説明

吸収性物品

【課題】会陰部の細い隙間にフィットさせ、後漏れを確実に防止するとともに、装着感を向上させた吸収性物品を提供する。
【解決手段】透液性の表面シート3と、裏面シート2との間に吸収体4を介在し、会陰部に対応する前記表面シート3の上面側に、体液排出部H側に開口するポケット空間Pを形成するためのポケットシート12を設け、かつ前記ポケットシート12に対し生理用ナプキン1の幅方向中央部に長手方向に沿って弾性伸縮部材13を配設する。これによりポケットシート12の幅方向中央部を会陰部の細長い隙間に完全にフィットさせ、ポケット空間P内に体液を捕捉・吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッド等の吸収性物品、詳しくは会陰部に対応する表面シートの上面側に、体液排出部側に開口するポケット空間を形成するためのポケットシートが設けられた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、経血等の後漏れを防止するための手段が種々講じられている。例えば下記特許文献1では、図11に示されるように、液透過性を有する表面シート51、液不透過性を有する裏面シート52、及び液保持性を有し表面シート51及び裏面シート52の間に介在し且つ防漏溝53により表面シート51と部分的に一体化した吸収体54を備え、前記表面シート51の両側部には、防漏壁55が伸縮自在に設けられ、防漏壁55は、表面シート51の前方部から後方部に亘って配された基壁部と、表面シート51に接近又は離間した状態で基壁部の上部を覆う帯状伸縮部56とからなり、かつ前記表面シート51の後方部に、帯状伸縮部56に接合して表面シート51との間に袋状空間を形成するための防漏シート57が設けられた吸収性物品50が開示されている。
【0004】
しかしながら、下記特許文献1に記載される防漏シートの場合、防漏シート57と表面シート51との間に開口が形成された状態であれば、後方に流れる体液を確実に捕捉することができるけれども、防漏シート57が身体に押されて潰れた状態になってしまうと、袋状空間の開口が閉鎖された状態となってしまい、体液が防漏シート57の開口縁を越流してしまい、後漏れが生じてしまうなどの問題があった。このため、下記特許文献2では、吸収性物品の後側部において、透液性表面シートの上面側に体液排出部側に開口するポケット空間を形成するためのポケットシートが設けられ、かつ前記ポケットシートに対し前記ポケット空間を開口させるための開口用弾性伸縮部材が設けられた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−337314号公報
【特許文献2】特開2007−143696号公報
【特許文献3】特開2006−149798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2記載の吸収性物品は、吸収性物品の後端部における経血等の後漏れを防止することを目的として、経血等を捕捉するポケット空間が吸収性物品の後端部に形成されるものであるため、経血等が排血口部から臀部を伝って後側に拡散することによる使用者の後漏れの不安を防止できるまでには至っていなかった。
【0007】
ところで、経血等の後漏れをより確実に防止するとともに、使用者に後漏れの不安を生じさせないようにするには、体液排出部の経血等をできる限り後側に伝えないようにすることが重要となる。ここで、身体の構造として膣口から肛門付近にかけての小さな窪み状の立体形状を成す会陰部が存在しているため、後側に経血等を拡散させないためには、この会陰部で確実に経血等を捕捉することが必要となる。
【0008】
そこで、会陰部と吸収性物品表面との密着性を高めるため、会陰部の窪みに対応して膨出する吸収体の中高部を設けるなど、吸収体を立体的に形成した吸収性物品が提案されている(特許文献3等)。
【0009】
ところが、前記会陰部は実際には前後に細長い隙間状であるため、立体的に形成した吸収体部分では、この細長い隙間の奥までフィットさせることが難しく、この細長い隙間の深部を伝って少量の経血等が後側に漏れるのを完全に防止できるまでには至っていなかった。
【0010】
また、剛性の高い吸収体では身体の動きに柔軟に変形できないため、肌との密着性が損なわれて身体との間に隙間が生じることにより、経血等が後側に大量に拡散し、後漏れを引き起こす場合があった。
【0011】
さらには、吸収体を立体的形状に形成すると吸収性物品が肉厚となり、装着感が損なわれていた。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、会陰部の細い隙間にフィットさせ、後漏れを確実に防止するとともに、装着感を向上させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性の表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
