説明

味覚調節物質を同定するためのモデル味覚細胞および使用方法

本発明は、味覚シグナル伝達に有用な味覚受容体ならびに関連の細胞性タンパク質および/または分子を天然にまたは組換えにより発現するモデル味覚細胞を提供する。さらに、本発明は、甘味および/またはその他の味覚のシグナル伝達を調節する化合物についてスクリーニングするための、これらのモデル味覚細胞に関する使用方法も提供する。また、モデル味覚細胞を使用して同定した化合物/調節物質を含む組成物も提供する。好ましい実施形態では、モデル味覚細胞は、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、およびそれに由来する細胞に由来する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全内容が参照によって本明細書に組み込まれている、2006年7月27日に出願された米国仮特許出願第60/820490号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、1種または複数のシグナル伝達タンパク質および味覚シグナル伝達に必要な関連の細胞機構を内因性および/または天然に発現する細胞、ならびに味覚シグナル伝達を調節する化合物/調節物質の同定にこれらの細胞を使用するための方法に関する。具体的には、本発明は、味覚調節化合物を同定するために、味覚受容体および関連の細胞シグナル伝達機構を天然に発現するHuTu−80ヒト腸内分泌細胞およびそれに由来する細胞を使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
味覚細胞は、舌表面上の味蕾の中に集まっている(Lindemann,1996,Physiol.Rev.76:718−66)。GPCRの2つのファミリー、すなわち、甘味およびうまみ味を媒介するGPCRのT1Rファミリー、ならびに苦味を媒介するGPCRのT2Rファミリーが、味覚細胞中で同定されている(Nelsonら,2001,Cell 106:381−90;Nelsonら,2002,Nature 416:199−202;Liら,2002,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:4692−96;Zhaoら,2003,Cell 115:255−66;Adlerら.,2000,Cell 100:693−702;Chandrashekarら,2000,Cell 100:703−11;Bufeら,2002,Nat.Genet.32:397−401)。これらの受容体の全ての下流へのシグナル伝達は、甘味、うま味および苦味の伝達の主要なエフェクター酵素であるホスホリパーゼCサブタイプβ2(PLCβ2)、ならびにtrpチャネルサブタイプm5(TRPM5)に依存することが示されている(Zhangら.,2003,Cell 112:293−301)。
【0004】
味覚は、苦味、塩味、酸味、甘味およびうま味(すなわち、グルタミン酸の塩に対する応答)の5つの主要な味覚に分けることができる。異なる味覚の様式が、異なる機構によって機能すると思われる。例えば、甘味は、サブユニットであるT1R2とT1R3とのヘテロ二量体であるGタンパク質共役T1R受容体を介して媒介されると思われる。苦味は、1種または複数のGタンパク質共役T2R受容体によって媒介されると思われる。さらに、うま味は、T1R1とT1R3とのヘテロ二量体(Zhaoら,2003,Cell,115,255−266)、およびおそらくmGluR4として知られる代謝調節型のグルタミン酸受容体の改変体(ChaudhariおよびRoper,199,Ann.NY Acad.Sci.,855,398−406)によっても媒介されると思われる。
【0005】
ガストデューシンは、味選択的Gタンパク質である(McLaughlinら,1992,Nature,357,563−69)。ガストデューシンの活性化は、細胞内反応のカスケード、すなわち、ホスホジエステラーゼの活性化;3’,5’−環状アデノシン一リン酸(cAMP)および3’,5’−環状グアノシン一リン酸(cGMP)の分解;ならびに細胞の脱分極に至る、環状ヌクレオチド依存性カチオンチャネルの閉鎖を引き起こす。ガストデューシンは、トランスデューシンに対して約80%〜90%相同である。トランスデューシンもまた、免疫細胞化学的には味蕾に局在化し、味特異的PDE活性の活性化による味覚シグナル伝達に関係があるとされている(Ruiz−Avilaら,1995,Nature,376,80−85)。ガストデューシンは、in vivoにおける苦い化合物および甘い化合物に応答した伝達に関係があるとされている(Wongら,1996,Nature,381,796−800)。
【0006】
甘い物質および/苦い物質を検出するために味覚系が選択されている(HernessおよびGilbertson,1999,Annu Rev Physiol 61:873−900;HoeferおよびDrenckhahn,1998,Histochem Cell Biol.110:303−309)。舌以外では、また、ガストデューシンのαサブユニット(Gαgust)の発現が、胃細胞(Hoeferら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci USA 93:6631−34;Wuら,2002,Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:2392−97)および膵臓細胞(HoeferおよびDrenckhahn,1998,Histochem Cell Biol.110:303−309)にも局在化しており、これは、味を感知する機構が胃腸管中にもまた存在することを示唆する(Wuら,2005,Physiol Genomics 22:139−149;Wuら,2002,Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:2392−97)。
【0007】
種々の味覚受容体が、STC細胞系およびNCI細胞系等の腸内分泌細胞系中に見い出されている。例えば、UCLAの研究者らは、細胞内味覚シグナル伝達に関係があるとされる一連のT2R受容体、ならびにGタンパク質のアルファサブユニット、すなわちGαgustおよびGαt−2を均一に発現する誘導体化STC−1系を、単一細胞クローン化を介して単離および同定し、誘導体化STC−1系を使用して、T2R受容体を活性化して食欲を調節することができる化合物について、アッセイすることができることを示唆する(WO03031604、また、UCLA Technology Available For Licensing:EXPRESSION OF GASTROINTESTINAL CHEMSENSORY RECEPTORS IN DERIVATIZED MOUSE STC−1 CELL LINESも参照)。また、ヒト腸内分泌細胞系NCI−H716も、1種または複数の味覚シグナル伝達タンパク質を含有することが実証されており、これは、味覚に関する味覚調節物質をスクリーニングおよび同定するために使用されている(米国特許出願公開第2005/0244810号、第2005/0177886号)。さらに、HuTu−80細胞もまた、α−ガストデューシン、いくつかの胃ペプチドホルモン、多数のT2R苦味受容体およびT1R3受容体のみを発現することが報告されている(Rozengurtら,2006,Am J.Physiol Gastrointest Liver Physiol 291:G792−802)。しかし、Rozengurtらは、HuTu−80細胞が、T1R2甘味受容体を発現することを示すこと、およびHuTu−80が任意の甘味物質に応答することを支持する何らかのデータを提供することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過去10年にわたり、味覚受容体と相互作用して、天然の味覚刺激物質を模倣または遮断する種々の薬剤の開発に相当な努力が払われている(Cagan,1989,Ed.,Neural Mechanisms in Taste,第4章,CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.)。しかし、4つの基本的な味を模倣または遮断する新しい薬剤の開発は、味覚の様式の伝達に関与する味覚細胞タンパク質の知識不足によって制限されている。当技術分野においては、味覚の検出および/もしくは伝達に関与するかまたはそれに影響を及ぼす新しい製品および方法が引き続き求められている。味覚の検出および伝達を研究するためのヒトのモデル実験系を見い出すことにより、味覚の分子生物学および生化学の我々の理解に役立つはずである。そのようなモデル系は、新規の甘味物質、望ましい風味の増強物質、または望ましくない風味の遮断物質についてスクリーニングするのに有用となるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、味覚シグナル伝達に関する化合物および/または調節物質を同定する高スループットスクリーニングアッセイ中で使用するための、味覚受容体ならびに関連シグナル伝達タンパク質および関連の細胞機構を内因性および/または天然に発現する、味を感知する細胞の代替の豊富な供給源(「モデル味覚細胞」)を提供する。1つの好ましい実施形態では、本発明は、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞に由来するモデル味覚細胞、好ましくは、HuTu−80親細胞系(ATCC:HTB−40(商標))、より好ましくは、HuTu−80親細胞(ATCC:HTB−40(商標))に由来する強化された甘味感受性のサブクローン化細胞系および/または改変細胞系を提供する。HuTu−80細胞、ならびに本発明の任意の強化されたサブクローン化細胞および/または改変細胞は、何らかの味覚細胞の機能性を示し、味覚シグナル伝達に必要な、内因性および/または天然に発現した1種または複数のシグナル伝達タンパク質、関連の細胞機構を含む。
