説明

品種切替方法及び品種切替システム

【課題】各工程の機器の待機時間を短縮することにより製造ラインの稼動時間をより長期化し、生産量を増加することができる技術の実現。
【解決手段】品種切替システムは、複数の空容器を順次搬送させながらフィラーにより飲料を注入し製品を製造する製造ラインにおいて、飲料及び/又は容器の品種を切り替えるシステムであって、前記製造ラインを複数のブロック1〜11に分割した各ブロックごとに設けられ、前品種が払い出されたブロックごとに順次、機器に切替処理を実行させる手段23,24,25と、前記機器の切替処理が完了すると、当該機器の切替完了を通知する通知手段23,24,26と、前記通知手段による通知に応じて、前記切替処理が予め決められた手順で行われているか監視する手段22,23と、間違った手順の場合に作業者が所持する携帯端末31に警報を通報する手段27〜30と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール製造ラインにおけるビールや缶の品種切替方法及び品種切替システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィラーと呼ばれる機器により複数の缶体に順次ビールを注入するビール製造ラインにおいて、例えば、あるビールから他のビール、又はビールから発泡酒へ中身品種を切り替える際や350ミリリットルから500ミリリットル、500ミリリットルから350ミリリットルへ容器品種を切り替える際には、当該ライン下流まで前品種全ての払出しが完了した後、ライン上流から次品種を導入することにより実施するのが一般的であり、ラインコンベアの切替時間、各工程機器の切替時間、及び各工程の待機時間を合計して30分から1時間余りの所要時間と3名の人手を要する。
【0003】
また、切替作業の内容が多岐にわたるため、熟練者でなければ対応が困難であり、作業ミスが発生すると切替時間に影響が出る。
【0004】
例えば、特許文献1には、フィルム加工ラインにおいて、ラインを複数のブロックに分割することで切替時に1ブロックの完了(製品払出し)を待って切替作業に入り、全体として切替時間を短縮する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平10−086045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように従来の品種切替は、ライン下流まで前品種全ての払出しが完了するまで各工程の機器を待機させる必要があるため生産を行うことができない。このため、待機時間を短縮することによりビール製造ラインの稼動時間をより長期化し、生産量を増加することが必要となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、各工程の機器の待機時間を短縮することにより製造ラインの稼動時間をより長期化し、生産量を増加することができる技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る品種切替システムは、複数の空容器を順次搬送させながらフィラーにより飲料を注入し製品を製造する製造ラインにおいて、飲料及び/又は容器の品種を切り替えるシステムであって、前記製造ラインを複数のブロック1〜11に分割した各ブロックごとに設けられ、前品種が払い出されたブロックごとに順次、機器に切替処理を実行させる手段23,24,25と、前記機器の切替処理が完了すると、当該機器の切替完了を通知する通知手段23,24,26と、前記通知手段による通知に応じて、前記切替処理が予め決められた手順で行われているか監視する手段22,23と、間違った手順の場合に作業者が所持する携帯端末機31に警報を通報する手段27〜30と、を有する。
【0008】
また、本発明に係る品種切替方法は、複数の空容器を順次搬送させながらフィラーにより飲料を注入し製品を製造する製造ラインにおいて、飲料及び/又は容器の品種を切り替える方法であって、前記製造ラインを機器ごとに複数のブロックに分割し、前品種が払い出されたブロックごとに順次、機器の切替処理を実行するステップと、前記切替処理が完了したことを通知するステップと、前記通知に基づいて、前記切替処理が予め決められた手順で行われているか監視するステップと、間違った手順の場合に作業者が所持する携帯端末に警報を通報するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各工程の機器の待機時間を短縮することにより製造ラインの稼動時間をより長期化し、生産量を増加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0011】
