説明

吸収性樹脂組成物、これを含む吸収体及び吸収性物品

【課題】吸収体又は吸収性物品に使用した際に、吸収させる液体と接触した後の液の拡散が小さく、着用者の皮膚がカブレ等の問題を生じない吸収性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】吸収性樹脂粒子(A)及び疎水性物質(B)を含んでなり、(A)の重量平均粒子径が50〜350μmであり、(B)が融点40℃〜90℃である炭素数14〜30の1価アルコールである吸収性樹脂組成物であり、(B)として直鎖状飽和炭化水素基を有する1価アルコールが好ましく、(B)の含有量は(A)の重量に基づいて、0.1〜1.0重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性樹脂組成物、これを含む吸収体及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋重合体の表面に分子内炭素数が7個以上である有機酸多価金属塩(ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸アルミニウム、ミリスチン酸カルシウム塩、ミリスチン酸マグネシウム塩、ミリスチン酸アルミニウム塩、ミリスチン酸亜鉛塩、パルミチン酸カルシウム塩、パルミチン酸マグネシウム塩、パルミチン酸アルミニウム塩、パルミチン酸亜鉛塩、ステアリン酸カルシウム塩、ステアリン酸マグネシウム塩、ステアリン酸亜鉛塩及びステアリン酸アルミニウム塩等)が付着してなることで粉体流動性を改善した吸収性樹脂粒子が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、従来の吸収性樹脂粒子や吸収剤では吸収させる液体と接触した後の液の拡散が大きく、これらを生理用品に使用した場合に着用者の皮膚がカブレ等の問題を生じやすくなるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吸収性樹脂粒子を用いた吸収性物品(生理用品等)は、液体と接触した後の液の拡散が大きく、着用者の皮膚がカブレ等の問題を生じやすい。そして、このようなカブレ等の問題がない吸収性物品、これに使用し得る吸収性樹脂粒子が強く望まれている。
本発明の目的は吸収体、及び吸収性物品に使用した際に、吸収させる液体と接触した後の液の拡散が小さく、着用者の皮膚がカブレ等の問題を生じにくい吸収性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の吸収性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見い出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の吸収性樹脂組成物は、吸収性樹脂粒子(A)及び疎水性物質(B)を含んでなり、(A)の重量平均粒子径が50〜350μmであり、(B)が融点40℃〜90℃である炭素数14〜30の1価アルコールであることを要旨とする。
【0007】
本発明の吸収体は、上記の吸収性樹脂組成物と繊維状物とを含有してなる点を要旨とする。
【0008】
本発明の吸収性物品は、上記の吸収体を備えてなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性樹脂組成物は、吸収性物品に使用した際に、吸収させる液体と接触した後の液の拡散が小さい。
また、本発明の吸収体又は吸収性物品は、吸収させる液体の拡散が小さく、着用者の皮膚のカブレ等の問題が生じない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<吸収性樹脂粒子(A)について>
吸収性樹脂粒子(A)としては、水溶性ビニルモノマー及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマーとなるビニルモノマー並びに内部架橋剤を必須構成単位とする架橋重合体等が含まれ、公知のもの{たとえば、以下の(1)〜(16)の重合体等}をそのまま用いることができる。
【0011】
水溶性ビニルモノマーとしては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基及びアンモニオ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するビニルモノマー等が含まれる。なお、水溶性とは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を意味する。
【0012】
内部架橋剤としては、エチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、または水溶性ビニルモノマー及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマーとなるビニルモノマーと反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤が好ましく、例えば、ポリ(メタ)アリルエーテル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル及び多価グリシジル(エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等)が挙げられる。
【0013】
(1)特公昭53−46199号公報又は特公昭53−46200号公報等に記載のデンプン−アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体。