会陰部に対応する前記表面シートの上面側に、体液排出部側に開口するポケット空間を形成するためのポケットシートが設けられ、かつ前記ポケットシートに対し前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って弾性伸縮部材が配設されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、会陰部に対応する表面シートの上面側に、体液排出部側に開口するポケット空間を形成するためのポケットシートを設け、かつ前記ポケットシートに対し吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って弾性伸縮部材を配設してあるため、前記弾性伸縮部材の収縮作用により前記ポケットシートが幅方向中央部を頂点とするとして吸収性物品の表面から山形に起立した状態に維持されるとともに、この山形の先端部が会陰部の細長い隙間に入り込み会陰部に完全にフィットする。従って、体液排出部から後側に肌を伝う経血等は、この会陰部に完全にフィットしたポケットシートによってポケット空間内に捕捉・吸収され、会陰部より後側に拡散することが無くなる。このため、使用者に後漏れの不安を生じさせないことはもとより、経血等の後漏れを確実に防止できるようになる。また、ポケットシートの中央部を会陰部の隙間に入り込ませているため、ポケットシートが身体の動きに柔軟に変形し、肌との密着性を保つことができる。
【0015】
さらに、吸収体の中高部を設けるなど吸収体を立体的形状にする必要がなくなるため、吸収性物品を薄型化でき、装着感が向上できる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記ポケットシートは、親水性不織布、撥水性不織布又はメッシュシートのいずれか又は組合せからなる請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、前記ポケットシートとして、親水性不織布、撥水性不織布又はメッシュシートのいずれか又は組合せから構成することにより、例えば、前記親水性不織布で構成した場合にはポケットシート自体が身体を伝う経血等を吸収でき、前記撥水性不織布で構成した場合には外面側を伝う経血等をはじくためべた付きが起こりにくく、前記メッシュシートで構成した場合には経血等が透過しやすいためべた付きが起こりにくくなる。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記ポケットシートは、外面側の撥水性不織布と内面側の親水性不織布との貼り合わせからなり、前記親水性不織布が前記撥水性不織布の前端縁を巻き込んで前記撥水性不織布の外面側まで延在して接合されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、前記ポケットシートとして、外面側の撥水性不織布と内面側の親水性不織布との貼り合わせからなるものとし、前記親水性不織布を前記撥水性不織布の前端縁を巻き込んで撥水性不織布の外面側まで延在して接合することにより、ポケットシートの前端縁部において身体を伝う経血等を吸収するとともに、この前端縁部に吸収された経血等を内面側の親水性不織布の親水作用によりポケット空間内に誘導することが可能となる。従って、会陰部で確実に経血等が捕捉・吸収されるとともに、ポケットシート外面のべた付きが防止できる。
【0020】
請求項4に係る本発明として、前記ポケットシートには、吸収体を積層させてある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明は、ポケットシートに吸収体を積層させて体液吸収効果を持たせることにより、会陰部においてより確実に体液を吸収し、後側に拡散するのを防止したものである。
【0022】
請求項5に係る本発明として、前記吸収性物品の表面側両側部には表面側に起立する立体ギャザーが形成され、
前記ポケットシートは、両側が前記立体ギャザーに接合されるとともに、後側が前記表面シートに接合されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項5記載の発明は、表面側両側部に表面側に起立する立体ギャザーが形成された吸収性物品に対して前記ポケットシートを設ける場合であり、前記ポケットシートの両側を立体ギャザーに接合するとともに、後側を表面シートに接合するようにしたものである。これにより、立体ギャザーから連続して前記ポケット空間が形成されるようになり、ポケットシートがより高く表面側に起立するため、確実に会陰部の細長い隙間にフィットさせることができるようになる。
【0024】
請求項6に係る本発明として、前記立体ギャザーは、前記吸収性物品の側方側から中心側方向に延在したギャザー用不織布の中心側を複数に折り返して形成され、
