説明

吸収性物品

【課題】 塗布したローションによって体液の漏れが誘発されることなく、このローションを肌に確実に移行させることができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】 シャーシの身体側には、シャーシから離間可能な離隔シート3を形成している。離隔シート3の中間部分32にはローションが塗布された第1塗布領域51が形成され、吸液性パネル23の身体側ライナ26にはローションが塗布された第2塗布領域52が形成される。第2塗布領域52は、前方連通部33から露出する前方塗布領域52aと後方連通部34から露出する後方塗布領域52bとに、第1塗布領域51を介して分離されている。ローションは、身体側から吸液性パネル23に向かって塗布されるとともに、離隔シート3を積層した状態で塗布されるので、第1および第2塗布領域51,52が同時に形成され、吸液性パネル23の中間部分32に対向する位置には非塗布領域53が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に関し、さらに詳しくは使い捨てのおむつ、排便トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨てのおむつとして、例えば特開2004-298643号公報(特許文献1)が公知である。この特許文献1によれば、おむつは、トップシートとバックシートとこれらシートの間に位置する吸収体とを有している。トップシートの身体側表面にはローションを塗布し、ローションによっておむつと着用者との摩擦を軽減し、着用者の肌トラブルを防止しようとしている。また、ローションが塗布されたトップシートを着用者の肌に接触させることによって、ローションを着用者の肌に移行させることができる。このようにして、着用者の肌にローションが塗られるようにしている。ローションが塗られた肌では、これがバリアとなって便が肌に付着するのを抑制することができる。
【特許文献1】特開2004−298643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ローションが塗布されたトップシートでは、塗布されたローションによって、トップシートの液透過性が阻害されることがある。特にトップシートの広範囲に亘ってローションを塗布した場合には、体液がトップシートを通過できなくなるから、体液がトップシート上を流れて漏れを引き起こすことがある。
また、トップシートは必ずしも着用者の肌に接触するとは限らず、トップシートが肌に接触しなければローションを肌に移行させることができない。ローションが肌に移行されなければ、肌への便等の付着を抑制するという機能を発揮することができない。
【0004】
本発明では、塗布したローションによって体液の漏れが誘発されることなく、このローションを肌に確実に移行させることができる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、縦方向および横方向と、身体側および着衣側と、前記縦方向に連なる前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、少なくとも前記クロッチ域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記クロッチ域において前記シャーシから離間可能に形成された離隔シートとを含み、前記シャーシは、前記前後ウエスト域にウエスト開口を形成し、前記クロッチ域に一対のレッグ開口を形成する吸収性物品の改良に関わる。
【0006】
本発明は前記吸液性物品において、前記離隔シートは、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に対向する両側部分と、前記両側部分の間に連なる中間部分と、前記両側部分および前記中間部分によって形成され前記身体側と前記シャーシ側とを連通させる連通部と、前記縦方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられる離隔シート弾性部材とを含み、前記縦方向に対向して前記横方向に延びる前後端縁が前記シャーシの身体側に固着され、前記吸液構造体が前記クロッチ域から前記前後ウエスト域に亘って前記前後ウエスト域が対向するように湾曲することによって、前記離隔シートと前記吸液構造体との間に空隙を形成するとともに、少なくとも前記中間部分が着用者の肌に接触可能に形成される。
前記離隔シートには前記中間部分にローションが塗布された第1塗布領域が形成され、前記シャーシには前記連通部から露出する部分に前記ローションが塗布された第2塗布領域が形成されたことを特徴とする。
【0007】