(2)特開昭55−133413号公報等に記載の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合又は噴霧重合等)により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(3)特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報又は特開平11−5808号公報等に記載の逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(4)特開昭52−14689号公報又は特開昭52−27455号公報等に記載のビニルエステルと不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体のケン化物。
(5)特開昭58−2312号公報又は特開昭61−36309号公報等に記載のアクリル酸(塩)とスルホ(スルホネート)基含有モノマーとの共重合体。
【0014】
(6)米国特許第4389513号等に記載のイソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体のケン化物。
(7)特開昭46−43995号公報等に記載のデンプン−アクリロニトリル共重合体の加水分解物。
(8)米国特許第4650716号等に記載の架橋カルボキシメチルセルロース。
(9)高分子ゲルの最新動向(シーエムシー出版、2004年発行)等に記載のポリアルキレン(エチレン、プロピレン等)グリコール架橋体。
(10)高分子ゲルの最新動向(シーエムシー出版、2004年発行)等に記載のポリビニルアルコール架橋体。
(11)特開2003−48997号公報に記載のデンプン放射線架橋体。
(12)特開平9−85080号公報に記載のカルボキシル基含有架橋セルロース。
(13)特開平10−251402号公報に記載のポリアミノ酸放射線架橋体。
(14)特開2002−179770号公報に記載の架橋ポリアスパラギン酸。
(15)特開2001−120992号公報に記載の多糖類の多価金属イオン架橋体。
【0015】
(16)特開2003−052742号公報、特開2003−082250号公報、特開2003−165883号公報、特開2003−176421号公報、特開2003−183528号公報、特開2003−192732号公報、特開2003−225565号公報、特開2003−238696号公報、特開2003−335970号公報、特開2004−091673号公報、特開2004−121400号公報、特開2004−123835号公報、特開2005−075982号公報、特開2005−095759号公報、特開2005−186015号公報、特開2005−186016号公報、特開2006−110545号公報、特開2006−122737号公報、特開2006−131767号公報、特開2006−160774号公報、特開2006−206777号公報、特開2006−219661号公報、特開2007−069161等に記載された高性能吸水性樹脂{架橋ポリアクリル酸(塩)}。
【0016】
これらのうち、吸収性能の観点から、(1)、(2)、(3)及び(16)が好ましく、さらに好ましくは(1)、(2)及び(16)、特に好ましくは(2)及び(16)である。また、(A)としては、吸収性能の観点から、架橋ポリ(メタ)アクリル酸(塩)が好ましい。
なお、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル及び/又はアクリル」を表し、「酸(塩)」は、「酸及び/又は酸塩」を表す。
【0017】
吸収性樹脂粒子(A)は、表面架橋されていてもよく、表面架橋処理をする場合、表面架橋処理の方法は、公知{例えば、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、特開2005−95759号公報}の方法が適用できる。
【0018】
吸収性樹脂粒子(A)の形状は粒子状であれば制限はないが、吸収性能の観点から、不定形(破砕状)、真球状、板状及び棒状が好ましく、さらに好ましくは不定形(破砕状)、真球状又は板状、特に好ましくは不定形(破砕状)又は真球状である。
【0019】
吸収性樹脂粒子(A)は、公知の方法(ふるい分け、粉砕後ふるい分け等)等により、粒径範囲を調整することができる。
【0020】
吸収性樹脂粒子(A)の重量平均粒子径(μm)は、50〜350であり、吸収させる液の拡散性の観点から、好ましくは150〜340、さらに好ましくは200〜330である。重量平均粒子径が50未満では、液の拡散が小さくなりすぎることによるモレが生じ、350を超えると液の拡散が大きくなりすぎることによる肌のカブレが生じる。
【0021】
重量平均粒子径は、測定試料の粒度分布を測定し、対数確率紙{横軸:粒径、縦軸:累積含有量(重量%)}に、累積含有量と粒子径との関係をプロットし、累積含有量が50重量%に対応する粒子径を求めることにより得られる。粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定され、たとえば、内径150mm、深さ45mmのふるい{目開き:710μm、500μm、300μm、150μm、106μm、45μm、32μm、20μm}を、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
【0022】
次に疎水性物質(B)について説明する。
疎水性物質(B)は、融点40℃〜90℃である炭素数14〜30の1価アルコールである。なお、アルコールとは、「理化学辞典 第4版 44ページ」記載の「鎖式または脂環式の炭化水素の水素原子を水酸基OHで置換したヒドロキシ化合物(したがってフェノールは除く)」を意味する。
