説明

吸水性を低減したポリホルマールおよびコポリホルマール、その製造およびその使用

本発明は、吸水性を低減したポリホルマールおよびコポリホルマール、その製造方法およびある種の製品を製造するためのその使用、およびそこから得られる製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性を低減したポリホルマールおよびコポリホルマール、その製造方法およびある種の製品を製造するためのその使用、およびそこから得られる製品を提供する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネートは、エンジニアリング熱可塑性プラスチックの群に属する。これらは、エンジニアリング用途で重要である特性(透明性、耐熱性および靭性)の組み合わせによって区別される。高分子量線形ポリカーボネートは、ビスフェノールAのアルカリ金属塩とホスゲンとを2相混合物中で反応させることによる相境界法によって得られる。分子量は、モノフェノール、例えばフェノールまたはtert.−ブチルフェノールの量によって制御されうる。これらの反応は実際にはもっぱら線形ポリマーをもたらす。これは末端基分析によって証明され得る。また、ビスフェノールAに基づく芳香族ポリカーボネートは、特に光データ記憶媒体の製造用に用いられる。しかし、これらは0.34重量%までの水分を吸収する場合があり、このことはデータ記憶媒体の寸法安定性に不都合な影響をもたらす。他方、特に屋外での用途では、加水分解がある種問題である。また、加水分解耐性の問題は、蒸気殺菌可能な医療物品としての使用に関連しても挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、先行技術の基では、エンジニアリング熱可塑性プラスチックとしてポリカーボネートの典型的な有効性を有するが、上記のような不都合を示さない材料を提供することが、長年目的とされてきた。
【0004】
驚くべきことに、今回、ある種のポリホルマールおよびコポリホルマールが、このような材料であることを見出した。
【0005】
また、芳香族ポリホルマールは、透明な熱可塑性プラスチックであり、これはビスフェノール構造ユニットから合成される。しかし、ポリカーボネートとは異なり、ビスフェノール構造ユニット間の結合はカーボネートユニットからなるのではなく、全部がアセタールユニットに代わる。ポリカーボネートではホスゲンが結合用のカーボネート源として機能するが、ポリホルマールでは、例えば塩化メチレンが、重縮合時の全部のアセタール結合ユニット源として機能する。したがって、ポリホルマールをポリアセタールと見なしても良い。
【0006】
ポリカーボネートとは異なり、芳香族ポリホルマールは、アルカリ金属水酸化物の存在中で、ビスフェノールAと塩化メチレンの均一相において製造されてもよい。
【0007】
本重縮合反応では、塩化メチレンは、反応物の役割と溶媒の役割を同時に果たす。ポリカーボネートの重縮合時と同様に、分子量はここでも使用されるモノフェノールの量によって制御されうる。
【0008】
US B 4,374,974号公報は、線形および環状オリゴ−およびポリホルマールが、特定のビスフェノールから出発し、塩化メチレンとの反応後に得られうるといった方法を既に記載している。前記方法で得られる材料の欠点の1つは、環状反応生成物の含有量が数パーセントと比較的高いことであり、このことは機械特性に非常に不都合な影響をもたらす。さらに、記載されているポリホルマールは有機溶媒中で非常に不都合な膨潤特性を示し、このことはその後の不都合な環状要素の除去を事実上不可能にしている。
【0009】
DE A 2738962号公報およびDE A 2819582号公報はさらに、上記の不都合を有する同様のポリホルマール、およびそのコーティングまたはフィルムとしての使用を記載している。
【0010】
EP A 0277627号公報は、式
【化3】

の特定のビスフェノールに基づくポリホルマール、およびその光学機器用材料としての使用可能性を記載している。前記出願では、ポリホルマールの光学的異方性を光学的用途に好適な範囲にするために、ビスフェノールのアリール残基における置換は必須であると記載されている。
【0011】
