説明

品質検査方法および品質検査装置

【課題】工業製品の動作音の一つである非定常音を音質の面から評価し、人の聴感検査に近い非定常音に基づく品質検査を実現する。
【解決手段】良品サンプル8の動作音を集音器2で音波形データに変換し、A/D変換機3を経由してコンピュータ5に取り込み、心理音響パラメータに変換する。良品サンプル複数個分の心理音響パラメータからさらに良品サンプルのデータばらつきを利用して擬似良品データを増数させる。良品サンプルデータと擬似良品データの心理音響パラメータから統計的手法で閾値と判定マスキングデータを算出して閾値データを作成。被検ワーク1の動作音を集音器2で音波形データに変換し、A/D変換機4を経由してコンピュータ5に取り込み、心理音響パラメータに変換してから、先に作成した閾値と心理音響パラメータ種類毎に比較して、異音判定を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作中に音の発生を伴う工業製品(例えばモータ、コンプレッサ、インバータ、あるいはそれらを内蔵した製品、ギアやカム、スライダ等のメカ動作機構を持つ製品)の品質検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一部を除いて、ほとんど全ての工業製品は動作時に何らかの動作音の発生を伴う。そのような動作音は、モータなどの動力部品やコンプレッサ等の機能部品、インバータ等の電気部品、またギアやカム、スライダ等のメカ動作機構から発せられる。工業製品の量産工程では、製品の組み立て途中、もしくは完成後に前記動作音を用いた製品の検査が実施される。
【0003】
工業製品が発する動作音としては、定常音と非定常音がある。例えば、デバイスとしてのモータやコンプレッサなどは、コイルやロータやベーン、スクロールが定常的な回転状態を維持するため、動作音は一定の音質・調子・大きさが維持される。このような工業製品から発せられる動作音は、定常音と呼ばれる。一方、光ディスクドライブがメディア挿入・排出の動作の際に発する動作音や、カーナビのディスプレイが開閉動作の際に発する動作音、カメラが電動でズーム動作をする際に発する動作音などは、工業製品の動きの状態の変遷に応じて音質・調子・大きさが時々刻々と変化していく。こうした工業製品が発する動作音は非定常音と呼ばれる。例えばカーナビのディスプレイは、動作開始前は無音状態だが、ディスプレイ開動作が始まるとカーナビが備えるモータやギア、カムが動作音を発する。カーナビのディスプレイの開動作の開始時での動作音と終盤での動作音とは、ギアの当たり具合やモータ回転速度の変化により異なる場合が多い。このため、非定常音に基づく工業製品の品質の評価は、定常音に基づく工業製品の品質の評価に比べて困難とされている。
【0004】
通常、動作音による工業製品の品質の評価を行う場合は、人の聴感による官能的な検査が実施されるが、その際の判断基準は検査員の感覚に委ねられており、検査員によってまちまちであり、定量的に工業製品の品質を評価することは困難である。また、同じ検査員でも、体調、周囲の環境等により判断基準にばらつきが生じるため、人の聴覚による検査は定量性に乏しいものとなる。そのため、動作音に基づく工業製品の品質の評価を自動化しようとする試みがされてきた。
【0005】
従来の工業製品が発する動作音に基づく自動的な品質の検査方法としては、騒音計により得られた周波数毎の音圧に対して、閾値を設定して品質を評価するものがある(例えば、特許文献1参照。)。図25は、特許文献1に記載された従来の動作音に基づく工業製品の品質の検査方法を示す図である。
【0006】
図25に示すように、従来の工業製品の検査は、周波数空間の各周波数帯域にそれぞれ判定パラメータを設けて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−126141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、周波数空間のみに閾値(図25では「判定パラメータ」と表示)を設定しているため、工業製品が発する定常音のみを評価対象としている。このことから、時間経過で変化していく非定常音を発する工業製品の品質の評価は困難である。
【0009】
また、従来の検査方法では、物理的な音の大きさの指標である音圧レベルのみで品質を評価しているため、音圧レベルが閾値以下であれば良品と評価される。しかし、音圧レベルは、閾値以下でも音質により不良扱いとしたい場合もあり、音圧レベルのみで工業製品の品質を効果的に判別することは難しい。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、音質に注目した音に基づく検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の品質検査方法は、検査対象である被検ワークと同種の良品サンプルの動作音を、複数の前記良品サンプルから良品音情報として取得し、複数の前記良品音情報を経過時間に対応する良品音評価量として心理音響パラメータを用いて数値化し、複数の前記良品音評価量から判定用の閾値を決定し、前記被検ワークから発せられる動作音を被検音情報として取得し、前記被検ワークの前記被検音情報を経過時間に対応する被検音評価量として数値化し、前記被検ワークの前記被検音評価量と決定した前記閾値とを比較した結果に基づき前記被検ワークの品質を検査することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の品質検査方法によれば、動作音を音質の面から評価し、人の聴感検査に近い評価レベルで製品の品質を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における非定常音に基づく品質検査方法のフローチャート
【図2】本発明の実施の形態1における閾値を設定するための閾値決定方法のフローチャート
【図3】音波形データ取得分析処理のフローチャート
【図4】音波形データ時間オフセット処理のフローチャート
【図5】音波形データ閾値比較処理のフローチャート
【図6】音波形データ閾値比較結果マスキング処理のフローチャート
【図7】異音判定処理のフローチャート
【図8】良品音波形データ取得分析処理のフローチャート
【図9】良品音波形データ時間オフセット処理のフローチャート
【図10】良品音波形データ増数処理のフローチャート
【図11】閾値決定方法のフローチャート
【図12】マスキング領域設定処理のフローチャート
【図13】本発明の実施の形態1における品質検査方法を実施するための装置構成例を示す概略図
【図14】音波形データ取得分析処理と良品音波形データ取得分析処理において取得する音波形データと部分音波形データU(i)と部分音波形データW(i)の関係を示す図
【図15】音波形データ時間オフセット処理において相対時間差h=4のときの心理音響パラメータ配列のシフト操作を示す図
【図16】音波形データ時間オフセット処理において相対時間差h=−4のときの心理音響パラメータ配列のシフト操作を示す図
【図17】本発明の実施の形態1における閾値決定方法を実施するための装置構成例を示す概略図
【図18】良品音波形データ時間オフセット処理において相対時間差h(Y)=4のときの心理音響パラメータ配列のシフト操作を示す図
【図19】良品音波形データ時間オフセット処理において相対時間差h(Y)=−4のときの心理音響パラメータ配列のシフト操作を示す図
【図20】マスキング領域設定処理におけるマスキング閾値Lmtとマスキング基準値Lmb(i)の関係と、Lmtの設定の違いによるマスキング領域の違いを示す図
【図21】ラウドネス値に関する実際の良品サンプルデータ群のヒストグラムと良品データ増数処理で増数された擬似良品データ群のヒストグラムを比較した図
【図22】シャープネス値に関する実際の良品サンプルデータ群のヒストグラムと良品データ増数処理で増数された擬似良品データ群のヒストグラムを比較した図
【図23】ラフネス値に関する実際の良品サンプルデータ群のヒストグラムと良品データ増数処理で増数された擬似良品データ群のヒストグラムを比較した図
【図24】変動強度値に関する実際の良品サンプルデータ群のヒストグラムと良品データ増数処理で増数された擬似良品データ群のヒストグラムを比較した図
【図25】特許文献1に記載された従来の品質検査方法を示す図
【図26】ソフトウエアによって実現されるコンピュータの機能構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における非定常音に基づく品質検査方法の流れを示したフローチャートである。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態1における非定常音に基づく品質検査方法に用いる閾値決定方法の流れを示したフローチャートである。
【0017】
また、図13は、本発明の実施の形態1における非定常音に基づく品質検査を行うための装置構成例を示した概略図である。
【0018】
また、図17は、本発明の実施の形態1における閾値決定を行うための装置構成を示した概略図である。
【0019】
なお、図17に示す装置の基本的な構成は図13と同様であり、図17と図13は動作音の発生源が異なる。つまり、図13に記載の装置は、動作音の発生源として工業製品である被検ワーク1の動作音を取得している。一方、図17に記載の装置は、あらかじめ準備してある良品サンプル8の動作音を取得している。この良品サンプル8は、良品サンプル群9のうちのいずれか1個である。良品サンプル群9は、被検ワーク1と同種の工業製品であって良品の工業製品である複数の良品サンプル8で構成されている。
【0020】
本実施の形態1で説明する非定常音に基づく品質検査方法は、図1、図2のフローチャートで示される方法を合わせたものである。また、図1、図2のフローチャートで示される非定常品質検査方法および閾値決定方法は、通常、コンピュータ5内に構成されたプログラムで遂行される。
