哺乳動物での動的な熱力学的過程を同定し分類してそれらを識別するシステムおよび方法
腫瘍性疾患の初期検出、血管形成の検出などに用いられる赤外線イメージカメラ(4)は、カメラ(4)の視覚領域(92)に位置する患者Pからの赤外線の複数のフレーム(94)を獲得する。それぞれのフレーム(94)は、対応するフレームサンプルインターバルの間に獲得され、それぞれのフレーム(94)は、そのフレームサンプルインターバルの間に、視覚領域(92)で光学素子(90)アレーから獲得した赤外線に対応する。複数の積分が、光学素子(90)アレーから受けた赤外線から決定され、この積分は、同じ光学素子(90)から少なくとも二つのフレーム(94)において受けた赤外線に対応する。それぞれの積分は、色彩または灰色の濃淡にマッピングされ、それぞれの積分の色彩または灰色の濃淡は、視覚領域(92)における対応する光学素子(90)の位置に対応するイメージ内の位置にマッピングされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線イメージングに関し、より詳細には、医用診断赤外線イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
熱イメージングとも呼ばれる赤外線イメージングは、従来より印刷回路板やタービン翼などの非破壊検査に用いられている。設備が不充分であり、しかも、生物による赤外線エネルギーの放射に関する一般的な学説が、そのような放射について裏付けられる基礎となる生理学的プロセスに対して不足しているという理由から、赤外線イメージングの医用診断への適用は制限されている。
【0003】
初期の赤外線イメージングは、不充分な分解能の検出装置によるものであり、医用診断に用いるには信頼性を欠く不充分なものであった。赤外線検出技術の進歩にもかかわらず、体表面の温度のわずかな変化の検出を目的として使用される赤外線イメージカメラでは、医用診断を効果的にする充分なデータは得られない。
【0004】
したがって、赤外線イメージシステム、およびこの赤外線イメージシステムを用いた、熱的ストレスに対し身体から放射される赤外線の性質の変化を検出し、熱的ストレスに対する身体の反応から生理学的機能についての診断情報を得るための方法を提供することは望ましいといえる。また、身体が放射する赤外線を立体映像的に観察し、分析できる赤外線イメージシステムを提供することも望ましいだろう。
[発明の開示]
本発明は、患者の赤外線イメージを作製する方法である。この方法は、赤外線イメージカメラの可視領域にある光学素子のアレーから赤外線を受けるように構成された赤外線イメージカメラを配置する工程を含む。視覚領域におかれた患者から、複数の赤外線のフレームが得られる。それぞれのフレームは、対応するフレームサンプルインターバルの間に得られる。また、それぞれのフレームは、そのフレームサンプルインターバル間に少なくとも一部の光学素子アレーから得られた赤外線に対応する。このアレーから受け取られた赤外線の複数の積分は、それぞれの積分が同じ光学素子から少なくとも二つのフレームにおいて受け取られた赤外線の積分と対応するように決定される。それぞれの積分は、色彩または灰色の濃淡にマッピングされ、それぞれの積分の色彩または灰色の濃淡は、視覚領域内の対応する光学素子の位置に応じてイメージ内の位置にマッピングされる。
【0005】
この複数のフレームは、イメージングインターバルにわたって獲得され、前記それぞれのフレームの獲得は一定的であっても、変動的であってもよい。それぞれの光学素子への赤外線放射は、絶対温度に合わせて調節される。赤外線は、フレームサンプルインターバルの間、視覚領域にてそれぞれの光学素子から連続して得られる。あるいは、赤外線は、視覚領域にて全光学素子から実質的に同時に得られる。
【0006】
フレームの獲得を開始する前に、患者は周囲温度風にさらされる。その後、フレームの獲得を開始し、患者は周囲温度とは異なる温度に調節された空気流にさらされる。イメージングインターバルの後、フレームの獲得が終了される。患者の放射率とは異なる放射率のマーカーが、患者と接して視覚領域内に少なくとも一つ配置される。この少なくとも一つのマーカーは、患者の特定の解剖学的位置に配置されるのが望ましい。
【0007】
視覚領域内に患者と隣接させて、一枚もしくはそれ以上の鏡を配置してもよい。この一
枚もしくはそれ以上の鏡は、視覚領域内であるが、患者の他の部位によって隠されて赤外線イメージングカメラからは見えない部位からの赤外線を反射するように向きを合わせて配置される。
【0008】
赤外線イメージカメラと患者との間に、グリッドを配置してもよい。このグリッドを通して熱エネルギーが患者に伝わり、赤外線フレームを、前記患者、および前記一枚もしくはそれ以上の鏡から直接得ることができる。前記患者、および前記一枚もしくはそれ以上の鏡から直接得られた赤外線から、患者の三次元イメージが作製される。
【0009】
本発明は、赤外線イメージング装置でもある。この赤外線イメージング装置は、前記イメージング装置の視覚領域を形成する光学素子アレーのそれぞれの光学素子からの赤外線を検出する手段を有する。同様な複数のサンプルインターバルにて、前記アレーからの複数の赤外線フレームを選択的に得るように検出手段を制御する調節部が接続されている。それぞれのフレームは、一つのサンプルインターバル間に、アレーの全光学素子または一部の光学素子から獲得される赤外線に対応している。検出手段によって受け取られたアレーからの赤外線の複数の積分を決定する手段が提供される。それぞれの積分は、それぞれ同じ光学素子から、少なくとも二つのフレームにおいて得られた赤外線に対応する。前記決定手段は、それぞれの積分を、色彩または灰色の濃淡にマッピングし、そして、前記それぞれの積分の色彩または灰色の濃淡を、前記視覚領域内の対応する光学素子の位置に対応したイメージ内の位置にマッピングする。
【0010】
それぞれの光学素子は、前記検出手段により処理可能な、視覚領域内の最も小さな素子に対応することが望ましい。
前記イメージング装置は、それぞれの光学素子から得られた赤外線を、対応するデータに変換するための手段を有していてもよい。前記決定手段は、フレーム間にそれぞれの光学素子から得られた赤外線に対応するデータから、少なくとも二つのフレームにおける同様な光学素子の積分を決定する。
【0011】
複数フレームのそれぞれのフレームは、イメージングインターバルにわたって対数的に獲得され、前記獲得がイメージングインターバルおいて後に増加することが望ましい。
フレームの獲得は、視覚領域内に置かれた患者の心拍サイクルと同期されている。前記少なくとも二つのフレームが、異なる心拍サイクルの同様な部位の間に獲得される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示したように、赤外線(IR)イメージシステム2は、ワークステーション6に接続された赤外線イメージカメラ4を備えている。赤外線イメージカメラ4は、ワークステーション6からのコマンド信号を受け取り、ワークステーション6に、赤外線イメージカメラ4によって受け取られた赤外線放射についての数値データと情報を、ワークステーション6に供給するようになっている。また、ワークステーション6には、当該技術分野で知られているように、赤外線イメージシステム2のユーザーによって用いられる、プリンター8と、記憶装置10と、ディスプレイ12と、ポインティング装置14と、キーボード16と、電力調整装置18とが接続されている。
【0013】
また、図1および図2に示したように、赤外線イメージカメラ4は、ワークステーション6と通信するためのデータ受信機22と、データ送信機24とを備えている。ソフトウェアプログラムの制御によって作動する調節部26が、データ受信機22からのデータを受け取るために接続されている。赤外線イメージカメラ4は、当該技術分野で知られているように、許容可能な作動温度にまで検出装置28を冷却するための冷却システム30に接続された検出装置28を備えている。検出装置28は、赤外線レンズ32からの赤外線を受け取るようになっている。この赤外線レンズ32は、赤外線レンズ32が受け取った
赤外線を検出装置28上に焦点を合わせるように構成されている。赤外線が赤外線レンズ32に到達する前に、赤外線は、フロントパネルビューポート44を通過し、所定の場合には、光学フィルター46を通過する。
【0014】
赤外線レンズ32の焦点合わせのための焦点システム62が、調節部26からの制御信号を受け取るために接続されている。調節部26の制御の下で、赤外線レンズ32の光学焦点および/またはズームを、昨今のデジタル写真システムとして良く知られている焦点システム62を介して調節することができるようになっている。
【0015】
駆動機構を備えたX−Y位置決めステージ64が、方向を制御するために、赤外線レンズ32と検出装置28に連結されている。この方向から、赤外線レンズ32と検出装置28が、光学フィルター46から赤外線レンズ32と検出装置28まで伝播する赤外線を検知するようになっている。調節部26からの制御信号を受け取るために、位置制御装置66が接続されている。調節部26の制御の下で、位置制御装置66によって、X−Y位置決めステージ64が制御されるようになっている。これによって、赤外線レンズ32と検出装置28とを選択的に位置決めして、光学フィルター46の選択部分からこれらの赤外線レンズ32と検出装置28まで伝播する赤外線ビームを検出することができるようになっている。
【0016】
検出装置28によって受け取られた赤外線の強度に対応する信号を検出装置28から受け取るために、プリアンプ76が接続されている。プリアンプ76によって、検出装置28によって出力されたそれぞれの信号が増幅およびフィルターされる。そして、増幅およびフィルターされたそれぞれの信号が、イメージA/D変換器78に供給される。このイメージA/D変換器78では、プリアンプ76からの増幅およびフィルターされたそれぞれの信号が、ゲートアレーのような、イメージ処理システム80に供給されるデジタル信号に変換されるようになっている。調節部26の制御の下での作動において、イメージ処理システム80によって、ワークステーション6に送信するために、赤外線データと情報とが、データ送信機24に供給されるようになっている。
【0017】
温度校正システム82からの絶対温度についてのデータと情報を受け取るために、プリアンプ76が接続されているのが望ましい。調節部26の制御の下で、温度校正システム82によって、プリアンプ76に絶対温度校正データが供給されるようになっている。プリアンプ76では、温度校正システム82からの絶対温度校正データと、検出装置28によって出力されたそれぞれの信号とが合成される。これによって、検出装置28によって受け取られた赤外線の絶対温度のために、プリアンプ76によって出力された増幅およびフィルターされた信号が調節されるように構成されている。
【0018】
焦点システム62と、X−Y位置決めステージ64と、温度校正システム82と、プリアンプ76と、周囲温度センサー86とから出力されたアナログ信号を受け取るために、A/D制御変換器84が接続されている。調節部26の制御の下で、A/D制御変換器84によって受け取られたアナログ信号に対応するデジタル信号が、A/D制御変換器84によって、選択的に調節部26に供給されるようになっている。調節部26によって受け取られたA/D制御変換器84からのデジタル信号は、赤外線イメージカメラ4の作動を制御するために、調節部26によって使用されるようになっている。
【0019】
また、図1、図2、および図3に示したように、調節部26は、検出装置28による赤
外線のサンプリングと、赤外線レンズ32の焦点と、X−Y位置決めステージ64の位置とを必要に応じて制御するようになっている。これによって、赤外線イメージカメラ4によって視覚可能な全視覚領域(tFOV)92にある光学素子(オプテル)90のアレーにある、それぞれの光学素子(オプテル)90から、赤外線を受け取り、記憶するように構成
されている。本明細書において、「光学素子」、または「オプテル」なる用語は、検出装置28の瞬間的な視覚領域(iFOV)において個別に処理することのできる全視覚領域(tFOV)の最も小さい素子を示している。
【0020】
作動の際には、赤外線イメージカメラ4は、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれのオプテルから赤外線を得るようになっている。例えば、図3に示したように、全視覚領域(tFOV)92の位置X1,Y1にあるオプテル90から開始され、調節部26によって、X−Y位置決めステージ64と、検出装置28と、赤外線レンズ32とが制御される。これによって、固定された垂直なY軸の配置の水平なX軸に沿って、それぞれのオプテル90からの赤外線を得るようになっている。特に、赤外線イメージカメラ4は、全視覚領域(tFOV)92に含まれた、位置X1,Y1と、位置X640,Y1との間のそれぞれのオプテル90から、赤外線を得るようになっている。次いで、赤外線イメージシステム2によって、X−Y位置決めステージ64の位置が調整され、これによって、全視覚領域(tFOV)92に含まれた、位置X1,Y2と、位置X640,Y2との間のそれぞれのオプテル90から、赤外線を得るようになっている。このようにして、赤外線イメージカメラ4は、全視覚領域(tFOV)92を形成する全てのオプテルが得られるまで、全視覚領域(tFOV)92内のオプテル90をスキャニングし続けるようになっている。
【0021】
図2に示した赤外線イメージカメラ4は、1つの検出装置28を有しているので、赤外線イメージカメラ4では、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90からの情報が、目立たない時間内で必然的に得られる。全視覚領域(tFOV)92での、位置X1,Y1でのオプテル90のサンプリングと、位置X640,Y480との間のインターバル、すなわち、フレームサンプルインターバルが、イメージすべき対象物からの赤外線の総計によって決定される。この場合、イメージすべき対象物からの赤外線の総量の関数として、フレームサンプルインターバルを調整することができる。赤外線イメージカメラ4によって、フレームサンプルインターバルについて、複数回にわたって、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90がサンプリングされるのが望ましい。そして、赤外線イメージカメラ4によって、全視覚領域(tFOV)92の全ての位置でのそれぞれのオプテル90のサンプルが平均されて、以下に記載した方法を用いたそれぞれのオプテル90から受け取られた赤外線の平均値を得るようにするのが望ましい。光導電検出器の場合には、そのようなサンプリングから得られた情報(電圧出力)が合計され、光起電検出器の場合には、情報(電流出力)が積分される。
【0022】