【0010】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、内因性および/または天然に発現した甘味物質受容体および/またはそのホモ−もしくはヘテロ−オリゴマー、ならびに甘味シグナル伝達のための1種または複数のその他のタンパク質および関連の細胞機構を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、内因性および/または天然に発現したうま味受容体または苦味受容体を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、天然に発現したGタンパク質、例として、Gαタンパク質を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、天然に発現したGタンパク質シグナル伝達調節因子(RGS、regulator G protein signaling)タンパク質を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、天然に発現した、味覚シグナル伝達のためのエフェクターを含む。さらに、本発明は、ヒトHuTu−80内分泌細胞およびそれに由来する細胞からの、モデル味覚細胞を生成する方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、味覚シグナル伝達を調節するための化合物および/または調節物質を同定するために、HuTu−80内分泌細胞およびそれに由来する細胞からの、モデル味覚細胞を使用するための方法も提供する。1つの好ましい実施形態では、本発明は、本発明のモデル味覚細胞を使用して、味覚シグナル伝達を調節する複数の化合物についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法はまた、本発明のモデル味覚細胞から、味覚シグナル伝達に必要な1種または複数の対象とするタンパク質を単離および精製するステップを含んでもよい。この方法はさらに、細胞に基づいた多様なアッセイを使用して、味覚シグナル伝達における、対象とする精製したタンパク質に対するか、またはその他のタンパク質および/または関連の細胞機構と対象とする精製したタンパク質の相互作用に対する試験化合物の効果を決定するステップと;前記細胞に基づいたアッセイに基づいて、味覚シグナル伝達において、対象とする精製したタンパク質を調節するか、またはその他のタンパク質および関連の細胞機構と対象とする精製したタンパク質の相互作用を調節する、試験化合物を同定するステップと;モデル味覚細胞中での味覚シグナル伝達の調節において当該化合物を検証するステップとを含む。
【0012】
1つの好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞から単離および精製した対象とするタンパク質は、1種または複数の味覚受容体(例えば、T1R2および/またはT1R3)、Gタンパク質、RGSタンパク質、エフェクター、および/または味覚シグナル伝達に有用なさらなる関連の細胞機構を含む。さらに別の好ましい実施形態では、対象とするタンパク質は、甘味受容体およびそのホモ−もしくはヘテロ−オリゴマー;苦味受容体およびそのホモ−もしくはヘテロ−オリゴマー;またはうま味受容体を含む味覚受容体である。さらに別の好ましい実施形態では、対象とするタンパク質は、Gαiタンパク質、α−ガストデューシン、Gαi2およびその他からなる群から選択されるGαタンパク質を含むGタンパク質である。さらに別の好ましい実施形態では、対象とするタンパク質は、GAIP、RGSz1、RGS1、RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS6、RGS7、RGS8、RGS9、RGS110、RGS11、RGS12、RGS13、RGS14、RGS16、RGS17、RGS21、D−AKAP1、p115RhoGEF、PDZ−RhoGEF、bRET−RGS、AxinおよびmCONDUCTINを含むRGSタンパク質である。さらに別の好ましい実施形態では、対象とするタンパク質は、ホスホリパーゼC(PLC)、cAMP、cGMP、IP3、カルシウム(Ca2+)およびその他のセカンドメッセンジャーを含むエフェクターである。
【0013】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、甘味の増強について複数の化合物をスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、1)本発明のモデル味覚細胞を提供するステップであって、味覚細胞が、味覚受容体、ならびに味覚シグナル伝達に必要な1種もしくは複数のその他のタンパク質および/または関連の細胞機構を内因性および/または天然に発現するステップと;2)モデル味覚細胞を、味物質と、単独でまたは試験化合物と組み合わせて接触させるステップと;3)a)細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、カルシウム、ホスホイノシチド)の変化、b)タンパク質キナーゼ活性(例えば、ERK、PKC、Src、EGFR等)の変化、c)消化管ペプチド(例えば、ペプチドYY(PYY)、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、胃のインスリン分泌性ペプチド(GIP)等)の分泌の変化、およびd)モデル味覚細胞による神経伝達物質の分泌の変化のうちの1種または複数をモニターするための細胞に基づいたアッセイを使用して、モデル味覚細胞に対する試験化合物の効果を決定するステップと;4)上記3)に記載した変化をもたらす化合物を同定するステップと;5)味物質による味覚の増強について、ヒトによる味の官能試験において、同定した化合物の効力を検証するステップとを含む。本明細書で使用する場合、味物質は、甘味物質、苦味物質およびその他の味覚調節物質を包含する。本明細書で使用する場合、甘味物質として、これらに限定されないが、炭水化物の甘味物質、合成の強力な甘味物質、天然の強力な甘味物質、ポリオールおよびアミノ酸が挙げられる。
【0014】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、ヒトの味覚を増強するための複数の化合物についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は:本発明のモデル味覚細胞を提供するステップであって、味覚細胞が、RGSタンパク質、ならびにGαタンパク質等の味覚シグナル伝達に必要な1種もしくは複数のその他のタンパク質および/または関連の細胞機構を天然に発現するステップと;RGSタンパク質活性を阻害する化合物(RGSタンパク質阻害剤)を同定するステップと;味物質単独でおよび化合物(RGSタンパク質阻害剤)と組み合わせて、味覚受容体によって活性化された味覚シグナルを決定するステップと;前記味物質の味覚シグナル伝達を増加させる化合物(RGSタンパク質阻害剤)を同定するステップとを含む。1つの好ましい実施形態では、RGSタンパク質は、RGS21タンパク質である。
【0015】
さらに、本発明は、ヒトの甘味、ならびにうま味および苦味について、本発明のモデル味覚細胞を使用して同定した化合物および/または調節物質の効果を検証する方法も提供する。1つの好ましい実施形態では、本発明は、試験甘味物質自体を味見して認識された甘さと、試験甘味物質と同定した調節化合物とを組み合わせて味見して認識された甘さとの比較を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、モデル味覚細胞を提供し、甘味シグナル伝達ならびにうま味および苦味のシグナル伝達の調節物質のスクリーニングおよび同定にこれらの細胞を使用するための方法を提供する。本発明のモデル味覚細胞は、ヒトHuTu−80内分泌細胞、ならびにこれらの細胞に由来する任意のサブクローンおよび/または改変細胞を含む。
【0017】
また、本発明は、モデル味覚細胞、ならびにヒトHuTu−80内分泌細胞(全内容が参照によって本明細書に組み込まれている、Rozengurtら,2006,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 291:792−802)および/またはそれに由来する細胞からのモデル味覚細胞を生成する方法も提供する。さらに、本発明は、甘味シグナル伝達、うま味シグナル伝達および苦味シグナル伝達をはじめとする、味覚シグナル伝達を調製するための化合物のスクリーニングおよび同定にこれらのモデル味覚細胞を使用する方法も提供する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「味蕾細胞」または「味覚細胞」は互換的に使用され、舌の味蕾、例えば、葉状、茸状および有郭の細胞を形成する群に組織化される神経上皮細胞を包含する(Roperら,1989,Ann.Rev.Neurosci.12:329−353)。また、味覚細胞は、口蓋、ならびに食道、腸および胃等、その他の組織においても見出される。
【0019】
本明細書で使用する場合、「モデル味覚細胞」は、1種または複数のシグナル伝達タンパク質および/または味覚シグナル伝達に有用な関連する細胞機構を、内因性および/または天然に発現する味覚細胞を生産することができる細胞系を指す。本明細書で使用する場合、「モデル味覚細胞」は、これらに限定されないが、ヒトHuTu−80内分泌細胞、ならびにHuTu−80内分泌細胞に由来する任意のサブクローンおよび/または改変細胞を含む、それに由来する細胞も含む。
【0020】
本明細書で使用する場合、「発現する」または「発現」は、天然の条件下または外因性シグナルもしくはプロモーターへの応答下のいずれかでの、ゲノムまたは組み換え核酸配列による、対象とするタンパク質の細胞生産を指す。本明細書で使用する場合、「発現する」または「発現」は、ポリヌクレオチドがRNAに転写される過程および/またはポリペプチドに翻訳される過程を包含する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、適切な真核細胞の宿主を選択する場合には、RNAのスプライシングを包含してよい。発現のために要求される調節エレメントは、RNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列、およびリボゾーム結合のための転写開始配列を包含する。例えば、細菌の発現ベクターは、lacプロモーター等のプロモーター、ならびに転写開始のためのシャイン・ダルガノ配列および開始コドンAUGを包含する。同様に、真核細胞の発現ベクターは、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種のプロモーター、下流のポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボゾームの脱離のための終止コドンを包含する。そのようなベクターは、市販品として入手しても、または当技術分野で周知の方法、例えば、一般的なベクターを構築するための以下に記載する方法に記載されている配列によって組み立ててもよい。本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、挿入したポリヌクレオチドを、宿主細胞内および/または宿主細胞間に移入する、自己複製の核酸分子を包含する。この用語は、主として核酸分子を細胞内へ挿入するために機能するベクター、主として核酸の複製のために機能する複製ベクター、ならびにDNAまたはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを包含することを意図する。複数の上記機能をもたらすベクターも意図される。
