説明

呼吸連動型ブロワーマスク装置

【課題】外光の影響を受けず、ブロワーの駆動を呼吸に合わせて正確に制御でき、構造が簡単な呼吸連動型ブロワーマスク装置を提供することにある。
【解決手段】面体2に排気弁3及び吸気弁4を設け、通常作動時に吸気弁4を通して外気を面体2内に送り込むブロワー6を設置し、面体2の外側に排気弁3を覆うように覆い部材8を重設すると共に、覆い部材8と面体2との間の空間により排気室9を形成し、排気室9内の排気弁3の近傍に、排気弁3を通じて進入する着用者の排気空気の有無を検知するための非光学式のセンサ10を設置する。センサ10を介して着用者の排気空気が検知された場合に排気時とみなし、ブロワー6を停止又は減速する。センサ10を介して着用者の排気空気が検知されない場合に吸気時とみなし、ブロワー6を通常作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸連動型ブロワーマスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、危険粉塵が存在する環境下では、作業者は防塵マスクを装着し、危険粉塵をマスクが保有するフィルタで浄化し、浄化した空気で呼吸を行う。ところで、フィルタは、浄化作用の大きいものほど通気抵抗が増大する。特に、原子力発電所内の放射性粉塵等は、たとえ微量であっても人体に侵入すると致命傷になるので、浄化作用が高く、通気抵抗が非常に大きいフィルタが使用される。そのため、作業者自身の肺力だけでは充分に呼吸することが困難となる。
【0003】
このような通気抵抗の大きいフィルタを装着する場合は、通気路上において、フィルタの前側又は後側にブロワーを取付け、その送風によって呼吸の補助を行うブロワーマスク装置が使用される。ブロワーマスク装置は、着用者の呼吸に連動しない一定流量型が主流であるが、一定流量型ブロワーマスク装置は、送風する必要のない排気時にも一定量の浄化空気をマスク面体に供給するため、フィルタが消耗しやすく、排気時の抵抗も大きくなり、電力消費量が多くなりやすい。
【0004】
また、これに対処して、着用者の呼吸に連動して吸気時にブロワーの送風量を増やす一方、排気時にはブロワーの送風量を減らすようにした呼吸連動型のブロワーマスク装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のブロワーマスク装置(以下、従来のブロワーマスク装置という)は、排気弁又は吸気弁の動きをセンサで検知し、センサからの信号によってブロワーを制御し、排気時にはブロワーを停止したり減速して、フィルタの消耗、排気抵抗及び消費電力を抑えるようにしたものである。
【0005】
上記従来のブロワーマスク装置では、排気弁又は吸気弁の動きを検知するセンサに発光素子及び受光素子からなる光学式センサを使用している。そして、発光素子から照射された任意波長の光を排気弁が反射し、排気弁が開いた時のみ反射光を受光素子が受光し、受光素子が反射光を受光して任意波長の光の受光量が増加した時に発信する制御信号に基づき、ブロワーを停止或いは減速させるようになっている。
【0006】
なお、上記のような光学式センサを用いていない呼吸保護装置としては、モータにより駆動されるファンからなるポンプ装置とフィルタとの間において、空気の圧力を検出する圧力センサ及び圧力センサによって設定レベル以上の圧力が検出された際にポンプ装置を動力源から切り離す制御装置からなり、ポンプ装置および吐出弁の運転パラメータが、着用者の吐出し中において入口弁が閉鎖し、ポンプ装置が運転を停止あるいはほぼ停止した状態にされるようにした呼吸保護装置が知られている(特許文献2参照)。
【0007】
また、被験者の呼吸作用をリアルタイムで監視する技術として、人体から排出される呼気の温度を測定するために温度センサを用い、呼気に含まれる炭酸ガスの含有量を測定するために炭酸ガスセンサを用い、呼気の湿度を測定するために湿度センサを用いた人口呼吸装置が公知である(特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−10349号公報
