説明

吸引洗浄受便装置

【課題】本発明は、寝た状態又はこれに近い姿勢、あるいは車椅子で排尿便する場合に、排泄部に当接して排泄物を吸引排出すると共に排泄部を洗浄し、排泄物及び洗浄廃液を回収する吸引洗浄受便装置に関する。
【解決手段】排泄部に当接する受便器本体1と、該受便器本体から排泄物を吸引排出する吸引機構4と、排泄部を洗浄するために洗浄液Wを供給する洗浄液供給機構6とを備え、受便器本体1は、略吸盤状をなし排泄部の周辺に密着する外形形状を有する当接部2と、洗浄液を供給する給液口7と、該給液口から供給される洗浄液を受便器本体内の受便部8に噴流させる排出用流路9と、洗浄液を排泄部方向に噴流させる洗浄用流路10と、排出用流路と洗浄用流路を切り換える切換え部11と、当接部を排泄部周辺に吸引密着させ、内部を減圧すると共に排泄物、洗い流し液及び洗浄済液を吸引排出する排出口12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、寝た状態又はこれに近い姿勢、あるいは車椅子で排尿便する場合に、排泄部に当接して排泄物を回収する吸引洗浄受便装置に係り、特に排泄物を自動的に検出し、洗浄液を自動的に給水して吸引排出すると共に排泄部を洗浄し、排泄物及び洗浄廃液を回収することが可能な吸引洗浄受便装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
寝た状態又はこれに近い姿勢、あるいは車椅子で排尿便する場合に、おむつ形式やオープン型の便器では周囲への臭気の飛散を気兼ねして排泄を我慢してしまう傾向にある。このような場合に、従来、受便本体部を排泄部に密着当接して排泄物を吸引回収し、しかも排泄部を洗浄する密閉型の吸引洗浄受便装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
また、密閉型の吸引洗浄受便装置の他の従来例として、パンツ状の下着に装着されるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
また、本発明者は、先に、排泄後の排部を洗浄する人体洗浄装置を提案している(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、本発明者は、同様に自力排便が困難な場合の吸引洗浄摘便装置を既に提案している(例えば、特許文献4参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−54874号公報(第3−5頁、図1、図5)
【特許文献2】
特開2002−11030号公報(第2−4頁、図1)
【特許文献3】
特開平2000−225169号公報(第1−3頁、図1、図3)
【特許文献4】
特願2002−12710号明細書及び図面
【0004】
上記特許文献1に記載の従来のこの種の吸引受便装置は、紐で身体に装着されるパンティー布に8の字状に形成された押圧チューブが取り付けられていて、該押圧チューブ内に空気を供給することにより膨張させて身体に密着させるようにし、該押圧チューブに形成された排出装置取付孔部には排泄物を破砕するモーターファンと水検知センサーとを備えた排出装置を取り付けて装着部が構成されている。装着部内の排泄物はモーターファンによって破砕され、水と混合されて吸引モーターで吸入して回収タンクへ回収される。排泄部には水が噴出して洗浄され、その後空気が吹き付けられて乾燥されるようになっている。
【0005】
また、特許文献2に記載の吸引受便装置は、パンツ状の下着に取り付けられる大便用及び小便用のカップは、排泄部及びその周囲に水流を当てる洗浄ノズルを具備し、該カップに、外容器と該外容器内の空気を吸引するポンプが接続され、吸引空気の流路に消臭フィルター層を有する蓋と、外容器内に着脱可能に保持され、一端がファスナーによって開閉可能にシールされた通気性フィルム製の内容器と、該内容器内に収容され、外容器及び内容器を通じてカップに接続される排泄物パックとからなる回収タンクを具備する回収機構を設けて、排泄物を排泄物パック内に吸引するようにしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来の吸引洗浄受便装置にあっては、使用に際してその都度紐により装着部を身体に装着しなければならないから、頗る面倒であるばかりでなく、装置全体が極めて複雑な構成及び制御になっており、個人差により、あるいはそのときの状況によって大きく異なる排便状況に充分対応できないおそれがある。
