説明

周期性信号の適応制御方法

【目的】 制御対象システムの伝達特性の変化に対応し、特に位相遅れの大きな変化にも対応して追随し、周期性信号の影響を抑制しすることができる周期性信号の適応制御方法を提供することを目的とする。
【構成】 周期性信号d(n)に同期した1次の基本正弦波およびまたは該基本正弦波のM次(2≦M)までの高調波信号からなる適応信号を逆位相で加える周期性信号の適応制御方法1であって、時刻nにおいて周期性信号d(n)の一次角振動数ωに基づいて適応信号y(n)を発生させる適応信号発生アルゴリズム12と、適応信号y(n)の各次数(次数k=1,・,M)の正弦波の振幅akおよび位相φk 、制御対象システムの伝達特性23の位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットを成分とする適応係数ベクトルW(n)を、周期性信号の影響を除去すべき観測点で検知された誤差信号e(n)に基づき該時刻nの経過毎に更新する適応係数ベクトル更新アルゴリズム11とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、周期性信号の適応制御方法に関し、より詳しくは、除去すべき周期性信号に対し適応的に生成した信号を加えることによって、その周期性信号の特定周波数成分の影響を能動的に除去する適応制御方法に関する。ここで、除去すべき周期性信号は、振動、騒音、電磁波、電気ノイズなどの多岐にわたるので、極めて広い産業分野において本発明の制御方法の適用が可能である。
【0002】
【従来の技術】周期性信号の適応制御方法に関しては、いわゆるアクティブコントロールとして既に幾つもの制御理論とその適用例があり、例えば社団法人「計測自動制御学会」発行の「計測と制御」誌第32巻第4号(平成5年4月)の特集記事にも紹介されている。
【0003】(FX−LMS)従来、各種騒音や振動等に対するアクティブキャンセルシステムとして適応デジタルフィルタ技術が利用されており、特に図21に模式的に示すFiltered−X LMSアルゴリズム(略称FX−LMS)が広く利用されている。また、この変形態様として、図22に模式的に示すように、制御対象の伝達特性Gの推定値を考慮に入れたFX−LMS制御方法もある。
【0004】しかし、FX−LMSにおいては、参照信号を生成する際に畳み込み演算が必要になり、系のインパルス応答を適正に実現するためにはサンプリング周期によって異なる多数のタップ数が必要とされる。したがって処理データが膨大になり、これに伴うフィルタ係数の演算にもタップ数分の畳み込み演算が必要となるため、なお演算量が増加する。特に、複数の入出力信号を扱う場合には、このような演算量の増加が一層顕著となり、演算装置の能力が追いつかなくなるばかりでなく、フィルタ係数の適正な収束特性が得られない恐れもある。
【0005】(SFX)このような不都合を解消しFX−LMSの演算量を削減する目的で、図23に模式的に示す同期式適応アルゴリズム(Synchronized Filterd−X Algorithm、略称SFX)が開発された。SFXは、周期性の信号または擬周期性の信号を対象としており、周期性入力信号の基本周期と同期したインパルス列をプロセッサ内部で生成し、これを仮想入力としてFX−LMSを適用できるようにしたものである。SFXのアルゴリズムは、特願平6−201384号「周期性信号の適応制御方法」明細書の従来の技術の欄に具体的に記載されている。SFXを用いることによって畳み込み演算が不要になり演算量を削減できるので、サンプリング周期をより速く設定できて制御能力の向上を図ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記SFXにおいては、制御対象とする周期性信号の周波数が上昇すると、これに同期してサンプリング周期が短くなるので、インパルス応答のタップ数もこれに伴って次数を高くする必要が生じる。その結果、これらの処理に要する演算時間の増大とサンプリング周期の短縮によって、演算装置の能力が不足したり、その不足を補うために演算精度を低下させざるを得ないなどの問題がなお生じていた。
【0007】(DXHS:先行技術)この問題を解決し、周期性信号のサンプリング周期の短縮に伴う演算精度の低下をもたらすことなく、システムの信号除去特性を向上させることができる周期性信号の適応制御方法を、本件出願人は前述の特願平6−201384号に出願済である。その明細書に記載された先行技術としての制御方法を、ここではDelayed−X Harmonics Synthesizerアルゴリズム(略称DXHS)と呼ぶことにする。その制御方法の概要を、ブロック線図にして図24に模式的に示す。
【0008】DXHSは、例えば自動車のエンジンの回転や、飛行機のプロペラおよびヘリコプタのロータの回転などによって生じる騒音や振動のような、周期性を持った信号の基本波とその高調波を抑制対象とし、その特定周波数成分を除去する適応制御方法である。すなわちDXHSは、正弦波出力信号を含む関数の二乗で表される評価関数を、同出力信号の振幅と位相の関数であるフィルタ係数Wによって偏微分することにより勾配ベクトルを求め、勾配ベクトルに一定数を掛け合わせたものを前記フィルタ係数から減算することにより、時刻の経過毎のフィルタ係数を更新し、更新したフィルタ係数の振幅と位相により、正弦波出力信号の振幅と位相を更新するものである。かかる計算手法によりDXHSでは、従来は出力計算に必要であった畳み込み演算を不要にし、演算量を削減して演算精度の低下を防ぐことができる。
【0009】(従来技術および先行技術の問題点)ところで、前述の従来技術および先行技術の各アルゴリズムでは、通常、システムの遅延要素を含む伝達特性をインパルス応答、または各周波数でのゲインおよび位相遅れといった形式で予め予測し、これらのデータに基づいてフィルタ係数の更新を行っている。
【0010】しかし、現実のシステムに応用すると、システムの伝達特性が初期に測定した状態のままであるとは限らない。例えば自動車のような系を対象とした場合、停車時と走行時とでは伝達特性に違いがあり、また、気温等の気象条件や荷客積載状態によっても左右されるほか、新車の状態と数万キロメートル走行後の状態とでも伝達特性が異なる。このように、実際の制御対象となるシステムでは、常にその伝達特性が変化する可能性を持っている。このような伝達特性の変化、特に位相遅れで表現される遅延特性の変化に対しては、前述の従来技術および先行技術では、対応できる範囲がごく限られたものでしかなかった。
【0011】この問題点は、FX−LMSとDXHSとを例に取り上げて比較実験してみると具体的に理解できる。実験は、図25に示す電気回路を用いて行われた。同回路中の位相変換アンプは、位相遅れすなわち遅延特性の変化を人為的に作りだし、制御対象システムの位相遅れ特性の変化に対する上記両アルゴリズムの追随性を調べるためのものである。
【0012】その結果、FX−LMSについては図26R>6、DXHSについては図27に示す収束特性が得られた。すなわち、FX−LMS・DXHS共に位相変化±60度程度では対応できて応答は収束するが、±90度に達すると追随できなくなり、系の応答は発散してしまう。したがって、従来技術だけではなく先行技術によっても、制御対象となるシステムの伝達特性の位相遅れが予め設定した値から大きく外れると、抑制すべき周期性信号を安定に制御することができなくなるという問題点があった。
【0013】(本発明の課題)そこで本発明は、制御対象となるシステムの伝達特性(各周波数でのゲインおよび位相遅れ)の変化に対応し、特に位相遅れすなわち遅延特性の大きな経時変化に対応して、これに追随し、周期性信号の影響を抑制してシステムの応答を収束させることができる、周期性信号の適応制御方法を提供することを解決すべき課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の周期性信号の適応制御方法は、観測点へ影響を及ぼす周期性信号に対し、該周期性信号に同期した1次の基本正弦波およびまたは該基本正弦波から該基本正弦波のM次(2≦M)までの高調波信号からなる適応信号を逆位相で加えることによって、該周期性信号の特定周波数成分の該観測点への影響を能動的に除去する周期性信号の適応制御方法であって、時刻nにおいて該周期性信号の一次角振動数に基づいて該適応信号y(n)を発生させる適応信号発生アルゴリズムと、該適応信号y(n)の各次数(次数k=1,2,・・・,M)の正弦波の振幅ak および位相φk 、ならびに該適応信号が該観測点に至るまでの制御対象システムの伝達特性のゲインに関する収束安定係数Gk g ハットおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットのうち少なくとも一方からなる収束安定係数Gkハット(1≦k≦M)を成分とする適応係数ベクトルW(n)を、該周期性信号の影響を除去すべき該観測点で検知された誤差信号e(n)に基づき該時刻nの経過毎に更新して、該周期性信号の振幅および位相と該制御対象システムの該伝達特性とに対し該適応係数ベクトルW(n)の各該成分を適応的に調整する適応係数ベクトル更新アルゴリズムとを有し、更新された該適応係数ベクトルの成分の一部である各次数の振幅ak および位相φk をもって、該適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk が更新されることを特徴とする。
【0015】ここで、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムは、前期適応係数ベクトルW(n)で前記誤差信号e(n)の二乗を偏微分することによって勾配ベクトルを求め、該勾配ベクトルの各成分にそれぞれのステップサイズパラメータを掛け合わせたものを、前記適応係数ベクトルW(n)から減算することにより、時刻nの経過毎に更新された該適応係数ベクトルが算出されるアルゴリズムで構成することが可能である。
【0016】あるいは、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムは、次の3種類の形態を取ることも可能である。すなわち、第1の形態は、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前記適応係数ベクトルW(n)は、数4に示すように、前記適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk ならびにゲインに関する収束安定係数Gk g ハットを成分とし、前記誤差信号e(n)に基づき数5に従って更新されるものである。
【0017】
【数4】