好ましい実施態様のひとつとして、前記シャーシは、前記股下域において前記ローションが塗布されない非塗布領域を含み、前記非塗布領域は、前記離隔シートの中間部分との対向部分に形成される。
【0008】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記ローションは、前記離隔シートの前記身体側から前記シャーシに向かって塗布される。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記離隔シートは、前記中間部分を介して前記前ウエスト域側に位置する前方連通部と、前記後ウエスト域側に位置する後方連通部とを含み、前記中間部分は、前記クロッチ域に形成される。
【0010】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記シャーシの身体側であって前記前後ウエスト域の少なくともいずれか一方には前記ローションが塗布された第3塗布領域をさらに含む。
【0011】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記第3塗布領域は、前記ウエスト開口に沿って前記横方向に延びて形成される。
【0012】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記ローションは、エモリエント成分と前記エモリエント成分を固定する固定化成分とを含む。
【発明の効果】
【0013】
着用者の肌に接触可能な離隔シートの中間部分にローションが塗布された第1塗布領域を形成することとしたので、ローションは確実に着用者の肌に移行される。したがって、肌に移行したローションによって、便等の付着を防止することができる。
シャーシであって離隔シートの連通部から露出する部分にもローションが塗布された第2塗布領域を形成することとしたので、連通部以外の部分ではローションが塗布されることなく、シャーシの全面に亘ってローションが塗布されることがない。ローションが塗布されない部分を形成することによって、シャーシにおける体液の透過性を阻害することがなく、体液が漏れるのを防止することができる。
【0014】
シャーシに形成されたローションの非塗布領域は、離隔シートの中間部分との対向部分に位置するので、この対向部分では離隔シートが肌に対向し、これと重なる非塗布領域が着用者の肌に接触することがない。したがって、ローションが塗布されないシートが肌に接触して肌トラブルを引き起こすことを防止することができる。
【0015】
ローションは、離隔シートの身体側からシャーシに向かって塗布されることとしているので、離隔シートに形成された第1塗布領域と、シャーシに形成された第2塗布領域と、非塗布領域とを一度に形成することができる。したがって、ローションの塗布による大幅なコスト増加を回避することができる。
【0016】
離隔シートは、中間部分を介して前ウエスト域側に位置する前方連通部と、後ウエスト域側に位置する後方連通部とを含み、中間部分がクロッチ域に形成されることとしたので、離隔シートは排泄を妨げることなく配置される。中間部分がクロッチ域に形成されることによって、中間部分が肛門と外性器の間の刺激に弱い部分に位置し、この弱い部分にローションを移行させ肌トラブルから保護することができる。
【0017】
シャーシの身体側であって前後ウエスト域にはローションが塗布された第3塗布領域を形成することとしたので、ウエスト域においても着用者の肌トラブルを防止することができる。
【0018】
第3塗布領域は、ウエスト開口に沿って横方向に延びて形成されることとした。着用物品の着用状態においては、ウエスト開口は着用者の肌に接触することから、第3塗布領域も着用状態においてはほぼ着用者の肌に接触することとなる。したがって、確実に着用者のウエスト域の肌トラブルを防止することができる。
【0019】
ローションは、エモリエント成分とエモリエント成分を固定する固定化成分とを含むこととしたので、肌を軟化させ肌トラブルを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
吸収性物品として使い捨ておむつを用い、本発明の一例を説明する。
<第1の実施形態>
【0021】
図1〜5は第1の実施形態を示したものである。図1はおむつ1の着用状態を示した図である。図示したように、おむつ1はシャーシ2と離隔シート3と漏れバリアカフ4とを含む。シャーシ2はパンツ型に形成され、身体側内面5および着衣側外面6と、前ウエスト域7、後ウエスト域8および前記前後ウエスト域7,8間に位置するクロッチ域9を含んでいる。前ウエスト域7からクロッチ域9を通って後ウエスト域8へと向かう方向を縦方向Yとし、これに直交する方向を横方向Xとしている。シャーシ2は、内面シート11と外面シート12と、これら内外面シート11,12の間に介在する不透液性の漏れバリアシート13と、内面シート11に積層された吸液構造体10とによって形成されている。
