説明

吸収性物品用の表面シート

【課題】クッション性及び液の引き込み性に優れた、吸収性物品用の表面シートを提供すること。
【解決手段】吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シート10であって、互いに積層された第1不織布1及び第2不織布2が部分的に熱融着されて熱融着部4が形成されており、第1不織布1は、熱融着部4以外の部分が、着用者の肌側に突出して多数の凸部5を形成しており、前記凸部5及び熱融着部4は、交互に且つ一列をなすように配置され且つ該列が多列に配置されており、前記凸部5の内部に、長繊維の集合体3が配されており、該集合体3を構成する多数本の長繊維31が、該凸部の突出方向に凸の曲線状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品の肌当接面に好適に用いられる表面シート、又は積層不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の表面シートとして、着用者の肌に当接される面に凹凸を形成したものが汎用されている。凹凸を有する表面シートによれば、凹凸の存在により着用者の肌との接触面積が低減するので、べたつき感やムレの低減を図ることができる。
表面に凹凸を有する表面シートとして、例えば、特許文献1には、第1不織布及び第2不織布が部分的に熱融着されて熱融着部が形成され、第1不織布は、熱融着部以外の部分が、着用者の肌側に向けて突出した凸部を形成しており、該凸部の内部に短繊維が充填されている表面シートが提案されている。
また、特許文献2には、透水性の基材の片面上に、ループ状の連続フィラメント層を形成した表面シートが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−115974
【特許文献2】特開2002−065736
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の表面シートは、凸部の内部に充填される繊維が、短繊維であり、凸部の圧縮反発性に劣り、クッション性の点で改善の余地があった。
特許文献2記載の表面シートは、着用者の肌に直接当接する面が、繊維同士の交絡の少ない連続フィラメント層から形成されているため、該フィラメント層に、繊維の配向方向と直交する方向に力が加わると繊維がばらけ、更に撚られて毛玉状になり易い。その毛玉状となった部分は、液を保持し易いため、表面シートの表面近傍に液が残って、吸液後の外観が悪化したり、べたつき等の原因となる場合があった。また、フィラメント層とその下の基材層との間に高さのある空洞を有するため、液の引き込み性にも劣る。
【0005】
従って、本発明の目的は、クッション性及び液の引き込み性に優れた、吸収性物品用の表面シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シートであって、互いに積層された第1不織布及び第2不織布が部分的に熱融着されて熱融着部が形成されており、第1不織布は、前記熱融着部以外の部分が、着用者の肌側に突出して多数の凸部を形成しており、前記凸部及び熱融着部は、交互に且つ一列をなすように配置され且つ該列が多列に配置されており、前記凸部の内部に、長繊維の集合体が配されており、該集合体を構成する多数本の長繊維が、該凸部の突出方向に凸の曲線状をなしている表面シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品用の表面シートは、クッション性及び液の引き込み性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の吸収性物品用の表面シートの第1実施形態を示す斜視図である。第1実施形態の表面シート10は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッドなどの吸収性物品の肌当接面に用いられる。
【0009】
表面シート10は、互いに積層された第1不織布1及び第2不織布2と、これら両不織布1,2間に配された長繊維の集合体3からなる。第1不織布1は、表面シート10における、着用者の肌側に向けられる面(肌当接面)を形成しており、第2不織布2は、表面シート10における、吸収体側に向けられる面(非肌当接面)を形成している。
【0010】
第1不織布1と第2不織布2とは部分的に熱融着されており、それにより、表面シート10に多数の熱融着部4が形成されている。第1不織布1は、前記熱融着部4以外の部分が、着用者の肌側に向けて突出して、多数の凸部5を形成している。
【0011】
