説明

呼気中のガス濃度検出装置

【課題】測定に要する時間が長くなることや測定精度の低下を招くことなく、呼気を吹き込むためのハンディユニットの小型軽量化を図ることのできる呼気中のガス濃度検出装置を提供する。
【解決手段】光源と、光源からの光を受光する受光センサと、受光センサからの信号に基づいて特定ガスの濃度を算出するガス濃度算出部とを具備した制御ユニットと、制御ユニットとは別体に構成され、呼気を吹き込むための測定空間と、光を測定空間内に射出する光射出部と、測定空間内の光射出部とは異なる位置に配置され光射出部から射出された光が入射される受光部とを有するハンディユニットと、光源からの光を光射出部まで伝送する第1光ファイバと、受光部で受光した光を受光センサまで伝送する第2光ファイバとを具備し、測定空間に吹き込まれた呼気中の特定ガスの濃度を、受光センサで受光した光の強度に基づいてガス濃度算出部にて算出する呼気中のガス濃度検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気中の特定ガスの濃度を検出するための呼気中のガス濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲酒運転による重大事故が多々発生し、輸送や医療の分野の従事者、及び一般のドライバーに対しても飲酒・酒気帯び度の管理が行われるようになっている。このドライバーの飲酒検知案の一つとして、呼気中のアルコール濃度を検知し、酒気帯びの場合にはエンジンの始動をロックするアルコール・イグニッション・インターロックシステムが提案されている。
【0003】
上記アルコール・イグニッション・インターロックシステムでは、ガス検知部が内蔵され呼気を吹き込むためのハンディユニット、検査結果を表示する表示ユニット、及びコントロールユニット等から構成される(例えば、特許文献1参照。)。また、上記ガス検知部においてアルコールを検出するためのセンサとしては、例えば、燃料電池式センサや酸化物半導体式センサ等が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、アルコールを検出するためのセンサとして、光源とこの光源からの光を受光する受光センサを使用し、光の吸収の状態からアルコール濃度を検出するものも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−205432号公報
【特許文献2】特開2007−121048号公報
【特許文献3】特開2010−164313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の燃料電池式センサや酸化物半導体式センサを用いた呼気中のガス濃度検出装置では、ハンディユニットに吹き込まれた呼気が直接センサ素子表面に到達し、素子表面の化学反応によってガス検知が行われる。このため、燃料電池式センサや酸化物半導体式センサを具備したガス検知部を、ハンディユニット内に内蔵させた構成とする必要があり、ハンディユニットが大型で重くなり、利便性に欠けるという問題がある。例えば、従来の呼気中のガス濃度検出装置におけるハンディユニットの大きさの一例は、150mm×48mm×50mmであり、この場合の重量は220g程度である。
【0006】
なお、ハンディユニット以外の部分、例えばコントロールユニットに燃料電池式センサや酸化物半導体式センサ等からなるガス検知部を設け、ハンディユニット内に吹き込んだ呼気をコントロールユニットまで導いて測定する構成とすることも考えられる。しかしながら、このような構成とすると、呼気が燃料電池式センサや酸化物半導体式センサにまで到達する時間が長くなることによって、測定に要する時間が長くなり、また、測定精度を確保するのに十分な量の呼気が、燃料電池式センサや酸化物半導体式センサにまで到達しなくなり、測定精度が低下するという問題が発生する。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、測定に要する時間が長くなることや測定精度の低下を招くことなく、呼気を吹き込むためのハンディユニットの小型軽量化を図ることのできる呼気中のガス濃度検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の呼気中のガス濃度検出装置の一態様は、光源と、前記光源からの光を受光する受光センサと、前記受光センサからの信号に基づいて特定ガスの濃度を算出するガス濃度算出部とを具備した制御ユニットと、前記制御ユニットとは別体に構成され、呼気を吹き込むための測定空間と、光を前記測定空間内に射出する光射出部と、前記測定空間内の前記光射出部とは異なる位置に配置され前記光射出部から射出された光が入射される受光部とを有するハンディユニットと、前記光源からの光を前記光射出部まで伝送する第1光ファイバと、前記受光部で受光した光を前記受光センサまで伝送する第2光ファイバと、を具備し、前記測定空間に吹き込まれた呼気中の特定ガスの濃度を、前記受光センサで受光した光の強度に基づいて前記ガス濃度算出部にて算出することを特徴とする。
【0009】
本発明の呼気中のガス濃度検出装置では、光源及び受光センサからなるガス濃度検出センサが、ハンディユニット内ではなく制御ユニット内に配置されている。したがって、光源及び受光センサからなるガス濃度検出センサをハンディユニット内に配置した場合に比べて、ハンディユニットを小型軽量化することができる。ハンディユニットは、呼気を吹き込む際に、手に持って、口元に配置するため、ハンディユニットを小型軽量化することによって、利便性の向上を図ることができる。また、呼気を制御ユニット内に送るのではなく、制御ユニットとハンディユニットの間においては、第1光ファイバ及び第2光ファイバによる光の伝送のみが行われるので、測定に要する時間が長くなることや測定精度の低下を招くこともない。
【0010】