【0022】
シャーシ2は前後ウエスト域7,8において、互いのウエスト側縁部14,15の対向面が重なり合い、間欠的に並ぶ複数の接合部16において互いに接合されてシーム部が形成され、これによりプルオン・パンツ型に形成されている。
接合部16でウエスト側縁部14,15が接合されることにより、前後ウエスト域7,8で囲まれた領域にウエスト開口18が形成されるとともに、レッグ側縁部17で囲まれた一対のレッグ開口19が形成されている。ウエスト開口18の周縁部に沿って複数条のウエスト弾性部材20が延び、レッグ開口19の周縁部に沿って複数条のレッグ弾性部材21が延びている。それら弾性部材20,21は、内面シート11と外面シート12との間にあり、これらシート11,12の少なくとも一方に接着剤(図示せず)を介して伸長状態で接合されている。
【0023】
図2は図1のII−II線断面図である。図2に示すように、内面シート11の身体側内面5に吸液構造体10として吸液性パネル23が配置され、吸液構造体10よりもさらに身体側に離隔シート3が配置され、離隔シート3のさらに身体側に漏れバリアカフ4が配置されている。吸液性パネル23は、縦方向Yに対向して、横方向Xに延びる前後端縁23a,23bを含む。
【0024】
吸液性パネル23は、クロッチ域9から縦方向Yに延びるとともに、その前後端縁23a,23bは前後ウエスト域7,8の内面シート11に接合されている。吸液性パネル23は、ティッシュペーパ等の吸液拡散シート24で包まれる吸液性芯材25と、吸液拡散シート24をさらに覆う身体側ライナ26とで形成されている。吸液性パネル23の着衣側は外面シート12の内側に配置された漏れバリアシート13で被覆され、芯材25に吸収された体液がおむつ1から漏れるのを防止する。漏れバリアシート13は、吸液性パネル23の底面に直接接合されることもある。
【0025】
離隔シート3の前端縁27と後端縁28は、その近傍が接着または溶着により身体側ライナ26に接合されている。前端縁27と後端縁28とは、それぞれ前ウエスト域7および後ウエスト域8に位置している。図示したようなプルオン・パンツ型の状態においては、クロッチ域9が湾曲するとともに、後に説明する離隔シート弾性部材の収縮によって、離隔シート3は身体側ライナ26から身体側に向かって図面上方向に離間している。離隔シート3の前後端縁27,28は身体側ライナ26に接合されているので、離隔シート3全体はハンモックを吊り下げたような形状を有する。このような形状により、離隔シート3と吸液性パネル23との間に空隙29が形成される。
【0026】
図3は図1の接合部16における前後ウエスト域7,8の接合を解き、おむつ1を縦方向Yと横方向Xとに展開し、前後ウエスト域7,8とクロッチ域9とが同一平面上に位置するようにしたおむつ1の平面図である。おむつ1は、平面状になるように各弾性部材の伸縮力を作用させない状態を示している。おむつ1は、横方向Xの寸法を二等分する縦中心線P−Pと、縦方向Yの寸法を二等分する横中心線Q−Qとを有し、縦中心線P−Pに関して左右対称である。
【0027】
図示したように、シャーシ2はほぼ同形同大の内外面シート11,12を含み、ウエスト側縁部14,15とこれらウエスト側縁部14,15の間に位置するレッグ側縁部17とを有している。レッグ側縁部17が縦中心線P−Pに向かって凸となるように湾曲することによって、シャーシ2はほぼ砂時計型に形成されている。内外面シート11,12は通気性かつ疎水性の不織布等で形成され、漏れバリアシート13を介して接着または溶着により互いに接合されている。
【0028】
図4は主として、離隔シート3および吸液性パネル23を説明するために、内外面シート11,12を省略したときのそれらの斜視図であり、その一部を破断させている。図示したように、吸液性パネル23の着用者内面側には、離隔シート3を形成し、離隔シート3のさらに着用者内面側には漏れバリアカフ4を形成している。
【0029】
離隔シート3は、横方向Xに対向する両側部分30,31と両側部分30,31の間に連なる中間部分32とを有し、中間部分32はクロッチ域9に位置している。両側部分30,31および中間部分32によって前後方連通部33,34を形成している。前方連通部33は、中間部分32から前ウエスト域7に向かって延びるほぼU字形であり、後方連通部34は、中間部分32から後ウエスト域8に向かって延びるほぼU字形である。前方連通部33は、両側部分30,31に位置する両内側縁35と、これら両内側縁35をつなぐ湾曲した閉鎖縁36とによって画成される。後方連通部34は両側部分30,31に位置する両内側縁37と、これら両内側縁37に連なる湾曲した閉鎖縁38とによって画成される。
【0030】