【0018】
【数5】


【0019】次に、第2の形態は、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前記適応係数ベクトルW(n)は、数6に示すように、前記適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk ならびに位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットを成分とし、前記誤差信号e(n)に基づき数7に従って更新されるものである。
【0020】
【数6】


【0021】
【数7】


【0022】続いて、第3の形態は、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前記適応係数ベクトルW(n)は、数8に示すように、前記適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak 、位相φk ならびにゲインに関する収束安定係数Gk gハットおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットを成分とし、前記誤差信号e(n)に基づき数9に従って更新されるものである。
【0023】
【数8】


【0024】
【数9】


【0025】さらに、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムは、次の第5および第6の2種類の形態を取ることが可能であり、また望ましい。すなわち、先ず、第5の形態は、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前記適応係数ベクトルW(n)は、数10に示すように、前記適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk ならびに位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットを成分とし、前記誤差信号e(n)に基づき位相調整パラメータψを含む数11に従って更新されるものである。
【0026】
【数10】


【0027】
【数11】


【0028】次に、第6の形態は、上記第5の形態の前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前記位相調整パラメータはψ=π/2と設定された数2と等価な数12に従って更新されるものである。
【0029】
【数12】


【0030】ところで、前述の適応制御方法において、前記適応信号から前記観測点までの伝達特性の各角振動数に対応するゲインおよび位相遅れのうち、前記収束安定係数に対応する少なくとも一方の推定値である等価伝達特性データを有し、前記適応係数ベクトルW(n)の成分である各次数に対応する該収束安定係数は、前記一次角振動数が変動する毎に、初期値を各次数の角振動数に対応する該等価伝達特性データから与えられるアルゴリズム構成も可能である。
【0031】ここで、前記等価伝達特性データは、適応制御開始以前に予め設定されていることも可能である。さらに、前記等価伝達特性データは、前記適応係数ベクトルW(n)の更新された成分中の収束安定係数によって更新されるアルゴリズム構成も可能である。また、前記ステップサイズパラメータは、前記一次角振動数のとる値により数値が変更されるアルゴリズム構成も可能である。
【0032】ところで、ステップサイズパラメータは、適応係数ベクトルW(n)の3M個または4M個の成分それぞれについて、独立に調整または設定することが可能である。また、適応係数ベクトルW(n)の更新周期(通常サンプリング周期と同一)およびステップサイズパラメータは、正の一定数とするのが簡便であるが、システムの状態や時間経過などによって可変としてもよい。さらに、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズムも、システムの状態によって切り換えるアルゴリズム構成とすることも可能である。
【0033】
【作用】本発明の周期性信号の適応制御方法においては、適応係数ベクトルW(n)の成分として、適応信号y(n)の各次数(次数k=1,2,・・・,M)の正弦波の振幅ak および位相φk だけではなく、制御対象システムの伝達特性に対応する収束安定係数Gk ハット(1≦k≦M)をもつことに特徴がある。
【0034】この収束安定係数Gk ハットは、ゲインに関する収束安定係数Gk g ハットおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットの少なくとも一方からなり、適応の過程で制御対象システムの伝達特性の変動分を吸収して、適応を助ける作用がある。すなわち、周期性信号の影響を除去すべき観測点において観測される誤差信号を基にして、前述の更新アルゴリズムにより適応係数ベクトルW(n)を更新していくと、次のような作用が生じる。先ず、誤差信号の二乗を減らす方向に適応信号の各次数の振幅および位相が調整される。それと同時に、制御対象システムの伝達特性の変動分については、収束安定係数が調整されることを通して適応することができる。
【0035】したがって、適応係数ベクトルW(n)の成分に収束安定係数Gk ハットを持つことにより、制御対象システムの伝達特性の変動による誤差信号をも、抑制することができるようになる。ここで、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズムに、勾配ベクトルを導入したものを用いることによって、最小二乗アルゴリズムで適応制御アルゴリズムを構成できる。すなわち、上記数4,6,8に示された適応係数ベクトルW(n)とそのそれぞれに対応する更新アルゴリズム(上記数5,7,9)との組み合わせのうちいずれかを採用して、最小二乗アルゴリズムで適応制御アルゴリズムを構成することができ、抑制すべき周期性信号の影響を抑制しうる。
【0036】そして、上記数10(上記数6と等価)に示された適応係数ベクトルW(n)と、それに対応する更新アルゴリズム(上記数11または数12)とを採用すると、前述の勾配ベクトルを用いたアルゴリズムよりも収束性が良くなる。特に、数12に示された更新アルゴリズムとを用いると、より少ない計算量で済む上に、制御成績も好成績を修めることができる。
【0037】さらに、等価伝達特性データを有し、各振動数に適した制御対象システムの伝達特性の推定値を、適応係数ベクトルW(n)中の収束安定係数Gk に初期値として与えれば、適応係数ベクトルW(n)の収束を速めることができる。また、上記等価伝達特性データが、振動試験や数値解析などにより適応制御開始以前に予め適正な値に設定されていれば、より良い初期値が与えられるので、より収束が速くなる。そして、上記等価伝達特性データが収束安定係数により更新されれば、制御対象システムの伝達特性が大きく変動しても、それに適応した初期値を与える等価伝達特性データを常に用意できるようになる。
【0038】ところで、ステップサイズパラメータや更新周期などのパラメータならびに適応係数ベクトルW(n)およびその更新アルゴリズムのいずれかが、一次角振動数を始めとするシステムの状態により、適宜切替えもしくは調整されれば、周期性信号および制御対象システムの変動に対する適応能力がより改善される。
【0039】
【実施例】以下、本発明の周期性信号の適応制御方法と、それを物理システムへ適用した実施例を4例、図1〜図21に基づき説明する。
〔本発明の周期性信号の適応制御方法に関する説明〕以下、本発明の周期性信号の適応制御方法と、その開発経緯について、図1および図2を参照して説明する。
【0040】(理論展開)先ずここでは、本発明の周期性信号の適応制御方法の開発経緯の前半部にあたる理論展開について、図1を参照して解説する。本発明の周期性信号の適応制御方法は、その影響を除去すべき周期性信号d(n)に対し、この周期性信号に同期した1次の基本正弦波のみからなる適応信号y(n)か、または、該基本正弦波とそれからそのM次(2≦M)までの高調波信号とからなる適応信号y(n)を能動的に発生させるものである。この適応信号y(n)は伝達されて適応伝達信号z(n)となり、これが逆位相で周期性信号d(n)に加えられることによって、周期性信号d(n)の基本波成分または1次からM次までの特定周波数成分をキャンセルするものである。
【0041】したがって、本発明の周期性信号の適応制御方法は、周期性信号d(n)自身を除去するものではなく、同信号の影響を受ける観測点24において、同信号の影響を相殺し、誤差信号e(n)をゼロに収束させることを制御目的とする。なお、「1次の基本正弦波」は「基本波」や「第1調波」あるいは「基本振動」、「○次の高調波」は「第○次高調波」あるいは「○次の高次振動」と呼ばれることもある。
【0042】本発明の制御システムの全体構成は、図1に示すように、相互に信号を交換する適応制御アルゴリズム1と制御対象の物理システム2とからなる。適応制御アルゴリズム1は、後述の誤差信号e(n)によって駆動される適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11と、更新された適応係数ベクトルW(n)の要素に基づき1次〜M次の正弦波を合成して適応信号y(n)を発生させる適応信号発生アルゴリズム12と、適応係数ベクトルW(n)の収束安定係数Gk ハットに初期値を与える制御対象システムGの等価伝達特性データ13(G g,p ハット)とからなる。適応制御アルゴリズム1の各要素の定義と作用については、制御対象の物理システム2について説明したのち、改めて詳細を説明する。(ここで、「ハット」とは、推定値であることを表す表記であり、図中では「G」の上に山形の記号(ルーフともいう)を付けて表記してある。)一方、制御対象の物理システム2は、その影響を除去すべき周期性信号d(n)を発生する周期性信号発生システム22を、未制御の(若しくは制御が十分できない)固有システムとして有している。この周期性信号発生システム22は、周期性信号の発生源である信号発生源20と、その信号を観測点24まで伝達する信号伝達特性21(G’ g,p )とからなる。
【0043】このような周期性信号発生システム22が発生する周期性信号d(n)は、多くの場合、一次の基本波とその高調波が合成されたものとして次の数13に示すように表現することができる。すなわち、一次角振動数(基本角周波数ともいう)をω* 、振幅および位相をa* k ,φ* k とするk次(1≦k≦L)の正弦波を合成した周期性信号として、観測点24で計測される周期性信号d(n)を定式化する。これは、周期関数を分解するフーリエ分解(調和分析)に基づく定式化である。
【0044】
【数13】


