説明

呼気検査装置

【課題】呼気分析には、専用の分析装置が使用されるが、その分析に際して、前回の試料が測定装置内に存在していると、当然ながら正しい分析値は得られない。例えば、呼気を装置内に吹き込むためのマウスピースから装置までの配管やチューブは洗浄が困難である。そこで簡単に洗浄できる呼気検査装置を提供する。
【解決手段】人間の呼気を検査する装置であって、試料呼気導入口、気体を吸引するためのポンプ、該試料呼気導入口から該ポンプまでの吸引ライン、該試料が通過する測定部、該ポンプから該測定部までの内部ライン、該測定部から気体を大気解放する解放ラインを有するものにおいて該吸引ラインに洗浄用気体導入ラインを連結し、更に、該解放ラインから該吸引ラインの該洗浄用気体導入ライン連結部より該ポンプから遠い位置に洗浄ラインを連結するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、呼気中に含まれる微量成分を測定することによって、その人間の健康状態や遺伝的特性が分かるようになってきている。例えば、呼気中の水素ガス濃度を測定することによって、腸内細菌叢の作用と基質を利用して、糖質吸収不全(乳糖、蔗糖、果糖等)の診断、口−盲腸(小腸)通過時間の測定、腸内細菌の異常増殖、小腸粘膜障害の診断等に使用できる。
【0003】
このような呼気分析には、専用の分析装置が使用されるが、その分析に際して、前回の試料が測定装置内に存在していると、当然ながら正しい分析値は得られない。
【0004】
このため、測定が終了すると、空気等で装置内を洗浄することが行われている。
【0005】
しかしながら、呼気を装置内に吹き込むためのマウスピースから装置までの配管やチューブはこの洗浄工程には含まれていないため、この部分は洗浄されない。よって、この部分に残っている前回の試料が汚染物質(コンタミ)として次回の試料に含まれてしまう。
【0006】
これを防止するためには、その都度チューブを取り替える等のことをしなければならない。これは手間もかかり費用もかかるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、自動的に上記した試料導入管部分も洗浄できる呼気検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明呼気検査装置を完成したものであり、その特徴とするところは、人間の呼気を検査する装置であって、試料呼気導入口、気体を吸引するためのポンプ、該試料呼気導入口から該ポンプまでの吸引ライン、該試料が通過する測定部、該ポンプから該測定部までの内部ライン、該測定部から気体を大気解放する解放ラインを有するものにおいて、該吸引ラインに洗浄用気体導入ラインを連結し、更に、該解放ラインから該吸引ラインの該洗浄用気体導入ライン連結部より該ポンプから遠い位置に洗浄ラインを連結した点にある。
【0009】
本出願でいう呼気は、広い意味で使用する。口から出る気体をすべて呼気といい、肺胞から出たものか否かは問わない。
【0010】
ここでいう呼気検査とは、呼気中に含まれる物質の濃度を測定することをいい、その物質は問わない。例えば、水素、アンモニア、メタンその他である。
【0011】
試料呼気は、被検者がその装置に直接呼気を吹き込むか、ポンプで吸引されるか、または一旦他の容器(バッグ等)にとったものを導入するかは自由である。よって、試料呼気導入口とは、前記した呼気を採取した容器の接続口やマウスピースをいう。
【0012】
ポンプは通常のポンプでよく、呼気程度の量をゆっくり吸引できる程度の能力があれば十分である。
【0013】
吸引ラインとは、前記試料呼気導入口から前記ポンプまでの経路であり、金属配管やプラスチックチューブその他どのようなものでもよい。この吸引ラインには第1弁を設けてポンプに吸引される気体を切り替える。この第1弁は単なる電磁弁等でよい。
【0014】
測定部とは、分離カラムとセンサー部からなる。分離カラムは通常のガス分析用のものでよく、分析する気体によって適当なものを選べばよい。要するに通常の分離カラム等でよい。また、センサー部は、分離された気体を定性又は定量的に測定するもので、測定値を電気信号として発すものである。
【0015】
内部ラインとは、前記ポンプから測定部までの通路であり、前記吸引ラインと同様どのようなものでもよい。このラインには、測定部に入る試料の脱水用に乾燥器を設けてもよい。これは、吸着剤を充填したもので十分である。
【0016】
解放ラインとは、測定部から大気解放する開口までの通路であり前記したものと同様でよい。この解放ラインには第3弁を設けておく。これも測定部からの気体を大気解放するかしないかを決めるものである。弁はすべて前記した電磁弁等でよい。
【0017】
洗浄用気体とは、通常は大気の空気でよいが、空気が汚染されている場合等は他の気体を用いてもよい。洗浄用気体導入ラインは、洗浄用気体を吸引ラインに導入するもので、吸引ラインの適当な位置に連結すればよい。洗浄用気体導入ラインには第2弁を設けて切り替えるようにする。また、このラインには前記した乾燥器を設けてもよい。これは前記した内部ラインの乾燥器の負荷を下げるためである。
【0018】
洗浄ラインとは、解放ラインから試料導入口に連結された通路であり、これが本発明の大きな特徴のラインである。このラインにも第4弁を設けて通路を切り替える。
【0019】
また、第1弁と第2弁は、三方弁を用いて1つにすることもできる。また、洗浄ラインの連結部分も含めて四方弁にしてもよい。
【0020】
更に、第3弁と第4弁も三方弁を用いて1つにしてもよい。
【0021】
また、各弁の開閉やポンプの稼働は、手動で行うこともできるが、コンピューター等によって自動制御するのがよい。その場合、各弁とポンプは制御装置に電気的に接続する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の呼気検査装置では次のような効果がある。