凸部5及び熱融着部4は、図1に示すように、表面シート10の面と平行な一方向であるX方向に交互に且つ一列をなすように配置されており、そのような列が、前記X方向に直交するY方向に多列に形成されている。互いに隣接する列における凸部5及び熱融着部4は、それぞれ、X方向にずれて配置されており、より具体的には、半ピッチずれて配置されている。
【0012】
尚、本実施形態の表面シート10におけるX方向は、表面シート10の製造工程における第1不織布1、第2不織布2及び長繊維の集合体3それぞれの帯状の原反1A〜3A(図3参照)の流れ方向と一致し、また表面シート10が吸収性物品に組み込まれたときの該吸収性物品の長手方向又はそれと直交する方向と一致する。また、本実施形態の表面シート10におけるX方向は、第1不織布1、第2不織布2及び長繊維の集合体3それぞれにおける繊維の配向方向とも一致している。また、表面シート10は、全体として見ると、その第2不織布2側の面がほぼ平坦であり、第1不織布1側の面に起伏の大きな凹凸が形成されている。
【0013】
表面シート10における凸部5の内部には、長繊維の集合体3が配されている。長繊維の集合体3は、表面シート10の製造時に、長手方向に長繊維が配向している帯状原反3Aとして、第1不織布の帯状原反1Aと第2不織布2の帯状原反2Aとの間に導入されており、該集合体3を構成する長繊維31は、表面シート10の平面視において、X方向に配向している。長繊維の集合体3を構成する個々の長繊維31は、X方向における表面シート10の全長に亘っており、表面シート10のX方向において、複数個の熱融着部4に亘る長さを有している。長繊維31は、X方向において、5個以上の熱融着部4に亘る長さを有していることが好ましく、10個以上の熱融着部4に亘る長さを有していることがより好ましい。
【0014】
本発明において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、表面シート10における、凸部5及び熱融着部4の列が延びる方向(X方向)の全長が100mm未満である場合には、第1不織布1と第2不織布2との間に配された繊維の殆ど、例えば90%以上が表面シートの全長にわたって延びている場合には、それらの繊維は長繊維であるとする。本発明で用いられる長繊維は一般に連続フィラメントと呼ばれるものである。また、連続フィラメントの束は一般にトウと呼ばれている。従って、本発明における長繊維とは、連続フィラメントを含む概念のものである。また、本発明における長繊維には、第2実施形態の表面シート10’におけるように、長繊維の集合体3が存在しないように、熱融着部4の近傍において切断されているものも含まれる。
【0015】
長繊維の集合体3は、X方向における熱融着部4において、第1不織布1と第2不織布2との間に固定されている。長繊維の集合体3の両端部の固定は、該集合体3を介在させた状態で、第1不織布1と第2不織布2とを熱融着させることにより行われている。第1不織布1と第2不織布2とが熱融着した熱融着部4においては、第1不織布1の構成繊維の構成成分と第2不織布2の構成繊維の構成成分とが直接接触して熱融着していることが好ましいが、長繊維の集合体3の構成繊維同士が熱融着しており、それに、第1不織布1の構成繊維と第2不織布2の構成繊維とがそれぞれ熱融着していても良い。
【0016】
長繊維の集合体3は、表面シート10のX方向において隣接する熱融着部4,4間においては、図2に示すように、第1不織布1及び第2不織布2と接合されておらず、集合体3を構成する長繊維31同士も結合されていない。集合体3を構成する多数の長繊維31は、凸部5の外表面を形成する第1不織布1と平坦状の第2不織布2との間に形成される空間内の略全体に拡がって存在している。
凸部5の内部に位置する長繊維31は、図2に示すように、凸部5の突出方向(図2における上方)に凸の曲線状をなしており、より具体的には、図2に示すように、Y方向から見たときに、円弧状の頂部を有する山型の形状をなしている。曲線状をなす長繊維31は、X方向において、熱融着部4,4間の略中央部に第2不織布2から最も離れた部分を有し、該部分から、両熱融着部4,4それぞれに向かうにしたがって、第2不織布2との距離が漸減している。図2に示すように、曲線状をなす長繊維31の中でも、第1不織布1の近傍に配された長繊維31aは、凸の程度が大きく、第2不織布2の近傍に配された長繊維31bは、凸の程度が小さくなっており、その間に位置する長繊維は、第1不織布1側から第2不織布側に向かうに連れて凸の程度が小さくなっている。
【0017】