【0023】
疎水性物質(B)としては、直鎖状、分岐鎖状及び脂環式の飽和炭化水素基を有する1価アルコール、二重結合及び/又は三重結合を1個以上持った直鎖状及び分岐状の不飽和炭化水素基を有する1価アルコール並びに芳香族炭化水素基を有する1価アルコールが含まれる。吸収性物品の液の拡散性の観点から、直鎖状飽和炭化水素基を有する1価アルコールが好ましい。
液の拡散性の観点から、(B)は1価アルコールであり、2価以上であると液の拡散性が悪化する。
【0024】
炭素数14〜30の直鎖状飽和炭化水素基を有する1価アルコールとして具体的には、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イコシルアルコール、ドコシルアルコール、トリコシルアルコール、テトラコシルアルコール、ペンタコシルアルコール、ヘプタコシルアルコール、オクタコシルアルコール及びトリアンコンタシルアルコールが挙げられる。
【0025】
液の拡散性の観点から(B)の炭素数は14〜30であり、13以下又は31以上であると液の拡散性が悪化する。
【0026】
疎水性物質(B)は融点が40℃〜90℃であり、液の拡散性及び(B)の混合の際のハンドリングの観点から、好ましくは45℃〜85℃、最も好ましくは50℃〜80℃である。融点が40℃未満である、又は90℃を超えると、液の拡散性、(B)の混合の際のハンドリングが悪化する。
【0027】
融点の測定はJIS K0064に準拠して測定される。
【0028】
疎水性物質(B)の含有量(重量%)は、吸収性樹脂粒子(A)の重量に基づいて、0.1〜1.0が好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.8、特に好ましくは0.2〜0.5である。この範囲であると、吸収性物品の液の拡散性がさらに良好となる。
【0029】
本発明の吸収性樹脂組成物は、吸収性樹脂粒子(A)と疎水性物質(B)を混合することで製造でき、液の拡散性の観点から、(A)と(B)を均一混合することが好ましい。
吸収性樹脂粒子(A)と疎水性物質(B)とを混合するのに使用される装置としては、通常の混合機でよく、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等が挙げられる。
【0030】
混合の温度(℃)としては特に限定ないが、20〜120が好ましく、さらに好ましくは30〜100、特に好ましくは40〜90である。この範囲であると、吸収性物品の液の拡散性がさらに良好となる。また、(B)が(A)の表面の存在しやすくなる点からもこの温度範囲が好ましい。
【0031】
吸収性樹脂粒子(A)と疎水性物質(B)とを混合する段階としては、吸収性樹脂粒子(A)を製造する工程のうち、任意の段階{重合工程、細断工程、中和工程、乾燥工程、粉砕工程、表面架橋工程の前後等}において混合することができるが、表面架橋工程(加熱工程)の後が好ましい。
【0032】
本発明の吸収性樹脂組成物は吸収性樹脂粒子(A)及び疎水性物質(B)を含んでいればよいが、液の拡散性の観点から、疎水性物質(B)が吸収性樹脂粒子(A)の表面の一部又は全部に存在することが好ましい。
【0033】
疎水性物質(B)が吸収性樹脂粒子(A)の表面の一部又は全部に存在することは、吸収性樹脂粒子(A)と疎水性物質(B)とを均一混合することにより達成できる。混合の温度としては、前述の温度範囲にすることが好ましい。
【0034】
本発明の吸収性樹脂組成物において、JISK7224に準拠して測定される吸水速度(g/g/s)は、液の拡散性の観点から、2〜25が好ましく、さらに好ましくは2〜21、特に好ましくは2〜17である。吸水速度がこの範囲であると、吸収性物品にした場合の液の拡散が良好となる。
【0035】
吸水速度は、吸収性樹脂粒子(A)の重量平均粒子径の調整及び見かけ密度の調整により可能である。
【0036】
本発明の吸収性樹脂組成物の形状は特に制限が無いが、吸収性能の観点から、粒子状が好ましく、さらに好ましくは不定形(破砕状)、真球状、板状及び棒状が好ましく、次にさらに好ましくは不定形(破砕状)、真球状又は板状、特に好ましくは不定形(破砕状)又は真球状である。
【0037】
また、本発明の吸収性樹脂組成物の重量平均粒子径は50〜350μmが好ましく、吸収させる液の拡散性の観点から、さらに好ましくは150〜340μm、特に好ましくは200〜330μmである。
【0038】
本発明の吸収性樹脂組成物には、他の添加剤{公知(特開2003−225565号及び特開2006−131767号等)の防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤及び有機質繊維状物等}を含むこともでき、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。これらの添加剤を含有させる場合、添加剤の含有量(重量%)は、吸収性樹脂組成物の重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5、特に好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.5である。
【0039】
本発明の吸収性樹脂組成物の保水量(g/g)は、吸収性物品の液の拡散性の観点から、30〜45が好ましく、さらに好ましくは33〜43、特に好ましくは36〜40である。なお、吸収性樹脂組成物の保水量は以下の方法により測定される。
【0040】