【特許文献2】特開昭60−68869号公報
【特許文献3】特開平9−51950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のブロワーマスク装置のように光学式センサを採用したものでは、次のような問題を生じる。すなわち、太陽光などの外光にも発光素子と同じ波長の光線が含まれていることが多く、センサの受光素子が外光を直接或いは間接的に受光すると、排気弁の動きを正確に検知できなくなり、ブロワーの制御が不正確となる。上記従来のブロワーマスク装置は、面体の外面に排気弁を保護する筒状の排気弁カバーを設け、排気弁カバーの内部にセンサを設置した構造となってはいるが、光学式センサに対して外光を遮断するには排気弁カバーの長さが不十分であった。
【0010】
そこで、光学式センサに対して外光を遮断するためには、排気弁カバーを長くしてその先端の排気口に対してセンサを遠ざけ、更に排気口を狭くして外光がセンサに届かないようにする必要がある。しかしながら、このようにすると、マスクが嵩張り、排気口の開口面積が狭くなって排気抵抗が増すので、着用感が悪くなる。また、遮光性を維持するためには、遮蔽する排気弁カバーの肉厚を厚くする必要があるが、一方ではマスクの重量アップになり、作業性も悪くなる。さらに、黒色に近い色でないと遮光性を維持できないため、紺色から黒色の地味な色のみしか採用できない。
【0011】
本発明の目的は、外光の影響を受けず、ブロワーの駆動を呼吸に合わせて正確に制御でき、構造が簡単な呼吸連動型ブロワーマスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置は、上記課題を解決するために、面体の前部に、排気時に開いて吸気時に閉じる排気弁、及び、吸気時に開いて排気時に閉じる吸気弁を設け、通常作動時に前記吸気弁を通して外気を面体内に送り込むブロワーを設置し、前記面体の外側に前記排気弁を覆うように覆い部材を重設すると共に、前記覆い部材と前記面体との間の空間により排気室を形成し、前記排気室内の前記排気弁の近傍に、前記排気弁を通じて進入する着用者の排気空気の有無を検知するための非光学式のセンサを設置し、前記非光学式のセンサを介して着用者の排気空気が検知された場合に排気時とみなし、前記ブロワーを停止又は減速する一方、前記非光学式のセンサを介して前記着用者の排気空気が検知されない場合に吸気時とみなし、前記ブロワーを通常作動することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置は、請求項1に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置において、前記非光学式のセンサを温度センサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の温度変化を前記温度センサで検知することを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置は、請求項1に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置において、前記非光学式のセンサを湿度センサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の湿度変化を前記湿度センサで検知することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置は、請求項1に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置において、前記非光学式のセンサを炭酸ガスセンサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の炭酸ガス量の変化を前記炭酸ガスセンサで検知することを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