第1及び第2不織布としては、各種公知の不織布を用いることができ、例えば、カード法等により得た繊維ウエブにエアースルー法で繊維同士の熱融着点を形成したエアースルー不織布、カード法等により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維同士の熱融着点を形成したヒートロール不織布、ヒートエンボス不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。本実施形態の表面シート10においては、実質的に伸縮しない不織布を、第1及び第2不織布として用いている。
【0018】
第1不織布1としては、肌触りの観点から、前記エアースルー不織布や、ヒートエンボス不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布等が特に好ましく用いられる。
第2不織布としては繊維密度を高め第1不織布1や長繊維の集合体3から液を移動し易くする観点から、前記ヒートロール不織布やヒートエンボス不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布等が特に好ましく用いられる。
【0019】
第1及び第2不織布の構成繊維としては、熱融着性繊維、特に熱可塑性ポリマー材料からなる繊維が好適に用いられる。熱可塑性ポリマー材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。またこれらの熱可塑性ポリマー材料の組合せからなる芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維も好適に用いることもできる。第1及び第2不織布は、熱融着性繊維以外に、熱融着性を有しない繊維を構成繊維の一部として含んでいても良い。
【0020】
第1不織布1は、肌に当たる面を柔軟にする観点から、表面が滑らかであることが望ましく、なるべく繊度の低い繊維で構成されることが好ましい。一方で、第1不織布1は、液を素早く獲得し経血や尿等、排泄物の漏れを防止する観点から、その繊維密度が、長繊維31から成る層に比べ粗であることが好ましく、従って、その構成繊維の繊度が、第1及び第2不織布1,2間に介在させる長繊維31のそれよりも、大きいことが好ましい。
上記の観点から、第1不織布の構成繊維の繊度は、1.0〜8.0dtexであることが好ましく、より低い繊度でより嵩が高く繊維密度を低く出来るという観点から、より望ましくは、捲縮した繊維で形成されることが好ましい。坪量は5〜50g/m2であることが好ましい。
長繊維31の繊度は、0.3〜3.0dtexであることが好ましい。第2不織布の構成繊維の繊度は、1.0〜5.0dtexであることが好ましく、坪量は5〜30g/m2であることが好ましい。
【0021】
長繊維の集合体3を構成する長繊維31としては、熱融着性繊維及び非熱融着性繊維の何れをも用いることができるが、本実施形態の表面シート10のように、熱融着部における第1及び第2不織布間に長繊維31を介在させる場合、熱融着部の接合強度を高める観点から、熱融着可能な繊維であることが好ましい。
ここでいう、熱融着可能な繊維は、少なくとも表面が、加熱により溶融又は軟化し、溶融又は軟化した成分により、第1不織布及び/又は第2不織布の構成繊維と結合し得るものである。
熱融着可能な繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなる繊維が好適に用いられる。熱可塑性ポリマー材料としては、セルロースアセテートや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。またこれらの熱可塑性ポリマー材料の組合せからなる芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維も好適に用いることもできる。
長繊維の集合体3は、熱融着可能な繊維を、該集合体3中、30〜100重量%含むことが好ましく、50〜100重量%含むことがより好ましい。
【0022】
また、長繊維の集合体3は、潜在的に細かく捲縮した長繊維31を主体として構成されていることが好ましい。捲縮した長繊維31により、凸部5の内部に、長繊維31を中実な状態に存在させることができ、クッション性及び液の引き込み性を一層向上させることができる。捲縮した長繊維31を製造設備中で、捲縮が伸びきる程度にまで引張した後、第1不織布1および第2不織布2に熱融着することで、凸部5の内部において、潜在的な捲縮により、伸びきった長繊維31が収縮し、長繊維の集合体3が、第1不織布1と第2不織布2の間を充填する効果により、中実な凸部5が得られる。
【0023】
長繊維の集合体3は、親水性の長繊維を主体として構成されていることが好ましい。
