説明

吸湿体及び吸収性物品

【課題】排泄された液による吸湿剤の吸湿性能の低下が防止され、肌に近い領域での湿度を有効に下げることができ、装着中における蒸れやべたつき等の不快感の発生が防止された吸収性物品を提供すること。
【解決手段】吸湿体9は、吸湿剤12が防水透湿体17内に水密に封入されており、該防水透湿体17が水溶性防湿体10内に密封されてなる。吸収性物品1は、液透過性の表面材2、液不透過性の裏面材3、及び表面材2と裏面材3との間に配された液保持性の吸収体4を備え、吸湿体9が表面材2吸収体4との間に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸湿体に関する。また本発明はその吸湿体を用いた吸収性物品、特に使い捨ておむつやショーツ型ナプキン等の衛生用吸収性物品やインナーシューズ用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の着用中における蒸れやべたつきを防止するための技術が種々提案されている。例えば本出願人は先に、透湿層で密封されてなる吸湿剤密封体を有する吸収性物品を提案した(特許文献1参照)。この吸収性物品においては、肌側面の透湿層の透湿度をその反対の面の透湿層の透湿度よりも高く構成することによって、肌に近い領域での湿度を有効に下げることができ、装着中の蒸れやべたつき等の不快感の発生を防止することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−116912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この吸収性物品は吸収体に吸収された液由来の水蒸気を少なからず吸湿すると共に、使用開始前から吸湿を行うことがある。このことから、吸収性物品の着用中における蒸れやべたつき感を低減させる吸湿が発揮されにくい場合がある。
【0005】
したがって、本発明は、排泄された液による吸湿剤の吸湿性能の低下が防止され、肌に近い領域での湿度を有効に下げることができ、装着中における蒸れやべたつき等の不快感の発生が防止された吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸湿剤が防水透湿体内に水密に封入されており、該防水透湿体が水溶性防湿体内に密封されてなる吸湿体を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0007】
また本発明は、表面材、裏面材及び表面材と裏面材との間に配された液保持性の吸収体を備えた吸収性物品において、前記の吸湿体を該表面材と該吸収体との間に配した吸収性物品を提供するものである。
【0008】
更に本発明は、前記の吸湿体と、該吸湿体を足に固定させるための足固定手段とを有する吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸湿体によれば、尿、便、汗などの液状の水分と水溶性防湿体が接触して、該水溶性防湿体が溶解することで初めて、尿等から発生した蒸気状の水分の吸湿を開始させることができるので、吸湿効果を最大限に発揮させることができる。
また、本発明の吸収性物品は、着用者の肌に近い領域での湿度を有効に下げることができる。更に吸収性物品の装着中における着装内の蒸れ及び蒸れに起因する肌のかぶれを防止することができる。特に、着用者の排尿や排泄で生じた排泄物に起因する液状の水分に反応して水溶性防湿体が溶解して防水透湿体が暴露することで、吸湿が初めて開始される。このことから吸湿効果を最大限に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。図1には本発明の一の実施形態としての使い捨ておむつを、表面材(以下、トップシートともいう。)からみた一部破断平面図が示されている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の使い捨ておむつ1は、背側領域及び腹側領域並びに背側と腹側との間に股下領域を有する。おむつ1は、液透過性のトップシート2と、液不透過性の裏面材3(以下、バックシート3ともいう)と、トップシート2とバックシート3との間に介在された液保持性の吸収体4とを有している。トップシート2は、着用者の肌に近い側に位置している。バックシート3は、着用者の肌から遠い側に位置している。トップシート2は、バックシート3よりも幅が狭くなっている。吸収体4は、おむつ1の股下領域に対応する領域の幅が、背側領域及び腹側領域の幅よりも狭くなっている。吸収体4は、トップシート2及びバックシート3によって挟持固定されている。