<吸収性樹脂組成物の保水量の測定法>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして水切りした。その後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求める。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃とする。 測定試料を用いない以外は上記と同様にして、遠心脱水後のティーバックの重量を測定し(h2)とする。
【0041】
保水量(g/g)=(h1)−(h2)
【0042】
本発明の吸収性樹脂組成物は、各種の吸収体に適用することにより、吸収性物品を製造し得る。吸収体及び吸収性物品は、公知{例えば特開2005−186016号公報}の方法等により製造される。吸収性物品としては、衛生用品{紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、嘔吐物吸収用エチケット袋、紙タオル、パッド(失禁者用パット及び手術用アンダーパット等)及び保温シート等)等}、及び各種の家庭用及び産業用の吸収シート{鮮度保持シート、ドリップ吸収シート等}が含まれる。
本発明の吸収性樹脂組成物は吸収性物品に適用したとき、液の拡散を防ぎ、肌への接触面積が軽減されることから、肌へのストレスが生じにくい。この観点から、本発明の吸収性樹脂組成物は衛生用品に好適であり、さらには紙おむつ、パッド及び生理用ナプキンに好適であり、特には紙おむつ及び生理用ナプキンに好適である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%を示す。なお、吸収性樹脂粒子及び吸収性樹脂組成物の重量平均粒子径、保水量及び吸水速度は前述した方法により測定した。
【0044】
<製造例1>
水溶性ビニルモノマー(a1−1){アクリル酸、三菱化学株式会社製、純度100%}155部(2.15モル部)、架橋剤(b1){ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ダイソ−株式会社製}0.6225部(0.0024モル部)及び脱イオン水340.27部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.62部、2%アスコルビン酸水溶液1.1625部及び2%の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]水溶液2.325部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が90℃に達した後、90±2℃で約5時間重合することにより含水ゲル(1)を得た。
次にこの含水ゲル(1)502.27部をミンチ機(ROYAL社製12VR−400K)で細断しながら48.5%水酸化ナトリウム水溶液128.42部を添加して混合し、細断ゲル(2)を得た。さらに細断ゲル(2)を通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き25及び710μmのふるいを用いて25〜710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の5部をスプレー噴霧しながら加えて混合した後、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、吸収性樹脂粒子(Aa)を得た。
【0045】
<実施例1>
製造例1で得られた吸収性樹脂粒子(Aa)を重量平均粒子径が50μmとなるように粒度調整した吸収性樹脂粒子(Aa1)100部と、疎水性物質(B1)(テトラデシルアルコール 炭素数14 融点42℃)0.1部とを、コニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)を用いて、80℃で均一混合し本発明の吸収性樹脂組成物(1)を得た。
【0046】
<実施例2>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)0.3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(2)を得た。
【0047】
<実施例3>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)1.0部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(3)を得た。
【0048】
<実施例4>
「吸収性樹脂粒子(Aa1)」を「製造例1で得られた吸収性樹脂粒子(Aa)を重量平均粒子径が300μmとなるように粒度調整した吸収性樹脂粒子(Aa2)」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(4)を得た。
【0049】
<実施例5>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)0.3部」に変更したこと以外、実施例4と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(5)を得た。
【0050】
<実施例6>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)1.0部」に変更したこと以外、実施例4と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(6)を得た。
【0051】
<実施例7>
「吸収性樹脂粒子(Aa1)」を「製造例1で得られた吸収性樹脂粒子(Aa)を重量平均粒子径が350μmとなるように粒度調整した吸収性樹脂粒子(Aa3)」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(7)を得た。
【0052】