置は、請求項1に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置において、前記非光学式のセンサを酸素ガスセンサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の酸素ガス量の変化を前記酸素ガスセンサで検知することを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置は、請求項1に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置において、前記非光学式のセンサを、湿度センサ、炭酸ガスセンサ及び酸素ガスセンサのうちから1つ選ばれたセンサで構成し、さらに、前記1つ選ばれたセンサの近傍に温度センサを併用したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置によれば、排気弁を通じて進入する着用者の排気空気の有無を非光学式のセンサで検知し、非光学式のセンサを介して着用者の排気空気が検知された場合に排気時とみなし、ブロワーを停止又は減速する一方、非光学式のセンサを介して着用者の排気空気が検知されない場合に吸気時とみなし、ブロワーを通常作動するようにしたので、外光の影響を受けず、ブロワーの駆動を呼吸に合わせて正確に制御でき、構造も簡単である。また、遮光性によらないため、覆い部材の肉厚を薄くすることができるから、マスクを軽量化でき、黒色に近い色とする必要がなくなり、自由な色彩とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置の断面図である。図1に示すように、呼吸連動型ブロワーマスク装置1は、面体2と、面体2の前面上部に設けられた排気弁3と、面体2の前面下部に設けられた吸気弁4と、面体2の外面に吸気弁4を囲むように装着された筒状のフィルタカバー5と、フィルタカバー5の内部に設置されたブロワー6と、フィルタカバー5の先端内部に配設され、面体2内へ供給される外気を浄化するフィルタ7と、面体2の外側に間隔をもって重設された覆い部材としてのボンネット8と、面体2とボンネット8との間に形成された空間よりなる排気室9と、排気室9内において排気弁3の近傍に設置されて、排気弁3を通じて進入する着用者の排気空気の有無を検知する非光学式のセンサ10とを備える。
【0020】
排気弁3は、排気時に開いて面体2内の空気を排気室9へ排出し、吸気時に閉じて面体2の内外空間を遮断する。吸気弁4は、排気時に閉じて面体2の内外空間を遮断し、吸気時に開いて面体2内へ外気を導入する。また、ブロワー6は、羽根車11と羽根車11を駆動するモータ12とからなる。
【0021】
非光学式のセンサ10としては、温度センサ、湿度センサ、炭酸ガスセンサ、酸素ガスセンサを採用することができる。まず、非光学式のセンサ10が温度センサ(例えば、サーミスタ)で構成されたものとして説明する。非光学式のセンサ10を温度センサで構成した場合、該センサ10は排気室9の空気温度を電圧値或いは電流値である電気信号として出力する。
【0022】
センサ10はブロワー制御回路(図示せず)に接続され、排気室9内の空気の温度に応じたアナログ電気信号を前記ブロワー制御回路に出力する。ブロワー6のモータ12は、前記ブロワー制御回路に接続され、前記ブロワー制御回路により、センサ10から出力される温度に応じたアナログ電気信号に基いて駆動制御される。そして、モータ12が通常作動している時には、羽根車11が通常速度で回転し、フィルタ7及び吸気弁4を通して面体2内へ外気を送り込むようになっている。
【0023】
ボンネット8は、面体2のフィルタカバー5よりも上方部分を覆い、排気室9の空気の状態を短い時間だけ維持する(換言すると、着用者の呼気が外気に対して即時に拡散してしまうことを回避している)。排気室9内の排気空気の状態を検知するセンサ10は、排気室9内の排気弁3の近傍に設置される。ボンネット8の下端寄りには複数の排気孔13が穿設され、排気室9と外部(外部空気)とが排気孔13を通じて連通されている。