【0012】
トップシート2及びバックシート3は、吸収体4におけるおむつ1の長手方向の前後端から外方に延出している。そして延出したトップシート2及びバックシート3によって背側及び腹側のウエスト部5,5’が、おむつ1に形成されている。ウエスト部5,5’それぞれには、おむつ1を着用した際に、ウエスト部5,5’を着用者の身体にフィットさせることができる帯状の弾性伸縮部材5a,5a’が配されている。そして、これらの弾性伸縮部材5a,5aを、それらが伸縮することが可能なように配することで、ウエスト部にウエストギャザーが形成される。
【0013】
おむつ1の左右両側部それぞれには、トップシート2の側部を覆うように立体ギャザー形成用シート7,7が配されている。各立体ギャザー形成用シート7をトップシート2の両側部の位置においてトップシート2に固着させることで、起立端部が形成される。その起立端部よりおむつ幅方向中央に向かって内側に、自由状態となっている内側部が形成される。また、起立端部よりもおむつ幅方向の外側において、それぞれの立体ギャザーシート7とバックシート3とによりレッグ部6,6が形成されている。それぞれのレッグ部6,6には、立体ギャザーシート7とバックシート3との間に複数本の弾性伸縮部材6a,6aを伸長状態で固定させることにより、レッグギャザーが形成される。
【0014】
立体ギャザー形成用シート7における内側部の自由端側には、該立体ギャザー形成用シート7の長手方向に沿って弾性部材7a,7aが伸長状態で固定されている。そして弾性伸縮部材7aが伸縮することで、立体ギャザー形成用シート7の該内側部が起立端部から立ち上がり、おむつ1における着用者の肌当接面側に立体ギャザーが形成される。
【0015】
おむつ1の背側のウエスト部5における幅方向両側縁には、それぞれテープファスナー等からなる一対の止着具8が取り付けられている。また、おむつ1の腹側のウエスト部5’におけるバックシート3上には、止着具8を係止させることができる短形状のランディングテープ等からなる被着具(図示せず)が貼付されている。そして、本実施形態の使い捨ておむつ1の着用状態においては、止着具8,8が被止着具上に止着されるようになされている。
【0016】
おむつ1を構成するこれらの部材としては、当該技術分野において通常用いられているものを適宜用いることができる、例えばトップシート2としては、各種不織布や開孔フィルムを用いることができる。バックシート3としては熱可塑性樹脂のフィルムを用いることができる。このフィルムは後述するように透湿性を有していてもよい。吸収体4としては、パルプ繊維及び高吸収性ポリマーの粒子の混合体をティッシュペーパー等の紙で包んだものを用いることができる。
【0017】
本実施形態のおむつ1においては、トップシート2と吸収体4との間に、該吸収体4よりも小面積の扁平な吸湿体9が配されている。吸湿体9は、吸収体4よりも着用者の肌に近い側に位置している。吸湿体9は、その吸収体対向面が、吸収体4と接合固定されている。この固定には、例えば接着剤が用いられる。吸湿体9には、後述する吸湿剤が密封されている。
【0018】
吸湿体9においては、図2及び図3に示すように、吸湿剤13が防水透湿体17内に水密に封入されている。そして防水透湿体17が、水溶性防湿体10に密封されている。吸湿体9がこのように構成されていることによって、おむつ1の使用前においては、吸湿剤13が水分や蒸気と直接触れることが防止される。おむつ1の着用中においては、着用者の発汗や排泄によって生じた液状の水分によって水溶性防湿体10が溶解し、それによって防水透湿層17が暴露され、初めて吸湿剤13が吸湿を開始する。このように本実施形態によれば、吸湿剤13の吸湿性能が最大限に発揮されると共に着用者の肌の近傍での湿度が効果的に低下し、蒸れが防止される。
【0019】
水溶性防湿体10は、同形である縦長矩形のシートを2枚貼り合わせて構成されている。2枚のシートはそれらの四辺が所定幅で全周接合されている。これにより水溶性防湿体10には周縁接合部14が形成されている。また2枚のシートは、それらの長手方向に所定の間隔を置いて、それらの幅方向にわたって複数箇所で接合され、これにより横断接合部15が形成されている。接合には、ヒートシールや超音波シール等の熱による融着、接着剤の塗布による接着などが用いられる。