【0021】
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は、内因性のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの担体、あるいは外因性のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの組み込みのためのベクターのためのレシピエントであるか、またはこれらとなることができる、任意の個々の細胞または細胞培養物を包含することを意図する。また、単一の細胞の子孫も包含することを意図する。子孫は、天然の、偶然のまたは意図的な変異によって、元々の親細胞とは、(形態において、またはゲノムDNAもしくは全DNAの相補性において)必ずしも完全に同一でなくてもよい。細胞は、原核生物であっても、または真核生物であってもよく、細胞として、これらに限定されないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞および、これらに限定されないが、マウス、ラット、サルまたはヒトの細胞をはじめとする、哺乳動物細胞が挙げられる。したがって、本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は、遺伝子改変細胞も包含する。「遺伝子改変細胞」という用語は、外来性または外因性の遺伝子またはポリヌクレオチド配列を含有および/または発現する細胞を包含し、それによって、細胞または細胞の子孫の遺伝子型または表現型が改変される。また、「遺伝子改変した」は、細胞内に導入されている遺伝子またはポリヌクレオチド配列を、含有または発現する細胞も包含する。例えば、この実施形態では、遺伝子改変細胞には、細胞にとって内因性でもある遺伝子がすでに導入されている。また、「遺伝子改変した」という用語は、細胞の内因性のヌクレオチドに対する、任意の付加、欠失または破壊も包含する。本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は天然の味蕾細胞および味蕾細胞前駆細胞も包含する。本明細書で使用する場合、「宿主細胞」はモデル味覚細胞も指し、これらに限定されないが、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞およびそれに由来する細胞を含む。
【0022】
本発明はさらに、上記で定義したモデル味覚細胞を用いた、味覚シグナル伝達を調節する複数の化合物についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は:本発明のモデル味覚細胞から、味覚シグナル伝達に必要な1種もしくは複数の対象とするタンパク質を単離および精製するステップと;多様な細胞フリーおよび細胞に基づいたアッセイを使用して、対象とする精製したタンパク質に対するか、または味覚シグナル伝達におけるその他のタンパク質と対象とする精製したタンパク質の相互作用に対する、試験化合物の効果を決定するステップと;前記細胞に基づいたアッセイに基づいて、対象とする精製したタンパク質を、または味覚シグナル伝達におけるその他のタンパク質と対象とする精製したタンパク質の相互作用を、調節する試験化合物を同定するステップと;前記味覚シグナル伝達の調節において、化合物を検証するステップを含む。
【0023】
本明細書で使用する場合、「化合物」または「試験化合物」は、互換的に使用され、好ましくは、小型分子または生理活性作用物質を指す。生理活性作用物質として、これらに限定されないが、哺乳動物中で生理活性を有する天然に存在するかまたは合成の化合物または分子(「生体分子」)、ならびにタンパク質、ペプチド、オリゴペプチド、多糖、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが挙げられる。好ましくは、生理活性作用物質は、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは生体分子である。当業者であれば、試験化合物の性質が、下記で定義する、対象とするタンパク質および/または分子の性質によって変化する場合があることを理解するであろう。本発明の試験化合物は、天然および/または合成の化合物の系統的なライブラリーをはじめとする、任意の入手可能な供給源から得ることができる。
【0024】
一般に、タンパク質の阻害剤または活性化剤についてスクリーニングするための方法および組成物、ならびにin vitroおよび/またはin vivoでのタンパク質対タンパク質およびタンパク質対リガンドの結合研究は、当技術分野で既知であり、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、本発明は、本発明のモデル味覚細胞中で、対象とするタンパク質と対応するGαタンパク質との結合を調節することができる試験化合物についてスクリーニングする方法であって、モデル味覚細胞から、対象とするタンパク質とGαタンパク質を単離および精製すること、試験化合物と、精製した対象とするタンパク質と、精製したGαタンパク質とを一緒にして組み合わせること、ならびに試験化合物の存在下で、対象とするタンパク質とGαタンパク質との結合が、生じるかおよび/または変化するかをさらに決定することによって、スクリーニングする方法を提供する。以下に議論するように、試験化合物は、当技術分野で周知の多様なライブラリーから提供することができる。
【0025】
さらに別の実施形態では、本発明は、モデル味覚細胞を用いて、試験化合物の、味覚受容体に結合する能力および調節する能力を検出するためのスクリーニングアッセイを提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、モデル味覚細胞を用いて、試験化合物の、RGS21タンパク質のGαタンパク質への結合を阻害する能力を検出するためのスクリーニングアッセイを提供する。さらに別の実施形態では、本発明のモデル味覚細胞を用いて、味覚受容体および/またはRGS21タンパク質の、発現、活性または結合能を調節する、阻害剤/調節物質も提供される。
【0026】
本明細書で使用する場合、「調節の/調節/調節物質」、「阻害性の/阻害する/阻害剤」、「活性化する/活性化剤」は、それらの種々の文法上の形態を包含し、タンパク質分子および/または関連する細胞機構の、調節、阻害および/または活性化を指すために互換的に使用され、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニストならび味覚シグナル伝達に有用なそれらの相同体および模倣物質を指し、対象とする分子および/または細胞機構の、遺伝子もしくはタンパク質または生物学的に活性な部分を含むそれらの断片の発現に影響を及ぼすことを含む。調節物質として、例えば、遺伝子もしくはタンパク質、または生物学的に活性な部分を含むそれらの断片と、それらの対応するGαタンパク質ならびに味覚シグナル伝達におけるその他のエフェクターおよび/または関連する細胞機構との相互作用を変化させる物質;ならびに対象とする遺伝子もしくはタンパク質、または生物学的に活性な部分を含むそれらの断片の発現レベルを、停止させる、不活性化するおよび脱感作させる物質が挙げられる。調節物質は、変化した活性を有する対象とする遺伝子またはタンパク質の遺伝子改変体、ならびに天然のおよび合成の、リガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小型化学分子等を包含することができる。「調節効果」は、阻害の上方制御、誘発、刺激、増強、減弱および/または軽減、ならびに阻害および/または下方制御もしくは抑制を指す。阻害剤は、例えば、対象とする遺伝子またはタンパク質と結合して、部分的または全体的に刺激を遮断し、減少させ、阻止し、活性化を遅延し、不活性化し、脱感作し、または下方制御する物質、例えば、アンタゴニストである。活性化剤は、例えば、対象とする遺伝子またはタンパク質と結合して、それを刺激し、増加させ、開放し、活性化し、促進し、その活性化を増強し、感作し、または上方制御する物質、例えば、アゴニストである。
【0027】
本明細書で使用する場合、対象とするタンパク質の「生物学的に活性な部分」は、そのタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同な、またはそのタンパク質のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含むタンパク質の断片を包含し、この部分は、完全長のタンパク質より少ないアミノ酸を包含し、完全長のタンパク質の少なくとも1つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性な部分は、そのタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。タンパク質の生物学的に活性な部分は、長さが、例えば、10、25、50、100または200個以上のアミノ酸であるポリペプチドであることができる。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、天然に発現する、甘味物質受容体、うまみ受容体もしくは苦味受容体、および/またはそのヘテロ−もしくはホモ−オリゴマー、ならびに甘味シグナル伝達のための1種または複数の他のタンパク質および/または関連する細胞機構を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、Gαタンパク質のような、天然に発現するGタンパク質を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、天然に発現するGタンパク質シグナル伝達調節因子(RGS)タンパク質を含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、天然に発現する、味覚シグナル伝達のためのエフェクターを含む。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞は、天然に発現する、味覚シグナル伝達のために必要な細胞機構を含む。
【0029】