親水性の長繊維としては、本来的に親水性を有する繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された繊維の双方が包含される。好ましくは、本来的に親水性を有する長繊維であり、例えば、セルロースアセテートやレーヨン、リヨセル、テンセルなどが挙げられる。特に好ましいのは、親水性であり且つ熱融着性である、セルロースアセテートである。セルロースアセテートとしては、セルローストリアセテート及び/又はセルロースジアセテートを用いることが好ましい。
長繊維の集合体3は、親水性の長繊維を、該集合体3中、30〜100重量%含むことが好ましく、50〜100重量%含むことがより好ましい。
【0024】
表面シート10の凸部部分(凸部5を有する部分)においては、第1不織布1、長繊維の集合体3、第2不織布2の順に、親水化度が高くなっていることが好ましい。親水化度の勾配を付けることで、尿や経血等の排泄液を、凸部5表面から長繊維の集合体3にスムーズに移行させ、更にそれを第2不織布2にスムーズに移行させることができる。
また、表面シート10の凸部部分(凸部5を有する部分)においては、第1不織布1、長繊維の集合体3、第2不織布2の順に、繊維密度が高くなっていることが好ましい。繊維密度の勾配を付けることで、尿や経血等の排泄液を、凸部5表面から長繊維の集合体3にスムーズに移行させ、更にそれを第2不織布2にスムーズに移行させることができる。
【0025】
本実施形態の表面シート10によれば、凸部5の内部に、凸部5の突出方向に凸の曲線状をなす長繊維31が配されているため、厚み方向の加圧に対して、凸部5が優れたクッション性を示し、吸収性物品の使用中の肌の動きに追従して凸部が圧縮及び回復を繰り返す。そのため、肌に刺激を与え難く、肌に当たる感触が柔らかい。
また、凸部5及び熱融着部4が、上述した態様に配置されているため、凸部の頂部が一方向に連続的に形成されている従来のものに比べて、表面を液が流れにくく、液漏れ防止に役立つと共に、スポット吸収性にも優れている。また、表面シートが面方向の柔軟性に優れ、X方向及びY方向のいずれにも柔軟に曲がるため、着用者とのフィット性が向上し、また、柔軟性が要求される物品や部位等にも使用可能である。
【0026】
また、長繊維の集合体を構成する長繊維が一方向(X方向)に配向しているため、凸部5の中央部部付近から両熱融着部4,4それぞれに向かって毛管力が高まっており、そのため、第1不織布1を透過した液は、長繊維の集合体3の長繊維の配向方向に沿ってスムーズに流れ、第2不織布2へとスムーズに移行される。そのため、スポット吸収性に一層優れている。
【0027】
上述した効果の一又は二以上を一層確実に発現させる観点から、表面シート10は以下の構成を有することが好ましい。
表面シート10の凸部5を有する部分の厚みH(図2参照)は0.6mm以上、特に1.0mm以上であることが好ましく、熱融着部4の厚みh(図2参照)は0.3mm以下、特に0.2mm以下であることが好ましく、これらの厚みの比(H/h)は少なくとも2以上、特に3以上であることが好ましい。厚みHの上限、比(H/h)の上限、厚みhの下限は、特にないが、厚みHは3.0mm以下、比(H/h)は30以下、厚みhは0.1mm以上とすることが好ましい。
また、表面シート10の100cm2当たりの凸部5の個数は250個以上、特に500個以上であることが好ましい。
【0028】
凸部5のX方向の底部寸法A(図1参照)は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが好ましい。凸部5のY方向の底部寸法B(図1参照)は1.0〜10mm、特に2.0〜7.0mmであることが好ましい。
X方向の底部寸法AとY方向の底部寸法Bとの比(底部寸法A:底部寸法B)は1:1〜1:10、特に1:2〜2:5であることが好ましい。凸部5の底部面積(底部寸法A×底部寸法B)は0.5〜50mm2、特に2〜20mm2であることが好ましい。
熱融着部4は、X方向の寸法C(図1参照)が0.1〜2mm、特に0.2〜1.0mmであることが好ましく、Y方向の寸法D(図1参照)が0.2〜5.0mm、特に0.5〜3.0mmであることが好ましい。
【0029】
次に、上述した表面シート10の好ましい製造方法を図3及び図4を参照して説明する。 先ず、図3に示すように、連続搬送される第1不織布1の帯状の原反1Aに、長繊維の集合体31の帯状の原反3Aを合流させ、これらを、周面が凹凸形状となっている第1のロール11と第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロール12との噛み合わせ部に噛み込ませ、第1不織布1の原反1Aを凹凸賦形する。
