説明

周波数外挿を利用した歪みのない位置追跡方法およびシステム

【課題】少なくとも一つの磁界発生器を使って、物体の近傍に二つあるいはそれ以上の周波数で交流(AC)磁界を発生することを含む、物体の位置追跡の方法を提供する。
【解決手段】AC磁界を物体と関連付けたフィールドセンサーを使って検出する。検出されたAC磁界の少なくとも一部分が歪みを受けている、フィールドセンサーでのAC磁界の振幅および方向を示す対応ACデータポイントを生成する。AC磁界の振幅および方向をひずみの低減したレベルの状態で求めるために、ACデータポイントのAC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿する。少なくともひとつの磁界発生器に対する物体の位置座標を、外挿されたデータポイントに応じて計算する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、一般的には磁気位置追跡システムに関し、特に、磁界を歪ませる物体の存在下でも正確な位置測定をおこなうための方法およびシステムに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
医療処置に関わる物体の座標を追跡するためのさまざまな方法およびシステムが当該技術で知られている。これらのシステムのいくつかは磁場測定を用いている。例えば、米国特許第5,391,199号および第5,443,489号には体内のプローブの座標を一つあるいは複数のフィールドトランスデューサー(field transducers)を使って測定するシステムが述べられており、これら特許の開示するところは参照して本明細書に組み込まれる。このようなシステムは、医療用プローブあるいはカテーテルに関しての位置情報を作り出すのに用いられている。コイルなどのセンサーがプローブ内に置かれ、外部から加えられる磁界に応答して信号を発生する。磁界は、外部基準わく上のたがいに離間した既知の位置に固定されたラジエイターコイル(radiator coil)などの磁界トランスデューサーにより発生させられる。
【0003】
磁気位置追跡に関するさらなる方法およびシステムも、例えば、PCT特許公開WO第 96/05768号、米国特許第6,690,963、同第6,239,724号、同第6,618,612号および同第6,332,089号、および米国特許出願公開2002/0065455 Al, 2003/0120150 Alならびに2004/0068178 Alに記載されており、これらの開示するところはすべて参照して本明細書に組み込まれる。これらの刊行物には、心臓カテーテル、整形外科のインプラントおよびさまざまな医療処置に使われる医療器具などの体内物体の位置を追跡する方法およびシステムが記載されている。
【0004】
磁気位置追跡システムの磁界内における金属性、常磁性あるいは強磁性物体の存在が、システムの測定をしばしば歪めることは当該技術分野ではよく知られている。この歪みは、他の影響と同様に、システムの磁界によっても上記物体内で生じる渦電流に起因する場合がある。
【0005】
そのような干渉の存在下で、位置追跡をおこなう様々な方法およびシステムが従来技術において記載されている。例えば、米国特許第6,147,480号には、追跡対象の物体に生じた信号を、寄生信号成分を生じさせる可能性のあるいかなる物体も存在しない状態で、最初に検出する方法が記載されている。信号のベースライン位相(baseline phases)が測定される。寄生磁界を発生させる物体が追跡対象の物体の近辺に置かれると、寄生成分により誘起された信号の位相シフトが検出される。測定された位相シフトを使って、物体の位置が不正確かもしれないということを示す。位相シフトはまた、寄生信号成分の少なくとも一部を除くために、信号分析にも使われる。
【0006】
あるいくつかの出願では、いくつかの磁界周波数を使って測定をおこなうことによって、磁界の歪みが測定および/あるいは補償されている。例えば、米国特許第4,829,250号には、基準固定枠と拘束されない物体との相対配向(relative orientation)を測定する磁気システムが記載されており、この特許の開示は参照して本明細書に組み込まれる。多周波ソース(multi-frequency source)で駆動される3個の直交に配置した発信コイルと3個の直交受信コイルとの間の相互結合(mutual coupling)により、複数組のアナログ電圧を生じる。高速フーリエ変換(FFT)装置を使って、これらのアナログ電圧をサンプリングし、デジタル化し、そして処理して、ピッチ角およびヨー角(pitch and yaw angles)を測定するための方向成分を生じさせる。多周波ソースにより発信コイルを駆動させること、および少なくとも二つの個別の周波数で座標成分測定値を得ることにより、周囲の導電性構造体における渦電流による測定値(results)の誤差を補償することができる。
【0007】
別の例としては、米国特許第6,373,240号に物体追跡方法が記載されており、その開示は参照して本明細書に組み込まれる。その方法では、物体の近くに所定の複数周波数で外乱を受けないエネルギーフィールド(unperturbed energy field)を発生させること、および、追跡対象物体の近くに別の物体を導入することで外乱を受けないエネルギーフィールドに応答して発生する外乱エネルギーフィールド(perturbing energy field)の特性を測定すること、を含む。この方法では、上記したある別の物体の導入後に追跡対象物体の位置に発生した外乱を受けないエネルギーフィールドと外乱エネルギーフィールドに応じて結果として生じた複数の信号を受信し、その結果として生じた信号のパラメータに応じて前記複数の所定の周波数のなかから外乱を受けないエネルギーフィールドにとって最適の周波数を求め、そしてその最適周波数での前記結果として生じた信号に応じて追跡対象物体の空間座標を決定すること、をさらに含む。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明の実施態様は、周波数外挿(frequency extrapolation)を利用して、金属性、常磁性および/または強磁性物体(これらをまとめてフィールド歪み物体と呼ぶ)の存在下で、磁気位置追跡測定をおこなうための改良された方法およびシステムを提供する。