前記ポケットシートの後側において前記ギャザー用不織布は、折り返し面が相互に接合されることによって非起立状態とされるか、最下段の折り返し面を除く折り返し面が相互に接合されることによって断面直線状の起立状態とされている請求項5記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項6記載の発明は、ポケットシートの後側におけるギャザー用不織布の起立/非起立の状態について規定したものである。具体的には、ポケットシートの後側においてギャザー用不織布は、折り返し面を相互に接合することによって非起立状態とするか、最下段の折り返し面を除く折り返し面を相互に接合することによって断面直線状の起立状態としたものである。非起立状態とした場合には、ポケットシートの後側で両側部がナプキン表面と平行になり、ポケット空間がきっちり形成され、断面直線状の起立状態とした場合には、ポケットシート後側の表面を臀部の丸みに沿ってフィットさせることができるようになる。
【0026】
請求項7に係る本発明として、前記立体ギャザーは、前記吸収性物品の側方側から中心側方向に延在したギャザー用不織布の中心側を三重以上に折り返して形成されている請求項5、6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0027】
上記請求項7記載の発明は、ポケットシートをより高く起立させるため、吸収性物品の中心側方向に延在したギャザー用不織布の中心側を三重以上に折り返して四つ折りとした立体ギャザーを形成したものである。
【0028】
請求項8に係る本発明として、前記ポケットシートに配設される弾性伸縮部材は、前記吸収性物品の幅方向に蛇行して配設してある請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0029】
上記請求項8記載の発明では、前記ポケットシートに配設する弾性伸縮部材を、吸収性物品の幅方向に蛇行して配設することにより、ポケットシートに幅方向中央部に向かう収縮力を付与することができ、ポケットシートの幅方向中央部をより確実に表面側に起立させることができるようになり、会陰部の細長い隙間により完全にフィットさせることができるようになる。
【0030】
請求項9に係る本発明として、前記ポケットシートの後側に、体液排出部側に開口するポケット空間を形成するための第2のポケットシートが設けられている請求項1〜8いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0031】
上記請求項9記載の発明では、前記ポケットシートの後側に、体液排出部側に開口するポケット空間を形成するための第2のポケットシートを設けることにより、万一前側のポケットシートを越流して後側に体液が拡散した場合でも、前記第2のポケットシートに捕捉されるため後漏れが防止できるようになる。
【発明の効果】
【0032】
以上詳説のとおり本発明によれば、会陰部の細い隙間にフィットさせ、後漏れを確実に防止するとともに、装着感を向上させた吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視図である。
【図5】図1のV−V線矢視図である。
【図6】他の形態(その1)に係る図1のV−V線矢視図である。
【図7】他の形態(その2)に係る図1のV−V線矢視図である。
【図8】他の形態に係る図1のII−II線矢視図である。
【図9】他の形態に係る図1のIII−III線矢視図である。
【図10】他の形態に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【図11】従来の吸収性物品50の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、体液排出部位Hを含む所定の長手方向範囲において左右一対の前部側立体ギャザーBSを形成するとともに、お尻側部位において左右一対の後部側立体ギャザーBSを形成する立体ギャザーBS、BSとから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と、サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0035】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0036】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0037】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0038】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0039】
