説明

吸水性不織布構造体

【課題】嵩高で吸水性に優れるばかりでなく、湿潤時においても高い強度を持ち、なおかつソフトな風合いを持つ不織布を提供すること。
【解決手段】熱接着性芯鞘型複合短繊維を70重量%以上含み、かつパルプ繊維を含まない不織布Aと、熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維とで構成される不織布Bが、少なくとも各々1層ずつ積層され、熱接着性芯鞘型複合短繊維どうしおよび/または熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維とが熱接着している不織布構造体であって、上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに芯部にポリトリメチレンテレフタレートポリマーが配され、かつ不織布構造体全体に対する上記パルプ繊維の重量比率が、20〜80重量%の範囲内である吸水性不織布構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵩高で吸水性に優れるばかりでなく、湿潤時においても高い強度を持ち、なおかつソフトな風合いを持つ不織布構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水性を有する不織布を得るために、各種検討がなされてきた。かかる吸水性不織布として、アルキルフォスフェート金属塩を付着させた不織布(例えば、特許文献1:特開平8−188965号公報)、熱可塑性樹脂よりなる疎水性不織布を界面活性剤で処理した不織布(例えば、特許文献2:特開平11−181678号公報)、吸水ポリマーと吸水繊維とからなる不織布(例えば、特許文献3:特開平8−120550号公報)などが開示されている。
しかしながら、アルキルフォスフェート金属塩を付着させた不織布、あるいは熱可塑性樹脂よりなる疎水性不織布を界面活性剤で処理した不織布は、その表面のみを親水化するものであるため、初期の親水性には優れるものの、吸水(保水)という点では、不十分な性能しか示されていない。
また、吸水ポリマーと吸水繊維とからなる不織布は、吸水性に優れるものの、吸水ポリマーとの複合体であるため、一般的に強度を高くすることが困難で、使用中に不織布が破れてしまう場合がある上、コスト高になるという問題があった。
【0003】
これに対して、本発明者らは、特許文献4(特開2003−96653号公報)において、パルプ繊維と熱接着性繊維が特定の比率で混合された不織布構造体を提案した。しかるに、かかる不織布構造体は、嵩高で良好な吸水性を有するものの、用途によってはさらに高い湿潤強度を求められることもあった。
このため、本発明者らは、さらに特許文献5(特開2003−113564号公報)において、不織布構造体の表面を、熱圧着させることにより、高い湿潤強度を有する吸水性不織構造体を提案した。しかるに、かかる不織布構造体は、良好な吸水性と高い湿潤強度を有するものの、表面の熱圧着工程を必要とするためコスト高になるという問題があった。
さらに、本発明者らは、特許文献6(特開2004−60108号公報)において、パルプ繊維と熱接着性複合短繊維とが混合された不織布と熱接着性複合短繊維からなる不織布を特定の比率で積層することを提案したが、この不織布構造は、吸水性、湿潤強度は有するものの、不織布の風合いが硬くなり問題が出てきた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−188965号公報
【特許文献2】特開平11−181678号公報
【特許文献3】特開平8−120550号公報
【特許文献4】特開2003−96653号公報
【特許文献5】特開2003−113564号公報
【特許文献6】特開2004−60108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、嵩高で吸水性に優れるばかりでなく、湿潤時においても高い強度を持ち、なおかつソフトな風合いを持つ不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱接着性芯鞘型複合短繊維を70重量%以上含み、かつパルプ繊維を含まない不織布Aと、熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維とで構成される不織布Bが、少なくとも各々1層ずつ積層され、熱接着性芯鞘型複合短繊維どうしおよび/または熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維とが熱接着している不織布構造体であって、上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに芯部にポリトリメチレンテレフタレートポリマーが配され、かつ不織布構造体全体に対する上記パルプ繊維の重量比率が、20〜80重量%の範囲内であることを特徴とする吸水性不織布構造体に関する。
ここで、上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに鞘部に共重合ポリエステル系ポリマーが配されることが好ましい。
また、上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに鞘部にポリオレフィン系ポリマーが配されるものも好ましい。
さらに、上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに単糸繊度が0.1〜10dtexの範囲内であることが好ましい。
さらに、不織布構造体全体に対する上記不織布A(1層)の重量比率は、好ましくは10〜60重量%の範囲内である。
さらに、本発明の不織布構造体は、不織布構造体が3層以上の多層構造を有しており、少なくともどちらか一方の最外層に上記不織布Aが配されているものが好ましい。
さらに、本発明の不織布構造体は、エアレイド法で製造されたものが好ましい。
さらに、本発明の不織布構造体は、剛軟度が2〜7cmであることが好ましい。