しかし、先の先行技術に記載されているポリホルマールおよびその特性またはその製造方法は、満足いくものではなく、また線形ポリマーの達成可能な純度に限界があるという不都合を有する。その材料は不適当な機械特性を有し、例えば、高い脆弱性を示す。
【0012】
先行技術は、驚くほど著しく低吸水性のポリホルマールを開示しておらず、このようなポリホルマールこそが光データ記憶媒体用のエンジニアリング材料として特に興味深いポリホルマールである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本目的は、先行技術から公知の不都合を排除した、ある種の用途のための高分子量ポリホルマールおよびコポリホルマールおよびその製造方法を提供するものである。前記目的は、驚くべきことに、ある種のビスフェノールの使用によって、これにより得られうる本発明によるポリホルマールおよびコポリホルマールによって、およびそのための製造方法によって達成される。
【0014】
また、驚くべきことに、得られたポリホルマールは先行技術のポリカーボネートよりも著しく低い吸水性の値を有することを見出した。このことは、データ記憶媒体、例えばDVDおよびDVD−Rおよび他の高密度記憶システム、例えばブルーレイディスク(BD)および次世代光ディスク(AOD)の製造にとって、かつ周辺分野のオプティクスにとって重要である。結果的に寸法安定性を改良することが可能であり、これは青または青−緑レーザの使用にとってさらに重要である。材料の好適な溶解性と膨潤特性のために、いかなる環状不純物が発生してもほぼ完全に除去されうり、その後不純物は今日の通常のポリカーボネートの場合と同程度の量しか存在しない。これは環状不純物による機械特性への負の影響を事実上打ち消している。さらに、驚くべきことに、130〜170℃の高いガラス転移温度が好適なコポリマー組成物を用いて達成されうることを見出し、前記温度はエンジニアリング用途、例えば光データ記憶媒体または蒸気殺菌可能な医療物品に必要である。
【0015】
全部がアセタールのために、全く予想外に、これらのポリホルマールは、比較的高温でアルカリ性と酸性の両方の媒体中で極度の加水分解安定性をも有する(このことがこれらのポリマーを検討しなければならない点である)。さらに、本ポリマーに水中での煮沸試験を施しても、本ポリマーはポリカーボネートより格段に安定である。
【0016】
したがって、本発明は、光データ記憶媒体および医療物品を製造するための線形ポリホルマールまたはコポリホルマールの使用を提供し、また芳香族ビスフェノールに基づくコポリホルマール自身を提供するものであって、一般式(3a)および(3b)による非限定的な例を用いて表される。
【化4】

ここで、Aは、水素またはフェニル、好ましくは水素を表し、残基O−D−OおよびO−E−Oはいずれか所望のジフェノレート残基を表し、ここで−E−および−D−は互いに独立して、6〜40個のC原子、好ましくは6〜21個のC原子を有する芳香族残基であり、この残基は任意に複素原子を含有する1以上の芳香族または縮環型芳香族核を含んでもよく、任意にC〜C12アルキル残基、好ましくはC〜Cアルキル残基またはハロゲンで置換され、架橋要素として脂肪族残基、脂環族残基、芳香族核または複素原子、好ましくは脂肪族残基または脂環族残基を含有してもよく、ここで、残基O−D−OおよびO−E−Oの少なくとも一方は式B
【化5】

の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン残基に相当し、シクロヘキサン環に対して少なくとも単置換され、
ここで、nは1〜10、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3、非常に特に好ましくは3を表し、記号Rは互いに独立していずれか所望の置換基、好ましくはアルキル、アルケニル、アリールまたはハロゲン残基、好ましくはアルキル残基、特に好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル残基、非常に特に好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル残基、特に1〜3個の炭素原子を有するアルキル残基を表し、式Bの特に好適なこのような残基は、Rがメチルを表す場合のものであり、最も特別には記号Rが同じ残基を表す場合のものであり、かつ
