説明

吹付け工法及び吹付け施工システム

【課題】施工面に付着せずにはね返ったリバウンド材料を再利用することができるとともに、十分に高い吹付け品質を達成可能な吹付け工法及び吹付け施工システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る吹付け工法は、造粒装置30Aにおいて土質系材料と水とを含有する吹付け材料から団粒物を造粒する造粒工程と、団粒物をホース8内に導入後、圧縮気体の圧力で当該団粒物をホース8内で移送する移送工程と、このホース8の先端に設けられたノズル9から団粒物を含む流体を施工面Fに向けて噴射する噴射工程と、施工面Fに向けて噴射された団粒物のうち、施工面Fに付着せずにはね返ったリバウンド材料を吸引して回収する回収工程と、リバウンド材料と団粒物とを混合する混合工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質系材料と水とを含有する吹付け材料を噴射して当該吹付け材料からなる層を施工面上に形成するための吹付け工法及び吹付け施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタルなどの層を施工面上に形成する工法として、吹付け工法が知られている。吹付け工法は一般に湿式吹付け工法と乾式吹付け工法とに大別される。湿式吹付け工法は、主材料と水とを混和して予め調製した吹付け材料を圧縮空気の圧力でホース先端のノズルから噴射して層を形成する工法である。一方、乾式吹付け工法は、空練りした粉末状の主材料をノズルから噴射する際に、水との混合を行うことで材料に付着性を付与させて層を形成する工法である。
【0003】
湿式吹付け工法は、主材料と水との配合割合の調整が容易であること、材料の付着性が良好であることなどの特長を有する。湿式吹付け工法は、これら特長から高い均一性で材料を吹付け可能であるという利点を有する反面、水を含む材料をホースで移送するため、材料がホースやノズルの内部に付着してしまうという問題がある。
【0004】
これに対し、乾式吹付け工法によれば、材料がホースなどの内部に付着することなく安定した材料供給が可能である。しかしながら、乾式吹付け工法ではノズル付近で加水を行うため、材料中の水分が十分均一に分散せず品質に悪影響を与えるおそれがある。上記のような従来の吹付け工法に係る問題を解消するため、種々の吹付け装置やノズルの開発がこれまでになされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2004−197553号公報
【特許文献2】特開平11−276939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、湿式吹付け工法であってもノズルから噴射した吹付け材料の全量を施工面に付着させることはできず、吹付け材料の一部は施工面ではね返ってその周辺に飛散する。吹付け材料の種類や含水比、吹付け施工の条件などにもよるが、ノズルから噴射した吹付け材料100質量部のうち、40質量部程度が付着せずにはね返ることもある。ノズルから噴射された後、施工面ではね返った吹付け材料(以下、「リバウンド材料」という。)は、一般に、再利用することなく廃棄される。その主因は、リバウンド材料を再利用すると、吹付け品質を十分に確保することが困難であるためである。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、施工面に付着せずにはね返ったリバウンド材料を再利用することができるとともに、十分に高い吹付け品質を達成可能な吹付け工法及び吹付け施工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吹付け工法は、土質系材料と水とを含有する吹付け材料を噴射して当該吹付け材料からなる層を施工面上に形成するためのものであって、吹付け材料から団粒物を造粒する第1の造粒工程と、団粒物をホース内に導入後、圧縮気体の圧力で当該団粒物をホース内で移送する移送工程と、このホースの先端に設けられたノズルから団粒物を含む流体を施工面に向けて噴射する噴射工程と、施工面に向けて噴射された団粒物のうち、施工面に付着せずにはね返ったリバウンド材料を吸引して回収する回収工程と、リバウンド材料と第1の造粒工程前の吹付け材料又は第1の造粒工程後の団粒物とを混合する混合工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