【0007】
一方、特許文献2に記載の上記従来の吸引洗浄受便装置においても、カップはパンツ状の下着に装着する形式であり、特許文献1の従来のものと同様、使用の都度パンツ状の下着を装着しなければならないから、装着が面倒であるばかりでなく、人体への密着性に欠けるおそれがある。
【0008】
また、特許文献1に記載の吸引洗浄受便装置および引用文献2に記載の吸引洗浄受便装置においては、受便部をパンティー布又はパンツ状の下着に装着する、という発想に基づくものであるが、前述のように、実際の排便状況は量的にも質的にも、個人差あるいはそのときの状況により大きく異なるから、従来の前記提案に係るものでは、これらの排便状況に充分に対応することができないおそれがある。
【0009】
また、本発明者は、先に、提案した特許文献3に記載の排泄後の排部を洗浄する吸引洗浄摘便装置、また、特許文献4に記載の吸引洗浄摘便装置は、自力排便が困難な場合に、装着部の排泄部周辺への装着性を容易にするために装着部の当接部を吸盤状に形成し、該当接部の内部を減圧して吸着させる構成のものである。
【0010】
しかも、特許文献3に記載の上記従来の吸引洗浄摘便装置、また、特許文献4に記載の上記従来の吸引洗浄摘便装置は、種々実験の結果、排泄物の吸引排出のためには相当の吸引力を要し、また、排泄物の量的、質的な性状によっては単に排泄物だけを直接吸引したのみでは確実に吸引排出されないことが判明した。一方、排泄物の吸引排出のために装着部の内部を強力に吸引すると、排部周辺の皮肉が当接部内に吸引されて苦痛を伴うことも判明した。
【0011】
したがって、寝た状態又はこれに近い姿勢、あるいは車椅子で排便する場合の介護者の負担を軽減する意味からも、受便器本体を容易かつ確実に装着するとともに排泄物を確実に吸引排出し、しかも排泄部を確実に洗浄できる実用的な吸引排出受便装置が望まれている。
【0012】
本発明の目的は前記のような従来のものの欠点を解消し、受便器本体の装着が容易であり、かつ密閉性を確保することができて臭気が飛散することはなく、排泄物を確実に吸引排出でき、しかも排泄部を確実に洗浄できる吸引排出受便装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の吸引洗浄受便装置は、請求項1のものにおいては、排泄部を含む部位に当接する受便器本体と、該受便器本体からホースを介して排泄物を吸引排出する吸引機構と、排泄部を洗浄するために前記受便器本体に供給ホースを介して接続され、水、温水その他の洗浄液を供給する洗浄液供給機構とを備えた吸引洗浄受便装置であって、前記受便器本体は、略吸盤状をなしていて当接開口縁が排泄部の周辺に密着する外形形状を有する当接部と、前記洗浄液を受便器本体内に供給する給液口と、該給液口から供給される洗浄液を受便器本体内底部の便受部に噴流させる排出用流路と、前記洗浄液を排泄部方向に噴流させる洗浄用流路と、前記排出用流路と洗浄用流路を切り換える切換え部と、当接部を排泄部周辺に吸引密着させるように内部を減圧すると共に便受部に排出された排泄物、洗い流し液及び洗浄済液を吸引排出するための排出口とを備えていることを特徴とする。
【0014】
受便器本体を排泄部を含む部位に当接し、吸引機構を動作させて受便器本体を吸着させた状態で吸引器孔を一旦停止し、排便する。排泄物の吸引排出に際しては給液口からの洗浄液の流路を排出用流路に切り換えて吸引機構を駆動させることにより、洗浄液が洗い流し液となって受便部の排泄物を排出口から吸引排出することができる。排泄部の洗浄に際しては、給液口からの洗浄液の流路を洗浄用流路に切り換えることにより排泄部が洗浄され、洗浄済液は排出口から吸引排出される。
【0015】
請求項2に記載のものは、請求項1に記載の吸引洗浄受便装置において、受便器本体に減圧自動調整弁を備えた空気吸入部が設けられると共に該空気吸入部から便受部の近傍に空気導入路が設けられ、排泄物の吸引排出に際して排出用流路から噴流する洗い流し液とともに空気を噴出させて排泄物を排出口側に押しやるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
受便器本体に減圧自動調整弁を備えた空気吸入部が設けられると共に該空気吸入部から便受部の近傍に空気導入路が設けられているから、受便器本体の装着に際して吸引機構を駆動させた際に適度な吸着力で装着することができ、また、排泄物の吸引排出に際しては、排出用流路から噴流する洗い流し液とともに空気を受便部に噴出させて排泄物を排出口側に押しやり、確実に吸引排出することができる。
