説明

吸着検出方法および吸着検出装置

【課題】 吸着具の流路内を流れる流量に基づいて、ワークの吸着および離脱を確実に検出し得る吸着検出方法および吸着検出装置を提供する。
【解決手段】 吸着具内に形成され負圧源に接続される流路内の流量Lが、吸着具にワークが接触していない空吸い状態のもとで吸着レンジの上限値LON以上となった後に、吸着具の流路内を流れる負圧空気の流量が上限値LON以下となったとき(F点)には、ワークが吸着具に吸着されたと判定し、吸着具を移動してワークをある位置から他の位置に移動する。ワークが所定の位置まで搬送されたら吸着具に対する負圧空気の供給を停止(H点)し、停止した状態のもとで吸着具内に流入する空気の流量が下限値LOFF以下となったときにワークが吸着具から離脱したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジ、多孔質材など吸着前後で圧力差の少ないワークや、ICやLSIなどワークとしての電子部品を真空吸着して搬送する吸着搬送装置に用いられて、これらのワークの吸着および離脱を検出する吸着検出方法および吸着検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路が形成されたICやLSIなどの電子部品は、搬送装置を用いることによって検査ボードや実装基板上の所定の位置に搭載される。このような搬送装置としては、水平方向に移動自在の搬送ヘッドに上下動自在に吸着具を設け、搬送ヘッドを部品供給ステージと検査ボードとの間で移動させ、部品供給ステージと検査ボードの所定の位置において吸着具を上下動させるようにしたものが知られている。吸着具には、負圧源に接続されるとともにワークに接触する接触面において開口する着脱路が形成されており、部品供給ステージにおいては着脱路に負圧を供給するとともに吸着具をワークに接触させてワークを吸着するようにしている。
【0003】
このような吸着搬送装置では、搬送中のワークの脱落を防止するために、ワークが吸着具に確実に吸着されたことを確認した後に搬送動作を行うようにしている。そのため、特許文献1に開示される吸着搬送装置では、着脱路内の圧力を検出する圧力センサを設け、吸着動作における着脱路内の負圧が吸着確認圧力以上増加したときにワークが吸着されたことを検出するようにしている。この従来技術においては吸着確認圧力を一定に設定しているのに対し、特許文献2に開示される吸着搬送装置では、負圧供給時に新たな吸着確認圧力が設定されるようにして吸着判定の検出精度を高めている。
【特許文献1】特開2001−54886号公報
【特許文献2】特開2004−202673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力センサを用いて吸着具に対するワークの吸着とワークの離脱とを検出する場合には、微小なワークを吸着搬送するために着脱路の内径が非常に小さい吸着具を用いると、ワークの吸着前後での差圧が小さくなるので吸着確認圧力も小さく設定する必要があるので、供給圧力が僅かに変動しただけでも吸着確認圧力を越えてしまう可能性があり、ワークの吸着検出精度を低下させてしまう。このため、圧力センサを用いて吸着具に対するワークの吸着と離脱とを検出する場合には、上記特許文献に記載されるように圧力変化の検出精度を高めるようにして対応することになる。
【0005】
一方、吸着具に対してワークが吸着されたときにも吸着具には負圧空気がワークと吸着具の先端面との間から漏入することになり、吸着時と未吸着時とにおける負圧空気の流量には差が発生する。この流量差を流量センサにより検出すると、着脱路の内径が非常に小さい吸着具を用いる場合であっても、圧力差よりも流量差が大きく表れるので、ワークの吸着と離脱の検出を行うことが可能であることが判明した。しかしながら、流量センサを用いて吸着具を流れる負圧空気の流量に基づいてワークの吸着と離脱との検出を行う場合には、流量に閾値を設けて流量が所定値となったときに流量センサからのオン信号によりワークの吸着を検出するようにすると、吸着具への負圧空気の供給を開始した段階でワークを未吸着であるにもかかわらず、流量が閾値を越えるので流量センサはオン信号を出力することになる。したがって、そのオン信号をキャンセルして次に流量センサがオン信号を出力したときにワークの吸着を判定する必要がある。
【0006】