kは1〜4000、好ましくは2〜2000、特に好ましくは2〜1000および非常に特に好ましくは2〜500および特に好ましくは2〜300の整数を表し、oは1〜4000、好ましくは1〜2000、特に好ましくは1〜1000および非常に特に好ましくは1〜500および特に好ましくは1〜300の数を表し、mはz/oの分数を表し、nは(o−z)/oの分数を表し、zは1〜oの数を表す。
【0017】
本発明による線形ポリホルマールまたはコポリホルマールの非常に特に好ましい構造ユニットは、式(4a)および(4b)の一般構造から誘導され、
【化6】

ここで、大括弧内の式はジフェノレート残基を記載しており、ここでR1およびR2は、互いに独立して、H、線形または分岐C〜C18アルキルまたはアルコキシ残基、ハロゲン、例えばClまたはBr、または任意に置換されたアリールまたはアラルキル残基、好ましくはHまたは線形または分岐C〜C12アルキル、特に好ましくはHまたはC〜Cアルキル残基および非常に特に好ましくはHまたはメチルを示し、Aは水素またはフェニル、好ましくは水素を示し、
Xは、単結合または−SO−、−CO−、−S−、−O−、C〜Cアルキレン、好ましくはC〜Cアルキレンおよび特に好ましくはメチレン残基;C〜Cアルキリデン、好ましくはC〜Cアルキリデン残基;C〜Cシクロアルキリデン、好ましくはシクロヘキシル残基を示し、これらはC〜Cアルキル、好ましくはメチルまたはエチル残基、またはC〜C12アリーレン残基で置換されてもよく、さらに複素原子を含有する芳香族環と任意に縮環してもよく、pは1〜4000、好ましくは2〜2000、特に好ましくは2〜1000および非常に特に好ましくは2〜500および特に2〜300の整数を表し、qはz/pの分数を表し、rは(p−z)/pの分数を表し、zは1〜pの数を表す。
【0018】
特に好ましくは、式(3)および(4)における各種ジフェノレートは、さらに以下に述べる好適なジフェノールから同様に誘導される。
【0019】
記載しうる一般式(3)および(4)に基づくジフェノールの例は、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびその環−アルキル化および環−ハロゲン化化合物、およびさらにはα,ω−ビス(ヒドロキシフェニル)ポリシロキサンである。
【0020】
好ましいジフェノールは、例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニール(DOD)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0021】
特に好ましいジフェノールは、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシビフェニール(DOD)、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0022】
非常に特に好ましい化合物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシビフェニール(DOD)、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0023】
特に好ましい化合物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0024】
ジフェノールは単独で使用されても、混合物として使用されてもよく、ホモポリホルマールおよびコポリホルマールの両方が含まれる。ジフェノールは文献から公知であり、文献から公知の方法を用いて製造されうる(例えばH.J.バイシュ(Buysch)ら、ウルマンズ・エンサイクロペディア・オブ・インダストリアル・ケミストリー(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)、VHC、ニューヨーク、1991、第5版,vol.19、p.348参照)。
【0025】
本発明は、射出成形または押出し法によって製品を製造するための、およびフィルムを製造するための式(3a)および(3b)の線形ポリホルマールまたはコポリホルマールの使用を提供するものである。好ましくは、これらは、射出成形または押出し法において、特に好ましくは光データ記憶媒体および医療物品の製造用に用いられる。
【0026】
