説明

吸音パネル

【課題】移動が可能な簡易な構造で、効果的な吸音効果を奏し、かつ装飾性を有する主に室内用の吸音パネルを提供する。
【解決手段】吸音板1と遮音板3とを空気層8を介在させて吸音基材10として、フレーム16で固定する。吸音基材10の外面11に両外面を覆うように繊維性の装飾布13、13を、接触させて張設する。フレーム16に、脚部28付きの縦かまち20、横かまち21を取り付けて、吸音パネル30を構成する。吸音板1は、PET樹脂繊維と塩化ビニル繊維とを含む材料を加熱圧縮して、硬質フェルトから構成する。遮音板3は、表面が平面で空気層を含んだ樹脂材料から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸音パネルであって、主に、室内の打ち合わせスペースなどの床に置いて使用して、簡易に使用する吸音パネルに関する。ただし、用途はこれに限定されない。
【背景技術】
【0002】
道路などで、車両の走行に伴う騒音を遮音、吸音するための防音装置として、遮音板と吸音板を使用した吸音・透孔性防音壁(特許文献1)、薄型防音パネル(特許文献2)が提案されている。また、吸音層、遮音層をすだれ状に吊して、使用する室内用の簡易遮音間仕切りも提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特許3992658号
【特許文献2】特許3833036号
【特許文献3】特開2004−285695
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の技術で、道路などの室外で使用する防音壁(吸音壁)では、強固な構造で、かつ塵や埃、雨水からの影響を考慮した材料・構造としなければならなった。
【0004】
また、すだれ状の簡易遮音間仕切りでは、吸音層と遮音層とに空気層を介在させることができず、有効な吸音効果が得られず、また、すだれ状であり、取り扱いが容易でなく、設置スペースに応じた拡張性にも劣っていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
然るにこの発明は、所定間隔の遮音板と吸音板とから吸音基材を形成し、周囲にフレームを取り付け、外面を覆うように、装飾布を接触させて張ったので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの発明は、以下のように構成したことを特徴とする吸音パネルである。
(1) 遮音板と吸音板とを所定距離を隔てて並列して、吸音基材を形成した。
(2) 前記遮音板と吸音板の間隔を維持できるように、前記吸音基材の周囲にフレームを取り付けた。
(3) 前記吸音基材の両外面を覆うように、夫々繊維製の装飾布を接触させて張った。
【0007】
また、前記において、以下のように構成したことを特徴とする吸音パネルである。
(1) 遮音板を、所定間隔を空けた2枚の表面板の間に空気層を含むように中間部材を介装して一体に形成した。
(2) 吸音板をフェルト成型品から形成した。
【0008】
また、前記において、フレームの下端にキャスターを取り付け、フレームの側面に横方向に他の吸音パネルのフレームと連結するための連結手段を取り付けたことを特徴とする吸音パネルである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、遮音板と吸音板とを所定距離を隔てて並列して吸音基材として、周囲にフレームを取り付けたので、間の空気層を維持して、遮音作用と吸音作用を同時に成し、空気層での減衰作用とあいまって、効果を効率的な吸音間仕切り効果を発揮できる。更に、吸音基材の両外面を覆うように、繊維製の装飾布を接触させて張ったので、装飾布の機能に応じて、粉塵の吸着作用や吸音作用等の各種作用を付加して、様々な機能を付加した吸音間仕切りを構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1) 吸音板1と遮音板3とを厚さLの空気層8を合わせて吸音基材10として、吸音基材10の外周側を木製桟材15、15からなるフレーム16で固定して、吸音板1と遮音板3の間隔Lを保持する。吸音基材10の外面11、11(即ち、吸音板1の外面、遮音板3の外面)に両外面を覆うように繊維性の装飾布13、13を、接触させて張設する。フレーム16の内周側18に吸音基材10が位置し、フレーム16の外周側18aに用途に応じた取付用の材料を取り付けて、この発明の吸音パネル30を構成する(図1、図2(a)(b))。取付用の材料として、例えば縦横のかまち20、21でフレーム16の外周側18aを覆い、縦かまち20、20の下端又は下側の横かまち21に、下端部にキャスター付きの脚部28、28を固定して構成する(図1)。