離隔シート3には、前後方連通部33,34に沿って縦方向Yに延びる一対の離隔シート弾性部材39を伸長状態で取り付けている。離隔シート弾性部材39は縦中心線P−Pを挟んでほぼ対称に取り付けられ、中間部分32において縦中心線P−Pに向かって湾曲している。
【0031】
離隔シート3は、両側部分30,31が吸液性パネル23側に折り返されて二枚重ねになっている。この二枚重ねになった両側部分30,31の間に離隔シート弾性部材39を図示しない接着剤によって接合している。
離隔シート3は、少なくとも前後端縁27,28においてその両側部分30,31で折り返された部分を吸液性パネル23の身体側ライナ26に接着剤40を介して接合している。
【0032】
漏れバリアカフ4は、縦中心線P−Pに対称に縦方向Yに延びる一対のシートから形成され、このシートは不織布やプラスチックフィルム等であり好ましくは不透液性である。各漏れバリアカフ4は、離隔シート3の両側部分30,31の身体側に重なるようにして形成されている。
【0033】
漏れバリアカフ4はZ字を画くように3枚重に折り畳まれたシートから形成されている。具体的には、漏れバリアカフ4は吸液性パネル23とシャーシ2との間に位置し、シャーシ2の内面シート11に接合される第1面41と、第1面41から離隔シート3の着用者側に折り返され両側部分30または31に重なる第2面42と、第2面42の着用者側に折り重ねられた第3面43とを有している。第3面43に位置する側縁44はカフ弾性部材45を取り付け可能とするために折り返されている。カフ弾性部材45は、折り返された側縁44の間に伸長状態で接合され、縦方向Yに亘って取り付けられている。
【0034】
漏れバリアカフ4は、前後端部分46,47において、第1、第2および第3面41,42,43をそれぞれ互いに接合し、これらが一体となって、シャーシ2の内面シート11に接合されるようにしている。この漏れバリアカフ4にカフ弾性部材45の収縮力が作用すると、第2面42および第3面43を上方に伸展させて離隔シート3から離間して、図2に示すような壁を形成する。
離隔シート3と漏れバリアカフ4とは、前後方接合部位48,49において互いに接合される。前後方接合部位48,49は、離隔シート弾性部材39に重なる位置に形成されている。
【0035】
離隔シート3の中間部分32にはローションが塗布された第1塗布領域51が形成され、吸液性パネル23の身体側ライナ26にはローションが塗布された第2塗布領域52が形成されている。第2塗布領域52は、前方連通部33から露出する前方塗布領域52aと後方連通部34から露出する後方塗布領域52bとに、第1塗布領域51を介して分離されている。ローションはエモリエント成分とエモリエント成分を固定する固定化成分とを含み、スプレーによって離隔シート3および吸液性パネル23に塗布される。具体的には、吸液性パネル23に離隔シート3および漏れバリアカフ4が積層された状態で、すなわち各弾性部材の伸長力を作用させない状態でローションは塗布される。ローションは、身体側から吸液性パネル23に向かって塗布されるとともに、離隔シート3を積層した状態で塗布されるので、第1および第2塗布領域51,52が同時に形成される。したがって、第1および第2塗布領域51,52は一体的に連続して形成される。
【0036】
ローションが塗布された第1および第2塗布領域51,52の横方向Xの長さ寸法は約50〜60mmであり、縦中心線P−P上に縦方向に延びて形成される。第2塗布領域52の前方塗布領域52aの前方端部から、第1塗布領域51を通って、後方塗布領域52bの後方端部までの縦方向Yの長さ寸法は約250〜300mmである。また、身体側ライナ26の前端縁27から前方塗布領域52aの前方端部までの長さ寸法は約50mmである。第1および第2塗布領域51,52におけるローションの塗布量は、約3〜15g/mであり、好ましくは約10g/mとしている。
【0037】
上記のような各弾性部材の伸長力を作用させない状態から、これら弾性部材を作用させた場合の吸液性パネル23,離隔シート3,漏れバリアカフ4の状態を図5に示している。図示したように、離隔シート弾性部材39およびカフ弾性部材45が収縮すると、吸液性パネル23が湾曲して漏れバリアカフ4が吸液性パネル23から起立するように離間する。離隔シート3は離隔シート弾性部材39の収縮によって、身体側に浮き上がり中間部分32が吸液性パネル23から離間する。中間部分32には第1塗布領域51が形成され、吸液性パネル23には第2塗布領域52が形成されているから、一体的に連なっていた第1および第2塗布領域51,52は、離隔シート3の離間方向に分離される。
【0038】
第1および第2塗布領域51,52は、離隔シート3と吸液性パネル23とを積層させた状態で形成されるから、吸液性パネル23であって離隔シート3が重なっていた部分では、ローションが塗布されない非塗布領域53が形成される。すなわち、身体側ライナ26のクロッチ域9には、第2塗布領域52と非塗布領域53とが形成される。
