吸収性物品
【課題】機能を大幅に低下させることなく吸収性物品の製造コストを大幅に低減する。
【解決手段】使い捨てオムツの内装体1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性のバックシート3と、液保持性の吸収コア4と、を備える。表面シートは、表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなる。吸収コアは、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなる。表面シートは吸収コアの肌側面を覆うと共にこの肌側面に直接的に接合される。表面シートの長手方向長さが吸収コアの長手方向長さよりも長くそれにより表面シートに吸収コアの長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分が設けられると共に、これら延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと横断方向に連続的に接続される。これら延出部分が着用者の肌と接触可能である。
【解決手段】使い捨てオムツの内装体1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性のバックシート3と、液保持性の吸収コア4と、を備える。表面シートは、表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなる。吸収コアは、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなる。表面シートは吸収コアの肌側面を覆うと共にこの肌側面に直接的に接合される。表面シートの長手方向長さが吸収コアの長手方向長さよりも長くそれにより表面シートに吸収コアの長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分が設けられると共に、これら延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと横断方向に連続的に接続される。これら延出部分が着用者の肌と接触可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、液保持性の吸収コアと、吸収コアを包むコアラップと、を備える、使い捨てオムツのような吸収性物品が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5458592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先進国と比べて、新興国では、使い捨てオムツの普及率は未だ低い。これは、新興国の人々にとってオムツが高価だからである。したがって、低価格のオムツを提供するために、オムツの製造コストを大幅に低減する必要性がある。
【0005】
製造コストを大幅に低減するためには、先進国用のオムツでは一般的に設けられる部品を省略するといった大幅な構成の変更が必要である。この点、例えば表面シートに吸収コアを包む機能を付加できれば、コアラップを省略することができ、したがって機能を大幅に低下させることなく製造コストを大幅に低減することができる。このような技術的思想は特許文献1には開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、液保持性の吸収コアと、を備える吸収性物品であって、表面シートは、2つのスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなり、吸収コアは、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなり、表面シートが吸収コアの肌側面を覆うと共に該肌側面に直接的に接合され、表面シートの長手方向長さが吸収コアの長手方向長さよりも長くそれにより表面シートに吸収コアの長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分が設けられると共に、これら延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと横断方向に連続的に接続され、これら延出部分が着用者の肌と接触可能である、吸収性物品が提供される。
【発明の効果】
【0007】
機能を大幅に低下させることなく吸収性物品の製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による第1実施例を示す、内装体の平面図である。
【図2】図1の線C−Cに沿ってみた模式断面図である。
【図3】図1の線P−Pに沿ってみた模式断面図である。
【図4】HMAの適用パターンを示す図である。
【図5】HMAの適用パターンの拡大図である。
【図6】本発明による第1実施例を示す、オムツの平面図である。
【図7】図6の線CC−CCに沿ってみた模式断面図である。
【図8】本発明による第2実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図9】本発明による第2実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図10】本発明による第3実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図11】本発明による第3実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図12】本発明による第4実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図13】本発明による第4実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図14】本発明による第5実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図15】本発明による第5実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図16】本発明による第6実施例を示す、内装体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明を内装体および外装体を含む使い捨てオムツに適用した場合を示している。しかしながら、本発明を生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッドといった他の吸収性物品に適用することもできる。
