説明

吸収性物品

【課題】吸収性物品の取り替え時期の判断が容易に行え、吸収状態の確認するときの不快
感を軽減することができる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明は、着色が施された層を備えた吸収性物品である。体液を吸収したと
きに肌当接面側からみた該体液の吸収部分における前記着色の視認性が該体液の吸収前よ
りも高められるように設けられている。前記着色層よりも肌側の全層の吸液前後における明度LBの差が7〜30であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリモノシートや失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
オリモノや尿等の排泄物(体液)が透明又は淡色の場合には、吸収性物品は、体液がど
の程度吸収されたか、或いは吸収された体液がどの程度広がっているかを吸収面側から視
認することは困難であった。このため、新しい吸収性物品への取り替えの判断がしづらか
った。その一方で、体液の有色状態やかたまり状態によっては、吸収状態が汚く見えるた
め、使用者に不快感を与えていた。
【0003】
下記特許文献1には、吸収性物品のバックシートに模様を印刷したものが提案されてい
るが、この吸収性物品は、その模様によって単に使用時の不快感を和らげるものに留まっ
ている。また、下記特許文献2には、吸収性物品の表面シートと吸収コアとの間に所定の
色差が生じるように着色したものが提案されているが、この吸収性物品も、その色差によ
って表面シート側から吸収コアの位置を確認し易くしたり、美観を向上させるに留まって
いる。下記特許文献3には、表面シートに所定の着色を施して、製品全体を着色した吸収
性物品が提案されているが、この吸収性物品ではおりものの広がりを逆に見えにくくする
ことに主眼が置かれている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/006818号パンフレット
【特許文献2】特開平11−299825号公報
【特許文献3】特開2004−130056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、吸収性物品の取り替えの
判断が容易に行え、また、体液吸収に伴う汚れによる不快感を軽減することができる吸収
性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接層及び着色層を有し、体液を吸収したときに肌当接面側からみた前記
着色層の視認性が体液の吸収前よりも高まるように設けられている吸収性物品を提供する
ことにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品によれば、体液吸収による液の広がりが容易に認識できるため、そ
の取り替えの判断が容易になる。また、着色を有する層により体液の色を目立たなくする
ことによって、体液吸収に伴う汚れによる不快感を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明
する。
【0009】
図1は、本発明の吸収性物品をショーツ等の下着に取り付けられて使用されるパンティ
ライナーに適用した第1実施形態を模式的に示したものである。図1において、符号1は
吸収性物品を示している。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の吸収性物品1は、体液を肌当接面20から透過し、吸
収して保持する肌当接層2と、吸収した体液の漏れを防ぐ防漏層3とを備えている。本実
施形態の吸収性物品1では、防漏層3が、後述するように着色が施された着色層である。
【0011】
吸収性物品1は、体液を吸収したときに該体液の肌当接層2の肌当接面20側からみた
前記着色層、即ち、防漏層3の視認性が吸収前よりも高まるように設けられている。ここ
で、肌当接層2の肌当接面20側からみた前記着色層の視認性が吸液前よりも高まるとは
、体液の吸収に伴って肌当接層2における吸液部分の透明性が増して前記着色が吸液前よ
りも鮮明に認識できることをいう。
【0012】