【0030】
図4には、第1のロール11の要部拡大図が示されている。第1のロール11は、所定の歯幅を有する平歯車11a,11b,・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯幅は、表面シート10の凸部5におけるX方向の寸法を決定する。隣り合う歯車は、その歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1のロール11は、その周面が凹凸形状となっている。
【0031】
第1のロール11における各歯車の歯溝部には吸引孔13が形成されている。この歯溝部は、第1のロール11の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔13は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1のロールと第2のロールとの噛み合い部から第2不織布2との合流部までの間で吸引が行われる様に制御されている。従って、第1のロール11と第2のロール12との噛み合いによって凹凸賦形された第1不織布1は、吸引孔13による吸引力によって第1のロール周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。この場合、図4に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、第1不織布1に無理な伸長力や、ロールの凹凸噛み合いによる切断効果を加えることなく第1不織布1を第1のロール11の周面に密着させられる。
【0032】
そして、図3に示すように、第1不織布1の原反1Aを第1のロール11の周面に引き続き吸引保持した状態下に、第2不織布2の帯状の原反2Aを重ね合わせ、その重ね合わせたものを第1のロール11とアンビルロール15との間で挟圧する。このとき、第1のロール11とアンビルロール15の両方又はアンビルロール15のみを所定温度に加熱しておく。これによって、第1のロール11における凸部上、つまり各歯車の歯の上に位置する、第1不織布1の原反1A、長繊維の集合体3の帯状の原反3A及び第2不織布2の原反2Aが熱融着によって接合される。
【0033】
長繊維の集合体の帯状の原反3Aとしては、捲縮した長繊維を構成繊維とし、該長繊維が長手方向に配向したものを用いる。そして、原反3Aを、第1のロール11と第2のロール12との噛み合い部に導入する際には、該原反3Aを、その長手方向に大きく伸長させておき、その状態を維持したまま、第1のロール11とアンビルロール15との間で、第1不織布1と第2不織布2との熱融着による接合を行う。第1不織布1と第2不織布2との間に、伸長状態で導入された長繊維の集合体3の原反3Aは、第1のロール11とアンビルロール15との間を通過した後、伸長状態を緩和され、それにより該原反3を構成する長繊維が収縮して、凸部5内に存する長繊維の嵩が増大する。これによって、図2に示すように、凸部5内が長繊維の集合体3によって満たされた表面シート10が得られる。
第1不織布1と第2不織布2との間に長繊維を固定する際における、長繊維31又はその集合体の原反3Aの伸長率は、105〜130%、特に110〜120%であることが好ましい。
ここで、長繊維又はその集合体の原反3Aの伸長率は、下記式で求められる。
原反3Aの伸長率(%)=L2/L1×100
(但し、式中L1は原反を伸長する以前の長さ、製造設備中原反を伸長する装置以前の工程から切り出した単位重量あたりの長繊維集合体の長さ、L2は製造設備中原反を伸長する装置以降の工程から切り出した単位重量あたりの長繊維集合体の長さ)。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態の表面シート10’について図5を参照して説明する。第2実施形態の表面シート10’については、上述した第1実施形態の表面シート10との相違点を特に説明し、同様の点について同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点については、上述した表面シート10に関する説明が適宜適用される。
第2実施形態の表面シート10’においては、各凸部5の内部に配されている長繊維の集合体3’が、熱融着部4に実質的に存在していない。
ここで、「実質的に存在していない」とは、表面シート10’の製造工程において、長繊維の集合体3’を、表面シートの凸部部分のみに配するように工夫しても、少量の長繊維が熱融着部4に配されてしまうことがあることを考慮し、意図せずに、そのような少量の長繊維が存在する場合を許容する趣旨である。