【0045】この相殺すべき周期性信号d(n)は、適応制御アルゴリズム1から入力される適応信号y(n)が制御対象システムの伝達特性23(G g,p )を介して伝達された適応伝達信号z(n)と合成されて、観測点24で計測される誤差信号e(n)を生じる。したがって、適切な適応信号y(n)を制御対象の物理システム2に入力し、周期性信号d(n)のうち消去したい特定成分と同振幅逆位相の適応伝達信号z(n)を発生させることができれば、同成分を相殺することができ、誤差信号e(n)を十分低く抑制することが可能になる。
【0046】この目的に沿って、適応制御アルゴリズム1は設計されている。適切な適応信号y(n)を発生させる適応制御アルゴリズム12は、一次角振動数をω、振幅および位相をak ,φk とし、次の数14に示す1次の基本波からM次の高調波までを合成した周期性信号として、適応信号y(n)を発生させる。ただし、M=1として、基本波のみからなる適応信号y(n)である場合もある。
【0047】
【数14】


【0048】ここで、適応信号y(n)の次数Mは、通常、影響を除去すべき周期性信号d(n)の次数L以下の抑制したい高調波の最高次数に設定される。現実の物理システムでは厳密には次数Lは通常無限大と言ってよく、適応信号の次数Mは除去すべき振動モードに合わせて必要最低限に抑え、制御システムのコストを下げる方が賢明である。次数Lの周期性信号d(n)のうち、適切に設定された適応信号y(n)の次数Mを超える高次の信号(スピルオーバともいう)は、多くの場合、振幅が小さくかつ減衰がよいので、実際上問題になることは稀である。
【0049】さて、前述のように次数Mを適正に設定された適応信号y(n)は、一次角振動数ω、並びに各次数の正弦波(角振動数kω)の振幅ak および位相φk (k=1,2,・・・,M)を定めることにより、一義的に定義される。このうち、一次角振動数ωは、制御対象の物理システム2の信号発生源20から直接一次角振動数の真値ω* を計測して求める。この計測は通常精密に測定できる場合が多く、一次角振動数の真値ω* と計測値ωとは工学上等価(ω* =ω)として取り扱うものとする。一次角振動数ωは、信号発生源20からの測定が困難な場合には、代替手段として周期性信号d(n)から求めてもよい。
【0050】一方、適応信号y(n)の第k次の正弦波の振幅ak および位相φk は、ステップ毎に更新される適応係数ベクトルW(n)の要素として求められる。すなわち、適応係数ベクトルW(n)は、次の数15に示すように、各次数の正弦波の振幅ak および位相φk ならびに収束安定係数Gk ハット(1≦k≦M)とを成分として定義される。
【0051】
【数15】


【0052】ここで、適応係数ベクトルW(n)の要素に収束安定係数Gk ハットを導入したことに、本発明の周期性信号の適応制御方法の特徴がある。収束安定係数Gkハットは、ゲインに関する収束安定係数Gk g ハットおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットの少なくとも一方からなる。これら各次数の両収束安定係数Gk g ハットおよびGk p ハットは、制御対象システムの伝達特性23(G g,p )の各周波数kωでのゲインGk g および位相遅れGk p に関するものである。すなわち、上記の数14に示した適応信号y(n)が、制御対象システム23の伝達特性G g,p により伝達された適応伝達信号z(n)は、次の数16に示すように記述される。
【0053】
【数16】


【0054】すると、図1から明らかなように、誤差信号e(n)は、周期性信号d(n)と適応伝達信号z(n)の算術和として定義される。すなわち、e(n)=d(n)+z(n)
である。前記の誤差信号e(n)に基づき、後述の適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11を定めることができる。そして同アルゴリズム11によって、適応係数ベクトルW(n)の成分のうち収束安定係数Gk ハット(成分はGk g ハットおよびGk p ハットのうち少なくとも一方)は、各角振動数kωでの制御対象システムの伝達特性G g,p (ゲインGk g および位相遅れGk p のうち少なくとも一方)の変動に対応する。ここで、Gk g およびGk p は誤差信号e(n)を形成する係数の一部であって、ここにおいてシステムは安定する。
【0055】さて、以上のように定義された誤差信号e(n)の二乗を、適応係数ベクトルW(n)で偏微分すると、次の数17に示すように勾配ベクトル▽(n)が求まる。ただし、ここでは適応係数ベクトルW(n)中の収束安定係数Gk ハットは、ゲインに関する収束安定係数Gk g ハットおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットの両方からなるものとする。
【0056】
【数17】


【0057】この勾配ベクトル▽(n)は、誤差信号e(n)の二乗の期待値を増す方向を示唆している。したがって、勾配ベクトル▽(n)の各成分に適切なステップサイズパラメータを乗じて適応係数ベクトルW(n)から減算すれば、適応係数ベクトルW(n)を適切に収束させることができる。ステップサイズパラメータは、システムの状態に合わせて可変とすることもできるが、以下の実施例では適当な正の一定数としている。
【0058】ここでは、勾配ベクトル▽(n)は、適応係数ベクトルW(n)の4種類の係数ak ,φk ,Gk g ハット,Gk p ハットの各々についての成分を持つので、これに応じてステップサイズパラメータも、μa ,μp ,μGg,μGpの4種類を用意する。ステップサイズパラメータは、次数を示す添字kを付けて各成分ごとに独立に設定しうるが、ここでは簡素化のために上記4種類の各次数共通のステップサイズパラメータを設定した。そして、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズムを、次の数18に示すように設定することができる。
【0059】
【数18】


【0060】上記ステップサイズパラメータが適当な値に設定されれば、上記数18に示された更新アルゴリズム11は収束し、適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk は適正に設定され得る。その結果、適応制御アルゴリズム1は、制御すべき周期性信号d(n)の特定成分と相殺する適応伝達信号z(n)を生じる適応信号y(n)を発生して、観測点24での誤差信号e(n)を小さく抑制することができる。このようにして、本発明の周期性信号の適応制御方法によれば、制御対象の物理システム2の持つ信号伝達特性G g,p ,G' g,p の変化にも適応してシステムを制御することが可能になる。
【0061】ところで、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11を演算するに先立って、等価伝達特性データ13は、前述のように信号発生源20から一次角振動数ωを与えられる。すると、等価伝達特性データ13は、各周波数kωでのゲインに関するGk g ハットおよび位相遅れに関するGk p ハットを、最新のデータに基づいて、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11に初期値として与える。
【0062】ここで、等価伝達特性データ13の最新のデータとは、適応制御アルゴリズム1が初めて経験する角振動数に対しては、予め設定されたデータを指す。そして、2度目以降に経験する角振動数に対しては、適応係数ベクトルW(n)の収束安定係数により更新されたデータを指す。この動作は、一次角振動数ωの変動に対応して新たに行われ得る。
【0063】また、上記の予め設定されたデータとは、本実施例では、適応制御試験に先立ち、入力正弦波の周波数を適用範囲でスウィープさせてゲインと位相遅れを調べる振動試験を行って測定された、制御対象システム23の伝達特性G g,p のデータである。本データを得る手段としては、振動試験のほかに、モーダル解析、あるいは数学モデルによる数値計算などの方法もある。
【0064】したがって、このデータ(Gk g ハットおよびGk p ハット)をもとに、制御対象システム23の伝達特性G g,p の推定値を示すボーデ線図を作成することができる。この等価伝達特性データ13内のデータは、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11によって逐次Gk g ハット,Gk p ハットが更新されているので、これを利用して常にアップデイトされている。このアップデイトは、上記更新の度ごとでなく、必要に応じて行うこともできる。したがって、後述の実施例1および2においては、前述の予め記録されたデータが用いられるのは、初めての角振動数ωでの適応係数ベクトルW(n)の初期値についてだけである。
【0065】(目的の絞り込み)ところで、以上の制御方法は、制御対象システム23の伝達特性G g,p が、ゲインGk g ・位相遅れGk p 共に大きく変動する場合に適応するためのアルゴリズムである。したがって、例えばゲインが大きく変動することは無い場合には、ゲインGk g の推定をやめてアルゴリズムを簡略化し、制御システム(コントローラ)のコスト(計算量)を低減ことができる。
【0066】そこで、後述の各実施例においては、制御対象システム23の伝達特性G g,pにおける位相遅れGk p について、大幅な変化にも適応して周期性信号を制御することを目標にしている。そこで、次の数19に示すように、適応係数ベクトルW(n)に導入する収束安定係数は位相遅れに関するもの(Gk p ハット)のみとして、改めて適応係数ベクトルW(n)を定義する。
【0067】
【数19】


【0068】したがって、誤差信号e(n)の二乗を、新たに定義された適応係数ベクトルW(n)で偏微分すると、次の数20に示すように、新たに3種の成分からなる勾配ベクトル▽(n)が求まる。
【0069】
【数20】


【0070】この勾配ベクトル▽(n)は、適応係数ベクトルW(n)の各次数についての3種類の係数ak ,φk ,Gk p ハット各々についての成分を持つので、ステップサイズパラメータもこれに応じてμa ,μp ,μGpの3種類を用意する。そして、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズムを、次の数21に示すように、新たに定義することができる。
【0071】
【数21】


