説明

吸収性物品

【課題】着用時に蒸れにくく、そして排泄物を吸収した後もトップシートの肌当接面がサラサラしている吸収性物品を提供すること。
【解決手段】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、液透過性のトップシート及び液不透過性のバックシートの間の吸収体とを含む吸収性物品であって、吸収性物品が、45%以下の保温率と、10質量%以下のリウェット率とを有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、45%以下の保温率と、10質量%以下のリウェット率とを有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等では、長年積み重ねられてきた技術開発により基本的性能が向上し、以前と比較して、経血、尿等の排泄物を吸収した後に、漏れ等が生ずることが少なくなってきており、現在は、さらなる高機能化、例えば、肌着に近い着用感を有すること、例えば、着用時に蒸れを感じ難いこと、排泄物を吸収した後でもトップシートがサラサラしていること等が求められている。なお、上記蒸れは、着用者が着用時に暑さを感じ、発汗することにより生じやすい。
【0003】
例えば、特許文献1には、10cN/cm2圧力下における水平方向への空気透過容量が10mL/cm2・秒以上であることを特徴とする吸収性物品用の表面シート(トップシート)が記載され、効果として、着用時に蒸れを感じにくいことが挙げられている。
しかし、特許文献1に記載の表面シートは、その厚さ方向に荷重がかかった場合でも潰れにくい凹凸を設けることにより、水平方向の通気性を確保するような設計がなされているため、必然的に厚さが厚くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−126147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者が確認したところ、特許文献1に記載の表面シートを含む吸収性物品は、その厚さに由来して保温性が高くなり、着用者が着用時に暑さを感じ、発汗につながるため、着用時の蒸れを完全には解消することができないことが分かった。なお、特許文献1には、着用時の蒸れを感じにくくするために、表面シート以外の構成要素、例えば、吸収体をどのように設計すべきかについては、何ら記載されていない。
従って、本発明は、着用時に蒸れにくく、そして排泄物を吸収した後もトップシートの肌当接面がサラサラしている吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、上記液透過性のトップシート及び液不透過性のバックシートの間の吸収体とを含む吸収性物品であって、上記吸収性物品が、45%以下の保温率と、10質量%以下のリウェット率とを有すること、を特徴とする吸収性物品により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、上記液透過性のトップシート及び液不透過性のバックシートの間の吸収体とを含む吸収性物品であって、
上記吸収性物品が、45%以下の保温率と、10質量%以下のリウェット率とを有すること、
を特徴とする、上記吸収性物品。
【0008】
[態様2]
上記液透過性のトップシートの肌当接面の水分率が20質量%以下である、態様1に記載の吸収性物品。
[態様3]
上記吸収性物品の、排泄口当接域における厚さが7mm以下であり、上記吸収性物品の、排泄口当接域における密度が0.07g/cm3以上である、態様1又は2に記載の吸収性物品。
【0009】
[態様4]
上記吸収体の、排泄口当接域における坪量が、250〜500g/m2の範囲内にある、態様1〜3のいずれか一つに記載の吸収性物品。
[態様5]
上記吸収体の、排泄口当接域以外の領域における坪量が、上記排泄口当接域における坪量よりも少ない、態様1〜4のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0010】
[態様6]
上記吸収体が、吸収体の一部を厚さ方向に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を、吸収体の全面に有する、態様1〜5のいずれか一つに記載の吸収性物品。
[態様7]
上記液透過性のトップシートが、肌当接面に、上記吸収性物品の長手方向に延びる、複数の凸部と、複数の凹部とを、長手方向と直交する方向に交互に有する、凹凸を有する不織布である、態様6に記載の吸収性物品。
【0011】
[態様8]
上記液透過性のトップシートが、上記複数の凹部の一部に、上記不織布の存在しない孔を有する、凹凸及び孔を有する不織布であり、
上記吸収性物品において、上記液透過性のトップシートの孔と、上記吸収体の圧搾部とが、上記吸収性物品の厚さ方向に、少なくとも一部重なっている、態様7に記載の吸収性物品。
【0012】
[態様9]
上記吸収性物品が、上記液透過性のトップシートと、上記吸収体との間に、セカンドシートをさらに含み、
上記吸収性物品が、上記液透過性のトップシート及びセカンドシートを、それらの積層方向に共に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を有する、態様1〜8のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0013】
[態様10]
上記吸収性物品が、上記液透過性のトップシート、所望によるセカンドシート、及び吸収体を、それらの積層方向に共に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を有する、態様1〜9のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸収性物品は、着用時に蒸れにくく、そして排泄物を吸収した後もトップシートの肌当接面がサラサラしている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、トップシートの肌当接面の水分率を測定することができる水分量測定装置を示す図である。
【図2】図2は、図1に示される水分量測定装置を用いて、水分量を測定する際の、センサ2と、試料4との位置関係の例を示す図である。
【図3】図3は、本発明に用いられる吸収体の実施形態の1つを示す図である。