このため、流量センサは微細な流量変化を検出することができるという特性があっても、吸着具に対するワークの吸着と離脱とを検出するために流量センサを使用することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、吸着具の流路内を流れる流量に基づいて、ワークの吸着および離脱を確実に検出し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸着検出方法は、吸着具にワークが吸着されているか否かを検出する吸着検出方法であって、前記吸着具に脱着路を介して負圧源からの負圧空気を、前記吸着具にワークが接触していない空吸い状態のもとで、供給したときにおける前記脱着路内の負圧空気流量が所定の上限値を越えた後、前記負圧空気流量が前記上限値以下となったときに前記吸着具に対するワークの吸着を判定することを特徴とする。
【0009】
本発明の吸着検出方法は、前記吸着具に対する負圧空気の供給を停止した状態または正圧空気を供給した状態のもとで負圧空気流量が所定の下限値以下となったときにワークの前記吸着具からの離脱を判定することを特徴とする。
【0010】
本発明の吸着検出方法は、前記空吸い状態における前記脱着路における空吸い流量値から所定の吸着判定値を差し引いて前記上限値を補正することを特徴とする。
【0011】
本発明の吸着検出方法は、ワークの離脱を検出した後には、補正されるまでの前記上限値を到達不可値に設定することを特徴とする。
【0012】
本発明の吸着検出装置は、吸着具にワークが吸着されているか否かを検出する吸着検出装置であって、前記吸着具と負圧源とを連通させる脱着路内を流れる負圧空気の流量を検出する流量センサと、前記吸着具に前記脱着路を介して前記負圧源からの負圧空気を、前記吸着具にワークが接触していない空吸い状態のもとで、供給したときにおける前記脱着路内の負圧空気流量が所定の上限値を越えた後、前記上限値以下となったときに前記吸着具に対するワークの吸着を判定する吸着検出手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の吸着検出装置は、前記吸着検出手段が、負圧空気流量が所定の下限値以下となったときにワークの前記吸着具からの離脱を判定することを特徴とする。
【0014】
本発明の吸着検出装置は、前記吸着検出手段が、前記空吸い状態における前記脱着路における空吸い流量値から所定の吸着判定値を差し引いて前記上限値を補正することを特徴とする。
【0015】
本発明の吸着検出装置は、前記吸着検出手段が、ワークの離脱を検出した後には、補正されるまでの前記上限値を到達不可値に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸着具に負圧空気を供給した状態のもとで吸着具にワークが吸着したときにワークと吸着具の先端面との間から漏入する空気の流量の上限値を予め設定しておき、吸着具にワークが接触していない空吸い状態のもとで吸着具に負圧空気を供給したときに負圧空気の流量が上記上限値を越えたことを流量センサが検出した後に、負圧空気の流量が上記上限値以下となったときに吸着具にワークが吸着したと判定するようにしたので、流量センサを用いて吸着具に対するワークの吸着を確実に検出することができる。
【0017】
本発明によれば、吸着具に対して負圧空気を供給していた状態から供給を停止した状態に切り換えたときに吸着具内に流入する空気の流量の下限値を予め設定しておき、吸着具に対する負圧空気の供給を停止した状態のもとで負圧空気の流量が前記下限値以下となったことを流量センサが検出したときにワークの吸着具からの離脱を判定するようにしたので、流量センサを用いて搬送終了後の吸着具からのワークの離脱を確実に検出することができる。
【0018】
本発明によれば、ワークの搬送途中でワークが吸着具から脱落したときには、負圧空気の供給時に負圧空気の流量が上限値を越えたことを流量センサによって検出することができるので、搬送中における意図しないワークWの脱落を検出することができる。
【0019】
本発明によれば、空吸い状態における空吸い流量値から所定の吸着判定値を差し引いて上限値を補正するようにしたので、共通の負圧源から複数の分岐流路を介して複数の吸着具に負圧空気を供給するようにし、いずれかの吸着具におけるワークの吸着または離脱によって他の吸着具における流量が影響を受ける場合のように、吸着具に対する流量変化が発生する場合でも、ワークWの吸着を確実に検出することができる。
【0020】
