説明

吸気システム、これを備えたガスタービンおよびこれを備えた発電プラント

【課題】回転により変化する圧縮機に吸気される空気の状態に応じて圧縮機内に凝縮する水滴の除去が可能な吸気システムを提供することを目的とする。
【解決手段】流路9によって流体が導かれる圧縮機3を加熱する圧縮機用加熱手段と、流路9を加熱する流路用加熱手段と、流路9内に導かれた流体に液体を噴霧する液体噴霧手段6と、圧縮機3の入口に設けられて、圧縮機3に導かれる流体の吸気温度、湿度、圧力、流速を計測する吸気用温度計測手段12と、吸気用湿度計測手段13と、吸気用圧力計測手段14と、吸気用速度計測手段15と、圧縮機3の回転数を計測する回転数計測手段とから、吸気温度、湿度と、圧力と、吸気速度と、回転数とを用いて液体噴霧手段6が噴霧する液体の流量を制御し、かつ、圧縮機3の入口の露点温度を算出して流路用加熱手段と圧縮機用加熱手段とが露点温度以上になるように制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気システム、これを備えたガスタービンおよびこれを備えた発電プラントに関し、特に、圧縮機に導かれる空気中の水分の結露防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンは、外気温度が上昇した場合には、空気が希薄になるため出力が低下する。ガスタービンの出力回復のために、圧縮機に導かれる空気に水を噴霧してその気化熱によって空気の温度を低下させる霧噴霧吸気冷却方式が用いられている。これにより、圧縮機に導かれる空気は、その密度が高まり圧縮機の効率が改善される(例えば、特許文献1、特許文献4から特許文献6)。
【0003】
引用文献3には、圧縮機によって圧縮された空気に水を噴霧して、燃焼器に供給する空気中の水分量を増加させてタービンの燃焼ガスの流量を増加させて、発電効率を向上させた発電プラントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−175149号公報
【特許文献2】特許第3854156号公報
【特許文献3】特開平11−324710号公報
【特許文献4】特開2002−195053号公報
【特許文献5】特開平9−303160号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0038313号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献4、特許文献5および特許文献6に記載の発明は、圧縮機が回転することによって圧縮機の入口における空気の温度、相対湿度、圧力や流速が変化するため露点が変化する。そのため、圧縮機内に空気中の水滴が凝縮して、凝縮した水滴が圧縮機の翼に衝突して圧縮機が損傷するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、回転により変化する圧縮機に吸気される空気の状態に応じて圧縮機の入口に接続されるダクトおよび圧縮機内に凝縮する水滴の除去が可能な吸気システム、これを備えたガスタービンおよびこれを備えた発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の吸気システム、これを備えたガスタービンおよびこれを備えた発電プラントは、以下の手段を採用する。
本発明では、大気温度の急上昇と乾燥に伴い、吸気の相対湿度が飽和に近い状態まで純水を吸気に噴霧する際に、大気温度の上昇速度よりも、吸気ダクトや圧縮機の機器温度上昇が遅く、大気温度と吸気に接する機器表面温度の差が大きくなり、温度の低い機器表面が露点温度以下になり結露が発生する事を予防する。
本発明では、大気温度変化や大気湿度変化の気象変化予報に基づき、事前に露点温度を計算し、吸気と接する機器表面の温度を事前に露点温度以上に加熱し、吸気と接する機器表面に結露する事を、未然に防止する。
本発明では、超高速回転する圧縮機翼周りの流体の境界層の領域では、流体の圧力や流速や温度条件が変化し、露点も変化する。吸気に接する圧縮機の各部構成機器の表面温度を露点温度以上に加熱し、機器表面への結露を未然に防止する。
本発明では、吸気ダクトや圧縮機の加熱システムの構造は、モジュラーデザインの手法に基づき標準化し、製造・据付・点検・分解・交換・改造が容易な設計とする。