【0010】
本発明による第1実施例を示す図1、図2及び図3を参照すると、使い捨てオムツの内装体1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性のバックシート3と、液保持性の吸収コア4とを備える。なお、図1において、Lは内装体1の長手方向を、Tは長手方向に直交する横断方向を、それぞれ示している。
【0011】
表面シート2は、長方形状をなし、例えば表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなる。この場合、表面シート2全体の目付は10g/m2、スパンボンド層の目付は8g/m2、メルトブローン層の目付は2g/m2とすることができる。また、メルトブローン層に親水油剤を塗布することもできる。
【0012】
表面シート2は、表側及び裏側のスパンボンド層並びにメルトブローン層を積層した後に、表側のスパンボンド層にパターンエンボス加工を施すと共に裏側のスパンボンド層にフラットエンボス加工を施すことにより形成される。パターンエンボス加工及びフラットエンボス加工では、表面シート2内の繊維が加熱されながら圧着される。
【0013】
また、表面シート2の2つのスパンボンド層が長手方向の繊維配向性を有している。ここで、シートの繊維配向性は例えばシートの引張強度に基づいて求めることができる。すなわち、シートの長手方向及び横断方向に沿って延びるサンプルをそれぞれ作成し、一定の伸長時における引張強度を引張試験機(株式会社島津製作所製 オートグラフ)によって測定する。長手方向に沿って延びるサンプルの引張強度が、横断方向に沿って延びるサンプルの引張強度よりも大きい場合には、長手方向に沿った繊維配向であると判断することができる。
【0014】
更に、表面シート2のクレム吸水試験(JIS−L1907、P8141)による液拡散性が20mm以上である。
【0015】
更に、表面シート2の長手方向の引張強度及び横断方向の引張強度が共に、乾燥時及び湿潤時それぞれにおいて、4.0N/25mm以上である。
【0016】
バックシート3は、長方形状をなし、例えば疎水性の不織布、不透水性のプラスチックフィルム、不織布と不透水性プラスチックフィルムとのラミネートシートから構成される。また、バックシート3は通気性であってもよいし、非通気性であってもよい。
【0017】
吸収コア4は、長手方向両端の幅広部とこれら拡大部間の幅狭部とを有し、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなる。繊維集合体は例えばパルプ繊維、綿繊維、レーヨン繊維等のセルロース系繊維、ポリエステル・ポリエチレン系の合成樹脂からなる合成繊維から構成される。高吸収ポリマー(SAP)粒子は、自重の15倍以上の液体を吸収保持することができるものであって、例えば液の保持によりゲル化するアクリル酸系の重合体又は共重合体から構成される。
【0018】
ここで、吸収コア4におけるSAP粒子の質量比率、すなわち吸収コア4の全質量(=繊維集合体質量+SAP粒子質量)に対するSAP粒子質量の比は、40パーセント以下である。
【0019】
SAP粒子質量比率は次のようにして算出される。すなわち、測定対象製品からSAPサンプル及び繊維サンプルを1gずつ収集する(吸収コア4をほぐして、対象となるSAP及び繊維を拡大鏡等も用いながら収集する)。次いで、収集したSAPサンプル及び繊維サンプルをそれぞれ別の250メッシュナイロン袋に入れ、保水量をそれぞれ測定する。保水量は次のようにして算出される。すなわち、サンプルを生理食塩水500ml中に30分間浸した後、遠心分離機にて150Gで2分間脱水し、脱水後のサンプルの質量を測定する。次いで、次式を用いて、SAPサンプルの保水量(g/g)及び繊維サンプルの保水量(g/g)を算出する。
【0020】
サンプルの保水量(g/g)=(脱水後のサンプル質量−ナイロンメッシュ重量−脱水前のサンプル質量−ナイロンメッシュの残存液体質量)/(脱水前のサンプル質量)
【0021】
なお、本例において、脱水前のサンプル質量は、SAPの場合も繊維の場合も、1gである。
【0022】
次いで、測定対象製品から50mm×50mmの吸収コアサンプルを準備する(吸収コアサンプルの大きさは、対象の大きさによって変更できるが、可能な範囲で大きく準備すべきである)。次いで、吸収コアサンプル全体の質量T(g)を測定する。
【0023】
次いで、吸収コアサンプルを250メッシュのナイロンメッシュ袋に入れ、生理食塩水500ml中に30分間浸漬した後、遠心分離機にて150Gで10分間脱水し、脱水後の吸収コアサンプル質量を測定し、吸収コアサンプルの保水量を求める。
【0024】
吸収コアサンプル中のSAP質量をS(g)、繊維質量をP(g)とすると(T=S+P)、次式が成立する。
【0025】
吸収コアサンプルの保水量(g)=SAPサンプルの保水量(g/g)×S(g)+繊維サンプルの保水量(g/g)×(T−S)(g)
【0026】
上式に基づいて、SAP質量Sが算出される。次いで、次式を用いてSAP粒子質量比率が算出される。
【0027】
SAP粒子質量比率(%)=S/T
【0028】
図1に示されるように、表面シート2の長手方向長さは吸収コア4の長手方向長さよりも長い。その結果、表面シート2には、吸収コア4の長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分2Eが設けられる。延出部分2Eの長手方向長さは250mm以上が好ましい。
【0029】
2つの延出部分2E同士間の中間部分では、図2に示されるように、表面シート2は吸収コア4の肌側面4Sを覆うと共に、肌側面4Sに直接的に接合される。言い換えると、表面シート2と吸収コア4との間に別のシートが設けられていない。また、表面シート2は吸収コア4の両側縁4Lを覆い、更に、吸収コア4の非肌側面4NSまで覆っている。本発明による第1実施例では、表面シート2の両側部が重なり部分2Wにおいて互いに重ね合わされており、したがって表面シート2は非肌側面4NS全体を覆っている。言い換えると、表面シート2は長手方向Lに平行な折り曲げ線に沿って折り曲げられ、吸収コア4を包んでいる。
【0030】
この場合、表面シート2の肌側部分2Sと吸収コア4の肌側面4Sとがホットメルト接着剤5Sにより互いに接合され、表面シート2の非肌側部分2NSと吸収コア4の非肌側面4NSとがホットメルト接着剤5NSにより互いに接合される。その結果、表面シート2内の被吸収液を吸収コア4に速やかに移動させることが可能となる。