【0020】
吸湿体9は、前記の接合部14,15によって複数の小区画に区分されている。それぞれの小区画には密閉空間12が形成されている。各密閉空間12内には、防水透湿体17によって密封された吸湿剤13が配されている。防水透湿体17は、同形である矩形の2枚のシートをそれらの四辺で全周にわたって接合して形成されたものである。その内部には吸湿剤13が水密に封入されている。防水透湿体17を形成するための接合方法としては、先に述べた水溶性防湿体10を形成するための接合方法と同様の方法を採用することができる。
【0021】
水溶性防湿体10は、それが液状の水分と接触して溶出するまでは密封空間12を維持し、その内部に封入されている、吸湿剤13を密封する防水透湿体17が暴露しないように構成されていることが望ましい。防水透湿体17は、それに封入されている吸湿剤13と水との接触を妨げることが可能であるように、且つ水蒸気の流通が可能であるように構成されていることが望ましい。
【0022】
吸湿体9においては、水溶性防湿体10に形成された前記の密閉空間12を小区画に区分することで、吸湿剤13として粒状のものを用いた場合にその偏在が防止されるという利点がある。吸湿剤13として偏在が起こりにくい形状のもの、例えば繊維状やシート状の吸湿剤を用いる場合には、密閉空間12を小区画に区分する必要はない。その場合には、吸湿体9を図4に示すような構成とすることができる。図4に示す吸湿体9においては、2枚のシートの周縁のみを接合して防水透湿体17が形成されており、更に該防水透湿体17を密封するように、2枚の水溶性防湿体10が形成されている。
【0023】
吸湿体9は、図1に示すように、おむつ1における着用者の排泄部位に対応する部位である股下領域に、その長手方向をおむつ1の長手方向と一致させて配されている。したがって、各小区画はおむつの長手方向に沿って一列に配列している。おむつ1の股下領域は、液が集中して排泄され且つ吸収保持される部位なので、かかる部位に吸湿体9を配することで、吸収体4に吸収された液から発生する蒸気状の水分が効果的に捕捉され、着装内が低湿度に保たれる。本実施形態のように吸湿体9がおむつ1の股下部に配される場合には、各小区画の長手方向の長さの総和は50〜150mm程度、各小区画の幅は10〜20mm程度であることが好ましい。吸湿体9は、その面積が吸収体4の面積1〜50%、特に5〜25%であると吸水性能と吸湿性能のバランスが良いので好ましい。
【0024】
吸湿体9における防水透湿体17は、そのトップシート対向面側及び吸収体対向面側の何れもが防水透湿性であってもよく、或いは吸収体対向面側が防水性のみを有し、透湿性は有していなくてもよい。後者の構成の場合には、吸収体4に吸収された液から発生する蒸気状の水分よりも、吸収体4より肌側の空間に存在する蒸気状の水分を優先して吸湿させることができるので、蒸れが一層起こりにくいという利点がある。
【0025】
吸湿体9における水溶性防湿体10は、その全体が水溶性である場合、排泄時においては、吸湿体9に直接尿等の液状の水分が触れて水溶性防湿体10が部分的に溶解し、吸湿が初めて開始する。そして排泄後においては、吸収体4に吸収された尿等の液状の水分と接触して水溶性防湿体10が溶解することでも吸湿を開始させることができる。したがって、このような構成の場合には、排泄物や汗等の液状の水分が少量であって、吸湿体9の配置箇所とは異なる部位に該水分が付着したときであっても、吸湿を行えるという利点がある。
【0026】
また、水溶性防湿体10は、そのトップシート対向面側が水溶性で且つ防湿性であり、吸収体対向面側がが非水溶性又は難水溶性で且つ防湿性であってもよい。このような構成の場合には、尿や汗等の液状の水分を吸収体4が多量に吸収したときに、吸収体4に吸収された液から発生する蒸気状の水分よりも、吸収体4より肌側の空間に存在する蒸気状の水分を優先して吸湿させることができるので、蒸れが一層起こりにくいという利点がある。
【0027】
以上のとおり、本実施形態によれば、おむつ1の使用開始前における吸湿を効果的に防止することができると共に、尿等の液の排泄後においては、吸収体4に吸収された液から発生する蒸気状の水分や、着用者の発汗に起因して生じる蒸気状の水分を、吸湿剤13によって効果的に吸収することができる。それによって、水蒸気の発生に起因する着装内の湿度上昇が抑えられ、おむつ1の装着中における蒸れやべたつき等の不快感の発生が効果的に防止される。