【0009】
このシステムは、追跡対象物体の近傍で磁界を発生する2個あるいはそれ以上の磁界発生器(field generators)を有する。磁界は、追跡対象物体に関連付けられた(associated)位置センサーで検出され、追跡対象の位置(場所および向き(location and orientation)座標を計算するために使用される位置信号に変換される。磁界発生器は、いくつかの周波数で交流(AC)磁界を発生する。測定した磁界の強度の周波数依存(frequency dependence)は、金属による外乱(disturbance)の影響を減らすために、単一の標的周波数(target frequency)に適合させられ、外挿される。
【0010】
例えば、等価の直流(DC)磁界強度を作り出すために、測定値をゼロ周波数に外挿してもよい。交流測定と違って、直流(DC)磁界は、通常は渦電流および他の交流に関連する歪みを引き起こさない。そのような歪みが殆ど無い等価の直流(DC)磁界強度を使って、磁界発生器に対する追跡対象物体の位置を計算する。代わりの実施態様では、磁界強度および/または座標を、金属による歪みの影響を打ち消すために、無限周波数(infinite frequency)あるいは任意の他の標的周波数に外挿する。
【0011】
そのために、本発明の実施態様に従って、物体の位置を追跡する方法が提供されていて、この方法は、
少なくとも一つの磁界発生器を使用して前記物体の近傍に二つあるいはそれ以上の周波数で交流(AC)磁界を発生させるステップと、
前記物体に関連付けられたフィールドセンサーを使用して、前記AC磁界を検出し、前記フィールドセンサーでの前記AC磁界の振幅および方向を示す対応するACデータポイントを作り出すステップであって、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかが歪みを受けている、ステップと、
前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために、前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿するステップと、
前記外挿されたデータポイントに応じて、前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算するステップと、
を含む。
【0012】
いくつかの実施態様においては、前記方法は、前記物体を患者の臓器内に挿入するステップを含み、前記物体の位置座標を計算するステップは、前記臓器内での前記物体の位置を追跡することを含む。ある実施態様では、前記少なくとも一つの磁界発生器は前記物体に関連付けらており、前記フィールドセンサーは前記臓器の外部に配置されている。
【0013】
別の実施態様では、前記歪みは、前記AC磁界の少なくともいくつかにさらされた磁界歪み物体が原因で発生し、前記物体は、金属性、常磁性および強磁性材料からなる群から選択される材料を含む。
【0014】
さらに別の実施態様では、前記標的周波数はゼロ周波数を含む。さらに別の実施態様では、前記標的周波数は無限周波数を含む。前記依存を外挿するステップは、関数を前記ACデータポイントおよび前記AC磁界の前記周波数に適合させること、ならびに前記標的周波数での前記関数の値を求めること、を含むこともできる。
【0015】
ある実施態様においては、前記関数は、多項式関数および有理関数からなる群から選択され、前記関数を適合させることは、該関数の係数に値を割り当てることを含む。それに加え、あるいは、それに代わるものとして、前記依存を外挿するステップは、事前に得られた磁界測定値に基づいて前記関数を定義することを含む。前記関数を定義することは、主成分分析(PCA)法を適用して、前記事前に得られた磁界測定値に基づいて、PCA基底関数を作り出すこと、および該PCA基底関数を使って前記関数を定義すること、を含む。
【0016】
本発明の実施態様に従って、物体の位置を追跡するためのシステムがさらに提供されていて、このシステムは、
少なくとも一つの磁界発生器であって、前記物体の近傍に二つあるいはそれ以上の周波数で交流(AC)磁界を発生させるように構成された、少なくとも一つの磁界発生器と、
前記物体に関連付けられたフィールドセンサーであって、前記AC磁界を検出し、前記フィールドセンサーでの前記AC磁界の振幅および方向を示す対応するACデータポイントを作り出すように構成され、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかが歪みを受けている、フィールドセンサーと、
プロセッサであって、前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿し、前記外挿されたデータポイントに応じて前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算するように構成されている、プロセッサと、
を備えている。
【0017】
本発明の実施態様による物体の位置を追跡するシステムに使用されるソフトウェア製品もまた提供されていて、
この製品は、コンピュータ読み取り可能な媒体であって、プログラム命令が格納されている、媒体を含み、
このプログラム命令は、該コンピュータに前記プログラム命令が読み取られると、該コンピュータに、
前記物体の近傍に交流(AC)磁界を二つあるいはそれ以上の周波数で発生させるために少なくとも一つの磁界発生器を制御させ、
フィールドセンサーにより検出された前記それぞれのAC磁界の振幅および方向を示すACデータポイントを前記物体に関連付けられたフィールドセンサーから受取らせ、ここで、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかは歪みを受けており、
前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で決定するために前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿させ、さらに、
前記外挿されたデータポイントに応じて前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算させる。