【0011】
(2) 吸音板1の材質は吸音性能を有すれば任意であるが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂繊維と塩化ビニル繊維とを含む材料を加熱圧縮して、硬質のフェルト状に形成して構成する。また、遮音板3の材質も遮音性能を有すれば任意であるが、例えば、波状の中間材5を表面材4、4で挟んで一体に形成した合成樹脂材料から構成する(図2(c)。また、装飾布13は空気を通して、即ち音が吸音板1、遮音板3の外面に至るような材質で形成し、例えば、カーテン用の生地などで構成する。
【実施例1】
【0012】
図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【0013】
1.吸音パネル30の構成
【0014】
(1)吸音板1
吸音板1としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂繊維と塩化ビニル繊維とを含む材料を圧縮して、フェルト状に形成して構成する。
この材料を、厚さ5mmで形成し、JIS A 1405-1に準拠した垂直入射吸音率測定(23周波数)を下記の条件で行った。
・吸音板の厚さ5mm
・A管:直径91.6mmの円筒型又は円盤型
・B管:直径40.0mmの円筒型又は円盤型
・A管、B管とも背後空気層100mm
・音響管Aの内径91.6mm、音響B管の内径40.0mm
・マイクロフォンの種類:プローブチューブマイクロフォン
・音源の種類:マルチサイン波
試験結果を下記表に示し、グラフ化したものを図4に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
また、吸音板1は、例えば、以下のようにして製造した材料を使用することもできる。天然繊維と化学繊維とからなるリサイクル繊維原料を解繊し、バインダー樹脂として、これにPET樹脂繊維を混合して原反を作り、この原反を50℃〜150℃程度に加熱し冷熱ロールを使用して、面重量0.5〜1.0kg/m、空気流れ抵抗値1000〜4000N・s/mの繊維硬質板を形成して、この繊維硬質板から吸音板1を構成する。
【0017】
(2)遮音板3
また、遮音板3としては、表面材4、4を所定間隔で配置して、表面材4、4間に波状の中間材5を介在させて形成する。このような表面材4、中間材5、表面材4をポリプロピレン製樹脂等で一体に形成して構成する。これにより、表面材4、4間に間隙6、6が存在し空気を含むことができるので、表面材4、4間に多少の弾力性も付与される。
【0018】
(3)装飾布13
装飾布13としては、例えば繊維を編んだ織物製で、表面の繊維間に空気を通す透孔が形成されることが必要である。任意の模様を形成できるので、設置スペースの好みに応じて、適宜選択して使用することもできる。
【0019】
(4) 木製桟材15、15を組んで、縦長長方形枠状のフレーム16を構成する。フレーム16の一面17で、内周側18に吸音板1、他面17aで、内周側18に遮音板3を張り固定する。吸音板1、遮音板3は、フレーム16(木製桟材15)の厚さLに応じた間隙に保って固定される。即ち、吸音板1、遮音板3は、厚さLの空気層8を介在させて配置される。例えば、以下のように構成する。
・吸音板1の厚さ 5mm
・遮音板3の厚さ 5mm
・空気層8の厚さL 22mm
また、吸音板1、遮音板3及び厚さLの空気層8を合わせて、吸音基材10とする。尚、吸音板1、遮音板3、空気層8の厚さは用途などに応じて適宜選択して使用する。
【0020】
(5) 吸音基材10の一方の外面11(吸音板1の外面側)、吸音基材10の他方の外面11a(遮音板3の外面側)に夫々装飾布13を張る。装飾布13は、吸音基材10の外面11、11a(吸音板1、遮音板3の外面)を覆っていれば、接着剤などで固定されていかどうかは必須の条件ではない。両側の装飾布13、13は、同一でも異なるものであっても任意である。