【0021】
図13に示す装置においては、被検ワーク1からの音が集音器2で集音され、A/D変換機3でアナログデジタル変換された後、コンピュータ5にデジタルデータとして入力される。そして、コンピュータ5に接続されたディスプレイ6にデータを表示し、入力装置7からの入力などを基に駆動装置4で被検ワーク1を動作させる。
【0022】
また、図17に示す装置においては、良品サンプル群9から抽出された良品サンプル8からの音が集音器2で集音され、A/D変換機3でアナログデジタル変換された後、コンピュータ5にデジタルデータとして入力される。そして、コンピュータ5に接続されたディスプレイ6にデータを表示し、入力装置7からの入力などを基に駆動装置4で良品サンプル8を動作させる。
【0023】
なお、コンピュータ5は後述する処理が実行できる程度のものであればよく、コンピュータ5を構成する記録媒体、CPU、インターフェース等の仕様、ディスプレイ6の仕様、入力装置7の仕様も、本実施の形態1で説明する処理を実現可能な構成であれば特定の構成になんら限定を課さない事は言うまでもない。また、コンピュータ5の替わりにシーケンサ(登録商標)等の論理制御や判断が可能な機器を用いても構わない。
【0024】
なお、集音器2はマイクロフォンや加速度センサ、レーザ変位計など、被検ワーク1の動作音である音響振動を音波形信号に変換できるデバイスであれば形態や方式は問わない。
【0025】
図26に、本実施の形態1において、ソフトウエアによって実現されるコンピュータの機能構成を示すブロック図を示す。図26において、コンピュータ5は、集音部11に接続された数値化部16、数値化部16に接続されたオフセット部12、オフセット部12に接続された閾値比較部13および増数部17、閾値比較部に接続されたマスキング処理部14、マスキング処理部14およびディスプレイ6に接続された品質評価部15、増数部17および閾値比較部13に接続された閾値決定部18、閾値決定部18およびマスキング処理部14に接続された領域決定部19、とを機能構成として有する。
【0026】
続いて、図1で示す非定常に基づく品質検査方法の概要を説明する。
【0027】
ステップS0で検査処理を開始すると、まず、ステップS1では、駆動装置4の作用により動作している被検ワーク1の発している動作音を、集音器2で音波形信号として取得し、A/D変換機3で音情報である音波形データに変換する。なお、集音器2とA/D変換機3とで、音情報を取得する集音手段11として機能している。
【0028】
そして、音波形データを経過時間に対応する音評価量である心理音響パラメータとして数値化する。当該数値化はコンピュータ5の数値化部16の演算により行われる。
【0029】
次にステップS2では、ステップS1で得られた心理音響パラメータを、あらかじめ準備しておいた基準波形データとの時間的整合性を取ることができるように、時間オフセット処理する。当該時間オフセット処理は、オフセット部12が行う。
【0030】
次にステップS3では、ステップS2で適切に時間オフセット処理された心理音響パラメータを、あらかじめ準備しておいた閾値である閾値データと比較する。当該比較処理は、閾値比較部13により行われる。
【0031】
次にステップS4では、ステップS3で心理音響パラメータと閾値データとを比較した結果のデータから、判定に必要な部分だけを抽出するために、あらかじめ準備しておいたマスキングデータを用いてマスキング処理を行う。当該マスキング処理は、マスキング処理部14により行われる。
【0032】
次にステップS5では、ステップS4でマスキング処理された閾値データと比較した結果のデータを用いて、ステップS1において取得した被検ワーク1の音波形データが異音であるかどうかの判定を実施する。当該判定処理は、品質評価部15が行い、ステップS6で検査処理を終了する。
【0033】
なお、ステップS1からステップS5までの各ステップのより詳細な処理の説明は後述する。
【0034】
次に、図2で示す閾値決定方法の流れを説明する。
【0035】
ステップS7で閾値設定処理を開始すると、まず、ステップS8では、あらかじめ用意しておいたP個の良品サンプル8のすべてについてステップS1と同様の手順で音波形データを取得し、心理音響パラメータを算出する。これによりP個分の心理音響パラメータが得られる。これらの処理は、集音手段11と数値化部16とにより行われる。
【0036】
次にステップS9では、ステップS8で取得したP個分の良品サンプル8についての心理音響パラメータの中から1つを選択する。当該心理音響パラメータを基準波形データとみなす。そして、ステップS2と同様の手順で前記基準波形データとの時間的整合性を取ることができるように、他の心理音響パラメータを時間オフセット処理する。当該時間オフセット処理はオフセット部12により行われる。
【0037】
次にステップS10では、ステップS9で適切に時間オフセット処理されて時間軸でのズレが解消された状態のP個の良品サンプル8についての心理音響パラメータに対して統計的処理を行うことで、各時刻のデータ点毎に擬似的にサンプルデータの個数をQ個分増加させる。これにより、良品サンプル8の個数が比較的少ない状況でも容易に閾値決定できるような準備を行う。当該処理は、増数部17により行われる。
【0038】
次にステップS11では、ステップS10で増加させたQ個の擬似サンプルデータとP個の良品サンプル8の心理音響パラメータから、標準偏差法か最大最小法のいずれかの方法を用いて動作音が異音か否かを判定するための閾値を決定する。当該決定は、閾値決定部18により行われる。
【0039】
次にステップS12では、ステップS11で閾値を決定する過程で求めた心理音響パラメータの平均値、最大値、上限閾値のいずれかを基準にして、音波形データの判定部分を限定して、不要な過検出を防止するためのマスキング処理に必要なマスキング領域を決定する。当該決定は領域決定部19により行い、ステップS13で閾値設定処理を終了する。
【0040】
なお、ステップS8からステップS12までの各ステップ毎のより詳細な処理の説明は後述する。
【0041】
次に、先に図1で説明した非定常音に基づく品質検査方法について、ステップS1からステップS5までの各ステップ毎により詳細に説明する。
【0042】
まず、ステップS1の音波形データ取得分析処理について説明する。
【0043】
図3は、ステップS1の音波形データ取得分析処理を詳細に示すフローチャートである。
【0044】
ステップS14で音波形データ取得分析処理を開始すると、ステップS15では、被検ワーク1の音波形データを取得する前準備として、音波形データ取得時間T、部分音波形取得時間Δt、時間窓幅数kを設定する。
【0045】
ここで、音波形データ取得時間Tは被検ワーク1の動作音発生時間τの長さより十分長め(例えば動作音発生時間τの前後1秒間づつをマージン区間として設けておき、動作音発生時間τ+2秒をTとする)に設定しておく。また、Tは後述の閾値決定方法の手順中でも設定するので、ここでは閾値決定方法の手順中に設定したTをそのまま用いている。
【0046】
部分音波形取得時間Δt、時間窓幅数kの設定についても同様で、閾値決定方法の手順中に設定したΔt、kをそのまま用いること。通常、Δtとkについてはコンピュータ5の現実的な性能と後述する心理音響パラメータ計算の便宜上、Δt=1ミリ秒〜2ミリ秒、k=100〜2000程度で設定する。
【0047】
次にステップS16では、取得する音波形データの累積数をΔt単位でカウントするための変数iを0に設定して、コンピュータ5で音波形データの取得を開始する。
【0048】
次にステップS17では、コンピュータ5から駆動装置4を介して被検ワーク1に動作開始指令を出す。ここで、被検ワーク1は駆動装置4から動作開始指令を受けて決められた動作を開始し、被検ワーク1から動作音が発生し始める。
【0049】
次にステップS18では、被検ワーク1から動作に伴い発せられている動作音を集音器2によって、部分音波形データU(i)として取得する。このとき取得する音波形データの時間幅は、部分音波形取得時間Δtである。
【0050】
次にステップS19では、現在最新の部分音波形データU(i)からk−1個分遡っての部分音波形データU(i−1),U(i−2)・・・U(i−k)までを時系列順にU(i)の過去時間側に追加して1つの部分音波形データW(i)を構成する。W(i)の時間幅はk*Δtとなる。このようにすることで、1回の波形取得動作で集音器2から取得する音波形データは時間幅Δtであるが、後のステップで必要なデータを計算するために時間幅k*Δtの波形データを得る事ができる。ただし、i<kである場合は、検査動作開始時の部分音波形データU(0)よりも過去の部分音波形データが存在しないため、過去側の部分音波形データはU(0)までで止めておく。図14に、k=5の場合のi=0〜12までのU(i)とW(i)の波形取得範囲を図示した。i≧5では時間幅5Δtの時間窓をずらしながら音波形データを取得している事が分かる。
【0051】
次にステップS20では、得られた部分音波形データW(i)から心理音響パラメータを算出する。ここではラウドネスL(i)、ノイジネスN(i)、シャープネスS(i)、ラフネスR(i)、変動強度F(i)を心理音響パラメータとして算出している。
【0052】
ここで、心理音響パラメータとは、従来から音の評価に用いられている音圧レベルの数値が必ずしも人の聴感覚による官能評価とは異なる結果を示してしまう問題を解決するために考案されたもので、より人の聴感覚と相関の高い評価量として提唱されているものである。ラウドネスは人の聴覚で感じる音の大きさ、ノイジネスは人が感じる音のうるささ、シャープネスは音の金属感や甲高さ感、ラフネスは音のざらつき感や粗さ感、変動強度は音のうねり感や変動感を示す数値とされており、非線形的な聴覚の周波数特性と同等の処理で算出されることが特徴となっている。これらの心理音響パラメータの算出については、E.Zwicker著、山田由紀子訳「心理音響学」に詳細が掲載されている。また、ラウドネスの求め方についてはISO532B、ノイジネスの求め方についてはISO3891で規格化されている。