【0018】
本発明は、添付図面を参照しながら以下の実施態様に関する詳細な説明を読めば、より完全に理解されるであろう。
【0019】
〔実施態様の詳細な説明〕
システムの説明
図1は、本発明の実施態様例による体内にある物体の位置追跡および操作(steering)のためのシステム20を簡略化して示した絵入りの図である。システム20は、患者の心臓28などの臓器に挿入した心臓カテーテル24など体内にある物体を追跡および操作する。システム20はまた、カテーテル24の位置(即ち、場所および向き)の測定、追跡および表示もおこなう。幾つかの実施態様では、カテーテルの位置は、心臓あるいはその一部分の3次元モデルを用いて登録されている。心臓に対するカテーテルの位置がディスプレイ装置30で医師に対して表示される。医師は操作卓31を使用して医療処置の間にカテーテルを操作し、その位置を見る。
【0020】
システム20を使用して、カテーテルの誘導および操作(navigation and steering)が医師による手作業ではなく、システムによって自動的あるいは半自動的におこなわれる、さまざまな心臓内手術および診断処置をすることができる。システム20のカテーテル操作機能は、例えばステレオタクシーズ・インコーポレイテッド(Stereotaxis, Inc.)(アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス)製作のNiobe(登録商標)磁気誘導システムを使用することによって実行できる。このシステムに関する詳細は、www.stereotaxis.com.で見ることができる。磁気カテーテル誘導の方法は、例えば米国特許第5,654,864号および同第6,755,816号にも記載されており、これら特許の開示は参照して本明細書に組み込まれる。
【0021】
システム20は、本明細書では操作フィールド(steering field)と称する磁界を、カテーテルを含む作業領域(working volume)に加えて、カテーテル24を設置して、方向付けし、また操作をおこなう。内部磁石をカテーテル24の遠位端に嵌めこむ。(カテーテル24は下記の図3に詳しく示されている。)操作フィールドで内部磁石を操作(即ち、回転および移動)し、これによりカテーテル24の遠位端を操作する。
【0022】
操作フィールドは、通常患者の両側に置かれた一対の外部磁石36により発生する。ある実施態様では、磁石36は、操作卓31により発生させた適当な操作制御信号に応じて操作フィールドを発生する電磁石を含んでいる。ある実施態様では、操作フィールドは、物理的に動く(例えば、回転する)外部磁石36あるいはその部品によって、回転されたり、あるいは他の方法で制御されたりする。作業領域の直近で時間とともに位置が変わることがある磁石36などの大きな金属物体の使用に伴う問題を以下に述べる。
【0023】
システム20は、医療処置時にカテーテル24の位置および向きを、測定ならびに追跡する。この目的のために、システムは、位置探索パッド40(location pad 40)を有する。位置探索パッド40は、磁界発生コイル(field generating coils)44などの磁界発生器(field generators)を有する。コイル44は、作業領域の附近で固定された既知の場所および方向に配置される。図1に例示する構成では、位置探索パッド40は、患者が横たわっているベッドの下で水平に置かれている。この例のパッド40は、三角形状であり、3個のコイル44を備えている。他の実施態様では、位置探索パッド40は、任意の適当な幾何学形状に配置された任意の数の磁界発生器を備えていてもよい。
【0024】
操作卓31は、コイル44を駆動する駆動信号を発生する信号発生器46を備えている。図1の例示的な実施態様では、三つの駆動信号を発生する。各コイル44は、本明細書ではトラッキングフィールドと称する交流(AC)磁界を、その交流磁界を駆動するそれぞれの駆動信号に応じて、発生させる。
【0025】
信号発生器46は、所定範囲の周波数を有する駆動信号を発生するように設定できる可変周波数信号発生器を有する。システム20は、後述するように、トラッキングフィールドに対する歪みの影響を打ち消すためにいくつかの周波数でフィールド測定をおこなう。通常、信号発生器46で発生した駆動信号の周波数(従って、それぞれのトラッキングフィールドの周波数)は、数百Hzから数KHzの範囲内であるが、他の周波数範囲でもよい。
【0026】
カテーテル24の遠位端に嵌めこまれた位置センサーが、コイル44が発生したトラッキングフィールドを感知してそれぞれの位置信号を出力し、これらの位置信号は、磁界発生コイルに対するセンサーの位置および向きを示すものである。位置信号は、通常カテーテル24を通って操作卓31に至るケーブルを介して、操作卓31に送られる。操作卓31は、位置信号に応答してカテーテル24の位置および向きを計算するトラッキングプロセッサー(tracking processor)48を備えている。プロセッサ48は、通常6次元座標で示されるカテーテルの位置および向きを、ディスプレイ装置30を使って医師に対して表示する。
【0027】
プロセッサ48はまた、信号発生器46の動作を、制御および管理する。特に、プロセッサ48は、異なる駆動信号を発生するために適切な周波数を設定する。いくつかの実施態様では、位置センサーが一つのコイル44から生じるトラッキングフィールドを任意の時間に測定するように、磁界発生コイル44を順次動作する。これらの実施態様では、プロセッサ48は、各コイル44を交互に動作させ、カテーテルから受け取られる位置信号を適切な界磁発生コイルに関連付ける。
【0028】
通常、トラッキングプロセッサー48は、本明細書に記載された機能を果たすようにソフトウェアでプログラムされた汎用コンピュータを使用して実現される。そのソフトウェアは、例えばネットワークを介してコンピュータに電子式にダウンロードしてもよいし、あるいはCD-ROMなどの有形の媒体でコンピュータにインストールしてもよい。トラッキングプロセッサーを操作卓31の他の演算機能と一体化してもよい。
【0029】
他の実施態様では、磁界発生器をカテーテル24の遠位端に嵌めこむ。磁界発生器により発生した磁界は、患者の体外の既知の位置に配置された位置探索パッド40などの位置センサーにより感知される。感知された磁界を利用してカテーテル24の位置を割り出す。