本発明では、加熱システムの異常や純水噴霧システムの異常により、飽和条件以上の噴霧や結露を防止するために、フェールセーフやフールプルーフの設計とする。
本発明では、発電プラントを短時間で急速起動する場合には、起動準備段階で吸気ダクトや圧縮機の吸気に接する機器表面温度を露点温度以上に加熱する。
【0008】
すなわち、本発明に係る吸気システムによれば、気象変化予報条件に基づき、事前に露点温度を予測計測し、流路によって流体が導かれる圧縮機を露点温度以上に加熱する圧縮機用加熱手段と、前記流路を露点温度以上に加熱する流路用加熱手段と、前記流路内に導かれた流体に液体を噴霧する液体噴霧手段と、前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気温度を計測する吸気用温度計測手段と、前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気湿度を計測する吸気用湿度計測手段と、前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気圧力を計測する吸気用圧力計測手段と、前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気流速を計測する吸気用速度計測手段と、前記圧縮機に設けられて、該圧縮機の回転数を計測する回転数計測手段と、気象変化予報条件に基づき、前記吸気温度と、前記吸気湿度と、前記吸気圧力と、前記吸気速度と、前記回転数とを用いて前記液体噴霧手段が噴霧する液体の流量を飽和状態以下に制御し、かつ、前記圧縮機の入口の露点温度を算出して前記圧縮機および前記流路が前記露点温度以上になるように前記圧縮機用加熱手段および前記流路用加熱手段を事前に予測制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
圧縮機に導かれる流体の圧縮機の入口における吸気温度、吸気湿度、吸気圧力、吸気速度と、圧縮機の回転数とを用いて、液体噴霧手段が噴霧する液体の流量を制御することとした。そのため、圧縮機の入口に導かれる流体を飽和状態以下にすることができる。また、圧縮機の入口における露点温度を算出して、露点温度以上に流路および圧縮機がなるように流路用加熱手段および圧縮機用加熱手段を制御することとした。そのため、流路内や圧縮機内に液体が凝縮する事を防止できる。したがって、流路内に設けられる機器や圧縮機内を乾燥状態に保つことができる。
また、流体中の腐食成分は、液体が噴霧された流路内を通過することによって液体に吸着する。これにより、腐食成分は、粗大化する。そのため、流路中にフィルタ等の捕捉手段を設けておけば、圧縮機に導かれる腐食成分を容易に捕捉することができる。したがって、流体中の腐食成分により圧縮機が損傷することを予防することができる。
【0010】
さらに、本発明に係る吸気システムによれば、前記液体噴霧手段は、複数のノズルを備え、複数の該ノズルは、前記流路内を流れる流体に対向して、上方から液体を噴霧することを特徴とする。
【0011】
流路内を通過する流体に対向して、上方から液体を噴霧するようにノズルを設けることとした。そのため、ノズルの噴霧口に付着した流体中の異物は、下方に落下することになる。したがって、流体中の異物がノズルに付着してノズルの噴霧口が閉塞することを防止することができる。
【0012】
さらに、本発明に係るガスタービンによれば、上記のいずれかに記載の吸気システムを備える圧縮機と、燃料を燃焼して排ガスを排出する燃焼器と、該燃焼器から排出された排ガスによって回転駆動されるタービンと、該タービンと前記圧縮機との間を接続するタービン軸と、を有することを特徴とする。
【0013】
圧縮機に導かれる流体の密度を高めることができると共に、流路および圧縮機内に凝縮した流体中の液体を除去することが可能な吸気システムを備える圧縮機を用いることとした。また、圧縮機には、流体中の腐食成分が捕捉されて洗浄された流体を導くこととした。そのため、圧縮機の出力増加を図ると共に、圧縮機の損傷の発生を防止することができる。したがって、タービン効率を改善すると共に、ガスタービンの運転の健全性を向上することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る発電プラントによれば、上記に記載のガスタービンを備えることを特徴とする。