【0039】
身体側ライナ26のクロッチ域9に非塗布領域53が形成されるので、この非塗布領域53では身体側ライナ26の液透過性を阻害することがない。すなわち、尿などの体液は、身体側ライナ26の非塗布領域53を介して吸液性芯材25に吸収される。
吸液性パネル23から離間した離隔シート3の中間部分32には第1塗布領域51が形成され、この第1塗布領域51が着用者の肌に当接するので、ローションを着用者の肌に確実に移行させることができる。おむつ1は、離隔シート3の前方連通部33が着用者の外性器に位置し、後方連通部34が肛門に位置するように着用状態を整えるようにして着用される。したがって、中間部分32は外性器と肛門との間の肌に接触する。この部分は特に刺激に弱い部分であり、かぶれ等が発症しやすい。この刺激に弱い部分にローションを塗ることができ、便等が付着して肌トラブルを起こすのを防止することができる。
【0040】
非塗布領域53は、第1塗布領域51の着衣側に形成されるので、着用時において空隙29が形成されているときは当然に非塗布領域53が着用者に接触することがない。したがって、ローションが塗布されないシートが肌に接触して肌トラブルを引き起こすことを防止することができる。また、着用者が座ったりして空隙29がつぶされて、離隔シート3と吸液性パネル23とが付着するような場合であっても、非塗布領域53と着用者の肌との間には第1塗布領域51が介在するから、非塗布領域53が着用者の肌に直接接触することがない。
【0041】
ローションはスプレーによって塗布するようにしているが、スロットコーター等他の方法によって塗布するようにしてもよい。いずれにしても、第1塗布領域51と第2塗布領域52とを同時に形成することによって、製造時間の短縮が可能となり、ローションの塗布による大幅なコスト増加を回避することができる。ローションは、エモリエント成分とエモリエント成分を固定する固定化成分とを含むこととしたので、肌を軟化させ肌トラブルを軽減することができる。
離隔シート弾性部材39は、接着剤を介して離隔シート3に接合されるようにしているが、離隔シート3の中間部分32にローションを塗布することによって接着剤が剥がれてしまう可能性がある。したがって、中間部分32においては弾性部材39を接合する接着剤の量を多くすることが好ましい。
【0042】
離隔シート3および漏れバリアカフ4は液抵抗性かつ通気性の不織布等、内面シート11および外面シート12は通気性不織布等、漏れバリアシート13は透湿性のプラスチックフィルム等、吸液性パネル23はフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物等、それぞれ当技術分野の慣用素材を用いることができる。
<第2の実施形態>
【0043】
図6は第2の実施形態を示したものであり、第1の実施形態の図3と同様の図である。この第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成要素については、その説明を省略する。この第2の実施形態では、前後ウエスト域7,8に前後ウエストシート54,55を形成し、この前後ウエストシート54,55にローションを塗布して第3前方塗布領域56と第3後方塗布領域57とをさらに形成している。前後ウエストシート54,55は、ウエスト開口18を形成するシャーシ2の前後端縁2a,2bにほぼ平行に横方向Xに延びている。前後ウエストシート54,55は、吸液構造体23の前後端縁23a,23bにそれぞれ重なるように形成されているが、吸液性芯材25には重ならないように、縦方向Yにずらして配置される。
【0044】
前後ウエストシート54,55としては、一般的な撥水性の不織布や親水性の不織布のほかに、抗菌剤を含んだ不織布等を使用することができる。前後ウエストシート54,55には、その全体にローションが塗布されて第3前後塗布領域56,57が形成される。ローションの塗布量は約3〜15g/mであり、好ましくは約10g/mである。
【0045】
前後ウエスト域7,8は、おむつ1の着用時には着用者の腹または背中に接触していることが多い。したがって、前後ウエスト域7,8に前後ウエストシート54,55を形成した場合には、この前後ウエストシート54,55は着用者の肌と接触することになる。この肌との接触部分に第3前後塗布領域56,57を形成することによって、おむつ1との摩擦による肌トラブルを軽減することができる。また、吸液性芯材25と前後ウエストシート54,55とを重ならないように配置しているので、前後ウエストシート54,55に形成された第3前後塗布領域56,57によって吸液性芯材25への体液の吸収を妨げることがない。
【0046】