【0030】
図2は本発明の実施態様従って、カテーテル24の遠位端を簡略化して示した絵入りの図である。カテーテル24は、上述したように、内部磁石32と位置センサー52とを有する。カテーテル24は、切除電極("ablation electrode")および局部電位を検出する電極56などの電極を1個あるいは複数個備えていてもよい。位置センサー52は、フィールド検出コイル60などのフィールド検出素子を有する。いくつかの実施態様では、位置センサー52は三つの互いに直交する面内に方向付けられた3個のフィールド検出コイル60を備えている。各コイル60は、交流トラッキングフィールド(AC tracking field)の三つの直交成分の一つを検出して、その検出された成分に応じてそれぞれの位置信号を発生する。センサー52および電極56は、通常カテーテルを通るケーブル64を介して操作卓31に接続されている。
【0031】
交流磁界に置かれた金属性、常磁性および強磁性物体(本明細書ではまとめてフィールド歪み物体と呼ぶ)は、それらの近辺の磁界の歪みを引き起こすことは、当該技術分野では周知である。例えば、金属性の物体が交流磁界にさらされると、渦電流がその物体内に誘起され、今度はこれが、交流磁界を歪ませる寄生磁界を生じる。強磁性の物体は、磁力線(field lines)の密度と配向を、引き付け、変化させることによって磁界を歪ませる。
【0032】
磁気的位置追跡システムにおいて、磁界を歪ませる物体が位置センサー52の近くに存在すると、センサー52によって検出されるトラッキングフィールドが歪み、位置測定が誤ったものになってしまう。歪みの深刻さは一般に、位置センサーおよび界磁発生コイルの近くに存在する磁界を歪ませる材料の量(the amount of field-distorting material)および/または、トラッキングフィールドが磁界を歪ませる物体にぶつかる角度により決まる。図1のシステムにおいて、例えば外部磁石36は通常磁界を歪ませる材料を多く含み、作業領域の直ぐ近くに置かれている。従って、外部磁石36は、位置センサーにより検出されたトラッキングフィールドを著しく歪ませることがある。
【0033】
後述する方法およびシステムは、主としてトラッキング磁気フィールドが極度に歪んでいる状況下での正確な位置追跡測定に関する。図1のカテーテル操作システムは、位置追跡システムの作業領域内あるいはその近くに置かれた物体によりトラッキングフィールドが極度に歪む場合における、単なる適用例として述べられている。
【0034】
しかし、本発明の実施態様は、磁気的操作の使用に限定されない。本明細書に記載の方法およびシステムは、そのような歪みの影響を減らすための、任意の他の適当な位置追跡の応用に用いることができる。例えば、本明細書に述べる方法およびシステムを利用して、C-腕(C-arm)透視装置および磁気共鳴画像(MRI)装置などの物体によりもたらされる磁界を歪ませる影響を減らすことができる。
【0035】
他の実施態様では、システム20を利用して、医療および手術器具ならびに装置に組み合わせた位置センサーの追跡ばかりでなく、内視鏡や整形外科用内装物などさまざまな種類の体内物体を追跡することができる。
【0036】
周波数外挿を利用した歪みの減少
多くの場合、磁界を歪ませる物体によりもたらされる歪みはトラッキングフィールドの周波数によって決まる。いくつかの場合(scenarios)には、歪みが最小となる最適周波数がある。例えば、前述の米国特許第6,373,240号に記載されているように、いくつかの方法およびシステムでは、トラッキングフィールドの周波数範囲を走査して、そのような最適周波数を探す。しかし、外部磁石36が存在する場合のように、金属による外乱が著しいときには、システムが使用する全周波数範囲にわたって深刻な歪みがもたらされる可能性がある。さらに、カテーテルを移動させる時に磁石36は物理的に動かされるので、既知の先験的な歪み較正および消去法を適用できないことがよくある。
【0037】
従来技術のこれらの欠点を解決するために、本発明の実施態様は、磁界を歪ませる物体によりもたらされるトラッキングフィールドの歪みを推定して解消するための方法およびシステムを提供する。
【0038】
図3および4を参照して以下に説明する方法は、交流磁界とは違い直流磁界は金属性物体内に渦電流を誘起せず、従ってそのような物体の存在により歪まない、ということを利用している。他方、直流磁界はまた、位置センサー52のフィールド検出コイル60にも電流を誘起しないので、位置センサーによって検出も計測もできない。
【0039】
以下の図4の方法は、多くの交流磁界測定値をゼロ周波数(DC)に合わせ外挿することにより等価の直流磁界強度を推定する。歪みがほとんど無い等価の直流磁界強度を、今度はカテーテルの位置座標を計算するために使う。さらに後述の他の実施態様では、磁界測定値を無限周波数に外挿して強磁性物体の存在下での歪みの無い磁界強度を推定する。さらに代わるものとして、磁界強度測定値の周波数依存を、任意の所望の標的周波数に外挿できる。
【0040】
図3は、本発明の実施態様による測定された磁界強度データの周波数への外挿を略線的に示すグラフである。データポイント68は、特定の界磁発生コイル44により発生した交流トラッキングフィールドを検出した時に、特定の磁界検出コイル60を使っておこなわれた多数の磁界強度測定値に対応する。従って、データポイント68は位置センサー付近のトラッキングフィールドの振幅および方向を示している。図3の例では、六つの測定値は符号F1, …, F6で示す六つのそれぞれのトラッキングフィールド周波数で得られたものである。
【0041】
曲線72はデータポイント68に対して当てはめてある(fitted with)。曲線72は、磁界強度Xを周波数fの関数として記述している関数X(f)の図式表示である。関数X(f)を求める方法は以下に詳述する。曲線72は、インターセプトポイント(intercept point)76で垂直軸(ゼロ周波数あるいは直流に対応する)と交差している。インターセプトポイント、即ちX(0)における磁界強度値は、渦電流による歪みなど交流磁界に関連した歪みがほとんど無い、等価な直流磁界強度推定値である。
【0042】