【0053】
次にステップS21では、ステップS20で得られた心理音響パラメータのぞれぞれを時系列通りに配列する。心理音響パラメータの算出はステップS20においてΔt毎に実施しており、それぞれの心理音響パラメータ値は音波形データの累積数をΔt単位でカウントするための変数iの数だけ算出されているので、iの順番に各心理音響パラメータ値を配列に格納する。
【0054】
次にステップS22では、音波形データの累積数をΔt単位でカウントするための変数iの数から、音波形データ取得時間の累積が音波形データ取得時間Tに達したかどうかを判断し、音波形データ取得時間の累積が音波形データ取得時間Tに達していなければ、ステップS23で変数iを1加算してから、再度ステップS18から処理を継続する。音波形データ取得時間の累積が音波形データ取得時間Tに達していたら、音波形データ取得動作を終了してステップS24へ進む。
【0055】
ステップS24の時点では、ステップS21を繰り返し実行したことで作成された、時間幅Tに相当する心理音響パラメータの時系列配列が得られたことになり、ステップS25で音波形データ取得分析処理を終了する。ここで、各心理音響パラメータの時系列配列のデータ数をn個とすると、T=n*Δtである。
【0056】
工業製品で非定常音に基づく品質検査をする場合は、有限時間内での被検ワークの動作音が対象であり、ある動作時間幅τだけ被検ワークの動作音が発生している状況が想定される。本実施の形態1では、ステップS16で音波形データ取得開始しており、音波形データ取得時間Tは前述の通り、被検ワークの動作時間τより十分余裕を持って(T>τ)設定してある。よって、ステップS16と被検ワーク1へ動作開始指令を出すステップS17の実行時間間隔を適切に設定することで、評価したい被検ワーク1の動作音の音波形データは、音波形データ取得時間Tの中でデータ先頭部分とデータ末尾部分にある程度の無動作区間を含んだ状態で取得する事が可能である。
【0057】
次に、ステップS2の音波形データ時間オフセット処理について説明する。図4はステップS2の音波形データ時間オフセット処理についてより詳細に示すフローチャートである。
【0058】
ステップS26で音波形データ時間オフセット処理を開始すると、ステップS27では、ステップS1で取得した被検ワーク1の動作音についてのラウドネス値配列L(i)(i=0〜n−1)の微分波形配列D(i)を算出する。D(i)は、下記(式1)で求める。
【0059】
D(i)=L(i)−L(i−1) ・・・(式1)
【0060】
ただしL(−1)=L(0)とし、i=0のとき、D(0)=L(0)−L(−1)=L(0)−L(0)=0とする。D(i)は所謂差分値の配列であるが、ここでは便宜上微分波形配列と呼ぶ。
【0061】
次にステップS28では、後述する閾値決定方法の過程で設定する基準ラウドネス波形配列Lb(i)(i=0〜n−1)についてもステップS27と同様に微分波形配列Db(i)を算出する。Db(i)は、下記(式2)で求める。
【0062】
Db(i)=Lb(i)−Lb(i−1) ・・・(式2)
【0063】
ただしLb(−1)=Lb(0)とし、i=0のとき、Db(0)=Lb(0)−Lb(−1)=Lb(0)−Lb(0)=0とする。
【0064】
次にステップS29では、ステップS27、S28で求めた微分波形配列D(i)とDb(i)の相互相関関数φ(t)(−n+1≦t≦n−1)を算出する。相互相関関数φ(t)は、下記(式3)で求める。
【0065】
【数1】

(※ただし、i<0、n−1<iでは、D(i)=0、Db(i)=0とする)
【0066】
相互相関関数φ(t)は微分波形配列D(i)とDb(i)の一致度を評価する関数であり、tはD(i)とDb(i)の時間的な相対ズレ量を表している。φ(t0)が最大値を持つとき、D(i)を配列の指標t0だけ時間軸の未来方向へずらしたときにDb(i)と最も一致するという事を意味する。
【0067】
次にステップS30では、ステップS29で算出した相互相関関数φ(t)が最大値を取るデータ指標tを求めて、それを相対時間差hとする。
【0068】
次にステップS31では、ステップS30で求めた相対時間差hを用いて、それ以降のステップS32、S33、S34の処理を、ステップS1で取得した全ての心理音響パラメータ配列(ラウドネス:L(i),ノイジネス:N(i),シャープネス:S(i),ラフネス:R(i),変動強度:F(i)(0≦i≦n−1))について実施する。図4中では、全ての心理音響パラメータについての処理を個別に記載する事を省略し、いずれかの心理音響パラメータ配列である事を意味するために、任意の心理音響パラメータ配列をX(i)で表す。従って、ここでは5種類の心理音響パラメータについてそれぞれステップS31を実施することになる。
【0069】
ステップS32で相対時間差hが0以上ならステップS33の処理を実施し、そうでない場合はステップS34の処理を実施した後に、ステップS35で音波形データ時間オフセット処理を終了する。
【0070】
ステップS33では、心理音響パラメータ配列X(i)の値のうち、X(0),X(1)・・・,X(n−h−1)の値を配列順序を保ったまま、X(h),X(h+1)・・・X(n−1)に移す。この場合、元々X(h),X(h+1)・・・X(n−1)に格納されている値は上書きされる。次に、心理音響パラメータ配列X(i)の値のうちX(0),X(1)・・・X(h−1)の値全てにX(h)の値を代入する。図15に、h=4の場合を例としてステップS33の操作の手順の模式図を示す。ステップS33の操作により、図15−1で示すように時系列で並んでいる心理音響パラメータ配列X(i)の値を、図15−2で示すように指標iの増加する方向にhだけずらす操作を行う。この操作により生じた空白データX(0),X(1)・・・X(h−1)を図15−3で示すようにずらしたデータの端値であるX(h)の値で埋めたことになる。つまりステップS33の操作は、時系列で並んでいる時間長T=n*Δtの心理音響パラメータ配列X(i)のデータをh*Δtだけ未来側へずらして、それにより生じた過去側時間データの空白部分を波形データ端の値で代表させる操作である。
【0071】
ステップS34では、心理音響パラメータ配列X(i)の値のうち、X(−h),X(−h+1)・・・,X(n−1)の値を配列順序を保ったまま、X(0),X(1)・・・X(n+h−1)に移す。この場合、元々X(0),X(1)・・・X(n+h−1)に格納されている値は上書きされる。次に、心理音響パラメータ配列X(i)の値のうちX(n+h),X(n+h+1)・・・X(n−1)の値全てにX(n+h−1)の値を代入する。図16に、h=−4の場合を例としてステップS34の操作の手順の模式図を示す。ステップS34の操作により、図16−1で示すように時系列で並んでいる心理音響パラメータ配列X(i)の値を、図16−2で示すように指標iの減少する方向に−hだけずらし、そのずらし操作により生じた空白データX(n+h),X(n+h+1)・・・X(n−1)を図16−3で示すようにずらしたデータの端値であるX(n+h−1)の値で埋めたことになる。つまりステップS34の操作は、時系列で並んでいる時間長T=n*Δtの心理音響パラメータ配列X(i)のデータを−h*Δtだけ過去側へずらして、それにより生じた未来側時間データの空白部分を波形データ端の値で代表させる操作である。
【0072】
ステップS27からステップS33またはステップS34までの操作で、時間オフセット処理された心理音響パラメータ配列X(i)は、同じn点のデータ列から構成される基準ラウドネス波形配列Lb(i)を基準として音波形データの時間的なタイミングが揃えられたため、被検ワーク1が発した音の音波形データをあらかじめ準備してある閾値のデータと同じ時間軸で比較できるようになった。
【0073】
次に、ステップS3の音波形データ閾値比較処理について説明する。図5はステップS3の音波形データ閾値比較処理についてより詳細に示すフローチャートである。この音波形データ閾値比較処理はステップS2にて時間オフセット処理された全ての心理音響パラメータ配列(ラウドネス:L(i),ノイジネス:N(i),シャープネス:S(i),ラフネス:R(i),変動強度:F(i)(0≦i≦n−1))について実施する。図5では、全ての心理音響パラメータについての処理を個別に記載する事を省略し、いずれかの心理音響パラメータ配列である事を意味するために、任意の心理音響パラメータ配列をX(i)で表す。また、以降で説明に用いる心理音響パラメータの上限閾値配列、下限閾値配列、判定配列についても同様にXtu(i)、Xtd(i)、Xj(i)と表記するが、各配列名のXの部分は各心理音響パラメータ種類によって、ラウドネス:L,ノイジネス:N,シャープネス:S,ラフネス:R,変動強度:Fと置き換えたものとして考える。従って、ここでは5種類の心理音響パラメータについて、それぞれステップS37を実施することになる。
【0074】
ステップS36で音波形データ閾値比較処理を開始すると、まず、前述のステップS37を実施する。次にステップS38では、心理音響パラメータ配列X(i)とその心理音響パラメータ種類に対応する心理音響パラメータの上限閾値配列Xtu(i)、下限閾値配列Xtd(i)、判定配列Xj(i)、(0≦i≦n−1)を参照できるよう準備しておく。
【0075】
次にステップS39では、各配列の時系列位置を配列の指標として指定する変数iを0に設定する。この変数iを共通に用いることで、心理音響パラメータ配列X(i)、心理音響パラメータの上限閾値配列Xtu(i)、下限閾値配列Xtd(i)、判定配列Xj(i)の時系列位置を揃えて処理する事ができる。
【0076】