本明細書で使用する場合、「味覚受容体」とは味覚細胞膜の表面に存在する受容体タンパク質であって、そのアゴニストおよび/またはリガンドに結合するとGタンパク質共役受容体(GPCR)シグナル伝達経路を介して味覚シグナル伝達を活性化するタンパク質を指す。「味覚受容体」は、「甘味物質受容体」を指し、甘味シグナル伝達および/またはうまみシグナル伝達を調節する、現在知られているおよび今後記載されるGPCRのT1Rファミリーの全てのメンバーを含み、これらに限定されないが、推定上のT1R、たとえばT1R1/T1R1、T1R2/T1R2およびT1R3/T1R3のようなホモ−オリゴマー;T1R1/T1R3およびT1R2/T1R3のようなヘテロ−オリゴマー、ならびにそれらのアイソフォームおよび相同体を含む。「味覚受容体」は、「苦味受容体」も指し、苦味シグナル伝達を調節する、現在知られているおよび今後記載されるGPCRのT2Rファミリーの全てのメンバーを含み、これらに限定されないが、推定上のT2R、ホモ−オリゴマー、ヘテロ−オリゴマーおよびそれらのアイソフォームまたは相同体を含む。野生型T1RまたはT2Rタンパク質に対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上相同である味覚受容体が、本発明に包含される。
【0030】
本明細書で使用する場合、「Gα」または「Gαタンパク質」という用語は、現在知られているかまたは今後記載されるGαiクラスの全てのメンバーを包含し、メンバーとして、これらに限定されないが、Gαi1−3、Gαz、Gαo、Gαs、Gαolf、Gαt、Gαq、Gα11−14およびGα16が挙げられる。特定の実施形態では、Gαタンパク質は、1つまたは複数の変異、欠失または挿入を含有する場合がある。そのような実施形態では、Gαタンパク質は、野生型Gαタンパク質に対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上相同である。本明細書で使用する場合、「対応するおよび/または適切なGαタンパク質」は、使用する細胞、スクリーニングアッセイまたは系において、対象とするRGSタンパク質、例えば、RGS21タンパク質に接触することができるGαタンパク質を意味する。また、対応するGαタンパク質は、使用する細胞、スクリーニングアッセイまたは系において、GPCRに共役し、および/またはGTPに結合し、その結果、Gαタンパク質は、GPCRおよび/またはGTPに接触することができるか、GPCRに結合したアゴニストに応答して、シグナルを伝達することができる。本明細書で使用する場合、「GPCRに結合したアゴニスト」という用語は、GPCRに結合して応答を惹起する、任意の分子または薬剤を包含する。
【0031】
本明細書で使用する場合、「RGS」または「RGSタンパク質」という用語は、現在知られているかまたは今後記載されるGタンパク質シグナル伝達の調節因子および/またはタンパク質を包含し、これらは、Gαiクラスのタンパク質またはその他のGαタンパク質を阻害するかまたはそれに結合することができる。そのようなRGSタンパク質として、これらに限定されないが、GAIP、RGSz1、RGS1、RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS6、RGS7、RGS8、RGS9、RGS10、RGS11、RGS13、RGS14、RGS16、RGS17、RGS21、D−AKAP2、p115RhoGEF、PDZ−RhoGEF、bRET−RGS、AxinおよびmCONDUCTIN、ならびに任意の現在知られているかまたは今後記載されるアイソフォームまたは相同体が挙げられる。さらに、本明細書で使用する場合、「RGSタンパク質」という用語は、RGSボックスドメイン、非RGSボックスドメイン、または1つもしくは複数の変異、欠失または挿入を有するかまたは有しない、任意のその他の機能性ドメイン/モチーフをはじめとする、RGSコアドメインを含有する、現在知られているかまたは今後記載されるタンパク質も包含する。1つの好ましい実施形態では、RGSタンパク質は、RGS21タンパク質、そのアイソフォームまたは相同体を指す。さらに別の好ましい実施形態では、RGS21タンパク質のコアドメインは、野生型RGS21タンパク質のコアドメインに対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上相同である。本明細書で使用する場合、RGS21タンパク質のコアドメインは、そのタンパク質の生物学的に活性な部分を含む。
【0032】
本発明はまた、本発明のモデル味覚細胞から対象とする遺伝子および/またはタンパク質を単離および精製する方法を提供する。本明細書で使用する場合、「単離した/単離する」または「精製した/精製する」タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは分子は、それらが天然に存在する環境から取り出したこと、または細胞物質、例として、当該タンパク質のポリヌクレオチドもしくは分子が由来する細胞もしくは組織の供給源からの、その他の混入タンパク質を実質的に有しないこと、または化学合成された場合には、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に有しないことを意味する。「細胞物質を実質的に有しない」という言葉は、それを単離または組換えにより産生または合成した細胞の細胞成分から分離した調製物を包含する。一実施形態では、「細胞物質を実質的に有しない」という言葉は、約30%(乾燥重量)未満のその他のタンパク質(本明細書では「混入タンパク質」とも呼ばれる)、より好ましくは約20%未満、さらにより好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満のその他のタンパク質を有する、対象とするタンパク質の調製物を包含する。タンパク質またはポリヌクレオチドを組換えによって産生する場合、これはまた、培地を実質的に有しないことが好ましく、すなわち、培地は、対象とするタンパク質の調製物の約20%未満、より好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満の容量に相当する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「遺伝子」は、後に転写および翻訳される特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを包含する。また、本明細書に記載する任意のポリヌクレオチド配列を使用して、当該ポリペプチドが関連する遺伝子のより大きな断片または全長コード配列を同定することができる。より大きな断片の配列を単離する方法は、当業者には既知である。本明細書で使用する場合、「天然に存在する」ポリヌクレオチド分子として、例えば、天然に存在する(例えば、天然のタンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNA分子またはDNA分子が挙げられる。
【0034】
1つの好ましい実施形態では、本発明のモデル味覚細胞において内因性におよび/または天然に発現する、対象とするタンパク質をコードするcDNAは、当業者によく知られたRT−PCR法を用いてモデル味覚細胞のmRNAから単離される。本明細書で用いる場合、「cDNA」という用語は、モデル味覚細胞中に存在するmRNA分子と相補的なDNAを含む。mRNAは、逆転写酵素のような酵素によりcDNAに変換することができる。
【0035】
本明細書では、「ポリヌクレオチド」、「核酸/ヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの高分子の形態を包含する。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を果たすことができる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子の断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボゾームRNA、リボザイム、DNA、cDNA、ゲノムDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐したポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離したDNA、任意の配列の単離したRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、天然に存在するもの、合成、組換え、またはそれらの任意の組合せであってよい。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド、例として、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドの類似体を含んでよい。ヌクレオチド構造に改変を存在させる場合には、改変を起こすのは、高分子に組み立てる前でも、後でもよい。ヌクレオチド配列を、非ヌクレオチドの成分が中断する場合がある。ポリヌクレオチドは、重合後に、標識成分の結合によって等、さらに改変することができる。この用語はまた、二本鎖および一本鎖の両方の分子も包含する。別段の記載または要求がない限り、本発明のいずれの実施形態でも、ポリヌクレオチドは、二本鎖の形態も、二本鎖の形態を作り上げることが知られているかまたは予測される、2本の相補的な一本鎖の形態のそれぞれも包含する。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。ポリヌクレオチドは、アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAである場合には、チミンに代わるウラシル(U)の4つのヌクレオチド塩基の特異的な配列から構成される。このアルファベット表示は、コンピュータ中のデータベースに入力して、例えば機能ゲノム解析および相同性検索等のバイオインフォマティクスの適用に向けて使用することができる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「単離したポリヌクレオチド/cDNA分子」という用語は、当該ポリヌクレオチドの天然の供給源中に存在するその他のポリヌクレオチド分子から分離したポリヌクレオチド分子を包含する。例えば、ゲノムDNAに関しては、「単離した」という用語は、ゲノムDNAが天然では結合している染色体から分離したポリヌクレオチド分子を包含する。好ましくは、「単離した」ポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドが由来する生物体のゲノムDNA中で、当該ポリヌクレオチドに天然では隣接する配列(すなわち、対象とするポリヌクレオチドの5’末端および3’末端に位置する配列)を有しない。例えば、種々の実施形態では、本発明の単離したポリヌクレオチド分子、または本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子は、当該ポリヌクレオチドが由来する細胞のゲノムDNA中で、当該ポリヌクレオチド分子に天然では隣接する、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満のヌクレオチド配列を含有することができる。さらに、cDNA分子等の「単離した」ポリヌクレオチド分子は、組換え技術によって産生された場合には、その他の細胞物質もしくは培地を実質的に有しないものであることができ、または化学的に合成された場合には、化学的前駆体およびその他の化学物質を実質的に有しないものであることができる。