【0072】上記ステップサイズパラメータが適当な値に設定されれば、前述のアルゴリズムと同様に、上記数21に示す更新アルゴリズム11は収束する。その結果、適応制御アルゴリズム1は、制御対象の物理システム2の持つ信号伝達特性G g,pおよびG' g,p の位相遅れの大きな変化にも適応してシステムを制御することが可能になる。
【0073】なお、この場合、制御対象システムGの等価伝達特性データ13にストアされたデータも、位相遅れに関する推定値Gk p ハットだけで十分であり、ゲインに関する推定値Gk g ハットは不要である。
(試行的研究)さて、以上のようにして、図1に示すシステム構成から周期性信号の適応制御方法は導き出された。
【0074】しかし、上記数21の更新アルゴリズムにおいては、ゲインに関する収束安定係数Gk g ハットが必要とされ、等価伝達特性データ13にGk g ハットもストアされている必要が生じて不都合である。そこで、発明者らはGk g ハットを除外した次の数22に示す更新式を開発し、数値シミュレーションによって機能しうることを確認した。本更新式によれば、等価伝達特性データ13にゲインに関するGk g ハットをストアしておく必要が無くなる。
【0075】
【数22】


【0076】ところが、上記数22の更新式による数値シミュレーションでは、予想された位相遅れの誤差が大きい場合には、収束性が十分に満足すべきものとは言えず、実用に供するには不満が残った。すなわち、後述の実施例1と等価な数学モデルを用い、適応制御システム内に予め用意された位相データGk p ハットと制御対象システムの位相遅れとの差が大きい場合について数値シミュレーションすると、十分な収束性が得られないことが分かった。具体的には、170度(50Hz)異なる場合および190度(60Hz)異なる場合には、収束させることは困難であった。この際用いたステップサイズパラメータは、μa =1.,μp =10.,μGp=1.であった。
【0077】上記の現象について発明者らが考察した結果、上記数22の更新式によって十分な収束性が得られない原因として、同更新式の第2成分と第3成分とがステップサイズパラメータを除いて同一であることが挙げられた。すなわち、これゆえに、位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットの機能が十分に発揮されていないものと推測された。
【0078】そこで、上記第2成分に対し、−π/2の位相差を上記第3成分に持たせた次の数23に示す更新式を試行的に発案した。
【0079】
【数23】


【0080】上記数23の更新式を前述と同様の数値シミュレーションで評価したところ、若干の収束性の向上が見られた。すなわち、位相遅れの差(変動分)が大きい場合について数値シミュレーションすると、170度(50Hz)の場合では0.1秒程の間に誤差信号e(n)を収束させることができた。しかし、190度(60Hz)異なる場合には、収束させることは困難であった。
【0081】そこで、発明者らがさらに試行を重ねた結果、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11について、上記数23に示すものよりも収束性の優れたものを開発することができた。それは、次の数24に示すように、位相遅れに関する第3成分から適応信号y(n)の各次数の振幅ak を除外したものである。
【0082】
【数24】


【0083】上記数24の更新式は、位相遅れに関する第3成分はゲインに関する調整を行うための成分ではなく、制御対象システムの伝達特性における大きな位相遅れに対応することを目的とした成分であるとの考えに立って発案された。この更新式を前述の数値シミュレーションで評価したところ、位相遅れが170度(50Hz)異なる場合および190度(60Hz)異なる場合の両者について、良好な収束性が得られた。誤差信号e(n)の収束に要した時間は、前者で0.2秒、後者で0.05秒程度であった。
【0084】したがって、上記数24の更新式のように、第3成分から振幅ak を除外し、第2成分との位相差を与える手法が有効であることが結論付けられた。ところで、上記数24では上記位相差は−π/2に限定されていたが、必ずしもこれに限定されるべき理由はない。そこで、発明者らは、位相調整パラメータψを導入し、上記位相差を−ψと置きなおして次の数25に示す更新式を開発した。
【0085】
【数25】


【0086】この数25の更新式について、ψ=0,π/6,π/3,・・・,11π/6と30°おきに6通りの数値シミュレーションを行い、収束性を評価した。その際のステップサイズパラメータは、前述の数値シミュレーションの場合と同じであった。その結果、ψの範囲によって、収束する場合と収束しない場合とに分かれた。すなわち、制御対象システムの位相おくれが予期したものと大きく外れた場合にも、図2に示すように、±πの部分を除くある範囲のψの領域で誤差信号e(n)を収束させることができた。この領域は、かなり広いものと考えられる。
【0087】ψが±πの部分(すなわち、πの整数倍のとき)で収束性が悪くなる理由としては、上記数25の更新式の第2成分と第3成分とが同位相または逆位相で完全に同期してしまっていることを、発明者らは疑っている。つまり、もともと第1成分と第2成分の更新だけでは適応しえないほど大きな位相遅れの変動に適応することを目的に、位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットを更新する第3成分は、付加されている。したがって、上記更新式の第2成分と第3成分とが完全に同期してしまっては、第3成分の位相遅れの変動に対する適応能力が損なわれているものと考えられる。
【0088】ただし、ステップサイズパラメータ等の適切な設定により、ψ=0またはψ=±πにおいても応答を収束させることができる可能性はある。しかしながら、収束に要する時間が長く、安定性が微妙であるので、実用化には不向きであると考えられる。
(実施例に適用した更新式)以上のような研究成果が得られたので、発明者らは、上記数25においてψ=π/2に限定した上記数24を、実施例に適用する方針を固めた。数24は、指数関数表現を三角関数表現に改めることによって、次の数26に示される等価な更新式が得られる。
【0089】
【数26】


