親水性繊維の割合が比較的少ない場合には、接着性バインダーを用いて吸収体、つまり、親水性繊維同士を接着させてもよい。親水性繊維同士を接着させることにより、吸収体の使用前や使用中における該吸収体の強度や保形性を高めることができる。
【0086】
上記の接着性バインダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、1−ブテン−エチレン共重合体等のポリオレフィン繊維等の熱融着繊維;接着性を有するエマルション;等が例示できる。これら接着性バインダーは、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。親水性繊維と接着性バインダーとの重量比は、50/50〜99/1の範囲内が好ましく、70/30〜95/5の範囲内がより好ましく、80/20〜95/5の範囲内がさらに好ましい。
【0087】
上記の方法により得られる吸収体は、上述したような優れた吸収特性を備えている。
【0088】
吸収体は、例えば、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等の吸収物品に用いた場合に、吸水性樹脂の使用量が多い場合、或いは、吸収体における樹脂濃度が高い場合においても、非常に高い液拡散性や吸収速度、長時間にわたって安定した吸収量を保持する等の優れた性能(吸収特性)を示すことができる。
【0089】
本発明にかかる吸収物品は、上記の吸収体を含む吸収層を、透液性を有するシートと、不透液性を有するシートとで挟持してなる。吸収層の構成や製造方法は、特に限定されるものではない。また、吸収物品の製造方法は、特に限定されるものではない。
【0090】
上記透液性を有するシート(以下、液透過性シートと称する)は、水性液体を透過する性質を備えた材料からなっている。液透過性シートの材料としては、例えば、不織布、織布;ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等からなる多孔質の合成樹脂フィルム;等が挙げられる。上記不透液性を有するシート(以下、液不透過性シートと称する)は、水性液体を透過しない性質を備えた材料からなっている。液不透過性シートの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、ポリ塩化ビニル等からなる合成樹脂フィルム;これら合成樹脂と不織布との複合材からなるフィルム;上記合成樹脂と織布との複合材からなるフィルム;等が挙げられる。尚、液不透過性シートは、蒸気を透過する性質を備えていてもよい。
【0091】
上記構成の吸収物品は、上述したような優れた吸収特性を備えている。吸収物品としては、具体的には、例えば、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等が挙げられるが、特に限定されるものではない。そして、吸収物品は優れた吸収特性を備えているので、例えば該吸収物品が紙オムツである場合には、尿の漏れを防止することができると共に、いわゆるドライ感を付与することができる。
【0092】
尚、上記の吸収剤組成物、吸収体および吸収物品は、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水等をさらに含んでいてもよい。これにより、吸収剤組成物、吸収体および吸収物品に、種々の機能を付与させることができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、吸収剤組成物、吸収体および吸収物品の諸性能(物性)は、以下の方法で測定した。
【0094】
(a)吸収倍率
吸収剤組成物0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に室温で浸漬した。60分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W(g)を測定した。また、同様の操作を、吸収剤組成物を用いないで行い、そのときの重量W (g)を測定した。そして、これら重量W・Wから、次式、
吸収倍率(g/g)
=(重量W(g)−重量W(g))/吸収剤組成物の重量(g)
に従って吸収倍率(g/g)を算出した。
【0095】
(b)拡散吸収倍率
先ず、拡散吸収倍率の測定に用いる測定装置について、図1および図2を参照しながら、以下に簡単に説明する。
【0096】
図1に示すように、測定装置は、天秤1と、この天秤1上に載置された所定容量の容器2と、外気吸入パイプ3と、導管4と、ガラスフィルタ6と、このガラスフィルタ6上に載置された測定部5とからなっている。上記の容器2は、その頂部に開口部2aを、その側面部に開口部2bをそれぞれ有しており、開口部2aに外気吸入パイプ3が嵌入される一方、開口部2bに導管4が取り付けられている。また、容器2には、所定量の生理食塩水12が入っている。外気吸入パイプ3の下端部は、生理食塩水12中に没している。上記のガラスフィルタ6は、直径70mmに形成されている。そして、容器2およびガラスフィルタ6は、導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ6は、その上面が、外気吸入パイプ3の下端に対してごく僅かに高い位置になるようにして固定されている。
【0097】