[ビール製造ラインの構成]
図1は本発明に係る実施形態のビール製造ラインの工程図である。図2は、本実施形態のビール製造ラインの構成と、品種切替を行う際の作業者の動線及び操作内容を示す平面図である。
【0012】
本実施形態は、複数の空容器としての缶体を順次搬送させながらフィラーにより飲料としてのビールを注入し製品を製造する製造ライン(缶列)において、ビール及び缶体の少なくともいずれかの品種を切り替える方法である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態のビール製造ラインは、缶蓋及び缶体を供給する供給工程を行うブロック1と、フィラーによりビールを缶体に注入し、シーマーにより缶体に缶蓋を装着する缶詰め工程を行うブロック2と、ビールが詰められた製品の検査を行う検査工程を行うブロック3と、検査後の製品を加温機により加温する工程を行うブロック4と、製品の入味を検査する工程を行う及びブロック5,6と、入味検査後に分岐して製品を6本(マルチ)パックに梱包した上で24本入りカートンに梱包する工程又は製品をバラのまま(ルーズなど)他の形態で24本入りカートンに梱包する工程を行うブロック7,8と、カートンの印字を検査する工程を行うブロック9と、カートンの重量を検査する工程を行うブロック10と、カートンを搬出する工程を行うブロック11とに分割される。
【0014】
上記ブロック1は、缶蓋をシーマーに供給するラインと、缶内面を検査機で検査し、印字機により印字し、印字検査機により印字検査を行いリンサーで洗浄した後、フィラーに供給するラインと、が並列に設置されている。
【0015】
上記ブロック3は、バルブチェッカー、缶ウエイトチェッカー(WC)、異物検査機により製品の検査を行う。
【0016】
上記ブロック5,6は、X線を用いた製品の入味検査及び缶WCによる検査を行う。
【0017】
上記ブロック9は、印字検査機によりカートンの印字を検査する。
【0018】
上記ブロック10は、カートンWCによりカートンの検査を行う。
【0019】
上記印字検査機、フィラー、加温機、ケーサーの分岐部、WCには、払出し確認ボタンが設置されている。
【0020】
また、フィラー及びケーサーには、切替完了ボタンが設けられている。
【0021】
上記製造ラインにおけるビール及び/又は容器の品種切替の際には、作業者Aは、図2の一点鎖線で示す(1)から(12)の順番で上記各ブロック毎に切替処理を実施していく。即ち、作業者Aは、(1)印字検査機での払出し確認操作を行う。次に、(2)加温機入口での払出し確認操作を行う。次に、(3)印字検査機でのテスト及び機能確認操作を行う。次に、(4)バルブチェッカーでのテスト及び機能確認操作を行う。次に、(5)異物検査機でのテスト及び機能確認操作を行う。次に、(6)缶ウエイトチェッカーでのテスト及び機能確認操作を行う。次に、(7)加温機出口での払出し確認操作を行う。次に、(8)ケーサーの分岐部での払出し確認操作を行う。次に、(9)カートンウエイトチェッカーでの払出し確認操作を行う。次に、(10)カートン印字検査機でのテスト及び機能確認操作を行う。次に、(11)ケーサーでの切替完了操作を行う。次に、(12)カートンウエイトチェッカーでの品質確認操作を行う。
【0022】
尚、上記払出し確認操作及び切替完了操作は、各工程に設置された払出し確認ボタン及び切替完了ボタンをONする。
【0023】
一方、作業者Bは、図2の二点鎖線で示す(1)から(7)の順番で上記各ブロック毎に切替処理を実施していく。即ち、作業者Bは、(1)フィラー及びシーマーでの品質確認操作、(2)払出し確認操作、(3)切替完了操作を行う。次に、(4)及び(5)入味検査機でのテスト及び機能確認操作を行う。次に、(6)缶ウエイトチェッカーのテスト及び機能確認操作を行う。次に、(7)6本パックケーサーでの切替完了操作及び機能確認操作を行う。
【0024】
尚、上記払出し確認操作及び切替完了操作は、各工程に設置された払出し確認ボタン及び切替完了ボタンをONする。
【0025】
図3は、本実施形態の品種切替システムの構成を示すブロック図である。
【0026】