次にステップS40では、心理音響パラメータ値X(i)が同じ時系列位置の上限閾値Xtu(i)以下かつ下限閾値配列Xtd(i)以上の条件に合っているかどうか調べる。もし、条件に合っていればステップS41へ進み、同じ時系列位置の判定値Xj(i)に0を代入し、条件に合っていればステップS42へ進み、同じ時系列位置の判定値Xj(i)に1を代入する。
【0077】
次にステップS43で変数iを1加算し、ステップS44で変数iがn以上であるか比較する。変数iがn以上であれば、全ての時系列データに関して比較が終了したので、ステップS45へ進み、音波形データ閾値比較処理を終了する。変数iがn未満であれば、まだ全ての時系列データに関して比較が終了していないので、再度ステップS40へ戻り同様の手順を繰り返す。
【0078】
ステップS37では、時系列のタイミングが揃った心理音響パラメータ配列X(i)の各値にあらかじめ設定されている上限閾値、下限閾値と比較し、前記下限閾値以上、前記上限閾値以下の範囲である閾値範囲に入っている点については対応する時系列点の判定値Xj(i)に0を、閾値から逸脱している点については対応する時系列点の判定値Xj(i)に1を代入していく処理を行っているため、判定配列Xj(i)には心理音響パラメータ配列X(i)のどのポイントで閾値から逸脱しているかが分かるようになっている。
【0079】
次に、ステップS4の音波形データ閾値比較結果マスキング処理について説明する。図6はステップS4の音波形データ閾値比較結果マスキング処理についてより詳細に示すフローチャートである。この音波形データ閾値比較結果マスキング処理はステップS3にて音波形データ閾値比較処理された結果が反映されている、全ての心理音響パラメータ配列についての判定配列(ラウドネス判定配列:Lj(i),ノイジネス判定配列:Nj(i),シャープネス判定配列:Sj(i),ラフネス判定配列:Rj(i),変動強度判定配列:Fj(i)(0≦i≦n−1))について実施する。図6では、全ての判定配列についての処理を心理音響パラメータ種類別に記載する事を省略し、いずれかの心理音響パラメータ配列の判定配列である事を意味するために、任意の心理音響パラメータ配列の判定配列をXj(i)で表す。また、以降で説明に用いる心理音響パラメータ毎に準備されたマスキング配列についても同様にXm(i)と表記するが、各配列名のXの部分は各心理音響パラメータ種類によって、ラウドネス:L,ノイジネス:N,シャープネス:S,ラフネス:R,変動強度:Fと置き換えたものとして考える。従って、ここでは5種類の心理音響パラメータについて、それぞれステップS47を実施することになる。
【0080】
ステップS46で音波形データ閾値比較結果マスキング処理を開始すると、まず、前述のステップS47を実施する。次にステップS48では、心理音響パラメータ配列の判定配列Xj(i)と、その心理音響パラメータ種類に対応したマスキング配列Xm(i)(0≦i≦n−1)を参照できるよう準備しておく。マスキング配列Xm(i)は後述する閾値決定方法の過程で決定される配列で、判定配列Xj(i)で判定に使用する時系列点に対応する配列値には1が、判定に使用しない時系列点に対応する配列値には0が入力されている。
【0081】
次にステップS49では、各配列の時系列位置を配列の指標として指定する変数iを0に設定する。この変数iを共通に用いることで、心理音響パラメータ配列の判定配列Xj(i)と、その心理音響パラメータ種類に対応したマスキング配列Xm(i)の時系列位置を揃えて処理する事ができる。
【0082】
次にステップS50では、判定配列値Xj(i)に、マスキング配列値Xm(i)を乗じた結果を、再度判定配列値Xj(i)に代入する。
【0083】
次にステップS51では、変数iを1加算する。
【0084】
次にステップS52では、変数iがn以上かどうか比較する。変数iがn未満であれば、まだ全ての時系列点についてマスキング処理が終了していないので、ステップS50に戻り、処理を繰り返す。変数iがn以上であれば、全ての時系列点についてマスキング処理が終了したことになるので、ステップS53へ進み、音波形データ閾値比較結果マスキング処理を終了する。
【0085】
ステップS47では、心理音響パラメータ配列X(i)の判定結果が入っている判定配列Xj(i)にマスキング配列Xm(i)を乗ずることで、マスキング配列値に1が代入されている部分の閾値逸脱情報(判定配列に1が代入されている状態)のみを残すため、判定結果の必要な部分のみを残す事ができるようになっている。
【0086】
次に、ステップS5の異音判定処理について説明する。図7はステップS5の異音判定処理についてより詳細に示すフローチャートである。
【0087】
ステップS54で異音判定処理を開始すると、ステップS55では、ラウドネス判定配列Lj(i)(0≦i≦n−1)の値の総和が0に等しいか判断する。Lj(i)の総和が0に等しければラウドネスについて閾値から逸脱した点が1つも存在しない事を意味するため、ステップS57に進みラウドネス異常なしと判定し、ラウドネス判定値Ljj=0とする。Lj(i)の総和が0でない場合は、ラウドネスについて閾値から逸脱した点が1つ以上存在する事を意味するため、ステップS56に進みラウドネス異常ありと判定し、ラウドネス判定値Ljj=1とする。
【0088】
次にステップS58では、ノイジネス判定配列Nj(i)(0≦i≦n−1)の値の総和が0に等しいか判断する。Nj(i)の総和が0に等しければノイジネスについて閾値から逸脱した点が1つも存在しない事を意味するため、ステップS60に進みノイジネス異常なしと判定し、ノイジネス判定値Njj=0とする。Nj(i)の総和が0でない場合は、ノイジネスについて閾値から逸脱した点が1つ以上存在する事を意味するため、ステップS59に進みノイジネス異常ありと判定し、ノイジネス判定値Njj=1とする。
【0089】
次にステップS61では、シャープネス判定配列Sj(i)(0≦i≦n−1)の値の総和が0に等しいか判断する。Sj(i)の総和が0に等しければシャープネスについて閾値から逸脱した点が1つも存在しない事を意味するため、ステップS63に進みシャープネス異常なしと判定し、シャープネス判定値Sjj=0とする。Sj(i)の総和が0でない場合は、シャープネスについて閾値から逸脱した点が1つ以上存在する事を意味するため、ステップS62に進みシャープネス異常ありと判定し、シャープネス判定値Sjj=1とする。
【0090】
次にステップS64では、ラフネス判定配列Rj(i)(0≦i≦n−1)の値の総和が0に等しいか判断する。Rj(i)の総和が0に等しければラフネスについて閾値から逸脱した点が1つも存在しない事を意味するため、ステップS66に進みラフネス異常なしと判定し、ラフネス判定値Rjj=0とする。Rj(i)の総和が0でない場合は、ラフネスについて閾値から逸脱した点が1つ以上存在する事を意味するため、ステップS65に進みラフネス異常ありと判定し、ラフネス判定値Rjj=1とする。
【0091】
次にステップS67では、変動強度判定配列Fj(i)(0≦i≦n−1)の値の総和が0に等しいか判断する。Fj(i)の総和が0に等しければ変動強度について閾値から逸脱した点が1つも存在しない事を意味するため、ステップS69に進み変動強度異常なしと判定し、変動強度判定値Fjj=0とする。Fj(i)の総和が0でない場合は、変動強度について閾値から逸脱した点が1つ以上存在する事を意味するため、ステップS68に進み変動強度異常ありと判定し、変動強度判定値Fjj=1とする。
【0092】
次にステップS70では、ここまでに求めた心理音響パラメータ種類毎の判定値Ljj,Njj,Sjj,Rjj,Fjjから総合的な異音判断を行う。各判定値には、その心理音響パラメータ種で異常が確認された場合は1が、異常が確認されなかった場合は0が代入されているので、それらの組み合わせで総合的な判定を行う。組み合わせ論理は、後述の閾値決定方法の過程で設定されるが、通常は最低1種類以上の判定値で「異常」判定が存在した場合に総合判定「異音あり」とする場合が多い。その場合は良品判定のときに満たすべき条件式として、下記(式4)と設定する。
【0093】
(Ljj+Njj+Sjj+Rjj+Fjj)=0 ・・・(式4)
【0094】
この(式4)は、全ての判定値の総和が0であるときに「異常なし」と判定し、被検ワーク1は良品と判断される。一方、そうでない場合に「異常あり」と判定され、被検ワーク1は不良品と判断されることを意味する。
【0095】
以上の手順を経ることによりステップS71で異音判定処理を終了し、被検ワーク1が動作時に発する音が異常かそうでないかを判断する事ができ、被検ワーク1が良品か不良品化の品質の検査を行うことができる。
【0096】
次に、先に図2で説明した閾値決定方法について、ステップS8からステップS12までの各ステップ毎により詳細に説明する。
【0097】
まず、ステップS8の良品音波形データ取得分析処理について説明する。図8はステップS8の良品音波形データ取得分析処理についてより詳細に示すフローチャートである。
【0098】
ステップS72で良品音波形データ取得開始分析処理を開始すると、まず、ステップS73では、図17で示すように、被検ワーク1と同等品種製品であらかじめ良品と分かっている良品サンプル8を良品サンプル群9としてP個準備する。Pの数については多いほど安定して閾値が算出できるが、現実的に準備できる量には限りがあり、作業者の手間や負荷が増大する。後述する擬似サンプルデータ増数の効果も鑑みて、良品サンプル群9のPは最低20〜50程度かそれ以上あればよい。
【0099】