吹付け工法で使用する吹付け材料は、セメント系材料(例えば、コンクリート、モルタル)と土質系材料とに分類される。本発明に係る吹付け工法は土質系材料を使用するものであり、その具体例としては、砂、土、粘土などが挙げられる。土質系材料は、セメント系材料と異なり、ノズルから噴射された後も化学的な性状は変化することがないため、再利用することが可能である。ただし、土質系材料と水とを含有するリバウンド材料は、時間の経過とともに徐々に乾燥するため、高い吹付け品質を達成するにはリバウンド材料を回収後、含水比を調整する必要があると考えられていた。
【0009】
これに対し、本発明に係る吹付け工法においては、吹付け材料からなる団粒物を噴射するため、リバウンド材料には団粒物の形状を維持したものが含まれている。団粒物をなす吹付け材料は、粉末状のものと比較し、水分の蒸発が抑制されるため、リバウンド材料を回収して再利用した場合でも含水比を調整しなくても十分に高い吹付け品質を達成できる。このことから、本発明に係る吹付け工法は、土質系材料を用いて止水層や耐火層などを形成するのに好適である。また、吹付け材料から得られる団粒物を噴射することで、吹付け材料の含水比が比較的高い場合であっても、吹付け材料が高密度に付着してなる層を形成できるという利点もある。
【0010】
本発明に係る吹付け工法は、混合工程前にリバウンド材料から団粒物を造粒する第2の造粒工程を更に備え、混合工程が第1の造粒工程を経て得られた団粒物と、第2の造粒工程を経て得られた団粒物とを混合するものであることが好ましい。回収したリバウンド材料から団粒物を造粒することによって、新規の吹付け材料からなる団粒物の粒子群中にリバウンド材料からなる団粒物を十分均一に分散させやすくなるという効果が得られる。2種類の団粒物を十分に混合することにより、吹付け密度が十分に均一な層を形成できる。なお、「新規の吹付け材料」とは、単に「リバウンド材料」と区別するために用いた用語であり、購入した材料や新たに調製した材料などを意味する。
【0011】
本発明に係る吹付け施工システムは、土質系材料と水とを含有する吹付け材料を噴射して当該吹付け材料からなる層を施工面上に形成するためのものであって、吹付け材料から団粒物を造粒する第1の造粒装置と、ノズルを先端に有するホースと、団粒物をホース内に導入し、圧縮気体の圧力で当該団粒物をノズルに向けて移送するとともに、ノズルから団粒物を含む流体を噴射する噴射装置と、施工面に向けて噴射された団粒物のうち、施工面に付着せずにはね返ったリバウンド材料を吸引して回収する回収手段と、リバウンド材料と第1の造粒装置に導入される前の吹付け材料又は第1の造粒装置から排出される団粒物とを混合する混合手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る吹付け施工システムにおいては、吹付け材料からなる団粒物を噴射するため、リバウンド材料には団粒物の形状を維持したものが含まれている。団粒物をなす吹付け材料は、粉末状のものと比較し、水分の蒸発が抑制されるため、リバウンド材料を回収して再利用しても必ずしも含水比を調整しなくても十分に高い吹付け品質を達成できる。
【0013】
本発明に係る吹付け施工システムは、回収されたリバウンド材料から団粒物を造粒する第2の造粒装置を更に備え、混合手段が第1の造粒装置から排出される団粒物と、第2の造粒装置から排出される団粒物とを混合するものであることが好ましい。回収したリバウンド材料から団粒物を造粒することによって、新規の吹付け材料からなる団粒物の粒子群中にリバウンド材料からなる団粒物を十分均一に分散させやすくなるという効果が得られる。2種類の団粒物を十分に混合することにより、吹付け密度が十分に均一な層を形成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、施工面に付着せずにはね返ったリバウンド材料を再利用することができるとともに、十分に高い吹付け品質を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ここでは、放射性廃棄物処分場の止水層を形成する場合を例に説明する。なお、図面の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0016】