全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90の検出装置28によって検出された瞬間のまたは平均の赤外線の絶対温度のデジタル値が、イメージA/D変換器78によって決定される。次に、フレームスキャンインターバルの間に、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90の得られたデジタル値が、イメージ処理システム80によって、フレーム94内に配置される。フレーム94のそれぞれのオプテル90と関連するデジタル値は、対応するフレームサンプルインターバルにわたって、イメージすべき対象物の特定の位置から、検出装置28によって受け取られた赤外線の絶対温度を示すのが望ましい。
【0023】
図4および図1〜図3に示したように、赤外線イメージカメラ4では、例えば、5分のイメージングインターバルにわたってイメージすべき対象物の、例えば、F1〜F200の複数のフレームを得るように構成されている。イメージ処理システム80において、それぞれのフレーム94が受け取られて、アッセンブルされた時に、データ送信機24を介して、イメージ処理システム80からワークステーション6に転送されるそれぞれのフレーム94が、調節部26によって生じるようになっている。医学分野に適用する際には、複数フレーム94のそれぞれの獲得が、イメージングインターバルにわたって対数的に生じて、イメージングインターバルの後の方で発生する隣接するフレーム94の獲得の発生
が増加することが好ましい。しかしながら、隣接するフレーム94の獲得は、所望の方法で、固定するか、または変動するようにすることができる。
【0024】
説明目的のため図5および図1〜図4に示したように、それぞれのフレーム94の同様のオプテル90で得られた温度を、例えば、曲線100〜106のような温度−時間曲線で示すことができる。例えば、温度−時間曲線100は、図4に示されたフレームF1〜F200の位置X3,Y3でのオプテル90の温度対時間を示している。同様に、温度−時間曲線102、104および106は、図4に示されたフレームF1〜F200の位置X3,Y7;X10,Y3;および位置X10,Y7でのオプテル90の温度対時間を示している。
【0025】
複数のフレーム94が、イメージングインターバルにわたって得られた時には、それぞれのフレーム94のほぼ同じオプテル90について、それぞれの温度−時間曲線の積分(または積分値)が、ワークステーション6によって決定される。それぞれの積分は、例えばフレームF1とフレーム200とのサンプリングの間のような、特定の時間インターバルに亘る時間について決定される。あるいは、それぞれの積分は、例えばフレームF85〜F150、フレームF85〜F150間のあらゆる他のフレームのような、特定の複数のフレーム94のサブセットについて決定され得る。例えば、それぞれのフレーム94の同様な位置でのオプテル90から、または、例えば、フレームF85〜F150のような、ある選択された複数のフレーム94から、例えば、100、102、104および106のような温度−時間曲線それぞれの時間についての積分が、ワークステーション6によって決定される。例えば、温度−時間曲線それぞれの、フレームF1がサンプリングされる時間t0からフレームF200がサンプリングされる時間t1までの積分が、ワークステーション6によって決定される。その他の例としては、温度−時間曲線それぞれの、フレームF85がサンプリングされる時間t0からフレームF150がサンプリングされる時
間t1までの積分が、ワークステーション6によって決定される。
【0026】
ワークステーション6は、表示する目的のために、例えば、100〜106のようなそれぞれの温度−時間曲線の積分値を特有の色にマッピングするようになっている。腫瘍性乳房組織の早期確認のための医学分野での適用においては、最も小さな積分値を有する曲線に青色がマッピングされ、最も大きな積分値を有する曲線に赤色がマッピングされるのが望ましい。最も大きい積分値と、最も小さい積分値との間の積分値を有する曲線には、赤色と青色との間の色がマッピングされる。例えば、図5において、フレームF85とフレーム150との間では、最も小さい積分値を有する温度−時間曲線100には、ワークステーション6によって、青色がマッピングされる。また、ワークステーション6によって、温度−時間曲線102には緑色がマッピングされ、温度−時間曲線104には黄色がマッピングされる。さらに、最も大きい積分値を有する温度−時間曲線106には、ワークステーション6によって、赤色がマッピングされる。
【0027】
次に、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれのオプテル90またはオプテル90群の位置が、ディスプレイ12の対応するピクセルまたはピクセル群に、ワークステーション6によってマッピングされる。例えば、100〜106といった、温度−時間曲線それぞれの一部または全ての積分値に色がマッピングされると、ワークステーション6は、それぞれの温度−時間曲線の積分値についてのマッピングされた色が、全視覚領域(tFOV)92の対応するオプテル90の位置に相当する位置を有する、ディスプレイ12のピクセル上またはピクセル群上に表示されるようにする。このようにディスプレイ12にマッピングされた色によって、積分値のカラー勾配マップイメージが、ディスプレイ12上に形成される。
【0028】
また、ワークステーション6は、それぞれの温度−時間曲線の積分値を、幾つかの選択
した複数フレーム94について、グレーのスケールに対してマッピングし、グレースケール勾配マップイメージを形成することができるようになっている。上記グレースケールは、白色について最も大きい、または最も小さい積分値と、黒色について最も大きい、または最も小さいその他の積分値との間に、範囲を広げるのが望ましい。またワークステーション6は、所定の積分値よりも小さいか、または大きい積分値を有する、幾つかの選択された複数フレーム94にわたる温度−時間曲線のそれぞれを、グレースケールにマッピングすることができる。さらに、それぞれのフレーム94、または複数の選択されたフレーム94のデータは、当該技術分野で知られているように、グレースケール、および/またはカラー勾配マップイメージのディテールを強調するために、フィルターしたり、増幅することができる。
【0029】
本発明は、乳房の腫瘍の早期発見に特に適用でき、より詳細には、乳房の中で成熟する新生物のプロセスに関連した新しい血管形成の検知に適用することができる。特に、乳房の腫瘍が成長するにつれて、血管形成として知られているプロセスが生じて、腫瘍性の病巣または初期の腫瘍が、独立した血液の供給を発達させることが知られている。新しい血管形成によって形成された血管は、身体の交感神経系あるいは自律神経系には反応しないことが観察されている。したがって、新しい血管形成が、身体内の同じ器官内の隣接する部位の反応に一致した外的な熱的ストレスに応じた応答を示す結果として、外的な熱的ストレスに反応して、身体内の部位には、血液が供給される。このような血液の供給は、新しい血管形成の結果による血液供給ではない。皮膚の部位からの時間とともに照射された赤外線は、様々な構造と体系の組織的なレベル、例えば、細胞、組織、器官、および/または、システムにおいて、基礎となっている生理学のプロセス、生化学のプロセスおよび神経学上のプロセスに対して、マッピングすることができる。身体内の新しい血管形成の組織部位と関連した皮膚の部位からの赤外線は、新しい血管形成と何ら関連しない血液の供給を有しない身体の皮膚の部位からの赤外線と比較した場合に、かなり相違することがわかる。
【0030】
赤外線イメージシステム2を用いた、温度−時間曲線と、それぞれの温度−時間曲線の積分についての情報を獲得する上記の方法によって、本発明によれば、新しい血管形成の存在を確認できるとともに、乳房の内部のそのような血管形成の位置についての重要なデータを得ることができる。したがって、本発明によれば、患者が活発な腫瘍のプロセスが進行中であることの早期発見、または患者の腫瘍が既に罹患していることを早期に確認することができる。
【0031】
さらに別の本発明の適用としては、皮膚から発散された赤外線を調べて、赤外線が統計学的にかなりの過度な異常な部位、または、赤外線が統計学的に不足する異常な部位と同様に、アニゴソーム(anigosome)、サーマトームス(thermatomes)を確認する数理学的および統計学的な方法に適用できる。このような赤外線は、赤外線の様々な組織的なレベル、例えば、細胞、組織、器官、および/または、システムにおいて、基礎となっている生理学のプロセス、生化学のプロセスおよび神経学上のプロセスに対して、マッピングすることができる。このような情報は、例えば、鍼(はり)療法、指圧療法、または、例えば、治療力のある赤外線または無線周波数エネルギーのような外的な電磁気放射などの代替えの治療法によって、慢性的な痛みを治療、特に、筋膜性の痛みを治療する際において特に価値がある。
【0032】
アニゴソームおよびサーマトームスを確認する目的で本発明を適用することによって、「西洋」医学の開業医が、例えば、鍼(はり)療法、および指圧療法などの「東洋」医学または「オリエンタル」医学の治療技術を効果的に用いることができる。そして、「東洋」医学または「オリエンタル」医学の開業医が、「西洋」の健康ケアープロバイダーに、開業医の所見と技術を伝えることができる。
【0033】
図6および図1〜図5に示したように、乳房114の検査の際に、患者Pから受け取る
赤外線から得られた情報を参照して本発明を説明する。患者Pは、垂直軸113から角度
θ傾斜した背部112を備えたベンチまたは椅子110に座っているか、または、患者P
は、立った状態で、傾斜ボード(図示せず)に寄りかかっていることが望ましい。角度θを選択することによって、それぞれの乳房114の下側が、望ましくは赤外線イメージカメラ4の全視覚領域(tFOV)92内にあるようになっている。乳房114の横方向の領域と、腋の下の領域との赤外線イメージングを可能とするために、患者Pは、腕を横方向に
移動して、身体から離れた頭の方に移動させ、サポート115上に、ひじと前腕を支持している。赤外線イメージカメラ4は、患者Pから離間して配置され、これにより、患者Pの前部の胸の全領域C、および、特に、患者の乳房114が、赤外線イメージカメラ4の全
視覚領域(tFOV)92内にあるようになっている。赤外線イメージカメラ4は、患者Pの
乳房114と隣接する胴部116とが、全視覚領域(tFOV)92の大部分を占めるように配置するのが望ましい。しかしながら、赤外線レンズ32は、患者Pの特定の限られた領
域を光学的にズームするように調整することができ、これによって、このような選択した領域から赤外線を受け取ることができる。
【0034】
本発明では、赤外線レンズ32を用いた光学的なズームによって、患者Pの選択された
領域からの赤外線が分離されて獲得される。しかしながら、オプテル90それぞれによって見える患者Pの表面領域は増加しない。光学的なズームによって、オプテル90のより
小さなアレーにわたる赤外線イメージを受け取ることにより、イメージングされる患者P
の一部分サブセットにおいてイメージの解像度を改善することになる。
【0035】
患者Pと赤外線イメージカメラ4との間の距離は、重要な生理学的情報を得るために、
赤外線レンズ32の焦点距離と、全視覚領域(tFOV)92内にあるべき患者Pの領域との
間の条件(トレードオフ)として選択される。この目的のために、赤外線レンズ32は、全視覚領域(tFOV)92内でイメージングされる患者Pの全ての部分が焦点内にあるよう
に構成するのが望ましい。赤外線イメージカメラ4の赤外線レンズ32は、検出装置28によって見ることのできるそれぞれのオプテル90の寸法よりも小さい錯乱円に沿った長い焦点距離と回折限界とを有するように構成するのが望ましい。このような組み合わせによって、赤外線イメージカメラ4は、被写界深度を有しており、これによって、患者Pの
サブ部分のそれぞれが、赤外線イメージカメラ4から離間しているにもかかわらず、全視覚領域(tFOV)92内に患者Pのそれぞれの部分を焦点合わせすることができる。
【0036】
患者Pとベンチ110は、患者Pが衣服を脱いだ際に快適な周囲温度を有する部屋118内に収容されている。ベンチ110に患者Pが座ってから適当な時間の後、患者Pに何らの熱的ストレスがかかっていない状態で、患者Pから受け取られる赤外線によって示される
絶対温度に対応したデジタル値のフレーム94の獲得が、赤外線イメージカメラ4によって開始される。外部の熱的なストレスがかけられる前に、充分な「ベースライン」の情報を獲得するために必要なフレームの数と時間の長さが、人の操作者によって、または獲得されたデータのコンピュータ分析によって自動的に決定される。熱的なストレスが存在しない状態でフレーム94の所望の数が得られた後に、患者Pは、患者Pの正面に配置された1つまたはそれ以上の加熱/冷却ポンプ122からの調整された空気流120に晒される
。この1つまたはそれ以上の加熱/冷却ポンプ122は、実質的に均一な調整された空気
流を供給して、一定の試験プロトコールに基づいて、略一定の割合で全視覚領域(tFOV)92内の患者Pの部分を、冷却、または、暖めるように配置される。加熱/冷却ポンプ1
22から患者Pに供給される調整された冷却空気流120の温度は、部屋118の周囲温
度とは異なっているが、患者Pにとってその場合にも快適であることが望ましい。周囲の
部屋の温度よりも10°Fだけ低い温度に調整された空気流120の温度によって、患者Pの所望の交感神経反応が生じることが観察されている。
【0037】
しかしながら、一定の臨床条件では、皮膚の表面に血液がより流れるようにするために、冷却する前に、それぞれの乳房114を暖めるのが適切である。また、患者Pは、周囲
の環境条件の結果、既に血管収縮が生じていないのが適切である。例えば、加温から冷却、および冷却から加温のような、熱的ストレスの変化に応じて、患者Pから受け取られる
赤外線から、追加の重要な情報を得ることができる。これらの熱的ストレスの変更によって、下にある組織や器官の一定の生理学的プロセスに関連した特定の皮膚の赤外線放射における一種の生理学的ヒステリシスを提供することができる。
【0038】
例えば、加熱/冷却ポンプ122によって、調整された空気流120が患者Pに当初に
供給され、赤外線イメージカメラ4によって、患者Pの乳房114の複数のフレーム94
が獲得される。根底に存在するある生理的なプロセスにより、加温/冷却サイクルの際にそのようなプロセスと関係する皮膚の領域からの赤外線の変化が表出される。これにより、これらの特定領域に関係するオプテル90から受け取った赤外線の積分値と、より応答性の小さな組織に関係するオプテル90からの赤外線の積分値との間での統計学的な有意差が導かれることになる。この積分値の相違は、グレースケール、および/またはカラー勾配マップイメージの相違として、ディスプレイ12上に表示することができる。また、下方にある構造および組織の三次元的イメージを、獲得したデータから現すことができる。
【0039】
