説明

吸音部材

【課題】スピーカの振動板の外周付近に取り付ける吸音部材の取付作業を容易にする。
【解決手段】吸音部材100は、吸音部材本体部10と、吸音部材凹凸部20とを備える。吸音部材本体部10の形状として、例えば直方体形状が想定される。吸音部材凹凸部20は、吸音部材本体部10における面11において凸部21と凹部22とが面11の端(面14に相当する位置)から端(面15に相当する位置)まで交互に形成された凹凸部分である。凸部21および凹部22の形状として、例えば吸音部材本体部10における面12および13に底面を有し、面11の一辺11aと平行に形成された三角柱形状とすることが想定される。そして、凸部21と凹部22とは、その三角柱の側面を共有した態様で隣接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音の漏れを遮断する吸音部材に関し、特にスピーカに取り付ける作業を容易にする吸音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、自動車のフロントドア900の構造を示す図である。図5(a)は、自動車のフロントドア900の斜視図である。一般的に(図示しない)スピーカ950は、図5(a)に示す自動車のフロントドア900中のスピーカカバー910の位置に内蔵されている。図5(b)は、E―E断面図である。フロントドア900は、自動車のフロントドア900の外側を構成するドア外側部材920と、自動車のフロントドア900の車内側を構成するドア内側部材930と、ドア外側部材920とドア内側部材930との間に設けられたスピーカ設置部材940と、スピーカ950のカバーであるスピーカカバー910とを少なくとも備えた構造になっている。
【0003】
スピーカ950は、スピーカ固定部960とスピーカ設置部材940とをスピーカ取付部材970によって締結することによって固定される。この場合、スピーカ950は、ドア外側部材920とスピーカ設置部材940との間の空間に位置する。振動板980は、スピーカ設置部材940の開口部941付近に位置する。上記フロントドア900の構造の場合、振動板980の振動により発生した音は、図5(b)に示す矢印方向に伝わる。
【0004】
伝わる音のうちドア内側部材930とスピーカ設置部材940との間に伝わる音は、ドア内側部材930とスピーカ設置部材940とを振動させ、その振動は自動車のフロントドア900の各部材を振動させていた。この結果、車内に伝わる音の質を下げていた。
【0005】
上記のような問題点を解決するため、従来、図5(c)に示すような直方体形状の吸音部材990の両端面991および992を合わせることにより円筒形状に形作ってスピーカ950の振動板980を囲むように取り付け、スピーカ950からドア内側部材930とスピーカ設置部材940との間の空間に伝わる音を遮断する技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】「Professional use only 2006〜2007 MOBILE ART」 パイオニアモーバイル北日本株式会社、パイオニアモーバイル西日本株式会社、パイオニアモーバイル九州株式会社、第2頁 SPシール用パッキン材 D68 PTB−839。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、吸音部材990は直方体形状であるため、スピーカ950の振動板980を囲むように吸音部材990を取り付ける作業が困難であった。すなわち、スピーカ950の振動板980を囲むように吸音部材990を取り付ける場合、直方体形状の吸音部材990を円筒形状にすることになるが、円筒形状は内径と外径に差があるため、直方体形状のものを円筒形状にしようとすると、図5(c)の左側に示す吸音部材990の内側側面のように形状に歪みが生じ容易に円筒形状を形成できない。
【0007】
そこで、本発明は、スピーカの振動板の外周付近に取り付ける作業を容易にする吸音部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の吸音部材は、スピーカを構成する振動板の外周付近に沿って上記振動板を囲むようにして取り付ける吸音部材であって、上記振動板の外周付近を囲む上記吸音部材の内側側面の形状を、上記振動板の外周方向に沿って凸部と凹部とが交互に形成された形状としたことを特徴とするものである。これにより、スピーカの振動板の外周付近に取り付ける吸音部材の取付作業を容易にするという作用をもたらす。
【0009】
また、本発明の吸音部材において、上記凸部および凹部は、上記吸音部材の上端面から下端面まで連なる形状をしていることを特徴とするものである。これにより、スピーカの振動板の外周付近に取り付ける吸音部材の取付作業をより容易にするという作用をもたらす。
【0010】
また、本発明の吸音部材において、上記凸部および凹部は、上記吸音部材の上端面から下端面まで連なる三角柱形状または台形柱形状をしていることを特徴とするものである。これにより、吸音部材の製造を容易にするという作用をもたらす。