また、本発明は式3aおよび3bのポリホルマールおよびコポリホルマール自身を提供するものである。
【0027】
さらに、本発明は、式(3a)および(3b)のポリホルマールおよびコポリホルマールの製造方法に関し、ビスフェノールと鎖重合停止剤とを、塩化メチレンまたはα,α−ジクロロトルエンと好適な高沸点溶媒(例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシ(DMSO)、N−メチルカプロラクタム(NMC)、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンまたはテトラヒドロフラン(THF))との均一溶液において、塩基(好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)の存在中で、30〜160℃の温度で反応させることを特徴とする。好ましい高沸点溶媒は、NMP、DMF、DMSOおよびNMCであり、特に好ましくはNMP、NMC、DMSOおよび非常に特に好ましくはNMPおよびNMCである。また、反応は多段階で行われてもよい。いったん有機相を洗浄して中性化したら、任意に必要な環状不純物の分離を、沈殿法によって、または環状化合物を溶解させる溶媒(例えばアセトン)を用いた未精製の生成物の分取混練法によって行う。環状不純物は、事実上完全に溶媒中に溶解し、数回に分けて溶媒を変えて混練することによってほとんど完全に分離されうる。例えば、約10リットルのアセトンを用いて、これを例えば約6kgの量のポリホルマールに5回に分けて添加することによって、混練後明らかに1%以下の環状不純物含有量に達することができる。
【0028】
また、環状ポリホルマールおよびコポリホルマールを、好適な溶媒中で沈殿法によって分離してもよく、溶媒は所望のポリマーにとっては溶媒として機能せず、不所望の環状不純物にとって溶媒として機能するものである。好ましくは、これらはアルコールまたはケトンを含有する。
【0029】
ビスフェノールは上記ジフェノールを意味すると捕らえるべきである。第2反応物は、塩化メチレンまたはα,α−ジクロロトルエンを含有する。
【0030】
反応温度は、30℃〜160℃、好ましくは40℃〜100℃、特に好ましくは50℃〜80℃および非常に特に好ましくは60℃〜80℃である。
【0031】
本発明による分岐ポリホルマールおよびコポリホルマールの分子量Mwは、600〜1,000,000g/mol、好ましくは600〜500,000g/mol、特に好ましくは600〜250,000g/molおよび非常に特に好ましくは600〜120,000g/molおよび特に600〜80,000g/molの範囲にある(GPCおよびポリカーボネートキャリブレーションによって同定される)。
【0032】
好ましい、特に好ましいまたは非常に特に好ましい実施の形態は、好ましい、特に好ましいまたは非常に特に好ましい、優先的である等と述べたパラメータ、化合物、定義および説明を用いて行う場合である。
【0033】
しかし、記載中または優先的範囲中に述べた定義、パラメータ、化合物および説明は、自由に互いに組み合わせてもよく、すなわち、特定の範囲と優先的範囲間で組み合わせてもよい。
【0034】
本発明によるポリホルマールおよびコポリホルマールを、公知の方法で加工してもよく、いずれか所望の形状の物品へと、例えば押出し法または射出成形によって処理しても良い。また、溶液法または押出し法によってフィルムを製造しても良い。
【0035】
他のポリマー、例えば芳香族ポリカーボネートおよび/または他の芳香族ポリエステルカーボネートおよび/または他の芳香族ポリエステルを、本発明によるポリホルマールおよびコポリホルマールと、公知の方法で混合しても良い。
【0036】
熱可塑性プラスチックに常套的な添加剤、例えば充填剤、UV安定剤、熱安定剤、帯電防止剤および顔料または染料を、常套的な量で、本発明によるポリホルマールおよびコポリホルマールに添加してもよい。さらに任意に、離型機能、流動機能および/または難燃性を、外型剥離剤、例えばグリセロールモノステアレート(GMS)、PETSまたは脂肪酸エステル、レオロジー添加剤および/または難燃剤、例えばアルキルおよびアリールホスフィト、ホスフェート、ホスファン、低分子量カルボン酸エステル、ハロゲン化合物、塩、チョーク、シリカ、粉末、ガラスおよびカーボンファイバ、PTFEまたはPTFE−含有混合物、顔料およびその組み合わせを添加することによって、改良しても良い。このような化合物は、例えばWO99/55772号公報、15〜25頁、および「プラスチックス・アディティブス・ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」、ハンス・ツァイフェル(Hans Zweifel)、第5版、2000、ハンサー・パブリッシャーズ(Hanser Publishers)、ムニッヒに記載されている。
