説明

吸収性衛生用品のリサイクルに用いる処理方法

【課題】使用済み吸収性衛生用品から構成材料をリサイクルする前に、用品を滅菌する方法を提供する。
【解決手段】回転式円筒オートクレーブ14に使用済み吸収性衛生用品をロードする段階と、オートクレーブを滅菌温度に達するよう加熱および加圧するとともにオートクレーブをその長手方向軸Aの周りに回転させる段階とを備え、加熱および加圧する段階においては、オートクレーブ内の用品を第1温度状態とし、かつ、オートクレーブ内面を第1温度より高い第2温度状態とする、使用済み吸収性衛生用品を滅菌する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、使用済みの吸収性衛生用品のリサイクルに用いる処理方法に関する。
【0002】
「吸収性衛生用品」とは、一般的に、小児おむつ、失禁吸収性パッド、女性の生理用ナプキン、ベッドマットなどの使い捨て吸収性用品を指す。
【背景技術】
【0003】
一般的に、吸収性衛生用品は、幅広い種類の異なる材料から構成されている。それら材料には、プラスチック材料のシート、セルロース綿毛、高吸収性ポリマー、不織布のシートなどが含まれる。
【0004】
吸収性衛生用品はプラスチックおよびセルロースなどの高品質の材料を含んでいる。新たな生産サイクル、またはエネルギーの産出などの他の用途に用いるべく、これらの材料を回収することが所望される。
【0005】
現在、使用済みの吸収性衛生用品は未分別の廃棄物として廃棄され、ごみ廃棄場へと送られる。使用済みの吸収性衛生用品の構成材料はそもそも回収されない。なぜなら、それら様々な材料(セルロース繊維、高吸収性ポリマー、プラスチック材料のシートなど)が密接に組み合わされているからであり、それらを分離させるには、用品を完全に破壊する必要があるからである。加えて、使用済みの吸収性衛生用品は有機排出物および細菌を含むので、材料をリサイクルする前に、用品を滅菌する必要がある。
【0006】
これらの理由により、使用済みの吸収性衛生用品は、分別回収の対象となるリサイクル可能な廃棄用品に含まれていない。
【0007】
推計によると、吸収性衛生用品の、一般廃棄物全体に占める割合は、およそ2〜3%である。しかし、廃棄物の分別回収が高い割合で行われている地域(分別される廃棄物の割合が全体の60%超)では、吸収性衛生用品の、未分別の廃棄物に対する割合は、およそ20%と高くなる。
【0008】
このように吸収性衛生用品の、リサイクル不可能な廃棄物に対する割合は高く、効率的かつ経済的に有利な方法で吸収性衛生用品の構成材料をリサイクルすることを目的として、吸収性衛生用品の処理の実行を可能にする機器および方法を開発することがより一層所望される。
【0009】
従来より知られている使用済みの吸収性衛生用品の処理技術は十分なものではない。その技術の一例は、使用済みの吸収性用品を水、アルカリおよび石鹸で洗浄する段階と、その洗浄段階で、セルロースをプラスチックから分離する段階とを備えている。この技術は、例えば、WO94/20668およびWO96/27045に開示されている。
【0010】
米国特許第5292075号の開示する方法では、汚れた吸収性衛生用品は予め細断される。その後、プラスチック材料を内部に留める穴のあいた円筒ドラムを備える洗浄機内で、細断された材料を洗浄する。そして、セルロースパルプを含む材料を脱水する。
【0011】
吸収性衛生用品を処理するこれらの技術の実際の実施には、課題がある。それは、用いられる洗浄水がゲル化高吸水性ポリマーおよび有機残渣などのような汚染物質を多量に含むことになるので、その洗浄水の廃棄が課題となるということである。さらに、洗浄後にセルロースを乾燥させるので、消費するエネルギー量が多いという課題もある。
【0012】
さらに他の課題もある。通常、使用済みの吸収性衛生用品は、折り畳んで閉じられ、不透過性バリアを形成する当該用品の外側のプラスチック層によってパックされた状態で、捨てられるということである。その捨てられたときの状態のまま用品を処理しようとすると、外側の不透過性層によって、当該用品を効果的に滅菌出来ない。一方、米国特許第5292075号が開示するように予備処理をするには、有機排出物、細菌および汚染物を多量に含む物品を細断する必要がある。
【0013】