吸収性物品1の吸液前後における前記視認性の変化の評価指標には、吸収性物品1の前
記着色層より肌側の全層の吸液前後における明度の差、特に吸液前後における背黒色明度
LBの差を用いることが好ましい。背黒色明度LBの差(低下)は、吸液前に比べ7〜3
0、特に10〜30となることが好ましい。
【0013】
ここで、背黒色明度LBとは、標準黒色板を背面にしたシートが示す明度L値をいい、
その値が0〜100の範囲で小さく、標準黒色板のL値に近いほど、シートの透明感が高
いことを意味する。一般的には、背黒色明度LBが低い程、黒色であることを意味し、表
面が黒いシートを含む。該背黒色明度LBは、市販の色差計、例えば、日本電色工業(株
)製、色差計「SE2000」及びその付属の標準黒色板(L値=7)を用いることによ
って測定することができる。本実施形態では、該背黒色明度LBの測定は、着色層以下を
剥がし、その上側(肌側)の全層について測定する。従って、後述するように、肌当接層
の下に吸収層があり、その下に着色を有する防漏層がある場合は、吸収層を含めて肌当接
層について測定を行い。吸収層が着色層である場合は、肌当接層のみで測定する。
【0014】
吸液前後におけるLB値の差(低下)の度合いは、着色層より肌側の全層の材料設計の
ほか、吸収した液の量、液の色、液の広がり方によっても変化する。よって、LB値の測
定は、本実施形態のような吸収性物品の場合には、おりものなど粘性のある液を想定し、
グリセリン0.5mLをディスポシリンジ(針なし、アズワン製目盛つきプラスチックシ
リンジ2−5630−04)を用い、肌当接層2に注入(シリンジ先端を一点で押しつけ
て約10秒で注液)して、1分後のLB値を測定することが好ましい。このときのLB値
は、液の吸収保持性を考慮すると、40〜100、特に50〜90とすることが好ましい
。尚、吸液後のLB値の設計は相対的なもので、吸液前に比べ透明感が増して背後の標準
黒色板の色が透けて見えてくること(即ち吸液前よりLB値が低下すること)に意味があ
る。
【0015】
吸収性物品1の吸液前後における肌当接面20の背黒色明度LBの差は、2〜50、特
に5〜30であることが好ましい。該明度LBの差を斯かる範囲とすることによって、上
述の如く体液を吸収した特定の範囲で前記着色の視認性が向上することにより、体液がど
の程度吸収されたか、或いは吸収された体液がどの程度広がっているかを肌当接面20側
から確実に視認することができる。
吸液前の肌当接面20の背黒色明度LBは、吸収性物品では一般に表面側を白く設計し
ているため、70〜100、特に不織布等の繊維集合体(好ましくはエアスルー不織布)
で構成してある場合は75〜95とすることが好ましい。ここで材料の違いによって完全
な白色(明度LB=100)とならないのは、不織布の場合、繊維間に隙間があって透明
度が若干あるため、地合の黒色が多少透けて見えるためである。また、吸液後の肌当接面
の背黒色明度LBは、吸液によって材料の透明度が向上して背後の黒色がより透けて見え
るため、低下する。
【0016】
肌当接層2は、前述のように体液の透過性及び透過した体液の保持性を備えているとと
もに、体液の吸収に伴ってその吸液部分から防漏層3に付された着色が肌当接面20側か
らより視認し得るようにする光透過性を備えている層である。このような機能を備えた肌
当接層2は、繊維集合体(不織布や、不織布化されていないウェブ状のもの)からなる単
層シートや複層(積層)シート、又はこれらの単層若しくは複層シートの表面に透明な開
孔フィルムを積層させたもの等で構成される。
【0017】
肌当接層2を形成する繊維集合体の繊維自身は、着色剤を内添しない限りは本質的に透
明なものが用いられる。
しかし、斯かる繊維が寄り集まった場合でも、該繊維とそれらの間に介在する空気との
屈折率が異なるため、繊維表面で光が乱反射して散乱する。このため、繊維集合体は全体
として白く濁って見える。このような繊維集合体が水分を吸収し、繊維間隙が完全に水で
満たされた場合、水と繊維の屈折率が近接しているため、構造全体として光の散乱が起こ
らず透明化する。
本発明者らは、このような肌当接層(又は後述する吸収層)の吸液による透明化に着目
した。そして、液を吸ったときに肌当接層2(又は後述する吸収層)を効果的に透明化さ