図2に示すように、上記の測定部5は、濾紙7と、シート8と、支持円筒9と、この支持円筒9の底部に貼着された金網10と、重り11とを有している。そして、測定部5は、ガラスフィルタ6上に、濾紙7、シート8、支持円筒9(つまり、金網10)がこの順に載置されると共に、支持円筒9内部、即ち、金網10上に重り11が載置されてなっている。シート8は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、中央部に直径18mmの開口部を有する厚さ0.1mmのドーナツ状に形成されている。支持円筒9は、内径60mmに形成されている。金網10は、ステンレスからなり、JIS規格で400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されている。そして、金網10上に所定量の吸収剤組成物が均一に撒布されるようになっている。重り11は、金網10、即ち、吸収剤組成物に対して、20g/cm(1.96kPa)の荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0098】
上記構成の測定装置を用いて拡散吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
【0099】
先ず、容器2に所定量の生理食塩水12を入れる、容器2に外気吸入パイプ3を嵌入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルタ6上に濾紙7を載置し、この濾紙7上にシート8を、その開口部がガラスフィルタ6の中心部に位置するようにして載置した。一方、これら載置動作に並行して、支持円筒9内部、即ち、金網10上に吸収剤組成物1.5gを均一に撒布し、この吸収剤組成物上に重り11を載置した。
【0100】
次いで、シート8上に、金網10、つまり、吸収剤組成物および重り11を載置した上記支持円筒9を、その中心部がガラスフィルタ6の中心部に一致するようにして載置した。
【0101】
そして、シート8上に支持円筒9を載置した時点から、60分間にわたって吸収剤組成物が吸収した生理食塩水12の重量W(g)を、天秤1を用いて測定した。尚、図2および図3に示すように、生理食塩水12は、シート8の開口部を通過した後、吸収剤組成物の横方向(図中、矢印で示す)にほぼ均一に拡散しながら、吸収剤組成物に吸収された。
【0102】
そして、上記の重量Wから、次式、
拡散吸収倍率(g/g)=重量W(g)/吸収剤組成物の重量(g)
に従って、吸収開始から60分後の拡散吸収倍率(g/g)を算出した。
【0103】
(c)拡散吸収指数
拡散吸収指数は、上記拡散吸収倍率の測定に用いた測定装置を用い、シート8上に支持円筒9を載置した時点から、吸収剤組成物が60分間かけて吸収していく生理食塩水12の重量を、天秤1を用いて経時的に測定することによって求めた。つまり、天秤1を用いて生理食塩水12の重量を分単位、より好ましくは秒単位で測定し、これら測定結果から、単位時間当たりの最大吸収量を求め、その値を拡散吸収指数(g/g・min)とした。
【0104】
(d)吸収体の拡散吸収倍率
先ず、吸収体の拡散吸収倍率の測定に用いる測定装置について、図4および図5を参照しながら、以下に簡単に説明する。尚、説明の便宜上、前記拡散吸収倍率の測定に用いる測定装置と同一の機能を有する構成には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0105】
図4に示すように、測定装置は、天秤1と、容器2と、外気吸入パイプ3と、導管4と、直径120mmに形成されたガラスフィルタ6と、このガラスフィルタ6上に載置された測定部15とからなっている。図5に示すように、上記の測定部15は、濾紙7と、シート8と、支持角筒19と、重り11とを有している。尚、測定部15は、前記の金網は有していない。
【0106】
測定部15は、ガラスフィルタ6上に、濾紙7、シート8、支持角筒19がこの順に載置されると共に、支持角筒19内部に重り11が載置されてなっている。シート8は、ポリエチレンテレフタレートからなり、中央部に12.5mm×100mmの長方形の開口部を有する厚さ0.1mmの矩形状に形成されている。支持角筒19は、内寸法が100mm×100mmに形成されている。そして、支持角筒19内部に所定の大きさの吸収体が載置されるようになっている。測定装置のその他の構成は、前記拡散吸収倍率の測定に用いる測定装置の構成と同一である。
【0107】
上記構成の測定装置を用いて吸収体の拡散吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。尚、測定すべき吸収体は、下記の方法により作成した。即ち、吸収剤組成物50重量部と、親水性繊維としての木材粉砕パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。得られた混合物を100mm×100mmの大きさのウェブに成形した後、このウェブを圧力2kg/cm(196.14kPa)で1分間プレスすることにより、坪量が約0.047g/cm の吸収体を得た。
【0108】
先ず、測定装置については、所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルタ6上に濾紙7を載置し、この濾紙7上にシート8を、その開口部がガラスフィルタ6の中心部に位置するようにして載置した。次いで、シート8上に支持角筒19を、その中心部がガラスフィルタ6の中心部に一致するようにして載置した。
【0109】
その後、支持角筒19内部、即ち、シート8上に吸収体を載置し、この吸収体上に重り11を載置した。尚、吸収体および重り11の載置動作は、素早く行った。
【0110】
そして、シート8上に吸収体を載置した時点から、60分間にわたって吸収体が吸収した生理食塩水12の重量W(g)を、天秤1を用いて測定した。尚、図5および図6に示すように、生理食塩水12は、シート8の開口部を通過した後、吸収体中を横方向(図中、矢印で示す)にほぼ均一に拡散しながら、吸収体に吸収された。
【0111】
そして、上記の重量Wから、次式、
吸収体の拡散吸収倍率(g/g)=重量W(g)/吸収体の重量(g)