【0024】
図2は呼吸連動型ブロワーマスク1の吸気時における要部断面図であり、着用者の呼吸は吸気時であるため、排気弁3は排気通気路14を閉鎖した状態となっている。センサ10は、サーミスタ等よりなり、排気弁3に近傍に設置されている。この時、ブロワー制御回路はモータ12を通常作動させ、ブロワー6は開いている吸気弁4を通して面体2内に外気を送り込み、着用者の吸気を補助する。また、図3は呼吸連動型ブロワーマスク1の排気時における要部断面図であり、着用者の呼吸は排気時であるため、排気弁3は排気通気路14を開路した状態となっている。
【0025】
次に、実施形態の呼吸連動型ブロワーマスク1の作用を説明する。呼吸連動型ブロワーマスク1の着用試験を行った。実施時のブロワー送風空気の温度は約24℃で、着用者の排気空気の温度は約29〜31℃であった。まず、着用者が排気すると、排気空気により排気室9内の温度は約26.2℃となった。着用者が吸気すると、ブロワー送風量が着用者の吸気量と全く同じか少ない場合は着用者の呼気は排気室9に進入してこないため温度放熱が進み、ブロワー送風量が着用者の吸気量より多い場合も、着用者が吸いきれない余分なろ過外気が排気室9に進入するだけなので、温度放熱が進む。そのため、着用者の呼吸が排気に転じる直前には約24.4℃となった。そして、着用者が排気すると、排気室9内の空気と着用者の排気空気とが混じり合って、再び排気室9内の温度が約26℃以上に戻った。
【0026】
ブロワー制御回路は、排気室9内の温度変化に基き、排気室9内の温度が上昇した場合は、着用者の排気とみなしてブロワー送風を停止又は減速する。即ち、ブロワー制御回路はセンサ10から入力される排気室9内の温度に応じたアナログ電気信号が、基準値を超えると(例えば、26℃に対応する基準値を上回ると)、モータ12を停止或いは減速させ、この結果、ブロワー6の羽根車11による送風が停止するか又は送風量が減少する。
【0027】
一方、排気室9内の温度が下降した場合は、着用者の吸気とみなしてモータ12を通常作動してブロワー送風を行う。即ち、ブロワー制御回路はセンサ10から入力される排気室9内の温度に応じたアナログ電気信号が、基準値より下ると(例えば、26℃に対応する基準値を下回ると)、モータ12を通常作動させ、ブロワー6の羽根車11による送風により開いている吸気弁4を通して面体2内に外気を送り込み、着用者の吸気を補助する。即ち、排気時であるか吸気時であるかを温度センサ10で検知し、ブロワー6の駆動を呼吸に合わせて制御することができる。実施した環境と着用者の体温の極端な変化がない間は、着用者の呼吸に連動したブロワー送風が行われた。
【0028】
排気室9内の空気の温度は、ボンネット8の排気孔13を通じて放熱することで冷やされ又は排気弁3の排気通気路を通じて着用者の排気を吸熱することで暖まるため、時間の経過と共に温度変化する。また、外気温度が着用者の排気と同じ温度となる場合は稀なため、排気室9内に進入した着用者の排気空気は時間経過と共に外気温度に近づくように変化していく。そして、次の着用者の排気によって元の温度に戻される。つまり、着用者が呼吸している限り、この温度変化のパターンは繰り返すことになる。
【0029】
なお、外気温度によってはセンサによる温度変化の検知を補正する必要がある。その場合には、ボンネット8の外側にもう1つ別に外気温度を検知する温度センサを設置し、外気温度と排気室9内の温度との差から補正を行うようにすればよい。また、外気温度が着用者の排気空気の温度よりも高い場合には、排気室9内の空気の温度が高くなると吸気、低くなると排気となるように、ブロワー制御回路で自動切換を行うようにすればよい。
【0030】
なお、センサ10の設置位置は、排気弁3の近傍が最も好適であるが、排気弁3を通じて進入する着用者の排気空気による温度変化を検知できる位置であればよく、排気室9だけでなく、温度変化を検知できれば面体2の内側に設置しても問題がないので、排気弁の移動位置を検知する光学式センサ(従来タイプ)に比べて、センサ10の設置位置の自由度が増すことになる。なお、面体2内側の場合は、着用者の呼気がぶつかりやすい面に設置することがよい。