【0028】
吸湿体9における水溶性防湿体10は、水と接触する前の状態では水蒸気の透過を妨げ、且つ液状の水分と接触することで溶解する材料から構成される。水溶性防湿体10としては、例えば水溶性樹脂からなる基材フィルムに、防湿層として金属などの薄膜をコートしたものを用いることができる。
【0029】
水溶性樹脂としてはデンプン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルビロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体などを用いることができる。これら水溶性樹脂からなるフィルムとしては、特にポリビニルアルコール(PVA)フィルムが、フィルム強度、溶解性及び加工性の高さの点から好ましい。水溶性樹脂としてPVAを用いる場合には、水溶解性の点からそのケン化度が98モル%以下、特に94モル%以下であることが好ましい。
【0030】
前記の防湿層は、PVA等の基材フィルムの片面にアルミニウム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類或いは酸化珪素の薄膜を付与することで形成することができる。防湿層の構成材料である金属類又は酸化珪素の薄膜は、例えば真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法により水溶性の基材フィルムの片面に形成させることができる。この防湿層は極めて薄いので、水溶性フィルムが尿などの多量の液状の水分で溶解すると、単独では膜の状態を維持できないために崩壊して水蒸気が透過するようになる。そのため防湿層は十分に薄いことが必要である。この観点から、防湿層はその厚みが10〜500nm、特に10〜200nmであることが好ましい。防湿層の厚みをこの範囲内とすることで、蒸着などの加工時に水溶性フィルムへ与えるダメージを押さえつつ、且つ経済的に、十分な防湿効果を得ることができる。特に防湿層としてアルミニウムの蒸着膜を用いると、折り曲げなどによるピンホールが発生しにくい面から好ましい。また、防湿層として、SiO2、TiO2、ZrO2などの金属酸化物からなる薄膜を用いると、これらの薄膜は水蒸気バリア性に加えてガスバリア性も有するので有利である。
【0031】
水溶性防湿体10が、水溶性樹脂からなる基材フィルムと防湿層との複合体からなる場合、該水溶性防湿体10は、防湿層を内側(吸湿剤側)に向けて配置することが好ましい。これによって、水溶性樹脂からなる基材フィルムが液状の水分で溶かされるまでの間は、水蒸気状の水分の透過が妨げられる。その結果、吸湿剤13が蒸気状の水分を吸収しないように水溶性防湿体10によって封じ込められる。
【0032】
吸湿体9における防水透湿体17の構成材料は、その構造の観点からは多孔質膜と無孔質膜に分類される。多孔質膜は、水蒸気より大きく且つ水滴を通さない微細な孔を多数有するシート材料である。多孔質膜としては、例えば紙おむつ製品等の吸収性物品の透湿バックシートとして用いられている微多孔フィルムを用いることができる。この微多孔フィルムは、熱可塑性樹脂と無機粒子又は該熱可塑樹脂中に分散する樹脂、油成分などとを溶融混練しフィルム状に成形した後に、少なくとも一軸に延伸して得られる。或いは多孔質膜は、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂のフィルム材料にレーザー、放電加工などにより微多孔を設けたものであっても良い。これら各種の多孔質膜のうちで特に好ましいものは、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂に炭酸カルシウムなどの無機微粒子を分散させてフィルムを成形した後に一軸に延伸することにより得られる微多孔フィルムである。かかる微多孔フィルムは、その厚さが10〜50μm、特に10〜30μmのものを好適に用いることができる。
【0033】