【0038】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、2つ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣物質の化合物を包含する。サブユニットは、ペプチド結合によって連結することができる。別の実施形態では、サブユニットは、その他の結合、例えば、エステル、エーテル等によって結合することができる。本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはLの両方の光学異性体をはじめとする、天然および/または非天然あるいは合成のいずれかのアミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣物質を包含する。3つ以上のアミノ酸のペプチドは、通例、オリゴペプチドと呼ばれる。4つ以上のアミノ酸のペプチド鎖は、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0039】
好ましい実施形態では、味覚シグナル伝達に必要な、本発明のモデル味覚細胞において内因性および/または天然に発現する、対象とするタンパク質は、対象とするタンパク質をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質も含む。本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化した複合体を形成する反応を包含する。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対、ホーグスタイン(Hoogstein)結合、または任意のその他の配列特異的な様式によって生じることができる。複合体は、二本鎖構造を形成する2本の鎖、複数鎖の複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズする鎖、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはポリヌクレオチドのリボザイムによる酵素的な切断等の、より広範な過程におけるステップを構成する場合がある。
【0040】
ハイブリダイゼーション反応は、異なるストリンジェントな条件下で行うことができる。本発明は、低いストリンジェントな条件、より好ましくはストリンジェントな条件、および最も好ましくは高いストリンジェントな条件の下で、本明細書に記載する対象とするタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを包含する。本明細書で使用する場合、「ストリンジェントな条件」という用語は、10×デンハルト溶液、6×SSC、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中、60℃での一晩のハイブリダイゼーションを指す。ブロットを、3×SSC/0.1%SDS、次に1×SSC/0.1%SDS、および最後に0.1×SSC/0.1%SDS中で、62℃で各回30分間順次洗浄する。また本明細書で使用する場合、好ましい実施形態では、「ストリンジェントな条件」という語句は、6×SSC溶液中、65℃でのハイブリダイゼーションも指す。別の実施形態では、「高いストリンジェントな条件」は、10×デンハルト溶液、6×SSC、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中、65℃での一晩のハイブリダイゼーションを指す。ブロットを、3×SSC/0.1%SDS、次に1×SSC/0.1%SDS、および最後に0.1×SSC/0.1%SDS中で、65℃で各回30分間順次洗浄する。核酸のハイブリダイゼーションのための方法は、MeinkothおよびWahl,1984,Anal.Biochem.138:267−284;Current Protocols in Molecular Biology,第2章,Ausubelら編,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1995;ならびにTijssen,1993,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization with Nucleic Acid Probes,パートI,第2章,Elsevier,New York,1993に記載されている。好ましい実施形態では、本明細書で使用する、核酸によってコードされる対象とするタンパク質は、対象とするタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%相同であり、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%相同である核酸を包含する。別の好ましい実施形態では、本発明は、対象とするタンパク質のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%相同であり、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%相同であるタンパク質を、内因性におよび/または天然に発現するモデル味覚細胞も提供する。
【0041】
さらに、本明細書で使用する対象とするタンパク質はまた、キメラタンパク質または融合タンパク質であることができる。本明細書で使用する場合、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、第1のポリペプチドを含み、これは、第2のポリペプチドに動作可能に連結している。キメラタンパク質は、第1または2のポリペプチドに動作可能に連結している第3、4もしくは5、またはその他のポリペプチドを場合によっては含むことができる。キメラタンパク質は、2つ以上の異なるポリペプチドを含むことができる。キメラタンパク質は、同一のポリペプチドの複数のコピーを含むことができる。また、キメラタンパク質は、ポリペプチドのうちの1つまたは複数において、1つまたは複数の変異を含んでもよい。キメラタンパク質を作製するための方法は、当技術分野では周知である。本発明の一実施形態では、キメラタンパク質は、ある味覚受容体タンパク質のその他の味覚受容体タンパク質とのキメラである。本発明のさらに別の実施形態では、キメラタンパク質は、あるGタンパク質とその他のGタンパク質とのキメラ、またはGタンパク質のあるサブユニットとGタンパク質のその他のサブユニットとのキメラである。
【0042】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、甘味を増強するためおよび/または苦味を阻害するための、複数の化合物についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、1)本発明のモデル味覚細胞を提供するステップであって、モデル味覚細胞が、甘味物質受容体ならびに味覚シグナル伝達に必要な1種もしくは複数のその他のタンパク質および/または関連の細胞機構を、内因性におよび/または天然に発現するステップと;2)前記モデル味覚細胞を、甘味物質と、単独でまたは試験化合物と組み合わせて接触させるステップと;3)a)細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、カルシウム、ホスホイノシチド)の変化;b)タンパク質キナーゼ活性(例えば、ERK、PKC、Src、EGFR等)の変化;c)消化管ペプチドの分泌の変化;d)モデル味覚細胞による神経伝達物質の分泌の変化、のうちの1種または複数をモニターするための細胞に基づいたアッセイを使用して、前記モデル味覚細胞に対する試験化合物の効果を決定するステップと;4)上記3)に記載した変化をもたらす化合物を同定するステップと;5)味物質による呈味の調節について、ヒトによる味の官能試験において、同定した化合物の効力を検証するステップを含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、「甘味物質」として、a)これらに限定されないが、スクロース、グルコース、フルクトース、HFCS、HFSS、D−タガトース、トレハロース、D−ガラクトース、ラムノースをはじめとする、炭水化物甘味物質;b)これらに限定されないが、アスパルテーム、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、チクロ、サッカリン、ネオヘスペリジン・ジヒドロカルコンをはじめとする、合成の強力な甘味物質;c)これらに限定されないが、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、ダルコシドA、ダルコシドB、ルブソシド、ステビオシド、モグロシドIV、モグロシドV、モナチン、クルクリン、グリシリジン、タウマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、モナチン、ヘルナンズルチン(Hernandulcin)、フィロズルチ(Phyllodulci)をはじめとする、天然の強力な甘味物質;d)これらに限定されないが、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトをはじめとする、ポリオール、およびe)これらに限定されないが、グリシン、D−またはL−アラニン、D−トリプトファン、アルギニン、セリン、スレオニンをはじめとする、アミノ酸が挙げられる。
【0044】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、細胞内セカンドメッセンジャーをモニターするための細胞に基づいたアッセイを提供する。1つの好ましい実施形態では、本発明は、cAMPおよび/またはcGMPをはじめとする、環状ヌクレオチドを測定するためのアッセイを提供する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、細胞内カルシウム放出を測定するためのアッセイを提供する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、ホスホイノシチドを測定するための従来の方法を使用したアッセイを提供する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、セリン/スレオニン・キナーゼであるERK1および2等のタンパク質キナーゼの活性をモニターするための細胞に基づいたアッセイを提供する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のモデル味覚細胞からの神経伝達物質の分泌をモニターするための細胞に基づいたアッセイを提供する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のモデル味覚細胞からの消化管ペプチドの分泌をモニターするための細胞に基づいたアッセイを提供する。