ある磁性材料に関係するヒシテリシスの特徴と特性に類似した、組織の特徴と特性の結果として、加温の後に冷却する「加温と冷却」サイクル、および/または、冷却の後に暖める「冷却と加温」サイクルから構成される熱的ストレスにより、例えば患者Pの乳房114のように、血管新生の活性と関係する組織領域を同定する、赤外線イメージシステム2の能力が向上する。
【0040】
加熱/冷却ポンプ122からの調整された冷却空気流120を受けることに反応する患者Pの交感神経系によって、患者Pの冷却された皮膚表面領域への血流が限定される。し
かしながら、交感神経系は、新しく血管形成されたか、または血管形成が開始されている、患者Pの組織への血流を限定するものではないことが観察されている。したがって、血
液の供給が、新しい血管形成または血管形成の進行に関係する、患者Pのそれらの組織ま
たは器官と関連した患者Pの皮膚領域からの赤外線は、調整された冷却空気流120に対
して、患者Pの他の組織と同じようには反応しない。図5および図7に示したように、例
えば、調整された冷却空気流120による患者Pの冷却に応答して、全視覚領域(tFOV
)92の位置X3,Y3でのオプテル90で見られる患者Pの皮膚表面領域は、フレームF4とフレームF200との間における温度−時間曲線100を生み出す。同様に、調整された冷却空気流120による患者Pの冷却によって、位置X3,Y7;位置X10,Y3;および位置X10,Y7でのオプテル90で見られる患者Pの皮膚表面領域は、フレームF4とフレームF200との間における、それぞれ温度−時間曲線102、104、および106を生み出す。
【0041】
図5に示したように、フレームF85とフレームF150との間において、曲線104と曲線106は、曲線100と曲線102よりも、変化率が小さく示されている。この変化率における相違は、位置X10,Y3と位置X10,Y7でのオプテル90に見られる患者Pの皮膚表面領域が、位置X3,Y3と位置X3,Y7でのオプテル90に見られる患者Pの皮膚表面領域のように、冷却空気流120による冷却に応答していないことを示している。フレームF85とF150の間で各曲線102〜106の積分をとることにより、積分値が得られる。ここで、曲線106の積分値は曲線104の積分値よりも大きく、曲線104の積分値は曲線102の積分値よりも大きく、曲線102の積分値は曲線100の積分値よりも大きい。これによって、全視覚領域(tFOV)92内の患者Pの組織が
、血管形成が開始されているか、または、新しい血管形成の結果として血液が既に供給されたことを示すことができる。
【0042】
血管形成または血管形成の進行についての情報を提供できることに加えて、本発明によれば、交感神経系によってその血流が調整されている、いかなる組織、器官、または生理学的組織についての活動についての重要な情報を提供することもできる。
【0043】
ヒト乳房の腫瘍疾患の早期発見の特定のケースにおいては、例えばフレームF85のような開始のフレーム94と、全視覚領域(tFOV)92内のそれぞれの位置におけるオプテル90の、温度―時間曲線の積分を検出するのに用いられるフレーム94の数とは、ディスプレイ12上のイメージを表示するために、所望により変更できるようにすることが望ましい。例えば、図5に示したように、それぞれの温度−時間曲線100、102、104および106の積分は、フレームF85とフレームF150との間で決定される。しかしながら、それぞれの温度−時間曲線100、102、104および106の積分は、所望であれば、フレームF100とフレームF125との間、フレームF20とフレームF85との間、フレームF75とフレームF175との間で検出することができる。
【0044】
さらに、グレースケールをマッピングするために用いたデジタルビットの数、および/または、図5に示した、各々の温度−時間曲線の積分に対するカラーを変えることもできる。例えば、イメージA/D変換器78が、12ビットのアナログ・デジタル変換器であれば、グレースケール、および/またはカラー勾配マップイメージを、イメージA/D変
換器78の全12ビットレンジよりも少なくマッピングすることができる。例えば、ワークステーション6は、それぞれの温度−時間曲線の積分を、基本の10個の番号800〜1600に対応したデジタル値の範囲にマッピングすることができる。これによって、ディスプレイ12が、ほとんどないかまたはない診断値を即座に表示するのが避けられる。しかしながら、そのような情報が、患者のデータベースに保持された患者の記録から消失しないようになっている。
【0045】
図8a〜図8bはそれぞれ、患者Pの乳房114のカラー勾配マップイメージの黒白の描写と、患者Pの乳房114のグレースケールと黒白に描写されたカラー勾配マップイメージの組み合わせを示している。フレーム94の獲得はイメージングインターバルにわたって生じるので、温度−時間曲線は、皮膚表面の温度だけでなく、患者Pの乳房114全体の組織体からの、時間を通しての赤外線を示す。図8aに示したカラー勾配マップイメージによって、加熱/冷却ポンプ122からの調整された空気流120に対する患者Pの乳房114の交感神経反応に関する詳細な情報が提供されることがわかる。このカラー勾配マップイメージにおいては、スペクトルの青色末端方向のカラーは、例えば、図5の曲線100のような、より小さい積分値を有するオプテル90と関連している。また、赤色で示した領域は、例えば、図5の曲線106のような、より大きな積分値を有するオプテル90と関連している。図8aに示したカラー勾配マップイメージの緑色と、黄色と、オレンジ色は、図5の温度−時間曲線100と106の積分値の間における積分値を有する温度−時間曲線と関連している。
【0046】
図8bにおいて、赤色と関連する積分値よりも小さい積分値を有する温度−時間曲線と関連しているオプテル90を有する全視覚領域(tFOV)92の領域が、グレースケールにマッピングされている。そして、赤色に対応する積分値を有する温度−時間曲線が、赤色のシンボルで示されている。より詳細には、図8bのグレースケールと黒白で描写されたカラー勾配マップイメージの組み合わせが、イメージングインターバルにわたって獲得された最後の32個のフレーム94のグレー勾配マップイメージと、同じ最後の32個のフレーム94のカラー勾配マップイメージとを組み合わせることによって形成される。最後の32個のフレーム94における同様のオプテル90の積分値をグレースケールにマッピ
ングすることによりグレースケール・イメージが形成され、図8bのグレースケール・マップイメージが形成される。赤色に関連したカラー勾配マップイメージのオプテル90が、グレースケール・マップイメージの同様なオプテル90に置き換えられる。このように作製されたグレースケール/カラー勾配マップイメージが、ディスプレイ12上に表示されて、図8bのグレースケール/カラー勾配マップイメージが作製される。図8bの赤色のシンボルで示された領域は、新しい血管形成の進行、または血管形成が生じたか、または生じている組織に関連しており、そのような組織はさらに検査が必要である。
【0047】
また、図8bのグレースケールと黒白で描写されたカラー勾配マップイメージの組み合わせは、患者P内の血管組織を明瞭に示しており、医師にとって診断値についてのさらなる情報を提供する。経験的に、図9に示したような、複雑な、または高度に不規則な血管組織を示す乳房114は疑わしいと考えられ、この患者Pは、血管組織がより規則的である場合よりも、乳癌にかかっている危険性がより大きいことを示している。乳房114の血管組織を検出してある程度詳細に表示することができるために、本発明によれば、乳癌のような腫瘍性疾患に関連した血管形成のプロセスを早期に発見することができる。また、乳癌のような腫瘍性疾患に関連した危険因子である解剖学的組織、または生理学的な特徴を早期に発見することができる。これにより、腫瘍が触診できるよりもかなり前に、ならびに患者Pが個人のライフスタイルにおいてとり得る変化が乳癌の進行を抑制することができるある時点で、患者Pが「ライフスタイル」の危険因子の排除といった、幾つかの行動をとることを可能にする。
【0048】
また、本発明は、複数の「心拍」サイクルの類似の時に獲得したフレーム94を比較することにより、患者Pの血液を決定するために利用することができる。特に、赤外線イメージカメラ4によるそれぞれのフレームの獲得は、患者Pの心拍サイクルの特定部分に同期することができる。例えば、フレームF1,F6,F11などは、複数の心拍サイクルのそれぞれのP波の間に獲得することができる。また、フレームF2,F7,F12などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのQ波の際に獲得することができる。フレームF3,F8,F13などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのR波の間に獲得することができる。フレームF4,F9,F14などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのS波の間に獲得することができる。さらに、フレームF5,F10,F15などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのT波の際に獲得することができる。全イメージ獲得シリーズを通じて、「タイムコード」として、患者P自身の心拍サイクルの要素を用いることによって、より効果的な数学的なイメージ処理方法と正確性が向上した分析を行うことができる。さらに、例えば、心電図のような、定評のあるグラフィック表示表現を用いた、心拍のような明瞭に定義された電気生理学方法によって、異なる検査中に得られたイメージ・シリーズとの比較が向上され、同じ患者または異なる患者の多数の検査において獲得されたデータの統計的解析の効率が改善される。
【0049】
所望の複数のフレーム94が、所望の複数の心拍サイクルにわたって獲得された場合、ワークステーション6は、同様のオプテル90について、それぞれの心拍サイクルの特定の瞬間に関するフレーム94にて、積分値を決定する。例えば、ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、フレームF1、F6、F11など、すなわち複数の心拍サイクルのP波の間に獲得されたフレームにおける積分値を決定する。また、ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、フレームF2、F7、F12など、すなわち複数の心拍サイクルのQ波の間に獲得されたフレームにおける積分値を決定する。さらに、ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、複数の心拍サイクルのR波、S波およびT波の間に獲得されたフレームにおけるものも同様にする。
【0050】
ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、複数の心拍サイクルの同様の瞬間に獲得されたフレーム94における積分値を、上述した方法において灰色の濃淡およ
び/または色彩へマッピングをする。したがって、ワークステーション6は、マッピングされた灰色の濃淡および色彩を、全視覚領域(tFOV)92において対応する1つのオプテ
ルまたは複数のオプテル90に対応する位置を有する、ディスプレイ12のピクセル上またはピクセル群上に表示する。これによって、複数の心拍サイクルの同様の瞬間における積分値のグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージが形成される。例えば、ワークステーション6は、灰色の濃淡および/または色彩を、フレームF1、F6、F11などにおける同様のオプテル90の積分値にマッピングする。これによって、患者Pの複数の心拍サイクルのP波の間の血流に対応するグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージがディスプレイ12上に表示される。それとともにまたはその代わりに、ワークステーション6は、灰色の濃淡および/または色彩を、複数の患者Pの心拍サイクルのQ波、R波、S波またはT波に関連するフレーム94における同様のオプテル90の積分値にマッピングし、そのグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージをディスプレイ12上に選択的に表示する。
【0051】
複数の心拍サイクルの同様の瞬間に関連するフレーム94を単離することで、患者Pの皮膚表面と、様々な段階での血流からの赤外線の差異と、問題となっている組織の全体の位置とに相関性を持たせて、赤外線イメージカメラ4の全視覚領域(tFOV)92における患者Pの身体内の血流の定量的評価が可能となり、それにより、医者にとって有用な診断情報を提供することができる。信頼性のある一貫したタイムコードマーカー、例えば、患者P自身の心拍を利用することで、イメージの向上に関して数学的な手法を適用することができ、イメージシステム全体の全解像度を向上することができる。これによって、生きているヒトの身体および他の動物体内での、複雑な交感神経系伝達生理学的プロセスを、確認し、特徴付けし、評価する手段として、システムの感度および選択性の両方を改善することが可能となる。
【0052】
本発明は、2つのフレーム94に含まれるデジタル情報を引き算的に組み合わせることにより診断情報を得るためにも利用される。例えば、フレームF4のそれぞれの位置でオプテル90から得られたデジタル情報は、フレームF2におけるそれぞれの同様の位置で、オプテル90から得られた対応するデジタル情報から差し引くことができる。ワークステーション6は、同様の位置でのオプテル90について得られたこれらの差異を、グレースケールおよび/または色彩スケールへマッピングして、この差異のグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージをディスプレイ12上に作製することができる。
【0053】
図10について言及するとともに、図2〜図7に戻って言及すると、乳房114の赤外線イメージに伴う問題は、特定の患者Pにおいて、患者Pのもたれ掛かり角度θにもかかわらず、乳房114の下部124の赤外線イメージを取得することに関連する困難性である。同様に、赤外線イメージカメラ4が、図6に示した方法で、患者Pの正面に位置した場合、患者Pの腕126に隣接するそれぞれの乳房114の側面125の赤外線イメージは、赤外線イメージカメラ4を再度配置することなしでは容易に得ることができない。赤外線イメージカメラ4に、それぞれの乳房114の側面125と同様に、それぞれの乳房114の下部124と、腋窩の関連領域とを視覚可能にさせるために、胸板鏡130を患者Pの乳房114の下方に配置してもよく、側面鏡132を患者Pの乳房114の反対側の側面125に配置してもよい。胸板鏡130と側面鏡132は、それぞれの乳房114の下部124と、それぞれの乳房114の側面125と、腋窩の領域とが、全視覚領域(tFOV)92内に入るように配置され、かつ、それぞれの乳房114の下部124と、それぞれの乳房114の側面125とから、赤外線イメージカメラ4へ向かう赤外線を反射させるような方向に配置される。