本発明によれば、1つのワークWの搬送を終了した後に次のワークを搬送するまでの上限値を到達不可値に設定するようにしたので、次のワークの吸着を確実に検出することができるとともに、ワークWの搬送後に内径の異なる他の吸着具に交換した場合でも、ワークWの吸着を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1(A)〜(E)は、本発明の一実施の形態である吸着検出装置を有する吸着搬送装置によりワークを吸着搬送する搬送手順を示す説明図であり、図2は図1に示す吸着搬送装置の概略を示すブロック図である。吸着搬送装置11は部品供給ステージ12の上に配置されたICなどの電子部品をワークWとして、これを吸着具13により吸着して実装基板14に搬送するために用いられる。
【0023】
吸着搬送装置11は水平方向に移動自在の搬送ヘッド15を有しており、搬送ヘッド15は電動モータを駆動することにより部品供給ステージ12と実装基板14との間を水平移動するようになっている。搬送ヘッド15には空気圧シリンダ16が固定されており、この空気圧シリンダ16には上下方向に往復動自在にピストンロッド17が装着されている。空気圧シリンダ16には電磁弁18を介して正圧源19が接続されており、電磁弁18に通電がなされると正圧源19から供給される圧縮空気によりピストンロッド17は図中下方側に前進し、電磁弁18への通電が絶たれるとピストンロッド17は後退限位置に保持されるようになっている。
【0024】
ピストンロッド17の先端には内部に空気流路20が形成された吸着具13が取り付けられている。この空気流路20は吸着具13の先端に設けられたワークWとの接触面21に開口しており、その開口部は真空吸引口22となっている。また、空気流路20には真空供給弁23を介して負圧源24に接続されるとともに真空破壊弁25を介して正圧源26に接続された連通流路27が接続されており、空気流路20と連通流路27とにより着脱路28が構成されている。
【0025】
真空供給弁23はソレノイド23aにより流路を開閉する開閉弁であり、ソレノイド23aに通電がなされると着脱路28を負圧源24に連通させる開位置に作動し、ソレノイド23aへの通電が絶たれると着脱路28を閉じる閉位置に作動するようになっている。同様に、真空破壊弁25はソレノイド25aにより流路を開閉する開閉弁であり、ソレノイド25aに通電がなされると着脱路28を正圧源26に連通させる開位置に作動し、ソレノイド25aへの通電が絶たれると着脱路28を閉じる閉位置に作動するようになっている。真空破壊弁25には圧縮空気の流量を調整するための可変しぼり29が設けられている。
【0026】
この吸着搬送装置11には、制御プログラム、演算式およびマップデータなどが格納されるROMや一時的にデータを格納するRAMなどのメモリと各種制御信号を演算する図示しないマイクロプロセッサとを有する装置コントローラ30が設けられている。装置コントローラ30には、電磁弁18や各弁23,25のソレノイド23a,25aおよび搬送ヘッド15を駆動する電動モータが接続されており、これらの部材の動作は装置コントローラ30により制御されている。
【0027】
着脱路28には、外部から着脱路28内に流れ込む単位時間当たりの空気の流量L(l/min)を検出するための流量センサ31が接続されている。この流量センサ31は通信ケーブル32を介してセンサコントローラ33に電気的に接続され、流量センサ31により検出された流量Lに対応する電圧値がセンサコントローラ33に検出信号として伝達されるようになっており、センサコントローラ33は吸着検出手段を構成している。
【0028】
図3は吸着具13にワークが吸着されて搬送される際に流量センサ31により検出される着脱路内の流量変化の一例を示すタイムチャートである。ワークを吸着する際には、まず真空供給弁23を作動させて脱着路28に負圧源24からの負圧空気を供給すると、吸着具13の真空吸引口22から空気流路20内に流入する負圧空気の流量は図3においてA点からB点、C点を経てD点にまで流量が上昇する。D点は吸着具13にワークが吸着されていない空吸い状態のもとで吸着具13内を流れる空吸い流量値Lを示す。G点はワークが吸着具13に吸着された状態のもとでワークと吸着具13の接触面21との間から吸着具13内に流入する所定の空気流量であって、F点は吸着具13にワークが吸着された状態を判定するための上限値LONを示す。C点は上限値LON対して所定のヒステリシス幅Hを加えた値であり、センサコントローラ33の内部のフラグを1にセットするための上限値LONHを示す。B点は後述する吸着レンジの下限値LOFFを示す。I点は下限値LOFFから所定のヒステリシス幅Hを差し引いた下限値LOFFHであり、ワークが吸着具13に吸着された状態のもとで真空供給弁23を閉じて吸着具13に対する負圧供給を停止することにより吸着具13内に流入する所定の空気流量であって、吸着具13からワークが離脱した状態を判定するための下限値LOFFHを示す。なお、ヒステリシス幅Hをゼロにして、上限値LONと上限値LONHとを同一の値とし、下限値LOFFと下限値LOFFHとを同一の値としても良い。