この実施形態においては、第1および第2塗布領域51,52に加えて、さらに第3前後塗布領域56,57を形成することとしたので、より一層着用者の肌トラブルを防止することができる。第3前後塗布領域56,57をシャーシ2とは別の前後ウエストシート54,55に形成するようにしているが、シャーシ2に直接形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態のおむつの斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】おむつの平面図。
【図4】おむつの説明図。
【図5】おむつの説明図。
【図6】第2実施形態を示した図3と同様の図。
【符号の説明】
【0048】
1 おむつ
2 シャーシ
3 離隔シート
5 身体側内面
6 着衣側外面
7 前ウエスト域
8 後ウエスト域
9 クロッチ域
10 吸液構造体
18 ウエスト開口
19 レッグ開口
21 レッグ弾性部材
23 吸液性パネル(吸液構造体)
29 空隙
30 両側部分
31 両側部分
32 中間部分
33 前方連通部
34 後方連通部
51 第1塗布領域
52 第2塗布領域
53 非塗布領域
54 前ウエストシート
55 後ウエストシート
56 第3前塗布領域(第3塗布領域)
57 第3後塗布領域(第3塗布領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側および着衣側と、前記縦方向に連なる前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、少なくとも前記クロッチ域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記クロッチ域において前記シャーシから離間可能に形成された離隔シートとを含み、前記シャーシは、前記前後ウエスト域にウエスト開口を形成し、前記クロッチ域に一対のレッグ開口を形成する吸収性物品において、
前記離隔シートは、前記縦方向に延びるとともに前記横方向に対向する両側部分と、前記両側部分の間に連なる中間部分と、前記両側部分および前記中間部分によって形成され前記身体側と前記シャーシ側とを連通させる連通部と、前記縦方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられる離隔シート弾性部材とを含み、前記縦方向に対向して前記横方向に延びる前後端縁が前記シャーシの身体側に固着され、前記吸液構造体が前記クロッチ域から前記前後ウエスト域に亘って前記前後ウエスト域が対向するように湾曲することによって、前記離隔シートと前記吸液構造体との間に空隙を形成するとともに、少なくとも前記中間部分が着用者の肌に接触可能に形成され、
前記離隔シートには前記中間部分にローションが塗布された第1塗布領域が形成され、前記シャーシには前記連通部から露出する部分に前記ローションが塗布された第2塗布領域が形成されたことを特徴とする前記吸収性物品。
【請求項2】
前記シャーシは、前記股下域において前記ローションが塗布されない非塗布領域を含み、前記非塗布領域は、前記離隔シートの中間部分との対向部分に形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ローションは、前記離隔シートの前記身体側から前記シャーシに向かって塗布される請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記離隔シートは、前記中間部分を介して前記前ウエスト域側に位置する前方連通部と、前記後ウエスト域側に位置する後方連通部とを含み、前記中間部分は、前記クロッチ域に形成される請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記シャーシの身体側であって前記前後ウエスト域の少なくともいずれか一方には前記ローションが塗布された第3塗布領域をさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第3塗布領域は、前記ウエスト開口に沿って前記横方向に延びて形成される請求項1〜5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記ローションは、エモリエント成分と前記エモリエント成分を固定する固定化成分とを含む請求項1〜6のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−232881(P2009−232881A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78893(P2008−78893)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】