説明

吸収性物品及びその製造方法

【課題】 簡単な工程により水解性を有する吸収性物品を製造する。
【解決手段】 透水性及び水解性を有する表面層11と、水解性を有する裏面層14と、表面層11及び裏面層14の間に設けられる吸収層12とを有する吸収性物品1の製造方法において、表面層11の所定箇所に所定パターンで接着剤16を塗布する塗布工程と、塗布工程により接着剤16が塗布された表面層11の所定箇所に、吸収層12を形成する吸収剤を撒く撒布工程と、撒布工程により吸収剤が撒かれた表面層11に、吸収層12を覆う裏面層14を貼着し成形する貼着成形工程とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレ等に投棄可能な水解性を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、使い捨ておむつ、失禁者用尿取りパッド等の吸収性物品は、透水性を有する層、吸収層、防水層が順に積層されて形成されている。このような構成を有する吸収性物品は、最下層に防水層を備えることから、使用後に水洗トイレ等に投棄することができないという問題があった。
【0003】
そこで、近年、この問題を解決し、水洗トイレ等に投棄することができる吸収性物品が種々開発されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載された吸収性物品は、上述の防水層が水分散性繊維と、水不溶性カルボキシメチルセルロースとを含有する繊維シートから形成することにより、高い水解性と使用に耐えうる表面強度を有する。
【0004】
ところで、上述のような水洗トイレに投棄可能な吸収性物品は、その製造過程において、外材と内材とに分けられる。外材は、当該吸収性物品の形状を形作る材料であり、上述の透水性を有する層、防水層がそれに当たる。また、内材は、当該吸収性物品の外材に包まれる材料であり、上述の吸収層のことである。
【0005】
従来、これらの吸収性物品は、外材及び内材がそれぞれ別々の製造ラインで作られ、その後、外材により内材を包むようにして吸収性物品を製造していた。特に、内材といわれる吸収層は、不織布などの吸収性を有する材料を数枚積層させ、所定の形状にカットする工程を要していた。そのため、このような吸収性物品は、その製造にあたり多くの製造工程を有しており、製造歩留りが悪くなったり、コスト増加の原因となっていた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−78733号公報
【特許文献2】特開平08−19571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な工程により水解性を有する吸収性物品を製造することができる吸収性物品の製造方法、及び、これにより製造された吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のような課題を解決するために、本発明に係る吸収性物品の製造方法は、透水性及び水解性を有する表面層と、水解性を有する裏面層との間に、吸収層が設けられた吸収性物品の製造方法において、上記表面層の所定箇所に所定パターンで接着剤を塗布する塗布工程と、上記塗布工程により上記接着剤が塗布された上記表面層の所定箇所に、上記吸収層を形成する吸収剤を撒く撒布工程と、上記撒布工程により吸収剤が撒かれた上記表面層に、水解性を有し、当該吸収性物品の形状を保持させる形状保持層を上記吸収層に積層させるとともに、上記裏面層と上記表面層とを貼着し成形する貼着成形工程とを備える。
【0009】
また、本発明に係る吸収性物品は、透水性及び水解性を有する表面層と、水解性を有する裏面層との間に、吸収層が設けられた吸収性物品において、上記吸収層は、少なくとも上記表面層の所定箇所に所定のパターンで塗布された接着剤により貼着される、吸収性を有する粉粒体で形成され、上記裏面層と上記吸収層との間には、水解性を有し、当該吸収性物品の形状を保持させる形状保持層が積層されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る製造方法によれば、撒布工程により吸収剤を撒くことにより吸収層を形成することができ、従来のように内材となる吸収層を別ラインで製造する必要がなく、一つのラインで吸収性物品を製造することができる。
【0011】
そして、このような製造工程によって製造された吸収性物品は、簡単な工程により水洗トイレに投棄可能な水解性を有する吸収性物品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る吸収性物品を実施するための形態を図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る吸収性物品は、男性用の尿取りパッド1として使用される。