また多孔質膜として、透湿性のあるシート材料に防水加工を施したものを用いることもできる。例えば紙や不織布などに、シリコーンやフッ素などで表面を撥水加工したものを用いることができる。或いは、疎水性樹脂からなる微細繊維の不織布を用いることができる。これらのうち、疎水性樹脂からなる微細繊維の不織布を用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂の極細繊維からなるメルトブローン不織布を用いることができる。或いは、これらの樹脂からなる分割繊維を用いた不織布を熱処理又は高圧水流処理して分割したもの、これらの樹脂を高温、高圧下で溶媒に溶かしたものを極細繊維として熱融着させたもの(例えばデュポン社製のタイベック(登録商標))などを用いることもできる。これらの不織布は微細繊維からなることから繊維間距離が小さく、更に撥水性の繊維であるため防水性に優れ、しかも水蒸気を通過させることが可能である。これらの不織布を用いる場合には、その坪量は10〜50g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。特にメルトブローン不織布とスパンボンド不織布とを積層したものは、透湿性、防水性、強度の観点からも好ましく用いることができる。メルトブローン不織布とスパンボンド不織布とを積層した不織布の積層形態としては、スパンボンド/メルトブローンでもよく、或いはスパンボンド/メルトブローン/スパンボンドでもよい。この場合、耐水圧と強度とのバランスの観点からそれぞれの坪量と層比を決定すればよく、例えばメルトブローン不織布が3〜50g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましく、スパンボンド不織布が5〜50g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
【0034】
一方、無孔質膜としては、ポリグリコールとポリイソシアネートを主成分とし、ポリグリコール成分を20重量%以上として合成したポリウレタン樹脂を用いた無孔の透湿ポリウレタンフィルムが好ましく用いられる。また、ポリエステル又はポリウレタンをハードセグメントとし、ポリグリコール単位を有するポリエーテルをソフトセグメントとしたブロック共重合体を用いた無孔の透湿フィルムも好ましく用いられる。これらの無孔フィルムは、その厚さが5〜50μm、特に10〜30μmのものを好適に用いることができる。フィルム強度が低い場合には、これらの無孔フィルムを、ポリエステル又はポリアミドなどの不織布にラミネート或いはコーティングして用いてもよい。
【0035】
防水透湿体17は、JIS Z0208に準拠して測定される40℃/90%での透湿度が、0.5g/(100cm2・hr)以上、特に1.0g/(100cm2・hr)以上、とりわけ2.0/(100cm2・hr)以上であることが好ましい。また、JIS L1092B法に準拠して測定される耐水圧が、100mm以上、特に200mm以上、とりわけ500mm以上であることが好ましい。
【0036】
防水透湿体17に封入される吸湿剤13は、粒状のものであり得る。また、繊維状やシート状のものであり得る。吸湿剤13として高吸収ポリマーを用いる場合には、所定の繊維に高吸収性ポリマーの原料単量体を付着させておき、該繊維上で該単量体の重合を行ったものを用いることができる。このようにして得られた吸湿剤13は、見かけ上は繊維状のものとなる。
【0037】
吸湿剤13としては、例えば物理化学的に水分子を吸着する材料である無機多孔体及び有機多孔体が挙げられる。具体的には、活性炭、珪藻土、天然・合成シリカ(シリカゲル)、合成ゼオライト、天然ゼオライト、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、チタニアゲル、ジルコニアゲル、イットリアゲルなどが挙げられる。好ましくはゼオライト、シリカゲル、シリカアルミナゲルが用いられる。これらの吸湿性多孔質を用いる場合には、その封入量を50〜1000g/m2、特に100〜500g/m2とすることが、十分な吸湿効果の発現及び経済性の面から好ましい。
【0038】
前記の吸湿性多孔体は一般に粒子の形態であるが、それ以外の形態の吸湿性多孔体を用いてもよい。例えば、東海化学工業所から入手可能な材料である板状のゼオライト乾燥剤(商品名MS−セラム−W)を用い、これを数個並列に配置することで、吸湿体9によるおむつ1の形状変形の阻害が最小限に抑えられ、装着者に違和感を与えづらくなるので好ましい。
【0039】