【0031】
次に、上記実施形態において、非光学式のセンサ10として温度センサに代えて湿度センサを採用した実施例を説明する。湿度センサの設置は、上記温度センサの場合と同じ位置でよい。湿度センサとしては、特開平9−51950号公報に開示されたものを採用することができる。
【0032】
次に、実施形態の呼吸連動型ブロワーマスク2の作用を説明する。呼吸連動型ブロワーマスク2の着用試験を行った。実施時のブロワー送風空気の湿度は約30%で、着用者の排気空気の湿度は約78〜84%であった。まず、着用者が排気すると、排気空気により排気室9内の湿度は約66%となった。着用者が吸気すると、ブロワー送風量が着用者の吸気量と全く同じか少ない場合は着用者の呼気は排気室9に進入してこないため湿度放湿が進み、ブロワー送風量が着用者の吸気量より多い場合も、着用者が吸いきれない余分なろ過外気が排気室9に進入するだけなので、湿度放湿が進む。そのため、着用者の呼吸が排気に転じる直前には約48%になった。そして、着用者が排気すると、排気室9内の空気と着用者の排気空気とが混じり合って、再び排気室9内の湿度が約60%以上に戻った。
【0033】
ブロワー制御回路は、排気室9内の湿度変化に基づき、排気室9内の湿度が上昇した場合は、着用者の排気とみなしてブロワー送風を停止又は減速する。即ち、ブロワー制御回路はセンサ10から入力される排気室9内の湿度に応じたアナログ電気信号が、基準値を超えると(例えば、50%に対応する基準値を上回ると)、モータ12を停止或いは減速させ、この結果、ブロワー6の羽根車11による送風が停止するか又は送風量が減少する。
【0034】
一方、排気室9内の湿度が下降した場合は、着用者の吸気とみなしてモータ12を通常作動してブロワー送風を行う。即ち、ブロワー制御回路はセンサ10から入力される排気室9内の湿度に応じたアナログ電気信号が、基準値より下回ると(例えば、50%に対応する基準値を下回ると)、モータ12を通常作動させ、ブロワー6の羽根車11による送風により開いている吸気弁4を通して面体2内に外気を送り込み、着用者の吸気を補助する。即ち、排気時であるか吸気時であるかを湿度センサ10で検知し、ブロワー6の駆動を呼吸に合わせて制御することができる。実施した環境と着用者の排気空気の湿度が極端な変化がない間は、着用者の呼吸に連動したブロワー送風が行われた。
【0035】
排気室9内の空気の湿度は、ボンネット8の排気孔13を通じて放湿することで低下、又は排気弁3の排気通気路14を通じて着用者の排気を吸湿することで上昇するので、時間の経過と共に湿度変化する。また、外気湿度が着用者の排気と同じ湿度となる場合は稀なため、排気室9内に進入した着用者の排気空気は時間経過と共に外気湿度に近づくように変化していく。そして、次の着用者の排気によって元の湿度に戻される。つまり、着用者が呼吸している限り、この湿度変化のパターンは繰り返すことになる。
【0036】
なお、外気湿度によってはセンサによる湿度変化の検知を補正する必要がある。その場合には、ボンネット8の外側にもう1つ別に外気湿度を検知する湿度センサを設置し、外気湿度と排気室9内の湿度との差から補正を行うようにすればよい。また、外気湿度が着用者の排気空気の湿度よりも高い場合には、排気室9内の空気の湿度が高くなると吸気、低くなると排気となるように、ブロワー制御回路で自動切換を行うようにすればよい。
【0037】
さらに、湿度センサは外周温度(この場合は排気室9の温度)によって補正する必要がある。この理由は、湿度センサによる非常に微小な変化量を増幅して信号化するため、センサの周辺部品(例えば、抵抗器や配線)等が外周温度で値が変化してしまうと、影響が出てしまうことになる。その場合には、該湿度センサ近傍に前記の「温度センサ」を設置して併用すれば補正が可能となる。なお、本発明において、湿度センサに対して温度センサを設置して併用する点は絶対条件ではなく、湿度センサによる検出の精度を上げることを目的とするものである。