に従って、吸収開始から60分後の、吸収体の拡散吸収倍率(g/g)を算出した。
【0112】
(e)吸収体の吸収速度(コア・アクイジション)
測定すべき吸収体は、下記の方法により作成した。即ち、吸収剤組成物8.8gと、木材粉砕パルプ8.8gとを、ミキサーを用いて乾式混合した。得られた混合物を260mm×150mmの大きさのウェブに成形することにより、吸収体を得た。
【0113】
一方、尿素1.9重量%、NaCl0.8重量%、CaCl 0.1重量%、および、MgSO0.1重量%の組成(残りは水)を有する水溶液、即ち、人工尿を調製した。
【0114】
そして、上記の吸収体全体に、18g/cm (1.77kPa)の荷重を均一に加えると共に、該吸収体の中心部分に、直径30mm、高さ120mmの円筒を押し当て、該円筒を垂直に立てた。次いで、該円筒内に25℃の人工尿50gを素早く(一気に)注ぎ、人工尿を注ぎ始めた時点から、該人工尿が吸収体に全て吸収されるまでの時間を測定し、1回目の吸収速度(秒)とした。その後、上記測定に用いた吸収体を用いて、50分間隔で同様の測定を2回繰り返し、2回目の吸収速度(秒)、および3回目の吸収速度(秒)を測定した。吸収体の液拡散性は、これら吸収速度が速い程、高いと評価することができる。
【0115】
(f)吸収物品の性能評価(キューピー人形テスト)
測定すべき吸収物品は、下記の方法により作成した。即ち、先ず、吸収剤組成物50重量部と、木材粉砕パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上にバッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×400mmの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力2kg/cm(196.14kPa)で5秒間プレスすることにより、坪量が約0.047g/cm の吸収体を得た。
【0116】
続いて、不透液性のポリプロピレンからなり、いわゆるレッグギャザーを有するバックシート(液不透過性シート)、上記の吸収体、および、透液性のポリプロピレンからなるトップシート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に互いに貼着すると共に、この貼着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより、吸収物品(つまり、紙オムツ)を得た。
【0117】
上記の吸収物品を、いわゆるキューピー人形(体長55cm、重量5kg)に装着し、該人形をうつ伏せ状態にした後、吸収物品と人形との間にチューブを差込み、人体において排尿を行う位置に相当する位置に、1回当たり50mlの生理食塩水を、20分間隔で順次注入した。そして、注入した生理食塩水が吸収物品に吸収されなくなって外部に漏れ出した時点で上記の注入動作を終了し、このときまでに注入した生理食塩水の量を測定した。
【0118】
上記の測定を4回繰り返し、得られた4つの測定値の平均を求め、この値を吸収量(g)とした。そして、吸収量が多い程、吸収物品の性能が良好であると評価した。
【0119】
〔実施例1〕
中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)39重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート3.59gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0120】
続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。
【0121】
得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級することにより、平均粒子径が400μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が5重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得た。
【0122】
得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのエチレングリコール〔SP値:δ=14.6(cal/cm1/2(0.0299(J/m1/2)〕0.5重量部と、第二表面架橋剤としてのグリセロールポリグリシジルエーテル〔SP値:δ=10.8(cal/cm1/2(0.0221(J/m1/2)〕0.1重量部と、水3重量部と、エチルアルコール1重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を195℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の平均粒子径は400μmであり、粒子径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。
【0123】
吸水性樹脂の諸性能を上記の方法によって測定した結果、吸収倍率は30g/g、拡散吸収倍率は30.1g/g、拡散吸収指数は1.20g/g・minであった。
【0124】
次に、上記の吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200;日本アエロジル株式会社製)0.5gを添加・混合することにより、本発明にかかる吸収剤組成物を得た。
【0125】