本生理用ナプキン1の表面には、前記透液性表面シート3の表面側からナプキン1の長手方向に細長く圧搾溝8が形成されている。前記圧搾溝8は、図示例のように周方向に閉合するナプキン長手方向に細長く形成することが好ましい。このとき前記圧搾溝8は、後段で詳述するポケットシート12の貼着工程より前段の工程で形成してポケットシート12の下側に設けることにより、両脚を閉じて股間幅が狭くなったときに圧搾溝8を可撓軸として変形させる効果を有するため好ましい。なお、ポケットシート12の配設区間及びその近傍には圧搾溝8を設けないことも可能である。また、前記圧搾溝8の前端部8aの前側には、間を空けて前端部に結合する半円弧状の圧搾溝8bが形成され、前記前端部圧搾溝8aとで三日月形状の貯留ポケットが形成されている。その結果、ナプキン1の前端部を船先状に屈曲させ肌に密着させるとともに、体液が前端部側に流出したとしても、貯留部となって体液の流出を阻止するようになっている。一方、ナプキン1の後端部には、複合半円弧状の圧搾溝8cが独立して形成され、体液が後部側に流出したとしても貯留部となって体液の流出を阻止するようになっている。なお、前記圧搾溝8、8a、8b、8cは、熱及び/又は圧力によるエンボッシングや、超音波、またはその組合せ等、任意の手段によって付与することが可能である。
【0040】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2〜図4の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBS、BSは前記透液性表面シート3とは別の立体ギャザー形成用不織布6によって形成され、立体ギャザーBS、BSの外側には、前記不透液性裏面シート2の表面側にサイド不織布7が積層されている。これら立体ギャザー形成用不織布6及びサイド不織布7は、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかる不織布6,7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0041】
前記サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW、Wを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層10…,11…を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。前記サイド不織布7は、前記立体ギャザー形成用不織布6を生理用ナプキン1の側縁まで延在させた場合には不要である(図8参照)。
【0042】
(立体ギャザーBSについて)
前記立体ギャザーBSを構成する立体ギャザー形成用不織布6は、二重に折り返されたシートが用いられ、この二重シート内部の所定位置に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された複数条の糸状弾性伸縮部材21…、22…が配設され、体液排出部位Hを含む所定の長手方向範囲において、図2に示されるように、左右一対の前部側立体ギャザーBSを形成するとともに、それよりもお尻側部位においては、図3に示されるように、左右一対の後部側立体ギャザーBSを形成するようになっている。
【0043】
前記立体ギャザーBSとしては、図2〜図4に示されるように、折り畳み状態で、ナプキン1の側方側から中心側方向に延在した立体ギャザー形成用不織布6が中心側位置で側方側に折り返される第1折返し部32と、この第1折返し部32に連続して側方側位置で中心側方向に折り返される第2折返し部33と、この第2折返し部33に連続して中心側位置で側方側に折り返される第3折返し部34とによって三重に折り返された四つ折りとされ、下層側から順に第1折返し面35、第2折返し面36、第3折返し面37及び第4折返し面38を有するものとすることができる。なお、後段で説明するように、立体ギャザー形成用不織布6を二重に折り返し、三つ折りの折り畳み状態とすることもできる(図8参照)。
【0044】
そして、同図2及び図3に示されるように、前記第2折返し部33は、前記第4折返し面38の外方側端縁31aよりも外側に位置するようにし、前記第4折返し面38の外方側端縁31aよりも外側位置で前記第2折返し面36が使用面側に接合されるようになっている。なお、図示例では、サイド不織布7が第1折返し面35の外面側の中間部分にまで延在しているため、前記第2折返し面は、サイド不織布7の上面に対して接合されるようになっているが、サイド不織布7がこの接合部位まで延在しない場合には、前記第1折返し面35に対して接合すればよい。
【0045】