【0038】
なお、センサ10の設置位置は、排気弁3の近傍が最も好適であるが、排気弁3を通じて進入する着用者の排気空気による湿度変化を検如できる位置であればよく、排気室9だけでなく、湿度変化を検知できれば面体2の内側に設置しても問題がないので、排気弁の移動位置を検知する光学式センサ(従来タイプ)に比べて、センサ10の設置位置の自由度が増すことになる。なお、面体2内側の場合は、着用者の呼気がぶつかりやすい面に設置することがよい。
【0039】
次に、上記実施形態において、非光学式のセンサ10として炭酸ガスセンサを採用した実施形態を説明する。炭酸ガスセンサの設置箇所は、上記温度センサの場合と同じ位置でよい。炭酸ガスセンサとしては、特開平9−51950号公報に開示されたものを採用することができる。
【0040】
次に、この実施形態の呼吸連動型ブロワーマスク3の作用を説明する。呼吸連動型ブロワーマスク3の着用試験を行った。実施時のブロワー送風空気の炭酸ガス濃度は約0.1%で、着用者の排気空気の炭酸ガス濃度は約4〜6%であった。まず、着用者が排気すると、排気空気により排気室9内の炭酸ガス濃度は約6%となった。着用者が吸気すると、ブロワー送風量が着用者の吸気量と全く同じか少ない場合は着用者の呼気は排気室9に進入してこないので、炭酸ガスが外気に拡散し、ブロワー送風量が着用者の吸気量より多い場合も、着用者が吸いきれない余分なろ過外気が排気室9に進入するだけなので、炭酸ガスの拡散が進む。そのため、着用者の呼吸が排気に転じる直前には約0.2%以下になった。そして、着用者が排気すると、排気室9内の空気と着用者の排気空気とが混じり合つて、再び排気室9内の炭酸ガス濃度が約6%以上に戻った。
【0041】
ブロワー制御回路は、排気室9内の炭酸ガス濃度に基づき、排気室9内の炭酸ガス濃度が上昇した場合は、着用者の排気とみなしてブロワー送風を停止又は減速する。即ち、ブロワー制御回路は、センサ10から入力される排気室9内の炭酸ガス濃度に応じたアナログ電気信号が基準値を超えると(例えば、4%に対応する基準値を上回ると)、モータ12を停止或いは減速させ、この結果、ブロワー6の羽根車11による送風が停止するか又は送風量が減少する。
【0042】
一方、排気室9内の炭酸ガス濃度が下降した場合は、着用者の吸気とみなしてモータ12を通常作動してブロワー送風を行う。即ち、ブロワー制御回路は、センサ10から入力される排気室9内の炭酸ガス濃度に応じたアナログ電気信号が、基準値より下回ると(例えば、4%に対応する基準値を下回ると)、モータ12を通常作動させ、ブロワー6の羽根車11による送風により、開いている吸気弁4を通して面体2内に外気を送り込み、着用者の吸気を補助する。即ち、排気時であるか吸気時であるかを炭酸ガスセンサ10で検知し、ブロワー6の駆動を呼吸に合わせて制御することができる。実施した環境と着用者の排気空気の炭酸ガス濃度が極端な変化がない間は、着用者の呼吸に連動したブロワー送風が行われた。
【0043】
排気室9内の空気の炭酸ガス濃度は、ボンネット8の排気孔13を通じて拡散することで低下、又は排気弁3の排気通気路14を通じて着用者の排気を混入することで上昇するので、時間の経過と共に炭酸ガス濃度が変化する。また、外気炭酸ガス濃度が着用者の排気と同じ炭酸ガス濃度となる場合は稀なため、排気室9内に進入した着用者の排気空気は時間経過と共に外気炭酸ガス濃度に近づくように変化していく。そして、次の着用者の排気によって元の炭酸ガス濃度に戻される。つまり、着用者が呼吸している限り、この炭酸ガス濃度変化のパターンは繰り返すことになる。
【0044】
なお、外気炭酸ガス濃度によってはセンサによる炭酸ガス濃度変化の検知を補正する必要がある。その場合には、ボンネット8の外側にもう1つ別に外気炭酸ガス濃度を検知する炭酸ガスセンサを設置し、外気炭酸ガス濃度と排気室9内の炭酸ガス濃度との差から補正を行うようにすればよい。
【0045】