せるには、肌当接層2(又は後述する吸収層)を構成する繊維集合体に、1)繊維集合体
の全体の繊維間が特別に狭く、液で満たされやすいこと、2)繊維集合体に、局所的に繊
維間が狭く、液で満たされやすい部分があること、3)繊維集合体の全体又は一部に、液
を吸うと繊維間が狭まり、液で満たされやすくなる特別の工夫が施されていることが重要
であり、肌当接層を構成する繊維集合体にこのような工夫を施すことにより、上述のよう
な吸液前後における背黒色明度LBに差が生じ、肌当接面側からみた前記着色の視認性が
体液の吸収前よりも高められる好ましい形態を見出した。
【0018】
肌当接層2の繊維集合体を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピ
レン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエステル
/ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン複合繊維、ナイロン等のポリア
ミド等の合成繊維又はこれらを組み合わせた繊維が挙げられる。また、レーヨン、ビスコ
ース繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維は、表面親水度および吸収性が高く、湿
潤すると繊維の弾性が低下し、繊維集合体が透明化しやすいため、肌当接層2に含ませる
ことができる。
【0019】
前記繊維集合体を構成する繊維には、吸液後の前記着色の視認性を損なわない範囲にお
いて、着色剤を含ませることができる。吸液時の透明化を十分に向上させるには、着色剤
の配合比率は、2質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以下とすることが特に
好ましい。該着色剤としては、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)等が挙げられる。これらの中でも、繊維集合体の白色度を高めることができるほか、高い大きい遮蔽力等を発揮する点から酸化チタンが好ましい。酸化チタンの含有量は、2質量%以下、特に、1質量%以下とすることが好ましい。
【0020】
肌当接層2の繊維集合体として、不織布を用いる場合には、スパンボンド法、エアスル
ー法、ヒートロール法等の製法で製造された不織布を用いることができる。特に、不織布
の柔軟性、タッチ感の良さの観点からはエアスルー法で製造された不織布が望ましく、ヒ
ートロール法を併用して透明度を高めた不織布を用いることもできる。
【0021】
肌当接層2を構成する繊維集合体の他の好ましい形態として、肌当接面20側に繊維同
士が熱融着した第2の繊維層(繊維集合体)を有するとともに、非肌当接面側に非熱融着
性の繊維を含み繊維同士の融着があまり成されていない緩い結合状態の第2の繊維層(繊
維集合体)を有する複合構造不織布(複合繊維集合体)が挙げられる。該複合構造不織布
は、非肌当接面側の繊維間が変化し易い緩やかな構造であるため、吸液によって濡れたと
き、繊維間に水分を抱え込んで集合し易い。即ち、濡れへたりながら層自体の厚みが減少
しやすい。この結果繊維間が水分で満たされ、肌当接層2の全体が透明になり易い。
この複合構造不織布は、熱融着性の繊維ウェブ(第1の繊維層)と、熱融着性のない繊
維(以下、非熱融着性繊維ともいう。)または前記熱融着性の繊維ウェブよりも熱融着温
度の高い熱可塑性樹脂の繊維を多量に含む繊維ウェブ(第2の繊維層)を重ね合わせ、熱
風で結合させして形成することができる。熱融着性の繊維ウェブが肌当接面20側となる
。前記熱融着温度の高い熱可塑性樹脂の繊維を用いた場合は、該繊維の熱融着温度より低
い温度の熱風で処理する。前記非熱融着性繊維または前記熱融着性の繊維ウェブよりも熱
融着温度の高い熱可塑性樹脂の繊維は、非肌当接面側の層として、前記繊維を40質量%
以上含有させることが好ましく、50質量%以上が一層好ましい。
この複合構造不織布は、具体的には、肌当接面側にはポリエステル/ポリエチレン複合
繊維やポリプロピレン/ポリエチレン複合繊維を主とする繊維集合体を用いる。また、非
肌当接面側には、レーヨン、ビスコース繊維等の非熱融着性繊維を主とする繊維集合体や