【0037】
本発明によるポリホルマールおよびコポリホルマールは、任意に他の熱可塑性プラスチックおよび/または常套の添加剤と混合され、いずれか所望の形状の物品/押出し成形体へと処理されたら、既に公知のポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルが使用される用途で使用されうる。本ポリホルマールおよびコポリホルマールは、その特性範囲のために、光データ記憶媒体、例えばCD、CD−R、DVD、DVD−R、ブルーレイディスク(BD)または次世代光ディスク(AOD)および周辺分野のオプティクス用の基材として特に好適である。
【0038】
別の好適な用途領域は、頻繁に蒸気殺菌されるため、並外れて良好な加水分解耐性が条件とされる医療物品である。このような物品は、例えば透析装置、心臓切開術用リザーバ、酸素供給器の外被、プレートおよび中空ファイバ透析装置、分離器外被、注射システム、吸入麻酔器、チューブ、コネクタ、三又タップ、注射スペーサおよび他の部品である。
【0039】
さらに、本発明によるポリホルマールの使用例は次のものである。
公知のように安全パネルは、建築、自動車および飛行機の多くの領域において、およびヘルメットのバイザーとして求められている。
1.フィルム、例えばスキーフィルムの製造。
2.例えば駅や温室のルーフィング建物用、および照明システム用の透光性シート、特にセル形シート。
3.光データ記憶媒体の製造。
4.信号機の外被または交通標識の製造用。
5.発泡体製造用(例えばDE−B 1031507号公報参照)
6.糸および繊維の製造用(例えばDE−B 1137167号公報およびDE−A 1785137号公報参照)
7.照明用途用のガラスファイバを含有する半透明のプラスチックとして(例えばDE−A1554020号公報参照)。
8.透光性および光散乱性成形体の製造用の硫酸バリウム、二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムまたは有機ポリマー状アクリレートゴムを含有する半透明のプラスチックとして(EP−A634445号公報、EP−A269324号公報)。
9.精密射出成形、例えばレンズ取り付け具の製造用。この目的のために使用されるポリホルマールは、ガラスファイバおよび任意にさらに全重量に関して約1〜10重量%のMoSを含有する。
10.光学装置部品、特にスチールおよびビデオカメラ用レンズの製造用(例えばDE−A2701173号公報参照)。
11.透光性物質、特に光ファイバケーブルとして(例えば、EP−A0089801号公報参照)。
12.導電体用およびプラグソケットおよびコネクタ用の絶縁材料として。
13.香水、アフターシェーブローションおよび汗に対する耐性を改良した携帯電話ケースの製造。
14.ネットワークインターフェイス装置。
15.有機光伝導体用基材。
16.トーチおよびランプ、例えばストリップライトまたはヘッドライト/スポットライトランプ、ディフューザディスクまたは内部レンズの製造用。
17.医療用途、例えば酸素供給器、透析装置用。
18.食品用途、例えばボトル、陶器類およびチョコレート型用。
19.燃料や潤滑剤との接触が起こりうる自動車用途、例えばバンパー用、任意にABSまたは好適なゴムとの好適な混合物の形態である。
20.スポーツ用品、例えばスラロームのポール、スキーブーツの留め具用。
21.家庭用品、例えば台所シンクおよび郵便ボックス用。
22.外被、例えば配電キャビネット用。
23.電動歯ブラシ用外被およびヘアードライヤー外被。
24.洗浄液に対する耐性を改良した透明な洗浄装置の窓。
25.安全眼鏡、視力矯正眼鏡。
26.調理中の蒸気、特に油の蒸気に対する耐性を改良した調理施設用ランプカバー。
27.薬剤配合用包装フィルム。
28.チップボックスおよびチップキャリア。