さらに、上述の非光学式のセンサ10として湿度センサを採用した場合と同様に、炭酸ガスセンサは外周温度(この場合は排気室9の温度)によって補正する必要がある。その場合には、該炭酸ガスセンサ近傍に前記の「温度センサ」を併用すれば補正が可能となる。
【0046】
なお、センサ10の設置位置は、排気弁3の近傍が最も好適であるが、排気弁3を通じて進入する着用者の排気空気による炭酸ガス濃度変化を検知できる位置であればよく、排気室9だけでなく、炭酸ガス濃度の変化を検知できれば面体2の内側に設置しても問題がないので、排気弁の移動位置を検知する光学式センサ(従来タイプ)に比べて、センサ10の設置位置の自由度が増すことになる。なお、面体2内側の場合は、着用者の呼気がぶつかりやすい面に設置することがよい。
【0047】
次に上記実施形態において、非光学式のセンサ10として酸素ガスセンサを採用した実施形態を説明する。酸素ガスセンサの設置位置は上記温度センサの場合と同じ位置でよい。酸素ガスセンサとしては、特開平9−51950号公報に開示されたものを採用することができる。
【0048】
次に、実施形態の呼吸連動型ブロワーマスク4の作用を説明する。呼吸連動型ブロワーマスク4の着用試験を行った。実施時のブロワー送風空気の酸素ガス濃度は約20%で、着用者の排気空気の酸素ガス濃度は約14〜16%であった。まず、着用者が排気すると、排気空気により排気室9内の酸素ガス濃度は約16%となった。着用者が吸気すると、ブロワー送風量が着用者の吸気量と全く同じか少ない場合は着用者の呼気は排気室9に進入してこないので、酸素ガス濃度が上昇し、ブロワー送風量が着用者の吸気量より多い場合も、着用者が吸いきれない余分なろ過外気が排気室9に進入するだけなので、酸素ガス濃度の上昇が進む。そのため、着用者の呼吸が排気に転じる直前には約18%以上になった。そして、着用者が排気すると、排気室9内の空気と着用者の排気空気とが混じり合って、再び排気室9内の酸素ガス濃度が約16%以下に戻った。
【0049】
ブロワー制御回路は、排気室9内の酸素ガス濃度に基づき、排気室9内の酸素浸度が低下した場合は、着用者の排気とみなしてブロワー送風を停止又は減速する。即ち、ブロワー制御回路はセンサ10から入力される排気室9内の酸素ガス濃度に応じたアナログ電気信号が、基準値を下回ると(例えば、17%に対応する基準値を下回ると)、モータ12を停止或いは減速させ、この結果、ブロワー6の羽根車11による送風が停止するか又は送風量が減少する。
【0050】
一方、排気室9内の酸素ガス濃度が上昇した場合は、着用者の吸気とみなしてモータ12を通常作動してブロワー送風を行う。即ち、ブロワー制御回路はセンサ10から入力される排気室9内の酸素ガスに応じたアナログ電気信号が、基準値より上回ると(例えば、17%に対応する墓準値を上回ると)、モータ12を通常作動させ、ブロワー6の羽根車11による送風により、開いている吸気弁4を通して面体2内に外気を送り込み、着用者の吸気を補助する。即ち、排気時であるか吸気時であるかを酸素ガスセンサ10で検知し、ブロワー6の駆動を呼吸に合わせて制御することができる。実施した環境と着用者の排気空気の酸索ガス濃度が極端な変化がない間は、着用者の呼吸に連動したブロワー送風が行われた。
【0051】
排気室9内の空気の酸素ガス濃度は、ボンネット8の排気孔13を通じて拡散することで上昇、又は排気弁3の排気通気路14を通じて着用者の排気を混入することで低下するので、時間の経過と共に酸素ガス濃度が変化する。また、外気酸素ガス濃度が着用者の排気と同じ酸素ガス濃度となる場合は稀なため、排気室9内に進入した着用者の排気空気は時間経過と共に外気酸素ガス濃度に近づくように変化していく。そして、次の着用者の排気によって元の酸素ガス濃度に戻される。つまり、着用者が呼吸している限り、この酸素ガス濃度変化のバターンは繰り返すことになる。
【0052】
なお、外気酸素ガス濃度によってはセンサによる酸素ガス濃度変化の検知を補正する必要がある。その場合には、ボンネット8の外側にもう1つ別に外気酸素ガス濃度を検知する酸素ガスセンサを設置し、外気酸素ガス濃度と排気室9内の酸素ガス濃度との差から補正を行うようにすればよい。