【0017】
請求項3に記載のものは、請求項1又は2において受便器本体は、上部構成受便部と下部構成受便部とにより形成され、上部構成受便部と下部構成受便部とは上部構成受便部の下縁と下部構成受便部の上縁との重合部分における左右両側部分を枢着軸により枢着するとともに前記上部構成受便部と下部構成受便部との背面を締付調節ねじによりねじ止めしたことを特徴とした。
【0018】
受便器本体は、下部構成受便部に対して上部構成受便部を枢着軸を中心に前後方向に移動することにより人体の大きさに合わせて調整を行う。
【0019】
請求項4に記載のものは、請求項1〜3に記載の吸引洗浄受便装置において、受便器本体には当接部を排泄部周辺に当接させて保持するアームハンドルが取り付けられ、該アームハンドルの先端には排出用流路と洗浄流路の切換え部の切換え操作スイッチ及び吸引機構の操作スイッチが設けられていることを特徴とする。
【0020】
これにより、ハンドルアームを握って受便器本体を所定の部位に押し当てることができて操作が容易であり、また、排出用流路と洗浄用流路の切換え部の切換え操作及び吸引機構の操作をアームハンドルに設けた操作スイッチで行うことができる。
【0021】
請求項5に記載のものは、請求項1〜4に記載の吸引洗浄受便装置において、便受部の表面には排出口方向に向かう多数の突条が形成されていることを特徴とする。
【0022】
受便部の表面には排出口方向に向かう多数の突条が形成されているから、該受便部上の排泄物を洗い流し液等により排出口側により確実に流すことができる。
【0023】
請求項6に記載のものは、排泄部を含む部位に当接する受便器本体と、該受便器本体からホースを介して排泄物を吸引排出する吸引機構と、排泄部を洗浄するために前記受便器本体に水、温水その他の洗浄液を供給する洗浄液供給機構とを備えた吸引洗浄受便装置であって、吸引機構は、前記受便器本体にホースを介して接続された密閉開閉蓋を有する汚物タンクと該汚物タンク内を減圧する吸引パイプとを備え、該吸引パイプによって吸引される汚物タンク内の空気を洗浄液供給機構における給液タンク内の液中に気泡状に流出させて臭気を減殺し、給液タンクに形成した排気口から排気するように構成したことを特徴とする。
【0024】
受便器本体はホースを介して密閉開閉蓋を有する汚物タンクに接続され、吸引パイプを介して汚物タンク内を減圧することより受便器本体から排泄物を吸引排出するようになっているから、吸引排出された排泄物は汚物タンク内に投入されるとともに、タンク内上部に接続されている吸引パイプからは臭気を伴った空気が吸引されるが、この空気を洗浄液供給機構における給液タンク内の液中に気泡状に流出させて臭気を減殺し、給液タンクに形成した排気口から排気するようにしたから、周辺への臭気の発散を少なくすることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかの吸引洗浄受便装置において、受便器本体の受便部に便等の排泄物の有無を検知可能なセンサーを設け、該センサーからの検知信号により吸引機構の吸引モータを駆動可能に設けるとともに給液タンク内のポンプを駆動し、洗浄水を給水可能としたことを特徴とする。
【0026】
受便器本体の受便部に便等の排泄物の有無をセンサーにより検知可能に設け、該センサーからの検知信号により吸引機構の吸引モータを駆動させて給液タンク内のポンプを駆動し、洗浄水を自動的に給水する。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の吸引洗浄受便装置の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は吸引洗浄受便装置の受便器本体の全体構成を示す断面図、図2は正面図、図3は図2R>2のB−B断面図、図4は図3のC−C拡大断面図、図5は本実施形態で使用する空気導入路の空気吸入部において外気を吸入するのに使用する減圧自動調整弁の断面図、図6は本実施形態を形成する吸引機構と洗浄液供給機構との一例を示す正面図、図7は同じく平面図、図8は同じく側面図、図9は本実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【0028】