29.他の用途、例えば牛舎の給飼扉または動物のケージ用。
【0040】
また、本発明によるポリマーから製造される成形体および光データ記憶媒体も本願によって提供される。
【0041】
以下の実施例は発明を例示するものであって、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
(ビスフェノールTMCからのホモポリホルマールの合成)
【化7】

【0043】
7kg(22.55mol)のビスフェノールTMC、2.255kg(56.38mol)の水酸化ナトリウムフレークおよび51.07g(0.34mol)の微細グレードのp−tert−ブチルフェノール(アルドリッチ(Aldrich))を500mlの塩化メチレンに入れ、これを窒素保護雰囲気下で攪拌しながら、28.7kgの塩化メチレンと40.18kgのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との溶媒混合物に添加する。均一化した後、混合物を加熱して還流し(78℃)、1時間この温度で攪拌する。25℃まで冷却した後、反応バッチを35lの塩化メチレンと20lの脱イオン水を用いて希釈する。バッチを分離器中で水を用いて洗浄して中性化し塩をなくす(導電率<15μS.cm−1)。分離器から有機相を分離し、溶媒交換を蒸発器タンク内で行い、塩化メチレンをクロロベンゼンと置き換える。その後、材料を、ZSK 32液化押出成形機を通じて270℃の温度で押出し成形して、ペレットにする。この合成手順を2回行う。初期材料を廃棄した後、これにより全部で9.85kgのポリホルマールが透明なペレットとして得られる。この生成物はまだ、不純物として低分子量の環状不純物を含有している。この材料を2部に分け、各部を一晩約5lのアセトンで膨張させる。得られた塊を、環状不純物がもはや検出されなくなるまで、数回新たなアセトンと混練する。精製された材料を合わせこれをクロロベンゼンに溶解した後、再度液化押出し成形機を通じて280℃で押出し成形を行う。初期材料を廃棄した後、これにより全部で7.31kgのポリホルマールが透明なペレットとして得られる。
【0044】
(分析)
・GPCによれば、分子量Mw=38345、Mn=20138、D=1.90
(ポリカーボネートに対するキャリブレーション)
・ガラス転移温度Tg=170℃
・塩化メチレン中での相対溶液粘度(0.5g/100mlの溶液)=1.234
【0045】
(実施例2)
(ビスフェノールAから調製したホモポリホルマール)
【化8】

【0046】
7kg(30.66mol)のビスフェノールA(ベイヤー AG)、3.066kg(76.65mol)の水酸化ナトリウムフレークおよび69.4g(0.462mol)の微細グレードのp−tert−ブチルフェノール(アルドリッチ(Aldrich))を500mlの塩化メチレンに入れ、これを窒素保護雰囲気下で攪拌しながら、28.7kgの塩化メチレンと40.18kgのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との溶媒混合物に添加する。均一化した後、混合物を加熱して還流し(78℃)、1時間この温度で攪拌する。25℃まで冷却した後、反応バッチを20lの塩化メチレンと20lの脱イオン水を用いて希釈する。バッチを分離器中で水を用いて洗浄して中性化し塩をなくす(導電率<15μS.cm−1)。分離器から有機相を分離し、溶媒交換を蒸発器タンク内で行い、塩化メチレンをクロロベンゼンと置き換える。その後、材料を、ZSK 32液化押出成形機を通じて200℃の温度で押出し成形して、ペレットにする。この合成手順を2回行う。初期材料を廃棄した後、これにより全部で11.99kgのポリホルマールが透明なペレットとして得られる。
【0047】
(分析)
・GPCによれば、分子量Mw=31732、Mn=3465(ポリカーボネートに対するキャリブレーション)。環状不純物を今回分離しなかった。材料をアセトンと混練することができず、したがって同様の環状不純物の分離は不可能である。
・ガラス転移温度Tg=89℃
・塩化メチレン中での相対溶液粘度(0.5g/100mlの溶液)=1.237
【0048】
(実施例3)
(ビスフェノールTMCおよびビスフェノールAからのコポリホルマールの合成)
【化9】

【0049】