一方、前記の吸着性の吸湿剤以外の吸湿剤としては、例えば生石灰、塩化カルシウム、硫酸、五酸化リン、水酸化ナトリウム、酸化バリウム、炭酸カリウム、脱水硫酸銅、金属ナトリウムなどが挙げられる。また、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、デンプン−ポリアクリル酸グラフト重合体、親水性ポリウレタンなどの高吸収性ポリマーが挙げられる。これらの中でも特に生石灰や塩化カルシウム加工品が好ましく用いられる。また、ポリアクリル酸ナトリウム塩を主成分とするポリマーを直接紡糸し、繊維形状化させた高吸水性で且つ高吸湿性の繊維を用いて、これを不織布、編物、織物等に加工したものを吸湿剤13として用いることもできる。かかる吸湿体13は、曲げや圧縮に対して柔軟であるため好適に用いることができる。前記の高吸水性で且つ高吸湿性の繊維としては、例えばテイジンから入手可能なベルオアシス(登録商標)を用いることができる。
【0040】
次に、第2〜第4の実施形態について、図5〜図7を参照にしながら説明する。これらの実施形態については、第1の実施形態と異なる構成についてのみ説明し、特に説明しない点については第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図5〜図7において、図1〜図4と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0041】
図5に示す第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に使い捨ておむつ1に係るものである。おむつ1のトップシート2と吸収体4との間には、縦長で矩形の吸湿体9が2個配置されている。各吸湿体9は、おむつ1の股下領域における着用者の排泄部位に対応する部位に、その長手方向をおむつ1の長手方向と一致させて配されている。また、各吸湿体9は互いに離間して並列に配されている。各吸湿体9における各小区画はおむつ1の長手方向に沿って一列に配列している。
【0042】
図6に示すように、おむつ1の股下領域における幅方向の縦断面をみると、2個の吸湿体9間には、該吸湿体9の厚みに起因する段差が生じている。この段差はおむつ1の長手方向に延びている。その結果、おむつ1のトップシート2側には、2個の吸湿体9の間に、おむつ1の長手方向に延びる一条の溝Gが形成される。ところで、着用状態におけるおむつ1の股下領域は、排泄された尿や軟便などの液体が集中し易く、かつ吸収体4により液体の水分が保持される部位である。したがってこの部位に溝Gを形成することで、排泄された尿や軟便などの液体が、該溝Gに沿っておむつ1の長手方向へ拡散されやすくなる。その結果、排泄物がおむつ1の横方向へ拡散することを抑えることができる。更にはおむつ1の股下領域からの漏れを防止することができる。また吸湿体9によって、着装内は低湿度に保たれ、蒸れが防止される。
【0043】
本実施形態においては、トップシート1として、その肌対向面が凹凸形状になっているものを用いると、溝Gの表面積を大きくすることができる。このことは、溝Gにおける液の吸収面積の増大及び液の吸収性能の向上に寄与する。その結果、排泄物がおむつ1の横方向へ流出することを一層抑えることができる。更に、吸収性を一層向上させることができる。
【0044】
肌対向面が凹凸形状になっているトップシート1としては、例えば図6に示すように、重ね合わされた状態で部分的に接合された2枚のシート2a,2bからなり、該シートのうちの一方のシート2aが接合部2c以外の部位において凸状に隆起して、該一方のシート2a側に多数の凸部2dが形成されていると共に、他方のシート2bが平坦な状態を保っている、立体賦形された複合シートが挙げられる。そのようなシートとしては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2004−174234号公報や特開2005−111908号公報に記載のものを用いることができる。
【0045】
以上の各実施形態は、本発明を、着用者の身体から排泄された尿等の排泄物を吸収するために用いられる吸収性物品に適用した例である。したがって、この吸収性物品は着用者の股下領域に装着される。これに対して図7に示す実施形態は、本発明を、着用者の足に装着して用いられる吸収性物品に適用した例である。
【0046】