【0015】
運転の健全性を向上すると共に、タービン効率の改善が可能なガスタービンを用いることとした。そのため、発電プラントの運転の健全性を向上させ、かつ、発電効率を改善することができる。
【発明の効果】
【0016】
圧縮機に導かれる流体の圧縮機入口における吸気温度、吸気湿度、吸気圧力、吸気速度と、圧縮機の回転数とを用いて、液体噴霧手段が噴霧する液体の流量を制御することとした。そのため、圧縮機の入口に導かれる流体を飽和状態以下にすることができる。また、圧縮機の入口における露点温度を算出して、露点温度以上に圧縮機および流路がなるように流路用加熱手段および圧縮機用加熱手段を制御することとした。そのため、流路内や圧縮機内に流体が凝縮することを防止することができる。したがって、流路内に設けられる機器や圧縮機内を乾燥状態に保つことができる。
また、流体中の腐食成分は、液体が噴霧された流路内を通過することによって液体に吸着する。これにより、腐食成分は、粗大化する。そのため、流路中にフィルタ等の捕捉手段を設けておけば、圧縮機に導かれる腐食成分を容易に捕捉することができる。したがって、流体中の腐食成分により圧縮機が損傷することを予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る吸気システムを備えた発電プラントのガスタービンの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係る吸気システムを備えた発電プラントのガスタービンの概略構成図が示されている。
吸気システム30は、ガスタービン31に空気(流体)を導くダクト(流路)9と、ダクト9内の空気に純水(液体)を噴霧するノズル(液体噴霧手段)6と、ダクト9の内壁に設けられているダクト用温度計21と、ガスタービン31を構成している空気圧縮機(圧縮機)3に設けられている空気圧縮機用温度計20と、空気圧縮機3の入口の空気の吸気温度を計測する吸気用温度計(吸気用温度計測手段)12、空気圧縮機3の入口の空気の相対湿度(吸気湿度)を計測する吸気用湿度計(吸気用湿度計測手段)13、空気圧縮機3の入口の空気の吸気圧力を計測する吸気用圧力計14(吸気用圧力計測手段)と、空気圧縮機3の入口の空気の吸気流速を計測する流速計(吸気用速度計測手段)15とを備えている。
【0019】
ガスタービン31は、吸気した空気を圧縮する空気圧縮機3と、燃料を燃焼して排ガスを排出する燃焼器2と、燃焼器2から排出された排ガスによって駆動されるタービン1と、空気圧縮機3およびタービン1が接続されているタービン軸(図示せず)とを備えている。
【0020】
空気圧縮機3の入口には、ダクト9が接続されている。ダクト9は、その内部に吸気フィルタ5および吸気サイレンサ4を有している。空気圧縮機3には、吸気ファイルタ5および吸気サイレンサ4を介して外気空気(以下、「空気」という。)が導かれる。空気圧縮機3に導かれた空気は、空気圧縮機3が回転駆動することによって圧縮される。
【0021】
空気圧縮機3は、空気圧縮機3を回転駆動するタービン軸の半径方向に複数の翼16を有している。複数の翼16は、タービン軸の延在する方向に複数段に分かれて設けられている(図1には、3段に分かれていることが示されている)。各翼16には、空気圧縮機用加熱手段(図示せず)が設けられている。
【0022】
空気圧縮機用加熱手段(圧縮機用加熱手段)は、翼16の内部に設けられている流路(図示せず)に高温の空気を導くものである。これにより、翼16が加熱されることとなる。翼16の流路に導かれる高温の空気は、空気圧縮機3によって圧縮されて温度が上昇した圧縮空気が用いられる。または、非接触の電気加熱システムにて、空気圧縮機3の翼16の表面を露点以上に加熱する。
【0023】
タービン1は、排ガスが導かれることによって回転駆動される。タービン1には、空気圧縮機3との間を接続しているタービン軸が接続されている。タービン1が排ガスによって回転駆動されることによりタービン軸が回転駆動される。タービン軸が回転駆動されることによって、空気圧縮機3が回転駆動されて空気を圧縮する。タービン軸は、空気圧縮機3とタービン1との間を接続している。
【0024】
燃焼器2は、空気圧縮機3によって圧縮された空気(以下「圧縮空気」という。)が導かれて燃料を燃焼する。燃焼器2は、燃料と圧縮空気とを燃焼することによって排ガスを排出する。