そして、上記吸収剤組成物の諸性能、並びに、該吸収剤組成物を用いた吸収体および吸収物品の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果、吸収剤組成物の吸収倍率は30g/g、拡散吸収倍率は26.9g/g、拡散吸収指数は2.87g/g・minであった。吸収体の拡散吸収倍率は18.9g/g、1回目の吸収速度は34秒、2回目の吸収速度は69秒、3回目の吸収速度は77秒であった。吸収物品の吸収量は275gであり、性能は良好であった。結果を表1に示す。
【0126】
〔実施例2〕
上記の実施例1で得られた吸水性樹脂100gに、ポリアミン化合物としての重量平均分子量70,000のポリエチレンイミン30重量%水溶液(商品名・エポミンP−1000;株式会社日本触媒製)5gを添加・混合した。次いで、該混合物を熱風乾燥機に入れて90℃で20分間保持して硬化させた。得られた硬化物を、目の大きさが840μmの金網で分級し、通過物に水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・カープレックス22S;塩野義製薬株式会社製)0.3gを添加・混合することにより、本発明にかかる吸収剤組成物を得た。
【0127】
そして、上記吸収剤組成物の諸性能、並びに、該吸収剤組成物を用いた吸収体および吸収物品の諸性能を上記の方法によって測定した。結果をまとめて表1に示す。
【0128】
〔実施例3〕
アクリル酸20重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド2.35gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、実施例1の反応器と同様の反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0129】
続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.5gおよびL−アスコルビン酸0.07gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に、中和剤である炭酸ナトリウム606.7gを加えて攪拌し、中和した。その後、反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。
【0130】
得られた含水ゲル状重合体は、中和率が75モル%であり、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級することにより、平均粒子径が390μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が4重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得た。
【0131】
得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール〔SP値:δ=12.6(cal/cm1/2(0.0258(J/m1/2)〕0.75重量部と、第二表面架橋剤としてのプロピレングリコールジグリシジルエーテル〔SP値:δ=10.1(cal/cm1/2(0.0207(J/m1/2)〕0.05重量部と、水3重量部と、エチルアルコール0.75重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を195℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の平均粒子径は390μmであり、粒子径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。
【0132】
吸水性樹脂の諸性能を上記の方法によって測定した結果、吸収倍率は38g/g、拡散吸収倍率は33.9g/g、拡散吸収指数は0.90g/g・minであった。
【0133】
次に、上記の吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)0.3gを添加・混合することにより、本発明にかかる吸収剤組成物を得た。
【0134】
そして、上記吸収剤組成物の諸性能、並びに、該吸収剤組成物を用いた吸収体および吸収物品の諸性能を上記の方法によって測定した。結果をまとめて表1に示す。
【0135】
〔比較例1〕
中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム39重量%水溶液5,500gに、トリメチロールプロパントリアクリレート7.18gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、実施例1の反応器と同様の反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0136】
続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸ナトリウム5.0gおよびL−アスコルビン酸0.25gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。
【0137】
得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級することにより、平均粒子径が360μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が5重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。
【0138】
上記の吸水性樹脂を、そのまま比較用の吸収剤組成物とした。上記比較用吸収剤組成物の諸性能、並びに、該比較用吸収剤組成物を用いた比較用吸収体および比較用吸収物品の諸性能を上記の方法によって測定した。結果をまとめて表1に示す。