図1は、放射性廃棄物処分場の一例を示す断面図である。同図に示す放射性廃棄物処分場10は、放射性廃棄物を地層処分するためのものである。放射性廃棄物処分場10は、坑道1を有しており、坑道1内に放射性廃棄物2が埋められて廃棄される。坑道1は、例えばコンクリートによって形成されている。坑道1内には放射性廃棄物2を収容するための廃棄体収容部3が設けられている。放射性廃棄物2は、金属製の容器に収容された状態で廃棄体収容部3内に定置される。
【0017】
廃棄体収容部3の周囲にはベントナイトを含有する止水材料からなる止水層5a〜5dが設けられている。止水層5a〜5dの更に外側には、例えばコンクリートからなる充填部7a〜7dが設けられている。廃棄体収容部3の周囲に設けられた止水層5a〜5dは、廃棄体収容部3に対する地下水の流通を防止する。
【0018】
止水材料の調製に使用するベントナイトとして、ベントナイト原鉱石から製造したものが挙げられる。止水材料に含まれる固形分中のベントナイトの含有量は95質量%以上(固形分の質量基準)であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。更には、固形分が実質的にベントナイトのみからなることが最も好ましい。ベントナイトの含有量が95質量%未満であると、95質量%以上の場合と比較して、形成される止水層の止水性能が低くなる傾向にある。ただし、ベントナイトの含有率が低い固形分(ベントナイト含有率:5質量%以上95質量%未満)を使用する場合でも、一定の止水性能が得られるため、対象とする止水層の要求性能に応じてベントナイトの含有率を設定すればよい。止水材料に含まれるベントナイト以外の固形分としては、砂や土などの土質系材料が挙げられる。
【0019】
ベントナイトの含有率が95質量%以上の固形分を使用する場合、止水材料の含水比は十分に締め固められた団粒物を得る観点から、15〜30%の範囲であることが好ましい。当該含水比が15%未満であると、止水材料から団粒物を造粒することが困難となるとともに止水材料の付着性が不十分となり、リバウンド材料の発生量が増大する傾向がある。他方、当該含水比が30%を超えると、ホース8内に止水材料が付着しやすくなるとともに十分に高密度の止水層を形成しにくくなる。止水材料の含水比の下限は、16%であることが好ましく、17%であることがより好ましい。また、止水材料の含水比の上限は、29%であることが好ましく、28%であることがより好ましく、27%であることが更に好ましい。
【0020】
ここで、止水材料の含水比w(%)は、下記式(1)で定義されるものである。式中、WWは止水材料に含まれる水の質量、WSは止水材料に含まれるベントナイトや砂などの固形分の質量をそれぞれ示す。
含水比w(%)=(WW/WS)×100 …(1)
【0021】
次に、止水層の形成に使用する吹付け施工システムについて説明する。図2は、本実施形態で使用する施工システムを示す模式構成図である。同図に示す施工システム100は、止水材料(吹付け材料)を噴射するための圧縮空気を製造するコンプレッサ20と、止水材料の調製を行うとともに当該材料から団粒物を造粒する造粒装置(第1の造粒装置)30Aと、コンプレッサ20からの圧縮空気及び造粒装置30Aからの団粒物がそれぞれ供給され、団粒物を圧縮空気で噴射する噴射装置40と、団粒物を噴射するノズル9を保持する吹付け装置50と、施工面Fに付着せずにはね返ったリバウンド材料を回収して再利用するリサイクル機構60とを備える。
【0022】
コンプレッサ20は、噴射装置40に供給する圧縮空気を製造するためのものである。コンプレッサ20としては空気を十分な圧力に昇圧でき、団粒物を噴射可能なものであればレシプロ式やロータリー式などの従来公知の装置を使用することができる。なお、団粒物を噴射するのに圧縮空気の代わりに、窒素などの不活性ガスを加圧したものを使用してもよい。
【0023】
造粒装置30Aは、図3に示すように、乾燥したベントナイト(土質系材料)と水とを混和して止水材料を調製するホッパー31と、このホッパー31の下部に設けられた一対の歯車32a,32bとを備える。一対の歯車32a,32bは駆動装置(図示せず)によって一定の速度で回転し、一定量の団粒物を連続的に造粒できる構成となっている。
【0024】
なお、造粒装置30Aが備える一対の歯車32a,32bは、着脱自在であり、歯車32a,32bに代えて他の一対の歯車を装着できる。歯車のピッチや歯たけが異なる一対の歯車を適宜選択して装着することにより、団粒物の粒径や締固め度合いを変更することができる。団粒物の粒径は、例えば、使用するノズルの内径に応じて適宜変更すればよい。団粒物の締固め度合いは、例えばホースによる移送距離やノズルの形状に応じて適宜変更すればよい。