【0025】
空気圧縮機3の入口側には、ダクト9が接続されている。ダクト9は、その内部に空気が導かれる。空気が導入されるダクト9の入口には、吸気フィルタ5が設けられている。吸気フィルタ(フィルタ等の捕捉手段)5は、ダクト9内に導かれる空気中の異物や腐食成分を高効率で取り除く。
吸気中の腐食成分の高効率除去により、腐食によるガスタービン31の軸振動の発生での機器損傷を予防する。予定外のガスタービン31の停止を予防し、追加の点検作業の発生を未然に防止する。
【0026】
吸気フィルタ5は、後述するノズル6の下流側のダクト9内に設けられている。吸気フィルタ(機器)5は、ダクト9内を通過する空気の流れに圧力損失を生じさせる形状および位置に配置されている。吸気フィルタ5は、ダクト9内に流入した空気中にノズル6より噴霧された純水に吸着した腐食成分を補足するものである。
【0027】
吸気フィルタ5と空気圧縮機3との間のダクト9内には、吸気サイレンサ(機器)4が設けられている。吸気サイレンサ4は、ダクト9内を通過する空気の流れに圧力損失を生じさせる形状および位置に配置されている。吸気サイレンサ4は、その内部に内部吸音材(図示せず)を備えている。これにより、吸気サイレンサ4は、ダクト9内に導かれる空気音を吸収する。
【0028】
吸気フィルタ5および吸気サイレンサ4には、ダクト内機器用加熱手段(図示せず)が設けられている。また、ダクト9の内壁には、ダクト用加熱手段(図示せず)が設けられている。ダクト内機器用加熱手段(流路用加熱手段)およびダクト用加熱手段(流路用加熱手段)は、吸気フィルタ5および吸気サイレンサ4の表面、ダクト9の内壁を加熱することができる構造とされている。ダクト内機器用加熱手段およびダクト用加熱手段は、加熱媒体として、空気圧縮機3によって圧縮されて温度の上昇した圧縮空気が用いられている。または、非接触や接触式の電気加熱システムにて、各機器の表面を露点以上に加熱する。
【0029】
ダクト9の入口側には、複数のノズル6が設けられている。ノズル6は、純水を空気圧縮機3が吸気する空気に噴霧するものである。各ノズル6には、純水供給タンク8内の純水が純水供給用ポンプ7によって昇圧されて供給される。ノズル6によってダクト9内の空気に噴霧される熱水は、10μmから20μm以下の粒子径とされる。
【0030】
各ノズル6は、ダクト9内に流入する空気の流れに対して対向するように設けられている。各ノズル6は、ダクト9内に流入する空気の流れに対して上方から純水を噴霧する。空気の流れに対して上方から純水を噴霧するようにノズル6が設けられているため、ノズル6の噴霧口に空気中の異物(図示せず)が付着した場合であっても、付着した異物が噴霧口の下方(図1では、ダクト9の入口からダクト9の外)へと落下する。そのため、ノズル6の噴霧口が空気中の異物によって閉塞することを防止することができる。
【0031】
制御装置(図示せず)は、ダクト9の外に設けられている。制御装置は、後述する入口用温度計17と、入口用湿度計18と、入口用圧力計19とによって計測された外気空気の温度(外気温度)と、外気空気の相対湿度(外気湿度)と、外気空気の圧力(外気圧力)とから飽和条件以下になる純水の噴霧量を決定し、純水噴霧後の吸気の露点温度(以下、「ダクト内露点温度」という。)を算出する。
【0032】
また、制御装置は、後述する吸気用温度計12と、吸気用湿度計13と、吸気用圧力計13と、流速計15とによって計測された空気圧縮機3の入口の吸気温度、吸気湿度、吸気圧力、吸気速度と、後述する回転計(図示せず)により計測された空気圧縮機3の回転数とにより空気圧縮機3内に導かれる空気の露点温度(以下、「空気圧縮機内露点温度」という。)を予測算出する。
【0033】
また、制御装置は、ダクト内機器用加熱手段およびダクト用加熱手段と、空気圧縮機用加熱手段とに供給する圧縮空気の量や加熱電力量を制御する。
なお、制御装置は、空気圧縮機3が停止時や、ノズル6が破損するなどの異常時や、純水供給用ポンプ7の異常時には、ノズル6への純水の供給を停止するインターロック機構(図示せず)を備えている。
【0034】
入口用温度計17と、入口用湿度計18と、入口用圧力計19とは、ダクト9の外に設けられている。入口用温度計17は、外気温度を計測するものである。入口用湿度計18は、外気湿度を計測するものである。入口用圧力計19は、外気圧力を計測するものである。