【0139】
〔比較例2〕
中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム39重量%水溶液5,500gに、トリメチロールプロパントリアクリレート3.59gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、実施例1の反応器と同様の反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0140】
続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始してから60分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。
【0141】
得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級することにより、平均粒子径が400μmで、しかも、粒子径が106μm未満の粒子の割合が5重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得た。
【0142】
得られた吸水性樹脂前駆体100重量部に、エチレングリコール0.5重量部と、水3重量部と、エチルアルコール1重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を195℃で20分間加熱処理することにより、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂の平均粒子径は400μmであり、粒子径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。
【0143】
上記の吸水性樹脂を、そのまま比較用の吸収剤組成物とした。上記比較用吸収剤組成物の諸性能、並びに、該比較用吸収剤組成物を用いた比較用吸収体および比較用吸収物品の諸性能を上記の方法によって測定した。結果をまとめて表1に示す。
【0144】
〔比較例3〕
上記の比較例1で得られた吸水性樹脂100gに、微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200;日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合することにより、比較用の吸収剤組成物を得た。
【0145】
上記比較用吸収剤組成物の諸性能、並びに、該比較用吸収剤組成物を用いた比較用吸収体および比較用吸収物品の諸性能を上記の方法によって測定した。結果をまとめて表1に示す。
【0146】
〔比較例4〕
上記の比較例2で得られた吸水性樹脂100gに、微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社製)0.5gを添加・混合することにより、比較用の吸収剤組成物を得た。
【0147】
上記比較用吸収剤組成物の諸性能、並びに、該比較用吸収剤組成物を用いた比較用吸収体および比較用吸収物品の諸性能を上記の方法によって測定した。結果をまとめて表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
表1に記載された結果から明らかなように、本発明にかかる吸収剤組成物は、比較用の吸収剤組成物と比較して、拡散吸収指数が高い。また、吸収体は、比較用の吸収体と比較して、吸収速度が速く、液拡散性に優れている。さらに、本発明にかかる吸収物品は、比較用の吸収物品と比較して、吸収量が多く、性能が良好である。このため、吸収剤組成物、吸収体、および吸収物品は、一度に多量の水性液体が添加されても、該水性液体を素早く吸収することができ、かつ、常時、非常に高い液拡散性を維持することができると共に、単位重量当たりの吸収量を保持することができる等の優れた性能(吸収特性)を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、例えば、紙オムツ(使い捨てオムツ)や生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等に好適に用いられる吸収剤組成物およびその製造方法、並びに、吸収剤組成物を含む吸収物品に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0151】
1 天秤
2 容器
3 外気吸入パイプ
4 導管
5 測定部
6 ガラスフィルタ
7 濾紙
8 シート
9 支持円筒
10 金網
11 重り
12 生理食塩水
15 測定部
19 支持角筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂100重量部に対して非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上であることを特徴とする吸収剤組成物。
但し、拡散吸収指数および拡散吸収倍率は明細書に記載されている、内径60mmの支持円筒中の吸収剤組成物1.5gに、直径18mmの開口部から通過した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を、吸収剤組成物の横方向に拡散させながら荷重20g/cmにて吸収させる方法、によって規定される。
拡散吸収倍率(g/g)=重量W(g)/吸収剤組成物の重量(g)、Wは60分で吸収剤組成物が吸収した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の重量(g)
拡散吸収指数(g/g/min)は拡散吸収倍率での単位時間当たりの最大吸収量。
【請求項2】
ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂100重量部に対して重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上であることを特徴とする吸収剤組成物。
但し、拡散吸収指数および拡散吸収倍率は明細書に記載されている、内径60mmの支持円筒中の吸収剤組成物1.5gに、直径18mmの開口部から通過した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を、吸収剤組成物の横方向に拡散させながら荷重20g/cmにて吸収させる方法、によって規定される。
拡散吸収倍率(g/g)=重量W(g)/吸収剤組成物の重量(g)、Wは60分で吸収剤組成物が吸収した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の重量(g)
拡散吸収指数(g/g/min)は拡散吸収倍率での単位時間当たりの最大吸収量。
【請求項3】
ポリアクリル酸塩の架橋重合体である吸水性樹脂を含む吸収剤組成物であって、吸水性樹脂100重量部に対して非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部および重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を含み、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収指数が1.5g/g・min以上であり、20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上であることを特徴とする吸収剤組成物。
但し、拡散吸収指数および拡散吸収倍率は明細書に記載されている、内径60mmの支持円筒中の吸収剤組成物1.5gに、直径18mmの開口部から通過した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を、吸収剤組成物の横方向に拡散させながら荷重20g/cmにて吸収させる方法、によって規定される。
拡散吸収倍率(g/g)=重量W(g)/吸収剤組成物の重量(g)、Wは60分で吸収剤組成物が吸収した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の重量(g)
拡散吸収指数(g/g/min)は拡散吸収倍率での単位時間当たりの最大吸収量。
【請求項4】
上記ポリアミン化合物は、酸性化合物によって完全中和または部分中和されていることを特徴とする請求項2または3に記載の吸収剤組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の吸収剤組成物を製造する方法であって、
20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部を添加することを特徴とする吸収剤組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の吸収剤組成物を製造する方法であって、
20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を添加することを特徴とする吸収剤組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の吸収剤組成物を製造する方法であって、
20g/cm(1.96kPa)の荷重下における、吸収開始から60分経過後の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の拡散吸収倍率が25g/g以上である吸水性樹脂100重量部に、非晶質二酸化ケイ素0.05〜2重量部および重量平均分子量5,000以上のポリアミン化合物0.1〜10重量部を添加することを特徴とする吸収剤組成物の製造方法。
【請求項8】
拡散吸収倍率が25g/g以上である上記吸水性樹脂は、平均粒子径が200〜600μmの範囲内で、粒子径が106μm未満の粒子の割合が10重量%以下である吸水性樹脂前駆体を、溶解度パラメータが12.5(cal/cm1/2以上の第一表面架橋剤、および、12.5(cal/cm1/2未満の第二表面架橋剤の存在下で加熱処理してなることを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の吸収剤組成物の製造方法。
【請求項9】
上記吸水性樹脂前駆体は、アクリル酸またはその塩を主成分とする親水性不飽和単量体の重合によって得られ、その形状が、球状、燐片状、不定形破砕状、顆粒状、略球状から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の吸収剤組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4の何れか一項に記載の吸収剤組成物を含む吸収体を、透液性を有するシートと、不透液性を有するシートとで挟持してなり、該吸収体における吸収剤組成物の含有量が40重量%以上であることを特徴とする吸収物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−142808(P2010−142808A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11220(P2010−11220)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【分割の表示】特願2000−106727(P2000−106727)の分割
【原出願日】平成8年8月9日(1996.8.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】