【0031】
また、表面シート2の非肌側部分2NSとバックシート3とがホットメルト接着剤6により互いに接合される。この場合、ホットメルト接着剤6は長手方向及び横断方向に連続的に適用され、したがって表面シート2はバックシート3に対し長手方向及び横断方向に連続的に接続される。
【0032】
一方、延出部分2Eでは、図3に示されるように、表面シート2の肌側部分2Sはその下方側において重ねられている非肌側部分2NSとホットメルト接着剤7により互いに接合される。この場合、ホットメルト接着剤7は長手方向及び横断方向に連続的に適用され、したがって肌側部分2Sは非肌側部分2NSに対し長手方向及び横断方向に連続的に接続される。
【0033】
図4は表面シート2に適用されるホットメルト接着剤8のパターンの一例を示している。この例では、ホットメルト接着剤8が長手方向に互いに平行に延びる複数の螺旋の形で適用され、これら螺旋状接着剤8は隣接する螺旋状接着剤8と部分的に重なっている。このようにして、接着剤8は長手方向にも横断方向にも連続的に適用される。
【0034】
その結果、吸収コア4、特にSAP粒子が内装体1内に確実に封入され、したがってSAP粒子が内装体1から漏れ落ちるのを抑制することができる。
【0035】
すなわち、表面シート2は吸収コア4を包むコアラップとしても機能する。その結果、コアラップ及びセカンドシート等を省略することができ、したがってオムツの製造コストを大幅に低減することができる。
【0036】
この場合、表面シート2は乾燥時でも湿潤時でも、長手方向及び横断方向の両方に十分な引張強度を備えている。したがって、コアラップを省略しても、吸収コア4、特にSAP粒子を漏れ落ちるのを確実に抑制できる。
【0037】
また、表面シート2がメルトブローン層を含んでいるので、SAP粒子が漏れ落ちるのを更に確実に抑制することができる。同時に、着用者の肌には、表面シート2の表側のスパンボンド層が接触する。その結果、良好な肌触りが得られる。しかも、表面シート2はスパンボンド/メルトブローン/スパンボンドの3層構造を含むので、取り扱いが容易になる。
【0038】
更に、表面シート2の表側のスパンボンド層にはパターンエンボス加工が施されるので、表側のスパンボンド層には、繊維同士が互いに圧着されている高圧縮領域と、繊維同士がほとんど圧着されていない低圧縮領域とが形成される。この低圧縮領域では、繊維の自由度が比較的高いので、尿のような被吸収液を表面シート2内に容易に引き込むことができる。
【0039】
一方、表面シート2の裏側のスパンボンド層にはフラットエンボス加工が施されるので、裏側のスパンボンド層は全体的にほぼ均一に圧縮される。したがって、裏側のスパンボンド層の強度が高められているので、吸収コア4、特にSAP粒子によって表面シート2が損傷するのが抑制される。また、繊維密度が高いので、SAP粒子が表面シート2を通過するのが抑制され、吸収コア4から漏れ落ちるのが抑制される。
【0040】
また、裏側のスパンボンド層の繊維密度が表側のスパンボンド層よりも高いので、表側のスパンボンド層から裏側のスパンボンド層への液拡散が促進されている。更に、2つのスパンボンド層が長手方向の繊維配向性を有しているので、長手方向の液拡散が促進されている。
【0041】
本発明による実施例の表面シート2(スパンボンド層4gsm、メルトブローン層2gsm、スパンボンド層4gsm)についてクレム吸水試験を行ったところ、長手方向の液拡散性は20から30mmであり、横断方向の液拡散性は5から15mmであった。このように、表面シート2は、単一のシートでありながら、高い液拡散性を有している。
【0042】
なお、着用者の肌側に接するシートとして一般的なトップシート(ポリエチレン・ポリプロピレン繊維スパンボンド、20gsm)では長手方向の液拡散性は10から15mmであり、横断方向の液拡散性は5から15mmであった。一方、吸収コア4を包むシートとして一般的なティッシュシートの液拡散性は長手方向及び横断方向共に25から35mmであった。
【0043】
しかも、SAP粒子質量比率が40パーセント以下であるので、SAP粒子の漏れ落ちを抑制することができる。すなわち、SAP粒子質量比率が高いと、繊維集合体内に留まることができなくなるSAP粒子が発生し、着用者の動きによって表面シート2が損傷されてSAP粒子が漏れ落ちる可能性が高くなる。
【0044】
このことは実験によって確認されている。この実験は次のようにして行われた。すなわち、表面シート2により包まれた吸収コア4を吸収体と称すると、SAP粒子質量比率が互いに異なる複数の吸収体を用意した。吸収体のSAP粒子質量比率は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%であった。市販のオムツ(商品名:ムーニーマンLサイズ)から吸収コア、吸収コアラップシート、表面シートを取り外し、これら吸収体を取り付けてオムツサンプルを作成した。
【0045】
5名のLサイズ対象ユーザーに、まず黒色の布パンツを着用させた。これは、漏れ落ちたSAP粒子が対象ユーザーの肌に付着しないように、漏れ落ちたSAP粒子を確認しやすくするためである。次いで、対象ユーザーにオムツサンプルを着用させた。次いで、寝姿勢、立つ、走る、歩く、座るという動作を入れながら、対象ユーザーを30分間自由に活動させた。その後、オムツサンプルの吸収体に80mlの生理食塩水を吸収させて、同様に対象ユーザーに30分間活動させた。次いで、オムツ表面及び布パンツ表面でのSAP粒子の有無を確認した。
【0046】
その結果、SAP粒子質量比率が40%までであると、SAP粒子の漏れ落ちは発生しなかった。SAP粒子質量比率が45%であると、5名中2名にSAPの漏れ落ちが発生した。
【0047】
図6及び図7に示されるオムツ10は、上述の内装体1に外装体11を組み合わせて形成されたものである。この例では、外装体11は、着用者の前側ないし腹側に位置する腹側部分11Fと、着用者の後側ないし背側に位置する背側部分11Rとを含み、これら腹側部分11F及び背側部分11Rは互いに分離されている。腹側部分及び背側部分が互いに一体のものでもよい。
【0048】
内装体1のバックシート3はその長手方向端部において外装体11の腹側部分11F及び背側部分11Rとそれぞれ接合される。また、腹側部分11Fの脇部分13Fと背側部分11Rの脇部分13Rとが互いに接合され、したがっていわゆるパンツ型オムツが形成される。
【0049】
腹側部分11F及び背側部分11Rにはそれぞれ、横断方向に互いに平行に延びる複数の弾性部材12Fが伸長状態で組み入れられる。