【0090】本更新式によれば、指数関数表現よりもより少ない演算量で制御することが可能になり、制御装置のコストを低減できるという効果がある。また、これと同様に適応信号y(n)を生成する前述の式14をも、三角関数表現に書き改めて使用することにより、同様の効果をあげることができる。以上詳述したように、本更新式を更新アルゴリズム11に採用することにより、いっそう速やかに周期性信号d(n)の影響を相殺して、誤差信号e(n)を収束させ得るようになった。したがって、以下の本実施例の試験では、前述の式19に示した適応係数ベクトルW(n)および上記数26に示した更新式で、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11は構成されている。
【0091】〔実施例1:電気回路での試験と評価〕以下、本実施例について、図1および図3〜図7を参照して説明する。本発明の実施例1として、本発明の一例である適応制御方法を、ファンクションジェネレータおよび位相変換アンプを含む電気回路に適用して試験し、制御成績を評価した。本実施例の目的は、本発明の周期性信号の適応制御方法が、制御対象システムの伝達特性の一つである位相遅れの大幅な変化に対し、どこまで追随して適応制御しうるかを実証することにある。
【0092】(実施例1の制御方法)本実施例の周期性信号の適応制御方法は、再び図1に示すように、適応制御アルゴリズム1および制御対象の物理システム2からなる制御システム上で実施されている。物理システム2としては、ファンクション・ジェネレータを使用し、基本正弦波のみを周期性信号d(n)として生成させている。
【0093】したがって、適応制御アルゴリズム1も、M=1と設定し基本正弦波にのみ対応させている。ここで、適応制御アルゴリズム1は、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11、適応信号発生アルゴリズム12、および制御対象システムGの等価伝達特性データ13から構成される。適応係数ベクトルW(n)としては、上記数19において、1次の基本正弦波のみ(M=1)の適応信号y(n)の振幅および位相ならびに位相遅れに関する収束安定係数G p ハットの三成分からなるベクトルを使用している。
【0094】適応信号発生アルゴリズム12としては、上記数26において、k=1のみの三成分の更新を行うものを使用している。ここで使用される位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットの初期値は、次に述べる等価伝達特性データ13から与えられている。等価伝達特性データ13には、予備試験により測定された位相遅れデータが、位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットの初期値として、予めストアされている。この内容は、上記更新アルゴリズム11で更新された位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットによって、逐次更新されている。
【0095】以上に説明した適応制御アルゴリズム1によって、実施例1の周期性信号の適応制御試験は実施されている。
(実施例1の試験設備)本実施例では、図3に示す実験用の電気回路を用いて、前述の周期性信号の適応制御方法のアルゴリズムが、制御対象システムの位相遅れの大幅な変化に対し、適応して周期性信号の影響を抑制することができるかを試験した。
【0096】本実施例の試験設備は、同じく図3に示すように、主としてファンクション・ジェネレータ20、位相変換アンプ26、コントローラ1の3要素から構成されている。そして、これら3要素が二つの10kΩ抵抗を含む配線で互いに接続されおり、一部で他の10kΩ抵抗を介してアースされている。ファンクション・ジェネレータ20は、設定された角振動数ω* の周期性信号d(n)を発生させる信号発生源である。位相変換アンプ26は、制御対象システムの位相遅れ要素として作用し、設定された位相遅れを人為的に生じさせる電気回路である。コントローラ1は、入力側にA/D変換器、出力側にD/A変換器を備えたパーソナル・コンピュータとDSPとで構成されている。このコントローラ1は、前述の周期性信号の適応制御方法のアルゴリズム1をプログラムとして内蔵し、実時間処理する能力がある。以上が回路構成要素の概略である。
【0097】次に、回路を流れる電気信号(電圧)に注目すると、まずファンクション・ジェネレータ20からは、前述のように周期性信号d(n)が供給される。一方、コントローラ1は、制御出力である適応信号y(n)を上記アルゴリズムに従って供給する。この適応信号y(n)は、D/A変換器で電圧に変換されて、システム出力である適応伝達信号z(n)として出力される。これら周期性信号d(n)および適応伝達信号z(n)の両者は、それぞれ10kΩの電気抵抗を介して合成され、制御対象信号s(n)になる。制御対象信号s(n)は、コントローラ1によって抑制されるべき信号であり、制御目標はs(n)=0、すなわち誤差信号e(n)=0である。
【0098】この制御対象信号s(n)は、位相変換アンプ26によって任意の位相遅れまたは位相進みを与えられ、誤差信号e(n)としてA/D変換(サンプリング)され、コントローラ1に入力される。同時に、コントローラ1は周期性信号d(n)そのものをもサンプリングして取り込んでいるが、これは一次角振動数ω*の計測値ωを算出するためにだけ使用される。この計測は極めて高精度で行われるので、工学上ω=ω* と置いて差し支えない。
【0099】さて、以上のように構成された電気回路の信号回路は、図4に示すシステムブロック線図で表される。同図のシステムが図1のシステムと異なる点は、制御対象の物理システム2の構成にある。すなわち、図1のシステムでは、信号発生源20から出た信号および適応信号y(n)は、それぞれ信号伝達特性21(G’ g,p )および制御対象システム23の伝達特性G g,p を経て、周期性信号d(n)および適応伝達信号z(n)になる。そののち、合成されて誤差信号e(n)=d(n)+z(n)を形成し、適応制御アルゴリズム1に読み込まれる。一方、図4のシステムでは、ファンクション・ジェネレータである信号発生源20からの周期性信号d(n)と、適応制御アルゴリズム1から出力される適応信号y(n)とが、いきなり合成される。合成された合成信号s(n)=d(n)+y(n)は、位相変換アンプの伝達特性G g,p を経たのち、誤差信号e(n)として適応制御アルゴリズム1に読み込まれる。
【0100】したがって、図1と図4とでは、周期性信号d(n)の定義に若干の違いがある。また、図4では図1の適応伝達信号z(n)にあたるものがなく、代わりに新たに合成信号s(n)が導入されている。しかしながら、図1において信号伝達特性21(G’ g,p )を制御対象システム23の伝達特性G g,p と等価であると置くと、合成された誤差信号e(n)は、図4の誤差信号e(n)と全く等価である。したがって、図3の回路図において位相変換アンプ26が果たす役割は、図4R>4のG g,p であるとともに、図1においてG’ g,p =G g,p と置いた両伝達特性の役割に他ならない。
【0101】つまり、図3の回路に組み込まれた位相変換アンプ26により、図1の信号伝達特性21(G’ g,p )と制御対象システム23の伝達特性G g,p とが等価に置かれ、かつ、これらの各角振動数に対する位相遅れは任意に設定され得る。このように、図3に示した本実施例の試験回路は、前述の本発明の制御方法を実施するためのシステム構成を持っているものである。
【0102】(実施例1の試験結果)本実施例の試験を行うに先立って、等価伝達特性13に設定された位相遅れGk P ハットの初期値は、前述のように予め測定された制御対象の物理システム2の伝達特性に基づいて設定されている。その位相遅れは、A/D変換器およびD/A変換器の特性によって生じるもので、制御すべき周期性信号d(n)の周波数からみてほとんど影響が無いほどの、小さな値であった。
【0103】図3の回路図中のファンクション・ジェネレータ20からは、基本波のみ、すなわち1次の正弦波のみを、30Hzおよび90Hzの2ケースで発振させた。(したがって、周期性信号d(n)の次数Lおよび適応信号y(n)の次数Mは、ともに1である。)そして、それぞれのケースについて、位相変換アンプ26において、ゲインは一定とし、位相遅れは90度、180度、120度、270度の4通りに設定して試験を行った。
【0104】その際、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11内の上記数26に設定されたステップサイズパラメータは、それぞれ正の数値であって、μa =0.05 μp =10 μGp=0.05であり、コントローラ1のサンプリング周波数は2500Hz(更新周期T=1/2500〔s〕)に設定されている。
【0105】その結果、図5(30Hz)および図6(90Hz)に示す時間応答を得た。図中、エラーレベルとは誤差信号e(n)の振幅(電圧)を指し、出力レベルとは適応信号y(n)の振幅(電圧)を指す。両図とも横軸は3.2秒までの経過時間を示し、しかも制御開始時刻は0秒をわずかに過ぎてからであったので、収束はいずれも相当速いものとなっている。
【0106】したがって、試験結果は、周波数2通り×位相遅れ4通りで計8ケースの全てについて誤差信号e(n)の応答は収束し、収束に要する時間は目測で0.5秒〜3秒程度であった。一方、適応信号y(n)の出力レベルは、周期性信号d(n)と同期して同振幅逆位相に適応しているから、当然周期性信号d(n)と同じレベルの正弦波振動で安定した。
【0107】この試験結果から、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、制御対象システムの伝達特性G g,p の位相遅れの変動が270度に達しても、周期性信号の影響を相殺して抑制できることが明らかになった。ところで、周期性信号の定義から考えて、360度の位相遅れは位相遅れゼロと等価である。したがって、180度(=−180度)および270度(=−90度)の位相遅れに適応し得たということは、360度までのほぼ全域で適応制御に成功したことである。したがってこれは、本実施例の適応制御方法が、恐らく如何に大きな位相遅れに対しても適応しうる能力を持っていることを示唆する試験結果である。
【0108】さて次に、位相変換アンプ26での位相遅れを90度に設定し、他の条件は全て前述の試験と同一で、誤差信号e(n)および適応信号y(n)に関する周波数スペクトル分析を行った。分析に供したデータは、制御システム(適応制御アルゴリズム1)を起動した場合もそうでない場合も、定常状態に落ちついてからのデータを使い、過渡応答のデータは用いていない。
【0109】先ず、周期性信号d(n)の周波数を60Hzにして、制御システム1を起動しなかった場合のパワースペクトルを図7(a)に、起動してある場合のパワースペクトルを図7(b)に示す。図7(a)では、誤差信号e(n)に60Hzでピークが立っているが、図7(b)では、誤差信号e(n)のピークは消えて、代わりに適応信号y(n)の出力に60Hzでピークが立っている。図7(a)と図7(b)とでは誤差信号e(n)の60Hz成分に約40dBの差があり、本実施例の適応制御方法により振幅にして二桁分、すなわち約1/100に誤差信号e(n)の影響を抑制しえたことがわかる。