【図4】図4は、凹凸を有する不織布の例を示す図である。
【図5】図5は、凹凸を有する不織布を製造する工程を説明するための図である。
【図6】図6は、凹凸及び孔を有する不織布の実施形態の1つの模式図である。
【図7】図7は、孔と、吸収体の圧搾部とが、吸収性物品の厚さ方向に、少なくとも一部重なっている状態を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の吸収性物品の実施形態の1つを示す図である。
【図9】図9は、例1で得られた、電圧と、水分率との関係を示す図である。
【図10】図10は、例2で得られた、排泄口当接域における厚みと、保温率との関係を示す図である。
【図11】図11は、例2で得られた、排泄口当接域における密度と、保温率との関係を示す図である。
【図12】図12は、例2で得られた、排泄口当接域における密度と、リウェットとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の吸収性物品について、以下、詳細に説明する。
本発明の吸収性物品は、約45%以下の保温率と、約10質量%以下のリウェット率とを有することを特徴とするが、吸収性物品の保温率を約45%以下とし且つリウェット率を約10質量%以下とすることにより、着用時に蒸れにくく、そして排泄物を吸収した後もサラサラしていることが、本願発明者らにより見出された。
【0017】
上記保温率は、以下のように測定することができる。
(1)カトーテック株式会社製、KES−F7精密迅速熱物性測定装置 サーモラボIIを準備し、室温を20℃に、そして湿度を60%RHに調整する。
(2)使い捨ておむつの保温率を測定する場合には、排泄口当接域の中心を中心として、長手方向に12cm及び長手方向と直交する方向(以下、長手方向と直交する方向を、単に「直交方向」と称する場合がある)12cmの試料をカットする。
生理用ナプキンを測定する場合には、一般的に、12cm×12cmの試料を確保することが難しいので、排泄口当接域の中心を中心として、長手方向に8cm及び直交方向に8cmの試料をカットする。
【0018】
(3)サーモラボIIに付属のサンプル枠に、上記試料を、両面テープで貼り付ける。なお、使い捨ておむつの場合には、上記測定装置の通常の手順に従って、試料を、サンプル枠に貼り付け、そして生理用ナプキンの場合には、12cm×12cmにカットされた市販のショーツ、例えば、綿製のショーツを、サンプル枠に両面テープで貼り付け、次いで、試料がサンプル枠の中央に来るように、試料を、上記ショーツに、両面テープで貼り付ける。
(4)サーモラボIIにおいて、風洞の風速を30cm/秒に設定し、BT−Boxの温度を、30℃に設定する。
【0019】
(5)試料を貼り付けたサンプル枠の温度を30℃に保持するために必要な熱量Qを測定する。
(6)試料がない状態において、サンプル枠の温度を30℃に保持するために必要な熱量Q0を測定する。なお、使い捨ておむつの場合には、サンプル枠のみをBT−Boxに置いた状態で熱量Q0を測定し、そして生理用ナプキンの場合には、ショーツを貼り付けたサンプル枠をBT−Boxに置いた状態で熱量Q0を測定する。
(7)保温率を、次の式(1)に従って算出する。
保温率(%)=100×(Q0−Qd)/Q0 式(1)
【0020】
本発明の吸収性物品において、上記保温率は、約45%以下であり、約43%以下であることが好ましく、そして約42%以下であることがさらに好ましい。上記保温率が高いほど、着用者が着用時に暑さを感じ、発汗し、蒸れにつながりやすいためである。なお、上記保温率の下限は、約0%である。保温率を約0%に近づけることにより、暑さに関して、吸収性物品を付けていない状態に近づけることができる。
上記保温率は、例えば、吸収性物品の厚さを薄くすること、特に、排泄口当接域における吸収性物品の厚さを薄くすることにより下げることができる。吸収性物品の厚さを薄くすることにより、吸収性物品内部に存在する、保温性の高い空気の量が減り、吸収性物品の保温率が下がると考えられる。
【0021】
上記保温率は、後述の吸収性物品の密度等によっても変化するため、吸収性物品の厚さのみで保温性を論じることは難しいが、約45%以下の保温率を達成するために、吸収性物品の厚さ、特に、排泄口当接域における吸収性物品の厚さを、例えば、約7mm以下、約6mm以下、約5mm以下等とすることができる。なお、吸収性物品の厚さ、特に、排泄口当接域における吸収性物品の厚さは、約0.1mm以上であることが好ましい。吸収性物品の厚さが1mm未満となると、排泄物の吸収総量が不十分になりやすいからである。
【0022】
上記吸収性物品の厚さは、例えば、熊谷理機工業製のTM600−Lを用いて、測定子先端直径:50mm、測定子下降速度:7.5mm/秒、及び測定加重:50gfの条件で測定することができる。
【0023】
上記保温率はまた、吸収性物品の密度を高くすること、特に、排泄口当接域における吸収性物品の密度を高くすることにより下げることができる。吸収性物品の密度を高くすることにより、吸収性物品内部に存在する、保温性の高い空気の量が減り、吸収性物品の保温率が下がると考えられる。
【0024】
保温率は、上述のように、吸収性物品の厚さ等によっても変化するため、吸収性物品の密度のみで保温性を論じることは難しいが、約45%以下の保温率を達成するために、吸収性物品の密度、特に、排泄口当接域における吸収性物品の密度を、例えば、約0.04g/cm3以上、約0.05g/cm3以上、約0.06g/cm3以上、約0.07g/cm3以上等とすることができる。
なお、本発明の吸収性物品の密度、特に、排泄口当接域における吸収性物品の密度は、好ましくは約0.5g/cm3以下であり、そしてより好ましくは約0.3g/cm3以下である。吸収性物品の密度が高くなると、吸収性物品の剛性が増す傾向があるからである。
【0025】
なお、本明細書において、「排泄口当接域」とは、概ね、着用者の排泄口に接する領域を意味し、使い捨ておむつでは、概ね、排尿部に接する領域を意味し、そして生理用ナプキンでは、概ね、膣口に接する領域を意味する。また、排泄物を吸収するために、吸収体に坪量の多い領域が存在する場合には、当該坪量の多い領域を、便宜上、排泄口当接域として取り扱うことができる。
【0026】