本発明の呼気中のガス濃度検出装置では、特定ガスとしてアルコール(エタノール)の濃度を検出する構成とすることができる。これによって、例えばアルコール・イグニッション・インターロックシステム等に使用することができる。
【0011】
また、本発明の呼気中のガス濃度検出装置では、上記ハンディユニットに、呼気による結露を防止するための加熱用ヒータを配設した構成とすることができる。これによって、測定空間内に呼気が吹き込まれた際に結露が生じ、測定精度に悪影響を及ぼすことを防止することができる。なお、呼気による結露を防止するためには、測定空間内の温度を、呼気の温度と同程度の温度(例えば、40℃程度)に加熱しておくことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の呼気中のガス濃度検出装置では、ハンディユニットに、光射出部から射出された光を集光して受光部に入射させるための光学素子が配設された構成とすることができる。このように、光射出部から射出された光を集光して受光部に入射させるための光学素子を設けることにより、光射出部から射出された光を効率良く受光部に入射させることができ、精度良くガス濃度を検出することができる。この場合、光学素子として集光レンズを好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定に要する時間が長くなることや測定精度の低下を招くことなく、呼気を吹き込むためのハンディユニットの小型軽量化を図ることのできる呼気中のガス濃度検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の呼気中のガス濃度検出装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る呼気中のガス濃度検出装置100の構成を模式的に示している。なお、本実施形態では、呼気中の特定ガスとして、アルコール(エタノール)の濃度を測定する場合について説明する。図1に示すように、ガス濃度検出装置100は、制御ユニット110と、ハンディユニット120と、表示ユニット130とを具備している。
【0017】
制御ユニット110は、所定の波長域の光(例えば、赤外光)を発する光源111と、光源111からの光を受光するための受光センサ112と、受光センサ112からの電気信号に基づいて特定ガスの濃度を算出するガス濃度算出部113とを具備している。
【0018】
ハンディユニット120は、筺体126を具備しており、筺体126の内部には、呼気を吹き込み呼気中のアルコール濃度を測定するための測定空間121が配設されている。筺体126は、その外形及び大きさが、手に持って口元に近付け、測定空間121内に呼気を吹き込むのに適したものとなっている。また、ハンディユニット120の筺体126内には、測定空間121を挟んで対向するように、光射出部122と受光部123とが配設されている。
【0019】
光射出部122と、制御ユニット110の光源111との間には、第1光ファイバ140が配設されており、光源111からの光を第1光ファイバ140によって導き、光射出部122から測定空間121に向けて射出するように構成されている。また、受光部123と制御ユニット110の受光センサ112との間には、第2光ファイバ141が配設されており、受光部123にて受光した光を、第2光ファイバ141によって導き、受光センサ112に入射させるように構成されている。
【0020】
さらに、ハンディユニット120には、測定空間121を囲むように、加熱用ヒータ124が配設されており、この加熱用ヒータ124は、電気配線142により、制御ユニット110と接続されている。そして、制御ユニット110から供給される電力により、測定空間121内を所定温度(例えば、呼気の温度と同程度の温度(例えば40℃程度))に加熱することができるように構成されている。
【0021】
このように、加熱用ヒータ124によって測定空間121内を所定温度に加熱することにより、測定空間121内に呼気が吹き込まれた際に、結露が生じることを防止する。これによって、測定空間121内に結露が生じ、アルコール濃度の測定精度に悪影響を与えることを防止できるようになっている。
【0022】
また、測定空間121内には、受光部123の前方に位置するように、光射出部122から射出された光を集光して受光部123に入射させるための光学素子として集光レンズ125が配設されている。この集光レンズ125によって、光射出部122から射出された光を効率良く受光部123に入射させることができるようになっている。これによって受光部123に入射する光量を増大させ、アルコール濃度の測定に寄与する光量を増大させることによって、より精度良くアルコール濃度を測定することができる。
【0023】
表示ユニット130は、液晶表示パネルやLED等の表示機構を具備しており、制御ユニット110のガス濃度算出部113にて算出されたアルコールの濃度、及びその他の装置の状態に関する情報等を表示するように構成されている。
【0024】
上記構成の呼気中のガス濃度検出装置100は、例えば、車載用のアルコール・イグニッション・インターロックシステム等に用いることができる。この場合、制御ユニット110及び表示ユニット130は、車内に取付け、固定され、ハンディユニット120は、運転席に座った運転手の手が届く車内の位置に、着脱自在に取付けられる。
【0025】
そして、呼気中のアルコール濃度を検出する際には、ハンディユニット120の部分のみを手に持ち、口元に近付けてハンディユニット120の測定空間121の内部に呼気を吹き込む。この際、呼気を吹き込む前に、予めハンディユニット120の加熱用ヒータ124に、電気配線142を介して制御ユニット110から通電がなされ、測定空間121内が所定温度(例えば、呼気の温度と同程度の温度)に加熱される。これによって、測定空間121内に呼気が吹き込まれた際に結露が生じ、測定精度に悪影響を及ぼすことを防止する。
【0026】