【0110】次に、周期性信号d(n)の周波数を倍の120Hzに変更して、同様に図8(a)および図8(b)を得た。制御しなかった図8(a)では、誤差信号e(n)に120Hzでピークが立っているが、制御をかけた図8(b)では、誤差信号e(n)のピークは消えて、代わりに適応信号y(n)の出力にピークが立っている。制御なしの図8(a)と制御ありの図8(b)とでは、誤差信号e(n)の120Hz成分に、約40dBの差があり、前述の60Hzの場合と同様に、本実施例の適応制御方法により周期性信号d(n)の影響をよく抑制し得たことがわかる。
【0111】以上の試験結果をもって、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、予想よりも90度を越え270度にも達する制御対象システム2の大きな位相遅れの変化に対しても、発散すること無く、よく適応して周期性信号の影響を抑制し得ることを確認し得た。また、抑制能力は40dBを発揮し、他の周波数の微小なノイズ成分に紛れて分からなくなるまで、周期性信号の影響を抑制し得ることが明らかになった。
【0112】〔実施例2:実車装備での試験と評価〕本発明の実施例2として、自動車の運転席下の車両フロアにおけるエンジンによる振動を抑制する実車試験を実施した。本実施例の目的は、実施例1で基本振動のみの理想的な周期性信号に適用して好成績を修めた適応制御アルゴリズムを、現実の制御対象に適用して、その有効性を確認することである。すなわち、現実の物理システムの多くと同様に殆ど無限大の次数をもつ周期性信号に対しても有効であることと、さらに一次角振動数が遷移していく過渡状態の周期性信号に対しても有効であることの2点を確認することを目的として、2種類の試験を行った。
【0113】以下、本実施例について、図9〜図13を参照して説明する。
(実施例2の制御方法)本実施例の周期性信号の適応制御方法のシステム全体像は、図9に示すように、実施例1と同様、適応制御アルゴリズム1および制御対象の物理システム2からなる。
【0114】先ず、適応制御アルゴリズム1は、実施例1と同じものである。これは本実施例の目的が、実施例1で制御対象システムの位相遅れの大きな変動に適応しえた適応制御アルゴリズム1が、高次(次数L≒∞)の高調波をもち一次角振動数ω* が変動する実車のエンジン(直列4気筒)による振動を、よく抑制しうるかをみるためのものだからである。ここで、実施例1と同じく適応信号y(n)の次数Mは1であるが、これは上記エンジンの主な振動成分である2次成分のみを制御すべき周期性信号としているためである。
【0115】次に、制御対象の物理システム2は、システムブロック線図上大筋において図1に示した実施例1のものと同様であるが、次のいくつかの点で違いがある。第1に、信号発生源20がエンジンであって、その振動は、高次の高調波をもち回転数の変化に伴って一次角振動数ω* が変動する。したがって、エンジンマウントおよび車体等が形成する信号伝達特性21を経た周期性信号d(n)は、その一次角振動数ω* 、基本波と高調波の振幅ak * および位相φk * が遷移していくものとして捉える必要がある。
【0116】第2に、信号伝達特性21(G’ g,p )と制御対象システムの伝達特性23(G g,p )とは、同一ではない。すなわち、信号伝達特性21は、エンジンである信号発生源20から発せられた振動が、エンジンマウントおよび車体等を経て、観測点24に至る伝達特性である。一方、制御対象システムの伝達特性23は、電気信号として適応信号発生アルゴリズム12から入力される適応信号y(n)が、エンジンマウントに内蔵されたアクチュエータを駆動してエンジンおよび車体を加振し、その振動が車体を伝搬して観測点24に至るまでの伝達特性である。
【0117】第3に、周期性信号d(n)の一次角振動数ω* の測定が、実施例1の様に周期性信号d(n)を観測することによって行われず、信号発生源20であるエンジンに設けられた回転センサからのパルス入力のパルス周期を観測することによって行われている。第4に、観測点24に、ピックアップセンサが設けられているので、図9中で右に抜ける出力である誤差信号e(n)は機械的な振動であるが、適応制御アルゴリズム1に入力される誤差信号e(n)は電気信号である。
【0118】以上のような実施例1との相違点があるが、制御対象の物理システム2に、システム(数学モデル)としての基本的な構成には大きな違いはない。しかしながら、前述のように、周期性信号d(n)が高次(次数L≒∞)の高調波をもち、かつ、その一次角振動数ω* が変動する点で、制御対象の物理システム2の性質が実施例1のものとは異なっている。また、信号伝達特性21,23が必ずしも一定とはいえず、幾らかの経時変化があり得る点でも、実施例1の制御対象の物理システム2と異なっている。
【0119】(実施例2の試験設備)本実施例としての周期性信号の適応制御方法の実車試験に供した試験設備は、図10に示すように構成された。すなわち、この試験設備は、制御対象の物理システム2である自動車(または車載システム)と、地上に設置された適応制御装置10とから構成されている。
【0120】先ず、制御対象の物理システム2は、通常のフロントエンジン型自動車と、その自動車に装備されたセンサ24,25/アクチュエータ27からなる。信号発生源たるエンジン20は、直列4気筒のガソリンエンジンである。ここで、4気筒エンジンにおいては、通常2次の高調波振動が振動の主成分であるから、これに合わせて適応制御アルゴリズム1の次数Mは1と設定した。
【0121】エンジン20のカムシャフトには、周波数式回転センサ25が装備されている。回転センサ25で検知されたエンジン回転数(カムシャフト回転数の2倍)の信号は、制御対象である周期性信号d(n)の一次角振動数ω* の実時間測定(測定値はωで工学的にω* と等価)に供される。このエンジン20は、エンジンマウントによって自動車のエンジンルーム内に支持されている。ここで、全部で3個のエンジンマウントのうち、アクチュエータ内蔵エンジンマウント27は、1個を占めていた。エンジンマウント27は、適応制御装置10から供給される適応信号y(n)に対応した駆動電力によって内蔵するアクチュエータが駆動され、エンジン20と車両のマウント支持部との間隔を変動させて、物理システム2に上下方向の振動を加える。
【0122】また、自動車のキャビン内の運転席下の床部分には、上下方向の加速度を検知するピックアップセンサ24が備えられている。ピックアップセンサ24は、水晶式圧電効果型加速度計であり、これより計測出力としての電圧が得られる。誤差信号e(n)はここで拾われ、アナログ電気信号として適応制御装置10に伝達される。
【0123】次に、適応制御装置10は、前述の適応制御アルゴリズムを内蔵したコントローラ1を中核として構成されている。コントローラ1は、実施例1で使用したものをそのまま使用した。制御対象である周期性信号d(n)の角振動数ω* の検出器14は、デジタル信号処理器(DSP)であって、前述の回転数センサ25からの出力信号から得られた信号を基に、角振動数の測定値ωを瞬時に算出し、コントローラ1に実時間で供給する。
【0124】誤差信号e(n)の検出器15は、ピックアップセンサ24の出力である電気信号をサンプリングし、デジタル化してコントローラ1に実時間で供給するA/D変換器である。パワーアンプ16は、コントローラ1から出力されるデジタル適応信号y(n)を図示しないD/A変換器でアナログ化した電気信号を増幅し、適応信号y(n)である駆動電力としてアクチュエータ27に供給する。
【0125】さて、以上のように構成された適応制御システムは、エンジン20の振動の影響を相殺し、観測点(ピックアップセンサ24)における振動を抑制する。すなわち、前述の回転センサ25の出力はA/D変換され、エンジン20の一次角振動数の計測値ωとして適応制御アルゴリズム1に入力される。同様に、ピックアップセンサ24で検知した観測点における制御対象振動は、A/D変換された上で、誤差信号e(n)として適応制御アルゴリズム1に入力される。
【0126】こうして一次角振動数ωおよび誤差信号e(n)を入力された適応制御アルゴリズム1は、コンピュータ上でプログラムとして実行され、適応信号y(n)を出力する。適応制御アルゴリズム1は、前述のように次第に適応して適切な適応信号y(n)を出力するようになる。
(実施例2の試験結果)本実施例では、適応制御アルゴリズム1による制御試験を行うに先立って、振動試験により制御対象システムGの同定を行った。すなわち、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)を用い、自動周波数スウィープ(1Hz刻み)による振動試験を行った。そして、その結果得られたデータをもって、再び図9R>9に示す制御対象システムG23の等価伝達特性データ13を求めた。この振動試験では、等価伝達特性データ13である各角振動数におけるゲインおよび位相遅れの推定値Gk g ハット,Gk p ハットの両者を測定した。
【0127】その結果、図11に示すように、両者はかなり複雑な特性を示している。例えば、周波数が220Hz以上では、位相遅れに激しい乱れが認められる。この乱れは、実際の特性を示すものか、あるいは観測ノイズによるものかは定かでないが、その周波数ではゲインがほとんど無いので、実際上の影響は無視しうる。ここで、位相遅れの表示は、−180°〜+180°の間で行われているので、−180°から+180°へデータがジャンプしている部分は、そのまま連続的に位相遅れが進行しているものと見なされたい。
【0128】このように、試験に先立って制御対象システム23のゲインおよび位相遅れの測定が行なわれたが、適応制御アルゴリズム1に供したデータは位相遅れの推定値Gk p ハットのみである。さて、本実施例の適応制御試験では、エンジンがアイドリング状態(準定常状態)での試験と、エンジンが加速中の過渡応答をみる試験との、2種類の試験が実施された。その際設定された更新周期(サンプリング周期)Tおよび各ステップサイズパラメータは、前述の実施例1のものと同一である。
【0129】先ず、アイドリング試験では、十分に暖気して温度が安定し準定常状態になったアイドリング運転中のエンジン20による車両フロアの振動を、本発明の適応制御がある場合と無い場合との2ケースについて測定した。測定では、前述のピックアップセンサ24の出力が、20秒間に渡って連続して数値データとして記録された。その記録は測定終了後オフラインで処理され、加速度のパワースペクトルが求められた。なお、サンプリング周期は、適応制御アルゴリズム1の更新周期Tと同じ1/2500秒であった。
【0130】その結果、制御がある場合を実線、無い場合を破線として、図12に示すパワースペクトルが得られた。制御が無い場合には、アイドリング運転時の振動の基本周波数23.50Hz(エンジン回転数705rpm)の前後の周波数の部分から20〜50dBほど突出したピークが形成される。一方、制御を施した場合には、前記のピークは消え、むしろ前後の周波数の部分よりも低い振動レベルにある。したがって、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、高次の高調波を持つ実システムに対しても、その基本振動の影響を有効に除去しうることが実証された。