【0050】
弾性部材12F,12Rのうち一部の弾性部材12FE,12REは、内装体1の延出部分2Eと重なっている。その結果、着用時に、延出部分2Eが横断方向に収縮され、したがってSAP粒子が延出部分2Eを介して漏れ落ちるのを更に抑制することができる。
【0051】
更に、延出部分2Eを覆うシートが設けられておらず、したがって延出部分2Eが着用者の肌と接触可能になっている。その結果、吸収面を大きくすることができる。
【0052】
なお、図7において、14は内装体1の両側部に設けられた防漏部材を、15は防漏部材14に組み入れられる弾性部材を、それぞれ示している。当然、防漏部材を省略することもできる。
【0053】
図8及び図9に示される本発明による第2実施例では、表面シート2は吸収コア4の非肌側面4NSを部分的に覆い、すなわち全体を覆っていない。言い換えると、吸収コア4の非肌側面4NSとバックシート3との間に別のシートが配置されておらず、したがって吸収コア4の非肌側面4NSはバックシート3に直接的に接合される。この場合、表面シート2が覆っていないクリアランス2Cが形成される。また、図9に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられている非肌側部分2NS及びバックシート3とホットメルト接着剤6,7により接合される。このようにすると、表面シート2を形成するのに必要な材料の量を低減することができる。
【0054】
図10及び図11に示される本発明による第3実施例では、表面シート2は吸収コア4の非肌側面4NSを覆っておらず、横断方向外向きに突出する一対のフランジ状部分2Fを有する。これらフランジ状部分2Fはホットメルト接着剤6Fによりバックシート3に接合される。この場合、フランジ状部分2Fはバックシート3に対し、長手方向及び横断方向に連続的に接合される。また、図11に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられているバックシート3とホットメルト接着剤7により接合される。なお、この例にもクリアランス2Cが形成される。
【0055】
図12及び図13に示される本発明による第4実施例では、図8及び図9に示される第2実施例において、吸収コア4の非肌側面4NSを覆う追加のシート16がクリアランス2Cに配置される。追加のシート16はホットメルト接着剤5NSにより吸収コア4の非肌側面4NSに接合され、ホットメルト接着剤6によりバックシート3に接合される。また、図13に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられている追加のシート16とホットメルト接着剤7により接合される。このようにすると、SAP粒子がバックシート3を損傷するのを抑制することができる。SAP粒子がバックシート3を損傷すると、SAP粒子がバックシート3を介して漏れ落ちるおそれがある。
【0056】
図14及び図15に示される本発明による第5実施例では、図10及び図11に示される第2実施例において、吸収コア4の非肌側面4NSを覆う追加のシート16がクリアランス2Cに配置される。追加のシート16はホットメルト接着剤5NSにより吸収コア4の非肌側面4NSに接合され、ホットメルト接着剤6Aによりバックシート3に接合される。また、図15に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられている追加のシート16とホットメルト接着剤7により接合される。その結果、SAP粒子がバックシート3を損傷するのを抑制することができる。
【0057】
図16に示される本発明による第6実施例では、表面シート2の延出部分2Eは、重ねられている表面シート2又はバックシート3と共にエンボス加工されたエンボス領域2Bを有する。このようにすると、SAP粒子が延出部分2Eを介し漏れ落ちるのを確実に抑制することができる。
【0058】
なお、表面シート2が、表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間の2つのメルトブローン層とを含む単一のシートからなるようにしてもよい。このようにすると、SAP粒子が漏れ落ちるのを更に確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 内装体
2 表面シート
2E 延出部分
3 バックシート
4 吸収コア
4S 肌側面
4NS 非肌側面
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、液保持性の吸収コアと、吸収コアを包むコアラップと、を備える、使い捨てオムツのような吸収性物品が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5458592号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先進国と比べて、新興国では、使い捨てオムツの普及率は未だ低い。これは、新興国の人々にとってオムツが高価だからである。したがって、低価格のオムツを提供するために、オムツの製造コストを大幅に低減する必要性がある。
【0005】
製造コストを大幅に低減するためには、先進国用のオムツでは一般的に設けられる部品を省略するといった大幅な構成の変更が必要である。この点、例えば表面シートに吸収コアを包む機能を付加できれば、コアラップを省略することができ、したがって機能を大幅に低下させることなく製造コストを大幅に低減することができる。このような技術的思想は特許文献1には開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、液保持性の吸収コアと、を備える吸収性物品であって、表面シートは、2つのスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなり、吸収コアは、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなり、表面シートが吸収コアの肌側面を覆うと共に該肌側面に直接的に接合され、表面シートの長手方向長さが吸収コアの長手方向長さよりも長くそれにより表面シートに吸収コアの長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分が設けられると共に、これら延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと横断方向に連続的に接続され、これら延出部分が着用者の肌と接触可能である、吸収性物品が提供される。