【0011】
また、本発明の吸音部材において、上記吸音部材は、直方体形状をした吸音部材本体部と、上記吸音部材本体部における所定の面の一辺と同じ長さを有し、かつ上記所定の面の一辺と平行に上記所定の面上に設けられた上記凸部と凹部とを、上記所定の面の一辺と垂直な方向に沿って交互に並べて設けられた吸音部材凹凸部とを具備し、上記吸音部材を上記振動板の外周付近に沿って取り付ける場合に上記吸音部材凹凸部が上記吸音部材の内側側面に位置するように上記吸音部材を取り付けることを特徴とするものである。これにより、吸音部材の製造を容易にするという作用をもたらす。
【0012】
また、本発明の吸音部材において、上記吸音部材は、低反発ウレタンにより形成されたことを特徴とするものである。これにより、吸音部材を取り付ける場所の形状に関わらず、スピーカの振動板の外周付近に取り付ける吸音部材の取付作業をより容易にするという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スピーカの振動板の外周付近に取り付ける吸音部材の取付作業を容易にするという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における吸音部材100の一例を示す図である。なお、本発明における吸音部材とは、音を吸収等することにより音の反射を抑制したり、音の漏れを防いだりする材質の部材を指すものとする。本発明の実施の形態における吸音部材の材質として、例えば低反発ウレタンが想定されるがこれに限るものではない。
【0016】
図1(a)は、本発明の実施の形態における吸音部材100の斜視図である。吸音部材100は、吸音部材本体部10と、吸音部材凹凸部20とを備える。吸音部材本体部10の形状として、例えば直方体形状が想定されるがこれに限るものではない。吸音部材本体部10の形状を直方体形状とすると、例えば低反発ウレタンにより吸音部材100を形成する場合、低反発ウレタンの加工が容易になるため吸音部材100の製造が容易になるという利点がある。
【0017】
吸音部材本体部10における面12には、接着剤が塗られており、その接着剤の粘着性を維持させるために接着剤カバー30が面12に張られている。面12に接着剤を塗る場合、例えば接着剤を外部から面12に吹き付ける方法が想定されるが、これに限るものではなく、吸音部材本体部10における面12に両面テープを張っても良い。
【0018】
なお、面12に両面テープを張る場合、図1(a)に示す接着剤カバー30の形状に両面テープを形成する必要があるが、図1に示す接着剤カバー30の形状に両面テープを形成する作業は手間がかかるため、面12に接着剤を外部から吹き付けた後に接着剤カバー30を被せる方法によることが好ましい。
【0019】
吸音部材凹凸部20は、吸音部材本体部10における面11において凸部21と凹部22とが面11の端(面14に相当する位置)から端(面15に相当する位置)まで交互に形成された凹凸部分である。凸部21および凹部22の形状として、例えば吸音部材本体部10における面12および13に底面を有し、面11の一辺11aと平行に形成された三角柱形状とすることが想定されるが、これに限るものではない。凸部21および凹部22のその他の形状として、面12および13に底面を有し、面11の一辺11aと所定の角度を持たせて形成された三角柱形状等であってもよい。
【0020】
図1(b)は、本発明の実施の形態における吸音部材100を面12方向から見た図である。吸音部材凹凸部20は、端から凸部21a、凹部22a、凸部21b、凹部22b等が順番に並んだ形状になっている。すなわち、吸音部材凹凸部20においては、凸部21と凹部22とが交互に並んだ形状になっている。
【0021】
そして、凸部21bは、凸部21bの三角柱の側面23および24がそれぞれ凹部22aの三角柱の側面25および凹部22bの三角柱の側面26と共有するように、凹部22aおよび22bと隣接している。すなわち、凸部21と凹部22とは、その三角柱の側面を共有するように隣接している。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態における吸音部材100の面14と面15とを合わせて円筒形状に形作った吸音部材100を示す図である。図2(a)は、吸音部材100の面14と面15とを合わせて円筒形状に形作った吸音部材100の斜視図である。面14と面15とを合わせると、吸音部材100は円筒形状となる。
【0023】
そして、吸音部材凹凸部20は、円筒形状の内側側面に位置する。また、吸音部材凹凸部20に設けられた三角柱形状の凸部21および凹部22は、底面を円筒形状の上端面および下端面に有するようになる。また、凸部21および凹部22は、円筒形状の周方向に沿って交互に並べられるようになる。
【0024】
なお、吸音部材100は、図3において説明するようにスピーカの振動板の外周付近に取り付ける部材である。吸音部材100をスピーカの振動板の外周付近に取り付ける際には、吸音部材100の接着剤が塗られた面12をスピーカの振動板の外周付近に貼り付けることになる。この場合、吸音部材100の上端面は面13となり、吸音部材100の下端面は面12となる。