図1において、Uは吸引洗浄受便装置である。1は受便器本体であって、この受便器本体1は排泄部を含む部位に当接するためのものであり、耐水性がある剛性材、好ましくは透明な合成樹脂により上部構成受便部1Aと下部構成受便部1Bを組付けることにより形成され、当接部2が略吸盤状をなしていて、当接開口縁が人体Hの洗浄すべき部位の周辺に密着する外形形状を備えている。また、受便器本体1からはホース3を介して排泄物を吸引排出する吸引機構4と、排泄物を洗浄するために前記受便器本体1に供給ホ−ス5を介して接続され、水、温水、その他の洗浄液Wを供給する洗浄液供給機構6とを備えている。
前記上部構成受便部1Aと下部構成受便部1Bとは、上部構成受便部1Aの下縁と下部構成受便部1Aの上縁との重合部分における左右両側部分を枢着軸D,Dにより枢着するとともに上部構成受便部1Aと下部構成受便部1Bとの背面中央に締付調節ねじNをスリット1bを介してねじ止めすることにより人体Hに合わせて下部構成受便部1Bに対して上部構成受便部1Aの取付位置を枢着軸D,Dを中心に前方または後方に移動して人体Hに合わせて調整するようにしている。
【0029】
また、受便器本体1には前記洗浄液Wを受便器本体1内に供給する給液口7と、該給液口7から供給される洗浄液Wを受便器本体1の内底部の便受部8に噴流させる排出用流路9と、前記洗浄液Wを排泄部方向に噴流させる洗浄用流路10と、前記排出用流路9と洗浄用流路10を切り換える切換え部11と、当接部2を排泄部周辺に吸着させるように内部を減圧するとともに便受部8に排泄された排泄物、洗い流し液W1及び洗浄済液W2を吸引排出するための排出口12を備えている。
【0030】
14は受便器本体1の外側(図3では左右側面)に設けられた空気吸入部であり、この空気吸入部14は図4に示すような減圧自動調整弁15が備えられ、空気吸入部14から受便部8の近傍に空気導入路16が設けられ、排泄物の吸引排出に際して排出用流路9から噴流する洗い流し液W1とともに空気Kを噴出させて排泄物を排出口12側に押しやるように構成されている。
また、前記空気吸入部14は、吸引機構4の排出口12からの吸引により受便器本体1内が過度に減圧されるのを防止し、当接部2が人体部位に食い込んだり皮膚が受便器本体1内に引き込まれるのを防止することにもなる。
【0031】
前記切換え部11は、後記アームハンドル17の切換え操作スイッチSW1を操作することにより励磁されるプランジャー11aの磁気的吸引作用により矢印F方向に往復移動するプランジャー・ロッド11bと、該プランジャー・ロッド11bの一端に枢着され、支点Qにより他端側が起伏されるアーム11cと、該アーム11cの先端側の一端に一端部が取付られ、他端部が給液口7の通路Tを開閉可能に設けられた流水方向切換板11dとから形成される。そして、アームハンドル17の切換え操作スイッチSW1を操作することによりプランジャー11aを励磁し、その磁気的吸引作用により矢印F方向にプランジャー・ロッド11bを往復移動させ、プランジャー・ロッド11bの一端に一端部が取付られている流水方向切換板11dにて給液口7の通路Tを開閉することにより洗浄液Wを排出用流路9と洗浄用流路10を切り換えて噴出するようになっている。
流水方向切換板11dには給液口7に合致して通路Tを開閉するための孔が設けられている。
【0032】
前記減圧自動調整弁15は、例えば図5に示すように前記空気吸入部14を有する弁箱15aと、該弁箱15a内に介装されたコイルばね15bと、該コイルばね15bの付勢力を常時閉方向に付勢されるような弁体15cとにより形成され、排泄物の吸引排出に際し吸引機構4の排出口12からの吸引により受便器本体1内が所定圧以上に減圧される場合に、コイルばね15bの付勢力に抗して開方向に移動し、外気を空気吸入部14から導入することにより排出用流路9から噴流する洗い流し液W1とともに空気Kを噴出させて排泄物を排出口12側に押しやるほか、当接部2が人体部位に食い込んだり、皮膚が受便器本体1内に引き込まれるのを防止する(図4参照)。
【0033】
17は受便器本体1に取付けられたアームハンドルであり、このアームハンドル17は当接部2を排泄部周辺に当接させて保持するためのものであり、先端には排出用流路9と洗浄用流路10の切換え部11の切換え操作スイッチSW1および吸引機構4の操作スイッチSW2が設けられている。
【0034】
18は受便器本体1の受便部8の表面に排出口12の方向に向かって形成された多数の突条であり、この突条18は排泄物に対する摩擦を軽減して付着性をなくすことにより排出口12から排出物を排出し易くするものである。
【0035】