【0029】
センサコントローラ33にはマイクロプロセッサとともにROMやRAMなどのメモリが設けられており、これらのメモリには上限値LONや上限値LONHおよび下限値LOFFや下限値LOFFHが格納されており、流量センサ31からの検出信号に基づいて吸着具13に対するワークの吸着と離脱などを判定する。ただし、装置コントローラ30のメモリ内に上限値LONや上限値LONHおよび下限値LOFFや下限値LOFFHのデータを格納するようにし、流量センサ31からの信号を直接装置コントローラ30に送るようにしても良く、その場合には装置コントローラ30は吸着検出手段を構成することになる。
【0030】
ワークを吸着搬送する際には、まず、空吸い状態のもとで吸着具13に負圧空気を供給すると、図3においてA点から下限値LOFFおよび上限値LONHを通過してD点まで負圧空気の流量が上昇する。上限値LONHを通過すると、センサコントローラ33の内部のフラグが1にセットされることになるが、このフラグF=1を前提として、吸着具13をワークに接近させてワークが吸着具13に接触することによりF点で示すように流量センサ31により負圧流量が上限値LON以下となったときにワークが吸着具13に吸着されたと判定する。吸着が判定された後に搬送ヘッド15を移動させることによりワークは吸着具13により吸着保持された状態で搬送位置まで搬送され、搬送過程では吸着具13内に流入する負圧空気はG点とH点の間の流量となる。
【0031】
搬送が終了して、真空供給弁23により脱着路28に対する負圧空気の供給を停止すると、図3においてH点からJ点に向けて吸着具13内に流入する負圧空気の流量は徐々に低下し、流量センサ31からの検出信号が下限値LOFFHまで低下したときにワークの離脱が判定される。
【0032】
次に、図1を参照して吸着搬送装置11により部品供給ステージ12上のワークWを実装基板14上に搬送するための手順について説明する。まず、図1(A)に示すように、ピストンロッド17が後退移動した状態で搬送ヘッド15が部品供給ステージ12上まで移動する。次いで、空気圧シリンダ16に圧縮空気を供給して、図1(B)に示すようにピストンロッド17を降下させるとともに、真空供給弁23を開いて着脱路28に負圧を供給し、接触面21がワークWに接触したときにワークWが負圧により吸着具13に吸着されるようにする。
【0033】
ワークW吸着後、図1(C)に示すように、空気圧シリンダ16のピストンロッド17が後退移動した後に、搬送ヘッド15が実装基板14に向けて水平移動する。図1(D)に示すように、搬送ヘッド15が実装基板14上のワーク搭載位置まで移動すると、ピストンロッド17が前進移動してワークWが実装基板14上に配置される。ワークWを実装基板14上に配置する際には、真空吸引口22に対する負圧の供給を停止するとともに真空破壊弁25を開いて正圧空気を供給すると、負圧状態が急速に破壊されワークWを確実かつ迅速に離脱させることができる。ワークWの離脱が完了した後、図1(E)に示すように、ピストンロッド17を上昇移動させたところで一連のワークWの搬送手順が終了し、搬送ヘッド15は次のワークWを搬送すべく再び部品供給ステージ12に向けて移動する。
【0034】
図1(A)に示すように、搬送ヘッド15を部品供給ステージ12上まで移動させている間は、真空供給弁23と真空破壊弁25は共に閉じられており、流量LはJ点からA点に示されるようにほぼゼロとなっている。次いで、図1(B)に示すように、ピストンロッド17を降下させるとともに真空供給弁23を開いて着脱路28に負圧を供給すると、着脱路28内には次第に外気が取り込まれて流量Lが空吸い流量値Lまで増加する(A点〜D点間)。
【0035】
空吸い流量値Lを維持した状態(D点〜E点間)で接触面21がワークWに接触すると負圧によりワークWが吸着具13に吸着され、真空吸引口22が塞がれることによって着脱路28内に取り込まれる流量Lが急激に減少するが(E点〜G点間)、ワークWと真空吸引口22との間に形成される隙間から外気が流入するので漏れ分を考慮した流量に相当するG点に達するとそのまま平衡状態に移行する。搬送ヘッド15の移動中(図1(C)参照)においては、流量Lはほぼ一定となっており(G点〜H点間)、搬送ヘッド15が実装基板14の定位置に移動した後(図1(D)参照)、真空供給弁23を閉じることによって、流量Lが減少するとともに(H点〜J点間)、ワークWが吸着具13から離脱する。