【0025】
図2(b)は、図2(a)の吸音部材100を上方から見た平面図である。吸音部材100における吸音部材凹凸部20を円筒形状の内側側面に位置するようにすると、吸音部材100を円筒形状にすることが容易になる。
【0026】
上述したように、円筒形状の内側側面の径と外側側面の径とは大きさがことなるため、直方体形状のものを用いて円筒形状を形作ることは困難である。円筒形状の内側側面を本発明の実施の形態における吸音部材100のようにすれば、内側側面における材質間に及ぼされる力を逃すことができるため、内側側面に歪みが生じず吸音部材100を円筒形状に形作ることが容易になる。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態における吸音部材100をスピーカ800に取り付けた様子を示す図である。図3(a)は、自動車のフロントドア700を示す図である。本発明の実施の形態における吸音部材100は、例えばフロントドア700に内蔵された(図示しない)スピーカ800に設置するものである。吸音部材100を(図示しない)スピーカ800に設置する場合、スピーカカバー710を外して(図示しない)スピーカ800に取り付ける。すなわち、吸音部材100はスピーカカバー710の内側に位置することになる。
【0028】
図3(b)は、図3(a)のF−F断面図である。フロントドア700は、自動車のフロントドア700の外側を構成するドア外側部材720と、自動車のフロントドア700の車内側を構成するドア内側部材730と、ドア外側部材720とドア内側部材730との間に設けられたスピーカ設置部材740と、スピーカ800のカバーであるスピーカカバー710とを少なくとも備えた構造になっている。
【0029】
スピーカ800は、スピーカ固定部810とスピーカ設置部材740とをスピーカ取付部材750によって締結することによって固定される。この場合、スピーカ800は、ドア外側部材720とスピーカ設置部材740との間の空間に位置する。振動板820は、スピーカ設置部材740の開口部741付近に位置する。
【0030】
本発明の実施の形態における吸音部材100を取り付ける場合、例えば吸音部材100の接着剤が塗られた面12をスピーカ設置部材740中のスピーカ800と隣接する位置に貼り付ける。その結果、吸音部材100は、振動板820の外周付近に沿って取り付けられたことになり、振動板820を囲むことになる。そして、吸音部材100の面12をスピーカ設置部材740中のスピーカ800と隣接する位置に貼り付けると、吸音部材100の面13はドア内側部材730に接した状態になることが望ましい。また、吸音部材100を取り付ける際には図3(b)の左側に示すように吸音部材100の内側側面に吸音部材凹凸部20が位置するように取り付ける。
【0031】
なお、図3(b)に示したスピーカ800の取り付け構造は一例であって、その他のスピーカ800の取り付け構造においても吸音部材100を取り付ける際は、振動板820の外周付近に沿って取り付ける。また、吸音部材100を取り付ける部分の構造が吸音部材100を取り付けにくい構造である場合、吸音部材100の材質として低反発ウレタンを用いれば、吸音部材100を取り付ける場所の形状に関わらず、吸音部材100の取付作業が容易になる。
【0032】
本発明の実施の形態における吸音部材100を振動板820の外周付近に沿って取り付けて振動板820を囲み込むことによって、スピーカ800の振動板820から発せられる音がドア内側部材730とスピーカ設置部材740との間の空間に伝わることを防ぐことができる。これにより、ドア内側部材730やスピーカ設置部材740に余計な振動を伝えることを防ぐことができ、質の良い音を車内に提供することができる。
【0033】
また、直方体形状の吸音部材100の所定の面に凸部21および凹部22が交互に並んだ形状を設けると、吸音部材100の内側側面の形状が歪まなくなるため、吸音部材100を振動板820の外周付近に沿って取り付ける作業が容易になる。また、吸音部材100を取り付けた後の内側側面に凸部21および凹部22が交互に並んだ形状が設けられていると、スピーカ800の振動板820を介して発せられる音の音圧や音域の変化を得やすくなる効果もある。
【0034】
図4は、本発明の別の実施の形態における吸音部材200および300の一例を示す図である。図4(a)は、吸音部材200の斜視図である。吸音部材200は、吸音部材本体部210と、吸音部材凹凸部220とを備える。なお、吸音部材200における吸音部材本体部210は図1で説明した吸音部材100における吸音部材本体部10と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
吸音部材200と図1で説明した吸音部材100との相違点は、吸音部材凹凸部220と吸音部材凹凸部20とにおける凸部および凹部の形状である。吸音部材200における凸部221の形状は、面224および面225に底面を有する台形柱形状になっている。また、凹部222の形状は、面224および面225に底面を有する三角柱形状になっている。