前記ナプキン1の体液排出部位Hを含む所定の長手方向範囲に形成された前部側立体ギャザーBSは、図2に示されるように、前記第2折返し面36の内、相対的に内側部分が長手方向に亘って使用面側に接合され、その他の折返し面同士は非接合とされ、前記吸収体4の側縁部又はその近傍から起立する側面起立部30と、この側面起立部30の先端から連続して形成されるとともに、前記ナプキン1の表面に対して略水平又は中心側に傾斜して形成される所定幅の前記第4折り返し面38とを有し、前記側面起立部30が前記第4折り返し面38の外方側端縁より外側に位置した状態で起立している。前記側面起立部30及び第4折り返し面38には、それぞれ、生理用ナプキン1の長手方向に沿って、1又は複数本の、図示例では各3本づつ糸状弾性伸縮部材21…、22…が配設されている。
【0046】
一方、前記ナプキン1のお尻側部位に形成された後部側立体ギャザーBSは、図3に示されるように、前記第1折返し面35と第2折返し面36とが非接合とされ、かつ前記第2折返し面36と第3折返し面37とが接合されるとともに、前記第3折返し面37と第4折返し面38とが接合され、前記第1折返し部32を起立点として外側方向に向けて直線傾斜状に起立するようになっている。
【0047】
なお、前記前部側立体ギャザーBSよりも前側及び前記後部側立体ギャザーBSよりも後側においては、図4に示されるように、第1折返し面35、第2折返し面36、第3折返し面37及び第4折返し面38のすべての面が接着され、折り畳まれた状態となっている。
【0048】
このように、本生理用ナプキン1では、体液排出部位Hを含む所定の長手方向範囲においては、立体ギャザーの第4折返し面38が装着者の股間部に密着するように起立し、お尻側部分では直線傾斜状に起立した立体ギャザーが臀部の丸みに沿って密着するようになるため、長手方向に亘り設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSによって、それぞれの部位の身体形状に合ったフィット性の高い立体ギャザーを形成することが可能となる。
【0049】
(ポケットシート12について)
本生理用ナプキン1には、図1に示されるように、着用者の会陰部に対応する透液性表面シート3の上面側に、体液排出部H側に開口するポケット空間を形成するためのポケットシート12が設けられ、かつ前記ポケットシート12に対し生理用ナプキン1の幅方向中央部に長手方向に沿って弾性伸縮部材13が配設されている。
【0050】
このため、前記ポケットシート12は、図2に示されるように、前記弾性伸縮部材13の収縮作用により幅方向中央部を頂点とする山形に起立した状態に維持されるとともに、この山形の起立先端部が、膣口から肛門付近にかけて小さな窪み状の立体形状を成し前後方向に細長い隙間状を成す会陰部の隙間の奥まで完全にフィットするようになる。従って、体液排出部から後側に伝う体液は、この会陰部に完全にフィットしたポケットシート12によってポケット空間P内に捕捉・吸収され、会陰部より後側に拡散することが無くなるため、使用者に後漏れの不安を生じさせないことはもとより、体液の後漏れを確実に防止できるようになる。また、生理用ナプキン1の表面から山形に起立したシートの幅方向中央部が会陰部の隙間に入り込むため、身体の動きに柔軟に変形でき、肌との密着性を保つことができる。
【0051】
また、前記ポケットシート12が設けられることにより、吸収体の中高部を設けるなど吸収体を立体的形状にする必要がなくなるため、生理用ナプキン1を薄型化することができ、生理用ナプキン1の装着感が向上する。
【0052】
かかるポケットシート12は、体液排出部側に開口するポケット空間が形成されるように両側部12a、12a及び後側部12bがそれぞれナプキン表面に接着されていればよい。前記立体ギャザーBSが形成される本生理用ナプキン1においては、前記ポケットシート12は、図2に示されるように、両側部12a、12aをそれぞれ立体ギャザーBSの上面に接合し、後側部12bを表面シート3及び立体ギャザーBSの表面側に接合するようにすることが望ましい。このため前記ポケットシート12は、図示例では前記第4折り返し面38の外方側端縁31aとほぼ一致する幅方向寸法で形成することが望ましい。これにより、ポケットシート12によるポケット空間Pは、両側の立体ギャザーBSの起立先端部から連続する高い開口が形成されるようになり、肌との密着性を高めることができる。また、両側の立体ギャザーBSから連続的に設けることにより、ポケットシート12がさらに柔軟に変形するようになり、肌との密着性をより高めることができる。
【0053】
前記立体ギャザーBSは、前記後側部12bの接合領域を含む近傍部分より後側の所定領域が前記後側部立体ギャザーBSの起立状態とされ、それより前側の所定領域が前記前側部立体ギャザーBSの起立状態とされることが好ましい。これにより、立体ギャザーBSの起立状態に合わせて体液排出部H側に開口するポケット空間が形成されるようになる。前記前側部立体ギャザーBSと後側部立体ギャザーBSとの変換点は、後側部12bの接合領域より前側であることが好ましいが、これより後側とすることもできる。
【0054】