【0035】
吸気用温度計12と、吸気用湿度計13と、吸気用圧力計14と、流速計15とは、空気圧縮機3の入口近傍のダクト9内に設けられている。吸気用温度計12は、吸気温度を計測するものである。吸気用湿度計13は、吸気湿度を計測するものである。吸気用圧力計14は、吸気圧力を計測するものである。流速計15は、吸気流速を計測するものである。
【0036】
回転計は、空気圧縮機3の内部に設けられている。回転計は、空気圧縮機3の回転数を計測するものである。
ダクト内壁用温度計21は、ダクト9の内壁の表面温度を計測するものである。
空気圧縮機用温度計20は、空気圧縮機3の翼16の表面温度を計測するものである。
【0037】
次に、空気圧縮機へと導かれる空気の流れについて説明する。
燃焼器2によって燃料が燃焼されることによって、タービン1が回転駆動される。タービン2が回転駆動されることによってタービン軸が回転駆動する。タービン軸が回転駆動するので、タービン軸に接続されている空気圧縮機3が回転駆動する。空気圧縮機3が回転駆動することによって外気の空気が吸気フィルタ5を介してダクト9内に吸引される。
【0038】
ダクト9内に吸引された空気には、ダクト9に設けられているノズル6から純水が噴霧される。純水は、ダクト6の上方から空気の流入方向に向かって噴霧される。純水が空気に噴霧されることによって、純水はダクト9の入口部で完全蒸発する。純水が蒸発する際には、その気化熱によって空気の温度が低下する。空気の温度が低下することによって、空気の密度が増加する。
【0039】
また、空気中には、ダクト9や空気圧縮機3を腐食する腐食成分が含まれている。ダクト9内に導かれた空気にノズル6より純水が噴霧されることによって、空気中の腐食成分は純水に吸着する。腐食成分が吸着した純水は完全蒸発する。腐食成分は、固化析出し粗大化して、ノズル6の下流側に設けられている吸気フィルタ5によって高効率に捕捉される。吸気フィルタ5の下流側のダクト9内には、腐食成分を含んでいない空気が導かれることとなる。
【0040】
吸気フィルタ5は、ダクト9内の空気の流れを阻害する形状および位置に設けられている。そのため、空気は、吸気フィルタ5によってその流れが攪拌される。また、吸気フィルタ5は、その表面がダクト内機器用加熱手段によってダクト内露点温度以上になるように加熱されている。そのため、吸気フィルタ5の表面に純水は凝縮しない。
【0041】
腐食成分を含んでいない空気は、吸気フィルタ5の下流側に設けられている吸気サイレンサ4へと導かれる。吸気サイレンサ4によって、ダクト9内に導かれた空気は、消音される。また、吸気サイレンサ4は、ダクト9内の空気の流れを阻害する形状および位置に設けられている。そのため、ダクト9内の空気は、吸気サイレンサ4によってその流れが攪拌される。吸気サイレンサ4は、その表面がダクト内機器用加熱手段によってダクト内露点温度以上になるように加熱されている。そのため、吸気サイレンサ4の表面に純水は凝縮しない。
【0042】
また、ダクト9は、その内壁がダクト用加熱手段によってダクト内露点温度以上になるように加熱されている。そのため、ダクト9の内壁面に純水は凝縮しない。
【0043】
ノズル6によって純水が噴霧されて密度が増加した空気は、空気圧縮機3の入口近傍のダクト9へと導かれる。空気圧縮機3の入口近傍の空気は、空気圧縮機3が回転することによって、外気温度、外気湿度、外気圧力に比べて吸気温度、吸気湿度、吸気圧力が異なっている。そのため、ダクト内露点温度と空気圧縮機内露点温度とが異なり、その結果、空気圧縮機3内に純水が凝縮して結露を生じる可能性がある。
【0044】
空気圧縮機3内に純水が凝縮する事を防止するため、空気圧縮機3の翼16は、その表面が空気圧縮機用加熱手段によって加熱されている。そのため、空気圧縮機3の翼16に純水は凝縮しない。
【0045】
次に、ダクトおよび空気圧縮機へと導かれる空気に噴霧される純水の噴霧量の制御について説明する。
制御装置は、ダクト9の外に設けられている入口用温度計17と、入口用湿度計18と、入口用圧力計19とにより計測される外気温度と、外気湿度と、外気圧力と用いて純水供給用ポンプ7が吐出する純水の流量を調整する。純水供給用ポンプ7が吐出する純水の流量は、ノズル6によって純水が噴霧された空気が飽和状態以下となるように調整される。また、制御装置は、計測された外気温度と、外気湿度と、外気圧力と、純水の噴霧量とを用いてダクト内露点温度を算出する。