特開2004−113915号公報は、吸収性ポリマーを含むおむつを処理する方法を開示している。当該方法においては、使用済みのおむつは、切削屑と共に、加圧された密閉容器内に置かれる。容器内では、おむつが高温かつ高圧力の蒸気によって、予め設定された時間の間、処理される。蒸気による処理は、15〜25atmの圧力および150〜250℃の温度で行われる。当該特許文献によると、処理済みの吸収性衛生用品は、発酵させた後、肥料として用いられる。
【0014】
WO2010/065088は、一般廃棄物の処理に用いられるオートクレーブを開示しており、その処理においては、廃棄物を乾燥させるのに蒸気が用いられる。WO2010/065088が開示する装置は、開かれるとオートクレーブへのアクセスを可能とし、密閉されるとオートクレーブの加圧を可能にする、1以上のハッチを有する回転式円筒オートクレーブと、オートクレーブ内に含まれる廃棄物と直接接触する接触蒸気の吸入口と、非接触蒸気を誘導するよう設計され、オートクレーブの内面から突出し、非接触蒸気が供給される複数の直線的な中空ブレードと、を備える。当該装置によって、オートクレーブ内での処理中に、一般廃棄物の滅菌と乾燥が可能となる。WO2010/065088が開示する装置は、未分別の一般廃棄物を対象として開発されたものであり、吸収性衛生用品の構成材料を滅菌し、乾燥させ、分離することに関しての教示は特に含んでいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明の目的は、使用済みの吸収性衛生用品を処理する方法を提供することである。当該方法によって、使用済みの吸収性衛生用品の滅菌、乾燥および破壊が可能となり、構成材料の回収が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的は、請求項1に記載される特徴を有する、本願発明の方法によって達成される。
【0017】
請求項は、本明細書に記載する、本願発明に関する教示の主要部分をなす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
非限定的な例としてのみ示す添付の図面を参照し、本願発明について詳細に説明する。
【図1】図1は、廃棄物を処理する回転式オートクレーブ装置の斜視図である。
【図2】図2は、図1のオートクレーブの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、装置10は、使用済みの吸収性衛生用品を処理する回転式オートクレーブ装置である。装置10は、固定構造体12を備える。固定構造体12は、円筒形のオートクレーブ14を積載している。オートクレーブ14は、その長手方向軸Aの周りを回転する。装置10は、駆動装置(図示せず)を備える。駆動装置は、長手方向軸Aの周りのオートクレーブ14の回転を駆動する。固定構造体12は、アクチュエータ16を備えてよい。アクチュエータ16は、水平方向軸に対するオートクレーブ14の傾きを変え、このことにより、オートクレーブ14の傾きをロード/アンロード位置と動作位置との間で変えられる。オートクレーブ14は、2つの端部を有し、そのうち少なくとも1つは、開かれるとオートクレーブ14の内部空間へのアクセスを可能とし、密閉されるとオートクレーブ14の内部空間の加圧を可能にするハッチによって終端されている。図示する例では、2つの開閉式ハッチ18、20が提供されており、例えば一方は、処理される用品のオートクレーブ14へのロードに用いられ、また他方は、処理済みの用品のオートクレーブ14からのアンロードに用いられる。他の実施形態では、開閉式のハッチは1つのみ提供され、このハッチが、ロードとアンロードの両方に用いられる。
【0020】
装置10は、循環路を備える。循環路は、吸収性衛生用品を滅菌温度まで熱するべく、オートクレーブ14を加熱し、加圧する。
【0021】
図2は、オートクレーブ14の概略断面図である。図2において、オートクレーブ14は、処理容積を定める内面22を有する。オートクレーブ14内には、内面22の部分を形成する複数のダクト24が配置されている。ダクト24は、長手方向軸Aと平行に延び、各ダクト24の両端部は、加熱蒸気の吸入用のヘッダーと、排気用のヘッダーとにそれぞれ繋がれている。ダクト24を通過する蒸気は、オートクレーブ14の内部に含まれる処理される用品と接触しないので、「非接触蒸気」と呼ぶ。