【発明の効果】
【0007】
機能を大幅に低下させることなく吸収性物品の製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による第1実施例を示す、内装体の平面図である。
【図2】図1の線C−Cに沿ってみた模式断面図である。
【図3】図1の線P−Pに沿ってみた模式断面図である。
【図4】HMAの適用パターンを示す図である。
【図5】HMAの適用パターンの拡大図である。
【図6】本発明による第1実施例を示す、オムツの平面図である。
【図7】図6の線CC−CCに沿ってみた模式断面図である。
【図8】本発明による第2実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図9】本発明による第2実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図10】本発明による第3実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図11】本発明による第3実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図12】本発明による第4実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図13】本発明による第4実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図14】本発明による第5実施例を示す、図2と同様の模式断面図である。
【図15】本発明による第5実施例を示す、図3と同様の模式断面図である。
【図16】本発明による第6実施例を示す、内装体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明を内装体および外装体を含む使い捨てオムツに適用した場合を示している。しかしながら、本発明を生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッドといった他の吸収性物品に適用することもできる。
【0010】
本発明による第1実施例を示す図1、図2及び図3を参照すると、使い捨てオムツの内装体1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性のバックシート3と、液保持性の吸収コア4とを備える。なお、図1において、Lは内装体1の長手方向を、Tは長手方向に直交する横断方向を、それぞれ示している。
【0011】
表面シート2は、長方形状をなし、例えば表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなる。この場合、表面シート2全体の目付は10g/m2、スパンボンド層の目付は8g/m2、メルトブローン層の目付は2g/m2とすることができる。また、メルトブローン層に親水油剤を塗布することもできる。
【0012】
表面シート2は、表側及び裏側のスパンボンド層並びにメルトブローン層を積層した後に、表側のスパンボンド層にパターンエンボス加工を施すと共に裏側のスパンボンド層にフラットエンボス加工を施すことにより形成される。パターンエンボス加工及びフラットエンボス加工では、表面シート2内の繊維が加熱されながら圧着される。
【0013】
また、表面シート2の2つのスパンボンド層が長手方向の繊維配向性を有している。ここで、シートの繊維配向性は例えばシートの引張強度に基づいて求めることができる。すなわち、シートの長手方向及び横断方向に沿って延びるサンプルをそれぞれ作成し、一定の伸長時における引張強度を引張試験機(株式会社島津製作所製 オートグラフ)によって測定する。長手方向に沿って延びるサンプルの引張強度が、横断方向に沿って延びるサンプルの引張強度よりも大きい場合には、長手方向に沿った繊維配向であると判断することができる。
【0014】
更に、表面シート2のクレム吸水試験(JIS−L1907、P8141)による液拡散性が20mm以上である。
【0015】
更に、表面シート2の長手方向の引張強度及び横断方向の引張強度が共に、乾燥時及び湿潤時それぞれにおいて、4.0N/25mm以上である。
【0016】
バックシート3は、長方形状をなし、例えば疎水性の不織布、不透水性のプラスチックフィルム、不織布と不透水性プラスチックフィルムとのラミネートシートから構成される。また、バックシート3は通気性であってもよいし、非通気性であってもよい。
【0017】
吸収コア4は、長手方向両端の幅広部とこれら拡大部間の幅狭部とを有し、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなる。繊維集合体は例えばパルプ繊維、綿繊維、レーヨン繊維等のセルロース系繊維、ポリエステル・ポリエチレン系の合成樹脂からなる合成繊維から構成される。高吸収ポリマー(SAP)粒子は、自重の15倍以上の液体を吸収保持することができるものであって、例えば液の保持によりゲル化するアクリル酸系の重合体又は共重合体から構成される。
【0018】
ここで、吸収コア4におけるSAP粒子の質量比率、すなわち吸収コア4の全質量(=繊維集合体質量+SAP粒子質量)に対するSAP粒子質量の比は、40パーセント以下である。
【0019】
SAP粒子質量比率は次のようにして算出される。すなわち、測定対象製品からSAPサンプル及び繊維サンプルを1gずつ収集する(吸収コア4をほぐして、対象となるSAP及び繊維を拡大鏡等も用いながら収集する)。次いで、収集したSAPサンプル及び繊維サンプルをそれぞれ別の250メッシュナイロン袋に入れ、保水量をそれぞれ測定する。保水量は次のようにして算出される。すなわち、サンプルを生理食塩水500ml中に30分間浸した後、遠心分離機にて150Gで2分間脱水し、脱水後のサンプルの質量を測定する。次いで、次式を用いて、SAPサンプルの保水量(g/g)及び繊維サンプルの保水量(g/g)を算出する。
【0020】
サンプルの保水量(g/g)=(脱水後のサンプル質量−ナイロンメッシュ重量−脱水前のサンプル質量−ナイロンメッシュの残存液体質量)/(脱水前のサンプル質量)
【0021】
なお、本例において、脱水前のサンプル質量は、SAPの場合も繊維の場合も、1gである。
【0022】
次いで、測定対象製品から50mm×50mmの吸収コアサンプルを準備する(吸収コアサンプルの大きさは、対象の大きさによって変更できるが、可能な範囲で大きく準備すべきである)。次いで、吸収コアサンプル全体の質量T(g)を測定する。