また、本明細書において、「排泄口当接域の中心」は、吸収性物品がフラップを有する場合には、フラップの、吸収性物品の長手方向の中央且つ吸収性物品の直交方向の中央を意味し、そして吸収性物品がフラップを有しない場合には、吸収体の長手方向における窪みを有する部分の中央且つ吸収性物品の直交方向の中央を意味する。
また、本明細書において、上記密度は、吸収性物品を、上記排泄口当接域の中心を中心として、長手方向に2cm、直交方向に2cmの試料を切り出し、その質量m(g)を測定することにより算出する。なお、吸収性物品の厚さh(mm)は、上述の熊谷理機工業製のTM600−Lにより測定した値を用いることができる。
密度D(g/cm3)は、次の式(2)により求められる。
D=m/(2×2×0.1×h) 式(2)
【0027】
上記リウェット率は、以下のように測定することができる。
(1)吸収性物品の液透過性のトップシートの上に、中央に約40mm×約10mmの穴があるアクリル板を、アクリル板の穴の中心と、吸収性物品の排泄口当接域の中心とがおおよそ重なるように置く。
(2)オートビュレットに人工経血を入れ、アクリル板の穴の中心に向かって、高さ約10〜約15mmから、人工経血を計4g滴下する。人工経血を滴下する速度は、約95mL/分である。
【0028】
(3)人工経血が、吸収性物品に吸収されたのを確認した後、上記アクリル板を外し、人工経血滴下開始から1分経過後に、トップシート上に、排泄口当接域を中心として、あらかじめ質量(A)を測定したろ紙(アドバンテック東洋製 No.2,サイズ:50mm×35mm)10枚を載せ、その上から、ろ紙に30g/cm2の圧力が加わるようにおもりを載せる。
(4)おもりを載せてから1分経過後、吸収性物品から、おもり及びろ紙を外し、ろ紙の重量(B)を測定する。
【0029】
(5)リウェット率を、次の式(3)に従って、算出する。
リウェット率(質量%)=100×{質量(B)−質量(A)}/4 式(3)
なお、人工血液は、粘度が、概ね、約22〜約26mPa・sの範囲内にあるものであれば、特に制限されないが、例えば、水1000ccに対して、グリセリン80g、CMCのナトリウム塩8g、NaCl 10g、NaHCO3 4g、赤色色素102号8g、赤色色素2号2g、及び黄色色素5号2gを混合することにより調製することができる。
【0030】
本発明の吸収性物品において、上記リウェット率は、約10質量%以下であり、約8質量%以下であることが好ましく、そして約7質量%以下であることがより好ましい。上記リウェット率が高いほど、吸収性物品が排泄物を吸収した後、椅子に座る等により、吸収性物品に圧力が加わった際にベタベタ感を感じやすい傾向があるためである。なお、上記リウェット率の下限は、約0質量%である。リウェット率を約0質量%に近づけることにより、本発明の吸収性物品が、排泄物を吸収した後にサラサラした状態を保ちやすくなる。
【0031】
上記リウェット率は、例えば、吸収性物品の密度を高くすること、特に、吸収性物品の排泄口当接域の密度を高くすることにより下げることができる。特に排泄口当接域における吸収性物品の密度を高くすることにより、吸収性物品内の不織布の繊維、吸収体内部のパルプ同士の距離が近くなるため、毛細管現象により、排泄物が、吸収性物品の内部に引き込まれやすく且つ保持されやすく、上記リウェット率が下がると考えられる。
10質量%以下のリウェット率を達成するために、排泄口当接域における吸収性物品の密度は、好ましくは約0.07g/cm3以上、より好ましくは約0.08g/cm3以上、そしてさらに好ましくは約0.09g/cm3以上である。
【0032】
なお、排泄口当接域における吸収性物品の密度は、上述のように、好ましくは約0.5g/cm3以下であり、そしてより好ましくは約0.3g/cm3以下である。吸収性物品の密度が高くなると、吸収性物品の剛性が増す傾向があるからである。
【0033】
本発明の吸収性物品は、トップシートの肌当接面の水分率が約20質量%以下であることが好ましく、約18質量%以下であることがより好ましく、そして約17質量%以下であることがさらに好ましい。トップシートの肌当接面の水分率を低くすることにより、トップシートの肌当接面の極々表面の水分率が低くなり、排泄物を吸収した後もトップシートの肌当接面がサラサラした状態を保つことができる。なお、上記水分率は、約0.3質量%以上であることが好ましく、そして約1.0質量%以上であることがより好ましい。水分率が低すぎる場合には、気候によっては着用時に静電気が発生しやすくなる場合があるからである。
上記トップシートの肌当接面の水分率は、以下のように測定することができる。
【0034】
(1)図1に示されるような水分量測定装置を準備し、室温を20℃に、そして湿度を60%RHに調整する。なお、水分量測定装置の詳細については、後述する。
(2)水分率が既知の試料を複数準備し、それらの試料において、一対の電極間にかかる電圧(V)を測定し、検量線を作成する。
(3)オートビュレットに人工経血を入れ、液透過性のトップシートの排泄口当接域の中心に向かって、人工経血を計4g滴下する。
(1)1分経過後、上記排泄口当接域の中心を中心として、吸収性物品の長手方向に12mm、直交方向に30mm範囲において、ランダムに15カ所の電圧を測定し、その平均値から、上記検量線に基づいて、水分率に換算する。
【0035】
図1に示される水分量測定装置1は、静電容量式の水分センサであるセンサ2と、吸収性物品から成る、測定すべき試料を載せる試料台であって、上記試料をその上に置くための凸面を有する試料台3と、上記センサの、上記試料に対する接触圧がほぼ一定になるようにセンサを支持する支持機構5と、試料を移動させる移動機構6と、移動機構を制御することにより、センサを試料に対して相対的に移動させながら、センサにより、複数箇所において試料の水分量を測定し、そしてそれにより、試料の水分量分布を測定する測定機構9とを具備する。
【0036】
図1に示される水分量測定装置1において、試料台3は、正円柱を、中心軸線を通る面で切断することにより形成された半正円柱型を有する。さらに、図1に示される水分量測定装置1において、支持機構5は、おもり8の位置により試料4に加えられる荷重を調節することができる天秤であり、図1にBで示される鉛直方向(以下、「方向B」と称する場合がある)に一定の荷重を加えることができる。
【0037】
図1に示される水分量測定装置1において、移動機構6は、試料台3を、正円柱の中心軸線の回りの方向Aに沿って回転させ、且つ試料台3を、正円柱の中心軸線と平行、すなわち、図1では、手前から奥の方向に往復運動させることができる。移動機構6が、試料台3を方向Aに回転させ、さらに試料台3を手前から奥の方向に往復運動させることにより、試料の水分量の分布を評価することができる。