図4は、本発明の実施態様による磁界歪みがある状態での位置追跡方法を簡略に示すフローチャートである。以下に示すステップ80から86では、システム20は、所定の周波数範囲から選択した複数の周波数を使ってカテーテル24において複数の磁界強度測定をおこなう。この周波数範囲は、複数周波数の所定のリストで構成されることが多いが、周波数範囲を規定するなにか他の適当な方法も用いることができる。
【0043】
この方法は、プロセッサ48が周波数設定ステップ80で、トラッキングフィールドを発生するために使用される周波数を設定することから始まる。プロセッサ48は、周波数範囲から周波数を選択し、この周波数を有する駆動信号を発生するように信号発生器46を設定する。
【0044】
信号発生器46は駆動信号を発生し、磁界発生ステップ82で、コイル44はそれぞれの交流トラッキングフィールドを発生させる。カテーテル24の位置センサー52内の磁界検出コイル60は、測定ステップ84で、コイル44によって発生するトラッキングフィールドを検出する。コイル60は、検出されたトラッキングフィールドに応じて位置信号を発生し、この位置信号はケーブル64を介して操作卓31に送られる。プロセッサ48は、位置信号を受信し、使用されたトラッキングフィールド周波数に対応づけられたデータポイントとして、測定された磁界強度を記録する。
【0045】
上述したように、いくつかの実施態様においては、コイル44はステップ82で順次駆動される。これらの実施態様では、ステップ84の出力は、特定周波数で各コイル60によって測定されたように、各コイル44によって発生したトラッキングフィールドの磁界強度を示す複数の測定されたデータポイントである。例えば、上述の図1のシステム構成では、ステップ84の出力は全部で3x3=9データポイントである。
【0046】
プロセッサ48は、周波数範囲検査ステップ86で、周波数範囲内のすべての周波数が測定されたかどうかを検査する。もし、まだ測定されていない周波数が残っている場合には、この方法は上述のステップ80へ戻る。
【0047】
すべての周波数が測定されているならば、プロセッサ48は測定されたデータポイントの適合と外挿をおこなう。この段階で、プロセッサ48は上述の図3に示すようなデータポイントの組をいくつか保持する。データポイントの各組は、一対の{界磁発生コイル44、界磁検出コイル60}に対応する。各組は、上述のステップ80〜86で走査された全周波数にわたって特定のコイル60で測定した特定のコイル44により発生したトラッキングフィールドの磁界強度値を含む。
【0048】
データポイントの各組(即ち、({コイル44、コイル60})ごとに、プロセッサー48は、外挿ステップ88で図3について上述したことと同様に、測定されたデータを適合し外挿する。いくつかの実施態様では、プロセッサ48は、関数X(f)で定義した曲線をデータポイントに当てはめる。(例えば、上述の図3におけるデータポイント68に当てはめた曲線72を参照のこと。)そして、プロセッサ48は、この関数の外挿値をゼロ周波数、即ちX(0)で推定する。
【0049】
いくつかの実施態様では、X(f)は

の形の多項式関数を構成し、ここでmは多項式X(f)のランクを示し、a0, …, amはm+1個の多項式係数で、これら係数はデータポイント68に応じてプロセッサ48により当てはめられる。プロセッサ48は、係数a0, …, amの値を求めるための、当該技術分野で知られている多項式適合(polynomial fitting)方法、例えば最小2乗(LS)法、を使うことができる。
【0050】
しかしながら、多項式適合を使うX(0)での推定では十分な精度が得られない場合がある。いくつかの実施態様において、プロセッサ48は、下記の形の有理関数(rational function)(即ち、ふたつの多項式の比)でデータポイント68を当てはめる。
【数1】

ここで、X(f)の分子および分母は、ランクmおよびnと、係数a0, …, amおよびb0, …, bnと、をそれぞれ有するふたつの多項式関数を構成する。プロセッサ48は、係数a0, …, amとb0, …, bnとを求めるための当該技術分野で知られている適当な方法を適用してもよい。例えば、いくつかの実施態様では、プロセッサ48は、周知のパデ近似(Pade approximation)を用いることができる。X(f)が十分滑らかであると仮定すると、比較的低いランクの多項式(即ち、mおよびnの値が小さい)でX(0)の近似を十分な精度で得られることがよくある。一般性を失うことなく、分子と分母の等価なスケーリング(scaling)によりb0=1と設定することが可能である。b0=1と設定後、等価な直流磁界強度値がX(0)=a0で与えられる。
【0051】
他の実施態様では、プロセッサ48、はフィールド歪み物体の存在下であらかじめ得た磁界強度値に基づいて関数X(f)を作ることができる。通常は、これらの事前の測定値は、データポイントを外挿する標的周波数を含む複数の周波数での測定値である。多くの場合、事前に得た磁界強度測定値を使って測定されたデータを外挿すると、多項式あるいは有理関数を使った場合に比べて、より高精度な外挿結果が得られることがよくある。
【0052】
プロセッサは、事前に得た磁界強度測定値による情報に基づいて、測定されたデータポイントを標的周波数に外挿するために、さまざまなトレーニング方法を使うことができる。例えば、プロセッサ48は、この目的のためにニューロコンピュータ(neural network)に基づく方法を使ってもよい。
【0053】
いくつかの実施態様において、プロセッサ48は事前に得た測定値を使って一組の基底関数(base functions)を定義する。そして、プロセッサは、基底関数で規定され(spanned by the base function)、また測定されたデータに最もよく適合する関数X(f)を計算する。例えば、プロセッサ48は主成分分析(PCA)法を使ってベース関数を計算することもできる。PCAは周知の統計解析法であり、これは例えば、「主成分分析の手引き」コーネル大学、アメリカ合衆国ニューヨーク州イタカ、2002年2月26日("A Tutorial on Principal Components Analysis," Cornell University, Ithaca, New York, February 26, 2002)においてスミス(Smith)が述べており、その記述は参照して本明細書に組み込まれる。PCAを使う場合は、プロセッサ48は一組の直交PCA基底関数を計算し、PCA基底関数で規定され(spanned)、また測定されたデータに最もよく適合する関数X(f)を当てはめる。