【0025】
噴射装置40は、造粒装置30Aからベルトコンベア35を介して供給される団粒物をホース8内に導入するとともに導入された団粒物を噴射するための装置である。図4は噴射装置40の構造を示す模式図である。同図に示すように、噴射装置40は積み重ねられた上段、中段、下段の三つの円盤部材を備える。三つの円盤部材41,42,43は、中段に位置する円盤部材42のみが回転するように互いに連結されている。上段の円盤部材41及び中段の円盤部材42は、2つの貫通孔41a,41b及び2つの貫通孔42a,42bを備える。上段の円盤部材41の貫通孔41aに対して造粒装置30Aからの団粒物が供給されるようになっている。他方、上段の円盤部材41の貫通孔41bにコンプレッサ20からの空気が供給されるようになっている。下段の円盤部材43は1つの貫通孔43bを備えており、ホース8の基端が接続されている。この貫通孔43bは、円盤部材41の貫通孔41bと対向する位置に設けられている。
【0026】
噴射装置40の動作は以下の通りである。造粒装置30Aから供給される団粒物は上段の円盤部材41の貫通孔41aを通じて中段の円盤部材42の一方の貫通孔42a内に収容される。中段の円盤部材42が回転することによって、貫通孔42a内に収容された団粒物は貫通孔41b及び貫通孔43bの位置に向けて移動する。貫通孔42a内の団粒物が貫通孔41b及び貫通孔43bの位置まで移動すると、当該団粒物は貫通孔41bからの圧縮空気によって貫通孔43b側へと噴射され、貫通孔43bを通じてホース8内に導入される。この時、中段の円盤部材42のもう一方の貫通孔42bに再び造粒装置30Aからの団粒物が収容される。
【0027】
噴射装置40に導入された団粒物はホース8の基端側から先端のノズル9にまで移送される。ノズル9としては、従来公知の各種のノズルを使用することができる。ただし、ノズル内部での止水材料の付着を抑制し、閉塞を回避する観点から、団粒物の粒径よりも内径が大きいノズルを使用することが好ましい。
【0028】
吹付け装置50は、ノズル9の長手方向が施工面Fの法線方向と一致するようにノズル9を移動させながら団粒物を施工面Fに向けて噴射するためのものである。ノズル9の長手方向と施工面Fの法線方向と一致させることで、リバウンド材料の発生量を低減できる。
【0029】
図5を参照しながら、吹付け装置50の構成について説明する。図5に示すように、吹付け装置50は、台車52に対して上下方向に移動自在に設けられた高所作業台54と、この高所作業台54の前方且つ下方に設けられ、高所作業台54とともに上下方向に移動するノズル保持部56とを備える。このノズル保持部56は、ノズル9と施工面Fとの距離を保ちながらノズル9を横方向に移動させるスライド機構56aを有する。また、吹付け装置50は、高所作業台54の作業者がノズル9の移動や噴射角度などを制御するコントローラ54a、ノズル保持部56のスライド機構56aにリバウンド材料が付着するのを防止するカバー部材56b、団粒物の吹付けなされる施工面近傍を照らすためのライト56cなどを更に備える。なお、ここではタイヤを有する台車52を例示するが、台車52はタイヤの代わりにキャタピラを有するものであってもよい。
【0030】
ノズル保持部56の上方且つ後方に高所作業台54を設けることで、高所作業台54上の作業者がノズル9や施工面Fの状況を目視で確認しながら、吹付け作業を実施できる。これにより、吹付け量が不十分な箇所やホース8の閉塞などによるトラブルを即座に把握できるなどの利点がある。また、施工面をライト56cで施工面を照らすことで、施工面の状況をより一層確実に把握できる。図5に示すように、カバー部材56bで覆われた位置にライト56cを配置する場合は、カバー部材56bとして透明又は半透明なものを使用すればよい。
【0031】
吹付け装置50においては、スライド機構56aによってノズル9を横方向に移動させるとともに、高所作業台54を上下方向に移動させることによってノズル9を上下方向に移動する。これにより、ノズル9と施工面Fとの距離及び角度を保ちながら、施工面Fに向けて団粒物をまんべんなく吹付けることができる。また、作業者が目視で確認しながら吹付け作業を実施できるので、施工面Fの平坦部分のみならず、凹凸のある部分やコーナー部であっても十分に高い吹付け品質の止水層を形成できる。このような平坦部分以外に適用する場合、スライド機構56aは、ノズル9を横方向に移動させる機能のみならず、ノズル9の噴射方向を適宜変更できる首振り機能を具備することが好ましい。