【0054】
イメージ処理技術を用いることで、ワークステーション6は、乳房114から直接受けた赤外線と、鏡130および/または132により反射された赤外線から、乳房114の
グレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。鏡130、132、患者Pおよびその間の空間の間での遷移を検出するために、赤外線イメージカメラ4の能力を向上させるべく、それぞれの鏡130、132は、その1つまたはそれ以上のエッジ上に、人間もしくは他の動物または組織の放射率とは実質的に異なる放射率を有する、赤外線イメージカメラ4で視覚化可能な、材料片を有することができる。この特定の適用は、外因性の材質、例えば、化粧品などに対する真皮上の感受性を評価する際の特定の用途であり、また、例えば、局所的に適用された医薬のような材料の皮膚を通した吸収割合を決定するための手段を提供する。この特定の適用は、例えば、化粧品などの化合物および化学的な混合物に対して、人間と他の動物の真皮または皮膚の感受性の正確な定量と再現性ある決定方法を提供する。これによって、例えば「Draiz」試験のよう
な、論争を呼ぶ動物実験手順の必要がなくなることになる。本発明は、局所的に適用された薬剤と医薬の吸収または吸着の割合の正確な定量と再現性ある決定をも可能にし、さらに、論争を呼ぶ動物実験手順の必要性を回避できるものである。
【0055】
図7への言及に戻るとともに、図10への言及を継続すると、患者Pの全生涯にわたって拡張してもよい時間にわたる連続フレーム94の記録を可能にするために、鏡130、132からのフレーム94に正確な重ね合わせおよび統合を付与するために、および赤外線イメージカメラ4の軸外し位置調整のための釣り合いのとれた多様性に適応させるために、マーカー158を特定の固定化された解剖学上の標識点、例えば、肋骨上の切痕160と、剣状突起の連結162と、鎖骨下窩164と、前方腋窩線166と、肩峰168などに位置させることができる。マーカー158は、患者Pの放射率とは異なった放射率を有する材質から作られる。さらに、特定の有用な解剖学的な標識の特徴は、イメージ処理技術を用いて得られた情報から確認できる。ヒトの乳房に特に言及すると、哺乳類の脈管樹状構造の分岐の存在を、一定期間にわたるイメージ記録の手段として用いることができる。
【0056】
患者Pから直接受け取った赤外線と、鏡130、132から反射した赤外線から作製される正面、側面および/またはボトムアップイメージ、または三次元イメージを可能にする数々の手段がある。例えば、グリッド133は、赤外線イメージカメラ4の全視覚領域(tFOV)92において、ランプ134または他の熱源と、患者Pの部分との間に位置される。フレーム94を獲得した後の適当な時期に、ランプ134は作動され、これにより熱エネルギーが、全視覚領域(tFOV)tFOV92における患者Pの部分にグリッド133を
介して伝達される。ランプ134からの熱エネルギーの一部分は、グリッドにより吸収され、患者Pにランプ134からの熱エネルギーが、グリッド様パターンで受けることになる。ランプ134から直接受ける熱エネルギーは、患者P上で、赤外線パターン135を形成する。この赤外線パターン135は、患者P上で直接見たときにグリッド様であり、鏡130、132を介して見たときに、患者Pの輪郭となっている。同様に、鏡130、132を介して、ランプ134から受けた熱エネルギーは、患者P上で、反射された赤外線パターン135'を形成する。この赤外線パターン135'は、赤外線イメージカメラ4によって、鏡130、132を介して見るとグリッド様であるが、患者Pから直接見たときには患者Pの輪郭となっている。
【0057】
イメージ再作製技術を用いることで、ワークステーション6は、直接または鏡130、132を介して視覚可能である赤外線パターン135と135'から、乳房114の正面
、側面および/またはボトムアップのグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージ、または三次元グレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0058】
もう一つの態様において、患者Pは、赤外線イメージカメラ4により直接に、または鏡130、132を介して視覚可能なマーカー158が選択的位置に配置されたナイロン製
のブラジャー(図示せず)を身に着ける。ナイロンは赤外線に対して透過性であるため、ワークステーション6はブラジャー上のマーカー158の位置を用いて、直接にまたは鏡130、132を通じて視覚可能な赤外線パターンから、乳房114の正面、側面および/またはボトムアップのグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージ、または三次元グレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0059】
図11に言及するとともに、図2に戻って言及すると、赤外線イメージカメラ4は、立体イメージのために、X−Y位置決めステージ64上に配設された一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32を用いて構成することができる。この一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32は、X−Y位置決めステージ64上に配置し、赤外線を全視覚領域(tFOV)92において共通オプテル90から同時に見て、獲得する。X−Y位置決め
ステージ64を利用して、一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32とを調節して、赤外線をtFOV92においてそれぞれのオプテル90から見て、獲得することができる
。この態様において、プレアンプ76と、イメージA/D変換器78と、イメージ処理システム80とは、同じオプテル90から同時に、赤外線を受けたことに応答して、それぞれの検出装置28によって出力されたシグナルを処理するように構成されている。オプテル90について全視覚領域(tFOV)92内のそれぞれの位置で得られた二つのイメージ
は、ワークステーション6により組み合わされ、熱的ストレスにさらされた患者Pの組織の立体的なグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0060】
図12に言及するとともに、図2への言及を続けると、検出装置28は、フロントパネルビューポート44と、光学フィルター46と、赤外線レンズ32を通過する赤外線を受けるために配置された検出装置28のアレー148に置き換えることができる。この態様において、赤外線レンズ32は、「サイズアップ」され、そこで受ける赤外線の焦点を、検出装置28のアレー148に合わせるようにしており、これは「ステアリングアレー」148として公知であり、以後このように言うことにする。作動の際には、調節部26は、ステアリングアレー148のそれぞれの検出装置28の出力を実質的に同時に、すなわち同じフレームサンプルインターバルでサンプルして、図3に示したタイプの一つのフレーム94を形成する。調節部26は、ステアリングアレー148から、所定のインターバルで、複数のフレーム94を得る。図4、図5とともに上述した方法を用いることで、ワークステーション6は、オプテル90に関して、それぞれのフレーム94内の同様の位置で、イメージングインターバルにわたり、オプテル90で表される、患者Pの部分の熱的応答を得る。
【0061】
図13に言及するとともに、図11、図12に戻り言及すると、一対のステアリングアレー148と、一対の赤外線レンズ32を、図11に示したように、一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32と同様の方法で用いて、患者Pの立体イメージを作製することができる。この態様において、一対のステアリングアレー148は、それぞれのオプテル90からの全視覚領域(tFOV)92における赤外線情報を受け取るように構成されて
いる。また、プレアンプ76と、イメージA/D変換器78と、イメージ処理システム80は、それぞれのステアリングアレー148から受け取ったイメージデータを処理するように構成されている。オプテル90について全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置で一対のステアリングアレー148から得た二つのイメージは、ワークステーション6により組み合わせられ、熱的ストレスにさらされた患者Pの組織の立体的なグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0062】
図11に示した態様において、それぞれの検出装置28は、異なる波長での赤外線を検出するように構成することができる。例えば、一方の検出装置28を1〜2ミクロン間の
赤外線波長を検出するように構成し、他方の検出装置28を8〜12ミクロン間の赤外線波長を検出するように構成することができる。さらに、特定の波長での赤外線を検出するように構成されたそれぞれの検出装置28は、図11に示したような方法で、もう一方の同様な検出装置28と対をなして、異なる波長での赤外線の立体イメージを作製することができる。それぞれの検出装置28は、もう一方の検出装置28から、それぞれの検出装置28により視覚化可能なオプテル90のサイズよりも大きな距離をおいて離すことが望ましい。
【0063】
イメージングインターバルにわたって得られた患者Pの熱的イメージの複数のフレーム94を、後に続くローカルなデータ取出および解析のために、患者データファイルにてワークステーション6の不揮発性メモリ、例えば磁気的または光学的データメモリに蓄積することが望ましい。患者データファイルは、後に続くローカルなデータ取出および解析のために、複数の患者データファイルを蓄積する分配データシステムに送信してもよい。この分配データシステムは、異なる地理的位置に公知の技術、例えばインターネットなどの方法で相互接続された複数のコンピュータを有することが好ましい。それぞれの接続コンピュータは、ローカルな地理的位置で作られた複数の患者データファイルを受け取り、蓄積するための不揮発性メモリと、好適なシステム操作ソフトウェアと、好適なグラフィックユーザインタフェースを備えている。これによって、コンピュータを使ってユーザー相互の作用が容易となる。それぞれの患者データファイルが、イメージングインターバルにわたって得られた赤外線イメージデータのフレーム94と、例えば、生活習慣と、臨床履歴と、他のリスク要因のような、患者が乳ガンを進行させるリスクにあるか否かの解析に関連する他の患者のデータを含むことが望ましい。また、それぞれの患者データファイルは、前記分配データシステムのコンピュータ間で分配される、リレーショナルデータベールにおいて独自のオブジェクトとして蓄積されることが望ましい。
【0064】
前記分配データシステムのシステム操作ソフトウェアは、複数の患者データファイル、または複数の患者データファイルのサブセットを解析可能な専門のシステムをサポートすることが望ましい。この専門のシステムは、公知の解析技術、例えば、数理統計解析、判別解析または要因解析を用いて、複数の患者Pのデータファイルを解析し、または統計学上の不一致、例えば乳房の腫瘍性プロセスが成熟することと関連する血管形成の指標のために、個々の患者Pのデータファイルを複数の患者Pのデータファイルと比較することが特に望ましい。専門のシステムは、複数の患者Pのデータファイルにおいて、取得された患者Pのデータを、他の全ての患者Pのデータと一様に比較して、統計的に有意な関係および関連、例えば、血管形成活性の出現または腫瘍性疾患の臨床的な明示に関連するリスク要因などを同定することが望ましい。
【0065】
ここで述べたIRイメージのための方法および装置は、伝統的な痛み処置のモダリティ、例えば理学療法およびカイロプラクティック処置、および非伝統的な痛み処置モダリティ、例えば指圧療法および刺鍼術法の双方の有効性のモニタおよび客観的な定量の手段として用いることができる。さらに、この方法および装置を用いて、ある痛み処置のモダリティ、例えば指圧療法刺鍼術法、マッサージ療法、トリガー点注射、増殖療法および合焦電磁波エネルギー、例えば赤外線の適用などに関する適用の適切なポイントを決定することができる。
【0066】
軟組織損傷の見積もりにおいて、ここで述べたIRイメージ法および装置を用いて、身体全体にわたる皮膚または問題となっているより小さな領域からの一定期間にわたる赤外線のイメージ列を、ソフトウェアによる複合イメージの創造の第1の表面鏡を含む様々な手段により得ることができる。
【0067】
検出装置28および/またはステアリングアレー148から得られたデータを利用して
、対側筋群、ダーマトームおよびサーマトームの対称軸を決定することができる。統計的方法を利用して、比較可能な対側領域からの赤外線において統計的に有意な差があるか否かを決定することができる。もしそうならば、解析を継続して、それぞれの対側群内の対称領域間で統計的に有意な差があるか否かを決定する。
【0068】
例えば、左腕との比較を行った際に、右腕に関連する皮膚表面から放出されたIRエネルギーにおける統計的に有意な差は、単に患者Pが右利きであることを支持するであろう。しかしながら、二頭筋群および三頭筋群の内部対称についての考慮に基づくそれぞれの腕の単独のさらなる統計的解析、例えばそれぞれの比較可能な筋群内の内部対称関係の解析および比較は、「利き腕」の効果を評価する。この分析方法は、広い平坦な筋領域、例えば僧帽筋、広背筋群および他の背中の領域に関連する痛みの訴えを扱う際に非常に重要である。
【0069】
対側筋群、ダーマトームおよびサーマトームの多数の対称軸の正確な位置は、一連の期間での連続イメージの正確な記録および処置の有効性の定量的な見積もりを可能にする。赤外線データを表面の解剖学上の標識点にマッピングすること、およびリアルタイムでこの情報を健康管理医にディスプレイすることは、処置の効能および有効性を向上させることができる。
【0070】
本発明を好ましい態様に言及して説明した。自明な変更および選択は、前述した記載を読むこと、かつ、理解することによって思いつくものである。添付した請求項およびそれと等価なものの範囲で思いつく限り、本発明はそのような変更および選択の全てを包含するものとして解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、赤外線イメージカメラを含む赤外線イメージングシステムのブロック図である。
【図2】図2は、1つの選択的な位置決めが可能な赤外線検出装置を含む図1の赤外線イメージングカメラのブロック図である。
【図3】図3は、フレームを形成する光学素子アレーを含む図2の赤外線イメージカメラによって視覚可能な全視覚領域(tFOV)を表わすフレームの概略図である。
【図4】図4は、図2の赤外線イメージカメラを用いて得られた温度対時間の関係を表わす複数のフレームの概略図である。