、熱融着温度の高いポリエステル、又はポリプロピレン繊維を主とする繊維集合体を用い
て形成される。該不織布の繊維結合に用いる熱風温度は110℃前後の、ポリエステル又
はポリプロピレン繊維を溶融しない温度範囲から選択される。非肌当接面側の繊維の肌当
接面側に対する配合比率は少なくとも60質量%以上が好ましく、各層の坪量は10〜8
0g/m2が好ましく、肌当接層全体の坪量は20〜150g/m2がより好ましく、25
〜100g/m2の範囲であることがさらに好ましい。特に、肌当接面側の層より、非肌当接面側の層の比率が高いことが好ましい。
【0022】
肌当接面側の熱融着された繊維集合体は、肌当接面層2全体の強度を担保するとともに
、肌と水分とを離間させる層として機能する。従って透明化は主として非肌当接面側の層
が機能することになるので、肌当接面側の層の比率は50%以下の坪量である方が透明化
の効果が高い。
用いる繊維は、前述のように、肌当接面側または非肌当接面側の何れにおいても実質的
に透明な繊維が好ましい。また、非肌当設面側の繊維として、レーヨンやビスコース繊維
等の非熱融着性繊維や、PVA繊維を混合させることが好ましい。
【0023】
肌当接層2の他の好ましい形態として、前述の本質的に透明な繊維を含む肌当接層2に
、エンボス加工を施した形態が挙げられる。この肌当接層2に施されるエンボス加工は、
図2(a)に示すように、当該エンボス加工を施した部分(星形の部分、以下エンボス部
分ともいう。)21の液の吸収性をその周りの部分22に比べて高くする場合(以下、高
吸収化エンボス加工という。)、即ち液を吸うと(エンボス部分に液が集まってエンボス
部分が透けるため)エンボス部分で下の着色が目立つ場合と、図2(b)に示すように、
逆にエンボス加工を施した部分21の液の吸収性をその周りの部分22に比べて低くする
場合(以下、低吸収化エンボス加工という。)、即ち液を吸うと(エンボス部分に液が入
らないためエンボス部分だけが透けず、)エンボス部分以外の部分で下の着色が目立ち、
エンボス部分だけが白く浮き上がって見える場合とに分けられる。
前記高吸収化エンボス加工は、適度にエンボス加工が施された結果、エンボス部分の緻
密化によって毛管力が高まり、吸収性を高めるものである。前記低吸収化エンボス加工は
、強固なエンボス加工によるエンボス部分のフィルム化によって、当該部分の吸収性を低
下させるものである。このようにしてエンボス加工の部分が浮き出るようにすることで、
使用者が液の吸収状態を確認するときの不快感を軽減し、積極的に外観印象を向上させる
ことができる。
【0024】
何れのエンボス加工を施すかは、主として目的とする視覚効果に応じて選択される。例
えば、エンボス部分を濃く目立たせたい場合、肌当接層2のエンボス加工の条件を調整し
てフィルム化しない範囲にとどめて、毛管力をアップさせる範囲とする。一方エンボス部
分を白抜きに浮き立たせるには、エンボス加工の条件を強めてエンボス部分をフィルム化
する。その他、肌当接層2の材質に応じて選択される。例えば肌当接層の一部に熱融着性
のない不織布材料(例えばコットンやレーヨンのスパンレース不織布)が用いられる場合
、どのようなエンボス加工の条件を適用してもエンボス部分がフィルム化することはない
ため、前記高吸収化エンボス加工を得ることができる。
【0025】
いずれの場合も、エンボスパターンに、細かい、離散的なパターンを採用することに
よって、肌当接層2が所定のパターンで固定され、肌当接層2全体の繊維間隙を狭める
ことができる結果、繊維間を水分で満たすことが容易になる。
前記エンボス加工によって形成されるエンボスパターンは、エンボス部分の肌当接層2
の表面における総占有面積率として、体液の吸収性、見た目の印象、風合い、装着感等を
考慮すると、5〜60%、特に、10〜40%とすることが好ましい。エンボス部分は当
該部分全体を潰した、いわゆる「べた」でもよく、また線状にエンボス加工を施して非エ
ンボス部分を残した、いわゆる「中抜き」でもよい。また、個々のエンボスパターンの面