それら良品サンプル群9に含まれる良品サンプル8の音波形データを取得する前準備として、音波形データ取得時間T、部分音波形取得時間Δt、時間窓幅数kを設定する。ここで、音波形データ取得時間Tは良品サンプルの動作音発生時間τの長さより十分長め(例えば動作音発生時間τの前後1秒間づつをマージン区間として設けておき、動作音発生時間τ+2秒をTとする)に設定しておく。ここで設定したTは前述の非定常音に基づく品質検査方法の手順中でも共通に使用して、時系列音波形データのデータ時間長を統一しておく。部分音波形取得時間Δt、時間窓幅数kの設定についても同様に、本ステップで設定したΔt、kをそのまま非定常音に基づく品質検査方法の手順中でも共通に使用すること。通常、Δtとkについてはコンピュータ5の現実的な性能と前述する心理音響パラメータ計算の便宜上、Δt=1ミリ秒〜2ミリ秒、k=100〜2000程度で設定する。
【0100】
次にステップS74では、良品サンプル8から取得する音波形データに重複しないように番号を付与するための変数Yを1に設定する。良品サンプル8はP個準備されているので、1≦Y≦Pである。
【0101】
次にステップS75では、Y個目の良品サンプル8を良品サンプル群9から取り出し装置にセットする。この時の良品サンプル8取り出しは、通常はP個の中で重複しないようにするが、例えば1個について2回データを取得するなどして、P個の良品サンプル群から2*P個の音波形データを取得するなど、重複しても構わない。その場合はステップS76以降でのPを良品サンプル群9の台数でなく実際の音波形データ数に置き換えればよい。ただしそうした重複データ取得を認める場合は、同じ良品サンプルからの音波形データが複数存在するため、本来の狙いである製品個体間のバラツキを考慮した閾値決定を行う意味が薄れる可能性があるため、実施には配慮を要する。ここでは重複データ取得をせず、1個の良品サンプル8からは1個の音データ波形を取得するとして説明を進める。次に、取得する音波形データの累積数をΔt単位でカウントするための変数iを0に設定して、コンピュータ5で音波形データを取得開始する。
【0102】
次にステップS76では、コンピュータ5から駆動装置4を介して良品サンプル8に動作開始指令を出す。ここで、良品サンプル8である被検ワーク1は駆動装置4から動作開始指令を受けて決められた動作を開始し、良品サンプル8から動作音が発生し始める。
【0103】
次にステップS77では、良品サンプル8から動作に伴い発せられている動作音を集音器2によって、部分音波形データU(i,Y)として取得する。このとき取得する音波形データの時間幅は、部分音波形取得時間Δtである。
【0104】
次にステップS78では、現在最新の部分音波形データU(i,Y)からk−1個分遡っての部分音波形データU(i−1,Y),U(i−2,Y)・・・U(i−k,Y)までを時系列順にU(i,Y)の過去時間側に追加して1つの部音波形データW(i,Y)を構成する。W(i,Y)の時間幅はk*Δtとなる。このようにすることで、1回の波形取得動作で集音器2から取得する音波形データは時間幅Δtであるが、後のステップで必要なデータを計算するために時間幅k*Δtの波形データを得る事ができる。ただし、i<kである場合は、検査動作開始時の部分音波形データU(0,Y)よりも過去の部分音波形データが存在しないため、過去側の部分音波形データはU(0,Y)までで止めておく。このステップS78での操作は、先に非定常音評価手順のステップS19と図14で説明した音波形データ操作と同様である。
【0105】
次にステップS79では、得られた部分音波形データW(i,Y)から心理音響パラメータを算出する。心理音響パラメータとその算出については先に非定常音評価手順のステップS20の詳細で説明済みであるため省略する。
【0106】
次にステップS80では、ステップS79で得られた心理音響パラメータのぞれぞれを時系列通りに配列する。心理音響パラメータの算出はステップS79においてΔt毎に実施しており、それぞれの心理音響パラメータ値は音波形データの累積数をΔt単位でカウントするための変数iの数だけ算出されているので、iの順番に各心理音響パラメータ値を配列に格納する。
【0107】
次にステップS81では、音波形データの累積数をΔt単位でカウントするための変数iの数から、音波形データ取得時間の累積が音波形データ取得時間Tに達したかどうかを判断し、音波形データ取得時間の累積が音波形データ取得時間Tに達していなければ、ステップS82で変数iを1加算してから、再度ステップS77から処理を継続する。音波形データ取得時間の累積が音波形データ取得時間Tに達していたら、音波形データ取得動作を終了してステップS83へ進む。
【0108】
ステップS83の時点では、ステップS77からステップS81までを繰り返し実行したことで作成された、時間幅Tに相当する心理音響パラメータの時系列配列が得られたことになる。ここで各心理音響パラメータの時系列配列のデータ数をn個とする。従ってT=n*Δtである。
【0109】
次にステップS84では、YがP以上かどうかを比較する。YがP未満であれば良品サンプル群9の全良品サンプルについての音波形データ取得が終了していないので、ステップS85でYに1加算して、ステップS75へ戻り処理を繰返す。YがP以上であれば、良品サンプル群9の全良品サンプルについての音波形データ取得が終了したことになるので、ステップS86へ進む。
【0110】
ステップS86の時点では、ステップS75からステップS85までを繰り返し実行したことで作成された、良品サンプル群9についてのP個分の心理音響パラメータの時系列配列が得られたことになり、ステップS87で良品音波形データ取得分析処理を終了する。
【0111】
非定常音に基づく品質検査方法の詳細でも説明したように、ステップS75で音波形データ取得開始しており、音波形データ取得時間Tは被検ワークの動作時間幅τより十分余裕を持って(T>τ)設定してあるので、ステップS75と良品サンプル8へ動作開始指令を出すステップS76の実行時間間隔を適切に設定することで、評価したい良品サンプル8の動作音の音波形データは、音波形データ取得時間Tの中でデータ先頭部分とデータ末尾部分にある程度の無動作区間を含んだ状態で取得する事が可能である。
【0112】
次に、ステップS9の良品音波形データ時間オフセット処理について説明する。図9はステップS9の良品音波形データ時間オフセット処理についてより詳細に示すフローチャートである。
【0113】
ステップS88で良品音波形データ時間オフセット処理を開始すると、まず、ステップS89では、ステップS8で取得したP個分の良品サンプル8の良品音波形データ、心理音響パラメータの中から、適当なデータを1つ(ここでは仮にy個目のデータとする。(1≦y≦P))選び、そのデータのラウドネス値配列L(i,y)(0≦i≦n−1)のデータ配列を複製して、それを基準ラウドネス波形配列Lb(i)とする。
【0114】
次にステップS90では、基準ラウドネス波形配列Lb(i)(i=0〜n−1)について、ステップS28で説明したのと同様に微分波形配列Db(i)を算出する。導出式も同様に上記(式2)を用いる。
【0115】
次にステップS91では、ステップS8で取得済みの良品サンプル群9に含まれるP個の良品サンプル8毎に取得した音波形データ、心理音響パラメータ配列に付与した番号を指定するための変数Yを1に設定する。
【0116】
次にステップS92では、ラウドネス値配列L(i,Y)(0≦i≦n−1)についての微分波形配列D(i,Y)を算出する。D(i,Y)は、下記(式5)で求める。
【0117】
D(i,Y)=L(i,Y)−L(i−1,Y) ・・・(式5)
【0118】
ただしL(−1,Y)=L(0,Y)とし、i=0のとき、D(0,Y)=L(0,Y)−L(−1,Y)=L(0,Y)−L(0,Y)=0とする。
【0119】
次にステップS93では、ステップS90、S92で求めた微分波形配列D(i,Y)とDb(i)の相互相関関数φ(t,Y)(−n+1≦t≦n−1)を算出する。相互相関関数φ(t,Y)は、下記(式6)で求める。
【0120】
【数2】

(※ただし、i<0、n−1<iでは、D(i,Y)=0、Db(i)=0とする)
【0121】
相互相関関数φ(t,Y)は微分波形配列D(i,Y)とDb(i)の一致度を評価する関数であり、tはD(i,Y)とDb(i)の時間的な相対ズレ量を表している。φ(t0,Y)が最大値を持つとき、D(i,Y)を配列の指標t0だけ時間軸の未来方向へずらしたときにDb(i)と最も一致するという事を意味する。
【0122】
次にステップS94では、ステップS93で算出した相互相関関数φ(t,Y)が最大値を取るデータ指標tを求めて、それを相対時間差h(Y)とする。
【0123】
次にステップS95では、ステップS94で求めた相対時間差h(Y)を用いて、それ以降のステップS96、S97、S98の処理を、ステップS8で取得した全ての心理音響パラメータ配列(ラウドネス:L(i,Y),ノイジネス:N(i,Y),シャープネス:S(i,Y),ラフネス:R(i,Y),変動強度:F(i,Y)(0≦i≦n−1))について実施する。図9中では、全ての心理音響パラメータについての処理を個別に記載する事を省略し、いずれかの心理音響パラメータ配列である事を意味するために、任意の心理音響パラメータ配列をX(i,Y)で表す。従って、ここでは5種類の心理音響パラメータについてそれぞれステップS95を実施することになる。
【0124】
ステップS96で相対時間差h(Y)が0以上ならステップS97の処理を実施し、そうでない場合はステップS98の処理を実施する。
【0125】
ステップS97では、心理音響パラメータ配列X(i,Y)の値のうち、X(0,Y),X(1,Y)・・・,X(n−h(Y)−1,Y)の値を配列順序を保ったまま、X(h(Y),Y),X(h(Y)+1,Y)・・・X(n−1,Y)に移す。この場合、元々X(h(Y),Y),X(h(Y)+1,Y)・・・X(n−1,Y)に格納されている値は上書きされる。次に、心理音響パラメータ配列X(i,Y)の値のうちX(0,Y),X(1,Y)・・・X(h(Y)−1,Y)の値全てにX(h(Y),Y)の値を代入する。図18に、h(Y)=4の場合を例としてステップS97の操作の手順の模式図を示す。ステップS97の操作により、図18−1で示すように時系列で並んでいる心理音響パラメータ配列X(i,Y)の値を、図18−2で示すように指標iの増加する方向にh(Y)だけずらし、そのずらし操作により生じた空白データX(0,Y),X(1,Y)・・・X(h(Y)−1,Y)を図18−3で示すようにずらしたデータの端値であるX(h(Y),Y)の値で埋めたことになる。このステップS97の操作は、先に説明したステップS33と同様の操作である。