さらに、本発明の不織布構造体は、ウエット強度が、ドライ強度に対して70〜100%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の不織布構造体は、嵩高で吸水性に優れるばかりでなく、湿潤時においても高い強度を持ち、なおかつソフトな風合いを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で使用するポリトリメチレンテレフタレートポリマーとは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルをいい、トリメチレンテレフタレート単位が約50%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第3成分としての他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0009】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタール酸またはその機能的誘導体とトリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で適当な反応条件下に縮合させることにより製造される。この製造過程において、適当な一種または二種以上の第3成分を添加して共重合ポリエステルとしても良いし、またポリエチレンテレフタレートなどのポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンなどとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイドなど)しても良い。
【0010】
添加する第3成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなど)脂環族グリコール(シクロヘキサングリコールなど)、芳香族ジオキシ化合物(ハイドロキノンビスフェノールAなど)、芳香族を含む脂肪族グリコ−ル(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど)、脂肪族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸など)などが挙げられる。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸など、またはグリセリンなど)も重合体が実質的に線状である範囲で使用できる。
【0011】
本発明でいう熱接着性芯鞘型複合短繊維は、鞘成分に熱融着成分と芯成分に該ポリトリメチレンテレフタレートを配しており前者が繊維表面に露出している必要がある。重量割合としては、前者と後者が30/70〜70/30の範囲が適当である。この芯鞘型においては、繊維形成性熱可塑性ポリマーが芯部となるが、該芯部は同心円状あるいは偏心状であってもよい。なお、該複合短繊維の断面形状としては、中空、中実、異型いずれでもよい。
【0012】
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマーおよびその共重合物(共重合系ポリエステルポリマー)、ポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合物、ポリビニルアルコール系ポリマーなどを挙げることができる。好ましくは、共重合ポリエステル系ポリマー、およびポリオレフィン系ポリマーである。
【0013】
上記ポリウレタン系エラストマーとしては、分子量が500〜6,000程度の低融点ポリオール、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミドなどと、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えばp,p’−ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどと、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコールアミノアルコールあるいはトリオールとの反応により得られるポリマーである。
これらのポリマーのうちで、特に好ましいのはポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、またはポリ−ε−カプロラクタムあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合の有機ジイソシアネートとしてはp,p’−ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4−ブタンジオールを挙げることができる。
【0014】
また、ポリエステル系エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノールなどの脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5,000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体などのポリ(アルキレンオキサイド)グリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
【0015】
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。
この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常、30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常、30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
【0016】
共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステルなどを挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにイソフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステルが好ましい。
【0017】
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。
【0018】
なお、上記熱融着成分と繊維形成性熱可塑性ポリマーには、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分枝剤、艶消し剤、着色剤、その他各種改良剤などが必要に応じて配合されていてもよい。
【0019】
本発明において、熱接着性芯鞘型複合短繊維は、上記の熱融着成分と繊維形成性熱可塑性ポリマーからなるものであり、その単糸繊度は0.1〜10dtex(より好ましくは1〜3dtex)であることが好ましい。該繊度が0.1dtex未満では、骨格としての強力が不足する恐れがある。逆に、該繊度が10dtexよりも大きいと、パルプ繊維との均一な混合を作りにくく不織布に斑を生じる恐れがある。