【0038】
図1に示される水分量測定装置1において、センサ2は、支持機構5を介して、そして移動機構6は直接、測定機構9に接続されている。
図1の水分量測定装置1において、試料4は、試料台3の上にセットされ、そして絶縁フィルム7が、センサ2と試料4との間に配置され、そして試料4を覆っている。
【0039】
図1に示される水分量測定装置1において、試料4の水分率の分布を測定する手順は、以下の通りである。まず、図1に示される水分量測定装置1を準備する。次に、試料台3の凸面に、試料4を載せ、試料4の上に、絶縁フィルム7を置き、そして絶縁フィルム7を間に挟んで、試料4の上に、センサ2を置く。次いで、測定機構9を操作して移動機構6を制御し、試料台3を、試料台3の正円柱の中心軸線の回りのA方向に回転させるとともに、試料台3を、手前から奥方向に移動させる。それに伴って、センサ2に、複数箇所における試料4の水分率を測定させる。それらを組み合わせることにより、試料4の水分率の分布を測定することができる。
【0040】
上記センサとして、市販の静電容量式の水分センサを任意に採用することができるが、当該静電容量式の水分センサは、図2に示すような断面形状を有することができる。
図2に示されるセンサ2は、あらかじめ定められた間隔を隔てて平行に配置されている一対の電極10a及び10bを有する。一対の電極10a及び10bの間の静電容量は、金属線を介して測定される。図2に示されるセンサ2はまた、一対の電極10a及び10bを支持するための電極支持部11を含む。図2に示されるセンサ2では、電極支持部11の測定側の面に、一対の電極10a及び10bが取り付けられている。
【0041】
上記電極支持部としては、水分率の測定に影響を与えないために、後述の絶縁フィルムと同等の非誘電率、含水率、及び透水性を有することが好ましい。上記電極支持部の素材の例としては、例えば、ベークライト等の商品名で知られる、フェノール樹脂が挙げられる。
【0042】
なお、図2に示されるセンサ2では、一対の電極10a及び10bの間には、何も存在しないが、上記水分量測定装置の別の実施形態では、一対の電極10a及び10bの間に、上記電極支持部がさらに配置されていてもよい。一対の電極10a及び10bの間に、上記電極支持部が配置されることにより、電極と、試料との間の間隔を、より一定に保つことができる。
【0043】
図2に示されるセンサ2は、絶縁フィルム7を間に挟んで、試料4に接している。センサ2には、一定の鉛直方向の荷重が加わっているので、センサ2が、一対の電極10a及び10bと、試料4との距離を一定に保持しながら、静電容量を測定することができる。
【0044】
上記水分量測定装置が、上記センサと上記試料との間に配置され且つ上記試料を覆うための絶縁フィルムを含む理由は、以下の通りである。
測定すべき試料である吸収性物品、例えば、使い捨ておむつの吸収面は、排尿後、水分率が100%近くに到達することがある。そのような高水分率の状況下で、水分センサを用いて水分率を測定しようとすると、水分の一部が、センサ、特に電極近くに付着したままとなり、測定結果に誤差が含まれやすくなる。従って、センサと、試料との間に、センサとは別体の絶縁フィルムを配置することにより、センサに水分が付着することを防止することができる。
【0045】
なお、上記水分量測定装置において、センサそのものは、図2に示すように、試料と接する面に、電極のコンデンサとしての性質を保持するための絶縁部を有しなくともよい。また、公知又は市販の静電容量式の水分センサのように、センサは、試料と接する面に、電極のコンデンサとしての性質を保持するための絶縁部を有していてもよい。
【0046】
上記絶縁フィルムは、水分率を測定するという特質上、真空の誘電率との比(以下、単に「比誘電率」と称する)が、約30以下であることが好ましく、約20以下であることがより好ましく、約10以下であることがさらに好ましく、そして約5以下であることが最も好ましい。非誘電率が高いと、測定誤差の原因となり得るからである。
【0047】
また、上記絶縁フィルムは、測定誤差を少なくするために、膜厚が薄く且つ均一性を有することが好ましい。
上記膜厚としては、約300μm以下であることが好ましく、約200μm以下であることがより好ましく、約100μm以下であることがさらに好ましく、約50μm以下であることがさらに好ましく、そして約30μm以下であることが最も好ましい。
上記均一性としては、任意に30点測定した膜厚の変動係数が、約20%以下であることが好ましく、約10%以下であることがより好ましく、そして約5%以下であることがさらに好ましい。
なお、変動係数は、次の式(4):
変動係数(%)=100×標準偏差/相加平均 式(4)
により算出される値である。
【0048】
また、上記絶縁フィルムは、測定誤差を少なくするために、低い含水率を有することが好ましい。含水率が高いと、絶縁フィルムの非誘電率が高くなり、測定誤差が大きくなる場合があるからである。
上記含水率の目安としては、25℃で24時間、水中に浸漬した後の含水率が、約3質量%未満であることが好ましく、約1質量%未満であることがより好ましく、そして約0.5質量%未満であることがさらに好ましい。
さらに、上記絶縁フィルムは、低い透水性を有することが好ましい。上記透水性の低さの目安としては、測定中に、センサ、特に電極が水に濡れない程度であればよい。電極が水に濡れると、静電容量を測定することができないからである。
【0049】
上記絶縁フィルムの素材としては、上記性能を満たすものであれば、特に制限されないが、例えば、ポリアミド、メラミン、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
上記水分量測定装置は、上記絶縁フィルムを含むことにより、好ましくは約0質量%〜約100質量%、より好ましくは約1質量%〜約90質量%、さらに好ましくは約5質量%〜約80質量%の、非常に広範囲の水分率を有する試料を測定することができる。
【0050】
なお、上記水分量測定装置を用いることにより、トップシートの肌当接面の水分率を簡易に且つ再現性良く測定することができるが、市販の静電容量式の水分センサを用い、絶縁フィルムを間に挟んで、トップシートの肌当接面の水分率を測定することもできるであろう。