図3において、コントロール室21には、本実施形態の品種切替モードを実行するPC等からなる監視装置22が設置され、監視装置22には、工場内に網羅されたPLC(Programmable Logic Controller)ネットワーク23及び各PLCリモートI/O24を介して製造ラインの各所に配置された払出し確認ボタン25及び切替完了ボタン26の各操作信号が入力される。また、監視装置22は、PLC27を介してPHS通報装置28に接続されている。PHS通報装置28は、PHS交換機29及びPHSアンテナ30を介して作業者A,Bが所持するPHS等の携帯端末機31に品種切替手順を通報する。即ち、監視装置22は、各所に配置された払出し確認ボタン25及び切替完了ボタン26の各操作信号に基づく通知を受けて、図1及び図2の一点鎖線や二点鎖線で示した品種切替手順をメッセージ等で作業者A,Bに通報する。また、監視装置22は、作業者A,Bが間違った手順を行ったことを判定した場合、その旨及び正しい手順をメッセージ等で通報する。また、PLC27は、警報スイッチ32を介して異常が発生した機器から警報信号を受ける。
【0027】
図4は本実施形態の品種切替時間を示すタイムチャート、図5は従来の品種切替時間を示すタイムチャートである。
【0028】
図4及び図5から明らかなように、各工程の機器の待機時間を短縮することによりビール製造ラインの稼動時間をより長期化し、生産量を増加することができる。具体的には、切替時間を10分以内に短縮し、従来の切替時間を30分とした場合、切替時間を平均で21分短縮できる。これに年間の品種切替回数をかけた場合、約88時間となり、年間で88時間の切替時間短縮を図ることができる。この時間を稼動にまわせば、稼働時間をより長期化し生産量を増加できることになる。また、人員を2名に削減し、従来の多岐煩雑にわたる切替作業が整然と間違いなく行えるようになって作業ミス等も低減できる。これにより、切替時間の短縮化と共に、人件費や機械設備等のコスト削減を図ることが可能となる。
【0029】
尚、本発明は、ビール以外の飲料や缶以外の容器にも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る実施形態のビール製造ラインの工程図である。
【図2】本実施形態のビール製造ラインの構成と、品種切替を行う際の作業者の動線及び操作内容を示す平面図である。
【図3】本実施形態の品種切替システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態の品種切替時間を示すタイムチャートである。
【図5】従来の品種切替時間を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0031】
21 コントロール室
22 監視装置
23 PLCネットワーク
24 PLCリモートI/O
25 払出し確認ボタン
26 切替完了ボタン
27 PLC
28 PHS通報装置
29 PHS交換機
30 PHSアンテナ
31 携帯端末機
32 警報スイッチ
A,B 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空容器を順次搬送させながらフィラーにより飲料を注入し製品を製造する製造ラインにおいて、飲料及び/又は容器の品種を切り替える方法であって、
前記製造ラインを機器ごとに複数のブロックに分割し、
前品種が払い出されたブロックごとに順次、機器の切替処理を実行するステップと、
前記切替処理が完了したことを通知するステップと、
前記通知に基づいて、前記切替処理が予め決められた手順で行われているか監視するステップと、
間違った手順の場合に作業者が所持する携帯端末に警報を通報するステップと、を有することを特徴とする品種切替方法。
【請求項2】
複数の空容器を順次搬送させながらフィラーにより飲料を注入し製品を製造する製造ラインにおいて、飲料及び/又は容器の品種を切り替えるシステムであって、
前記製造ラインを複数のブロックに分割した各ブロックごとに設けられ、前品種が払い出されたブロックごとに順次、機器に切替処理を実行させる手段と、
前記機器の切替処理が完了すると、当該機器の切替完了を通知する通知手段と、
前記通知手段による通知に応じて、前記切替処理が予め決められた手順で行われているか監視する手段と、
間違った手順の場合に作業者が所持する携帯端末に警報を通報する手段と、を有することを特徴とする品種切替システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−26009(P2009−26009A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187562(P2007−187562)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】