図7に示す吸収性物品20は、吸湿体(図示せず)と、該吸湿体を足に固定させるための足固定手段21とを有している。本実施形態における吸湿体は先に説明した実施形態における吸湿体と同様の構造になっている。吸湿体は、不織布等の通気性のある撥水性シート22からなる袋体22内に封入されている。袋体22は縦長の扁平な形状をしている。袋体22の幅方向に沿う前後の端部には、足固定手段21としての固定用バンドがそれぞれ取り付けられている。固定用バンドは例えば弾性材料から構成することができる。
【0047】
本実施形態の吸収性物品20の使用方法は次のとおりである。まず素足の状態で、又は靴下をはいた状態で、足の土踏まずの部分に吸湿体を当接させる。この状態下に、2つの固定用バンドによって吸収性物品20を足に固定する。素足の場合には、この上に靴下をはいた状態で靴をはき、また靴下をはいている場合にはそのままの状態で靴をはく。これによって、靴内の蒸れを低減させることができる。なお、吸湿体における水溶性防湿体はその溶解後、これを封入する袋体22によって容易に回収される。
【0048】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されるものではない。第1及び第2の実施形態においては、防水透湿体17の一部に透湿性のない防水部材を配してもよい。例えば図8(a)に示すように、防水透湿体17a,17bのうち、吸収体4に対向する側における防水透湿体17bと吸湿剤13との間に、該防水透湿体17bの透湿機能を妨げる別の部材である非透湿部材30を介在させてもよい。非透湿部材30は例えば防水透湿体17bや、吸湿剤13(粒子状以外である場合)に貼り付けることができる。また図8(b)に示すように、防水透湿体17a,17bのうち、吸収体4に対向する側に位置する防水透湿体17bおける内面(つまり吸湿剤13と対向する面)に、該防水透湿体17bの透湿機能を妨げる別の剤31を間欠的に又は全面に塗布してもよい。更に図8(c)に示すように、防水透湿体17のうち、吸収体4に対向する側を、該防水透湿体17とは別の部材32から構成して、該部材32として透湿機能を妨げる部材を用いてもよい。
【0049】
また、第1及び第2の実施形態においては、水溶性透湿体10の一部に、難水溶性部材を配してもよい。例えば図9(a)に示すように、水溶性防湿体10a,10bのうち、吸収体4に対向する側に位置する水溶性防湿体10bと防水透湿体17bとの間に、該水溶性防湿体10bの水溶性の機能を妨げる別の部材40を介在させてもよい。該部材40は例えば水溶性防湿体10bや防水透湿体17bに貼り付けることができる。該部材40としては例えば、ポリエチレンやポリプロピレンからなるフィルムを用いることができる。また、ホットメルト接着剤を該水溶性防湿体10bに塗工してなる膜を、該部材40として用いることもできる。更に、耐水性インキを該水溶性防湿体10bに塗工してなる印刷膜を、該部材40として用いることもできる。
また図9(b)に示すように、水溶性防湿体10a,10bのうち、吸収体4に対向する側に位置する水溶性防湿体10bおける内面(つまり防水透湿体17bと対向する面)に、該水溶性防湿体10bの水溶性の機能を妨げる別の剤41を間欠的に又は全面に塗布してもよい。該剤41としては、例えば、ホットメルト接着剤や、耐水性を有するインキを用いることができる。該剤41及び前記の部材40に用いることのできるホットメルト接着剤の樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、アモルファスポリオレフィン、スチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、耐水性を有する前記のインキの樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、硬化ロジン、塩化ゴム、石油樹脂、ニトロセルロース、セルロース誘導体、エチルセルロース、ポリアミド、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ポリケトン、シュラック、プロテイン、フェノール樹脂、メタクリル酸樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。それらの中でも特にポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂を好適に用いることができる。
更に図9(c)に示すように、水溶性防湿体10のうち、吸収体4に対向する側を、該水溶性防湿体10とは別の部材42から構成して、該部材42として水溶性の機能を妨げる部材を用いてもよい。該部材42としては、図9(a)に示す部材40と同様のものを用いることができる。