また、各装飾布13、13は、フレーム16の外周側18aからフレームの外周面まで巻き込んであり、両側の装飾布13、13の重ねた端縁部14、14からフレーム16の外周面に、ステープラ(タッカ)34、34を打ち込み固定してある(図2(a)(b))。
【0021】
(6) フレーム16の外周側18aに、縦かまち20、20、横かまち21、21を夫々固定する。両かまち20、21は、アルミ合金製で表面に酸化皮膜処理(アルマイト処理)をしてある材料を使用する。また、断面形状は、2つの溝形材(チャネル材)22、22の閉塞側を帯材23で連結したH字状であり、帯材23は溝部材の一側に寄せて配置され、溝部材22、22の一側端に内側に向けた突起24、24を夫々形成してある。溝形材22、22と帯材23とで、一側(突起側)に第1凹部25(深さが浅い)、他側の第2凹部26(深さが深い)が形成される。
【0022】
両かまち20、21は、一側の第1凹部25を外に向け、他側の第2凹部26を内側に向けて、第2凹部26内に、フレーム16の外周側18bを嵌挿する。また、両かまち20、21の帯材23の透孔からフレームの外周面に向けてビス35、35を打ち込み、両かまち20、21とフレーム16とを固定する。この際、フレーム16の外周面と帯材23の間に間隙が形成されていることが望ましい(図2(a)(b))。
【0023】
(7) 両縦かまち20、20の下端部に、下端にキャスターを有する脚部28を取り付ける。
【0024】
(8) 縦かまち20、20の第1凹部25の中間位置(例えば2箇所)に、横方向の連結用のマグネット32、32を取りつけ、第1凹部25でマグネット(連結手段)32、32間に緩衝用の弾性材料(例えば、塩化ビニル製のパッキン)を取り付ける。また、縦かまち20の上端に、かまちキャップ(例えば、ポリプロピレン製)を取り付けて、端縁を覆う。また、横かまちの上縁、即ち第1凹部(上方に向いている)25に、パッキンを入れて第1凹部25を塞ぐ。
【0025】
(9) 以上のようにして、吸音パネル30を構成する。
【0026】
2.吸音パネル30の使用
【0027】
(1) この吸音パネル30の吸音特性を評価した。吸音パネル30の吸音板1側、遮音板3側から所定の周波数の音源から音を発し、反射音を測定することにより、吸音率を測定した(図5)。とりわけ、吸音板1側で、耳障りな高周波領域で高い吸音効果が得られる。図5において、比較した「リラックスパーテーション」は、金属パイプの枠内にプリーツ状に折った布を張ったパーテーションであり、「コンクリート壁」は通常のコンクリートである。
【0028】
(2) 吸音パネル30は、例えば、縦1800mm、横700mm程度で形成して、例えば、病院の診察室、病室、待合室、談話スペースや、オフィスでの打ち合わせスペースで、隣接テーブルやベッドなどの境界に設置して使用する。また、災害時の体育館などの避難所などで使用することもできる。この吸音パネル30では、天井から床までの高さにしなくても、あるいは比較的薄い厚さで、効果的な吸音効果が得られる。
この際、吸音板1側と遮音板3側で、音響特性が違うので、使用場所に応じて使い分けることができる。例えば、病室に使用する場合、比較的うるさい看者(騒音を発する傾向にある看者)のベッド側に吸音板1を向けて使用すれば効果的である。
また、この際、キャスターを有するので、使用位置を変更でき、例えば保管場所にまとめておき、必要数を取り出してマグネット32、32縦かまち20、20を連結して使用することができる(図1(a)(b)、鎖線図示30)。
また、オフィイスの事務作業スペースと、機械騒音を発するコピー機、プリンター、ファックス、サーバー等とを区切る際に使用すれば、装置機械に吸音板1側を向けて周囲を囲えば、密閉しなくとも高い吸音効果を得られた。また、プレス機等の作業機械の周囲に配置すれば、同様に高い吸音効果を得られた。また、保育園などの遊技スペースに置けば、子供が発する歓声など高い声も有効に吸音できる。
【0029】
(3) また、装飾布13、13は、空気を含んだ繊維を有し、さらに繊維間にも間隙を有するので、空気のフィルターの役割をなし、汚れた場合に、装飾布13、13のみを取り換えて、張り直すことができる。また、使用場所に応じて、好みに合わせて選択した装飾布13を使用することもできる。また、ある程度厚い材料など吸音効果のある材料の装飾布13を選択すれば(特に遮音板3側で)、吸音効果を更に付加できる。