前記ポケットシート12は、図5に示されるように、前端部で二重に折り返した貼り合わせシート材によって形成され、その層間に前記弾性伸縮部材13が伸張状態で接合されている。前記ポケットシート12は、一重のシート材によって形成しても良く、この場合は、前記弾性伸縮部材13はポケットシート12の内面側に介在させるようにする。具体的には、ポケットシート12の中央部分に小幅の折り畳み部分を形成し、この折り畳み部分の間に弾性伸縮部材13を介在させた状態で対向面同士をホットメルト接着剤によって接着することにより配設する態様などとすることができる。
【0055】
前記ポケットシート12の素材としては、親水性不織布、撥水性不織布又はメッシュシートのいずれか又は組合せからなるものを使用することができる。前記親水性不織布を使用した場合、保水機能を有するためべた付きが起こる欠点があるが、身体を伝う微量の体液であればシート自体に吸収でき、後側への体液の拡散を防止できる。前記撥水性不織布を使用した場合、体液がポケットシート12の外面側に越流したときに吸収機能が無いため後側へ拡散し易いという欠点があるが、体液をはじくためべた付きが起こりにくく、装着感に優れるという利点がある。なお、撥水性不織布に複数の開孔を設けることにより外面側の体液をポケット空間内に透過させることができ、前記欠点を解決できる。前記メッシュシートを使用した場合、一般に硬い材質であるためビニール感を生じさせるが、体液が外面側に越流した場合でもポケット空間内に素早く透過してべた付きが起こりにくく、装着感に優れるという利点がある。
【0056】
また、前記ポケットシート12の組合せ例としては、図6に示されるように、外面側の撥水性不織布12cと内面側の親水性不織布12dとの貼り合わせからなり、前記親水性不織布12dが撥水性不織布12cの前端縁を巻き込んで撥水性不織布12cの外面側まで延在して接合されるものとすることができる。ポケットシート12の前端縁を巻き込むようにに親水性不織布12dを配設することにより、この前端縁部において身体を伝う体液を親水性不織布12dに吸収できるとともに、親水性不織布12dの親水作用によりこの前端縁部に吸収された体液をポケット空間内に誘導できる。このため、会陰部で体液が確実に捕捉・吸収されるとともに、ポケットシート12の外面側への体液の拡散が生じないため、外面側のべた付きが防止できる。
【0057】
前記ポケットシート12には、図7に示されるように、吸収体14を積層させることができる。図示例では二重に貼り合わされたシートの層間に吸収体14を介在してあるが、少なくとも吸収体14の外面側にシート材が配設されていればよい。外面側に配設されるシート材は、透液性を有するもの、具体的には親水性不織布やメッシュシートからなる素材のものを使用する。前記吸収体14としては、嵩を小さくできるエアレイド吸収体を薄型のシート状としたものを用いるのが好ましい。また、弾性伸縮部材13は、外面側シート材と吸収体14との層間に設けることが好ましい。
【0058】
前記弾性伸縮部材13は、本形態例ではポケットシート12の幅方向中央に1条配置としたが、幅方向に間隔をおいて複数条配設するようにしても良い。
【0059】
ところで、前記立体ギャザーBSは、上述の三重に折り返された四つ折りのもの(図2等)に代えて、図8に示されるように、ナプキン1の横断面に対して、折り畳み状態で、ナプキン1の側方側から中心側方向に延在したシートが中心側位置で側方側に折り返される第1折り返し部32と、この第1折り返し部32に連続して側方側位置で中心側方向に折り返される第2折り返し部33とによって二重に折り返された三つ折りとされ、下層側から順に第1折り返し面35、第2折り返し面36及び第3折り返し面37を有するものとすることができる。かかる立体ギャザーBSにおいて、前記ポケットシート12は、両側がほぼ前記第2折り返し部33に一致する外形線で形成されたものを使用し、前記ポケットシート12の両側部12a、12aを立体ギャザーBSの前記第3折り返し面37の外面側に接合される。
【0060】
一方、ポケットシート12後側の所定区間においては、図9に示されるように、前記立体ギャザーBSを構成する立体ギャザー形成用不織布6の第1折り返し面35と第2折り返し面36とを接合することによって非起立状態としてもよい。この区間を非起立状態とすることにより、ポケットシート12の後側で両側部がナプキン表面と平行になり、ポケット空間がきっちり形成されるようになる。なお、この非起立状態は、前記ポケットシート12の後側からナプキン後端部にかけて形成することもできる。
【0061】
他方で、前記ポケットシート12に配設される弾性伸縮部材13は、図10に示されるように、生理用ナプキン1の幅方向に蛇行して設けることができる。これにより、ポケットシート12には、生理用ナプキン1の長手方向に沿う収縮力に加えて、幅方向中央部に向かう収縮力が付与され、ポケットシート12の幅方向中央部をより確実に表面側に起立させることができる。このため、ポケットシート12を会陰部の細長い隙間により確実にフィットさせることができるようになる。弾性伸縮部材13の蛇行幅Dは、8mm〜20mm程度とするのが好ましい。