【0126】
ステップS98では、心理音響パラメータ配列X(i,Y)の値のうち、X(−h(Y),Y),X(−h(Y)+1,Y)・・・,X(n−1,Y)の値を配列順序を保ったまま、X(0,Y),X(1,Y)・・・X(n+h(Y)−1,Y)に移す。この場合、元々X(0,Y),X(1,Y)・・・X(n+h(Y)−1,Y)に格納されている値は上書きされる。次に、心理音響パラメータ配列X(i,Y)の値のうちX(n+h(Y),Y),X(n+h(Y)+1,Y)・・・X(n−1,Y)の値全てにX(n+h(Y)−1,Y)の値を代入する。図19に、h(Y)=−4の場合を例としてステップS98の操作の手順の模式図を示す。ステップS98の操作により、図19−1で示すように時系列で並んでいる心理音響パラメータ配列X(i,Y)の値を、図19−2で示すように指標iの減少する方向に−h(Y)だけずらし、そのずらし操作により生じた空白データX(n+h(Y),Y),X(n+h(Y)+1,Y)・・・X(n−1,Y)を図19−3で示すようにずらしたデータの端値であるX(n+h(Y)−1,Y)の値で埋めたことになる。ステップS98の操作は、先に説明したステップS34と同様の操作である。
【0127】
次のステップS99では、変数YがP以上かどうか比較する。変数YがP未満であれば良品サンプル群9の全良品サンプルについての時間オフセット処理が終了していないので、ステップS100でYに1加算して、ステップS91へ戻り処理を繰返す。YがP以上であれば、良品サンプル群9の全良品サンプルについての時間オフセット処理が終了したことになるので、ステップS101へ進み、良品音波形データ時間オフセット処理を終了する。
【0128】
ステップS89からステップS99またはステップS100までの操作の繰返しで、P個の良品サンプル群9から取得し、時間オフセット処理された心理音響パラメータ配列X(i,Y)(0≦i≦n−1)は、時系列点数に関して同じn点の時系列データ列から構成される基準ラウドネス波形配列Lb(i)を基準として音波形データの時間的なタイミングが揃えられたため、全ての良品サンプル8が発した音の音波形データをあらかじめ準備してある閾値のデータと同じ時間軸で比較できるようになる。
【0129】
次に、ステップS10の良品データ増数処理について説明する。図10はステップS10の良品データ増数処理についてより詳細に示すフローチャートである。この良品データ増数処理はステップS9にて時間オフセット処理されたP個ある良品サンプル群9に含まれる良品サンプル8の全ての心理音響パラメータ配列(ラウドネス:L(i,Y),ノイジネス:N(i,Y)),シャープネス:S(i,Y)),ラフネス:R(i,Y)),変動強度:F(i,Y))(0≦i≦n−1,1≦Y≦P))について実施する。図10では、全種類の心理音響パラメータについての処理を個別に記載する事を省略し、いずれかの種類の心理音響パラメータ配列である事を意味するために、任意の心理音響パラメータ配列をX(i,Y)で表す。また、以降で説明に用いる各心理音響パラメータに対応する擬似良品データ配列、標準偏差配列、ランダムノイズ係数についても同様にXv(i,Z),σX(i),λXとして表記するが、各配列名のXの部分は各心理音響パラメータ種類によって、ラウドネス:L,ノイジネス:N,シャープネス:S,ラフネス:R,変動強度:Fと置き換えたものとして考える。従って、ステップS103の各ステップではそれぞれ5種類の心理音響パラメータについて実施することになる。
【0130】
ステップS102で良品データ増数処理を開始すると、ステップS104では、増数サンプル個数Q、ランダムノイズ係数λXを設定する。Qは擬似良品データ必要な個数を指定する。後述の閾値決定処理ではQ個の擬似良品データと先に取得済みの良品サンプル8のP個のデータを合わせて用いる。増数サンプル個数Qについては、データ処理に要する時間や統計処理で常識的に必要な個数を考慮して、P+Qが200〜500程度になるように選ぶのが適切である。また、ランダムノイズ係数λXは、この後のステップにおける処理で擬似良品データに与える人工的なばらつきの程度を決める数値であり、経験的に0.2〜0.5程度に設定しておくと、良好な擬似良品データが得られやすい。通常、ランダムノイズ係数は全ての心理音響パラメータに対して同じ値を設定するが、測定環境や与えられた良品サンプル8の個数などを考慮して個々の心理音響パラメータ毎に別の値を設定しても構わない。
【0131】
次のステップS105では、この後のステップで作成する擬似良品データを格納する擬似良品データ配列Xv(i,Z)(0≦i≦n−1,1≦Z≦Q)を各特徴量毎に用意しておく。
【0132】
次のステップS106では、各配列の時系列位置を配列の指標として指定する変数iを0に設定する。この変数iを共通に用いることで、心理音響パラメータ配列X(i,Y)と、擬似良品データ配列Xv(i,Z)、後述する標準偏差配列σX(i)の時系列位置を揃えて処理する事ができる。
【0133】
次のステップS107では、すでに取得済みの良品サンプル8のP個分の心理音響パラメータ配列X(i,Y)(0≦i≦n−1,1≦Y≦P)のデータのYに関する標準偏差σX(i)を求める。各心理音響パラメータについて時系列の各点毎に標準偏差を求めていることになるため、時系列配列iではなく、良品サンプルの個数Pについての標準偏差であることに注意すること。
【0134】
次のステップS108では、擬似良品データを生成した個数をカウントするための変数qを1に設定する。
【0135】
次のステップS109では、すでに取得済みのP個の良品サンプルから得られたデータに設定したサンプル番号Y(1≦Y≦P)からランダムにYを1つ選択する。この良品データ増数処理では複数回ステップS109でサンプル番号Yをランダムに選択することになるが、その場合の各サンプル番号Yを選択する確率は全て等しいものとし、重複選択を認めるものとする。例えば、1回目のランダム選択でY=18を選んでも、2回目以降のランダム選択で再びY=18が選ばれる可能性もある。ステップS109でのサンプル番号Yのランダム選択については、プログラム言語の乱数機能や、ハードウェアの乱数発生器などを用いればよい。
【0136】
次のステップS110では、ラウドネスについての正規乱数r(q,L)を発生させる。r(q,L)は、下記(式7)で求める。
【0137】
r(q,L)=NRnd[μ=0,σ=1] ・・・(式7)
【0138】
NRnd[μ,σ]は平均値μ、標準偏差σである正規乱数を返す関数である。プログラム言語や公知のアルゴリズムでNRnd[μ,σ]に相当する機能を利用する事ができる。上記(式7)は平均0、標準偏差1の正規分布を持つ正規乱数を1回取得する事を意味している。
【0139】
次のステップS111では、ラウドネスの擬似良品データLv(i,q)を算出する。Lv(i,q)は、下記(式8)で算出する。
【0140】
Lv(i,q)=L(i,Y)+[λL*σL(i)*r(q,L)] ・・・(式8)
【0141】
以降、ステップS112、S113でノイジネスについての正規乱数発生と擬似良品データ算出、ステップS114、S115でシャープネスについての正規乱数発生と擬似良品データ算出、ステップS116、S117でラフネスについての正規乱数発生と擬似良品データ算出、ステップS118、S119で変動強度についての正規乱数発生と擬似良品データ算出をステップS110、S111のラウドネスの場合と同様に行う。
【0142】
次のステップS120では、qがQ以上かどうか比較する。qがQ未満なら、擬似良品データの生成数がQに達していないので、ステップS121でqに1を加算して、ステップS109に戻り、処理を繰返す。qがQ以上なら、擬似良品データの生成数がQに達したので、ステップS122へ進む。
【0143】
次のステップS122では、iがn−1以上かどうか比較する。iがn−1未満であれば、まだ全ての時系列点について擬似良品データ増数処理が終了していないので、ステップS123でiに1を加算してからステップS107に戻り、処理を繰り返す。変数iがn+1以上であれば、全ての時系列点について擬似良品データ増数処理が終了したことになるので、ステップS124へ進み、擬似的な良品データ増数処理を終了する。
【0144】
この擬似的な良品データ増数処理により、実物の良品サンプル8がP個だけしか用意できない状態でも、Q個の擬似良品サンプルが生成できるため、例えば良品サンプル個数P=20個に対してのから擬似良品サンプル個数Q=280個とすれば、全体としてはあたかも300個の良品データがあるような状態で次のステップS11に進むことができる。
【0145】
図21、図22、図23、図24は、ある工業製品を被検ワーク1として取得した音波形データの同じ時系列点におけるラウドネス値、シャープネス値、ラフネス値、変動強度値の度数分布を図示したものである。ぞれぞれの図において、上段は353台分の被検ワーク1の音波形データについてのもので、下段は上段のデータ取得した順序で先頭から20台分のデータを良品サンプル群9から取得したデータとみなして、333個分の擬似良品データを増数処理したものを合わせたデータについてのものである。良品サンプル数P=20、増数サンプル個数Q=333、ランダムノイズ係数λX=0.5とした。若干標準偏差が実サンプルから得られた集合より大きいが、擬似良品データを含んだ集合が分布の傾向も含めて実サンプルから得られた集合と似通った集合として形成できていることが分かる。
【0146】