第2実施形態の表面シート10’は、その製造工程において、長繊維の集合体3’の帯状の原反中に、該長繊維を切断した箇所を所定のパターンで形成しておき、それらの箇所において、第1不織布1の原反と第2不織布2の原反とを接合すること等により製造することができる。
第2実施形態の表面シート10’によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
また、第2実施形態の表面シート10’によれば、第1不織布1と第2不織布2との間が直接的に熱融着により接合されているので、長繊維として、熱融着性のない繊維を用いても、第1不織布1と第2不織布2との間に充分な接合強度を有する表面シートを得ることができる。
【0035】
上述した表面シート10,10’は、上述したように、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドなどの吸収性物品の表面シートとして好ましく用いられる。吸収性物品は一般に液透過性の表面シート、液不透過性又は液難透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有して構成されている。
【0036】
以上、本発明の表面シートの実施形態について説明したが、本発明は、上記の各実施形態に制限されず、適宜変更可能である。例えば、図1に示した表面シートの凸部5は、四角錐台形状のものであるが、凸部5は、半球状のもの等、他の形状であっても良い。また、互いに隣接する列における凸部5及び熱融着部4が、それぞれ、X方向にずれる程度は、1/2ピッチに代えて、1/3ピッチ、1/4ピッチ等、任意の大きさとすることができる。また、長繊維の集合体3の長繊維の配向方向は、表面シート10のY方向であっても良く、また、X方向に配向した長繊維とY方向に配向した長繊維とを混在させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品用の表面シートの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す表面シートのX方向に沿う断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】図3は、図1に示す表面シートの製造方法の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、図2における第1のロールの要部拡大図である。
【図5】図5は、本発明の吸収性物品用の表面シートの第2実施形態を示す断面図(図2相当図)である。
【符号の説明】
【0038】
10 表面シート
1 第1不織布
2 第2不織布
3 長繊維の集合体
31 長繊維
4 熱融着部
5 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品の肌当接面に用いられる表面シートであって、
互いに積層された第1不織布及び第2不織布が部分的に熱融着されて熱融着部が形成されており、
第1不織布は、前記熱融着部以外の部分が、着用者の肌側に突出して多数の凸部を形成しており
前記凸部及び熱融着部は、交互に且つ一列をなすように配置され且つ該列が多列に配置されており、
前記凸部の内部に、長繊維の集合体が配されており、該集合体を構成する多数本の長繊維が、該凸部の突出方向に凸の曲線状をなしている、表面シート。
【請求項2】
前記長繊維の集合体は、熱融着可能な繊維を主体として構成されている、請求項1記載の表面シート。
【請求項3】
前記長繊維の集合体は、前記熱融着部に実質的に存在しない請求項1記載の表面シート。
【請求項4】
前記長繊維の集合体は、波状に捲縮した長繊維を主体として構成されている請求項1〜3の何れか記載の表面シート。
【請求項5】
前記長繊維は、第1不織布及び第2不織布間に伸長状態で導入された後の伸長状態の緩和により、前記凸部の突出方向に凸の曲線状をなしている請求項4記載の表面シート。
【請求項6】
前記長繊維の集合体は、親水性の長繊維を主体として構成されている請求項1〜5の何れかに記載の表面シート。
【請求項7】
第1不織布、長繊維及び第1不織布の順に、親水化度が高くなっている請求項6記載の表面シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161526(P2008−161526A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355843(P2006−355843)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】