【0062】
また、同図10に示されるように、前記ポケットシート12の後側に、体液排出部H側に開口するポケット空間を形成するための第2ポケットシート15を設けることができる。前記第2ポケットシート15には、前記ポケットシート12と同様に、生理用ナプキン1の幅方向中央部に長手方向に沿って弾性伸縮部材16が配設されている。これにより、万一前側のポケットシート12を越流する体液があった場合でも、前記第2ポケットシート15により捕捉・吸収することができ、後漏れが防止できるようになる。前記第2ポケットシート15は生理用ナプキン1の後端部に設けてもよく、またポケットシート12の後側に複数のポケットシートを設けてもよい。前記第2ポケットシート15を設ける場合も、前述の通りポケットシート12、15の下側に圧搾溝8が形成されることが好ましく、ポケットシート12、15の配設区間及びその近傍は圧搾溝8の不連続区間とすることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…立体ギャザー形成用不織布、7…サイド不織布、8…圧搾溝、10・11…粘着剤層、12…ポケットシート、13…弾性伸縮部材、14…吸収体、15…第2ポケットシート、16…弾性伸縮部材、30…側面起立部、31a…外方側端縁、32…第1折返し部、33…第2折返し部、34…第3折返し部、35…第1折返し面、36…第2折返し面、37…第3折返し面、38…第4折返し面、BS…立体ギャザー、BS…前部側立体ギャザー、BS…後部側立体ギャザー、P…ポケット空間、W…ウイング状フラップ、W…第2ウイング状フラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
会陰部に対応する前記表面シートの上面側に、体液排出部側に開口するポケット空間を形成するためのポケットシートが設けられ、かつ前記ポケットシートに対し前記吸収性物品の幅方向中央部に長手方向に沿って弾性伸縮部材が配設されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記ポケットシートは、親水性不織布、撥水性不織布又はメッシュシートのいずれか又は組合せからなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ポケットシートは、外面側の撥水性不織布と内面側の親水性不織布との貼り合わせからなり、前記親水性不織布が前記撥水性不織布の前端縁を巻き込んで前記撥水性不織布の外面側まで延在して接合されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記ポケットシートには、吸収体を積層させてある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品の表面側両側部には表面側に起立する立体ギャザーが形成され、
前記ポケットシートは、両側が前記立体ギャザーに接合されるとともに、後側が前記表面シートに接合されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品

【請求項6】
前記立体ギャザーは、前記吸収性物品の側方側から中心側方向に延在したギャザー用不織布の中心側を複数に折り返して形成され、
前記ポケットシートの後側において前記ギャザー用不織布は、折り返し面が相互に接合されることによって非起立状態とされるか、最下段の折り返し面を除く折り返し面が相互に接合されることによって断面直線状の起立状態とされている請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記立体ギャザーは、前記吸収性物品の側方側から中心側方向に延在したギャザー用不織布の中心側を三重以上に折り返して形成されている請求項5、6いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記ポケットシートに配設される弾性伸縮部材は、前記吸収性物品の幅方向に蛇行して配設してある請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記ポケットシートの後側に、体液排出部側に開口するポケット空間を形成するための第2のポケットシートが設けられている請求項1〜8いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−177224(P2011−177224A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42147(P2010−42147)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】