【0131】次に、加速試験では、エンジンの回転数をアイドリングの705rpm(基本周波数23.5Hz)から6000rpm(同200Hz)まで、毎秒100rpmの率で60秒程度かけて加速しつつ、観測点24での振動を計測した。その際の計測手段およびサンプリング周期は、上記アイドリング試験の場合と同じである。本試験でも、本発明の制御がある場合と無い場合について試験し、数値データとして記録された加速度の振動を、計測終了後、オフライン処理した。
【0132】その結果、図13に示すパワースペクトルが得られ、ほとんど全ての回転数領域で数dB〜20dB程度の制振効果が見られた。特に、通常の自動車で常用される低回転数から中回転数の領域において、効果が上がっている。したがって、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、一次角振動数ω* が遷移していく実システムに対しても、有効な制振効果が発揮されることが確認された。
【0133】以上のように、本実施例の二種類の実車試験で、本発明の周期性信号の適応制御方法によれば、周期性信号d(n)が高次の高調波を持ち、一次角振動数ω*が変動する実システムの振動をも、有効に抑制することができることが確認された。なお、適応信号y(n)の次数M、サンプリング周期Tおよび各ステップサイズパラメータを適宜調整することにより、収束安定性や収束に要する時間を調整することができる。
【0134】〔実施例3:電気回路での試験と評価〕本発明の実施例3として、実施例1と同じ電気回路に本発明の周期性信号の適応制御方法を適用し、制御対象の位相遅れの大幅な変動に対応しうるかを試験し評価した。以下、再び図3と図4、および図14〜17を参照して、本実施例について説明する。
【0135】(実施例3の制御方法)本実施例の適応制御アルゴリズムは、図4を参照して説明した実施例1の適応制御アルゴリズム1と、全く同一である。唯一の相違点は、等価伝達特性データ13を予め用意せず、適当に設定したことである。すなわち、位相遅れは全周波数領域にわたってゼロと設定されていた。
【0136】(実施例3の試験設備)図3に示した実施例1の試験設備と同一である。
(実施例3の試験結果)実施例1と同様に、図3中のファンクション・ジェネレータ20からは、基本波のみを、30Hzおよび90Hzの2ケースで発振させた。そして、それぞれのケースについて、位相変換アンプ26において、位相遅れを4通りに設定して試験を行った。その際の更新周期Tおよびステップサイズパラメータも、実施例1と同一であった。
【0137】その結果、実施例1と同様に、図14(30Hz)および図15(90Hz)に示す時間応答を得た。これによれば、周波数2通り×位相遅れ4通りで計8ケースの全てについて誤差信号e(n)の応答は収束し、収束に要する時間は目測で0.5秒〜1.5秒程度と、極めて素早いものであった。この試験結果から、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、制御対象システムの予期した伝達特性のうち、位相遅れの違いが300度近くに達しても周期性信号の影響を相殺して抑制できることが実証された。
【0138】さて次に、実施例1同様、位相変換アンプ26での位相遅れを90度に設定し、他の条件は全て前述の試験と同一で、誤差信号e(n)および適応信号y(n)に関する周波数スペクトル分析を行った。先ず、周期性信号d(n)の周波数を30Hzにして、制御システムを起動しなかった場合および起動してある場合のパワースペクトルを図16に示す。次に、周期性信号d(n)の周波数を3倍の90Hzに変更して、同様に図1717を得た。図16および図17からは、実施例1と同様の傾向を読み取ることができ、制御の有り無しで誤差信号e(n)のピークに約40dBの差がある。したがって、実施例1と同様に、本実施例の適応制御方法により周期性信号d(n)の影響をよく抑制し得たことがわかる。
【0139】以上の試験結果をもって、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、制御対象システムの伝達特性を予想することなく、300度近く大きな制御対象システムの位相遅れの変化に対しても、短時間によく適応して周期性信号の影響を抑制し得ることを実証し得た。
〔実施例4:実車装備での試験と評価〕本発明の実施例4として、実施例2と同様に、自動車の運転席下の車両フロアにおけるエンジンによる振動を抑制する実車試験を実施した。
【0140】本実施例の目的は、実施例2(図9)の実車試験で好成績を修めた本発明の適応制御アルゴリズム1を、制御対象の物理システム2の等価伝達特性データ13を予め用意することなしに、実車にも適用しうるか否かを判定することであった。その結果、本実施例では、適当な(例えば全てゼロの)等価伝達特性データを初期値として適応制御システムを起動し、殆ど無限大の次数をもち一次角振動数が遷移していく周期性信号の影響をもよく抑制しうることを実証し得た。
【0141】以下、本実施例について、再び図9、図10R>0、および図18、19を参照して説明する。
(実施例4の制御方法)本実施例の周期性信号の適応制御方法は、図9を参照して導き出した実施例2の適応制御方法と同一である。唯一の相違点は、制御対象システムの等価伝達特性データ13に、予め実測値が設定されておらず、全周波数領域に渡って位相遅れゼロと初期設定された状態で、適応制御アルゴリズム1が起動されることである。
【0142】つまり、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11には、一次角振動数ωが新しい領域へ遷移する度に、位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットにゼロが代入され、制御対象システムの伝達特性からかけ離れた状態から収束することが要求される。ただし、同じ一次角振動数ωの領域に二回目以降入った場合には、前回更新された収束安定係数Gk p ハットの値が、更新アルゴリズム11に与えられる。
【0143】したがって、本実施例の制御方法が良好な性能を発揮しえた場合、周期性信号の抑制すべき成分の次数さえ分かれば、制御対象システムの伝達特性が全く予見できなくても本発明の周期性信号の適応制御が適用可能になる。このように、本実施例の実車試験の意義は大きい。
(実施例4の試験設備)本実施例の試験設備は、図10を参照して説明した実施例2の試験設備と同一である。
【0144】(実施例4の試験結果)本実施例の適応制御試験では、実施例2同様、アイドリング試験および加速試験の2種類の試験が実施された。その際の各パラメータおよび試験条件は、実施例2と全く同様である。先ず、アイドリング試験では、実施例2同様、図18に示すパワースペクトルが得られた。制御が無い場合(破線)には、基本周波数23.50Hzに20〜40dBほど突出したピークが形成される。一方、制御を施した場合(実線)には、前記のピークは消えている。したがって、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、高次の高調波を持つ実システムに対しても、伝達特性に関する予見なしに、その基本振動の影響を有効に除去しうることが実証された。
【0145】次に、加速試験も、実施例2と全く同じ試験条件で行われた。その結果、図19に示すパワースペクトルが得られ、ほとんど全ての回転数領域で数dB〜20dB程度の制振効果が見られた。したがって、本実施例の周期性信号の適応制御方法によれば、一次角振動数ω* が遷移していく実システムに対しても、伝達特性に関する予見なしに有効な制振効果が発揮されることが実証された。ここで、前述のように一定の一次角振動数ω* に対しては、20〜40dB程度の制振効果が発揮されていたので、一次角振動数ω* が過渡的な変化をせずに加速試験の範囲の任意の回転数で落ちつけば、やはり同程度の制振効果が得られるものと考えられる。
【0146】制御対象システムの等価伝達特性の測定データを、実施例2では予め設定したうえで収束安定係数によりアップデイトし、本実施例では初期値ゼロから収束安定係数によりアップデイトしている。したがって、良い初期値が与えられている実施例2のほうが、最初の1スウィープでは制御成績が若干良い。以上のように、本実施例の実車試験で、本発明の周期性信号の適応制御方法によれば、高次の高調波を持ち一次角振動数が変動する実システムの振動をも、制御対象システムの伝達特性に関する予備情報を全く必要とせずに、有効に抑制することができることが実証された。
【0147】(実施例4の変形態様)本実施例では、図1R>1に示された適応制御アルゴリズム1において、制御対象システムの等価伝達特性データ13を予め設定しておく必要が必ずしもないことが明らかにされた。したがって、適応信号y(n)の振幅ak および位相φk と同様に適応係数ベクトルW(n)の成分である収束安定係数Gk ハットをも更新アルゴリズム11中にストアしておき、一次角振動数ωが変動しても等価伝達特性データ13からの供給を受けずに済ます適応制御アルゴリズムの構成も可能である。
【0148】すなわち、図20に示すように、制御対象システムの等価伝達特性データ(図9中の13)を省き、適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム11および適応信号発生アルゴリズム12だけで、適応制御アルゴリズム1を構成することが可能である。この適応制御アルゴリズム1は、制御対象システム23の等価伝達特性をデータテーブルとして保存しないので、何度同じ角振動数を経験しても制御成績が向上していくことはない。しかし、等価伝達特性データのストアに必要なメモリ容量が不要になる。また、一次角振動数ωが変化する度にメモリから新しいデータを読み出すステップと、適応係数ベクトルW(n)が更新される毎に更新された収束安定係数Gk ハットから等価伝達特性データを更新するステップとが、省略される。
【0149】その結果、本構成の適応制御アルゴリズムは、極めてシンプルなロジック構成となり、実行すべきプログラムのステップ数および確保すべきメモリ容量が少なくて済む。よって、本構成の適応制御アルゴリズムによれば、周期性信号の周波数変化や制御対象システムの伝達特性の変化に適応する能力を持ちながら、安価かつ軽量小型の周期性信号の適応制御システムを提供することが可能になる。
【0150】〔本制御システムの車載化の可能性〕前述の実施例2、実施例4およびその変形態様として例示された本発明の適応制御方法は、これを組み込んだ制振システムとして実車に搭載しうる可能性がある。すなわち、先ずは前述の設備を利用して実車試験を重ね、十分な性能をもちかつ最も制御装置のコストが安価な適応制御アルゴリズムを見つけ出す。そして、地上設備の機能のうち最低限必要なものだけを、一つの半導体回路または一枚のボード程度にコンパクトに収め、パワーアンプ・A/D変換器・D/A変換器等と併せて一つのユニットに纏めて自動車に搭載すれば、本発明の周期性信号の適応制御方法を実施する車載システムとして商品化できる。
【0151】この際、電磁ノイズ環境を考慮して、A/D変換器をセンサの近傍に設ける構成としてもよい。また、発熱の大きいパワーアンプは、前述の制御ユニット外に設け、良好な冷却を図ってもよい。なお、万が一の場合を想定し、本制御システムを機能させない場合にも、快適とはいえずとも当面の運用ができるだけの制振装置を備えることが望ましい。