【0023】
次いで、吸収コアサンプルを250メッシュのナイロンメッシュ袋に入れ、生理食塩水500ml中に30分間浸漬した後、遠心分離機にて150Gで10分間脱水し、脱水後の吸収コアサンプル質量を測定し、吸収コアサンプルの保水量を求める。
【0024】
吸収コアサンプル中のSAP質量をS(g)、繊維質量をP(g)とすると(T=S+P)、次式が成立する。
【0025】
吸収コアサンプルの保水量(g)=SAPサンプルの保水量(g/g)×S(g)+繊維サンプルの保水量(g/g)×(T−S)(g)
【0026】
上式に基づいて、SAP質量Sが算出される。次いで、次式を用いてSAP粒子質量比率が算出される。
【0027】
SAP粒子質量比率(%)=S/T
【0028】
図1に示されるように、表面シート2の長手方向長さは吸収コア4の長手方向長さよりも長い。その結果、表面シート2には、吸収コア4の長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分2Eが設けられる。延出部分2Eの長手方向長さは250mm以上が好ましい。
【0029】
2つの延出部分2E同士間の中間部分では、図2に示されるように、表面シート2は吸収コア4の肌側面4Sを覆うと共に、肌側面4Sに直接的に接合される。言い換えると、表面シート2と吸収コア4との間に別のシートが設けられていない。また、表面シート2は吸収コア4の両側縁4Lを覆い、更に、吸収コア4の非肌側面4NSまで覆っている。本発明による第1実施例では、表面シート2の両側部が重なり部分2Wにおいて互いに重ね合わされており、したがって表面シート2は非肌側面4NS全体を覆っている。言い換えると、表面シート2は長手方向Lに平行な折り曲げ線に沿って折り曲げられ、吸収コア4を包んでいる。
【0030】
この場合、表面シート2の肌側部分2Sと吸収コア4の肌側面4Sとがホットメルト接着剤5Sにより互いに接合され、表面シート2の非肌側部分2NSと吸収コア4の非肌側面4NSとがホットメルト接着剤5NSにより互いに接合される。その結果、表面シート2内の被吸収液を吸収コア4に速やかに移動させることが可能となる。
【0031】
また、表面シート2の非肌側部分2NSとバックシート3とがホットメルト接着剤6により互いに接合される。この場合、ホットメルト接着剤6は長手方向及び横断方向に連続的に適用され、したがって表面シート2はバックシート3に対し長手方向及び横断方向に連続的に接続される。
【0032】
一方、延出部分2Eでは、図3に示されるように、表面シート2の肌側部分2Sはその下方側において重ねられている非肌側部分2NSとホットメルト接着剤7により互いに接合される。この場合、ホットメルト接着剤7は長手方向及び横断方向に連続的に適用され、したがって肌側部分2Sは非肌側部分2NSに対し長手方向及び横断方向に連続的に接続される。
【0033】
図4は表面シート2に適用されるホットメルト接着剤8のパターンの一例を示している。この例では、ホットメルト接着剤8が長手方向に互いに平行に延びる複数の螺旋の形で適用され、これら螺旋状接着剤8は隣接する螺旋状接着剤8と部分的に重なっている。このようにして、接着剤8は長手方向にも横断方向にも連続的に適用される。
【0034】
その結果、吸収コア4、特にSAP粒子が内装体1内に確実に封入され、したがってSAP粒子が内装体1から漏れ落ちるのを抑制することができる。
【0035】
すなわち、表面シート2は吸収コア4を包むコアラップとしても機能する。その結果、コアラップ及びセカンドシート等を省略することができ、したがってオムツの製造コストを大幅に低減することができる。
【0036】
この場合、表面シート2は乾燥時でも湿潤時でも、長手方向及び横断方向の両方に十分な引張強度を備えている。したがって、コアラップを省略しても、吸収コア4、特にSAP粒子を漏れ落ちるのを確実に抑制できる。
【0037】
また、表面シート2がメルトブローン層を含んでいるので、SAP粒子が漏れ落ちるのを更に確実に抑制することができる。同時に、着用者の肌には、表面シート2の表側のスパンボンド層が接触する。その結果、良好な肌触りが得られる。しかも、表面シート2はスパンボンド/メルトブローン/スパンボンドの3層構造を含むので、取り扱いが容易になる。
【0038】
更に、表面シート2の表側のスパンボンド層にはパターンエンボス加工が施されるので、表側のスパンボンド層には、繊維同士が互いに圧着されている高圧縮領域と、繊維同士がほとんど圧着されていない低圧縮領域とが形成される。この低圧縮領域では、繊維の自由度が比較的高いので、尿のような被吸収液を表面シート2内に容易に引き込むことができる。
【0039】
一方、表面シート2の裏側のスパンボンド層にはフラットエンボス加工が施されるので、裏側のスパンボンド層は全体的にほぼ均一に圧縮される。したがって、裏側のスパンボンド層の強度が高められているので、吸収コア4、特にSAP粒子によって表面シート2が損傷するのが抑制される。また、繊維密度が高いので、SAP粒子が表面シート2を通過するのが抑制され、吸収コア4から漏れ落ちるのが抑制される。
【0040】
また、裏側のスパンボンド層の繊維密度が表側のスパンボンド層よりも高いので、表側のスパンボンド層から裏側のスパンボンド層への液拡散が促進されている。更に、2つのスパンボンド層が長手方向の繊維配向性を有しているので、長手方向の液拡散が促進されている。
【0041】
本発明による実施例の表面シート2(スパンボンド層4gsm、メルトブローン層2gsm、スパンボンド層4gsm)についてクレム吸水試験を行ったところ、長手方向の液拡散性は20から30mmであり、横断方向の液拡散性は5から15mmであった。このように、表面シート2は、単一のシートでありながら、高い液拡散性を有している。
【0042】
なお、着用者の肌側に接するシートとして一般的なトップシート(ポリエチレン・ポリプロピレン繊維スパンボンド、20gsm)では長手方向の液拡散性は10から15mmであり、横断方向の液拡散性は5から15mmであった。一方、吸収コア4を包むシートとして一般的なティッシュシートの液拡散性は長手方向及び横断方向共に25から35mmであった。
【0043】
しかも、SAP粒子質量比率が40パーセント以下であるので、SAP粒子の漏れ落ちを抑制することができる。すなわち、SAP粒子質量比率が高いと、繊維集合体内に留まることができなくなるSAP粒子が発生し、着用者の動きによって表面シート2が損傷されてSAP粒子が漏れ落ちる可能性が高くなる。
【0044】