【0030】
3.他の実施例
【0031】
(1) 前記実施例において、吸音基材10は、空気層8を設けた吸音板1と遮音板3を一枚づつ使用したが、
・吸音板1を挟んで、空気層8を設けて両側に遮音板3、3を配置する(図3(a))
・遮音板3を挟んで、空気層8を設けて両側に吸音板1、1を配置する(図3(b))
ように構成することもできる。この場合にも吸音基材10の外側11、11aに装飾布13を夫々配置する(図3)。
【0032】
(2) また、前記実施例において、縦横のかまち20、21の構成は任意であり、床からある程度上方に上げて置くタイプ、天井から吊るタイプ等使用条件により適宜変更して採用できる(図示していない)。
また、縦横のかまち20、21を変えれば、可動間仕切りや移動間仕切りに適用することもできる(図示していない)。また。通常の遮音性能を加味した又は通常の可動間仕切りや移動間仕切りに、開口又は凹部を形成して、開口又は凹部内に吸音パネル30をはめ込んで固定することもできる(図示していない)。
【0033】
(3) また、前記実施例において、吸音板1として、フェルト状の材料を使用したが、アルミ不織布から吸音板1を構成することもできる(図示していない)。
【0034】
(4) また、前記実施例において、装飾布13は吸音基材10の両面に1枚を張ったが、2枚あるいはそれ以上を張ることもできる。この場合、例えば、内側をフィルターや吸音などの機能性の高い材料の布を使用して、表面側(外面側)を装飾性の強い材料から構成することもできる(図示していない)。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施例で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】(a)は図1(b)のA−A線における一部拡大断面図、(b)は同じくB−B線における一部拡大断面図、(c)は遮音板の拡大断面図である。
【図3】(a)(b)は吸音基材の他の実施例を表した断面図である。
【図4】吸音板の効果測定をしたグラフである。
【図5】吸音パネルの効果測定をしたグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1 吸音板
3 遮音板
4 表面板(遮音板)
5 中間材(遮音板)
6 間隙(遮音板)
8 空気層
10 吸音基材
11 吸音基材の一面
11a 吸音基材の他面
13 装飾布
14 装飾布の端縁部
15 木製桟材
16 フレーム
17 フレームの一面
17a フレームの他面
18 フレームの内周側
18a フレームの外周側
20 縦かまち
21 横かまち
22 溝形材(かまち)
23 帯材(かまち)
24 突起(かまち)
25 第1凹部(かまち)
26 第2凹部(かまち)
28 脚部
29 かまちキャップ
30 吸音パネル
32 マグネット(連結手段)
33 弾性部材
34 ステープラ
35 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のように構成したことを特徴とする吸音パネル。
(1) 遮音板と吸音板とを所定距離を隔てて並列して、吸音基材を形成した。
(2) 前記遮音板と吸音板の間隔を維持できるように、前記吸音基材の周囲にフレームを取り付けた。
(3) 前記吸音基材の両外面を覆うように、夫々繊維製の装飾布を接触させて張った。
【請求項2】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1記載の吸音パネル。
(1) 遮音板を、所定間隔を空けた2枚の表面板の間に空気層を含むように中間部材を介装して一体に形成した。
(2) 吸音板をフェルト成型品から形成した。
【請求項3】
フレームの下端にキャスターを取り付け、フレームの側面に横方向に他の吸音パネルのフレームと連結するための連結手段を取り付けた
ことを特徴とする請求項1記載の吸音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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