バルブの切り替えにより、呼気導入通路についても洗浄できるため、前回の測定による汚染物質の混入等がない。よって、より正確な測定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面に示す実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明呼気検査装置1の原理と気体の流れを示す概略フロー図である。図1(a)は、洗浄工程を行っているところである。洗浄用空気が第2弁2を通過し、ポンプ3、測定部4を通過して、第4弁5を通過して、試料呼気導入口6から排出されている。これによって、試料呼気導入ラインのほとんどが洗浄できる。このとき、第1弁7と第3弁8は閉止されている。
【0025】
次に図1(b)は、各弁が切り替わり、測定工程を行っているところを示す。試料呼気が、試料呼気導入口6から第1弁7を通り、ポンプ3、測定部4を通過し、第3弁8を介して大気解放されている。これで、試料の測定、即ち呼気中の特定成分の分析を行うのである。
【0026】
図2は、より具体的な図を示す。
まず洗浄用の室内空気の導入口11から、空気乾燥器12を通り、空気導入ライン13から第1三方弁14の第1ポート15に接続されている。また第1三方弁14の第2ポート16から吸引ポンプ17を通り、試料乾燥器18を通過して分離カラム19に連絡されている。該カラム19からセンサー20を通り、第2三方弁21の第1ポート22に接続されている。第2三方弁21の第2ポート23は大気解放である。
【0027】
第2三方弁21の第3ポート24は、第1三方弁の第3ポート25に配管で連絡している。そして、試料導入ライン26が上記した第1三方弁の第3ポート25に接続する。ここでは、別のポート27に接続しているが、中では第3ポート25と連結されているので実際には第3ポートそのものである。試料導入ライン26の先端部はこの例では呼気採取バッグが取り付けられる接続口28である。
【0028】
第1三方弁14、第2三方弁21及びポンプ17は、タイマー(コンピューターでも可)29と接続されその信号によって稼働する。
また、センサー20からの分析値は、他のコンピューター30に送りだすことができる。
【0029】
この例において、動作の説明を行う。
まず、電源スイッチを入れるときは、各弁の開閉の状態は、図1(a)の状態である。電源を入れると、ポンプが稼働し、室内空気がカラム及びセンサーに送られながら、センサー部が昇温されるまで待つ。所定温度まで昇温されれば、表示ランプ等で表示するようにする。そして、試料導入口(接続口28)に呼気採取バッグを取り付ける。勿論、予め取り付けておいてもよい。
【0030】
そして、吸引開始のボタンを押す。このボタンを押すと、種々の弁が切り替わり、図1(b)の状態になる。そして、一定時間(通常は10〜20秒程度)この状態で、試料呼気が測定される。そして、測定値はコンピューターに送られるか、プリンター等でプリントアウトされる。
【0031】
上記した一定時間経過すると、タイマー29からの信号により、再び各弁が最初の状態に切り替わる。
これで測定は完了である。
【0032】
また、この例のポンプ17と乾燥器18の間に流量調整弁を設けてもよい。カラムの充填量その他によって、カラムに導入する量が変わるため、その導入量を調整するためのものである。
【0033】
また、試料呼気は、通常肺胞内の呼気のみが必要であり、口腔内等(死腔)の気体を含まないもの(終末呼気という)が望ましい。よって、呼気採取容器には終末呼気のみを採取するのが好ましい。
本発明の試料導入口がマウスピースであり、被検者から呼気を直接吸引するものでは、最初の数秒の呼気は廃棄し、終末呼気のみをカラムに導入するようにするのがよい。
【0034】
これは、ポンプ17の下流側に三方弁を設けて、死腔(通常は大人で150cc程度と言われている)の容量を廃棄するため、例えば、5秒間(ポンプの能力によって異なる)はその三方弁から大気に放出し、5秒すると、その三方弁が切り替わり測定カラムに導入するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明呼気検査装置1の原理と気体の流れを示す概略フロー図である。
【図2】本発明呼気採取装置1の1例を示す概略フロー図である。
【符号の説明】
【0036】
1 本発明呼気検査装置
2 第2弁
3 ポンプ
4 測定部
5 第4弁
6 試料呼気導入口
7 第1弁
11 室内空気導入口
12 空気乾燥器
13 空気導入ライン
14 第1三方弁
15 第1ポート流量計
16 第2ポート
17 吸引ポンプ
18 試料乾燥器
19 カラム
20 センサー
21 第2三方弁
22 第1ポート
23 第2ポート
24 第3ポート
25 第1三方弁の第3ポート
26 試料導入ライン
27 別のポート
28 試料導入接続口
29 タイマー
30 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の呼気を検査する装置であって、
試料呼気導入口、気体を吸引するためのポンプ、該試料呼気導入口から該ポンプまでの吸引ライン、該試料が通過する測定部、該ポンプから該測定部までの内部ライン、該測定部から気体を大気解放する解放ラインを有するものにおいて、
該吸引ラインに洗浄用気体導入ラインを連結し、更に、該解放ラインから該吸引ラインの該洗浄用気体導入ライン連結部より該ポンプから遠い位置に洗浄ラインを連結し、
該試料呼気導入口と、該洗浄用気体導入ライン連結部との間に第1弁、該洗浄用気体導入ラインに第2弁、該解放ラインの該洗浄ライン連結部より大気解放側に第3弁、該洗浄ラインに第4弁を設けたことを特徴とする呼気検査装置。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−29497(P2010−29497A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195799(P2008−195799)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(507327707)株式会社呼気生化学栄養代謝研究所 (2)
【Fターム(参考)】