【図5】図5は、図4に示した複数のフレームのそれぞれから同じ4つの光学素子によって受け取られた赤外線から決定した温度対時間の関係を表わす曲線グラフである。
【図6】図6は、加熱/冷却ポンプによって熱的ストレスにさらされた患者の赤外線イメージのフレームを得るために配置された図2の赤外線イメージカメラの概略図である。
【図7】図7は、図5に示した温度−時間曲線を作成するための赤外線が得られる、視覚領域内の、患者に当てられた4つの光学素子の位置を含むVII−VIIの線に沿った図6における患者の図である。
【図8】図8aは、患者の胸部のカラー勾配マップイメージの色を模様で区別した白黒描写図であり、複数のフレームにわたる視覚領域内におけるそれぞれの位置の光学素子に関連したそれぞれの温度−時間曲線が、温度−時間曲線の勾配の積分に基づいた色にマッピングされている。図8bは、図8aに示された患者の胸部のグレースケール・マップであり、赤色に関連した温度−時間曲線の積分よりも大きな積分を持つ温度−時間曲線が、それぞれの積分に応じて灰色の濃淡にマッピングされ、赤色は赤色の模様で区別されている。
【図9】図9は、ギザギザに曲がった形状の脈管構造を持つ別の患者の胸部のグレースケール・マップである。
【図10】図10は、患者の胸部下方の鏡と胸部の両側面の鏡とを含む、図7に示す患者の概略図である。
【図11】図11は、立体映像的イメージを得るための一対の検出装置と一対の赤外線レンズの独立した概略図である。
【図12】図12は、赤外線析出装置のステアリングアレーを含む、図1の赤外線イメージカメラのブロック図である。
【図13】図13は、立体映像的イメージを得るための一対の赤外線レンズと一対のステアリングアレーの独立した概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線イメージングに関し、より詳細には、医用診断赤外線イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
熱イメージングとも呼ばれる赤外線イメージングは、従来より印刷回路板やタービン翼などの非破壊検査に用いられている。設備が不充分であり、しかも、生物による赤外線エネルギーの放射に関する一般的な学説が、そのような放射について裏付けられる基礎となる生理学的プロセスに対して不足しているという理由から、赤外線イメージングの医用診断への適用は制限されている。
【0003】
初期の赤外線イメージングは、不充分な分解能の検出装置によるものであり、医用診断に用いるには信頼性を欠く不充分なものであった。赤外線検出技術の進歩にもかかわらず、体表面の温度のわずかな変化の検出を目的として使用される赤外線イメージカメラでは、医用診断を効果的にする充分なデータは得られない。
【0004】
したがって、赤外線イメージシステム、およびこの赤外線イメージシステムを用いた、熱的ストレスに対し身体から放射される赤外線の性質の変化を検出し、熱的ストレスに対する身体の反応から生理学的機能についての診断情報を得るための方法を提供することは望ましいといえる。また、身体が放射する赤外線を立体映像的に観察し、分析できる赤外線イメージシステムを提供することも望ましいだろう。
[発明の開示]
本発明は、患者の赤外線イメージを作製する方法である。この方法は、赤外線イメージカメラの可視領域にある光学素子のアレーから赤外線を受けるように構成された赤外線イメージカメラを配置する工程を含む。視覚領域におかれた患者から、複数の赤外線のフレームが得られる。それぞれのフレームは、対応するフレームサンプルインターバルの間に得られる。また、それぞれのフレームは、そのフレームサンプルインターバル間に少なくとも一部の光学素子アレーから得られた赤外線に対応する。このアレーから受け取られた赤外線の複数の積分は、それぞれの積分が同じ光学素子から少なくとも二つのフレームにおいて受け取られた赤外線の積分と対応するように決定される。それぞれの積分は、色彩または灰色の濃淡にマッピングされ、それぞれの積分の色彩または灰色の濃淡は、視覚領域内の対応する光学素子の位置に応じてイメージ内の位置にマッピングされる。
【0005】
この複数のフレームは、イメージングインターバルにわたって獲得され、前記それぞれのフレームの獲得は一定的であっても、変動的であってもよい。それぞれの光学素子への赤外線放射は、絶対温度に合わせて調節される。赤外線は、フレームサンプルインターバルの間、視覚領域にてそれぞれの光学素子から連続して得られる。あるいは、赤外線は、視覚領域にて全光学素子から実質的に同時に得られる。
【0006】
フレームの獲得を開始する前に、患者は周囲温度風にさらされる。その後、フレームの獲得を開始し、患者は周囲温度とは異なる温度に調節された空気流にさらされる。イメージングインターバルの後、フレームの獲得が終了される。患者の放射率とは異なる放射率のマーカーが、患者と接して視覚領域内に少なくとも一つ配置される。この少なくとも一つのマーカーは、患者の特定の解剖学的位置に配置されるのが望ましい。
【0007】
視覚領域内に患者と隣接させて、一枚もしくはそれ以上の鏡を配置してもよい。この一
枚もしくはそれ以上の鏡は、視覚領域内であるが、患者の他の部位によって隠されて赤外線イメージングカメラからは見えない部位からの赤外線を反射するように向きを合わせて配置される。
【0008】
赤外線イメージカメラと患者との間に、グリッドを配置してもよい。このグリッドを通して熱エネルギーが患者に伝わり、赤外線フレームを、前記患者、および前記一枚もしくはそれ以上の鏡から直接得ることができる。前記患者、および前記一枚もしくはそれ以上の鏡から直接得られた赤外線から、患者の三次元イメージが作製される。
【0009】
本発明は、赤外線イメージング装置でもある。この赤外線イメージング装置は、前記イメージング装置の視覚領域を形成する光学素子アレーのそれぞれの光学素子からの赤外線を検出する手段を有する。同様な複数のサンプルインターバルにて、前記アレーからの複数の赤外線フレームを選択的に得るように検出手段を制御する調節部が接続されている。それぞれのフレームは、一つのサンプルインターバル間に、アレーの全光学素子または一部の光学素子から獲得される赤外線に対応している。検出手段によって受け取られたアレーからの赤外線の複数の積分を決定する手段が提供される。それぞれの積分は、それぞれ同じ光学素子から、少なくとも二つのフレームにおいて得られた赤外線に対応する。前記決定手段は、それぞれの積分を、色彩または灰色の濃淡にマッピングし、そして、前記それぞれの積分の色彩または灰色の濃淡を、前記視覚領域内の対応する光学素子の位置に対応したイメージ内の位置にマッピングする。
【0010】
それぞれの光学素子は、前記検出手段により処理可能な、視覚領域内の最も小さな素子に対応することが望ましい。
前記イメージング装置は、それぞれの光学素子から得られた赤外線を、対応するデータに変換するための手段を有していてもよい。前記決定手段は、フレーム間にそれぞれの光学素子から得られた赤外線に対応するデータから、少なくとも二つのフレームにおける同様な光学素子の積分を決定する。
【0011】
複数フレームのそれぞれのフレームは、イメージングインターバルにわたって対数的に獲得され、前記獲得がイメージングインターバルおいて後に増加することが望ましい。
フレームの獲得は、視覚領域内に置かれた患者の心拍サイクルと同期されている。前記少なくとも二つのフレームが、異なる心拍サイクルの同様な部位の間に獲得される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示したように、赤外線(IR)イメージシステム2は、ワークステーション6に接続された赤外線イメージカメラ4を備えている。赤外線イメージカメラ4は、ワークステーション6からのコマンド信号を受け取り、ワークステーション6に、赤外線イメージカメラ4によって受け取られた赤外線放射についての数値データと情報を、ワークステーション6に供給するようになっている。また、ワークステーション6には、当該技術分野で知られているように、赤外線イメージシステム2のユーザーによって用いられる、プリンター8と、記憶装置10と、ディスプレイ12と、ポインティング装置14と、キーボード16と、電力調整装置18とが接続されている。
【0013】
また、図1および図2に示したように、赤外線イメージカメラ4は、ワークステーション6と通信するためのデータ受信機22と、データ送信機24とを備えている。ソフトウェアプログラムの制御によって作動する調節部26が、データ受信機22からのデータを受け取るために接続されている。赤外線イメージカメラ4は、当該技術分野で知られているように、許容可能な作動温度にまで検出装置28を冷却するための冷却システム30に接続された検出装置28を備えている。検出装置28は、赤外線レンズ32からの赤外線を受け取るようになっている。この赤外線レンズ32は、赤外線レンズ32が受け取った
赤外線を検出装置28上に焦点を合わせるように構成されている。赤外線が赤外線レンズ32に到達する前に、赤外線は、フロントパネルビューポート44を通過し、所定の場合には、光学フィルター46を通過する。
【0014】
赤外線レンズ32の焦点合わせのための焦点システム62が、調節部26からの制御信号を受け取るために接続されている。調節部26の制御の下で、赤外線レンズ32の光学焦点および/またはズームを、昨今のデジタル写真システムとして良く知られている焦点システム62を介して調節することができるようになっている。
【0015】
駆動機構を備えたX−Y位置決めステージ64が、方向を制御するために、赤外線レンズ32と検出装置28に連結されている。この方向から、赤外線レンズ32と検出装置28が、光学フィルター46から赤外線レンズ32と検出装置28まで伝播する赤外線を検知するようになっている。調節部26からの制御信号を受け取るために、位置制御装置66が接続されている。調節部26の制御の下で、位置制御装置66によって、X−Y位置決めステージ64が制御されるようになっている。これによって、赤外線レンズ32と検出装置28とを選択的に位置決めして、光学フィルター46の選択部分からこれらの赤外線レンズ32と検出装置28まで伝播する赤外線ビームを検出することができるようになっている。
【0016】
検出装置28によって受け取られた赤外線の強度に対応する信号を検出装置28から受け取るために、プリアンプ76が接続されている。プリアンプ76によって、検出装置28によって出力されたそれぞれの信号が増幅およびフィルターされる。そして、増幅およびフィルターされたそれぞれの信号が、イメージA/D変換器78に供給される。このイメージA/D変換器78では、プリアンプ76からの増幅およびフィルターされたそれぞれの信号が、ゲートアレーのような、イメージ処理システム80に供給されるデジタル信号に変換されるようになっている。調節部26の制御の下での作動において、イメージ処理システム80によって、ワークステーション6に送信するために、赤外線データと情報とが、データ送信機24に供給されるようになっている。
【0017】
温度校正システム82からの絶対温度についてのデータと情報を受け取るために、プリアンプ76が接続されているのが望ましい。調節部26の制御の下で、温度校正システム82によって、プリアンプ76に絶対温度校正データが供給されるようになっている。プリアンプ76では、温度校正システム82からの絶対温度校正データと、検出装置28によって出力されたそれぞれの信号とが合成される。これによって、検出装置28によって受け取られた赤外線の絶対温度のために、プリアンプ76によって出力された増幅およびフィルターされた信号が調節されるように構成されている。
【0018】
焦点システム62と、X−Y位置決めステージ64と、温度校正システム82と、プリアンプ76と、周囲温度センサー86とから出力されたアナログ信号を受け取るために、A/D制御変換器84が接続されている。調節部26の制御の下で、A/D制御変換器84によって受け取られたアナログ信号に対応するデジタル信号が、A/D制御変換器84によって、選択的に調節部26に供給されるようになっている。調節部26によって受け取られたA/D制御変換器84からのデジタル信号は、赤外線イメージカメラ4の作動を制御するために、調節部26によって使用されるようになっている。
【0019】
また、図1、図2、および図3に示したように、調節部26は、検出装置28による赤
外線のサンプリングと、赤外線レンズ32の焦点と、X−Y位置決めステージ64の位置とを必要に応じて制御するようになっている。これによって、赤外線イメージカメラ4によって視覚可能な全視覚領域(tFOV)92にある光学素子(オプテル)90のアレーにある、それぞれの光学素子(オプテル)90から、赤外線を受け取り、記憶するように構成
されている。本明細書において、「光学素子」、または「オプテル」なる用語は、検出装置28の瞬間的な視覚領域(iFOV)において個別に処理することのできる全視覚領域(tFOV)の最も小さい素子を示している。
【0020】
作動の際には、赤外線イメージカメラ4は、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれのオプテルから赤外線を得るようになっている。例えば、図3に示したように、全視覚領域(tFOV)92の位置X1,Y1にあるオプテル90から開始され、調節部26によって、X−Y位置決めステージ64と、検出装置28と、赤外線レンズ32とが制御される。これによって、固定された垂直なY軸の配置の水平なX軸に沿って、それぞれのオプテル90からの赤外線を得るようになっている。特に、赤外線イメージカメラ4は、全視覚領域(tFOV)92に含まれた、位置X1,Y1と、位置X640,Y1との間のそれぞれのオプテル90から、赤外線を得るようになっている。次いで、赤外線イメージシステム2によって、X−Y位置決めステージ64の位置が調整され、これによって、全視覚領域(tFOV)92に含まれた、位置X1,Y2と、位置X640,Y2との間のそれぞれのオプテル90から、赤外線を得るようになっている。このようにして、赤外線イメージカメラ4は、全視覚領域(tFOV)92を形成する全てのオプテルが得られるまで、全視覚領域(tFOV)92内のオプテル90をスキャニングし続けるようになっている。
【0021】
図2に示した赤外線イメージカメラ4は、1つの検出装置28を有しているので、赤外線イメージカメラ4では、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90からの情報が、目立たない時間内で必然的に得られる。全視覚領域(tFOV)92での、位置X1,Y1でのオプテル90のサンプリングと、位置X640,Y480との間のインターバル、すなわち、フレームサンプルインターバルが、イメージすべき対象物からの赤外線の総計によって決定される。この場合、イメージすべき対象物からの赤外線の総量の関数として、フレームサンプルインターバルを調整することができる。赤外線イメージカメラ4によって、フレームサンプルインターバルについて、複数回にわたって、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90がサンプリングされるのが望ましい。そして、赤外線イメージカメラ4によって、全視覚領域(tFOV)92の全ての位置でのそれぞれのオプテル90のサンプルが平均されて、以下に記載した方法を用いたそれぞれのオプテル90から受け取られた赤外線の平均値を得るようにするのが望ましい。光導電検出器の場合には、そのようなサンプリングから得られた情報(電圧出力)が合計され、光起電検出器の場合には、情報(電流出力)が積分される。