<実施例8>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)0.3部」に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(8)を得た。
【0053】
<実施例9>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)1.0部」に変更したこと以外、実施例7と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(9)を得た。
【0054】
<実施例10>
「疎水性物質(B1)」を「疎水性物質(B2)(トリアンコンタシルアルコール 炭素数30 融点86℃)」に変更し、均一混合温度を90℃に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の吸収性樹脂組成物(10)を得た。
【0055】
<実施例11>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)0.3部」に変更したこと以外、実施例10と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(11)を得た。
【0056】
<実施例12>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)1.0部」に変更したこと以外、実施例10と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(12)を得た。
【0057】
<実施例13>
「疎水性物質(B1)」を「疎水性物質(B2)(トリアンコンタシルアルコール)」に変更した以外は、実施例4と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(13)を得た。
【0058】
<実施例14>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)0.3部」に変更したこと以外、実施例13と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(14)を得た。
【0059】
<実施例15>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)1.0部」に変更したこと以外、実施例13と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(15)を得た。
【0060】
<実施例16>
「疎水性物質(B1)」を「疎水性物質(B2)(トリアンコンタシルアルコール)」に変更した以外は、実施例7と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(16)を得た。
【0061】
<実施例17>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)0.3部」に変更したこと以外、実施例16と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(17)を得た。
【0062】
<実施例18>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)1.0部」に変更したこと以外、実施例16と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(18)を得た。
【0063】
<製造例2>
アクリル酸145.4部を9.4部の水で希釈し、30〜20℃に冷却しつつ25%の水酸化ナトリウム水溶液242.3部を加えて中和した。この溶液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部、次亜リン酸ソーダ1水和物0.0146部及び過硫酸カリウム0.0727部を添加・溶解し、25℃でバイオミキサー(日本精機株式会社製 ABM−2型)にて2分間撹拌・分散してモノマー水溶液を得た。
【0064】
次いで、撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサン624部を入れ、これに、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社、商品名:プライサーフA210G)1.56部を添加・溶解した後、撹拌しつつ窒素置換し、70℃まで昇温した。そして、70℃に保ったまま、モノマー水溶液を6.6部/分で6分間滴下して75℃で15分間保持した後、残りのモノマー水溶液を6.6部/分で54分間に亘って滴下した。その後、75℃で30分間熟成した後、水をシクロヘキサンとの共沸によって樹脂の含水率が約20%(赤外水分計:FD−100型、Kett社製、180℃、20分で測定)となるまで除去した。30℃に冷却し撹拌を停止すると、含水した吸収性樹脂粒子が沈降したので、デカンテーションにより、吸収性樹脂粒子とシクロヘキサン層とを分離した後、濾別して、80℃で減圧乾燥し、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の5部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、吸収性樹脂粒子(Ab)を得た。
【0065】
<実施例19>
製造例2で得られた吸収性樹脂粒子(Ab)を重量平均粒子径が50μmとなるように粒度調整した吸収性樹脂粒子(Ab1)100部と、疎水性物質(B1)(テトラデシルアルコール 炭素数14 融点42℃)0.1部とを、コニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)を用いて、80℃で均一混合し本発明の吸収性樹脂組成物(19)を得た。