【0032】
次に、吹付け作業によって生じたリバウンド材料を再利用するためのリサイクル機構60について説明する。本実施形態においては、リサイクル機構60は、リバウンド材料を吸引する吸引管(回収手段)62と、吸引されたリバウンド材料から団粒物を造粒する造粒装置(第2の造粒装置)30Bと、ベルトコンベア35で搬送される新規の止水材料からなる団粒物にリバウンド材料からなる団粒物を供給するベルトコンベア36とを備える。
【0033】
吸引管62は、図1に示すように、先端62aを横方向に振れるように台車52に連結されている。吸引管62は、ベンチュリ効果を利用した粉体搬送装置(図示せず)に接続されており、その吸引力によって先端62aからリバウンド材料を回収できるようになっている。
【0034】
先端62aから取り込まれたリバウンド材料はホース18を通じて造粒装置30Bに導入される。造粒装置30Bとしては、上述の造粒装置30Aと同様の構成のものを使用できる。造粒装置30Bから排出された団粒物はベルトコンベア36を介してベルトコンベア35の上方にまで搬送される。当該団粒物はベルトコンベア35上の新規の止水材料とともに噴射装置40に投入され、ノズル9から施工面Fに向けて噴射される。
【0035】
本実施形態における混合手段は、ベルトコンベア35及びベルトコンベア36によって構成される。すなわち、ベルトコンベア35によって搬送中の新規の止水材料からなる団粒物にベルトコンベア36を介してリバウンド材料からなる団粒物を連続的に添加することで、ベルトコンベア36上で両者が十分に混合される。
【0036】
次に、本実施形態に係る吹付け工法によって止水層5bなどを形成し、放射性廃棄物処分場10を地中に構築する方法について説明する。
【0037】
図1に示す放射性廃棄物処分場10を構築するに際しては、廃棄体収容部3を坑道1内に載置するに先立ち、坑道1の左右側の壁面及び底面に充填部7a,7b,7cを形成する。左右の充填部7a,7bは、坑道1内に廃棄体収容部3を載置したときに廃棄体収容部3の左右側の壁面と充填部7a,7bの壁面との間隔がそれぞれ1m程度となるように設ける。更に、充填部7c上に止水層5aを1m程度の厚さで敷設する。止水層5aの敷設は吹付け工法によって実施してもよいし、振動ローラなどの施工によって実施してよい。
【0038】
上記構成の坑道1内に廃棄体収容部3を載置する。廃棄体収容部3を載置したら、図1に示す施工システム100を使用して施工面Fに向けて止水材料からなる団粒物を吹き付け、充填部7aと廃棄体収容部3との間に止水層5bを形成する。
【0039】
施工面Fに対する吹付け作業の手順は、以下の通りである。まず、吹付け装置50を施工面Fと対向する位置に配置する。そして、吹付け装置50の高所作業台54上に作業者が立ち、ノズル9が施工面Fに対して略垂直の方向に向いているかを目視で確認し、ノズル9の向きがずれていれば、コントローラ54aで向きを調整する。
【0040】
吹付け装置50の準備ができたら、造粒装置30Aのホッパー31内に所定の含水比となるように水を添加したベントナイトを供給し、ベントナイトと水とを混和することによって止水材料を調製する。図3に示す一対の歯車32a,32bの噛合せ部33に止水材料を導入し、機械的に締め固めることによって新規の止水材料からなる団粒物(粒径:20mm程度)を造粒する(第1の造粒工程)。
【0041】
上記のようにして造粒した団粒物を、ベルトコンベア35を介して噴射装置40に導入する。図4に示すように、上段の円盤部材41の貫通孔41a,41bに団粒物及び圧縮空気をそれぞれ供給するとともに、中段の円盤部材42を一定の速度で回転させることで、ホース8内に団粒物を連続的に導入する。そして、ホース8内に導入した団粒物を圧縮空気の圧力でホースの先端の方向に移送し(移送工程)、当該団粒物を圧縮空気とともにノズル9から連続的に噴射する(噴射工程)。
【0042】
吹付け装置50によってノズル9を上下方向及び横方向に移動させ、施工面Fの法線方向と噴射方向とが略一致した状態を維持しながら吹付け作業を行う。この吹付け作業は、作業者がコントローラ54aでノズル9の動きを適宜制御しながら行ってもよく、あるいは、事前に入力されたプログラムに基づいてノズル9を移動させる自動制御で行ってもよい。
【0043】