【0036】
真空破壊弁25を開いて圧縮空気を供給すると着脱路28内の空気が逆流するので外部から着脱路28内に流れ込む流量Lが急速に減少する(H点〜J点間)。図1(E)に示すように、ワークWの離脱が完了した後、搬送ヘッド15を再び部品供給ステージ12に移動させる間は、真空供給弁23と真空破壊弁25は共に閉じられており、流量Lはほぼゼロとなっている(J点〜A点間)。
【0037】
図3において上限値LONと下限値LOFFの間の流量値は、吸着具13にワークが吸着されている状態の吸着レンジであり、吸着レンジの上限値LONとしてはワークWを吸着しているときの流量G〜Hより大きな値が設定され、最小値LOFFとしては流量G〜Hより小さな値が設定されるが、これらの値は予め実験などに基づいて決定される。
【0038】
センサコントローラ33は、装置コントローラ30からの指令を受けてワークWの吸着および離脱判定を行い、ワークWの吸着を判定したときには吸着検出信号を出力つまりON状態とし、ワークWの離脱を判定したときには吸着検出信号の出力を停止つまりOFF状態とするようになっている。
【0039】
図4はワークの吸着および離脱検出のアルゴリズムを示すフローチャートである。図4に示すルーティンはセンサコントローラ33により所定の間隔で繰り返し実行される。
【0040】
次に、図4に示すルーティンを図3に示すタイムチャートに関連付けて説明すると、まず、ステップS1において、流量センサ31を用いて現在の流量Lを検出するとともに、ステップS2において、吸着検出信号を読み取る。吸着検出信号はセンサコントローラ33から装置コントローラ30へ出力されるとともに、センサコントローラ33の内部信号(フラグ)として用いられる。続く、ステップS3において、吸着検出信号がOFF状態と判定されるとステップS4に進み、ON状態と判定されるとステップS10に進む。たとえば、ワークWの搬送を終えた搬送ヘッド15が実装基板14から部品供給ステージ12に移動する間(J点〜A点間)や負圧の供給開始から吸着直後(A点〜F点間)では吸着検出信号がOFF状態となっており、ステップS4に進むことになる。他方、後述する方法によりワークWの吸着が判定されている間(F点〜I点間)では吸着検出信号がON状態となっており、ステップS10に進むことになる。
【0041】
ステップS4では、現在の流量Lと上限値LONHとの比較が行われ、流量Lが上限値LONH以上と判定されるとステップS5に進んでフラグFが設定される(F=1)。一方、流量Lが上限値LONH未満と判定されるとともに続くステップS6において下限値LOFFH以上と判定されたとき、即ち流量Lが吸着レンジの範囲内に含まれているものと判定されたときにはステップS7に進む。ステップS7ではフラグ設定信号に基づいてフラグFが設定されている(F=1)か否かの判定が行われ、フラグFが設定されている(F=1)と判定された場合にのみ吸着検出信号が出力されるようになっている(ステップS8)。その他、ステップS6において流量Lが下限値LOFFH未満であると判定されたときには、フラグFの設定は解除状態(F=0)のまま保持されることになる(ステップS9)。
【0042】
例えば、空吸い流量値Lに到達しているときなど流量Lが上限値LONH以上となっているとき(C点〜F点間)には、ステップS5に進んでフラグFが設定される(F=1)ことになる。他方、流量LがLOFFH以上LON未満であるとき(B点〜C点間およびF点〜I点間)には、ステップS7に進み、フラグFが設定されているとき(F点〜I点間)のみ吸着検出信号が出力されるようになっている(ステップS8)。その他、搬送ヘッド15が部品供給ステージ12に引き返す間(I点〜A点間)や負圧供給直後(A点〜B点間)においては、流量Lが下限値LOFF未満であることから、フラグFの設定は解除状態(F=0)のまま保持されることになる(ステップS9)。
【0043】
このように、流量LがLOFFH以上LON未満の場合であってもフラグFの設定が解除されている場合(F=0)には吸着検出信号は出力されないので、例えば、流量Lが空吸い流量値Lに至るまでの間(A点〜D点間)に吸着レンジ内を通過する(B点〜C点間)ことがあっても、ワークWの吸着が誤って検出されることがない。一方、流量Lが一旦上限値LONH以上(C点〜F点間)となってフラグFが設定された後、吸着具13にワークWが吸着されることにより流量Lが下がり、流量LがLOFFH以上LON未満となった場合(F点〜I点間)には、ステップS8に進み吸着検出信号が出力されることになる。