【0013】
吸収性物品1は、図1に示すように、略矩形状からなる主面部2と、主面部2の略中央部が隆起した隆起部3とから構成されている。また、吸収性物品1は、図2に示すように、装着者と対向する側から、透水性及び水解性を有する表面層11と、吸収層12と、形状を保持するための形状保持層13と、水解性を有する裏面層14とが順に積層されている。吸収性物品1は、主面部2の周縁近傍に、加熱圧着処理が施され、表面層11と裏面層14とを接合し、表面層11と裏面層14とによって吸収層12を挟持するためのシール部4が全周に亘って形成されている。また、吸収性物品1は、主面部2の端部近傍で装着体と対向する側に、該装着体に固定するための粘着層15が設けられている。
【0014】
表面層11は、水解性を有する不織布から形成されている。表面層11は、装着者の肌と直接触れることから、肌触りがよく、通気性、かつ、ある程度の湿潤強度を有するものである。表面層11は、例えば、テクセルフラッシュ(王子製紙株式会社製)が用いられる。
【0015】
なお、本発明における水解性とは、多量の水に浸けることにより絡み合った繊維が解け、分散する性質のことである。本発明においては、水洗トイレ等に投棄した際に繊維が分散する程度を要することである。
【0016】
裏面層14は、表面層11と同様に、水解性を有する不織布から形成されている。裏面層14は、肌触りがよく、通気性、かつ、ある程度の湿潤強度を有する、例えば、テクセルフラッシュ(王子製紙株式会社製)が用いられる。
【0017】
形状保持層13は、裏面層14と同様の大きさに形成され、吸収性物品1の隆起部3の形状を保持するために用いられるシート状物であり、裏面層14の吸収層12側に設けられる層である。形状保持層13は、水溶性、柔軟性を有するポリビニルアルコールフィルムから形成される。形状保持層13は、例えば、トスロン(東セロ株式会社製)が用いられる。形状保持層13は、加熱処理を施すことによって、所定の形状に成形することができる。また、形状保持層13は、加熱とともに、圧着処理を施すことにより、表面層11と裏面層14とをシール部4において接合するバインダの役目を果たす。
【0018】
なお、形状保持層13は、裏面層14と同様の大きさに形成されることから、裏面層14と一体に形成されたものであってもよい。
【0019】
吸収層12は、表面層11と形状保持層13との間に挟まれて形成される層で、粉粒状の吸収剤から形成されている。吸収層12を構成する吸収剤は、吸収性、水分解性を有する粉粒状の高分子ポリマーである、例えば、ポリアクリル酸塩架橋物から形成されている。吸収層12は、表面層11と形状保持層13とが対向する側の面に塗工される接着剤16によって表面層11及び形状保持層13に接着されている。吸収層12は、表面層11及び裏面層14により挟持されるため、シール部4より内側に形成されている。
【0020】
なお、吸収層12を構成する吸収剤は、上述に限らず、高分子ポリマーによる吸収を助けるための粉粒状のパルプ材を混入したものであってもよい。
【0021】
接着剤16は、表面層11及び形状保持層13に、例えば、螺旋状、格子状などの所定のパターンで、所定間隔を空けて塗工され、吸収剤と接着する。接着剤16は、表面層11と裏面層14とが接合された際に、それぞれ表面層11と形状保持層13とに塗工される接着剤16が相対向する位置になるように、それぞれ同様のパターンに塗工される。これにより、接着剤16は、粉粒状の吸収剤が、重力や装着者の使用状態によって一方の主面端部に偏らないようにするための障壁の役割を果たす。
【0022】
なお、接着剤16は、その塗工される量及び撒布される吸収剤の量によって、表面層11に塗工される接着剤16と、形状保持層13に塗工される接着剤16とが接合されるようにし、表面層11と形状保持層13とを接着するようにしてもよい。このようにすると、接着剤16は、表面層11と形状保持層13とを接合するとともに、吸収層12の仕切り壁の役割を果たす。
【0023】
また、接着剤16は、表面層11に塗工される位置と、形状保持層13に塗工される位置をずらすことにより、吸収層12内の障壁の数を増やすようにしてもよい。
【0024】
さらに、接着剤16は、上述のように表面層11及び形状保持層13の両面に塗工することに限らず、装着者の排液を素早く吸い取り吸収層12に吸収させる目的から表面層12に塗工するようにしてもよい。
【0025】