【0054】
上述したように、プロセッサ48は、各{コイル44、コイル60}対ごとにステップ88の適合および外挿処理をおこなう。ステップ88の出力は、歪みがほとんど無い複数の等価な直流磁界強度値(即ち、X(0)値)である。
【0055】
他の実施態様においては、プロセッサ48は、3個の界磁検出コイル60全部の磁界強度測定値を一緒にして、それらを適合し外挿することもできる。この方法は、例えば、コイル60のひとつの磁界強度測定値の信号対雑音比が低いときに用いるのが好ましいであろう。
【0056】
つぎに、プロセッサ48は、位置計算ステップ90で位置センサー52の位置(場所および方位)座標を計算する。プロセッサ48は、等価の直流磁界強度推定値を補償された位置信号として使い、センサー52、従ってカテーテル24の遠位端の場所および方位座標を計算する。
【0057】
トラッキングフィールドを歪ませる磁界歪み物体は、強磁性材料の含有量が多い場合がある。強磁性材料による影響は、渦電流による影響とは違って、ゼロ周波数においても無くならない。他方、強磁性材料の位置測定に対する影響は、通常一定の遮断周波数(cut-off frequency)以上の周波数では減少する。従って、強磁性物体がシステムの位置測定における歪みの大きな原因であるときには、プロセッサ48は、関数X(f)をゼロ周波数ではなくて無限周波数に外挿することができる。無限周波数での関数X(f)の漸近値を、今度は歪み補償値(distortion-corrected value)として使う。
【0058】
さらに他のやり方としては、磁界強度測定値の周波数依存を、本明細書で説明した方法を用いて、任意の他の適当な標的となる周波数に外挿または補間(interpolated)することができる。
【0059】
本明細書に記載された実施態様は、主として医療用位置追跡および操作システムの歪み排除能力の向上に関するものであるが、これらの方法およびシステムは、その他の用途、例えば手術台、X線透視装置、MRI装置、および/または任意の他の磁界を歪ませる物体が原因の歪みを軽減するために用いることができる。
【0060】
従って、上述の実施態様は本発明を例示するものであり、本発明は本明細書に特に示し説明したことに限定されないことは、理解できるであろう。むしろ、本発明の範囲には、本明細書の説明を読めば当業者が思い付くであろうし、また従来技術には開示されていない、本発明の変形および変更ばかりでなく、上述のさまざまな特徴の組み合わせおよびそれらの副次的な組み合わせが含まれる。
【0061】
〔実施の態様〕
(1)物体の位置を追跡する方法において、
少なくとも一つの磁界発生器を使用して前記物体の近傍に二つあるいはそれ以上周波数で交流(AC)磁界を発生させるステップと、
前記物体に関連付けられたフィールドセンサーを使用して前記AC磁界を検出し、前記フィールドセンサーでの前記AC磁界の振幅および方向を示す対応するACデータポイントを作り出すステップであって、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかが歪みを受けている、ステップと、
前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために、前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿するステップと、
前記外挿されたデータポイントに応じて、前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算するステップと、
を含む、方法。
(2)実施の態様1に記載の方法において、
前記方法は、前記物体を患者の臓器内に挿入するステップを含み、
前記物体の位置座標を計算するステップは、前記臓器内での前記物体の位置を追跡することを含む、方法。
(3)実施の態様2に記載の方法において、
前記少なくとも一つの磁界発生器は、前記物体に関連付けらており、
前記フィールドセンサーは、前記臓器の外部に配置されている、方法。
(4)実施の態様1に記載の方法において、
前記歪みは、前記AC磁界の少なくともいくつかにさらされている磁界歪み物体(field-distorting object)が原因で発生し、
前記物体は、金属性材料、常磁性材料、および強磁性材料からなる群から選択される材料を含む、方法。
(5)実施の態様1に記載の方法において、
前記標的周波数は、ゼロ周波数を含む、方法。
(6)実施の態様1に記載の方法において、
前記標的周波数は、無限周波数を含む、方法。
(7)実施の態様1に記載の方法において、
前記依存を外挿するステップは、関数を前記ACデータポイントおよび前記AC磁界の前記周波数に適合させること、ならびに、前記標的周波数での前記関数の値を求めることを含む、方法。
(8)実施の態様7に記載の方法において、
前記関数は、多項式関数および有理関数からなる群から選択され、
前記関数を適合させることは、前記関数の係数に値を割当てることを含む、方法。
(9)実施の態様7に記載の方法において、
前記依存を外挿するステップは、事前に得た磁界測定値(field measurements)に基づいて前記関数を定義することを含む、方法。
(10)実施の態様9に記載の方法において、
前記関数を定義することは、主成分分析(PCA)法を適用して、前記事前に得た磁界測定値に基づいてPCA基底関数を作り出すこと、および、前記PCA基底関数を使って前記関数を定義すること、を含む、方法。
【0062】
(11)物体の位置を追跡するためのシステムにおいて、
少なくとも一つの磁界発生器であって、前記物体の近傍に二つあるいはそれ以上周波数で交流(AC)磁界を発生させるように構成された、少なくとも一つの磁界発生器と、
前記物体に関連付けられたフィールドセンサーであって、前記AC磁界を検出し、前記フィールドセンサーでの前記AC磁界の振幅および方向を示す対応するACデータポイントを作り出すように構成され、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかが歪みを受けている、フィールドセンサーと、