【0045】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、甘味を増強するための複数の化合物についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、本発明のモデル味覚細胞を提供するステップであって、モデル味覚細胞が、RGSタンパク質、ならびにGαタンパク質等の甘味物質シグナル伝達に必要な1種もしくは複数のその他のタンパク質および/または関連の細胞機構を天然に発現するステップと;RGSタンパク質活性を阻害する化合物(RGSタンパク質阻害剤)を同定するステップと;甘味物質単独の場合および化合物(RGSタンパク質阻害剤)と組み合わせた場合の、甘味物質受容体によって活性化された甘味シグナル伝達を決定するステップと;前記甘味物質の甘味シグナル伝達を増加させる化合物(RGSタンパク質阻害剤)を同定するステップとを含む。1つの好ましい実施形態では、RGSタンパク質は、RGS21タンパク質である。
【0046】
具体的には、これらのシグナル伝達の「計測値」のうちの1種に対する上記で定義した甘味物質の効果を、同定した調節化合物と組み合わせた甘味物質の効果と、モデル味覚細胞中で比較する。1つの好ましい実施形態では、本発明によれば、甘味物質受容体の活性化剤および/またはRGS21タンパク質の阻害剤によって、甘味物質の観察される効果が増加する。例えば、甘味物質単独で、細胞内カルシウムの放出が増加する場合には、その甘味物質と甘味物質受容体の活性化剤および/またはRGS21の阻害剤との組合せによって、カルシウムの放出が、甘味物質単独の場合を上回って増加するはずである。さらに別の好ましい実施形態では、本発明はまた、任意の味覚を調節するための複数の化合物について、本発明のモデル味覚細胞を使用してスクリーニングする方法も提供する。
【0047】
さらに、本発明は、ヒトの甘味、ならびにうま味および苦味について、本発明のモデル味覚細胞中で同定した化合物および/または調節物質の効果を検証する方法も提供する。1つの好ましい実施形態では、本発明は、試験味物質自体を味見して認識された味覚と、試験味物質と同定した調節化合物とを組み合わせて味見して認識された味覚との比較を提供する。
【0048】
また、本発明は、上記で定義したモデル味覚細胞中で、対象とする遺伝子および/またはタンパク質の活性または発現を、阻害および/または調節することができる試験化合物について高スループットスクリーニングを実施する方法も提供する。当技術分野で周知の、多様な高スループット機能アッセイを組み合わせて使用して、異なる種類の活性化試験化合物の反応性をスクリーニングおよび/または研究することができるが、共役系はしばしば、予測することが困難であることから、広い範囲の共役機構を検出するためには、いくつかのアッセイを構成する必要がある場合がある。多様な蛍光に基づいた技術が、当技術分野では周知であり、活性を高スループットおよび超高スループットでスクリーニングすることができる。大きな容量のかつ多様な試験化合物を、良好な感度でスクリーニングすることができるので、味覚シグナル伝達に関する有望な阻害剤および/または調節物質の解析が可能となる。
【0049】
本発明は、当技術分野で既知の高スループットアッセイまたは蛍光に基づいたアッセイ中で、試験化合物と、対象とする遺伝子および/またはタンパク質とを組み合わせることにより、モデル味覚細胞を使用して、対象とする遺伝子および/またはタンパク質の活性を、ならびに/あるいは味覚シグナル伝達におけるその他のタンパク質と対象とする遺伝子および/またはタンパク質の相互作用を調節する能力について試験化合物を高スループットでスクリーニングするための方法を提供する。一実施形態では、高スループットスクリーニングアッセイは、味覚受容体の遺伝子および/またはタンパク質に結合する、複数の試験化合物の能力を検出する。別の実施形態では、高スループットスクリーニングアッセイは、RGSタンパク質の結合パートナー(Gαタンパク質等)がRGSタンパク質に結合するのを阻害する、複数の試験化合物の能力を検出する。さらに別の実施形態では、高スループットスクリーニングアッセイは、味覚受容体シグナル伝達を通して味覚シグナル伝達を調節する、複数の試験化合物の能力を検出する。
【0050】
さらに、本発明は、甘味シグナル伝達を増強するための、モデル味覚細胞中で対象とする遺伝子および/またはタンパク質の阻害剤および/または調節化合物を含む組成物も提供する。また、本発明は、甘味だけでなく、うま味および苦味も調節するための、モデル味覚細胞中で対象とする遺伝子および/またはタンパク質の阻害剤および/または調節化合物を含む組成物も提供する。
【0051】
本発明のこれらおよび多くの他の変形形態および実施形態が、付随する説明および実施例を精査することによって、当業者には明らかとなるであろう。
【実施例1】
【0052】
モデル味覚細胞の製造方法
Rozengurtらにより記載された方法(2006, Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 291:792−802)に基づいて、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞を製造する。プラスチックまたはコラーゲンI被覆プレート中、5%CO/95%空気中、37℃で、10% FBSおよび抗生物質(100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび0.25μg/mlアンフォテリシンB)を含有する最小必須イーグル培地中で、親HuTu−80(ATCC:HTB−40(登録商標))内分泌細胞を増殖する。
【実施例2】
【0053】
モデル味覚細胞を用いた、味覚シグナル伝達の調節物質のスクリーニングおよび同定
味覚シグナル伝達に必要な、1種または複数の対象とするタンパク質を、上記のモデル味覚細胞から単離し精製する。対象とする精製したタンパク質に対するか、または味覚シグナル伝達中のその他のタンパク質と対象とする精製したタンパク質の相互作用に対する、試験化合物の効果を、以下に記載する様々な細胞に基づいたアッセイを用いて決定する。実施した細胞に基づいたアッセイにおいて、対象とする精製したタンパク質を、または味覚シグナル伝達中のその他のタンパク質と対象とする精製したタンパク質の相互作用を調節する試験化合物を同定し、次いで味覚シグナル伝達の調節においてさらに検証する。
【0054】
本実施例中で用いる細胞に基づいたアッセイは、以下のものを含む:
【0055】
A.細胞内セカンドメッセンジャーの、細胞に基づいたアッセイ:
【0056】
環状ヌクレオチドの測定:cAMPおよびcGMP等の環状ヌクレオチドの変化を、細胞抽出物中のそれらの量を、市販の非放射性のAlphascreen cAMPアッセイ(Perkin−Elmer製)を使用することにより定量化することによって測定することができる。AlphaScreen cAMPアッセイは、アデニル酸シクラーゼ活性の調節時にGPCRにより産生したcAMPのレベルを直接測定するように設計されている。アッセイは、内因性のcAMPと外因性の添加したビオチン化cAMPとの間の競合に基づく。cAMPの捕捉は、アクセプター(Acceptor)ビーズに結合させた特異的な抗体を使用することによって達成する。アッセイは、GαiおよびGαsに共役したGPCRに対するアゴニストおよびアンタゴニストの両方の活性を測定するのに効率的である。GPCRのT1RおよびT2Rのファミリーは、GαiファミリーのGタンパク質であるガストデューシンを活性化する。
【0057】
HuTu−80細胞を、マルチウエルプレート中に、刺激用緩衝液、pH7.4(0.5mM IBMX、5mM HEPES、0.1% BSAを含有するPBS)および抗cAMP抗体結合受容体ビーズ中に蒔く。次いで、30分かけてその最大能力の50%でcAMPを産生する、経験的に決定したフォルスコリンの濃度で、細胞を処理する。各種の濃度の味物質(例えば、スクロース、アスパルテーム等)を、フォルスコリンおよび推定上の味覚調節化合物と一緒に添加する。細胞を、暗所で30分間インキュベートし、次いで、細胞可溶化用緩衝液中のビオチン化cAMPに結合したストレプトアビジンでコートしたビーズ(0.25U/μl)の混合物と共に、暗所で4時間インキュベートする。蛍光シグナルを、Perkin−Elmer製Envisionプレートリーダー中で測定する。この実験系では、味物質の濃度が増加すると、Alphascreenのシグナルが、ビオチン化cAMPおよび抗cAMP抗体ビーズとの競合に利用可能な細胞性のcAMPを減少させるアデニリルシクラーゼの阻害によって増加することが予想される。
【0058】
別法として、モデル味覚細胞に、cAMPの量と比例するよう、転写性レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ等)を発現するプラスミドDNAを、安定にトランスフェクトし得る。このアッセイは、cAMP感受性転写因子である、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)の活性化をモニターする。
【0059】
HuTu−80細胞を、24ウエル・プレート中に蒔き、これに、CRE−ルシフェラーゼ(ホタル)レポータープラスミド(0.4μg)およびpRL−Tk(0.1μg)を同時トランスフェクトする。pRL−Tkは、(Nguyenら,2004,Cellular Signaling 16:1141−51;Leeら,2004,Mol.Endocrin.18:1740−55)に記載されているように、Lipofectamine試薬(Invitrogen製)を使用して、ウミシイタケルシフェラーゼを、トランスフェクションの効率に関する対照として、構成的に発現する。次いで、その最大能力の50%でcAMPを産生する、経験的に決定した、10mM HEPESおよび0.1%BSAを含有するPBS、pH7.4中のフォルスコリンの濃度で、5〜12時間細胞を処理する。各種の濃度の味物質の(例えば、スクロース、アスパルテーム等)を、フォルスコリンおよび推定上の味覚調節化合物と一緒に、5〜12時間添加する。細胞を可溶化し、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの活性を、市販のDual Luciferaseアッセイ・キット(Promega製)を使用して、製造者の指示に従って決定する。ホタルルシフェラーゼの活性を、ウミシイタケルシフェラーゼの活性で割って、トランスフェクションの効率の変動について規準化し、味物質の濃度のlog10の関数としてプロットする。