【0066】
<実施例20>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)0.3部」に変更したこと以外、実施例19と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(20)を得た。
【0067】
<実施例21>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)1.0部」に変更したこと以外、実施例19と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(21)を得た。
【0068】
<実施例22>
「吸収性樹脂粒子(Ab1)」を「製造例2で得られた吸収性樹脂粒子(Ab)を重量平均粒子径が300μmとなるように粒度調整した吸収性樹脂粒子(Ab2)」に変更したこと以外は、実施例19と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(22)を得た。
【0069】
<実施例23>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)0.3部」に変更したこと以外、実施例22と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(23)を得た。
【0070】
<実施例24>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)1.0部」に変更したこと以外、実施例22と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(24)を得た。
【0071】
<実施例25>
「吸収性樹脂粒子(Ab1)」を「製造例2で得られた吸収性樹脂粒子(Ab)を重量平均粒子径が350μmとなるように粒度調整した吸収性樹脂粒子(Ab3)」に変更したこと以外は、実施例19と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(25)を得た。
【0072】
<実施例26>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)0.3部」に変更したこと以外、実施例25と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(26)を得た。
【0073】
<実施例27>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)1.0部」に変更したこと以外、実施例25と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(27)を得た。
【0074】
<実施例28>
「疎水性物質(B1)」を「疎水性物質(B2)(トリアンコンタシルアルコール 炭素数30 融点86℃)」に変更した以外は実施例19と同様にして本発明の吸収性樹脂組成物(28)を得た。
【0075】
<実施例29>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)0.3部」に変更したこと以外、実施例28と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(29)を得た。
【0076】
<実施例30>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)1.0部」に変更したこと以外、実施例28と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(30)を得た。
【0077】
<実施例31>
「疎水性物質(B1)」を「疎水性物質(B2)(トリアンコンタシルアルコール)」に変更したこと以外は、実施例22と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(31)を得た。
【0078】
<実施例32>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)0.3部」に変更したこと以外、実施例31と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(32)を得た。
【0079】
<実施例33>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)1.0部」に変更したこと以外、実施例31と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(33)を得た。
【0080】
<実施例34>
「疎水性物質(B1)」を「疎水性物質(B2)(トリアンコンタシルアルコール)」に変更したこと以外は、実施例25と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(16)を得た。
【0081】
<実施例35>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)0.3部」に変更したこと以外、実施例34と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(35)を得た。
【0082】
<実施例36>
「疎水性物質(B2)0.1部」を「疎水性物質(B2)1.0部」に変更したこと以外、実施例34と同様にして、本発明の吸収性樹脂組成物(36)を得た。