このことは実験によって確認されている。この実験は次のようにして行われた。すなわち、表面シート2により包まれた吸収コア4を吸収体と称すると、SAP粒子質量比率が互いに異なる複数の吸収体を用意した。吸収体のSAP粒子質量比率は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%であった。市販のオムツ(商品名:ムーニーマンLサイズ)から吸収コア、吸収コアラップシート、表面シートを取り外し、これら吸収体を取り付けてオムツサンプルを作成した。
【0045】
5名のLサイズ対象ユーザーに、まず黒色の布パンツを着用させた。これは、漏れ落ちたSAP粒子が対象ユーザーの肌に付着しないように、漏れ落ちたSAP粒子を確認しやすくするためである。次いで、対象ユーザーにオムツサンプルを着用させた。次いで、寝姿勢、立つ、走る、歩く、座るという動作を入れながら、対象ユーザーを30分間自由に活動させた。その後、オムツサンプルの吸収体に80mlの生理食塩水を吸収させて、同様に対象ユーザーに30分間活動させた。次いで、オムツ表面及び布パンツ表面でのSAP粒子の有無を確認した。
【0046】
その結果、SAP粒子質量比率が40%までであると、SAP粒子の漏れ落ちは発生しなかった。SAP粒子質量比率が45%であると、5名中2名にSAPの漏れ落ちが発生した。
【0047】
図6及び図7に示されるオムツ10は、上述の内装体1に外装体11を組み合わせて形成されたものである。この例では、外装体11は、着用者の前側ないし腹側に位置する腹側部分11Fと、着用者の後側ないし背側に位置する背側部分11Rとを含み、これら腹側部分11F及び背側部分11Rは互いに分離されている。腹側部分及び背側部分が互いに一体のものでもよい。
【0048】
内装体1のバックシート3はその長手方向端部において外装体11の腹側部分11F及び背側部分11Rとそれぞれ接合される。また、腹側部分11Fの脇部分13Fと背側部分11Rの脇部分13Rとが互いに接合され、したがっていわゆるパンツ型オムツが形成される。
【0049】
腹側部分11F及び背側部分11Rにはそれぞれ、横断方向に互いに平行に延びる複数の弾性部材12Fが伸長状態で組み入れられる。
【0050】
弾性部材12F,12Rのうち一部の弾性部材12FE,12REは、内装体1の延出部分2Eと重なっている。その結果、着用時に、延出部分2Eが横断方向に収縮され、したがってSAP粒子が延出部分2Eを介して漏れ落ちるのを更に抑制することができる。
【0051】
更に、延出部分2Eを覆うシートが設けられておらず、したがって延出部分2Eが着用者の肌と接触可能になっている。その結果、吸収面を大きくすることができる。
【0052】
なお、図7において、14は内装体1の両側部に設けられた防漏部材を、15は防漏部材14に組み入れられる弾性部材を、それぞれ示している。当然、防漏部材を省略することもできる。
【0053】
図8及び図9に示される本発明による第2実施例では、表面シート2は吸収コア4の非肌側面4NSを部分的に覆い、すなわち全体を覆っていない。言い換えると、吸収コア4の非肌側面4NSとバックシート3との間に別のシートが配置されておらず、したがって吸収コア4の非肌側面4NSはバックシート3に直接的に接合される。この場合、表面シート2が覆っていないクリアランス2Cが形成される。また、図9に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられている非肌側部分2NS及びバックシート3とホットメルト接着剤6,7により接合される。このようにすると、表面シート2を形成するのに必要な材料の量を低減することができる。
【0054】
図10及び図11に示される本発明による第3実施例では、表面シート2は吸収コア4の非肌側面4NSを覆っておらず、横断方向外向きに突出する一対のフランジ状部分2Fを有する。これらフランジ状部分2Fはホットメルト接着剤6Fによりバックシート3に接合される。この場合、フランジ状部分2Fはバックシート3に対し、長手方向及び横断方向に連続的に接合される。また、図11に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられているバックシート3とホットメルト接着剤7により接合される。なお、この例にもクリアランス2Cが形成される。
【0055】
図12及び図13に示される本発明による第4実施例では、図8及び図9に示される第2実施例において、吸収コア4の非肌側面4NSを覆う追加のシート16がクリアランス2Cに配置される。追加のシート16はホットメルト接着剤5NSにより吸収コア4の非肌側面4NSに接合され、ホットメルト接着剤6によりバックシート3に接合される。また、図13に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられている追加のシート16とホットメルト接着剤7により接合される。このようにすると、SAP粒子がバックシート3を損傷するのを抑制することができる。SAP粒子がバックシート3を損傷すると、SAP粒子がバックシート3を介して漏れ落ちるおそれがある。
【0056】
図14及び図15に示される本発明による第5実施例では、図10及び図11に示される第2実施例において、吸収コア4の非肌側面4NSを覆う追加のシート16がクリアランス2Cに配置される。追加のシート16はホットメルト接着剤5NSにより吸収コア4の非肌側面4NSに接合され、ホットメルト接着剤6Aによりバックシート3に接合される。また、図15に示されるように、延出部分2Eにおいて、表面シート2の肌側部分2Sは、重ねられている追加のシート16とホットメルト接着剤7により接合される。その結果、SAP粒子がバックシート3を損傷するのを抑制することができる。
【0057】
図16に示される本発明による第6実施例では、表面シート2の延出部分2Eは、重ねられている表面シート2又はバックシート3と共にエンボス加工されたエンボス領域2Bを有する。このようにすると、SAP粒子が延出部分2Eを介し漏れ落ちるのを確実に抑制することができる。
【0058】
なお、表面シート2が、表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間の2つのメルトブローン層とを含む単一のシートからなるようにしてもよい。このようにすると、SAP粒子が漏れ落ちるのを更に確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 内装体
2 表面シート
2E 延出部分
3 バックシート