積は、鮮明にパターン認識でき、かつ吸収性を維持する観点より1〜25mm2であることが好ましい。エンボス加工は、吸収性物品1に適度な柔軟性を賦与する上でエンボスパターンが肌当接層2の略全面に亘って散在していることが好ましい。また、排泄スポット部分で特に空気の影響を排除する観点より、製品略中央部分に特にエンボス加工が集中的に施されていることが好ましい。個々のエンボスパターンの形態としては、本実施形態のような星形の他、円形、三角形、その他の多角形等の各種の幾何学形状、花柄や各種の模様、及び直線、曲線等の非閉塞模様及び文字等が挙げられる。
【0026】
肌当接層2には、繊維間を液で満たす効果をより高めるために、繊維径の細い繊維を混
合することができる。混合する繊維の太さは、2.2dt以下が好ましく、更に1.8d
t以下が好ましい。
また、特にエンボス部分の近傍を細かい繊維で埋めるために、肌当接層2に分割繊維を
配合することも吸液後の透明化に有効である。この場合、好ましい分割繊維としては、相
溶性がない2種類の樹脂の組み合わせからなる繊維、例えばポリプロピレン/ポリエステ
ル、ポリプロピレン/ポリエチレンが挙げられる。肌当接層への分割繊維の配合比率は、
好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%〜30質量%である。
これらの実施形態の場合、エンボス部分の周辺部や(エンボスパターンによっては)エ
ンボス部分が、特別に繊維間が密な部分となる。従ってエンボス部分及びその近傍を中心
に繊維間が液で満たされて透明になるため、全体として透明に見える。
【0027】
吸収保持性能を向上させるために、肌当接層2の下方(非肌当接面側)に、さらに吸収
層を配することが好ましい。該吸収層には、例えば、前述の肌当接層2と同様のものを用
いることができる。該吸収層には、吸液による透明性を向上させるために、エンボス加工
を施すことができる。この場合、肌当接層2と吸収層とに一体的にエンボス加工が施され
ていることが好ましい。
【0028】
また、前記吸収層の好ましい形態として、非熱融着性繊維、特にポリエステル繊維、レ
ーヨン繊維、アセテート繊維若しくはこれらの組み合わせを配合した、繊維ウェブ又は不
織布があげられる。このような繊維ウェブや不織布は、結合していない繊維が多いため、
繊維空隙が広くなっている。このため、吸液前は繊維間に多量の空気が含まれていて白く
みえ、吸液後は、繊維が移動しやすく狭くなった繊維空隙が液で満たされて透明になる。
この場合濡れた部分の毛管力が強くなるため、それ以上液が移動せず安定して透明化する

このような効果を十分に発現させるには、該非熱融着性繊維を吸収層に40質量%以上
、好ましくは50質量%以上含むことが好ましい。また、濡れ変形しやすいよう、該非熱
融着性繊維の太さが2.2dt以下、特に1.8dt以下であることが好ましい。更に、
該非熱融着性繊維が10mm以内の極端に短いステープルであると、濡れたとき移動しや
すく、好ましい。
一方、該非熱融着性繊維が100mm以上の極端に長いステープルもしくはトウである
場合も、繊維が不織布の流れ方向に極端に配向しやすく、濡れたとき繊維間隙が潰れ易く
なるため、同様に好ましい。
このように、濡れたとき特別な構造変化を促すような繊維集合体を吸収層に用いた場合
、吸液による厚み変化も大きく、薄くなる分透明性が向上する効果も加わる。具体的には
、該非熱融着性繊維を含む前記吸収層が、自重と同量の水を吸収し、5g/cm2で10秒加圧し、加圧解放直後の厚み変化率が40%以上となる。
尚、前記不織布は、前記吸収層の一部として別体で配されることが効果発現の上からは
最も好ましいが、材料強度を高めてより加工しやすい別の実施形態として、該非熱融着性
繊維をあまり含まない第1の層と、該非熱融着性繊維を多量に含む第2の層を一体に形成
した不織布を用いることも効果的である。このような不織布は、不織布製造工程において
、繊維を積層する工程で、該非熱融着性繊維を殆ど(あるいは全く)含まない第1の層と
、該非熱融着性繊維を第2の層に対して40質量%以上含む第2の層とを重ね合わせ、更
に熱風処理を施してこれらの層どうしを結合することによって、製造することができる。
このような不織布では、十分に強固な表面強度が得られることより、該不織布一枚のみで
吸収層を形成することも可能である。該不織布と、前記のエンボス加工とを組み合わせて
、更に透明化の効果を高めることも可能である。
【0029】