【0022】
全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90の検出装置28によって検出された瞬間のまたは平均の赤外線の絶対温度のデジタル値が、イメージA/D変換器78によって決定される。次に、フレームスキャンインターバルの間に、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置でのオプテル90の得られたデジタル値が、イメージ処理システム80によって、フレーム94内に配置される。フレーム94のそれぞれのオプテル90と関連するデジタル値は、対応するフレームサンプルインターバルにわたって、イメージすべき対象物の特定の位置から、検出装置28によって受け取られた赤外線の絶対温度を示すのが望ましい。
【0023】
図4および図1〜図3に示したように、赤外線イメージカメラ4では、例えば、5分のイメージングインターバルにわたってイメージすべき対象物の、例えば、F1〜F200の複数のフレームを得るように構成されている。イメージ処理システム80において、それぞれのフレーム94が受け取られて、アッセンブルされた時に、データ送信機24を介して、イメージ処理システム80からワークステーション6に転送されるそれぞれのフレーム94が、調節部26によって生じるようになっている。医学分野に適用する際には、複数フレーム94のそれぞれの獲得が、イメージングインターバルにわたって対数的に生じて、イメージングインターバルの後の方で発生する隣接するフレーム94の獲得の発生
が増加することが好ましい。しかしながら、隣接するフレーム94の獲得は、所望の方法で、固定するか、または変動するようにすることができる。
【0024】
説明目的のため図5および図1〜図4に示したように、それぞれのフレーム94の同様のオプテル90で得られた温度を、例えば、曲線100〜106のような温度−時間曲線で示すことができる。例えば、温度−時間曲線100は、図4に示されたフレームF1〜F200の位置X3,Y3でのオプテル90の温度対時間を示している。同様に、温度−時間曲線102、104および106は、図4に示されたフレームF1〜F200の位置X3,Y7;X10,Y3;および位置X10,Y7でのオプテル90の温度対時間を示している。
【0025】
複数のフレーム94が、イメージングインターバルにわたって得られた時には、それぞれのフレーム94のほぼ同じオプテル90について、それぞれの温度−時間曲線の積分(または積分値)が、ワークステーション6によって決定される。それぞれの積分は、例えばフレームF1とフレーム200とのサンプリングの間のような、特定の時間インターバルに亘る時間について決定される。あるいは、それぞれの積分は、例えばフレームF85〜F150、フレームF85〜F150間のあらゆる他のフレームのような、特定の複数のフレーム94のサブセットについて決定され得る。例えば、それぞれのフレーム94の同様な位置でのオプテル90から、または、例えば、フレームF85〜F150のような、ある選択された複数のフレーム94から、例えば、100、102、104および106のような温度−時間曲線それぞれの時間についての積分が、ワークステーション6によって決定される。例えば、温度−時間曲線それぞれの、フレームF1がサンプリングされる時間t0からフレームF200がサンプリングされる時間t1までの積分が、ワークステーション6によって決定される。その他の例としては、温度−時間曲線それぞれの、フレームF85がサンプリングされる時間t0からフレームF150がサンプリングされる時
間t1までの積分が、ワークステーション6によって決定される。
【0026】
ワークステーション6は、表示する目的のために、例えば、100〜106のようなそれぞれの温度−時間曲線の積分値を特有の色にマッピングするようになっている。腫瘍性乳房組織の早期確認のための医学分野での適用においては、最も小さな積分値を有する曲線に青色がマッピングされ、最も大きな積分値を有する曲線に赤色がマッピングされるのが望ましい。最も大きい積分値と、最も小さい積分値との間の積分値を有する曲線には、赤色と青色との間の色がマッピングされる。例えば、図5において、フレームF85とフレーム150との間では、最も小さい積分値を有する温度−時間曲線100には、ワークステーション6によって、青色がマッピングされる。また、ワークステーション6によって、温度−時間曲線102には緑色がマッピングされ、温度−時間曲線104には黄色がマッピングされる。さらに、最も大きい積分値を有する温度−時間曲線106には、ワークステーション6によって、赤色がマッピングされる。
【0027】
次に、全視覚領域(tFOV)92のそれぞれのオプテル90またはオプテル90群の位置が、ディスプレイ12の対応するピクセルまたはピクセル群に、ワークステーション6によってマッピングされる。例えば、100〜106といった、温度−時間曲線それぞれの一部または全ての積分値に色がマッピングされると、ワークステーション6は、それぞれの温度−時間曲線の積分値についてのマッピングされた色が、全視覚領域(tFOV)92の対応するオプテル90の位置に相当する位置を有する、ディスプレイ12のピクセル上またはピクセル群上に表示されるようにする。このようにディスプレイ12にマッピングされた色によって、積分値のカラー勾配マップイメージが、ディスプレイ12上に形成される。
【0028】
また、ワークステーション6は、それぞれの温度−時間曲線の積分値を、幾つかの選択
した複数フレーム94について、グレーのスケールに対してマッピングし、グレースケール勾配マップイメージを形成することができるようになっている。上記グレースケールは、白色について最も大きい、または最も小さい積分値と、黒色について最も大きい、または最も小さいその他の積分値との間に、範囲を広げるのが望ましい。またワークステーション6は、所定の積分値よりも小さいか、または大きい積分値を有する、幾つかの選択された複数フレーム94にわたる温度−時間曲線のそれぞれを、グレースケールにマッピングすることができる。さらに、それぞれのフレーム94、または複数の選択されたフレーム94のデータは、当該技術分野で知られているように、グレースケール、および/またはカラー勾配マップイメージのディテールを強調するために、フィルターしたり、増幅することができる。
【0029】
本発明は、乳房の腫瘍の早期発見に特に適用でき、より詳細には、乳房の中で成熟する新生物のプロセスに関連した新しい血管形成の検知に適用することができる。特に、乳房の腫瘍が成長するにつれて、血管形成として知られているプロセスが生じて、腫瘍性の病巣または初期の腫瘍が、独立した血液の供給を発達させることが知られている。新しい血管形成によって形成された血管は、身体の交感神経系あるいは自律神経系には反応しないことが観察されている。したがって、新しい血管形成が、身体内の同じ器官内の隣接する部位の反応に一致した外的な熱的ストレスに応じた応答を示す結果として、外的な熱的ストレスに反応して、身体内の部位には、血液が供給される。このような血液の供給は、新しい血管形成の結果による血液供給ではない。皮膚の部位からの時間とともに照射された赤外線は、様々な構造と体系の組織的なレベル、例えば、細胞、組織、器官、および/または、システムにおいて、基礎となっている生理学のプロセス、生化学のプロセスおよび神経学上のプロセスに対して、マッピングすることができる。身体内の新しい血管形成の組織部位と関連した皮膚の部位からの赤外線は、新しい血管形成と何ら関連しない血液の供給を有しない身体の皮膚の部位からの赤外線と比較した場合に、かなり相違することがわかる。
【0030】
赤外線イメージシステム2を用いた、温度−時間曲線と、それぞれの温度−時間曲線の積分についての情報を獲得する上記の方法によって、本発明によれば、新しい血管形成の存在を確認できるとともに、乳房の内部のそのような血管形成の位置についての重要なデータを得ることができる。したがって、本発明によれば、患者が活発な腫瘍のプロセスが進行中であることの早期発見、または患者の腫瘍が既に罹患していることを早期に確認することができる。
【0031】
さらに別の本発明の適用としては、皮膚から発散された赤外線を調べて、赤外線が統計学的にかなりの過度な異常な部位、または、赤外線が統計学的に不足する異常な部位と同様に、アニゴソーム(anigosome)、サーマトームス(thermatomes)を確認する数理学的および統計学的な方法に適用できる。このような赤外線は、赤外線の様々な組織的なレベル、例えば、細胞、組織、器官、および/または、システムにおいて、基礎となっている生理学のプロセス、生化学のプロセスおよび神経学上のプロセスに対して、マッピングすることができる。このような情報は、例えば、鍼(はり)療法、指圧療法、または、例えば、治療力のある赤外線または無線周波数エネルギーのような外的な電磁気放射などの代替えの治療法によって、慢性的な痛みを治療、特に、筋膜性の痛みを治療する際において特に価値がある。
【0032】
アニゴソームおよびサーマトームスを確認する目的で本発明を適用することによって、「西洋」医学の開業医が、例えば、鍼(はり)療法、および指圧療法などの「東洋」医学または「オリエンタル」医学の治療技術を効果的に用いることができる。そして、「東洋」医学または「オリエンタル」医学の開業医が、「西洋」の健康ケアープロバイダーに、開業医の所見と技術を伝えることができる。
【0033】
図6および図1〜図5に示したように、乳房114の検査の際に、患者Pから受け取る
赤外線から得られた情報を参照して本発明を説明する。患者Pは、垂直軸113から角度
θ傾斜した背部112を備えたベンチまたは椅子110に座っているか、または、患者P
は、立った状態で、傾斜ボード(図示せず)に寄りかかっていることが望ましい。角度θを選択することによって、それぞれの乳房114の下側が、望ましくは赤外線イメージカメラ4の全視覚領域(tFOV)92内にあるようになっている。乳房114の横方向の領域と、腋の下の領域との赤外線イメージングを可能とするために、患者Pは、腕を横方向に
移動して、身体から離れた頭の方に移動させ、サポート115上に、ひじと前腕を支持している。赤外線イメージカメラ4は、患者Pから離間して配置され、これにより、患者Pの前部の胸の全領域C、および、特に、患者の乳房114が、赤外線イメージカメラ4の全
視覚領域(tFOV)92内にあるようになっている。赤外線イメージカメラ4は、患者Pの
乳房114と隣接する胴部116とが、全視覚領域(tFOV)92の大部分を占めるように配置するのが望ましい。しかしながら、赤外線レンズ32は、患者Pの特定の限られた領
域を光学的にズームするように調整することができ、これによって、このような選択した領域から赤外線を受け取ることができる。
【0034】
本発明では、赤外線レンズ32を用いた光学的なズームによって、患者Pの選択された
領域からの赤外線が分離されて獲得される。しかしながら、オプテル90それぞれによって見える患者Pの表面領域は増加しない。光学的なズームによって、オプテル90のより
小さなアレーにわたる赤外線イメージを受け取ることにより、イメージングされる患者P
の一部分サブセットにおいてイメージの解像度を改善することになる。
【0035】
患者Pと赤外線イメージカメラ4との間の距離は、重要な生理学的情報を得るために、
赤外線レンズ32の焦点距離と、全視覚領域(tFOV)92内にあるべき患者Pの領域との
間の条件(トレードオフ)として選択される。この目的のために、赤外線レンズ32は、全視覚領域(tFOV)92内でイメージングされる患者Pの全ての部分が焦点内にあるよう
に構成するのが望ましい。赤外線イメージカメラ4の赤外線レンズ32は、検出装置28によって見ることのできるそれぞれのオプテル90の寸法よりも小さい錯乱円に沿った長い焦点距離と回折限界とを有するように構成するのが望ましい。このような組み合わせによって、赤外線イメージカメラ4は、被写界深度を有しており、これによって、患者Pの
サブ部分のそれぞれが、赤外線イメージカメラ4から離間しているにもかかわらず、全視覚領域(tFOV)92内に患者Pのそれぞれの部分を焦点合わせすることができる。
【0036】
患者Pとベンチ110は、患者Pが衣服を脱いだ際に快適な周囲温度を有する部屋118内に収容されている。ベンチ110に患者Pが座ってから適当な時間の後、患者Pに何らの熱的ストレスがかかっていない状態で、患者Pから受け取られる赤外線によって示される
絶対温度に対応したデジタル値のフレーム94の獲得が、赤外線イメージカメラ4によって開始される。外部の熱的なストレスがかけられる前に、充分な「ベースライン」の情報を獲得するために必要なフレームの数と時間の長さが、人の操作者によって、または獲得されたデータのコンピュータ分析によって自動的に決定される。熱的なストレスが存在しない状態でフレーム94の所望の数が得られた後に、患者Pは、患者Pの正面に配置された1つまたはそれ以上の加熱/冷却ポンプ122からの調整された空気流120に晒される
。この1つまたはそれ以上の加熱/冷却ポンプ122は、実質的に均一な調整された空気
流を供給して、一定の試験プロトコールに基づいて、略一定の割合で全視覚領域(tFOV)92内の患者Pの部分を、冷却、または、暖めるように配置される。加熱/冷却ポンプ1
22から患者Pに供給される調整された冷却空気流120の温度は、部屋118の周囲温
度とは異なっているが、患者Pにとってその場合にも快適であることが望ましい。周囲の
部屋の温度よりも10°Fだけ低い温度に調整された空気流120の温度によって、患者Pの所望の交感神経反応が生じることが観察されている。
【0037】
しかしながら、一定の臨床条件では、皮膚の表面に血液がより流れるようにするために、冷却する前に、それぞれの乳房114を暖めるのが適切である。また、患者Pは、周囲
の環境条件の結果、既に血管収縮が生じていないのが適切である。例えば、加温から冷却、および冷却から加温のような、熱的ストレスの変化に応じて、患者Pから受け取られる
赤外線から、追加の重要な情報を得ることができる。これらの熱的ストレスの変更によって、下にある組織や器官の一定の生理学的プロセスに関連した特定の皮膚の赤外線放射における一種の生理学的ヒステリシスを提供することができる。
【0038】
例えば、加熱/冷却ポンプ122によって、調整された空気流120が患者Pに当初に
供給され、赤外線イメージカメラ4によって、患者Pの乳房114の複数のフレーム94