【0044】
ステップS10では現在の流量Lと上限値LONとの比較が行われ、流量Lが上限値LON未満と判定されるとともに続くステップS11において流量Lが下限値LOFFH以下と判定されたときにはステップS12に進んで吸着検出信号の出力が停止されるとともに、ステップS13においてフラグFの設定が解除される(F=0)。一方、ステップS10において流量Lが上限値LON未満と判定されステップS11において下限値LOFFH以上と判定されたときには、吸着検出信号をON状態のままフラグFを設定状態のまま維持し終了することになる。
【0045】
例えば、ワークWの吸着搬送中(G点〜H点間)ではステップS11からルーティンを抜けることにより吸着検出信号はON状態のまま維持されるが、ワークWが実装基板14上の定位置に搬送され負圧の供給が停止されると流量Lが下限値LOFFH以下となるので、ステップS11からステップS12に進み、吸着検出信号がOFF状態つまり吸着検出信号の出力が停止されるとともに、フラグFの設定が解除される(ステップS13)。これにより、ワークWの離脱を確実に検出することができるとともに、次のワークWを搬送するために搬送ヘッド15が部品供給ステージ12に移動し負圧の供給を開始して流量Lが上限値LONH以上となるまでの間(J点〜C点間)で、ワークWの吸着が誤って検出されることがない。なお、ステップS14において吸着検出信号の出力が停止された後のフラグFは設定された状態(F=1)で保持される(ステップS15)。
【0046】
他方、ステップS10において、流量Lが上限値LON以上と判定されるとステップS14に進んで吸着検出信号の出力を停止する。たとえば、ワークWの搬送中にワークWが吸着具13から脱落した場合には吸着具13が空吸い状態となって流量Lが吸着レンジの上限値LONを越えてしまうことになるが、この場合にはステップ14に進んで吸着検出信号の出力が停止される。このように、搬送ヘッド15が定位置に到達し負圧の供給が停止される前に、吸着検出信号の出力が停止された場合にはワークWが意図しない位置で脱落したものと判定するようにしているので、定位置におけるワークWの離脱と搬送中におけるワークWの脱落とを判別して検出することができる。
【0047】
図4に示すルーティンはセンサコントローラ33により所定の間隔で繰り返し実行され、図中Aで示すように、エンドに至ると再びスタートから実行される。
【0048】
図5は本発明の他の実施の形態である吸着検出装置が装着された吸着搬送装置を示す説明図である。この吸着搬送装置35は、複数の吸着具13が共通の負圧源24に接続されており、一度の搬送移動で複数のワークWを吸着搬送することができる。なお、図5において、図2に示される部材と共通する部材には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0049】
搬送ヘッド15には、共通の負圧源24に接続される連通流路27aと、その連通流路27aから分岐する4つの空気流路20とが形成された吸着ユニット36が固定されており、空気流路20と連通流路27aとにより着脱路28aが構成されている。この吸着ユニット36には、空気流路20のそれぞれの開口部に対応させて吸着具13が接続されており、更にそれぞれの空気流路20には外部から空気流路20内に流れ込む流量Lを検出する流量センサ31が取り付けられている。また、空気流路20のそれぞれには装置コントローラ30からの制御信号を受信して流路を開閉する開閉弁37が取り付けられており、開閉弁37が開かれた空気流路20内には外気が取り込まれ流量Lが発生するようになっている。このように共通の負圧源24から複数の空気流路20を介して複数の吸着具13に負圧空気を供給するようにすると、いずれかの吸着具13におけるワークの吸着または離脱によって他の吸着具13における流量が影響を受けて吸着具に対する流量変化が発生することがある。そこで、上限値LONを空吸い流量値Lから所定の吸着判定値ΔLを差し引いて上限値LONを補正するようにしている。
【0050】