吸収層2には、吸液後の前記着色の視認性を損なわない範囲で、パルプ又は吸収ポリマ
ー等の吸収材を含ませることができる。
【0030】
肌当接層2を構成する前記繊維集合体には、吸収性向上の観点から、親水化処理を施す
ことが好ましい。繊維集合体に親水化処理を施すことは、オリモノのように少量の体液を
素早く且つ体液を残さず吸収してさらっとした使用感を与える上で好ましい。特に、肌当
接層2が繊維集合体の単層シートで構成される場合、そのシートは、体液が肌当接面側か
ら背面側(非肌当接面側)に移行しやすい構造であることが好ましい。このような構造は
、背面側の毛管力に比べて肌当接面側の毛管力を大きくすることにより実現されるもので
あり、(1)背面側の繊維が、肌当接面側の繊維よりも強く親水化されている、(2)背面側の
繊維が、肌当接面側の繊維よりも細くされている、等の構成により具現化される。このよ
うな構造の繊維集合体の具体的な製造方法としては、例えば、繊維集合体を不織布である
場合には、その形成工程において、予め、繊維ウェブを二層で積繊したものを用意してお
き、上記(1)にあっては、背面側の繊維を強親水性の親水化剤で処理するか、あるいは、背面側の繊維に付着する親水化剤の量を増やし、上記(2)にあっては、背面側の繊維ウェブに用いる繊維を細くする。
【0031】
肌当接層2が複層シートで設けられている場合には、各シートどうしの接合には、ホッ
トメルト接着剤、ヒートシール若しくは超音波シールによる接合、又はこれらが併用され
る。ホットメルト接着剤の塗工には、スパイラルスプレー、多列ビード、スロットスプレ
ー、薄膜塗工等の塗工パターンが用いられる。また後述するように、ヒートシール(エンボス)を併用することによって不織布の密着性を高めることが更に好ましい。接着剤の塗工量は、シート同士の十分な接合力の確保と、シート同士の間における光透過性の確保とのバランスを保つ観点から、3〜15g/m2であることが好ましい。
【0032】
前記ホットメルト接着剤としては、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)系、スチレ
ン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)系、オレフィン系等のホットメルト接着剤が挙げられる。ホットメルト接着剤には、着色剤の含有量は、前記同様の理由から0.5質量%以下とすることが好ましい。
【0033】
防漏層3は、着色が施された防漏シートである。防漏層3は、単独のシートであっても
よく、複合シートであっても良い。好ましい形態としては、一枚のフィルム、フィルムと
不織布の貼り合わせ(着衣側に不織布が存在)、撥水性の複数の不織布の組み合わせ、例
えばスパンボンド不織布(S)/メルトブローン不織布(M)の複数の組み合わせ(SM
,SMS,SMMSなど)が挙げられる。
防漏層に対する着色は、防漏層を構成するどの層になされていてもよい。最も効果的な
防漏層の形態は、所定の着色剤が練りこまれて着色されたフィルム単独の形態である。該
フィルムと不織布が積層された複合シートも好適に用いることができる。このようなフィ
ルムや複合シートと比べて発色性に劣るが、防漏層の構成部材をなす不織布を着色剤また
は印刷で着色することも可能である。
【0034】
また、他の実施形態として、着色層を吸収層の一部として形成することが可能である。
例えば、肌当接層2及び前記吸収層に前記の如く透明化する工夫を施し、該吸収層の最下
層に着色した(親水性の)不織布を配して吸収体の一部とする事も可能である。特に、該
親水性着色不織布として、前述のように非熱融着性繊維を含んで濡れると繊維間隙が狭く
なる不織布の繊維の一部に着色繊維を用いると、濡れると繊維が寄り集まって色調が濃く
なるため、色の識別が容易となってより効果的である。また、前述のエンボス加工を施し
て、着色された吸収層と肌当接面層2が一体化されていると、吸液による着色層の視認
性に一層効果的である。
【0035】
着色は、液を吸って汚れた印象が少なくする観点からは、吸収する液体の色調を緩和
する効果のある同系の色調から選択するのが好ましい。例えば、汗、おりもの、尿を対
象とする場合、対象液の色調は透明〜黄色であるため、着色は黄〜淡黄、または淡緑か