4 吸収コア
4S 肌側面
4NS 非肌側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、液保持性の吸収コアと、を備える吸収性物品であって、
表面シートは、表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなり、
吸収コアは、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなり、
表面シートが吸収コアの肌側面を覆うと共に該肌側面に直接的に接合され、
表面シートの長手方向長さが吸収コアの長手方向長さよりも長くそれにより表面シートに吸収コアの長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分が設けられると共に、これら延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと横断方向に連続的に接続され、
これら延出部分が着用者の肌と接触可能である、
吸収性物品。
【請求項2】
表面シートは、表側及び裏側のスパンボンド層並びにメルトブローン層を積層した後に表側のスパンボンド層にパターンエンボス加工を施すと共に裏側のスパンボンド層にフラットエンボス加工を施すことにより形成され、
表面シートのクレム吸水試験による液拡散性が20mm以上であり、
吸収コアにおける高吸収ポリマー粒子の質量比率が40パーセント以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
表面シートの長手方向の引張強度及び横断方向の引張強度が共に、乾燥時及び湿潤時それぞれにおいて、4.0N/25mm以上である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
表面シートが吸収コアの両側縁を覆って吸収コアの非肌側面まで拡がっている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
表面シートが吸収コアの非肌側面全体を覆っている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
吸収コアの非肌側面がバックシートに直接的に接合される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
吸収コアとバックシートとの間に吸収コアの非肌側面を覆う追加のシートを更に備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
表面シートの延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと共にエンボス加工されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
表面シートは、2つのスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間の2つのメルトブローン層とを含む単一のシートからなる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液不透過性のバックシートと、液保持性の吸収コアと、を備える吸収性物品であって、
表面シートは、表側及び裏側のスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間のメルトブローン層とを含む単一のシートからなり、
吸収コアは、繊維集合体及び高吸収ポリマー粒子からなり、
表面シートが吸収コアの肌側面を覆うと共に該肌側面に直接的に接合され、
表面シートの長手方向長さが吸収コアの長手方向長さよりも長くそれにより表面シートに吸収コアの長手方向両端から長手方向外側に延出する延出部分が設けられると共に、これら延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと横断方向に連続的に接続され、
これら延出部分が着用者の肌と接触可能である、
吸収性物品。
【請求項2】
表面シートは、表側及び裏側のスパンボンド層並びにメルトブローン層を積層した後に表側のスパンボンド層にパターンエンボス加工を施すと共に裏側のスパンボンド層にフラットエンボス加工を施すことにより形成され、
表面シートのクレム吸水試験による液拡散性が20mm以上であり、
吸収コアにおける高吸収ポリマー粒子の質量比率が40パーセント以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
表面シートの長手方向の引張強度及び横断方向の引張強度が共に、乾燥時及び湿潤時それぞれにおいて、4.0N/25mm以上である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
表面シートが吸収コアの両側縁を覆って吸収コアの非肌側面まで拡がっている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
表面シートが吸収コアの非肌側面全体を覆っている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
吸収コアの非肌側面がバックシートに直接的に接合される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
吸収コアとバックシートとの間に吸収コアの非肌側面を覆う追加のシートを更に備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
表面シートの延出部分がそれぞれ、重ねられている表面シート又はバックシートと共にエンボス加工されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
表面シートは、2つのスパンボンド層とこれらスパンボンド層同士間の2つのメルトブローン層とを含む単一のシートからなる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−75637(P2012−75637A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223096(P2010−223096)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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