粘着層15は、裏面層14の装着体側に設けられ、装着体に係止させるための感圧接着剤である。粘着層15は、図1に示すように、主面部2の上下2箇所、シール部4の内側に帯状に形成されている。粘着層15は、吸収性物品1の装着体への係止と、使用後などの際に装着体から剥がすことができる程度の粘着性を有するものである。粘着層15は、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体からなるデュロタックMQ967(日本エヌエスシー株式会社製)が用いられる。また、粘着層15は、その表面を使用直前まで保護する剥離紙(不図示)が設けられる。
【0026】
なお、粘着層15は、上述のように主面部2の上下2箇所に帯状に設けられることに限らず、例えば、主面部2全体に所定パターンに設けるようにしてもよい。
【0027】
以上のように構成された吸収性物品1は、隆起部3に陰茎が位置するように、装着体に粘着層15を介して係止される。使用後、装着者は、吸収性物品1を装着体から剥がし取り、水洗トイレ等に投棄する。この投棄された吸収性物品1は、それぞれの層が水解性や水溶性を有することから、多量の水に曝されることにより、表面層11、裏面層14、吸収層12がそれぞれ分解し、形状保持層13、接着剤16が溶解する。
【0028】
なお、吸収性物品1のシール部4は、上述のように、主面部2の周縁近傍のみに設けることに限らず、隆起部3との境界に設けるようにしてもよい。このようにすることにより、隆起部3に挟持される吸収層12の吸収剤のよれを防止することができる。
【0029】
また、吸収性物品1は、形状保持層13が設けられることについて述べたが、これに限らず、形状保持層13を設けない構成としてもよい。その際、吸収性物品は、形状保持層13の代わりに、表面層11と裏面層14とをシール部4において接合するための接着剤を要する。
【0030】
次に、本発明に係る吸収性物品の製造装置20について説明をする。吸収性物品1を製造する製造装置20は、図3に示すように、表面層11、形状保持層13、裏面層14となる基材シート11A、13A、14Aを巻出す巻出し部21、22、23と、基材シート11A、13Aに接着剤16を塗工する接着剤コータ24、25と、基材シート11Aに吸収剤を撒く撒布部26と、それぞれの基材シート11A、13A、14Aを貼着させ、所定の大きさにカットする貼着・カット部27と、粘着層15を設ける粘着層コータ28と、隆起部3を形成する成形部29とから構成されている。
【0031】
巻出し部21は、回転軸を有し、ロール状に巻回された吸収性物品1の表面層11となる基材シート11Aがこの回転軸に設置され、回転軸と接続された駆動モータを制御することによって、基材シート11Aの巻出し速度、巻出し量等を制御することができる。同様に、巻出し部22には、ロール状に巻回された形状保持層13となる基材シート13Aが設置され、巻出し部23には、裏面層14となる基材シート14Aが設置されている。
【0032】
接着剤コータ24は、巻出し部21の後段に設けられ、所定パターンに接着剤16を基材シート11Aの所定箇所に塗布する。接着剤コータ24は、既存の塗布手段を用いるもので、例えば、タンクに貯留された接着剤16をポンプによってノズルから基材シート11Aに噴きつけるものである。接着剤コータ25は、接着剤コータ24と同様に、巻出し部22の後段に設けられ、所定パターンに接着剤16を基材シート13Aの所定箇所に塗布する。
【0033】
なお、接着剤コータ24、25は、上述に限らず、例えば転写ロールを用いて接着剤16をそれぞれの基材シートに転写させるようなものであってもよい。
【0034】
撒布部26は、接着剤コータ24の後段に設けられ、接着剤16が塗布された基材シート11Aの所定箇所に所定量の吸収層12となる吸収剤が撒かれる。撒布部26は、例えば、タンクに貯留された吸収剤をタンク底部に設けられる開閉蓋を開閉させ、自重により落下させるものである。製造装置20は、この撒布部26で撒布される吸収剤の量を調整することにより、吸収量の異なる吸収性物品を製造することができる。
【0035】
なお、撒布部26は、上述に限らず、粉粒状の吸収剤を所定箇所に所定量撒くことができるものであればいかなるものであってもよい。
【0036】
貼着・カット部27は、撒布部26により吸収剤が撒かれた基材シート11Aに、接着剤コータ25において接着剤16が塗布された基材シート13Aと、裏面層14となる基材シート14Aとが被覆され、シール部4において基材シート11Aと基材シート14Aとを接合する。その後、貼着・カット部27は、シール部4の所定間隔離間させた位置で、吸収性物品1の主面部2の周縁を形成するように基材シート11A、13A、14Aを切断する。