【0022】
ハッチ18は、回転式コネクタ34を備え、ハッチ20は、回転式コネクタ36を備える。回転式コネクタ34は、蒸気生成器38から供給される加熱蒸気を吸入し、回転式コネクタ36は、加熱蒸気を排気する。加熱蒸気のフローは、オートクレーブ14の内壁に位置するダクト24を通過する非接触蒸気42のフローと、処理される用品と直接接触し、オートクレーブ14の内部を加圧する接触蒸気44のフローとに分けられる。排気側のコネクタ36では、非接触蒸気42のフローと接触蒸気44のフローとが、例えばWO2010/065088に記載されるように、分けられ、別々に処理される。
【0023】
典型的に吸収性衛生用品は、セルロース繊維および高吸収性ポリマーの吸収性コアを備える。通常、吸収性コアは、互いに接合された2枚のプラスチック材料のシートに挟まれている。典型的に、バックシートは不透過性であり、トップシートは多孔性である。通常、吸収性衛生用品は、折り畳まれ、不透過性バックシートによってパックされた状態で覆われる。通常、折り畳まれた用品を閉じる粘着性のタブが備えられている。よって、有機排出物は、密封された不透過性プラスチック材料のシートで覆われている。
【0024】
本願発明では、吸収性衛生用品を、それらが収集されたときの状態のまま、つまり閉じられてパックされた状態のまま、当該用品を開く予備処理を要せずに処理する。
【0025】
オートクレーブ14内での処理で効果的な滅菌および乾燥を行うには、オートクレーブ14内のあらゆる位置で有機物の全てを滅菌温度に曝すべく、用品の破壊を行う必要がある。吸収性衛生用品の破壊は、滅菌を完全に行い、またプラスチックをセルロース繊維から分離するのに必ず必要なことである。
【0026】
動作において、オートクレーブ14には、吸収性衛生用品がまとめてロードされる。その後、オートクレーブ14は密閉され、接触蒸気によって加圧される。同時に、オートクレーブ14は、ダクト24内の非接触蒸気によって加熱される。加熱および加圧されたオートクレーブ14は、長手方向軸Aの周りを回転するよう駆動される。
【0027】
オートクレーブ14の動作温度が低いと用品を開くことが出来ず、動作温度が高過ぎると、プラスチック材料のトップシートにしわが出来、分離が難しくなることが分かっている。このことによって一方では、滅菌方法の効果に悪影響を及ぼされ、また他方では、オートクレーブ14から出てきた材料が再利用出来ないものになってしまう。中間的な温度を用いた場合のみ、破壊をせずに用品を開くことが出来たり、セルロース繊維と、セルロース繊維に吸収された有機液体とに処理を施すことが出来たりする。
【0028】
さらに正確には、吸収性衛生用品のプラスチック製のバックシートは150℃を超える温度でしわが出来ることが分かっており、また、吸収性衛生用品の接合を維持する接着剤を溶融させることにより用品を開き、接触蒸気による滅菌作用を用品に最適な状態で受けさせるには、およそ138℃の温度で十分であることも分かっている。
【0029】
さらに、140℃を超える温度により、吸収性衛生用品を収容するプラスチックバッグの破壊が可能である。
【0030】
本願発明によると、2種類以上の温度状態が同時に存在する回転式オートクレーブ14内で、使用済みの吸収性衛生用品が処理される。
【0031】
2種類の蒸気が供給される、加圧された回転式オートクレーブ14によると、廃棄物と直接接触する蒸気をオートクレーブ14へ導入する、またはオートクレーブ14から排気することにより、内容物に合わせて好ましい温度状態を維持できる。この好ましい温度は、138〜152℃の間であることが分かっている。実際に、150℃を実質的に超える温度では、吸収性衛生用品の外側の覆いにしわが出来てしまうことが分かっており、また、吸収性衛生用品の構造を保つ接着剤による接合を弱めて用品を開き、内側部分に接触蒸気の作用を受けさせるのに十分な温度は、138℃であることも分かっている。この範囲に含まれる温度を採用することにより、吸収性衛生用品内に存在する細菌性の内容物は、完全に滅菌される。さらに、138℃を超える温度によって、接触蒸気が吸収性衛生用品が収容されるバッグを破壊できる。
【0032】