ら選択することが好ましい。一方、吸液した領域の識別性の観点から、強めの色調や反
対色から選択するのも好ましい。具体的には、着色は淡赤、ピンク、淡青や、から選択
することが好ましい。更に、吸液した領域の識別性や、おりものの色があまり汚く見え
なくする観点からは、鮮やかな色調を選択するほうが好ましく、具体的にはピンク、比
較的濃い水色が好ましい。
【0036】
防漏層3がフィルムから構成される場合、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、或いはエチ
レン-酢酸ビニル共重合体やポリエチレン-ポリ酢酸ビニル複合フィルム等のポリオレフィ
ン系樹脂等の熱可塑性樹脂から選択される。フィルム1枚当たりの坪量は、15〜50g
/m2、フィルムの1枚当たりの厚さは、0.05〜0.4mmが好ましい。
【0037】
防漏層3は、前記フィルム自体に、前記明度を賦与する着色剤が配合される。好ましい
着色剤の配合量は0.2〜10質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0038】
一方、防漏層3に透湿性を与えてさらっとした着用感を得るために、異なる着色剤を更
に加えて透湿化することも好適に用いられる。具体的には、防漏層の少なくとも一部をな
すフィルムに、相溶性のない炭酸カルシウム(CaCO3)等の無機紛体(着色剤)を多量に分散させ、当該ベースフィルムを延伸して微細な剥離(孔)を形成し、その微細孔を水蒸気の放出孔とすることができる。このとき好ましい無機粉体の配合量は30〜60質量%であり、前記着色剤と合わせた好ましい総量は30.2〜60質量%である。防漏層3の透湿度は、高い透湿性の発現と、液の染み出し防止の両立を考慮すると、1.5〜3.0g/(100cm2・24hr)、特に、1.7〜2.2g/(100cm2・24hr)とすることが好ましい。
【0039】
また上記防漏層に加え、吸収層又はその一部を着色して、液吸収を汚く見せない印象改
善効果を付与することも可能である。具体的な好ましい形態としては、吸収層が複数の層
で形成されている場合に、防漏層と接する最下層(例えば不織布等の繊維集合体の繊維)
に、所定の色調の着色剤を配合する形態が挙げられる。この際の色調は防漏層と同様の色
調として防漏層の色を補強することもできる。一方、防漏層の色とは異なる色を選択して
、組み合わせで異なる色調を立体的に出現させることもできる。このとき防漏層に模様を
印刷してある実施形態の場合は、不織布の着色の背後に印刷模様が見えて、立体的な視覚
印象を得ることができて効果的である。
この場合、液吸収前のLB値は最下層の着色の色調および程度によって変化するが、液
吸収前後の吸収層の背黒色明度LBの差は、上述の如く7〜30の範囲にあることが好ま
しい。
【0040】
防漏層3と肌当接層2は、前述の肌当接層2が複層シートで設けられている場合と同様
にして接合される。
【0041】
防漏層3の外面には、着衣に装着するための粘着剤(図示せず)が貼付されている。粘
着剤は、使用前においては剥離紙によって覆われている。
【0042】
吸収性物品1の全体の厚さは、クッション感(柔らかさ)、吸収容量の確保、装着時の違
和感のなさ等を考慮すると、0.5〜5mmとすることが好ましく、0.6〜2mmとす
ることがより好ましい。吸収性物品1の厚さは、ピーコック厚さゲージにて、2.5g/
cm2の荷重で測定した値である。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の吸収性物品1は、体液の吸収に伴ってその吸液部分
から防漏層3に付された着色が肌当接面20側からより視認し得るようにしたので、肌当
接面側からの吸液部分を容易に認識することができる。そのため、取り替えの判断が容易
にできる。また、該着色によって体液吸収に伴う汚れによる不快感を軽減することができ
る。更に、前述のようにエンボス加工を施すことによって、体液の吸収によりエンボスパ
ターンが浮かび上がるように視認できるため、液吸収時の視覚印象を積極的に向上するこ
とができる。
【0044】
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲に