【0152】最後に、本発明の周期性信号の適応制御方法は、自動車の振動および騒音の抑制ばかりではなく、キャビン内でのロータによる振動や回転音が問題になるヘリコプタ、プロペラ機、艦船(潜水艦を含む)など、多くのビークル(乗物)に適用することができる。同様に、各種工作機械、各種電気回路および建築物内の制振や騒音軽減にも応用が可能である。
【0153】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の周期性信号の適応制御方法によれば、制御対象となるシステムの伝達特性(各周波数でのゲインおよび位相遅れ)の大きな変化に適応し、これに追随して観測点における周期性信号の影響を抑制または除去することができる。併せて、本発明の周期性信号の適応制御方法によれば、その影響を除去すべき周期性信号の基本周波数の大きな変化にも適応して、周期性信号の影響を十分に抑制することができる。
【0154】すなわち、本発明は、制御対象となるシステムと等価の伝達特性データを初期値とし、系全体が常に安定する方向にその値を更新することによって、制御対象システムの伝達特性(ゲイン・位相遅れ)の大きな経時変化にも追随して適応できる適応制御アルゴリズムを提供した。それだけに留まらず、制御対象となるシステムの伝達特性を予め測定しておく必要がなく、伝達特性の変化に自動的に追随する適応制御アルゴリズムをも提供し得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の適応制御方法の一般形を示すブロック線図
【図2】 本発明の適応制御方法の収束範囲を示すψの位相図
【図3】 実施例1の適応制御システムの試験回路図
【図4】 実施例1の適応制御方法の実験回路に等価なブロック線図
【図5】 実施例1の周期性信号(30Hz)に対する適応制御の時間応答
【図6】 実施例1の周期性信号(90Hz)に対する適応制御の時間応答
【図7】 実施例1の周期性信号(60Hz)に対する周波数スペクトル
【図8】 実施例1の周期性信号(120Hz)に対する周波数スペクトル
【図9】 実施例2の適応制御方法を示すブロック線図
【図10】実施例2の適応制御システムの試験設備の構成を示す模式図
【図11】実施例2の制御対象システムの伝達特性測定値を示すボーデ線図
【図12】実施例2のアイドリング時の誤差信号のパワースペクトル
【図13】実施例2の加速時の誤差信号のパワースペクトル
【図14】実施例3の周期性信号(30Hz)に対する適応制御の時間応答
【図15】実施例3の周期性信号(90Hz)に対する適応制御の時間応答
【図16】実施例3の周期性信号(30Hz)に対する周波数スペクトル
【図17】実施例3の周期性信号(90Hz)に対する周波数スペクトル
【図18】実施例4のアイドリング時の誤差信号のパワースペクトル
【図19】実施例4の加速時の誤差信号のパワースペクトル
【図20】変形態様の適応制御方法を示すブロック線図
【図21】従来技術(FX−LMS)の適応制御方法を示すブロック線図
【図22】従来技術(変形FX−LMS)適応制御方法を示すブロック線図
【図23】従来技術(SFX)の適応制御方法を示すブロック線図
【図24】先行技術(DXHS)の適応制御方法を示すブロック線図
【図25】従来技術・先行技術の電気回路の試験設備を示すブロック線図
【図26】位相遅れの変化に対する従来技術(FX−LMS)の時間応答
【図27】位相遅れの変化に対する先行技術(DXHS)の時間応答
【符号の説明】
1:適応制御アルゴリズム(コントローラ、コンピュータ、制御システム)
10:適応制御装置 11:適応係数ベクトルW(n)の更新アルゴリズム
12:適応信号発生アルゴリズム(y(n)=・・・)
13:制御対象システムGの等価伝達特性データ(Gkハット)
14:周期性信号d(n)の一次角振動数ω検出手段(信号処理装置)
15:エラー信号e(n)検出手段(信号処理装置) 16:パワーアンプ
2:制御対象の物理システム(電気回路/自動車)
20:周期性信号発生源(ファンクションジェネレータ/エンジン)
21:周期性信号の伝達特性 22:周期性信号発生システム
23:制御対象システム(伝達特性はG g,p
24:誤差信号e(n)観測点(電圧センサ/ピックアップセンサ)
25:周期性信号d(n)の一次角周波数ω計測手段(回転数センサ)
26:位相変換アンプ 27:アクチュエータ内蔵エンジンマウント
d(n):周期性信号 e(n):誤差信号 y(n):適応信号
z(n):適応伝達信号(シンセサイザ出力/アクチュエータの伝達出力)
n:時刻(ステップ) T:更新周期(サンプリング周期)
W(n):適応係数ベクトル
k * ,φk * :周期性信号d(n)のk次正弦波の振幅・位相(1≦k≦L)
k ,φk :適応信号y(n)のk次の正弦波の振幅および位相(1≦k≦M)
L:制御対象の周期性信号の高次振動の最大次数(1≦L)
M:適応信号の高次振動の最大次数(1≦M≦L)
ω* :周期性信号d(n)の一次角振動数
ω:適応信号y(n)の一次角振動数(ω* の計測値で工学的にω* と等価)
G g,p :制御対象システムの伝達特性 G' g,p :周期性信号の伝達特性
k g ,Gk p :制御対象システムの角振動数kωでのゲインおよび位相遅れ
k ハット:収束安定係数(Gk g ハット,Gk p ハットの少なくとも一方)
k g ハット,Gk p ハット:ゲインおよび位相遅れに関する収束安定係数
ψ:位相調整パラメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 観測点へ影響を及ぼす周期性信号に対し、該周期性信号に同期した1次の基本正弦波およびまたは該基本正弦波から該基本正弦波のM次(2≦M)までの高調波信号からなる適応信号を逆位相で加えることによって、該周期性信号の特定周波数成分の該観測点への影響を能動的に除去する周期性信号の適応制御方法であって、時刻nにおいて該周期性信号の一次角振動数に基づいて該適応信号y(n)を発生させる適応信号発生アルゴリズムと、該適応信号y(n)の各次数(次数k=1,2,・・・,M)の正弦波の振幅ak および位相φk 、ならびに該適応信号が該観測点に至るまでの制御対象システムの伝達特性のゲインに関する収束安定係数Gk g ハットおよび位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットのうち少なくとも一方からなる収束安定係数Gkハット(1≦k≦M)を成分とする適応係数ベクトルW(n)を、該周期性信号の影響を除去すべき該観測点で検知された誤差信号e(n)に基づき該時刻nの経過毎に更新して、該周期性信号の振幅および位相と該制御対象システムの該伝達特性とに対し該適応係数ベクトルW(n)の各該成分を適応的に調整する適応係数ベクトル更新アルゴリズムとを有し、更新された該適応係数ベクトルの成分の一部である各次数の振幅ak および位相φk をもって、該適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk が更新されることを特徴とする周期性信号の適応制御方法。
【請求項2】 前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前期適応係数ベクトルW(n)で前記誤差信号e(n)の二乗を偏微分することによって勾配ベクトルを求め、該勾配ベクトルの各成分にそれぞれのステップサイズパラメータを掛け合わせたものを、前記適応係数ベクトルW(n)から減算することにより、時刻nの経過毎に更新された該適応係数ベクトルが算出される請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。
【請求項3】 前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前記適応係数ベクトルW(n)は、数1に示すように、前記適応信号y(n)の各次数の正弦波の振幅ak および位相φk ならびに位相遅れに関する収束安定係数Gk p ハットを成分とし、前記誤差信号e(n)に基づき位相調整パラメータψを含む数2に従って更新される請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。
【数1】


【数2】


【請求項4】 前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムにおいて、前記位相調整パラメータはψ=π/2と設定された数2と等価な数3に従って更新される請求項3記載の周期性信号の適応制御方法。
【数3】


【請求項5】 前記適応信号y(n)から前記観測点までの伝達特性の各角振動数に対応するゲインおよび位相遅れのうち、前記収束安定係数に対応する少なくとも一方の推定値である等価伝達特性データを有し、前記適応係数ベクトルW(n)の成分である各次数に対応する該収束安定係数Gk g ハットおよびGk p ハットのうち少なくとも一方は、前記一次角振動数が変動する毎に、初期値を各次数の角振動数に対応する該等価伝達特性データから与えられることを特徴とする請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。
【請求項6】 前記等価伝達特性データは、適応制御開始以前に予め設定されている請求項5記載の周期性信号の適応制御方法。
【請求項7】 前記等価伝達特性データは、前記適応係数ベクトルW(n)の更新された成分中の収束安定係数によって更新される請求項5記載の周期性信号の適応制御方法。

【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図21】
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【図3】
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【図4】
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【図18】
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【図19】
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【図5】
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【図6】
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【図22】
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【図24】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10】
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【図14】
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【図23】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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