【0037】
なお、貼着・カット部27は、上述のように、基材シート11Aと基材シート14Aとを接合した後に、所定の形状に切断するものに限らず、接合と切断を同時に行うようなものであってもよい。
【0038】
粘着層コータ28は、貼着・カット部27の後段に設けられ、所定箇所に所定パターンの粘着層15が塗工される。粘着層コータ28は、既存の塗布手段を用いるもので、例えば、タンクに貯留された粘着剤をポンプによってノズルから裏面層14の所定箇所に塗工するものである。また、粘着層コータ28は、粘着層15が形成された後に、粘着層15を保護する剥離紙が貼着される。
【0039】
成形部29は、主面部2の略中心に、隆起部3を形成する。成形部29は、加熱手段を有し、加熱された隆起部3の型に吸収性物品を嵌めることにより、隆起部3を形成する。
【0040】
以上のように構成された吸収性物品の製造装置20は、接着剤コータ24により表面層11の所定箇所に所定パターンで接着剤16を塗布し、接着剤コータ25により形状保持層13の所定箇所に所定パターンで接着剤16を塗布する。次に、製造装置20は、この接着剤16が塗布された表面層11の所定箇所に、撒布部26により、吸収剤を撒く。次に、製造装置20は、貼着・カット部27により、吸収剤が撒布された表面層11に形状保持層13と裏面層14とを積層させ、シール部4において表面層11と裏面層14とを接合するとともに、所定の形状に切断する。次に、製造装置20は、粘着層コータ28により、裏面層14の主面部2に粘着層15が形成され、成形部29により隆起部3が形成され、吸収性物品1を完成させる。
【0041】
このような製造装置20は、従来のように内材となる吸収層12を別ラインで製造する必要がなく、一つのラインで吸収性物品1を製造することができる。
【0042】
また、このような製造装置20にて製造された吸収性物品1は、簡単な工程により水洗トイレに投棄可能な水解性を有する吸収性物品を製造することができる。
【0043】
また、吸収性物品1は、吸収層12として撒布する吸収剤の量を調整することによって、想定する最大吸収量の調整を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の吸収性物品の斜視図である。
【図2】本発明の吸収性物品の図1のx−x´線における断面図である。
【図3】本発明の吸収性物品の製造工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 吸収性物品、2 主面部、3 隆起部、4 シール部、11 表面層、11a 孔、11A,13A,14A 基材シート、12 吸収層、13 形状保持層、14 裏面層、15 粘着層、16 接着剤、20 製造装置、21,22,23 巻出し部、24,25 接着剤コータ、26 撒布部、27 貼着・カット部、28 粘着層コータ、29 成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性及び水解性を有する表面層と、水解性を有する裏面層との間に、吸収層が設けられた吸収性物品の製造方法において、
上記表面層の所定箇所に所定パターンで接着剤を塗布する塗布工程と、
上記塗布工程により上記接着剤が塗布された上記表面層の所定箇所に、上記吸収層を形成する吸収剤を撒く撒布工程と、
上記撒布工程により吸収剤が撒かれた上記表面層に、水解性を有し、当該吸収性物品の形状を保持させる形状保持層を上記吸収層に積層させるとともに、上記裏面層と上記表面層とを貼着し成形する貼着成形工程とを備える
吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
透水性及び水解性を有する表面層と、水解性を有する裏面層との間に、吸収層が設けられた吸収性物品において、
上記吸収層は、少なくとも上記表面層の所定箇所に所定のパターンで塗布された接着剤により貼着される、吸収性を有する粉粒体で形成され、
上記裏面層と上記吸収層との間には、水解性を有し、当該吸収性物品の形状を保持させる形状保持層が積層されていることを
特徴とする吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−202895(P2007−202895A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27007(P2006−27007)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(391027424)株式会社フクヨー (11)
【Fターム(参考)】