【0060】
細胞内カルシウムの測定:細胞内カルシウムの変化を、モデル味覚全細胞中で、カルシウム感受性色素(例えば、FURA−2、Fluo−3等)の蛍光の強度および放出の変化をモニターすることによって測定することができる。これらの色素は市販されている。手短にいうと、HuTu−80細胞を、96ウエル・プレート中で、24時間増殖させ、次いで、HEPES(pH7.4)、1.26mM CaCl、0.5mM MgCl、0.4mM MgSOおよび0.1%BSAを補ったHanks平衡塩類溶液(GIBCO−BRL製)(Ca++緩衝液と呼ばれる)で2回すすぎ、1.0μM fura2−AMを有する、1mlの同一の緩衝液中、37℃で15分間インキュベートする。次いで、培養物を、Ca++緩衝液で3回洗浄し、推定上の味覚調節化合物の存在下または非存在下で、各種の濃度の味物質の(例えば、スクロース、デナトニウム等)と共に、20から30秒間インキュベートしてから、Perkin−Elmer製蛍光プレートリーダー中で、蛍光応答(480nmの励起および535nmの放出)を平均化した。データを、化合物の添加前に測定したバックグランドの蛍光について補正し、次いで、カルシウム・イオノフォアであるイオノマイシン(1μM、Calbiochem製)に対する応答に対して規準化する。
【0061】
別法として、細胞内カルシウムの放出の変化を、HuTu−80細胞に、カルシウム感受性蛍光タンパク質であるエクオリンをコードするプラスミドをトランスフェクトすることによって測定することができる。エクオリンの蛍光放出は、基質であるセレンテラジンの存在下で、カルシウム結合時に増加する。エクオリンのカルシウムに対する親和性は、低いマイクロモルの範囲にあり、この酵素の活性は、生理的範囲のカルシウム濃度(50nMから50μM)に比例する(Briniら,J.Biol.Chem.270:9896−9903,1995;Rizzutoら,Biochem.Biophys.Res.Commun.126:1259−1268,1995)。
【0062】
ホスホイノシチドの従来のアプローチによる測定:甘味物質は、モデル味覚細胞中で、酵素PLC−βの活性化をもたらす。この酵素は、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP)を、セカンドメッセンジャーであるイノシトール三リン酸(IP)とジアシルグリセロール(DAG)とに切断する。放射性標識ホスホイノシチドの加水分解を、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して定量化することによって、PIPの変化をモニターすることができる(Paingら,2002,J.Biol.Chem.277:1292−1300)。
【0063】
HuTu−80細胞を、[H]標識ミオ−D−イノシトールを用いて24時間標識し、細胞の培地を、1mg/ml BSAを含有する10mM HEPES緩衝液および20mM塩化リチウムで交換する。次いで、細胞を、味物質を用いて、37℃で、最長30分間刺激し、50mMギ酸を用いて、室温で45分間抽出し、次いで、150mM NHOHで中和する。次いで、細胞抽出物を、アニオン交換AG I−X8樹脂(100〜200メッシュのサイズ、Bio−Rad製)カラム上に直接載せ、HO、次いで50mMギ酸アンモニウムで洗浄し、1.2mMギ酸アンモニウム、0.1mMギ酸を用いて溶出した。このアッセイ中で溶出したイノシトール一、二および三リン酸を、シンチレーション測定によって定量化する。
【0064】
別法として、上記のcAMPのAlphascreenアッセイに類似する、IPのalphascreenアッセイを使用して、IPの産生を測定することができる。IPのalphascreenアッセイは、細胞性のIPの能力を測定する。細胞性のIPは、甘味物質受容体のPLC−βを介する活性化に応答して生成して、IP結合タンパク質を含有する受容体ビーズに結合するビオチン化IPビーズと競合する。したがって、甘味物質の濃度が増加すると、IPの細胞濃度が増加すると予想され、次いで、この濃度の増加から、alphascreenシグナルの用量依存性の減少を生じる。
【0065】
96ウエル・プレート中で増殖させたHuTu−80細胞を、推定上の味覚調節化合物の存在下または非存在下で、増加させた各濃度の味物質(例えば、スクロース、デナトニウム等)とともに30秒間インキュベートする(PBS/Hepes、pH7.4中)。次いで、細胞を、洗浄剤に溶解し、alphascreen試薬と共に、製造者の指示に従ってインキュベートして、蛍光シグナルを、PerkinElmer製蛍光プレートリーダーで測定する。
【0066】
B.タンパク質キナーゼ活性の、細胞に基づいたアッセイ
【0067】
甘味物質受容体の活性化が、セリン/スレオニン・キナーゼであるERK1および2を、Gシグナル伝達経路を介して活性化することが示されている(Ozeckら,2004,Eur.J.Pharm.489:139−49)。ERKに加えて、Akt等のセリン/スレオニン・キナーゼ、および上皮成長因子受容体(EGF−R)チロシン・キナーゼ等の受容体型チロシン・キナーゼをはじめとする、多くのその他のキナーゼもまた、Gシグナル伝達経路を介して活性化される。多くのキナーゼの活性化における主要なステップは、キナーゼ自体のリン酸化であり、これを、実験的に決定することができる。例えば、ERK1および2の活性化の程度を決定する最も一般的な方法は、免疫測定法または免疫ブロット法のいずれかによる、ERKのリン酸化された、したがって、活性化された形態に特異的な抗体の使用である。
【0068】
甘味物質受容体の活性化の、ERK1、ERK2、Akt、MEKおよびEGF−Rの活性に対する効果を測定するために、6ウェル・ディッシュ中で増殖させたHuTu−80細胞を、推定上の味覚調節化合物の存在下または非存在下、10mM HEPESおよび0.1%BSAを含有するPBS、pH7.4中で、37℃で5〜10分間、味物質で処理し、次いで洗浄剤緩衝液中に溶解する。処理した細胞からの細胞抽出物を、抗ホスホキナーゼ抗体を使用して、プレート免疫測定法(Perkin−Elmer)中でまたは免疫ブロット法によってのいずれかで解析する。さらに、リン酸化特異的抗体による解析のために、細胞抽出物のパラレルな試料も、全キナーゼ(リン酸化および非リン酸化の両方)を認識する抗体を使用して、プレート免疫測定法(Perkin−Elmer)中でまたは免疫ブロット法によって解析する。リン酸化されたキナーゼ対全キナーゼの比は、甘味物質の濃度に直接比例する。
【0069】
C.神経伝達物質分泌の測定
【0070】
味覚細胞シグナル伝達の最終的かつ最も重要なステップは、神経伝達物質の放出であり、これは、求心性神経線維をさらに刺激する。Fingerらは、ATPが、決定的な「神経伝達物質」であり、これは、味覚細胞から分泌され、神経線維上の特異的なプリン作動性のATPに結合する受容体と相互作用することを示している(Fingerら,2005,Science 310:1495−99)。
【0071】
96ウエル・プレート中で増殖させたHuTu−80細胞を、10mM HEPESおよび0.1%BSAを含有するPBS、pH7.4中ですすぎ、同一の緩衝液中で、味物質で、37℃で0〜30分間刺激する。刺激したHuTu−80細胞の培地の試料を収集し、ATPの濃度を、市販のATPのための発光アッセイ(例えば、ATPliteアッセイ、Perkin−Elmer製)を使用して決定する。
【0072】
D.消化管ペプチドの分泌の測定
【0073】
HuTu−80細胞等の腸内分泌細胞は、味覚受容体の刺激に応答して、消化管ペプチド(例えば、ペプチドYY(PYY)、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、胃インスリン分泌性ペプチド(GIP)等)を分泌することが知られている(Rozengurt、2006、Am.J.Physiol Gastrointest Liver Physiol.291:G171−G177)。GIペプチドのHuTu−80細胞からの分泌を測定するために、競合的なELISAまたはRIAを使用することができる。例として、GLP−1の分泌を、市販の競合的酵素免疫測定法(例えば、Cosmo Bio Co.,Ltd.製)を使用して測定することができる。
【0074】
手短にいうと、HuTu−80細胞を、マルチウエル・ディッシュ(例えば、6ウエル、12ウエル等)中で増殖させ、10mM HEPESおよび0.1%BSAを含有するPBS、pH7.4中ですすぎ、同一の緩衝液中で、味覚調節試験化合物の存在下および非存在下で、味物質で、37℃で0〜30分間刺激する。刺激したHuTu−80細胞の培地の試料を、収集して、ヤギ抗GLP−1抗体でコートした96ウエル・プレートに、ビオチン化GLP−1標準物質およびウサギ抗GLP−1抗体と一緒に添加する。プレートを、暗所、4℃で、一晩、16〜18時間インキュベートする。ウエルを、PBS、pH7.4ですすぎ、ストレプトアビジン−HRPと共に、暗所、室温で、1時間インキュベートする。ストレプトアビジン−HRPを除去した後、PBS、pH7.4ですすぎ、o−フェニレンジアミン塩酸塩の基質溶液を添加して、反応を、暗所、室温で、30分間展開する。反応を停止させ、ウエルの光学的吸収を492nmで測定する。分泌されたGLP−1の量は、組換えGLP−1の既知の量を用いて平行して求めた標準曲線との比較によって決定する。
【実施例3】
【0075】
ヒトの味覚テストにおける味覚調節化合物の効果の検証
試験味物質(例えば、甘味物質、風味物質、塩味物質または苦味物質)自体で認識された強度を、試験味物質と味覚調節化合物とを組み合わせて認識された強度と比較する。味覚増強物質の候補は試験味物質の認識される強度を増強させ、一方味覚阻害剤は試験味物質の認識される強度を減少させる。
【0076】
ある特定の実施形態では、一連の査定者を使用して、試験味物質溶液の強度を測定する。手短にいうと、一連の査定者(一般に、8〜12人)を訓練して、味覚強度の認識を評価させ、強度を、試料を最初に口に入れた時から、試料を吐き出す3分後までのいくつかの時点で測定する。統計的解析を使用して、結果を、添加物を含有する試料と、添加物を含有しない試料との間で比較する。試料が口から除去された後に測定した時点のスコアの減少は、味物質の認識の低下が存在していることを示す。
【0077】