【0050】
また、第1及び第2の実施形態は、本発明を、テープファスナーによる締結手段を備えた展開型の使い捨ておむつに適用した例であるが、本発明を他の使い捨ておむつ、例えばパンツ型の使い捨ておむつに適用することもできる。更に、本発明を、使い捨ておむつ以外の他の吸収性物品、例えば生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナ等に適用することも可能である。
【0051】
また、前記の各実施形態は、本発明の吸湿体を吸収性物品に適用した例であったが、該吸湿体をそれ単独で箪笥、下駄箱、押入等に設置して、それらの吸湿に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態としての展開型の使い捨ておむつを、トップシート側から見た一部破断面平面図である。
【図2】図1に示すおむつに用いられる吸湿体を示す斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図1に示すおむつに用いられる吸湿体の別の形態を示す一部破断斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態としての展開型の使い捨ておむつを、トップシート側から見た一部破断面平面図(図1相当図)である。
【図6】図5におけるVI−VI線断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態としての足用吸収性物品を示す斜視図である。
【図8】第1及び第2の実施形態に用いられる吸湿体の他の形態を示す断面図である。
【図9】第1及び第2の実施形態に用いられる吸湿体の更に他の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 トップシート
3 バックシート
4 吸収体
9 吸湿体
10 水溶性防湿体
12 密閉空間
13 吸湿剤
14 周縁接合部
15 横断接合部
17 防水透湿体
30 透湿機能を妨げる別部材(非透湿部材)
31 透湿機能を妨げる剤
32 透湿機能を妨げる別部材
40 水溶性の機能を妨げる別部材
41 水溶性の機能を妨げる剤
42 水溶性の機能を妨げる別部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤が防水透湿体内に水密に封入されており、該防水透湿体が水溶性防湿体内に密封されてなる吸湿体。
【請求項2】
前記防水透湿体の一部に、透湿性のない防水部材が配されている請求項1記載の吸湿体。
【請求項3】
前記水溶性防湿体の一部に、難水溶性部材が配されている請求項1又は2記載の吸湿体。
【請求項4】
表面材、裏面材及び表面材と裏面材との間に配された液保持性の吸収体を備えた吸収性物品において、請求項1記載の吸湿体を該表面材と該吸収体との間に配した吸収性物品。
【請求項5】
前記吸湿体の前記防水透湿体における該吸湿体と前記吸収体との間に、透湿性のない防水部材が配されている請求項4記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸湿体の前記水溶性防湿体における該吸湿体と前記吸収体との間に、難水溶性部材が配されている請求項4又は5記載の吸収性物品。
【請求項7】
吸収性物品の長手方向へ延びる前記吸湿体を複数を備え且つ各吸湿体が互いに離間して並列に配されている請求項4〜6の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記表面材は、その肌対向面側が立体賦形された形状を持つ請求項4〜7の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項9】
請求項1記載の吸湿体と、該吸湿体を足に固定させるための足固定手段とを有する吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−132280(P2008−132280A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322379(P2006−322379)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】