なお、上記複合短繊維の繊維長は、2〜20mmであることが好ましい。さらに好ましくは、3〜10mmである。2mm未満では繊維どうしの絡み合いが少なくなるため、強度が得られ難く好ましくない。一方、20mmを超える場合、エアレイド不織布の生産性状、ヘッドボックスからの繊維落下が行われにくく、生産性が極めて悪化するため好ましくない。
【0020】
次に、本発明でいうパルプ繊維とは、木材やその他植物から抽出された天然パルプをさす。使用するパルプの種類としては、木材パルプ、麻パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプなどが挙げられ、中でも木材パルプが価格などの点で最も好ましい。
【0021】
本発明の不織布構造体において、不織布Aは、熱接着性芯鞘型複合短繊維を70重量%以上含み、かつパルプ繊維を含まない不織布である。不織布Aにおいて、熱接着性芯鞘型複合短繊維が70重量%未満では、パルプ繊維が脱落する場合があり、好ましくない。
ここで、不織布Aに用いられることのある上記熱接着性芯鞘型複合短繊維以外の他の繊維としては、例えばポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ビニロン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
【0022】
また、本発明の不織布構造体において、不織布Bは、上記熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維とで構成される不織布である。不織布Bにおいて、熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維との混合割合は、複合短繊維/パルプ繊維が20/80〜80/20、好ましくは35/65〜65/35である。不織布Bにおいて、パルプ繊維の割合が20重量%未満では、吸水性を発揮することが出来ない。一方、80重量%を超えるとパルプ繊維の脱落の可能性が高まり好ましくない。
【0023】
さらに、本発明の不織布構造体において、不織布構造体全体に対するパルプ繊維の重量比率は、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。
パルプ繊維の割合が20重量%未満では、吸水性を発揮する事が出来ない。一方、80重量%を超えると、パルプ繊維の脱落の可能性が高まり好ましくない。
【0024】
さらに、本発明の不織布構造体において、該構造体全体に対する上記不織布A(1層)の重量比率は、10〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜40重量%である。10重量%未満では、全体の強度がダウンし使用時の破けが懸念され好ましくなく、一方60重量%を超えると、吸水性が不十分となるため好ましくない。
【0025】
さらに、本発明の不織布構造体は、3層以上の多層構造を有し、少なくともどちらか一方の最外層に上記不織布Aが配されていることが、吸水性、嵩高性、パルプ繊維の脱落の面から好ましい態様である。
【0026】
以上のように、本発明においては、熱接着性芯鞘型複合短繊維を主体とする不織布Aとパルプ繊維と熱接着性芯鞘型複合短繊維とが混合された不織布Bとが少なくとも2層以上積層された不織布である。単層では柔軟性と強度のバランスを取ることが困難である以外は積層する数に限定はないが、設備の制約や生産性などを考慮し3〜5層であることが好ましい。
【0027】
本発明の不織布構造体を構成する不織布の製造方法、およびその積層方法としては、従来公知の方法が任意に採用でき、特に限定されるものではないが、嵩を高め、パルプ繊維と熱接着性複合短繊維とを均一に混合することが好ましい点を考慮するとエアレイド法が最も好ましい。
【0028】
本発明の不織布構造体は、上記の不織布Aを構成する複合芯鞘型短繊維を、開繊機に投入し、均一な状態に開繊させた後、送綿循環ダクトへ送る。一方、他の繊維を用いる場合は、この他の繊維も開繊機に投入され、均一な状態に開繊させた後、送綿循環ダクトへ送る。複合短繊維と必要に応じて用いられる他の短繊維は、送綿循環ダクト内で混綿され、エアレイド機に供給される。混綿された短繊維は、エアレイド機に備えられた平面状スクリーンまたは回転している円筒状スクリーン(フォーミングドラム)表面の小孔スクリーン部位より吐出され、サクション装置で吸引され、積層された繊維集合体となる。同様の操作により、不織布Bを構成する芯鞘型複合短繊維およびパルプ繊維をエアレイド法により、先に積層された不織布Aの上に積層させて、繊維集合体を形成させる。続いて、得られた積層繊維集合体を熱風ドライヤー(エアースルードライヤー)、フラットカレンダーヒートローラー、エンボスカレンダーヒートローラーなどの方法で加熱処理し熱接着させる。熱接着性成分の融点以上の温度で加熱処理を施すことによって、複合短繊維の熱接着性成分が溶融し、複合短維どうし、もしくはそれと他の繊維との交点とが熱接着され、不織布Aと不織布Bとが積層された本発明の吸水性不織布構造体となる。本発明の不織布構造体が3層以上である場合にも、上記と同様にして不織布構造体を得ることができる。
なお、熱接着性芯鞘型複合短繊維どうし、またはパルプ繊維と熱接着性芯鞘型複合短繊維との接着は、不織布を製造したのち、熱処理により一旦熱融着させ、さらに該不織布を積層した後、再度熱融着させてもよいし、不織布を積層した後、一度に熱融着させてもよい。
【0029】
このようにして得られる本発明の吸水性不織布構造体は、剛軟度が2〜7cmであることが好ましい。さらに好ましくは、3〜6cmである。2cm未満では、不織布のコシがなく使用し難いものとなる。一方、7cmを超えると、柔軟性に欠け、本発明の目的を達成することができない。
ここで、上記剛軟度は、使用する繊維の種類、不織布の構造、熱処理条件によって調整することができる。
【0030】
また、本発明の不織布構造体のウエット強度は、ドライ強度に対し、70〜100%であることが好ましい。さらに好ましくは、80〜100%である。70%未満では使用時に破けて繊維が脱落するなどの問題が発生し、本発明の目的を達成することができない。
このウエット強度/ドライ強度比は、熱接着性芯鞘型複合繊維の使用量や不織布の構造、熱処理条件により調整することができる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<厚み>
JIS L1096(一般織物試験方法)に基づき測定を行った。
<密度>
JIS L1096(一般織物試験方法)に基づき測定を行った。
<強度(DRY)>