前記吸引機構4は、前記受便器本体1にホース3を介して接続された密閉開閉蓋20を有する汚物タンク21と、該汚物タンク21内を減圧するために吸引モータMに接続された吸引パイプ22とを備えている。そして、該吸引パイプ22によって吸引される汚物タンク21内の空気K1を洗浄液供給機構6における給液タンク23内の洗浄液Wの液中にパイプPを介して気泡状に流出させて臭気を減殺し、給液タンク23に形成した排気口から排気するように構成した。Fは汚物タンク21内に吸引され、貯留される洗い流し液W1及び洗浄済液W2に対して浮上し、満杯になると、吸引パイプ22を塞いで吸引を阻止するためのフロートスィッチである。
【0036】
また、前記給液口7は洗浄液Wを給液するための洗浄液供給機構6に接続される。この洗浄液供給機構6は水、温水その他の洗浄液Wを貯留する給液タンク23と、洗浄液Wを供給するための給液ポンプ24と、給液ポンプ24と給液口7とを接続する供給ホース5、内部供給ホース5′とにより形成される。給液タンク23には、通常の水、或は消毒液を添加した水、温水等の洗浄液Wが投入されるが、例えば、底部に加温又は保温のための熱源を配置しておくように構成してもよい。供給ホース5と内部供給ホース5′とは、例えばビニール、ゴムなどの可撓性を有する可撓管が最適である。
【0037】
前記吸引機構4で受便器本体1内を減圧することにより当接部2が人体Hの排泄部の周辺に吸着されると共に受便器本体1内に排出された排泄物を吸引排出する。これと同時に給液タンク23から洗浄液Wを吸引して給液口7から噴出させ、局部を洗浄すると共に受便器本体1内の洗浄済液W2を吸引排出する。また、図5に示すように給液ポンプ24と給液口7とを接続する供給ホース5の管端に設けた給液ポンプ24を駆動させることにより給液タンク23内の洗浄液Wを吸引して給液口7から噴出させることもできる。
【0038】
また、汚物タンク21内の空気K1は、洗浄液供給機構6における給液タンク23内の洗浄液Wの液中に吸引パイプ22によって吸引されて気泡状に流出されるので、臭気は減殺され、給液タンク23に形成した排気口から排気される。
【0039】
前記のような構成において、吸引洗浄受便装置Uにおいては、給液タンク23、汚物タンク21及び吸引モータMは収納ボックス(図示しない)に収納し、キャスターローラーを備えて移動可能に各病床を移動できるように構成すれば便利である。
【0040】
Sは受便器本体1の受便部8に設けたセンサーであり、このセンサーSは受便器本体1の使用時に受便部8に排泄された大便による排泄物を検知するためのものであり、例えば光センサが使用される。また、受便器本体1の受便部8には図には示さないが排尿を検知するためのセンサーを設けて排尿が有ったことを検知するようにしてもよい。
【0041】
本発明の一実施形態は以上の構成からなり、例えば寝たきり老人のように寝た状態、または脊髄損傷、下半身麻痺、足の怪我をした等のように車椅子によらなければ動けないで自力で排便が不能な患者等の摘便をなすには、患者等が自ら、又は介護者の助けにより受便器本体1の略吸盤状の当接部2を人体Hの排泄部周辺に当接し、人体Hへ装着する。この場合、寝た状態の場合には、患者の症状等により図9に示すように患者が仰向けになった状態で受便器本体1を人体Hの排泄部周辺に当接する。
【0042】
この際、受便器本体1は、締付調整ねじNを緩めて下部構成受便部1Bに対して上部構成受便部1Aを枢着軸D,Dを中心に前後方向に移動することにより当接部2が人体Hに適合するように調整を行う。
【0043】
そして、受便器本体1の当接部2に人体Hの排泄部周辺が密着し、アームハンドル17の操作スイッチSW2をオンして吸引機構4を動作させて受便器本体1を吸着させた状態で吸引機構4を一旦停止し、排便する。受便器本体1の受便部8内に排便がなされたことを排泄物をセンサーSが検知すると、吸引機構4の吸引モータMが自動的に駆動してホース3を介して受便器本体1内は吸引され、負圧になり、受便部8内に排泄された排泄物は排出口12からホース3を通じて汚物タンク21内に吸引される。
【0044】
そして、排泄物の吸引排出がおこなわれると同時に給液ポンプ24が駆動し、排出用流路9を通じて給液タンク23内に貯留されている洗浄液Wが洗い流し液W1として受便部8に噴出される。しかも、受便器本体1には減圧自動調整弁15を備えた空気吸入部14が設けられているので、受便器本体1内が吸引機構4の吸引により所定圧以上、吸引されると、減圧自動調整弁15の弁体15cはコイルばね15bの付勢力に抗して開方向に移動し、外気を空気吸入部14から導入することにより洗い流し液W1および排泄物に対して混合されて撹拌が促されることにより排泄物を排出口12側に強制的に押しやる。