【0083】
<比較例1>
疎水性物質(B)を用いないこと以外、実施例4と同様にして、比較用の吸収性樹脂組成物(H1)を得た。
【0084】
<比較例2>
疎水性物質(B1)をトリデシルアルコール(炭素数13 融点38℃)に変更すること以外、実施例4と同様にして、比較用の吸収性樹脂組成物(H2)を得た。
【0085】
<比較例3>
疎水性物質(B1)をドトリアコンタシルアルコール(炭素数32 融点91℃)に変更すること以外、実施例4と同様にして、比較用の吸収性樹脂組成物(H3)を得た。
【0086】
<比較例4>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)0.08部」に変更し、かつ「製造例1で得られた吸収性樹脂粒子(Aa)を重量平均粒子径が360μmとなるように粒度調整すること以外、実施例4と同様にして、比較用の吸収性樹脂組成物(H4)を得た。
【0087】
<比較例5>
「疎水性物質(B1)0.1部」を「疎水性物質(B1)1.2部」に変更し、かつ「製造例1で得られた吸収性樹脂粒子(Aa)を重量平均粒子径が360μmとなるように粒度調整すること以外、実施例4と同様にして、比較用の吸収性樹脂組成物(H5)を得た。
【0088】
実施例及び比較例で得た吸収性樹脂粒子について、重量平均粒子径、保水量及び吸水速度を測定し、表1に示した。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例1〜36及び比較例1〜3で得た吸収性樹脂組成物及び吸収性樹脂粒子を用いて、以下のようにして、吸収性物品(紙おむつ)を調製し、液拡散性を測定した。この結果を表1に示した。
【0091】
<吸収性物品(紙おむつ)の調製>
フラッフパルプ100部と評価試料{吸収性樹脂組成物又は吸収性樹脂粒子}100部とを気流型混合装置{株式会社オーテック社製パッドフォーマー}で混合して、混合物を得た後、この混合物を坪量約500g/mとなるように均一にアクリル板(厚み4mm)上に積層し、5kg/cmの圧力で30秒間プレスし、吸収体(1)を得た。この吸収体(1)を10cm×40cmの長方形に裁断し、各々の上下に吸収体と同じ大きさの吸水紙(坪量15.5g/m、アドバンテック社製、フィルターペーパー2番)を配置し、さらにポリエチレンシート(タマポリ社製ポリエチレンフィルムUB−1)を裏面に、不織布(坪量20g/m、旭化成社製エルタスガード)を表面に配置することにより吸収性物品(紙おむつ)を調製した。吸収性樹脂粒子と繊維の重量比率(吸収性樹脂粒子の重量/繊維の重量)は40/60であった。
【0092】
<液拡散性>
測定試料(吸収性物品)を水平に広げて、この中央部分に外径7.0cm、内径6.0cm、高さ3.8cmのアクリル樹脂の円柱筒を置き、この円柱筒内に食品添加物青色1号にて青く色づけした生理食塩水80mlを注入した。1分経過後、生理食塩水によって測定試料の表面が青く変色した箇所の両端の長さを測定し、これを液拡散性とした。液拡散性が小さいほど、吸収性物品として使用した場合、肌との接触面積が小さく、優れていることを示す。
【0093】
表1から判るように、本発明の吸収性樹脂組成物を使用した吸収性物品は、比較用の吸収性樹脂組成物を使用した吸収性物品に比べ、液の拡散性が小さく優れていた。すなわち、本発明の吸収性樹脂組成物は、吸収性物品に適用したとき、液の拡散性が小さいため、本発明の吸収性樹脂組成物を適用した吸収性物品を使用しても、着用者にカブレ等の心配がないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の吸収性樹脂組成物は、吸収性樹脂組成物と繊維状物とを含有してなる吸収体に適用でき、この吸収体を備えてなる吸収性物品{紙おむつ、生理用ナプキン及び医療用保血剤等}に有用である。トイレ用尿ゲル化剤、青果物用鮮度保持剤、肉類・魚介類用ドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物・土壌用保水剤、結露防止剤、止水剤、パッキング剤及び人工雪等の種々の用途にも使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性樹脂粒子(A)及び疎水性物質(B)を含んでなり、(A)の重量平均粒子径が50〜350μmであり、(B)が融点40℃〜90℃である炭素数14〜30の1価アルコールである吸収性樹脂組成物。
【請求項2】
疎水性物質(B)の含有量が、吸収性樹脂粒子(A)の重量に基づいて、0.1〜1.0重量%である請求項1に記載の吸収性樹脂組成物。
【請求項3】
疎水性物質(B)が吸収性樹脂粒子(A)の表面の一部又は全部に存在する請求項1又は2に記載の吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
JISK7224に準拠して測定される吸水速度が2〜25g/g/sである請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性樹脂組成物と繊維とを含有してなる吸収体。
【請求項6】
請求項5に記載の吸収体を配してなる吸収性物品。



【公開番号】特開2011−207997(P2011−207997A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76624(P2010−76624)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(301023009)サンダイヤポリマー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】