上記の吹付け作業を行うと同時にリバウンド材料を吸引管62によって回収する(回収工程)。回収したリバウンド材料を造粒装置30Bに投入し、リバウンド材料からなる団粒物を造粒する(第2の造粒工程)。そして、リバウンド材料からなる団粒物をベルトコンベア36によってベルトコンベア35の上方にまで搬送し、ベルトコンベア35で搬送される新規の止水材料からなる団粒物に添加することで、両者を十分に混合する(混合工程)。
【0044】
リバウンド材料からなる団粒物を新規の止水材料からなる団粒物とともに噴射装置40に投入し、再度ノズル9から施工面Fに向けて噴射する。リバウンド材料を再利用しながら吹付け作業を行い、充填部7aと廃棄体収容部3との間に止水材料を充填することによって止水層5bを形成する。
【0045】
上記のようにして止水層5bを形成した後、同様にして、充填部7bと廃棄体収容部3との間に止水層5cを形成する。止水材料の吹き付けが進み、廃棄体収容部3の側面に対する止水層5b,5cが形成されたら、本実施形態に係る吹付け工法によって廃棄体収容部3の上側の面上に止水層5dを形成する。なお、吹付け装置50が進入できないような狭隘な箇所については作業者がノズル9を保持するなどして吹付け作業を行えばよい。
【0046】
その後、図1に示すように、止水層5dと坑道1の上側の壁面との間の空間に充填部7dを形成する。このように廃棄体収容部3の周囲に止水材料からなる止水層5を形成し、廃棄体収容部3に対して地下水が流通することを防止する。
【0047】
本実施形態に係る吹付け工法を実施することにより、以下のような効果が奏される。すなわち、高い止水性能を達成するには止水材料が高密度に締固められた止水層を形成することを要するが、本実施形態の吹付け工法では止水材料を機械的に固めて造粒した団粒物を吹き付けるため、従来の吹付け工法と比較して高密度の止水層を形成することができる。したがって、転圧ローラなどの装置を使用できない場所であっても、放射性廃棄物処分場に求められる程度の高い止水性能を有する止水層を形成することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る吹付け工法によれば、止水材料から団粒物を造粒し、これをホース内に導入して噴射するため、含水比が比較的高い止水材料を使用してもホース8やノズル9の内側に当該材料が付着することを十分に抑制できる。したがって、大規模な止水層を形成するに際し、長時間にわたり連続的に吹付け作業を行う場合に吹付け作業を効率的に実施できる。また、止水材料を団粒物とすることによって粉塵の原因となる細粒分が十分に低減されるため、吹付け作業時における粉塵の飛散を抑制でき、作業環境を改善できるとともに、止水材料のロス率も低減できる。
【0049】
更に、施工面Fに付着せずにはね返ったリバウンド材料を回収して再利用することで、止水材料のロス率をより一層低減できる。本発明者らによる試験によれば、ノズル9から噴射した吹付け材料100質量部のうち、従来、40質量部程度が付着せずにリバウンド材料として回収され、リバウンド材料の全量が廃棄されていたが、回収したリバウンド材料を再利用することで、最終的に回収されるリバウンド材料の量を20質量部程度又はこれよりも更に低減できる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ホース18で移送されたリバウンド材料を造粒装置30Bに導入して団粒物とした状態で新規の止水材料と混合する場合を例示したが、リバウンド材料を団粒物とせずに造粒装置30Aに供給してもよい(図6参照)。この場合、造粒装置30Aのホッパー31内においてリバウンド材料と新規の止水材料とが混合される。
【0051】
図6に示す粉体連続供給装置37は、ホース18を介して移送されたリバウンド材料を造粒装置30Aに供給するためのものである。粉体連続供給装置37としては、例えば、日本プライブリコ株式会社製のプライメイトII(商品名)などを使用でき、移送中のリバウンド材料に水を添加できる機能を具備したものであってもよい。
【0052】
また、リバウンド材料を団粒物とせずにホッパー38に供給し、ホッパー38においてリバウンド材料と新規の止水材料とを十分に混合した後、混合物をベルトコンベア39によって造粒装置30Aに供給してもよい(図7)。かかる構成を採用することにより、リバウンド材料と新規な止水材料とを十分均一に混合できるため、高い吹付け品質をより一層確実に達成できるという利点がある。
【0053】