この際、受便器本体1の受便部8の表面には、図2に示すように排出口12の方向に向かう多数の突条18が形成されているので、この突条18により排泄物は摩擦が軽減され、付着性が少なくされるから、排出口12から排出物は排出し易くなる。
【0045】
また、吸引機構4の排出口12からの吸引により受便器本体1内が過度に減圧される場合には、減圧自動調整弁15のコイルばね15bの付勢力に抗して弁体15cが開いて外気が受便器本体1内に導入されるため、当接部2が人体部位に食い込んだり、皮膚が受便器本体1内に引き込まれるのを防止する。
こうして、受便部8内に排泄された排泄物は排出口12、ホース3を通じて汚物タンク21内に吸引されて貯留される。
【0046】
そして、受便器本体1にはアームハンドル17が取付られ、このアームハンドル17の先端には、排出用流路9と洗浄用流路10の切換え部11の切換え操作スイッチSW1および吸引機構4の操作スイッチSW2が設けられているので、切換え操作スイッチSW1を押圧すると、プランジャー11aが励磁され、その磁気的吸引作用により矢印F方向にプランジャー・ロッド11bは往復移動されるため、プランジャー・ロッド11bの一端に一端部が取付られている流水方向切換板11dにて給液口7の通路Tは閉鎖され、排出用流路9から洗浄用流路10へと切り換えが行われ、洗浄用流路10から水、温水、その他の洗浄液Wが人体Hの排泄部に噴出され、人体Hの排泄部周辺の洗浄が行われる。
そして、洗浄済液W2は、前述のように吸引機構4により汚物タンク21へと吸引され、貯留が行われる。
【0047】
また、アームハンドル17の操作スイッチSW2を操作することにより吸引モータMを停止し、受便器本体1内部の吸引を停止するとともに、洗浄用流路10から噴出される洗浄液Wによる人体部位の局部の洗浄を停止する。
また、汚物タンク21内に溜められる排泄物、洗い流し液W1及び洗浄済液W2は、トイレ等の所定場所に廃棄される。
【0048】
また、本実施形態の吸引洗浄受便装置Uにおいては、給液タンク23、汚物タンク21及び吸引モータMは収納ボックス(図示しない)に収納され、キャスターローラーを備えているので、各病床を移動できるようになり、便利である。
【0049】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、排泄部を含む部位に当接する受便器本体と、該受便器本体からホースを介して排泄物を吸引排出する吸引機構と、排泄部を洗浄するために前記受便器本体に供給ホースを介して接続され、水、温水その他の洗浄液を供給する洗浄液供給機構とを備えた吸引洗浄受便装置であって、前記受便器本体は、略吸盤状をなしていて当接開口縁が排泄部の周辺に密着する外形形状を有する当接部と、前記洗浄液を受便器本体内に供給する給液口と、該給液口から供給される洗浄液を受便器本体内の底部の便受部に噴流させる排出用流路と、前記洗浄液を排泄部方向に噴流させる洗浄用流路と、前記排出用流路と洗浄用流路を切り換える切換え部と、当接部を排泄部周辺に吸引密着させるように内部を減圧すると共に便受部に排出された排泄物、洗い流し液及び洗浄済液を吸引排出するための排出口とを備えていることを特徴とするので、受便器本体を排泄部を含む部位に当接し、吸引機構を動作させて受便器本体を吸着させた状態で吸引機構を一旦停止し、排便する。排泄物の吸引排出に際しては給液口からの洗浄液の流路を排出用流路に切り換えて吸引機構を駆動させることにより、洗浄液が洗い流し液となって受便部の排泄物を排出口から吸引排出することができる。排泄部の洗浄に際しては、給液口からの洗浄液の流路を洗浄用流路に切り換えることにより排泄部が洗浄され、洗浄済液は排出口から吸引排出される。
【0050】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸引洗浄受便装置において、受便器本体に減圧自動調整弁を備えた空気吸入部が設けられると共に該空気吸入部から便受部の近傍に空気導入路が設けられ、排泄物の吸引排出に際して排出用流路から噴流する洗い流し液とともに空気を噴出させて排泄物を排出口側に押しやるように構成されていることを特徴とするので、受便器本体に減圧自動調整弁を備えた空気吸入部が設けられると共に該空気吸入部から便受部の近傍に空気導入路が設けられているから、受便器本体の装着に際して吸引機構を駆動させた際に適度な吸着力で装着することができ、また、排泄物の吸引排出に際しては、排出用流路から噴流する洗い流し液とともに空気を受便部に噴出させて排泄物を排出口側に押しやり、確実に吸引排出することができる。