一連の査定者を、当技術分野で周知の手順を使用して訓練することができる。ある特定の実施形態では、一連の査定者を、Spectrum(商標) Descriptive Analysis Method(Meilgaardら,Sensory Evaluation Techniques,3.sup.rd edition,第11章)を使用して訓練することができる。望ましくは、訓練の焦点は、基本の味;具体的には、甘味、塩味、酸味、うま味および苦味の認識および測定でなければならない。結果の正確さおよび再現性を確保するために、各査定者は、味物質の強度の測定を、1つの試料あたり、約3回から約5回まで繰り返す必要があり、少なくとも5分間の休憩を、繰り返す度および/または試料の度にとり、水で十分にすすいで口をきれいにする。
【0078】
一般に、味物質の強度を測定する方法は、10mLの試料を口に入れるステップと、試料を口の中に5秒間保ち、試料を口の中で穏やかに回すステップとを含む。認識された味物質の強度を、5秒後にランク付けし、試料を吐き出し(試料を吐き出した後には飲み込まない)、口を一口分の水ですすぎ(例えば、うがい液のときのように水を口の中で激しく動かす)、すすぎ水は吐き出す。認識された味物質の強度を、すすぎ水を吐き出した直後に、45秒後待って、およびこの45秒の間にランク付けし、認識された味覚の最大強度の時を同定し、その時点でのこの強度をランク付けする(口を普通に動かし、必要であれば、飲み込む)。試料間では、5分間の休憩をとり、水で十分にすすいで口をきれいにする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトHuTu−80腸内分泌細胞またはそれに由来する細胞に由来するモデル味覚細胞であって、味覚シグナル伝達に有用な1種または複数のシグナル伝達タンパク質を天然にまたは組換えにより発現し、味覚細胞の機能性を示すモデル味覚細胞。
【請求項2】
前記シグナル伝達タンパク質が、甘味物質受容体、そのヘテロ−もしくはホモ−オリゴマー、またはそれらの組合せを含む味覚受容体である、請求項1に記載のモデル味覚細胞。
【請求項3】
前記甘味物質受容体が、ヘテロ−オリゴマー性T1R2/T1R3甘味物質受容体である、請求項2に記載のモデル味覚細胞。
【請求項4】
前記甘味物質受容体が、ホモ−オリゴマー性T1R3/T1R3またはT1R2/T1R2甘味物質受容体である、請求項2に記載のモデル味覚細胞。
【請求項5】
前記甘味物質受容体が、T1R3甘味物質受容体である、請求項2に記載のモデル味覚細胞。
【請求項6】
前記シグナル伝達タンパク質が、味覚受容体タンパク質、Gタンパク質、Gタンパク質シグナル伝達調節因子(RGS)タンパク質、またはエフェクターからなる群から選択される全てのタンパク質を含み、前記タンパク質が、味覚シグナル伝達に必要である、請求項1に記載のモデル味覚細胞。
【請求項7】
前記味覚シグナル伝達が、甘味シグナル伝達である、請求項1に記載のモデル味覚細胞。
【請求項8】
前記味覚シグナル伝達が、苦味シグナル伝達である、請求項1に記載のモデル味覚細胞。
【請求項9】
前記味覚シグナル伝達が、うま味シグナル伝達である、請求項1に記載のモデル味覚細胞。
【請求項10】
前記ヒトHuTu−80腸内分泌細胞が、前記HuTu−80細胞に由来するサブクローン化または改変細胞を含む、請求項1に記載のモデル味覚細胞。
【請求項11】
請求項1に記載のモデル味覚細胞を使用して、味覚シグナル伝達を調節する化合物についてスクリーニングするための方法であって、
a)請求項1に記載のモデル味覚細胞から、味覚シグナル伝達に有用な1種または複数の対象とするタンパク質を単離および精製するステップと、
b)細胞に基づいた多様なアッセイを使用して、対象とする精製したタンパク質に対するか、または味覚シグナル伝達経路中のその他のタンパク質と対象とする精製したタンパク質の相互作用に対する試験化合物の効果を決定するステップと、
c)前記細胞に基づいたアッセイに基づいて、対象とする精製したタンパク質を、または味覚シグナル伝達経路中のその他のタンパク質と対象とする精製したタンパク質の相互作用を調節する試験化合物を同定するステップと、
d)前記モデル味覚細胞中での味覚シグナル伝達の調節において、化合物を検証するステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記タンパク質が、味覚受容体、Gタンパク質、RGSタンパク質、エフェクターおよび味覚に関する任意の細胞機構からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質が、T1R受容体ファミリー、そのホモ−またはヘテロ−オリゴマーを含む甘味物質受容体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が、Gαiタンパク質、α−ガストデューシン、Gαi2およびその他からなる群から選択されるGαタンパク質を含むGタンパク質である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質が、GAIP、RGSz1、RGS1、RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS6、RGS7、RGS8、RGS9、RGS110、RGS11、RGS12、RGS13、RGS14、RGS16、RGS17、RGS21、D−AKAP1、p115RhoGEF、PDZ−RhoGEF、bRET−RGS、AxinまたはmCONDUCTINを含むRGSタンパク質である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記エフェクターが、ホスホリパーゼC(PLC)、cAMP、cGMP、IP3、カルシウム(Ca2+)およびその他のセカンドメッセンジャーからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記効果が、前記モデル味覚細胞中での、カルシウム(Ca2+)の放出を測定するためのアッセイ、cAMP、cGMP、PIP2/IP3またはその他のセカンドメッセンジャーに関するアッセイ、GIペプチドの分泌を測定するためのアッセイおよび神経伝達物質の分泌を測定するためのアッセイからなる群から選択される細胞に基づいたアッセイの観察を通して決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記試験化合物が、前記モデル味覚細胞中で、味の官能試験を使用してさらに検証される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
甘味を増強するための複数の化合物についてスクリーニングする方法であって、
a)請求項1に記載のモデル味覚細胞を提供するステップであって、モデル味覚細胞が、甘味物質受容体および甘味物質シグナル伝達に必要な1種もしくは複数のその他のタンパク質または関連の細胞分子を、天然に発現するステップと、
b)前記モデル味覚細胞を、甘味物質と、単独でまたは試験化合物と組み合わせて接触させるステップと、
c)i)細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、カルシウム、ホスホイノシチド)の変化、
ii)タンパク質キナーゼ活性(例えば、ERK、PKC、Src、EGFR等)の変化、
iii)モデル味覚細胞のGIペプチドの分泌の変化、および
iv)モデル味覚細胞による神経伝達物質の分泌の変化
のうちの1種または複数をモニターするための細胞に基づいたアッセイを使用して、前記モデル味覚細胞に対する試験化合物の効果を決定するステップと、
d)上記3)に記載した変化をもたらす化合物を同定するステップと、
e)前記モデル味覚細胞中での甘味物質による甘味の増強について、ヒトによる味の官能試験において、同定した化合物の効力を検証するステップと
を含む方法。
【請求項20】
前記甘味物質が、炭水化物の甘味物質、合成の強力な甘味物質、天然の強力な甘味物質、ポリオールおよびアミノ酸を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項21】
甘味を増強するための複数の化合物についてスクリーニングする方法であって、
a)請求項1に記載のモデル味覚細胞を提供するステップであって、前記モデル味覚細胞が、RGSタンパク質および甘味物質シグナル伝達に必要な1種または複数のその他のタンパク質を天然に発現するステップと、
b)RGSタンパク質活性を阻害する化合物(RGSタンパク質阻害剤)を同定するステップと、
c)甘味物質単独でおよび化合物(RGSタンパク質の阻害剤)と組み合わせての、甘味物質受容体によって活性化された甘味シグナル伝達を決定するステップと、
d)前記甘味物質の甘味シグナル伝達を増加させる化合物(RGSタンパク質阻害剤)を同定するステップと
を含む方法。
【請求項22】
前記RGSタンパク質が、RGS21タンパク質である、請求項22に記載の方法。
【請求項23】
味覚を調節するための複数の化合物についてスクリーニングする方法であって、
a)請求項1に記載のモデル味覚細胞を提供するステップであって、モデル味覚細胞が、対象とする味覚受容体および味覚シグナル伝達に必要な1種もしくは複数のその他のタンパク質または関連の細胞分子を天然に発現するステップと、
b)前記モデル味覚細胞を、味物質と、単独でまたは試験化合物と組み合わせて接触させるステップと、
c)i)細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、カルシウム、ホスホイノシチド)の変化、
ii)タンパク質キナーゼ活性(例えば、ERK、PKC、Src、EGFR等)の変化、
iii)モデル味覚細胞のGIペプチドの分泌の変化、または
iv)前記モデル味覚細胞による神経伝達物質の分泌の変化
のうちの1種または複数をモニターするための細胞に基づいたアッセイを使用して、前記モデル味覚細胞に対する試験化合物の効果を決定するステップと、
d)上記3)に記載した変化をもたらす化合物を同定するステップと、
e)前記モデル味覚細胞中での前記味物質による味覚の調節について、ヒトによる味の官能試験において、同定した化合物の効力を検証するステップと
を含む方法。

【公表番号】特表2009−544332(P2009−544332A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522017(P2009−522017)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/074581
【国際公開番号】WO2008/014450
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(391026058)ザ・コカ−コーラ・カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】THE COCA−COLA COMPANY
【Fターム(参考)】