【0051】
本発明の効果を奏するためには、排泄口当接域における吸収性物品の厚さが約7mm以下であり且つ排泄口当接域における吸収性物品の密度が約0.07g/cm3以上であることが好ましく、排泄口当接域における吸収性物品の厚さが約6mm以下であり且つ排泄口当接域における吸収性物品の密度が約0.07g/cm3以上であることがより好ましく、排泄口当接域における吸収性物品の厚さが約5mm以下であり且つ排泄口当接域における吸収性物品の密度が約0.07g/cm3以上であることがさらに好ましく、そして排泄口当接域における吸収性物品の厚さが約5mm以下であり且つ排泄口当接域における吸収性物品の密度が約0.075g/cm3以上であることが最も好ましい。
【0052】
なお、上述のように、排泄口当接域における吸収性物品の厚さは、約0.1mm以上であることが好ましい。上記厚さが1mm未満となると、排泄物の吸収総量が不十分になりやすいからである。また、排泄口当接域における吸収性物品の密度は、好ましくは約0.5g/cm3以下であり、そしてより好ましくは約0.3g/cm3以下である。上記密度が高くなると、吸収性物品の剛性が増す傾向があるからである。
【0053】
本発明の吸収性物品に用いられる吸収体の、排泄口当接域における坪量は、本発明の吸収性物品が、約45%以下の保温率と、約10質量%以下のリウェット率とを有する範囲であれば、特に制限されないが、例えば、約250〜約500g/m2、約250〜約400g/m2、約250〜約350g/m2等であることができる。排泄口当接域における吸収体の坪量が少なくなると、リウェット率が高くなる傾向があり、そして排泄口当接域における吸収体の坪量が多くなると、着用感が硬くなる傾向がある。
【0054】
本発明の吸収性物品に用いられる吸収体の、排泄口当接域以外の領域における坪量は、排泄口当接域における坪量よりも少ないことが好ましく、例えば、約300g/m2以下、約200g/m2以下、約100g/m2以下であることができる。排泄口当接域以外の領域における吸収体の坪量が多くなると、リウェット率が下がる傾向があるが、その厚さに由来して保温率が上がる傾向があり、そして圧搾により厚さを薄くした場合には、着用感が硬くなる傾向がある。
【0055】
本発明の吸収性物品に用いられる吸収体において、吸収体の一部を厚さ方向に圧搾することにより形成された複数の圧搾部が、吸収体の全面に存在することが好ましい。吸収体の全面を圧縮することにより、吸収体の密度、ひいては本発明の吸収性物品の密度を高くし、本発明の吸収性物品の保温率及びリウェット率を下げることができる。
【0056】
図3は、本発明に用いられる吸収体の実施形態の1つを示す図である。図3に示される吸収体21において、向かって左側が着用時に着用者の前方となる方向であり、そして向かって右側が、着用時に着用者の後方となる方向である。図3の吸収体21には、複数の圧搾部23がその全面に存在し、そして吸収体21において、排泄口当接域22が、点線で示されている。
【0057】
圧搾部の形状、面積、個数等は、特に制限されないが、図3に示すように、面積の小さな圧搾部が、ほぼ均一に点在して配置されていることが好ましい。圧搾部がほぼ均一に点在することにより、排泄物の吸収能の少ない圧搾部の面積率を小さくしつつ、吸収性物品全体を薄くすることができるからである。
また、本発明に用いられる吸収体において、複数の圧搾部を、吸収性物品が着用者の体の形に添ってある程度変形しやすくなるように配置することもできる。例えば、吸収体の全面にわたり、略矩形の圧搾部を、圧搾部の長手方向が、吸収体の直交方向と一致するように、吸収体の直交方向に一定の間隔をあけて配置することにより、吸収性物品を、着用者の臀部の形状に沿って変形しやすくすることができる。
【0058】
さらに、図3に示されるように、吸収体のうち、着用者の鼠径部に接する領域において、圧搾部23を、圧搾部23の長手方向が、吸収体21の長手方向と一致するように、吸収体の長手方向に一定の間隔をあけて配置することにより、吸収性物品を、着用者が脚を閉じた場合に追従しやすくすることができる。
さらに、図3に示されるように、吸収体21の排泄口当接域22において、圧搾部23の個数を少なくすることにより排泄口当接域22を膨張しやすくし、より多量の排泄物を吸収しやすくすることができる。なお、より多量の排泄物を吸収しやすくするためには、排泄口当接域における、1つ当りの圧搾部の面積を小さくしてもよい。
【0059】
上記吸収体における略矩形の圧搾部において、長径は、約1.0〜約3.0mmであることが好ましく、そして約1.5〜約2.5mmであることがより好ましく、そして短径は、約0.2〜約2mmであることが好ましく、そして約0.3〜約1.0mmであることがより好ましい。圧搾部の形状が小さくなると、圧搾が不十分になる傾向があり、そして形状が大きくなると、本発明の吸収性物品の剛性が高くなり、着用感が損なわれる傾向がある。
【0060】
上記吸収体において、上記圧搾部の、吸収体の圧搾面に対する面積率は、約1〜約10%であることが好ましく、そして約2〜約5%であることがより好ましい。上記面積率が小さくなると、圧搾が不十分になり、その結果、吸収体及び吸収性物品の厚さが厚くなり、吸収性物品の密度が低くなる傾向があり、そして上記面積率が高くなると、吸収性物品の剛性が高くなり、そして吸収性が低下する傾向がある。
なお、上記面積率は、吸収体の圧搾部の個数に、圧搾部1つ当りの面積を掛け、吸収体の圧搾面の面積で割ることにより算出することができる。
【0061】
また、上記圧搾部は、吸収体において、千鳥型、例えば、角千鳥型、60°千鳥型等に配置されることが好ましい。吸収体の厚さ、密度等に分布が生じにくいからである。
上記圧搾部は、隣り合う圧搾部同士が、約1mm〜約10mmの間隔にあることが好ましく、そして約2〜約6mmの間隔にあることがより好ましい。吸収体の厚さ、密度等に分布が生じにくいからである。
【0062】
なお、吸収体の構造は、特に制限されず、例えば、吸収性繊維、例えば、パルプと、所望による吸収材、例えば、SAPとから形成される吸収コアを、液透過性のティッシュ等で覆うことにより形成されたものが挙げられる。
【0063】
本発明の吸収性物品に用いられる液透過性のトップシートは、本発明の吸収性物品が、45%以下の保温率と、10質量%以下のリウェット率とを有する限りは、特に制限されず、例えば、一般的なスルーエア不織布が挙げられる。