が獲得される。根底に存在するある生理的なプロセスにより、加温/冷却サイクルの際にそのようなプロセスと関係する皮膚の領域からの赤外線の変化が表出される。これにより、これらの特定領域に関係するオプテル90から受け取った赤外線の積分値と、より応答性の小さな組織に関係するオプテル90からの赤外線の積分値との間での統計学的な有意差が導かれることになる。この積分値の相違は、グレースケール、および/またはカラー勾配マップイメージの相違として、ディスプレイ12上に表示することができる。また、下方にある構造および組織の三次元的イメージを、獲得したデータから現すことができる。
【0039】
ある磁性材料に関係するヒシテリシスの特徴と特性に類似した、組織の特徴と特性の結果として、加温の後に冷却する「加温と冷却」サイクル、および/または、冷却の後に暖める「冷却と加温」サイクルから構成される熱的ストレスにより、例えば患者Pの乳房114のように、血管新生の活性と関係する組織領域を同定する、赤外線イメージシステム2の能力が向上する。
【0040】
加熱/冷却ポンプ122からの調整された冷却空気流120を受けることに反応する患者Pの交感神経系によって、患者Pの冷却された皮膚表面領域への血流が限定される。し
かしながら、交感神経系は、新しく血管形成されたか、または血管形成が開始されている、患者Pの組織への血流を限定するものではないことが観察されている。したがって、血
液の供給が、新しい血管形成または血管形成の進行に関係する、患者Pのそれらの組織ま
たは器官と関連した患者Pの皮膚領域からの赤外線は、調整された冷却空気流120に対
して、患者Pの他の組織と同じようには反応しない。図5および図7に示したように、例
えば、調整された冷却空気流120による患者Pの冷却に応答して、全視覚領域(tFOV
)92の位置X3,Y3でのオプテル90で見られる患者Pの皮膚表面領域は、フレームF4とフレームF200との間における温度−時間曲線100を生み出す。同様に、調整された冷却空気流120による患者Pの冷却によって、位置X3,Y7;位置X10,Y3;および位置X10,Y7でのオプテル90で見られる患者Pの皮膚表面領域は、フレームF4とフレームF200との間における、それぞれ温度−時間曲線102、104、および106を生み出す。
【0041】
図5に示したように、フレームF85とフレームF150との間において、曲線104と曲線106は、曲線100と曲線102よりも、変化率が小さく示されている。この変化率における相違は、位置X10,Y3と位置X10,Y7でのオプテル90に見られる患者Pの皮膚表面領域が、位置X3,Y3と位置X3,Y7でのオプテル90に見られる患者Pの皮膚表面領域のように、冷却空気流120による冷却に応答していないことを示している。フレームF85とF150の間で各曲線102〜106の積分をとることにより、積分値が得られる。ここで、曲線106の積分値は曲線104の積分値よりも大きく、曲線104の積分値は曲線102の積分値よりも大きく、曲線102の積分値は曲線100の積分値よりも大きい。これによって、全視覚領域(tFOV)92内の患者Pの組織が
、血管形成が開始されているか、または、新しい血管形成の結果として血液が既に供給されたことを示すことができる。
【0042】
血管形成または血管形成の進行についての情報を提供できることに加えて、本発明によれば、交感神経系によってその血流が調整されている、いかなる組織、器官、または生理学的組織についての活動についての重要な情報を提供することもできる。
【0043】
ヒト乳房の腫瘍疾患の早期発見の特定のケースにおいては、例えばフレームF85のような開始のフレーム94と、全視覚領域(tFOV)92内のそれぞれの位置におけるオプテル90の、温度―時間曲線の積分を検出するのに用いられるフレーム94の数とは、ディスプレイ12上のイメージを表示するために、所望により変更できるようにすることが望ましい。例えば、図5に示したように、それぞれの温度−時間曲線100、102、104および106の積分は、フレームF85とフレームF150との間で決定される。しかしながら、それぞれの温度−時間曲線100、102、104および106の積分は、所望であれば、フレームF100とフレームF125との間、フレームF20とフレームF85との間、フレームF75とフレームF175との間で検出することができる。
【0044】
さらに、グレースケールをマッピングするために用いたデジタルビットの数、および/または、図5に示した、各々の温度−時間曲線の積分に対するカラーを変えることもできる。例えば、イメージA/D変換器78が、12ビットのアナログ・デジタル変換器であれば、グレースケール、および/またはカラー勾配マップイメージを、イメージA/D変
換器78の全12ビットレンジよりも少なくマッピングすることができる。例えば、ワークステーション6は、それぞれの温度−時間曲線の積分を、基本の10個の番号800〜1600に対応したデジタル値の範囲にマッピングすることができる。これによって、ディスプレイ12が、ほとんどないかまたはない診断値を即座に表示するのが避けられる。しかしながら、そのような情報が、患者のデータベースに保持された患者の記録から消失しないようになっている。
【0045】
図8a〜図8bはそれぞれ、患者Pの乳房114のカラー勾配マップイメージの黒白の描写と、患者Pの乳房114のグレースケールと黒白に描写されたカラー勾配マップイメージの組み合わせを示している。フレーム94の獲得はイメージングインターバルにわたって生じるので、温度−時間曲線は、皮膚表面の温度だけでなく、患者Pの乳房114全体の組織体からの、時間を通しての赤外線を示す。図8aに示したカラー勾配マップイメージによって、加熱/冷却ポンプ122からの調整された空気流120に対する患者Pの乳房114の交感神経反応に関する詳細な情報が提供されることがわかる。このカラー勾配マップイメージにおいては、スペクトルの青色末端方向のカラーは、例えば、図5の曲線100のような、より小さい積分値を有するオプテル90と関連している。また、赤色で示した領域は、例えば、図5の曲線106のような、より大きな積分値を有するオプテル90と関連している。図8aに示したカラー勾配マップイメージの緑色と、黄色と、オレンジ色は、図5の温度−時間曲線100と106の積分値の間における積分値を有する温度−時間曲線と関連している。
【0046】
図8bにおいて、赤色と関連する積分値よりも小さい積分値を有する温度−時間曲線と関連しているオプテル90を有する全視覚領域(tFOV)92の領域が、グレースケールにマッピングされている。そして、赤色に対応する積分値を有する温度−時間曲線が、赤色のシンボルで示されている。より詳細には、図8bのグレースケールと黒白で描写されたカラー勾配マップイメージの組み合わせが、イメージングインターバルにわたって獲得された最後の32個のフレーム94のグレー勾配マップイメージと、同じ最後の32個のフレーム94のカラー勾配マップイメージとを組み合わせることによって形成される。最後の32個のフレーム94における同様のオプテル90の積分値をグレースケールにマッピ
ングすることによりグレースケール・イメージが形成され、図8bのグレースケール・マップイメージが形成される。赤色に関連したカラー勾配マップイメージのオプテル90が、グレースケール・マップイメージの同様なオプテル90に置き換えられる。このように作製されたグレースケール/カラー勾配マップイメージが、ディスプレイ12上に表示されて、図8bのグレースケール/カラー勾配マップイメージが作製される。図8bの赤色のシンボルで示された領域は、新しい血管形成の進行、または血管形成が生じたか、または生じている組織に関連しており、そのような組織はさらに検査が必要である。
【0047】
また、図8bのグレースケールと黒白で描写されたカラー勾配マップイメージの組み合わせは、患者P内の血管組織を明瞭に示しており、医師にとって診断値についてのさらなる情報を提供する。経験的に、図9に示したような、複雑な、または高度に不規則な血管組織を示す乳房114は疑わしいと考えられ、この患者Pは、血管組織がより規則的である場合よりも、乳癌にかかっている危険性がより大きいことを示している。乳房114の血管組織を検出してある程度詳細に表示することができるために、本発明によれば、乳癌のような腫瘍性疾患に関連した血管形成のプロセスを早期に発見することができる。また、乳癌のような腫瘍性疾患に関連した危険因子である解剖学的組織、または生理学的な特徴を早期に発見することができる。これにより、腫瘍が触診できるよりもかなり前に、ならびに患者Pが個人のライフスタイルにおいてとり得る変化が乳癌の進行を抑制することができるある時点で、患者Pが「ライフスタイル」の危険因子の排除といった、幾つかの行動をとることを可能にする。
【0048】
また、本発明は、複数の「心拍」サイクルの類似の時に獲得したフレーム94を比較することにより、患者Pの血液を決定するために利用することができる。特に、赤外線イメージカメラ4によるそれぞれのフレームの獲得は、患者Pの心拍サイクルの特定部分に同期することができる。例えば、フレームF1,F6,F11などは、複数の心拍サイクルのそれぞれのP波の間に獲得することができる。また、フレームF2,F7,F12などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのQ波の際に獲得することができる。フレームF3,F8,F13などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのR波の間に獲得することができる。フレームF4,F9,F14などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのS波の間に獲得することができる。さらに、フレームF5,F10,F15などは、複数の同じ心拍サイクルのそれぞれのT波の際に獲得することができる。全イメージ獲得シリーズを通じて、「タイムコード」として、患者P自身の心拍サイクルの要素を用いることによって、より効果的な数学的なイメージ処理方法と正確性が向上した分析を行うことができる。さらに、例えば、心電図のような、定評のあるグラフィック表示表現を用いた、心拍のような明瞭に定義された電気生理学方法によって、異なる検査中に得られたイメージ・シリーズとの比較が向上され、同じ患者または異なる患者の多数の検査において獲得されたデータの統計的解析の効率が改善される。
【0049】
所望の複数のフレーム94が、所望の複数の心拍サイクルにわたって獲得された場合、ワークステーション6は、同様のオプテル90について、それぞれの心拍サイクルの特定の瞬間に関するフレーム94にて、積分値を決定する。例えば、ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、フレームF1、F6、F11など、すなわち複数の心拍サイクルのP波の間に獲得されたフレームにおける積分値を決定する。また、ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、フレームF2、F7、F12など、すなわち複数の心拍サイクルのQ波の間に獲得されたフレームにおける積分値を決定する。さらに、ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、複数の心拍サイクルのR波、S波およびT波の間に獲得されたフレームにおけるものも同様にする。
【0050】
ワークステーション6は、同様のオプテル90に関する、複数の心拍サイクルの同様の瞬間に獲得されたフレーム94における積分値を、上述した方法において灰色の濃淡およ
び/または色彩へマッピングをする。したがって、ワークステーション6は、マッピングされた灰色の濃淡および色彩を、全視覚領域(tFOV)92において対応する1つのオプテ
ルまたは複数のオプテル90に対応する位置を有する、ディスプレイ12のピクセル上またはピクセル群上に表示する。これによって、複数の心拍サイクルの同様の瞬間における積分値のグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージが形成される。例えば、ワークステーション6は、灰色の濃淡および/または色彩を、フレームF1、F6、F11などにおける同様のオプテル90の積分値にマッピングする。これによって、患者Pの複数の心拍サイクルのP波の間の血流に対応するグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージがディスプレイ12上に表示される。それとともにまたはその代わりに、ワークステーション6は、灰色の濃淡および/または色彩を、複数の患者Pの心拍サイクルのQ波、R波、S波またはT波に関連するフレーム94における同様のオプテル90の積分値にマッピングし、そのグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージをディスプレイ12上に選択的に表示する。
【0051】
複数の心拍サイクルの同様の瞬間に関連するフレーム94を単離することで、患者Pの皮膚表面と、様々な段階での血流からの赤外線の差異と、問題となっている組織の全体の位置とに相関性を持たせて、赤外線イメージカメラ4の全視覚領域(tFOV)92における患者Pの身体内の血流の定量的評価が可能となり、それにより、医者にとって有用な診断情報を提供することができる。信頼性のある一貫したタイムコードマーカー、例えば、患者P自身の心拍を利用することで、イメージの向上に関して数学的な手法を適用することができ、イメージシステム全体の全解像度を向上することができる。これによって、生きているヒトの身体および他の動物体内での、複雑な交感神経系伝達生理学的プロセスを、確認し、特徴付けし、評価する手段として、システムの感度および選択性の両方を改善することが可能となる。
【0052】
本発明は、2つのフレーム94に含まれるデジタル情報を引き算的に組み合わせることにより診断情報を得るためにも利用される。例えば、フレームF4のそれぞれの位置でオプテル90から得られたデジタル情報は、フレームF2におけるそれぞれの同様の位置で、オプテル90から得られた対応するデジタル情報から差し引くことができる。ワークステーション6は、同様の位置でのオプテル90について得られたこれらの差異を、グレースケールおよび/または色彩スケールへマッピングして、この差異のグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージをディスプレイ12上に作製することができる。
【0053】