吸着判定値ΔLとしてはワークWの吸着前後での変化量よりも小さい値が設定されるが、この値も予め実験などに基づいて決定される。吸着搬送装置35の作動時には、吸着判定値ΔLは装置コントローラ30からセンサコントローラ33に送られる信号により自動的に設定するようにしても良く、センサコントローラ33に設けられた図示しないキーやダイヤルを操作することにより設定および変更することもできる。
【0051】
図6は図1に示す搬送手順に従って図5に示す吸着搬送装置によりワークを搬送したときに流量センサにより検出される空気流路内の流量変化を示すタイムチャートの一例である。
【0052】
図5に示す吸着搬送装置35にあっては、搬送移動させたいワークWの数に対応させて開閉弁37を開閉し空気流路20内に負圧を供給する必要があるが、一部の開閉弁37の開閉操作によって外部に連通する流路面積が変化してしまうので、空気流路20のそれぞれに流れ込む流量Lが変化してしまう。例えば、いずれか1つの開閉弁37しか開いていない場合には、図中一点鎖線で示すように、その開閉弁37が開かれている空気流路20内を流れる流量Lは多くなる。これに対し、複数の開閉弁37が開いていると複数の吸着具13を介して着脱路28a内に外気が流入してしまうため、空吸い流量値Lは図中実線で示すD点やE点に相当する流量までしか上昇しない。この場合、ワークWを吸着させることができる流量Lは、一点鎖線で示したように流量が多い場合における上限値LON以上に到達しないので、吸着準備を行うことができない。つまり図4に示すフローチャートにおいてはフラグFを設定することができず、ワークWの吸着を検出することができない。
【0053】
このような場合には、装置コントローラ30からセンサコントローラ33に補正信号つまり基準流量検出信号を送信することによって、新たな上限値LONおよび上限値LONHを設定するようにしている。すなわち、センサコントローラ33が基準流量検出信号を受信すると(X点)、受信時の流量Lを基準流量Lとして検出するとともに、新たな上限値LONとして基準流量Lから吸着判定値ΔLを差し引いた値を設定するようになっており、上限値LONにヒステリシス幅Hを加えて上限値LONHが設定され、更に、基準流量検出信号を受信した時点(X点)でフラグFが設定される(F=1)ようになっている。基準流量検出信号は、ワークWに対して吸着具13が接近したとき、即ちワークWの吸着直前に出力される。
【0054】
このように基準流量検出信号をセンサコントローラ33が受信して新たな吸着レンジの上限値LON、上限値LONHおよびフラグFを設定した後は、フラグFが設定された状態のもとで流量Lが上限値LON以下となったときにワークWの吸着を判定するようになっている。例えば、負圧の供給直後からワークWの吸着直前までの間(A点〜X点間)においては、フラグFの設定が解除されている(F=0)ので、吸着検出信号がON状態となることはない。そして、基準流量検出信号受信後(X点)ではフラグFが設定される(F=1)ことから、流量Lが基準流量Lsから吸着判定値ΔLを引いた値より下がると吸着検出信号が出力される。
【0055】
次いで、フラグFが設定された状態(F=1)で流量Lが下限値LOFFH以下となったときにワークWの離脱が判定されるとともにフラグFの設定が解除され、更に、フラグFの設定が解除されたとき(F=0)には上限値LONHが到達不可値Lに設定されるようになっている。このように、基準流量検出信号を受信するまでは上限値LONHを到達不可値Lに維持することにより、ワークWの搬送終了後に内径の異なる他の吸着具13に交換した場合や他の開閉弁37を開閉操作して流量Lが増加することがあった場合に、ワークWの吸着を誤って検出することがない。また、ワークWの吸着直前に基準流量Lを読み込み、上限値LONを設定するようにしているので、他の開閉弁37の開閉操作の影響を最小にして吸着検出を行うことができる。
【0056】
この到達不可値Lとしては吸着具13の交換により着脱路28の流路面積が変わるなど種々の条件が変化した場合でも着脱路28内の流量Lが到達できない程度の高い値が設定される。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においては、部品供給ステージ12から実装基板14へワークWを搬送する場合に適用されているが、実装基板14に換えて検査ボードにワークWを搬送する場合など他の用途に適用してもよい。実装基板14上のワークW搭載位置において、ワークWをその自重により自然落下させるようにしても良く、この場合には正圧源26、真空破壊弁25、および可変しぼり29の接続を省略することができる。また、空気圧シリンダ16は電動シリンダでも良い。更に、ワークWは電子部品に限らず、スポンジや多孔質材の場合にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(A)〜(E)は、本発明の一実施の形態である吸着検出装置が装着された吸着搬送装置によりワークを吸着搬送する搬送手順を示す説明図ある。