また、上記液透過性のトップシートは、本発明の効果を奏するために、吸収性物品の長手方向に延びる、複数の凸部と、複数の凹部とを、吸収性物品の直交方向に交互に有する、凹凸を有する不織布(以下、単に「凹凸を有する不織布」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0064】
図4は、凹凸を有する不織布の例を示す図である。図4に示される凹凸を有する不織布24は、吸収性物品の長手方向に延びる、複数の凸部25と、複数の凹部26(図4には、1つのみ示されている)とを、吸収性物品の直交方向に交互に有する。
【0065】
上記凹凸を有する不織布は、従来公知の方法、例えば、特開2008−25081号明細書、特開2008−25082号明細書等に記載の方法に従って製造することができる。具体的には、例えば、図5に示されるように、メッシュ等の支持部材29を有するロールの上に、繊維ウェブ30を載せ、流体ノズル31から噴出される流体を、繊維ウェブ30に当てることにより、凹凸を有する不織布24を形成することができる。凹凸を有する不織布24では、流体が噴出されるノズルの直下の領域では、搬送方向MDに直交する直交方向CDに繊維が選り分けられ、搬送方向MDに沿った凹部が形成される。そして各ノズル間の領域では、繊維が集まり、搬送方向MDに沿った凸部が形成される。
【0066】
上記流体としては、例えば、スチームが挙げられ、例えば、約5〜約15(nL/m2)の噴出量を用いることができる。また、上記流体を吹き付ける流体ノズルの真下に、不織布の凹部が形成され、さらに凹部に隣接して凸部が形成されるので、流体ノズル間隔は、所望の凸部の高さ、凹凸のピッチ等を形成するように定めることができる。
【0067】
上記繊維ウェブ及び上記繊維ウェブから形成される凹凸を有する不織布における繊維は、特に制限されず、例えば、ポリエチレン繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
上記繊維ウェブの坪量、及び上記繊維ウェブから形成される凹凸を有する不織布の平均坪量は、約10〜約50g/m2であることが好ましく、そして約20〜約50g/m2であることがより好ましい。上記坪量が少なくなると、トップシートが、使用中に破れる場合がある。上記坪量が多くなると、トップシートの厚さが厚くなり、吸収性物品の保温率が上がる傾向がある。
【0068】
上記凹凸を有する不織布において、凸部の高さは、約0.5〜約2.0mmであることが好ましく、そして約0.7〜約1.5mmであることがより好ましい。凹部の高さは、約0.3〜約0.7mmであることが好ましく、そして約0.5〜約0.6mmであることがより好ましい。
上記凹凸を有する不織布において、凹凸のピッチは、約2〜約6mmであることが好ましく、そして約3〜約5mmであることが好ましい。
なお、本明細書において、凸部の高さは、図4にh1で示されるように、不織布の底部から凸部の頂部までの高さを意味し、そして凹部の高さは、図4にh2で示されるように、不織布の底部から凹部の底部までの高さを意味する。また、凹凸のピッチは、図4にpで示されるように、ある凸部から隣接する凸部までの距離を意味する。
【0069】
本発明の吸収性物品において、液透過性のトップシートが、肌当接面に、吸収性物品の長手方向に延びる、複数の凸部と、複数の凹部とを、長手方向と直交する方向に交互に有し、そして上記複数の凹部の一部に、上記不織布の存在しない孔を有する、凹凸及び孔を有する不織布である(以下、「凹凸及び孔を有する不織布」と称する場合がある)ことがより好ましい。液透過性のトップシートが孔を有することにより、トップシートから吸収体内部に、排泄物を引き込みやすくなる。
【0070】
図6は、凹凸及び孔を有する不織布の実施形態の1つの模式図である。図6に示される凹凸及び孔を有する不織布32は、凹部26に、不織布の存在しない孔33を有する。
上記孔は、吸収性物品の長手方向の径が、約2.0〜約2.5mmであることが好ましく、吸収性物品の直交方向の径が、約0.5〜約1.5mmであることが好ましく、そして同一の凹部における隣り合う孔の間隔は、約2.0〜約2.5mmであることが好ましい。
なお、上記凸部の高さ、凹部の高さ、凹凸のピッチ、及び孔の径は、電子顕微鏡写真から計測することができる。
【0071】
上記孔は、例えば、図5に示される凹凸を有する不織布の製造工程において、支持部材29を、メッシュ等から、搬送方向と直交する直交方向にそれぞれ平行な突状部及び窪み部を、搬送方向に交互に有する支持体に変更することにより、簡易に製造することができる。上記孔は、流体ノズル31から噴出される流体と、支持体の突状部とが交差する部分に形成されうる。
【0072】
本発明の吸収性物品において、吸収体が圧搾部を有し且つ液透過性のトップシートが凹凸及び孔を有する不織布である場合には、図7に示されるように、上記孔と、圧搾部とが、吸収性物品の厚さ方向に、少なくとも一部重なっていることが好ましい。
図7は、孔と、吸収体の圧搾部とが、吸収性物品の厚さ方向に、少なくとも一部重なっている状態を説明するための図である。図7は、本発明の吸収性物品を、液透過性のトップシートの肌当接面側から見た図であり、吸収性物品の一部を抜き出したものである。図7では、説明のために、吸収体が有する圧搾部23が、点線で示されている。図7において、孔と圧搾部とが重なる領域が、符号34で示されている。
本発明の吸収性物品が、孔と圧搾部とが重なる領域34を複数有することにより、吸収された排泄物が、孔と圧搾部とが重なる領域34を通過して、迅速に吸収体に吸収されうる。
【0073】
本発明の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、吸収体との間に、所望により、セカンドシートを含むことができる。
上記セカンドシートとしては、不織布、例えば、スルーエア不織布、生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸系不織布が挙げられる。
なお、上記バックシートとしては、例えば、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はポリビニルアルコール等から製造されたものが挙げられる。また、上記バックシートとして、例えば、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレンから成る通気フィルム、非通気フィルム、開孔フィルム等が挙げられる。