JIS P8113(紙および板紙の引張り強さ試験方法)に基づき測定を行った。
<強度(湿潤状態:WET)>
JIS P8135(紙および板紙の湿潤引張り強さ試験方法)に基づき測定を行った。
<剛軟度>
JIS L1096(一般織物試験方法)に基づき測定を行った。
<吸水性(バイレック法)>
JIS L1096(一般織物試験方法)6.26.1 B法(バイレック法)に基づき測定を行った。
<繊維脱落>
得られたサンプルを2枚用意し、表面どうしを擦った時の状態について目視観察を行った。
◎:ほとんど繊維脱落は見られない。
○:ごく少量の繊維脱落が見られる。
△:繊維脱落が見られる。
×:多くの繊維脱落が見られる。
【0032】
実施例1〜5、比較例1〜5
まず、熱接着性複合短繊維(B)として、熱接着性複合短繊維B1、熱接着性複合短繊維B2、熱接着性複合短繊維B3の3種を用意した。
ここで、熱接着性複合短繊維B1は、ポリトリメチレンテレフタレートを芯部に、テレフタル酸とイソフタル酸とを60/40(モル%)で混合した酸成分と、エチレングリコールとジエチレングリコールとを85/15(モル%)で混合したジオール成分とからなる共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘部に、鞘/芯の重量比で50/50になるように常法により紡糸して得られた芯鞘型熱接着性複合短繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm)である。
また、熱接着性複合短繊維B2は、ポリトリメチレンテレフタレートを芯部に、ポリエチレンを鞘部に、鞘/芯の重量比で50/50になるように常法により紡糸して得られた芯鞘型熱接着性複合短繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm)である。
さらに、熱接着性複合短繊維B3は、ポリエチレンテレフタレートを芯部に、テレフタル酸とイソフタル酸とを60/40(モル%)で混合した酸成分と、エチレングリコールとジエチレングリコールとを85/15(モル%)で混合したジオール成分とからなる共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘部に、鞘/芯の重量比で50/50になるように常法により紡糸して得られた芯鞘型熱接着性複合短繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長5mm)である。
【0033】
そして、針葉樹パルプ(以下「NBKP」と称する場合がある)と、表1に示される熱接着性複合短繊維とを表1に示す比率で複合し、エアレイド法により均一なウエッブを得て、該ウエッブを積層した後、エアースルードライヤーで熱接着性複合短繊維の鞘成分を融着させた。得られた不織布構造体の各物性を表2に示す。
比較例1については、パルプ繊維の脱落に問題を生じた。さらに、比較例1では、パルプと熱接着性複合短繊維から構成される単層不織布であるため、吸水したときにべとつきが多いという問題が生じた。比較例2、3においては、全体に対するパルプ繊維の比率が小さいため、吸水性に劣るという問題が生じた。比較例4、5においては、パルプ繊維の脱落に問題を生じた。
【0034】

【表1】

【0035】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の不織布構造体は、嵩高で吸水性に優れるばかりでなく、湿潤時においても高い強度を持ち、なおかつソフトな風合いを持つので、キッチンペーパー、油こし、ウェットワイパー、鮮度保持シートなどの用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱接着性芯鞘型複合短繊維を70重量%以上含み、かつパルプ繊維を含まない不織布Aと、熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維とで構成される不織布Bが、少なくとも各々1層ずつ積層され、熱接着性芯鞘型複合短繊維どうしおよび/または熱接着性芯鞘型複合短繊維とパルプ繊維とが熱接着している不織布構造体であって、上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに芯部にポリトリメチレンテレフタレートポリマーが配され、かつ不織布構造体全体に対する上記パルプ繊維の重量比率が、20〜80重量%の範囲内であることを特徴とする吸水性不織布構造体。
【請求項2】
上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに鞘部に共重合ポリエステル系ポリマーが配される、請求項1に記載の吸水性不織布構造体。
【請求項3】
上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに鞘部にポリオレフィン系ポリマーが配される、請求項1に記載の吸水性不織布構造体。
【請求項4】
上記不織布Aに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維および上記不織布Bに含まれる熱接着性芯鞘型複合短繊維において、ともに単糸繊度が0.1〜10dtexの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性不織布構造体。
【請求項5】
不織布構造体全体に対する上記不織布A(1層)の重量比率が10〜60重量%の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の吸水性不織布構造体。
【請求項6】
不織布構造体が3層以上の多層構造を有しており、少なくともどちらか一方の最外層に上記不織布Aが配されてなる、請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性不織布構造体。
【請求項7】
エアレイド法で製造されたものである、請求項1〜6のいずれかに記載の吸水性不織布構造体。
【請求項8】
不織布構造体の剛軟度が2〜7cmである、請求項1〜7のいずれかに記載の吸水性不織布構造体。
【請求項9】
不織布構造体のウエット強度が、ドライ強度に対して70〜100%である、請求項1〜8のいずれかに記載の吸水性不織布構造体。

【公開番号】特開2006−241653(P2006−241653A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62476(P2005−62476)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】