【図2】図1に示す吸着搬送装置の概略を示すブロック図である。
【図3】図1に示す搬送手順を実行したときに流量センサにより検出される着脱路内の流量変化を示すタイムチャートである。
【図4】ワークの吸着検出方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態である吸着検出装置が装着された吸着搬送装置を示す説明図である。
【図6】図1に示す搬送手順に従って図5に示す吸着搬送装置によりワークを搬送したときに流量センサにより検出される空気流路内の流量変化を示すタイムチャートの一例である。
【符号の説明】
【0059】
11 吸着搬送装置
12 部品供給ステージ
13 吸着具
14 実装基板
15 搬送ヘッド
16 空気圧シリンダ
17 ピストンロッド
18 電磁弁
19 正圧源
20 空気流路
21 接触面
22 真空吸引口
23 真空供給弁
23a ソレノイド
24 負圧源
25 真空破壊弁
25a ソレノイド
26 正圧源
27 連通流路
27a 連通流路
28 着脱路
28a 着脱路
29 可変しぼり
30 装置コントローラ
31 流量センサ
32 通信ケーブル
33 センサコントローラ
34 通信ケーブル
35 吸着搬送装置
36 吸着ユニット
37 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着具にワークが吸着されているか否かを検出する吸着検出方法であって、
前記吸着具に脱着路を介して負圧源からの負圧空気を、前記吸着具にワークが接触していない空吸い状態のもとで、供給したときにおける前記脱着路内の負圧空気流量が所定の上限値を越えた後、前記負圧空気流量が前記上限値以下となったときに前記吸着具に対するワークの吸着を判定することを特徴とする吸着検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の吸着検出方法において、前記吸着具に対する負圧空気の供給を停止した状態または正圧空気を供給した状態のもとで負圧空気流量が所定の下限値以下となったときにワークの前記吸着具からの離脱を判定することを特徴とする吸着検出方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の吸着検出方法において、前記空吸い状態における前記脱着路における空吸い流量値から所定の吸着判定値を差し引いて前記上限値を補正することを特徴とする吸着検出方法。
【請求項4】
請求項3記載の吸着検出方法において、ワークの離脱を検出した後には、補正されるまでの前記上限値を到達不可値に設定することを特徴とする吸着検出方法。
【請求項5】
吸着具にワークが吸着されているか否かを検出する吸着検出装置であって、
前記吸着具と負圧源とを連通させる脱着路内を流れる負圧空気の流量を検出する流量センサと、
前記吸着具に前記脱着路を介して前記負圧源からの負圧空気を、前記吸着具にワークが接触していない空吸い状態のもとで、供給したときにおける前記脱着路内の負圧空気流量が所定の上限値を越えた後、前記上限値以下となったときに前記吸着具に対するワークの吸着を判定する吸着検出手段とを有することを特徴とする吸着検出装置。
【請求項6】
請求項5記載の吸着検出装置において、前記吸着検出手段は、負圧空気流量が所定の下限値以下となったときにワークの前記吸着具からの離脱を判定することを特徴とする吸着検出装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の吸着検出装置において、前記吸着検出手段は、前記空吸い状態における前記脱着路における空吸い流量値から所定の吸着判定値を差し引いて前記上限値を補正することを特徴とする吸着検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の吸着検出装置において、前記吸着検出手段は、ワークの離脱を検出した後には、補正されるまでの前記上限値を到達不可値に設定することを特徴とする吸着検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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