プロセッサであって、前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿し、前記外挿されたデータポイントに応じて前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算するように構成されている、プロセッサと、
を備えている、システム。
(12)実施の態様11に記載のシステムにおいて、
前記物体は、患者の臓器内に挿入するように構成されており、
前記プロセッサは、前記臓器内で前記物体の位置を追跡するように構成されている、システム。
(13)実施の態様12に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも一つの磁界発生器は、前記物体に関連付けらており、
前記フィールドセンサーは、前記臓器の外部に配置されている、システム。
(14)実施の態様11に記載のシステムにおいて、
前記歪みは、前記AC磁界の少なくともいくつかにさらされている磁界歪み物体が原因で発生し、
前記物体は、金属性材料、常磁性材料、および強磁性材料からなる群から選択される材料を含む、システム。
(15)実施の態様11に記載のシステムにおいて、
前記標的周波数は、ゼロ周波数を含む、システム。
(16)実施の態様11に記載のシステムにおいて、
前記標的周波数は、無限周波数を含む、システム。
(17)実施の態様11に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサは、関数を前記ACデータポイントおよび前記AC磁界の前記周波数に適合させ、かつ前記標的周波数での前記関数の値を求めるように構成されている、システム。
(18)実施の態様17に記載のシステムにおいて、
前記関数は、多項式関数および有理関数からなる群から選択され、
前記プロセッサは、前記関数の係数に値を割当てることにより前記関数を適合するように構成されている、システム。
(19)実施の態様17に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサは、事前に得た磁界測定値に基づいて前記関数を定義するように構成されている、システム。
(20)実施の態様19に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサは、主成分分析(PCA)法を適用して前記事前に得た磁界測定値に基づいてPCA基底関数を作り出すように構成されており、かつ、前記PCA基底関数を使って前記関数を定義するように構成されている、システム。
【0063】
(21)物体の位置を追跡するシステムに使用されるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品は、コンピュータ読み取り可能な媒体であって、プログラム命令が格納されている、媒体を含み、
このプログラム命令は、該コンピュータに前記プログラム命令が読み取られると、該コンピュータに、
前記物体の近傍に交流(AC)磁界を二つあるいはそれ以上の周波数で発生させるために少なくとも一つの磁界発生器を制御させ、
前記フィールドセンサーにより検出された前記それぞれのAC磁界の振幅および方向を示すACデータポイントを前記物体に関連付けられたフィールドセンサーから受取らせ、ここで、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかは歪みを受けており、
前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿させ、さらに、
前記外挿されたデータポイントに応じて前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算させる、
製品。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施態様による体内の物体の位置追跡および操作のためのシステムを簡略化して示す絵入りの図である。
【図2】本発明の実施態様によるカテーテルを簡略化して示す絵入りの図である。
【図3】本発明の実施態様による測定された磁界強度データの周波数外挿を簡略化して示すグラフである。
【図4】本発明の実施態様による磁界歪みの存在下での位置追跡の方法を簡略化して示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の位置を追跡する方法において、
少なくとも一つの磁界発生器を使用して前記物体の近傍に二つあるいはそれ以上の周波数で交流(AC)磁界を発生させるステップと、
前記物体に関連付けられたフィールドセンサーを使用して前記AC磁界を検出し、前記フィールドセンサーでの前記AC磁界の振幅および方向を示す対応するACデータポイントを作り出すステップであって、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかが歪みを受けている、ステップと、
前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために、前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿するステップと、
前記外挿されたデータポイントに応じて、前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記方法は、前記物体を患者の臓器内に挿入するステップを含み、
前記物体の位置座標を計算するステップは、前記臓器内での前記物体の位置を追跡することを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記少なくとも一つの磁界発生器は、前記物体に関連付けらており、
前記フィールドセンサーは、前記臓器の外部に配置されている、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記歪みは、前記AC磁界の少なくともいくつかにさらされている磁界歪み物体が原因で発生し、