【0051】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の吸引洗浄受便装置において、受便器本体は、上部構成受便部と下部構成受便部とにより形成され、上部構成受便部と下部構成受便部とは上部構成受便部の下縁と下部構成受便部の上縁との重合部分における左右両側部分を枢着軸により枢着するとともに前記上部構成受便部と下部構成受便部との背面を締付調節ねじによりねじ止めしたことを特徴としたので、受便器本体は、下部構成受便部に対して上部構成受便部を枢着軸を中心に前後方向に移動することにより人体の大きさに合わせて調整を行う。
【0052】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の吸引洗浄受弁装置において、受便器本体には当接部を排泄部周辺に当接させて保持するアームハンドルが取り付けられ、該アームハンドルの先端には排出流路と洗浄用流路の切換え部の切換え操作スイッチ及び吸引機構の操作スイッチが設けられていることを特徴とするので、ハンドルアームを握って受便器本体を所定の部位に押し当てることができて操作が容易であり、また、洗い流し流路と洗浄流路の切換え部の切換え操作及び吸引機構の操作をアームハンドルに設けた操作スイッチで行うことができる。
【0053】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1〜3に記載の吸引洗浄受便装置において、便受部の表面には排出口方向に向かう多数の突条が形成されていることを特徴とするので、該受便部上の排泄物を洗い流し液等により排出口側により確実に流すことができる。
【0054】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、排泄部を含む部位に当接する受便器本体と、該受便器本体からホースを介して排泄物を吸引排出する吸引機構と、排泄部を洗浄するために前記受便器本体に水、温水その他の洗浄液を供給する洗浄液供給機構とを備えた吸引洗浄受便装置であって、吸引機構は、前記受便器本体にホースを介して接続された密閉開閉蓋を有する汚物タンクと該汚物タンク内を減圧する吸引パイプとを備え、該吸引パイプによって吸引される汚物タンク内の空気を洗浄液供給機構における給液タンク内の液中に気泡状に流出させて臭気を減殺し、給液タンクに形成した排気口から排気するように構成したことを特徴とするので、ホースを介して吸引排出された排泄物は汚物タンク内に投入されるとともに、タンク内上部に接続されている吸引パイプからは臭気を伴った空気が吸引されるが、この空気を洗浄液供給機構における給液タンク内の液中に気泡状に流出させて臭気を減殺し、給液タンクに形成した排気口から排気するようにしたから、周辺への臭気の発散を少なくすることができる。
【0055】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかの吸引洗浄受便装置において、受便器本体の受便部に便等の排泄物のを有無を検知可能にセンサーを設け、該センサーからの検知信号により吸引機構の吸引モータを駆動可能に設けるとともに給液タンク内のポンプを駆動し、洗浄水を給水可能としたことを特徴とするので、受便器本体の受便部に便等の排泄物のを有無をセンサーにより検知可能に設け、該センサーからの検知信号により吸引機構の吸引モータを駆動させて排泄物を汚物タンク内に吸引することができ、しかも、給液タンク内のポンプを駆動し、洗浄水を自動的に給水することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の吸引洗浄受便装置の一実施形態における受便器本体の全体構成を示す拡大断面図である。
【図2】同じく図2は正面図である。
【図3】同じく図3は図2のB−B拡大断面図である。
【図4】同じく図3のC−C拡大断面図である。
【図5】同じく図5は本実施形態で使用する空気導入路の空気吸入部において外気を吸入するのに使用する減圧自動調整弁の断面図である。
【図6】同じく図6は本実施形態を形成する吸引機構と洗浄液供給機構との一例を示す一部切欠正面図である。
【図7】図7は同じく平面図である。
【図8】図8は同じく側面図である。
【図9】図9は同じく本発明の吸引洗浄受便装置の一実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1   受便器本体