【0074】
また、本発明の吸収性物品がセカンドシートを含む場合には、本発明の吸収性物品は、液透過性のトップシート及びセカンドシートを、積層方向に共に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を有することが好ましい。トップシート及びセカンドシートを共に圧搾することにより、排泄物を、トップシートから吸収体内部に引き込みやすくなる。圧搾部の周縁では、繊維密度が高く且つ繊維が、吸収性物品の厚さ方向に立ち上がる傾向があるため、排泄物を、トップシートから吸収体内部に引き込みやすくなる。
【0075】
本発明の吸収性物品はまた、液透過性のトップシート、所望によるセカンドシート、及び吸収体を、積層方向に共に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を有することができる。液透過性のトップシート、所望によるセカンドシート、及び吸収体を共に圧搾することにより、排泄物を、トップシートから吸収体内部に引き込みやすくなる。圧搾部の周縁では、繊維密度が高く且つ繊維が、吸収性物品の厚さ方向に立ち上がる傾向があるためである。
【0076】
図8は、本発明の吸収性物品の実施形態の1つを示す図である。図8に示される吸収性物品35は、液透過性のトップシート36、セカンドシート(図示せず)、吸収体21、バックシート(図示せず)、及びサイドフラップ37を含む。図8に示される吸収性物品35は、トップシート及びセカンドシートを圧搾することにより形成された圧搾部38と、トップシート、セカンドシート及び吸収体を圧搾することにより形成された圧搾部39とを有する。
【0077】
続いて、本発明の吸収性物品の製造方法について説明する。
本発明の吸収性物品は、特に制限なく、当技術分野で通常用いられている方法により製造されうる。
一例として、本発明に用いられる吸収体は、所望の坪量の吸収性繊維(例えば、パルプ)に、所望による吸収剤(例えば、SAP)を散布等し、液透過性のティッシュで吸収性繊維を覆うことにより形成されうる。形成される吸収性物品の密度、厚さ等を調整するために、吸収体を圧搾してもよい。圧搾は、例えば、特開2009−273722号明細書に記載されるように、当業界で公知の任意の手段を用いることができる。
【0078】
次いで、液透過性のトップシートと、所望によるセカンドシートと、吸収体とを、接着剤等を用いて積層する。所望により、液透過性のトップシートとセカンドシートとを、共に圧搾した後に、その上に吸収体を積層することができる。
次いで、所望により、トップシート、所望によるセカンドシート、及び吸収体を圧搾することができる。
次いで、吸収体の上に、接着剤等を用いてバックシートを積層した後、所望の形状にカットし、本発明の吸収性物品を製造することができる。
【0079】
本発明の吸収性物品としては、ある程度の量の排泄物を吸収するもの、例えば、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[例1]
シルコット(商標)(ユニ・チャーム(株)製)に、一定量の水分を含ませて、異なる水分率を有する、指標1〜6の標準試料を作成した。次いで、上記標準試料を、20℃で1日間、密封状態で静置した。
【0081】
図1に示される水分量測定装置を準備し、指標1〜6の標準試料を水分量測定装置の試料台に載せ、それらの水分率を測定した。センサの、試料に対する接触圧は、8g/cmであった。
結果を、表1及び図9に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
上記データから、最小二乗法により、原点を通る検量線を作成したところ、水分率yと、電圧xとの間には、以下の式(5)
y=32.7x+ 式(5)
が得られた。
【0084】
[例2]
表2に示されるトップシート、所望によるセカンドシート及び吸収体、並びにバックシートから、図8に示されるような形状を有する吸収性物品を製造した。
【0085】
表2において、トップシートとしての不織布1は、芯/鞘がポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレンの芯鞘繊維(繊維径:3dtx、繊維長:45mm)から成る繊維ウェブを、特開2008−25082号明細書に記載の方法に従って加工することにより形成された、凹凸及び孔を有する不織布(坪量:35g/m2,凸部の高さ:1.1mm,凹部の高さ:0.5mm,凹凸のピッチ:1.0mm,孔の径::2.5mm(吸収性物品の長手方向)×1mm(吸収性物品の直交方向),隣り合う孔の間隔:2.5mm)である。
【0086】
不織布2は、芯/鞘がポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレンの芯鞘繊維(繊維径:3dtx、繊維長:45mm)から成る繊維ウェブをスルーエア加工することにより形成されたスルーエア不織布(坪量:35g/m2,厚み:1.1mm)である。
開孔フィルムは、酸化チタンを3質量%含むポリエチレンフィルム(坪量:23g/m2)に、米国特許第5733628号に示されるような工程を用いて開孔されたもの(厚み:1.1mm、孔径:0.80mm(MD)×0.57mm(CD)、開孔率:23%である。
【0087】
表2において、セカンドシートは、ポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレンの芯鞘繊維(繊維径:3dtx、繊維長:45mm)から成る繊維ウェブをスルーエア加工することにより形成されたスルーエア不織布(坪量:20g/m2,厚み:0.19mm)である。
表2において、吸収体は、表2に示される坪量のパルプを、液透過性のティッシュに載せ、パルプに少量のSAPを散布し、上記ティッシュでパルプを覆い、次いで圧搾する(No.6以外)ことにより形成された。
表2において、バックシートは、ポリエチレンフィルム(坪量:24g/m2)である。
【0088】
トップシート及びセカンドシートを、接着剤を用いて積層し、トップシート及びセカンドシートを圧搾し、次いで接着剤を用いて吸収体をセカンドシートに積層し、トップシート、セカンドシート及び吸収体を圧搾し、次いで接着剤を用いて吸収体にバックシートを積層し、吸収性物品の形状にカットすることにより吸収性物品が製造された。