廃棄物から分離されている、ダクト24内の非接触蒸気は、吸収性衛生用品のプラスチック製のバックシートに、しわが出来ないようにしつつもダメージを与え、その強度を弱める高温位置を、オートクレーブ14の壁部に形成する。この高温位置は、プラスチック製のシートに穴を開き、外側の覆いの強度を弱める、局所的な溶融を生み出す位置である。この溶融においては、回転式オートクレーブ14内の攪拌作用によって、外側の覆いが引き裂され、用品が破壊され、吸収性コアが接触蒸気に完全に曝される。プラスチック製のバックシートがダメージを受けると、プラスチック製のバックシートに覆われたセルロース繊維および高吸収性ポリマーの吸収性コアが、オートクレーブ14内の振盪作用により、プラスチック製のバックシートから容易に分離される。この効果を得るのに必要な、オートクレーブ14の壁部の温度は、160〜200℃の間であり、また好ましくは、165〜175℃の間であることが分かっている。およそ170℃の温度は、吸収性衛生用品のトップシートを形成するプラスチック材料の熱分解温度と対応する。
【0033】
2種類の温度状態が存在することによって、オートクレーブ14内の吸収性衛生用品の完全な破壊が可能になる。このようにして、作業者と周囲環境とを汚臭および吸収性衛生用品に含まれる汚染物質に曝すことになる、用品を細断する予備処理が不要となる。
【0034】
オートクレーブ14内での処理で用品を完全に破壊することにより、短時間での用品の乾燥および滅菌が可能となる。オートクレーブ14の内容物は湿気を含んでいる。このことが壁部の高温位置に及ぼす直接的な影響は、オートクレーブ14内の圧力に応じた、蒸気のフラッシュが生成されるということである。その結果、温度勾配が生じ、熱交換は比較的急速になされる。蒸気の圧力が飽和温度/圧力を超えると、余分な蒸気が外部に排気され、これにより、加熱段階においても乾燥が可能となる。オートクレーブ14内での処理後、乾燥され滅菌された、破壊済みの基本的にプラスチックおよびセルロース繊維からなる集まりが得られる。続いて、その乾燥され滅菌された破壊済みの集まりをふるいにかけ、プラスチックとセルロースとを分離する。
【0035】
当然ながら、本願発明の技術的思想を損なうことなく、構成の詳細および実施形態は幅広く変更し得、その場合であっても、特許請求の範囲に記載の本願発明の技術範囲から逸脱することはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式円筒オートクレーブを提供する段階と、
閉じられた使用済みの吸収性衛生用品を前記オートクレーブへロードする段階と、
前記オートクレーブを、滅菌温度に達するよう加熱および加圧し、同時に、前記オートクレーブを、前記オートクレーブの長手方向軸の周りを回転するよう駆動する段階と
を備え、
前記円筒オートクレーブは、内面と2つの端部とを有し、
前記2つの端部の少なくとも1つが、開かれると前記オートクレーブへのアクセスを可能とし、密閉されると前記オートクレーブの加圧を可能にするハッチによって終端され、
前記オートクレーブを加熱および加圧する段階は、前記オートクレーブ内の用品を第1温度状態とし、かつ、前記内面を前記第1温度より高い第2温度状態とする、前記使用済みの吸収性衛生用品を処理する方法。
【請求項2】
前記第1温度状態は、138から152℃の間の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2温度状態は、160から200℃の間の温度である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2温度状態は、165から175℃の間の温度である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1温度状態は、前記オートクレーブ内に含まれる用品と直接接触する接触蒸気によって作り出され、
前記第2温度状態は、前記オートクレーブの内壁に位置するダクトを通過する非接触蒸気によって作り出される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−111479(P2013−111479A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−249307(P2012−249307)
【出願日】平成24年11月13日(2012.11.13)
【出願人】(512292511)
【Fターム(参考)】