また、ハンディユニット120の測定空間121の内部に呼気を吹き込む前に、制御ユニット110内の光源111は予め点灯した状態となっており、測定空間121の内部には、光射出部122から射出され受光部123に入射する光ビームが形成された状態となっている。
【0027】
上記の状態で、ハンディユニット120の測定空間121の内部に呼気が吹き込まれ、呼気にアルコール(エタノール)が含まれていると、その濃度に応じて特定波長の光が吸収され、受光センサ112で測定されるこの波長の光の強度が低下する。ガス濃度算出部113では、この特定波長の光の強度の低下から呼気中のアルコール(エタノール)の濃度を算出する。この算出されたアルコール(エタノール)濃度は、表示部130に表示される。なお、この場合、呼気に含まれる二酸化炭素の量を同時に測定し、この二酸化炭素の量によって測定空間121の内部に吹き込まれた呼気の量を算出して呼気中のアルコール(エタノール)の濃度を較正することもできる。
【0028】
そして、アルコール・イグニッション・インターロックシステムでは、上記の呼気中のアルコール(エタノール)の濃度の算出結果に基づいて、この濃度が基準値以上である場合はエンジンの始動をロックする。一方、呼気中のアルコール(エタノール)の濃度が基準値未満であれば、エンジンの始動をロックしないので、運転が可能となる。
【0029】
上記構成の本実施形態の呼気中のガス濃度検出装置100では、ハンディユニット120に、ガス濃度検出器、つまり、本実施形態においては、光源111及び受光センサ112が配置されておらず、これらの光源111及び受光センサ112は、制御ユニット110内に配置されている。そして、制御ユニット110内の光源111からの光は、第1光ファイバ140によってハンディユニット120内の光射出部122に伝送され、ハンディユニット120内の受光部123で受光した光は、第2光ファイバ141によって制御ユニット110内の受光センサ112に伝送され、受光センサ112により電気信号に変換される。
【0030】
したがって、例えば、光源111及び受光センサ112等のガス濃度検出器をハンディユニット120内に配置した場合に比べて、ハンディユニット120を小型軽量化することができる。このハンディユニット120は、呼気を吹き込む際に、手に持って、口元に配置するため、ハンディユニット120を小型軽量化することによって、利便性の向上を図ることができる。なお、前述したとおり、従来の呼気中のガス濃度検出装置におけるハンディユニットの大きさ及び重量の一例は、150mm×48mm×50mm、220g程度であるが、本実施形態のような構成を採用することによって、大きさ(体積)及び重量を、これの半分以下程度とすることができる。
【0031】
また、呼気をハンディユニット120から制御ユニット110内に送るのではなく、制御ユニット110とハンディユニット120の間においては、第1光ファイバ140及び第2光ファイバ141による光の伝送のみが行われるので、測定に要する時間が長くなることや測定精度の低下を招くこともない。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
100……呼気中のガス濃度検出装置、110……制御ユニット、111……光源、112……受光センサ、113……ガス濃度算出部、120……ハンディユニット、121……測定空間、122……光射出部、123……受光部、124……加熱用ヒータ、125……集光レンズ、126……筺体、130……表示ユニット、140……第1光ファイバ、141……第2光ファイバ、142……電気配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を受光する受光センサと、前記受光センサからの信号に基づいて特定ガスの濃度を算出するガス濃度算出部とを具備した制御ユニットと、
前記制御ユニットとは別体に構成され、呼気を吹き込むための測定空間と、光を前記測定空間内に射出する光射出部と、前記測定空間内の前記光射出部とは異なる位置に配置され前記光射出部から射出された光が入射される受光部とを有するハンディユニットと、
前記光源からの光を前記光射出部まで伝送する第1光ファイバと、
前記受光部で受光した光を前記受光センサまで伝送する第2光ファイバと、
を具備し、前記測定空間に吹き込まれた呼気中の特定ガスの濃度を、前記受光センサで受光した光の強度に基づいて前記ガス濃度算出部にて算出する
ことを特徴とする呼気中のガス濃度検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の呼気中のガス濃度検出装置であって、
前記特定ガスがアルコールである
ことを特徴とする呼気中のガス濃度検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の呼気中のガス濃度検出装置であって、
前記ハンディユニットに、呼気による結露を防止するための加熱用ヒータが配設されている
ことを特徴とする呼気中のガス濃度検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の呼気中のガス濃度検出装置であって、
前記ハンディユニットに、前記光射出部から射出された光を集光して前記受光部に入射させるための光学素子が配設されている
ことを特徴とする呼気中のガス濃度検出装置。
【請求項5】
請求項4項記載の呼気中のガス濃度検出装置であって、
前記光学素子が集光レンズから構成されている
ことを特徴とする呼気中のガス濃度検出装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−24596(P2013−24596A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156909(P2011−156909)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】