次に、ステップS11の閾値決定処理について説明する。図11はステップS11の良品データ増数処理についてより詳細に示すフローチャートである。この閾値決定処理は、P個の良品サンプルから得られてステップS9にて時間オフセット処理された各種心理音響パラメータ配列(ラウドネス:L(i,Y),ノイジネス:N(i,Y),シャープネス:S(i,Y),ラフネス:R(i,Y),変動強度:F(i,Y)(0≦i≦n−1,1≦Y≦P))と、ステップS10にてQ個生成された擬似良品データの各種心理音響パラメータ配列(ラウドネス:Lv(i,Z),ノイジネス:Nv(i,Z),シャープネス:Sv(i,Z),ラフネス:Rv(i,Z),変動強度:Fv(i,Z)(0≦i≦n−1,1≦Z≦Q))について実施する。図11では、全ての心理音響パラメータについての処理を個別に記載する事を省略し、いずれかの心理音響パラメータ配列である事を意味するために、任意の心理音響パラメータ配列をX(i,Y)、Xv(i,Z)で表す。また、以降で説明に用いる心理音響パラメータの上限閾値配列、下限閾値配列、平均値、最大値、標準偏差、上限閾値決定係数、下限閾値決定係数、上限閾値マージン率、下限閾値マージン率についても同様にXtu(i)、Xtd(i)、Xa(i)、Xmax(i)、Xmin(i)、θX(i)、guX、gdX、fuX、fdXと表記するが、各配列名のXの部分は各心理音響パラメータ種類によって、ラウドネス:L,ノイジネス:N,シャープネス:S,ラフネス:R,変動強度:Fと置き換えたものとして考える。従って、ここでは5種類の心理音響パラメータについて、それぞれステップS126を実施することになる。
【0147】
ステップS125で閾値設定処理を開始すると、まず、前述のステップS126を実施する。次のステップS127では、閾値決定しようとしている心理音響パラメータ配列X(i,Y)、Xv(i,Z)の種類に対応する上限閾値配列Xtu(i)、下限閾値配列Xtd(i)を準備する。
【0148】
次のステップS128では、閾値決定方法を標準偏差法と最大最小法のどちらか選択する。標準偏差法の場合はステップS129へ進み、最大最小法の場合はステップS134へ進む。それぞれの方式について分けて説明する。
【0149】
まず、標準偏差法の場合から説明する。
【0150】
まず、ステップS129では、上限閾値決定係数guX、下限閾値決定係数gdXをそれぞれ設定する。通常はguX、gdXとも同じ値を設定する場合が多いが、判定基準を上下限で変えたい場合などはguXとgdXで別々の値を設定しても良い。例えば、上限閾値のみで判定したい場合は、下限閾値決定係数をgdX=20などと十分大きい値に設定しておくと、下限閾値が十分無視できるほど低い値に設定でき都合が良い。なお、良品データと擬似良品サンプルデータが正規分布していれば、guX=gdX=3に設定すると、良品の約99.8%が判定閾値内に含まれる設定となる。ただし実際には、良品データが厳密な正規分布をしていることは稀であるため、guX=gdX=3の設定では実際の非定常音に基づく品質検査を行うと過検出の傾向になりがちである。現実的な設定としてはguX=gdX=4〜6程度を選択すると良い結果が得られやすい。
【0151】
次にステップS130では、各配列の時系列位置を配列の指標として指定する変数iを0に設定する。
【0152】
次にステップS131では、心理音響パラメータ配列X(i,Y),Xv(i,Z)( 1≦Y≦P,1≦Z≦Q)の全(P+Q)個のデータから平均値Xa(i)、標準偏差θX(i)を求め、上限閾値Xtu(i)、下限閾値Xtd(i)を算出する。Xtu(i)、Xtd(i)は、下記(式9)、(式10)で算出する。
【0153】
Xtu(i)=Xa(i)+guX*θX(i) ・・・(式9)
【0154】
Xtd(i)=Xa(i)−gdX*θX(i) ・・・(式10)
【0155】
次のステップS132では、変数iがn−1以上かどうか比較する。iがn−1未満であれば、まだ全ての時系列点について閾値決定処理が終了していないので、ステップS133でiに1を加算してからステップS131に戻り、処理を繰り返す。iがn+1以上であれば、全ての時系列点について閾値決定処理が終了したことになるので、ステップS139へ進む。
【0156】
次に最大最小法の場合について説明する。
【0157】
まず、ステップS134では、上限閾値マージン率fuX、上限閾値マージン率fdXを設定する。fuX、fdXは通常同じ値を設定する事が多いが、判定基準を上下限で変えたい場合などはfuXとfdXで別々の値を設定しても良い。例えば、上限閾値のみで判定したい場合は、下限閾値マージン率をfdX=5などと十分大きい値に設定しておくと、下限閾値が十分無視できるほど低い値に設定でき都合が良い。具体的なfuX、fdXの機能については後で述べる。
【0158】
次のステップS135では、各配列の時系列位置を配列の指標として指定する変数iを0に設定する。
【0159】
次のステップS136では、心理音響パラメータ配列X(i,Y),Xv(i,Z)( 1≦Y≦P,1≦Z≦Q)の全(P+Q)個のデータから平均値Xa(i)、最大値Xmax(i)、最小値Xmin(i)を求め、上限閾値Xtu(i)、下限閾値Xtd(i)を算出する。Xtu(i)、Xtd(i)は、下記(式11)、(式12)により算出する。
【0160】
Xtu(i)=Xmax(i)+fuX[Xmax(i)−Xa(i)] …(式11)
【0161】
Xtd(i)=Xmin(i)+fdX[Xmin(i)−Xa(i)] …(式12)
【0162】
上記(式11)、(式12)から分かるように、fuX、fdXは、良品データ、擬似良品サンプルデータの平均値Xa(i)から最大値Xmax(i)、最小値Xmin(i)までの幅にfuX、fdXを割合として乗じたものを加算して上限閾値、下限閾値としている。例えば、ある時系列点のラウドネスの平均値が2、最大値が4、最小値が0.8で、fuX=0.05、fdX=0.1と設定したとすると、上限閾値Xtu(i)は最大値から平均値を引いた2に0.05を乗じた0.1を最大値に加算した4.1となり、下限閾値Xtd(i)は最小値から平均値を引いた−1.2に0.1を乗じた−0.12を最小値に加算した0.68となる。また、fuX、fdX共に0を設定した場合には、良品データ、擬似良品サンプルデータの最大値、最小値がそのまま上限閾値、下限閾値となる。実際にはfuX=fdX=0の設定では、非定常音に基づく品質検査を行うと過検出の傾向になりがちである。現実的な設定としてはfuX=fdX=0.05〜0.2程度で設定すると良好な結果が得られやすい。
【0163】
次のステップS137では、変数iがn−1以上かどうか比較する。iがn−1未満であれば、まだ全ての時系列点について閾値決定処理が終了していないので、ステップS138でiに1を加算してからステップS136に戻り、処理を繰り返す。iがn+1以上であれば、全ての時系列点について閾値決定処理が終了したことになるので、ステップS139へ進む。
【0164】
ステップS139へ移る直前の時点で、全ての時系列点において全種類の心理音響パラメータに関す上限閾値配列Xtu(i)、下限閾値配列Xtd(i)が確定されている。
【0165】
次のステップS139では、ステップS131またはステップS136で求めたラウドネス平均値配列La(i)(0≦i≦n−1)を基準ラウドネス配列Lb(i)(0≦i≦n−1)として再設定して、ステップS140で閾値設定処理を終了する。
【0166】
次に、ステップS12のマスキング領域設定処理について説明する。図12はステップS12のマスキング領域設定処理についてより詳細に示すフローチャートである。
【0167】
ステップS141でマスキング領域設定処理を開始すると、まずステップS142では、(P+Q)個分取得した良品音波形データと擬似良品サンプルデータから算出したラウドネス値配列L(i,Y),Lv(i,Z)(0≦i≦n−1,1≦Y≦P,1≦Z≦Q)を参照する。
【0168】
次のステップS143では、ラウドネス用マスキング配列Lm(i)、マスキング基準値配列Lmb(i)(0≦i≦n−1)を設定してマスキング基準値を、L(i,Y),Lv(i,Z)から求めた最大値Lmax(i)、上限閾値Ltu(i)、平均値La(i)のいずれにするか決定する。
【0169】
次のステップS144では、ステップS143で決定した閾値決定方法によって次へ進むステップを決める。マスキング基準値を最大値にした場合はステップS145へ進み、マスキング基準値を上限閾値にした場合はステップS146へ進み、マスキング基準値を平均値にした場合はステップS147へ進む。
【0170】
ステップS145では、ラウドネス値配列L(i,Y),Lv(i,Z)(1≦Y≦P,1≦Z≦Q)から最大値Lmax(i)(0≦i≦n−1)を求めて、マスキング基準値配列Lmb(i)(0≦i≦n−1)に代入する。
【0171】
ステップS146では、先にステップS11の手順で求めたラウドネスの上限閾値Ltu(i)(0≦i≦n−1)をマスキング基準値配列Lmb(i)(0≦i≦n−1)に代入する。
【0172】
次のステップS147では、ラウドネス値配列L(i,Y),Lv(i,Z)(1≦Y≦P,1≦Z≦Q)から平均値La(i)(0≦i≦n−1)を求めて、マスキング基準値配列Lmb(i)(0≦i≦n−1)に代入する。
【0173】
次のステップS148では、マスキング閾値Lmtを設定する。マスキング閾値Lmtは先のステップS145、S146、S147で設定したマスキング基準値配列Lmb(i)と比較して決定する。図20にLmb(i)の例とLmtの設定例を示す。Lmb(i)はステップS145、S146、S147の違いにより多少の差異はあるが、いずれもラウドネス値であるため、音の大きさを表している。
【0174】