2   当接部
3   ホース
4   吸引機構
5   供給ホース
6   洗浄液供給機構
7   給液口
8   受便部
9   排出用流路
10  洗浄用流路
11  切換え部
12  排出口
14  空気吸入部
15  減圧自動調整弁
16  空気導入路
17  アームハンドル
U   吸引洗浄受便装置
H   人体
SW1 切換え操作スイッチ
SW2 操作スイッチ
W   洗浄液
W1  洗い流し液
W2  洗浄済液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄部を含む部位に当接する受便器本体と、該受便器本体からホースを介して排泄物を吸引排出する吸引機構と、排泄部を洗浄するために前記受便器本体に供給ホースを介して接続され、水、温水その他の洗浄液を供給する洗浄液供給機構とを備えた吸引洗浄受便装置であって、前記受便器本体は、略吸盤状をなしていて当接開口縁が排泄部の周辺に密着する外形形状を有する当接部と、前記洗浄液を受便器本体内に供給する給液口と、該給液口から供給される洗浄液を受便器本体の内底部の便受部に噴流させる排出用流路と、前記洗浄液を排泄部方向に噴流させる洗浄用流路と、前記排出用流路と洗浄用流路を切り換える切換え部と、当接部を排泄部周辺に吸着させるように内部を減圧すると共に便受部に排出された排泄物、洗い流し液及び洗浄済液を吸引排出するための排出口とを備えていることを特徴とする吸引洗浄受便装置。
【請求項2】
受便器本体に減圧自動調整弁を備えた空気吸入部が設けられると共に該空気吸入部から便受部の近傍に空気導入路が設けられ、排泄物の吸引排出に際して排出用流路から噴流する洗い流し液とともに空気を噴出させて排泄物を排出口側に押しやるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸引洗浄受便装置。
【請求項3】
受便器本体は、上部構成受便部と下部構成受便部とにより形成され、上部構成受便部と下部構成受便部とは上部構成受便部の下縁と下部構成受便部の上縁との重合部分における左右両側部分を枢着軸により枢着するとともに前記上部構成受便部と下部構成受便部との背面を締付調節ねじによりねじ止めしたことを特徴とした請求項1又は2に記載の吸引洗浄受便装置。
【請求項4】
受便器本体には当接部を排泄部周辺に当接させて保持するアームハンドルが取り付けられ、該アームハンドルの先端には排出用流路と洗浄用流路の切換え部の切換え操作スイッチ及び吸引機構の操作スイッチが設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の吸引洗浄受便装置。
【請求項5】
便受部の表面には排出口方向に向かう多数の突条が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の吸引洗浄受便装置。
【請求項6】
排泄部を含む部位に当接する受便器本体と、該受便器本体からホースを介して排泄物を吸引排出する吸引機構と、排泄部を洗浄するために前記受便器本体に水、温水その他の洗浄液を供給する洗浄液供給機構とを備えた吸引洗浄受便装置であって、吸引機構は、前記受便器本体にホースを介して接続された密閉開閉蓋を有する汚物タンクと該汚物タンク内を減圧する吸引パイプとを備え、該吸引パイプによって吸引される汚物タンク内の空気を洗浄液供給機構における給液タンク内の液中に気泡状に流出させて臭気を減殺し、給液タンクに形成した排気口から排気するように構成したことを特徴とする吸引洗浄受便装置。
【請求項7】
受便器本体の受便部に便等の排泄物の有無を検知可能なセンサーを設け、該センサーからの検知信号により吸引機構の吸引モータを駆動可能に設けるとともに給液タンク内のポンプを駆動し、洗浄水を給水可能としたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の吸引洗浄受便装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2004−105506(P2004−105506A)
【公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−272998(P2002−272998)
【出願日】平成14年9月19日(2002.9.19)
【出願人】(591124020)
【出願人】(502341328)有限会社ニドインダストリアルデザイン事務所 (2)
【Fターム(参考)】