なお、吸収性物品No.8では、トップシートを圧搾したのち、接着剤を用いて吸収体をトップシートに積層し、トップシート及び吸収体を圧搾し、次いで接着剤を用いて吸収体にバックシートを積層し、吸収性物品の形状にカットすることにより吸収性物品が製造された。
吸収性物品No.1〜10の構成、並びに厚み及び密度を、表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
吸収性物品No.1〜10、並びにユニ・チャーム株式会社、ソフィ ボディフィット 羽つき(21cm)(以下、「BFR」と称する)、ユニ・チャーム株式会社 ソフィ ボディフィット ふわぴたスリム ふつうの日用 羽つき 21cm(以下、「ふわぴた」と称する)、及びユニ・チャーム株式会社 ソフィ はだおもい 多い昼〜ふつうの日用 羽つき(以下、「はだおもい」と称する)の保温率、リウェット率及び水分率を、排泄口当接域における吸収性物品の厚み及び密度とともに、表3に示す。なお、保温率、リウェット率及び水分率は、本明細書に記載の方法に従って測定された。
【0091】
また、吸収性物品No.1〜10、並びにBFR,ふわぴた及びはだおもいから成る市販の吸収性物品において、排泄口当接域における吸収性物品の厚み及び保温率の関係を図10に示し、そして排泄口当接域における吸収性物品の密度及び保温率の関係を図11に示す。吸収性物品No.1〜10において、排泄口当接域における吸収性物品の密度及びリウェット率の関係を図12に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
図10及び図11から、排泄口当接域における吸収性物品の厚さが薄くなると、そして排泄口当接域における吸収性物品の密度が高くなると、保温率が下がることが分かる。また、図12から、排泄口当接域における吸収性物品の密度が高くなると、リウェット率が下がることが分かる。
【0094】
吸収性物品No.1〜No.10、並びにBFR、ふわぴた及びはだおもいを、複数の被験者に使用してもらったところ、保温率及びリウェット率が下がるほど、蒸れにくく、そして排泄物を吸収した後もサラサラしているとの回答を得た。そして45%以下の保温率と、10質量%以下のリウェット率を有する吸収性物品No.1,3,7,8及び10、並びにNo.2において、顕著に蒸れにくく、サラサラ感が顕著であった。
【符号の説明】
【0095】
1 水分量測定装置
2 センサ
3 試料台
4 試料
5 支持機構
6 移動機構
7 絶縁フィルム
8 おもり
9 測定機構
10a,10b 電極
11 電極支持部
21 吸収体
22 排泄口当接域
23 圧搾部
24 凹凸を有する不織布
25 凸部
26 凹部
27 中央部
28 側部
29 支持部材
30 繊維ウェブ
31 流体ノズル
32 凹凸及び孔を有する不織布
33 孔
34 孔と圧搾部とが重なる領域
35 吸収性物品
36 トップシート
37 サイドフラップ
38 トップシート及びセカンドシートを圧搾することにより形成された圧搾部
39 トップシート、セカンドシート及び吸収体を圧搾することにより形成された圧搾部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記液透過性のトップシート及び液不透過性のバックシートの間の吸収体とを含む吸収性物品であって、
前記吸収性物品が、45%以下の保温率と、10質量%以下のリウェット率とを有すること、
を特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記液透過性のトップシートの肌当接面の水分率が20質量%以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品の、排泄口当接域における厚さが7mm以下であり、前記吸収性物品の、排泄口当接域における密度が0.07g/cm3以上である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の、排泄口当接域における坪量が、250〜500g/m2の範囲内にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の、排泄口当接域以外の領域における坪量が、前記排泄口当接域における坪量よりも少ない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体が、吸収体の一部を厚さ方向に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を、吸収体の全面に有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記液透過性のトップシートが、肌当接面に、前記吸収性物品の長手方向に延びる、複数の凸部と、複数の凹部とを、長手方向と直交する方向に交互に有する、凹凸を有する不織布である、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記液透過性のトップシートが、前記複数の凹部の一部に、前記不織布の存在しない孔を有する、凹凸及び孔を有する不織布であり、
前記吸収性物品において、前記液透過性のトップシートの孔と、前記吸収体の圧搾部とが、前記吸収性物品の厚さ方向に、少なくとも一部重なっている、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が、前記液透過性のトップシートと、前記吸収体との間に、セカンドシートをさらに含み、
前記吸収性物品が、前記液透過性のトップシート及びセカンドシートを、それらの積層方向に共に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収性物品が、前記液透過性のトップシート、所望によるセカンドシート、及び吸収体を、それらの積層方向に共に圧搾することにより形成された複数の圧搾部を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−100945(P2012−100945A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253203(P2010−253203)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】