【0046】
制御装置は、空気圧縮機3の入口のダクト9内に設けられている吸気用温度計12と、吸気用湿度計13と、吸気用圧力計14と、速度計15とにより計測される吸気温度と、吸気湿度と、吸気圧力と、吸気速度と、空気圧縮機3に設けられている回転計により計測される空気圧縮機3の回転数とを用いて空気圧縮機内露点温度を予測算出する。
【0047】
制御装置は、ダクト内壁用温度計21によって計測されたダクト9の内壁の表面温度と空気圧縮機用温度計20によって計測された空気圧縮機3の翼16の表面温度と、算出した空気圧縮機内露点温度とを比較する。制御装置は、ダクト9の内壁の表面温度および翼16の表面温度が空気圧縮機内露点温度よりも高くなるように、ダクト9の内壁に設けられているダクト用加熱手段と、吸気フィルタ5および吸気サイレンサ4に設けられているダクト内機器用加熱手段と、空気圧縮機3の翼16に設けられている空気圧縮機用加熱手段に導かれる圧縮空気の流量や加熱電力量を制御する。
【0048】
これにより、ダクト9の内壁の表面温度が空気圧縮機内露点温度よりも高くなるため、ダクト9内を通過することによってダクト9の内壁、吸気フィルタ5および吸気サイレンサ4の表面に水滴は凝縮しない。翼16の表面温度が空気圧縮機内露点温度よりも高くなるため、空気圧縮機3が回転して吸気温度、吸気湿度、吸気圧力が変化することによって空気圧縮機3の翼16の表面に水滴は凝縮しない。したがって、ダクト9内に設けられている吸気フィルタ5および吸気サイレンサ4に水滴が付着することによって生じる損傷や、空気圧縮機3内に導かれる空気中の水滴が凝縮することによって翼16が損傷することを防止することができる。
【0049】
以上の通り、本実施形態に係る吸気システム、これを備えたガスタービンおよびこれを備えた発電プラントによれば、以下の作用効果を奏する。
空気圧縮機(圧縮機)3に導かれる空気(流体)の空気圧縮機3の入口における吸気温度、吸気湿度、吸気圧力、吸気速度と、空気圧縮機3の回転数とを用いて、ノズル(液体噴霧手段)6が噴霧する純水(液体)の流量を制御することとした。そのため、空気圧縮機3の入口に導かれる空気を飽和状態以下にすることができる。また、空気圧縮機3の入口における空気圧縮機内露点温度(露点温度)を算出して、空気圧縮機内露点温度以上に空気圧縮機3、ダクト(流路)9の内壁、吸気フィルタ(機器)5および吸気サイレンサ(機器)4の表面温度がなるように空気圧縮機用加熱手段(圧縮機用加熱手段)、ダクト内機器用加熱手段(流路用加熱手段)およびダクト用加熱手段(流路用加熱手段)を制御することとした。そのため、ダクト9の内壁、吸気フィルタ5や吸気サイレンサ4の表面、空気圧縮機3内に純水が凝縮することを防止することができる。したがって、ダクト9内に設けられている吸気フィルタ5や吸気サイレンサ4や空気圧縮機3内を乾燥状態に保つことができる。
【0050】
また、空気中の腐食成分は、純水が噴霧されたダクト9内を通過することによって純水に吸着する。これにより、腐食成分は、粗大化する。したがって、ダクト9中に吸気フィルタ(フィルタ等の捕捉手段)5を設けておけば、空気圧縮機3に導かれる腐食成分を容易に高効率で捕捉することができる。
【0051】
ダクト9内を通過する空気の上方から純水を噴霧するようにノズル6を設けることとした。そのため、ノズル6の噴霧口に付着した空気中の異物(図示せず)は、噴霧口から下方へ落下することになる。したがって、空気中の異物がノズル6に付着してノズル6の噴霧口が閉塞することを防止することができる。
【0052】
空気圧縮機3に導かれる空気の密度を高めることができると共に、空気圧縮機3の翼16の表面に空気中の純水が凝縮する事を防止することが可能な空気圧縮機3を用いることとした。また、空気圧縮機3には、空気中の腐食成分が捕捉されて洗浄された空気を導くこととした。そのため、空気圧縮機3の出力増加を図ると共に、空気圧縮機3の損傷の発生を防止することができる。したがって、タービン効率を改善すると共に、ガスタービン31の運転の健全性を向上することができる。
【0053】