更に、上記実施形態においては、ベントナイトを含有する止水材料を噴射して止水層を形成する場合を例示したが、固形分として土質系材料(砂、土、粘土など)を含有する吹付け材料を用いて耐火層や断熱層などを形成するのに本発明に係る施工システムを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】放射性廃棄物処分場を示す断面図である。
【図2】本発明に係る吹付け施工システムの第1実施形態を示す模式構成図である。
【図3】本発明に係る吹付け施工システムが備える造粒装置の構造を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る吹付け施工システムが備える噴射装置の構造を示す模式図である。
【図5】本発明に係る吹付け施工システムが備える吹付け装置を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る吹付け施工システムの第2実施形態を示す模式構成図である。
【図7】本発明に係る吹付け施工システムの第3実施形態を示す模式構成図である。
【符号の説明】
【0055】
5a〜5d…止水層、8…ホース、9…ノズル、10…放射性廃棄物処分場、20…コンプレッサ、30A…造粒装置(第1の造粒装置)、30B…造粒装置(第2の造粒装置)、37…粉体連続供給装置、38…ホッパー(混合手段)、40…噴射装置、50…吹付け装置、52…台車、54…高所作業台、54a…コントローラ、56…ノズル保持部、56a…スライド機構、56b…カバー部材、56c…ライト、60…リサイクル機構、62…吸引管(回収手段)、62a…吸引管の先端、100…吹付け施工システム、F…施工面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質系材料と水とを含有する吹付け材料を噴射して当該吹付け材料からなる層を施工面上に形成するための吹付け工法であって、
前記吹付け材料から団粒物を造粒する第1の造粒工程と、
前記団粒物をホース内に導入後、圧縮気体の圧力で当該団粒物を前記ホース内で移送する移送工程と、
前記ホースの先端に設けられたノズルから前記団粒物を含む流体を前記施工面に向けて噴射する噴射工程と、
前記施工面に向けて噴射された前記団粒物のうち、前記施工面に付着せずにはね返ったリバウンド材料を吸引して回収する回収工程と、
前記リバウンド材料と、前記第1の造粒工程前の前記吹付け材料又は前記第1の造粒工程後の前記団粒物とを混合する混合工程と、
を備えることを特徴とする吹付け工法。
【請求項2】
前記混合工程前に前記リバウンド材料から団粒物を造粒する第2の造粒工程を更に備え、前記混合工程が前記第1の造粒工程を経て得られた団粒物と、前記第2の造粒工程を経て得られた団粒物とを混合するものであることを特徴とする、請求項1に記載の吹付け工法。
【請求項3】
土質系材料と水とを含有する吹付け材料を噴射して当該吹付け材料からなる層を施工面上に形成するための吹付け施工システムであって、
前記吹付け材料から団粒物を造粒する第1の造粒装置と、
ノズルを先端に有するホースと、
前記団粒物を前記ホース内に導入し、圧縮気体の圧力で当該団粒物を前記ノズルに向けて移送するとともに、前記ノズルから前記団粒物を含む流体を噴射する噴射装置と、
前記施工面に向けて噴射された前記団粒物のうち、前記施工面に付着せずにはね返ったリバウンド材料を吸引して回収する回収手段と、
前記リバウンド材料と、前記第1の造粒装置に導入される前の前記吹付け材料又は前記第1の造粒装置から排出される前記団粒物とを混合する混合手段と、
を備えることを特徴とする吹付け施工システム。
【請求項4】
回収された前記リバウンド材料から団粒物を造粒する第2の造粒装置を更に備え、前記混合手段が前記第1の造粒装置から排出される団粒物と、前記第2の造粒装置から排出される団粒物とを混合するものであることを特徴とする、請求項3に記載の吹付け施工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−95867(P2010−95867A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265615(P2008−265615)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390001373)日本プライブリコ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】