5.432kg(17.5mol)のビスフェノールTMC(x=70mol%)、1.712kg(7.5mol)のビスフェノールA(y=30mol%)、2.5kg(62.5mol)の水酸化ナトリウムフレークおよび56.33g(0.375mol)の微細グレードのp−tert−ブチルフェノール(アルドリッチ(Aldrich))を500mlの塩化メチレンに入れ、これを窒素保護雰囲気下で攪拌しながら、28.7kgの塩化メチレンと40.18kgのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との溶媒混合物に添加する。均一化した後、混合物を加熱して還流し(78℃)、1時間この温度で攪拌する。25℃まで冷却した後、反応バッチを35lの塩化メチレンと20lの脱イオン水を用いて希釈する。バッチを分離器中で水を用いて洗浄して中性化し塩をなくす(導電率<15μS.cm−1)。分離器から有機相を分離し、溶媒交換を蒸発器タンク内で行い、塩化メチレンをクロロベンゼンと置き換える。その後、材料を、ZSK 32液化押出成形機を通じて280℃の温度で押出し成形して、ペレットにする。初期材料を廃棄した後、これにより全部で5.14kgのコポリホルマールが透明なペレットとして得られる。この生成物はまだ、不純物として低分子量の環状不純物を含有している。この材料を一晩約5lのアセトンで膨張させる。得られた塊を、環状不純物がもはや検出されなくなるまで、数回新たなアセトンと混練する。精製された材料をクロロベンゼンに溶解し、再度液化押出し成形機を通じて270℃で押出し成形を行う。初期材料を廃棄した後、これにより全部で3.11kgのポリホルマールが透明なペレットとして得られる。
【0050】
(分析)
・GPCによれば、分子量Mw=39901、Mn=19538、D=2.04
(ポリカーボネートに対するキャリブレーション)
・ガラス転移温度Tg=148℃
・塩化メチレン中での相対溶液粘度(0.5g/100mlの溶液)=1.246
・CDClにおけるNMRは予想通りの導入比x/yを示す。
【0051】
(実施例4〜11)
(ビスフェノールTMCおよびビスフェノールAからの各種組成を有するコポリホルマールの合成)
さらに、コポリホルマールを実施例3の合成と同様の方法で製造する(表1参照)。
【0052】
【表1】

【0053】
(実施例12)
(ポリホルマールおよびコポリホルマールの水含有量の同定)
(95%r.H.の湿潤条件および30℃の貯蔵温度下での貯蔵後の、実施例1〜10からのポリホルマールの吸水性および水含有量の同定)
各種貯蔵期間の後に、水含有量を定量カールフィッシャー滴定(電量滴定)によって同定する。
貯蔵期間:7日および14日
天候:95%r.H.の湿潤条件および30℃
再現:貯蔵条件毎に4測定
【0054】
水含有量の平均を図1に示す。
【0055】
0%のTMC−ビスフェノール(100%ビスフェノールA)および100%TMC−ビスフェノールを用いたポリカーボネートに比べて、ポリホルマールおよびコポリホルマールコポリマー組成物では全濃度範囲にわたって吸水性レベルが著しく低下していることが明らかに証明されている。
【0056】
(実施例13)
【化10】

【0057】
73.47g(0.32mol)のビスフェノールAと32.04g(0.8mol)の水酸化ナトリウムパールを窒素保護下で攪拌しながら、103.65g(0.64)のα,α−ジクロロトルエン(アルドリッチ)と450mlのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との混合物に添加する。均一化した後、混合物を78〜83℃に加熱して、1時間この温度で攪拌する。常温まで冷却した後、反応バッチを塩化メチレンと水を用いて希釈する。有機相を、水を用いて複数回繰り返し洗浄して中性化し塩をなくす。次に有機相を分離する。そしてポリマーをメタノール中に沈殿させることによって単離する。水とメタノールでの洗浄後、環状オリゴマーをホットアセトンを用いて(繰り返し洗浄で)分離する。80℃で乾燥させた後、50gのポリホルマールが得られる。
【0058】
(分析)
・GPCによれば、分子量Mw=111.62、Mn=7146、D=1.56
(ポリカーボネートに対するキャリブレーション)。
・ガラス転移温度Tg=115℃
【0059】
(実施例14)
【化11】