前記物体は、金属性材料、常磁性材料、および強磁性材料からなる群から選択される材料を含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記標的周波数は、ゼロ周波数を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記標的周波数は、無限周波数を含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記依存を外挿するステップは、関数を前記ACデータポイントおよび前記AC磁界の前記周波数に適合させること、ならびに、前記標的周波数での前記関数の値を求めること、を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記関数は、多項式関数および有理関数からなる群から選択され、
前記関数を適合させることは、前記関数の係数に値を割当てることを含む、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記依存を外挿するステップは、事前に得た磁界測定値に基づいて前記関数を定義することを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記関数を定義することは、主成分分析(PCA)法を適用して、前記事前に得た磁界測定値に基づいてPCA基底関数を作り出すこと、および、前記PCA基底関数を使って前記関数を定義すること、を含む、方法。
【請求項11】
物体の位置を追跡するためのシステムにおいて、
少なくとも一つの磁界発生器であって、前記物体の近傍に二つあるいはそれ以上の周波数で交流(AC)磁界を発生させるように構成された、少なくとも一つの磁界発生器と、
前記物体に関連付けられたフィールドセンサーであって、前記AC磁界を検出し、前記フィールドセンサーでの前記AC磁界の振幅および方向を示す対応するACデータポイントを作り出すように構成され、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかが歪みを受けている、フィールドセンサーと、
プロセッサであって、前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿し、前記外挿されたデータポイントに応じて前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算するように構成されている、プロセッサと、
を備えている、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記物体は、患者の臓器内に挿入するように構成されており、
前記プロセッサは、前記臓器内で前記物体の位置を追跡するように構成されている、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも一つの磁界発生器は、前記物体に関連付けらており、
前記フィールドセンサーは、前記臓器の外部に配置されている、システム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記歪みは、前記AC磁界の少なくともいくつかにさらされている磁界歪み物体が原因で発生し、
前記物体は、金属性材料、常磁性材料、および強磁性材料からなる群から選択される材料を含む、システム。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記標的周波数は、ゼロ周波数を含む、システム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記標的周波数は、無限周波数を含む、システム。
【請求項17】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサは、関数を前記ACデータポイントおよび前記AC磁界の前記周波数に適合させ、かつ前記標的周波数での前記関数の値を求めるように構成されている、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記関数は、多項式関数および有理関数からなる群から選択され、
前記プロセッサは、前記関数の係数に値を割当てることにより前記関数を適合するように構成されている、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサは、事前に得た磁界測定値に基づいて前記関数を定義するように構成されている、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサは、主成分分析(PCA)法を適用して前記事前に得た磁界測定値に基づいてPCA基底関数を作り出すように構成されており、かつ、前記PCA基底関数を使って前記関数を定義するように構成されている、システム。
【請求項21】
物体の位置を追跡するシステムに使用されるコンピュータソフトウェア製品において、
前記製品は、コンピュータ読み取り可能な媒体であって、プログラム命令が格納されている、媒体を含み、
このプログラム命令は、該コンピュータに前記プログラム命令が読み取られると、該コンピュータに、
前記物体の近傍に交流(AC)磁界を二つあるいはそれ以上の周波数で発生させるために少なくとも一つの磁界発生器を制御させ、
前記フィールドセンサーにより検出された前記それぞれのAC磁界の振幅および方向を示すACデータポイントを前記物体に関連付けられたフィールドセンサーから受取らせ、ここで、前記検出されたAC磁界の少なくともいくつかは歪みを受けており、
前記AC磁界の前記振幅および方向を前記歪みの低減したレベルの状態で求めるために前記ACデータポイントの前記AC磁界の複数の周波数への依存を単一の標的周波数への依存に外挿させ、さらに、
前記外挿されたデータポイントに応じて前記少なくとも一つの磁界発生器に対する前記物体の位置座標を計算させる、
製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−58307(P2008−58307A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−213905(P2007−213905)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(500520846)バイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765, U.S.A.
【Fターム(参考)】