運転の健全性を向上すると共に、タービン効率の改善が可能なガスタービン31を用いることとした。そのため、発電プラントの運転の健全性を向上させ、かつ、発電効率を改善することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、入口用温度計17、入口用湿度計18、入口用圧力計19、吸気用温度計12、吸気用湿度計13、吸気用圧力計14、速度計15、回転計、ダクト内壁用温度計21、空気圧縮機用温度計20を用いるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれ温度、湿度、圧力、速度、回転数を計測できるものであれば良い。
【0055】
また、本実施形態では、空気圧縮機用加熱手段、ダクト用加熱手段およびダクト内機器用加熱手段に圧縮空気や加熱用電力を導くとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、燃料と圧縮空気を燃焼させた際に燃焼器2に生じる熱を用いてもよい。また、発電プラントが蒸気タービンを備えている場合には、蒸気タービンに導かれる蒸気の一部を用いても良い。また、空気圧縮機用加熱手段、ダクト内機器用加熱手段、ダクト用加熱手段として電気ヒータや赤外線ヒータを用いるとしても良い。
さらに、流体として純水を用いて説明したが、純水以外の物質であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
3 空気圧縮機(圧縮機)
6 ノズル(液体噴霧手段)
9 ダクト(流路)
12 吸気温度計(吸気用温度計測手段)
13 吸気湿度計(吸気用湿度計測手段)
14 吸気圧力計(吸気用圧力計測手段)
15 速度計(吸気用速度計測手段)
30 吸気システム
31 ガスタービン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象変化予報条件に基づき、事前に露点温度を予測計算し、流路によって流体が導かれる圧縮機を露点温度以上に加熱する圧縮機用加熱手段と、
前記流路を露点温度以上に加熱する流路用加熱手段と、
前記流路内に導かれた流体に液体を飽和状態以下に噴霧する液体噴霧手段と、
前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気温度を計測する吸気用温度計測手段と、
前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気湿度を計測する吸気用湿度計測手段と、
前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気圧力を計測する吸気用圧力計測手段と、
前記圧縮機の入口に設けられて、該圧縮機に導かれる流体の吸気流速を計測する吸気用速度計測手段と、
前記圧縮機に設けられて、該圧縮機の回転数を計測する回転数計測手段と、
気象変化予報条件に基づき、前記吸気温度と、前記吸気湿度と、前記吸気圧力と、前記吸気速度と、前記回転数とを用いて前記液体噴霧手段が噴霧する液体の流量を飽和状態以下に制御し、かつ、前記圧縮機の入口の露点温度を算出して前記圧縮機および前記流路が前記露点温度以上になるように前記圧縮機用加熱手段および前記流路用加熱手段を事前に予測制御する制御装置と、を備える吸気システム。
【請求項2】
前記液体噴霧手段は、複数のノズルを備え、
複数の該ノズルは、前記流路内を流れる流体に上方から液体を噴霧する請求項1に記載の吸気システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の吸気システムを備える圧縮機と、
燃料を燃焼して排ガスを排出する燃焼器と、
該燃焼器から排出された排ガスによって回転駆動されるタービンと、
該タービンと前記圧縮機との間を接続するタービン軸と、を有するガスタービン。
【請求項4】
請求項3に記載のガスタービンを備える発電プラント。

【図1】
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【公開番号】特開2011−202522(P2011−202522A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68040(P2010−68040)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)