【0036】
図4(b)は、吸音部材300の斜視図である。吸音部材300は、吸音部材本体部310と、吸音部材凹凸部320とを備える。なお、吸音部材300における吸音部材本体部310は図1で説明した吸音部材100における吸音部材本体部10と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
吸音部材300と図1で説明した吸音部材100との相違点は、吸音部材凹凸部320と吸音部材凹凸部20とにおける凸部および凹部の形状である。吸音部材300における凸部321の形状は、面324および面325に底面を有する三角柱形状になっている。また、凹部322の形状は、面324および面325に底面を有する台形柱形状になっている。また、図示していないが、凸部および凹部の形状として、両方を台形柱形状とした吸音部材も考えられる。
【0038】
このように、本発明の実施の形態によれば、吸音部材100乃至300のスピーカ800の振動板820を囲む内側側面の形状を凸部と凹部とが交互に設けられた形状にしたため、吸音部材100乃至300の内側側面の形状が歪まなくなり、その結果、振動板820の外周付近に沿って取り付ける吸音部材100乃至300の取付作業を容易にすることができる。また、吸音部材100乃至300の振動板820を囲む内側側面の形状を凸部と凹部とが交互に設けられた形状にすると、スピーカ800の振動板820を介して発せられる音の音圧や音域の変化を得やすくなる効果もある。
【0039】
本発明の実施の形態では、吸音部材100乃至300において凸部および凹部の形状を、三角柱形状および台形柱形状のものを示したが、これは凸部および凹部の形状を三角柱形状および台形柱形状のものに限定するものではない。
【0040】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の活用例として、例えば自動車のフロントドアに内蔵されたスピーカから発される音による振動をフロントドアの各部材に伝わることを防止する際に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態における吸音部材100の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における吸音部材100の面14と面15とを合わせて円筒形状に形作った吸音部材100を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における吸音部材100をスピーカ800に取り付けた様子を示す図である。
【図4】本発明の別の実施の形態における吸音部材200および300の一例を示す図である。
【図5】自動車のフロントドア900の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10、210、310 吸音部材本体部
20、220、320 吸音部材凹凸部
21、21a、21b、221、321 凸部
22、22a、22b、222、322 凹部
30 接着剤カバー
100、200、300 吸音部材
700 フロントドア
710 スピーカカバー
720 ドア外側部材
730 ドア内側部材
740 スピーカ設置部材
741 開口部
750 スピーカ取付部材
800 スピーカ
810 スピーカ固定部
820 振動板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカを構成する振動板の外周付近に沿って前記振動板を囲むようにして取り付ける吸音部材であって、
前記振動板の外周付近を囲む前記吸音部材の内側側面の形状を、前記振動板の外周方向に沿って凸部と凹部とが交互に形成された形状としたことを特徴とする吸音部材。
【請求項2】
前記凸部および凹部は、前記吸音部材の上端面から下端面まで連なる形状をしていることを特徴とする請求項1記載の吸音部材。
【請求項3】
前記凸部および凹部は、前記吸音部材の上端面から下端面まで連なる三角柱形状または台形柱形状をしていることを特徴とする請求項2記載の吸音部材。
【請求項4】
前記吸音部材は、
直方体形状をした吸音部材本体部と、
前記吸音部材本体部における所定の面の一辺と同じ長さを有し、かつ前記所定の面の一辺と平行に前記所定の面上に設けられた前記凸部と凹部とを、前記所定の面の一辺と垂直な方向に沿って交互に並べて設けられた吸音部材凹凸部と
を具備し、
前記吸音部材を前記振動板の外周付近に沿って取り付ける場合に前記吸音部材凹凸部が前記吸音部材の内側側面に位置するように前記吸音部材を取り付けることを特徴とする請求項2記載の吸音部材。
【請求項5】
前記吸音部材は、低反発ウレタンにより形成されたことを特徴とする請求項1乃至4記載の吸音部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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