【0060】
40.36g(0.13mol)のビスフェノールTMCと、12.8g(0.32mol)の水酸化ナトリウムパールおよび0.195g(0.0013mol)のp−tert−ブチルフェノールを窒素保護下で攪拌しながら、41.87g(0.26mol)のα,α−ジクロロトルエン(アルドリッチ)と225mlのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との混合物に添加する。均一化した後、混合物を77〜81℃に加熱して、1時間この温度で攪拌する。常温まで冷却した後、反応バッチを塩化メチレンと水を用いて希釈する。有機相を、水を用いて複数回繰り返し洗浄して中性化し塩をなくす。次に有機相を分離する。そしてポリマーをメタノール中に沈殿させることによって単離する。水とメタノールでの洗浄後、環状オリゴマーをホットアセトンを用いて(繰り返し洗浄で)分離する。80℃で乾燥させた後、46.6gのポリホルマールが得られる。
【0061】
(分析)
・GPCによれば、分子量Mw=10644、Mn=7400、D=1.44
(ポリカーボネートに対するキャリブレーション)。
・ガラス転移温度Tg=158℃
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ポリカーボネートと比較したポリホルマールの吸水性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Ia)および(Ib)
【化1】

(ここで、Aは独立して、水素またはフェニルを表し、残基O−D−OおよびO−E−Oはいずれか所望のジフェノレート残基を表し、ここで−E−および−D−は互いに独立して、6〜40個のC原子を有する芳香族残基であり、この残基は任意に複素原子を含有する1以上の芳香族または縮環型芳香族核を含んでもよく、任意にC〜C12アルキル残基またはハロゲンで置換され、架橋要素として脂肪族残基、脂環族残基、芳香族核または複素原子を含有してもよく、ここで、残基O−D−OおよびO−E−Oの少なくとも一方は式B
【化2】

の1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン残基に相当し、シクロヘキサン環に対して少なくとも単置換され、
ここで、nは1〜10を意味し、記号Rは互いに独立していずれか所望の置換基を表し、kおよびoは1〜4000の整数を表し、oは1〜4000の数を表し、mはz/oの分数を表し、nは(o−z)/oの分数を表し、zは1〜oの数を表す)
の線形ポリホルマールまたはコポリホルマール。
【請求項2】
Aは水素を表す請求項1による線形ポリホルマールおよびコポリホルマール。
【請求項3】
射出成形または押出し法によって製品を製造するための請求項1によるポリホルマールおよびコポリホルマールの使用。
【請求項4】
製品は光データ記憶媒体であることを特徴とする請求項3による使用。
【請求項5】
請求項1によるポリホルマールおよび/またはコポリホルマールを含有する光データ記憶媒体。
【請求項6】
製品は医療物品であることを特徴とする請求項3による使用。
【請求項7】
請求項1によるポリホルマールおよび/またはコポリホルマールを含有する医療物品。
【請求項8】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)に基づくホモポリホルマールを含有することを特徴とする請求項1による線形ポリホルマール。
【請求項9】
ビスフェノールと塩化メチレンとを、好適な高沸点溶媒の均一溶液において、塩基の存在中で、30〜160℃の温度で反応させることによる、請求項1による線形ポリホルマールおよびコポリホルマールの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−500760(P2007−500760A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521435(P2006−521435)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007711
【国際公開番号】WO2005/012379
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】