【0053】
さらに、上述の非光学式のセンサ10として湿度センサを採用した場合と同様に、酸素ガスセンサは外周温度(この場合は排気室9の温度)によって補正する必要がある。その場合には、該酸素センサ近傍に前記の「温度センサ」を併用すれば補正が可能となる。
【0054】
なお、センサ10の設置位置は、排気弁3の近傍が最も好適であるが、排気弁3を通じて進入する着用者の排気空気による酸素ガス濃度変化を検知できる位置であればよく、排気室9だけでなく、酸素ガス濃度の変化を検知できれば面体2の内側に設置しても問題がないので、排気弁の移動位置を検知する光学式センサ(従来タイブ)に比べて、センサ10の設置位置の自由度が増すことになる。なお、面体2内側の場合は、着用者の呼気がぶつかりやすい面に設置することがよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る呼吸連動型ブロワーマスク装置の断面図である。
【図2】呼吸連動型ブロワーマスクの吸気時における要部断面図である。
【図3】呼吸連動型ブロワーマスクの排気時における要部断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 呼吸連動型ブロワーマスク装置
2 面体
3 排気弁
4 吸気弁
5 フィルタカバー
6 ブロワー
7 フィルタ
8 ボンネット(覆い部材)
9 排気室
10 センサ
11 羽根車
12 モータ
13 排気孔
14 排気通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面体の前部に、排気時に開いて吸気時に閉じる排気弁、及び、吸気時に開いて排気時に閉じる吸気弁を設け、通常作動時に前記吸気弁を通して外気を面体内に送り込むブロワーを設置し、前記面体の外側に前記排気弁を覆うように覆い部材を重設すると共に、前記覆い部材と前記面体との間の空間により排気室を形成し、前記排気室内の前記排気弁の近傍に、前記排気弁を通じて進入する着用者の排気空気の有無を検知するための非光学式のセンサを設置し、
前記非光学式のセンサを介して着用者の排気空気が検知された場合に排気時とみなし、前記ブロワーを停止又は減速する一方、前記非光学式のセンサを介して前記着用者の排気空気が検知されない場合に吸気時とみなし、前記ブロワーを通常作動することを特徴とする呼吸連動型ブロワーマスク装置。
【請求項2】
前記非光学式のセンサを温度センサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の温度変化を前記温度センサで検知することを特徴とする請求項1に記載の呼吸連動型ブロワーマスク装置。
【請求項3】
前記非光学式のセンサを湿度センサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の湿度変化を前記湿度センサで検知することを特徴とする請求項1に記載の呼吸連動型ブロワーマスク装置。
【請求項4】
前記非光学式のセンサを炭酸ガスセンサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の炭酸ガス量の変化を前記炭酸ガスセンサで検知することを特徴とする請求項1に記載の呼吸連動型ブロワーマスク装置。
【請求項5】
前記非光学式のセンサを酸素ガスセンサで構成し、前記着用者の排気空気の有無に応じた前記排気室の酸素ガス量の変化を前記酸素ガスセンサで検知することを特徴とする請求項1に記載の呼吸連動型ブロワーマスク装置。
【請求項6】
前記非光学式のセンサを、湿度センサ、炭酸ガスセンサ及び酸素ガスセンサのうちから1つ選ばれたセンサで構成し、さらに、前記1つ選ばれたセンサの近傍に温度センサを併用したことを特徴とする請求項1に記載の呼吸連動型ブロワーマスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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