図20中ではLmb(0)からLmb(6)、Lmb(n−4)からLmb(n−1)の範囲はそれ以外に比べてラウドネス値が下端付近でかつ平坦であるが、このような部分は被検ワークから動作音が出ていない無音部分、Lmb(7)からLmb(n−5)の範囲は何らかの動作音が出ている有音部分と考えることができる。品質検査方法は工業製品から出ている動作音に基づいて品質が検査できれば良いので、音波形データ取得で得られた波形全体を評価するのではなく、動作音が出ている有音部分だけに限定して評価した方が、無音部分に関する異常過検出を防いで安定した検査が実現できる。そのために音波形データ取得で得られた波形に対して不要な無音部分のデータを隠すマスキング処理を行う。本実施の形態1ではLmtよりLmb(i)が小さい時系列部分についてマスキング処理のためのマスク範囲を設定するので、マスキング閾値を図20で示すLmt3に設定したとすると、マスキング範囲は範囲3となる。同様にマスキング閾値をLmt2に設定したとすると、マスキング範囲は範囲2となり、マスキング閾値をLmt1に設定したとすると、LmtよりLmb(i)が小さい範囲が存在しないため、時系列範囲0≦i≦n−1の全てを評価対象とすることになる。
【0175】
以上の考察から、被検ワーク1から出ている動作音だけを適切に評価するためには図20の例ではLmt2にマスキング閾値を設定することが好ましい。実際の設定ではコンピュータ5に、図20の例のように得られたLmb(i)とこれから設定しようとしているLmtとの関係をグラフや表等に図示し、それを参考にしながら作業者がLmtを設定できるような機能を組み込むことが考えられる。
【0176】
次のステップS149では、各配列の時系列位置を配列の指標として指定する変数iを0に設定する。
【0177】
次のステップS150では、Lbm(i)がLmt以上かどうか比較する。Lbm(i)がLmt以上ならステップS151へ進み、ラウドネス用マスキング配列Lm(i)に1を代入する。Lbm(i)がLmt未満ならステップS152へ進み、ラウドネス用マスキング配列Lm(i)に0を代入する。これらの操作はマスキング配列に1が代入されている時系列点は評価に使用し、0が代入されている時系列点は評価に使用しないということを意味する。
【0178】
次のステップS153では、変数iがn−1以上かどうか比較する。iがn−1未満であれば、まだ全ての時系列点についてマスキング領域設定処理が終了していないので、ステップS154でiに1を加算してからステップS150に戻り、処理を繰り返す。iがn+1以上であれば、全ての時系列点についてマスキング領域設定処理が終了したことになるので、ステップS155へ進む。
【0179】
次のステップS155では、ラウドネス以外の心理音響パラメータ用のマスキング配列Xm(i)(0≦i≦n−1)に、ここまでの手順で設定したラウドネス用マスキング配列Lm(i)(0≦i≦n−1)の値を複製する。このステップS155は、一旦ラウドネス用マスキング配列をそれ以外の全ての心理音響パラメータ用のマスキング配列にも採用する操作である。
【0180】
次のステップS156では、必要に応じて、各心理音響パラメータ用マスキング配列Lm(i),Nm(i),Sm(i),Rm(i),Fm(i)(0≦i≦n−1)のデータを変更する。変更作業としては、検査対象にする部分に対応するマスキング配列データに1を代入、検査対象にしない部分に対応するマスキング配列データには0を代入する。通常、ステップS142からステップS154までの手順で設定されたラウドネス用マスキング配列Lm(i)(0≦i≦n−1)をステップS155で全ての心理音響パラメータ用マスキング配列にも採用した状態で差し支えないが、検査状況や些細な修正の必要性に応じて本ステップで各心理音響パラメータ用マスキング配列Xm(i)を変更できる。変更、修正が不要な場合は本ステップを無視しても構わないことは言うまでもない。
【0181】
次のステップS157では、先にステップS5内のステップS70で説明した、心理音響パラメータ種類毎の判定値Ljj,Njj,Sjj,Rjj,Fjjから総合的な異音判断を行う処理に必要な組み合わせ論理の設定を行う。ステップS70の説明でも述べたように、各判定値には、その心理音響パラメータ種で異常が確認された場合は1が、異常が確認されなかった場合は0が代入されるが、通常は最低1種類以上の判定値で「異常」判定が存在した場合に総合判定「異音あり」とする場合が多いため、その場合は良品判定条件式として上記(式4)を採用し、これを組み合わせ論理とする。組み合わせ論理は、上記(式4)のような数式でなくても、判定値とAND、OR、XORなどのブール演算子との組み合わせや、プログラム言語のコードのように条件分岐等の制御構造の組み合わせで表現されるものでも良い。そして、ステップS158でマスキング領域設定処理を終了する。
【0182】
なお、本実施の形態1では非定常音としての被検ワークの動作音の状態を数値化するために心理音響パラメータを用いたが、通常の音圧レベルを用いても良い。ただし、その場合は音質面の数値化はできないため、従来の騒音計音の大きさの尺度での非定常音評価となる。
【0183】
なお、本実施の形態1ではステップS1、ステップS8で被検ワーク1、良品サンプル群9からの音データをその場で取得しながら心理音響パラメータ算出までを実行したが、デジタル録音などであらかじめ取得しておいた音波形データを用いてステップS1、S8を実行しても良い。
【0184】
なお、本実施の形態1で心理音響特徴量の平均値を求める際の処理としては通常、相加平均を前提とするが、相乗平均や調和平均、中央値等の他の平均化手段を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の品質検査方法によれば、時間経過に伴って変化する異音を音質の面から評価し、異音不良品が入手困難な状態での判定用の閾値の決定を可能とし、人の聴感検査に近い非定常音に基づく品質検査を実現することができる。そのため、動作音の検査を必要とする様々な工業製品の量産工程でのインラインリアルタイム異音検査の用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0186】
1 被検ワーク
2 集音器
3 A/D変換機
4 駆動装置
5 コンピュータ
6 ディスプレイ
7 入力装置
8 良品サンプル
9 良品サンプル群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である被検ワークと同種の良品サンプルの動作音を、複数の前記良品サンプルから良品音情報として取得し、
複数の前記良品音情報を経過時間に対応する良品音評価量として心理音響パラメータを用いて数値化し、
複数の前記良品音評価量から判定用の閾値を決定し、
前記被検ワークから発せられる動作音を被検音情報として取得し、
前記被検ワークの前記被検音情報を経過時間に対応する被検音評価量として数値化し、
前記被検ワークの前記被検音評価量と決定した前記閾値とを比較した結果に基づき前記被検ワークの品質を検査する
品質検査方法。
【請求項2】
前記心理音響パラメータとして、ラウドネス、ラフネス、ノイジネス、変動強度、シャープネスの中から少なくとも一つを用いる
請求項1に記載の品質検査方法。
【請求項3】
複数の前記良品音評価量から重複選択を許した無作為抽出で選択された1つの前記良品音評価量に、複数の前記良品音評価量の標準偏差に0≦λXなるランダム係数λXと、平均が0で標準偏差が1であるような分布を持つ正規乱数を乗じたものを加算して得られる音評価量を前記良品サンプルから得られた複数の前記良品音評価量として用い、前記判定用の閾値を決定する
請求項1または請求項2に記載の品質検査方法。
【請求項4】
複数の前記良品音評価量の中から音評価量を1つ選び、当該音評価量について時系列に関して隣接する良品音評価量の差分を時系列点毎に求め、他の前記良品音評価量の全てについて同様に時系列に関して隣接する良品音評価量の差分を時系列点毎に求めて、1つ選び出された前記良品音評価量の差分と他の良品音評価量の差分の時系列点に関する良品相互相関関数を求め、
前記良品相互相関関数の最大値を持つ配列位置の指標を基に、前記良品音評価量の時系列に関する配列関係を、前記良品相互相関関数の最大値を持つ配列位置の指標が正値ならば前記指標の絶対値だけ時系列の未来側へずらし、前記良品相互相関関数の最大値を持つ配列位置の指標が負値ならば前記指標の絶対値だけ時系列の過去側へずらした後、
前記良品音評価量の平均値を時系列全体に渡って求めて基準波形を決定し、
前記判定用の閾値を決定する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の品質検査方法。
【請求項5】
前記被検音評価量と前記基準波形の、時系列に関して隣接する音評価量値の差分を時系列点毎に求め、前記被検音評価量の差分と前記基準波形の差分との時系列点に関する被検相互相関関数を求め、
前記被検相互相関関数の最大値を持つ配列位置の指標を基に、被検音評価量の時系列に関する配列関係を、前記被検相互相関関数の最大値を持つ配列位置の指標が正値ならば前記指標の絶対値だけ時系列の未来側へずらし、前記被検相互相関関数の最大値を持つ配列位置の指標が負値ならば前記指標の絶対値だけ時系列の過去側へずらした後、
前記被検ワークの前記被検音評価量と決定した前記閾値とを比較した結果に基づき前記被検ワークの品質を検査する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の品質検査方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の品質検査方法により前記被検ワークの品質を評価する品質評価部を備える
品質検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−242223(P2011−242223A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113688(P2010−113688)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】