おいて適宜変更することができる。
【0045】
本発明は、前記実施形態の吸収性物品1のように、防漏層3を構成するフィルム自体に
、前記明度を賦与する着色剤を配合して着色を施すことが好ましいが、防漏層3を構成す
るフィルムの表面に塗料を塗工して前記明度を賦与してもよい。
【0046】
本発明の吸収性物品は、防漏層以外に、上述のように吸収層に着色を施すこともできる
。また、本発明の吸収性物品には、吸収層と防漏層との間にこれらの機能を損なわない範
囲で着色を施した紙等のシートを介在させたものや、生理用ナプキンにおいて、吸収性本
体の表面を被覆する被覆紙の肌当接面側の表面に着色を施したものも含まれる。
【0047】
また、防漏層は着色を施さず、吸収層のみに着色を施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、パンティライナー、失禁パッド、汗取りパッド(例えば脇の下や襟首用)、
母乳パッド等のショーツやブラウス等の着衣に取り付けて使用される吸収性物品の他、使
い捨ておむつや生理用ナプキン、靴中敷等の吸収性物品にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の吸収性物品のパンティライナーに適用した一実施形態を模式的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA−A’矢視断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、前記実施形態のパンティライナーにおける吸液後の視認性の変化を模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 吸収性物品
2 肌当接層
20 肌当接面
21 エンボス部分
3 防漏層(着色層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接層及び着色層を有し、体液を吸収したときに肌当接面側からみた前記着色層の視認性が体液の吸収前よりも高まるように設けられている吸収性物品。
【請求項2】
前記着色層より肌側の全層の吸液前後における明度LBの差が7〜30である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記肌当接層は、実質的に透明な繊維から構成されており、液吸収前には不透明または半透明な繊維集合体である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記肌当接層が、前記肌当接面側に熱融着性の繊維同士が接合された第1の層を有しているとともに、非肌当接面側に非熱融着性の繊維を含み繊維同士が接合されずに絡み合った第2の繊維層を有している複合繊維集合体からなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記肌当接層にエンボス加工が施されている請求項3記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記肌当接層の下方に吸収層が配されており、これらの層に一体的にエンボス加工が施されている請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記肌当接層及び/又は前記吸収層に、分割繊維が含まれている請求項6記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記着色層が防漏性を有する請求項1〜7の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項9】
防漏性を有する層と前記肌当接層との間に前記着色層を有する請求項1〜8の何れかに記載の吸収性物品。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−26081(P2006−26081A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208860(P2004−208860)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】