図10について言及するとともに、図2〜図7に戻って言及すると、乳房114の赤外線イメージに伴う問題は、特定の患者Pにおいて、患者Pのもたれ掛かり角度θにもかかわらず、乳房114の下部124の赤外線イメージを取得することに関連する困難性である。同様に、赤外線イメージカメラ4が、図6に示した方法で、患者Pの正面に位置した場合、患者Pの腕126に隣接するそれぞれの乳房114の側面125の赤外線イメージは、赤外線イメージカメラ4を再度配置することなしでは容易に得ることができない。赤外線イメージカメラ4に、それぞれの乳房114の側面125と同様に、それぞれの乳房114の下部124と、腋窩の関連領域とを視覚可能にさせるために、胸板鏡130を患者Pの乳房114の下方に配置してもよく、側面鏡132を患者Pの乳房114の反対側の側面125に配置してもよい。胸板鏡130と側面鏡132は、それぞれの乳房114の下部124と、それぞれの乳房114の側面125と、腋窩の領域とが、全視覚領域(tFOV)92内に入るように配置され、かつ、それぞれの乳房114の下部124と、それぞれの乳房114の側面125とから、赤外線イメージカメラ4へ向かう赤外線を反射させるような方向に配置される。
【0054】
イメージ処理技術を用いることで、ワークステーション6は、乳房114から直接受けた赤外線と、鏡130および/または132により反射された赤外線から、乳房114の
グレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。鏡130、132、患者Pおよびその間の空間の間での遷移を検出するために、赤外線イメージカメラ4の能力を向上させるべく、それぞれの鏡130、132は、その1つまたはそれ以上のエッジ上に、人間もしくは他の動物または組織の放射率とは実質的に異なる放射率を有する、赤外線イメージカメラ4で視覚化可能な、材料片を有することができる。この特定の適用は、外因性の材質、例えば、化粧品などに対する真皮上の感受性を評価する際の特定の用途であり、また、例えば、局所的に適用された医薬のような材料の皮膚を通した吸収割合を決定するための手段を提供する。この特定の適用は、例えば、化粧品などの化合物および化学的な混合物に対して、人間と他の動物の真皮または皮膚の感受性の正確な定量と再現性ある決定方法を提供する。これによって、例えば「Draiz」試験のよう
な、論争を呼ぶ動物実験手順の必要がなくなることになる。本発明は、局所的に適用された薬剤と医薬の吸収または吸着の割合の正確な定量と再現性ある決定をも可能にし、さらに、論争を呼ぶ動物実験手順の必要性を回避できるものである。
【0055】
図7への言及に戻るとともに、図10への言及を継続すると、患者Pの全生涯にわたって拡張してもよい時間にわたる連続フレーム94の記録を可能にするために、鏡130、132からのフレーム94に正確な重ね合わせおよび統合を付与するために、および赤外線イメージカメラ4の軸外し位置調整のための釣り合いのとれた多様性に適応させるために、マーカー158を特定の固定化された解剖学上の標識点、例えば、肋骨上の切痕160と、剣状突起の連結162と、鎖骨下窩164と、前方腋窩線166と、肩峰168などに位置させることができる。マーカー158は、患者Pの放射率とは異なった放射率を有する材質から作られる。さらに、特定の有用な解剖学的な標識の特徴は、イメージ処理技術を用いて得られた情報から確認できる。ヒトの乳房に特に言及すると、哺乳類の脈管樹状構造の分岐の存在を、一定期間にわたるイメージ記録の手段として用いることができる。
【0056】
患者Pから直接受け取った赤外線と、鏡130、132から反射した赤外線から作製される正面、側面および/またはボトムアップイメージ、または三次元イメージを可能にする数々の手段がある。例えば、グリッド133は、赤外線イメージカメラ4の全視覚領域(tFOV)92において、ランプ134または他の熱源と、患者Pの部分との間に位置される。フレーム94を獲得した後の適当な時期に、ランプ134は作動され、これにより熱エネルギーが、全視覚領域(tFOV)tFOV92における患者Pの部分にグリッド133を
介して伝達される。ランプ134からの熱エネルギーの一部分は、グリッドにより吸収され、患者Pにランプ134からの熱エネルギーが、グリッド様パターンで受けることになる。ランプ134から直接受ける熱エネルギーは、患者P上で、赤外線パターン135を形成する。この赤外線パターン135は、患者P上で直接見たときにグリッド様であり、鏡130、132を介して見たときに、患者Pの輪郭となっている。同様に、鏡130、132を介して、ランプ134から受けた熱エネルギーは、患者P上で、反射された赤外線パターン135'を形成する。この赤外線パターン135'は、赤外線イメージカメラ4によって、鏡130、132を介して見るとグリッド様であるが、患者Pから直接見たときには患者Pの輪郭となっている。
【0057】
イメージ再作製技術を用いることで、ワークステーション6は、直接または鏡130、132を介して視覚可能である赤外線パターン135と135'から、乳房114の正面
、側面および/またはボトムアップのグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージ、または三次元グレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0058】
もう一つの態様において、患者Pは、赤外線イメージカメラ4により直接に、または鏡130、132を介して視覚可能なマーカー158が選択的位置に配置されたナイロン製
のブラジャー(図示せず)を身に着ける。ナイロンは赤外線に対して透過性であるため、ワークステーション6はブラジャー上のマーカー158の位置を用いて、直接にまたは鏡130、132を通じて視覚可能な赤外線パターンから、乳房114の正面、側面および/またはボトムアップのグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージ、または三次元グレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0059】
図11に言及するとともに、図2に戻って言及すると、赤外線イメージカメラ4は、立体イメージのために、X−Y位置決めステージ64上に配設された一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32を用いて構成することができる。この一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32は、X−Y位置決めステージ64上に配置し、赤外線を全視覚領域(tFOV)92において共通オプテル90から同時に見て、獲得する。X−Y位置決め
ステージ64を利用して、一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32とを調節して、赤外線をtFOV92においてそれぞれのオプテル90から見て、獲得することができる
。この態様において、プレアンプ76と、イメージA/D変換器78と、イメージ処理システム80とは、同じオプテル90から同時に、赤外線を受けたことに応答して、それぞれの検出装置28によって出力されたシグナルを処理するように構成されている。オプテル90について全視覚領域(tFOV)92内のそれぞれの位置で得られた二つのイメージ
は、ワークステーション6により組み合わされ、熱的ストレスにさらされた患者Pの組織の立体的なグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0060】
図12に言及するとともに、図2への言及を続けると、検出装置28は、フロントパネルビューポート44と、光学フィルター46と、赤外線レンズ32を通過する赤外線を受けるために配置された検出装置28のアレー148に置き換えることができる。この態様において、赤外線レンズ32は、「サイズアップ」され、そこで受ける赤外線の焦点を、検出装置28のアレー148に合わせるようにしており、これは「ステアリングアレー」148として公知であり、以後このように言うことにする。作動の際には、調節部26は、ステアリングアレー148のそれぞれの検出装置28の出力を実質的に同時に、すなわち同じフレームサンプルインターバルでサンプルして、図3に示したタイプの一つのフレーム94を形成する。調節部26は、ステアリングアレー148から、所定のインターバルで、複数のフレーム94を得る。図4、図5とともに上述した方法を用いることで、ワークステーション6は、オプテル90に関して、それぞれのフレーム94内の同様の位置で、イメージングインターバルにわたり、オプテル90で表される、患者Pの部分の熱的応答を得る。
【0061】
図13に言及するとともに、図11、図12に戻り言及すると、一対のステアリングアレー148と、一対の赤外線レンズ32を、図11に示したように、一対の検出装置28と、一対の赤外線レンズ32と同様の方法で用いて、患者Pの立体イメージを作製することができる。この態様において、一対のステアリングアレー148は、それぞれのオプテル90からの全視覚領域(tFOV)92における赤外線情報を受け取るように構成されて
いる。また、プレアンプ76と、イメージA/D変換器78と、イメージ処理システム80は、それぞれのステアリングアレー148から受け取ったイメージデータを処理するように構成されている。オプテル90について全視覚領域(tFOV)92のそれぞれの位置で一対のステアリングアレー148から得た二つのイメージは、ワークステーション6により組み合わせられ、熱的ストレスにさらされた患者Pの組織の立体的なグレースケールおよび/またはカラー勾配マップイメージを作製することができる。
【0062】
図11に示した態様において、それぞれの検出装置28は、異なる波長での赤外線を検出するように構成することができる。例えば、一方の検出装置28を1〜2ミクロン間の
赤外線波長を検出するように構成し、他方の検出装置28を8〜12ミクロン間の赤外線波長を検出するように構成することができる。さらに、特定の波長での赤外線を検出するように構成されたそれぞれの検出装置28は、図11に示したような方法で、もう一方の同様な検出装置28と対をなして、異なる波長での赤外線の立体イメージを作製することができる。それぞれの検出装置28は、もう一方の検出装置28から、それぞれの検出装置28により視覚化可能なオプテル90のサイズよりも大きな距離をおいて離すことが望ましい。
【0063】
イメージングインターバルにわたって得られた患者Pの熱的イメージの複数のフレーム94を、後に続くローカルなデータ取出および解析のために、患者データファイルにてワークステーション6の不揮発性メモリ、例えば磁気的または光学的データメモリに蓄積することが望ましい。患者データファイルは、後に続くローカルなデータ取出および解析のために、複数の患者データファイルを蓄積する分配データシステムに送信してもよい。この分配データシステムは、異なる地理的位置に公知の技術、例えばインターネットなどの方法で相互接続された複数のコンピュータを有することが好ましい。それぞれの接続コンピュータは、ローカルな地理的位置で作られた複数の患者データファイルを受け取り、蓄積するための不揮発性メモリと、好適なシステム操作ソフトウェアと、好適なグラフィックユーザインタフェースを備えている。これによって、コンピュータを使ってユーザー相互の作用が容易となる。それぞれの患者データファイルが、イメージングインターバルにわたって得られた赤外線イメージデータのフレーム94と、例えば、生活習慣と、臨床履歴と、他のリスク要因のような、患者が乳ガンを進行させるリスクにあるか否かの解析に関連する他の患者のデータを含むことが望ましい。また、それぞれの患者データファイルは、前記分配データシステムのコンピュータ間で分配される、リレーショナルデータベールにおいて独自のオブジェクトとして蓄積されることが望ましい。
【0064】
前記分配データシステムのシステム操作ソフトウェアは、複数の患者データファイル、または複数の患者データファイルのサブセットを解析可能な専門のシステムをサポートすることが望ましい。この専門のシステムは、公知の解析技術、例えば、数理統計解析、判別解析または要因解析を用いて、複数の患者Pのデータファイルを解析し、または統計学上の不一致、例えば乳房の腫瘍性プロセスが成熟することと関連する血管形成の指標のために、個々の患者Pのデータファイルを複数の患者Pのデータファイルと比較することが特に望ましい。専門のシステムは、複数の患者Pのデータファイルにおいて、取得された患者Pのデータを、他の全ての患者Pのデータと一様に比較して、統計的に有意な関係および関連、例えば、血管形成活性の出現または腫瘍性疾患の臨床的な明示に関連するリスク要因などを同定することが望ましい。
【0065】
ここで述べたIRイメージのための方法および装置は、伝統的な痛み処置のモダリティ、例えば理学療法およびカイロプラクティック処置、および非伝統的な痛み処置モダリティ、例えば指圧療法および刺鍼術法の双方の有効性のモニタおよび客観的な定量の手段として用いることができる。さらに、この方法および装置を用いて、ある痛み処置のモダリティ、例えば指圧療法刺鍼術法、マッサージ療法、トリガー点注射、増殖療法および合焦電磁波エネルギー、例えば赤外線の適用などに関する適用の適切なポイントを決定することができる。
【0066】
軟組織損傷の見積もりにおいて、ここで述べたIRイメージ法および装置を用いて、身体全体にわたる皮膚または問題となっているより小さな領域からの一定期間にわたる赤外線のイメージ列を、ソフトウェアによる複合イメージの創造の第1の表面鏡を含む様々な手段により得ることができる。
【0067】
検出装置28および/またはステアリングアレー148から得られたデータを利用して
、対側筋群、ダーマトームおよびサーマトームの対称軸を決定することができる。統計的方法を利用して、比較可能な対側領域からの赤外線において統計的に有意な差があるか否かを決定することができる。もしそうならば、解析を継続して、それぞれの対側群内の対称領域間で統計的に有意な差があるか否かを決定する。
【0068】
例えば、左腕との比較を行った際に、右腕に関連する皮膚表面から放出されたIRエネルギーにおける統計的に有意な差は、単に患者Pが右利きであることを支持するであろう。しかしながら、二頭筋群および三頭筋群の内部対称についての考慮に基づくそれぞれの腕の単独のさらなる統計的解析、例えばそれぞれの比較可能な筋群内の内部対称関係の解析および比較は、「利き腕」の効果を評価する。この分析方法は、広い平坦な筋領域、例えば僧帽筋、広背筋群および他の背中の領域に関連する痛みの訴えを扱う際に非常に重要である。
【0069】
対側筋群、ダーマトームおよびサーマトームの多数の対称軸の正確な位置は、一連の期間での連続イメージの正確な記録および処置の有効性の定量的な見積もりを可能にする。赤外線データを表面の解剖学上の標識点にマッピングすること、およびリアルタイムでこの情報を健康管理医にディスプレイすることは、処置の効能および有効性を向上させることができる。
【0070】
本発明を好ましい態様に言及して説明した。自明な変更および選択は、前述した記載を読むこと、かつ、理解することによって思いつくものである。添付した請求項およびそれと等価なものの範囲で思いつく限り、本発明はそのような変更および選択の全てを包含するものとして解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、赤外線イメージカメラを含む赤外線イメージングシステムのブロック図である。
【図2】図2は、1つの選択的な位置決めが可能な赤外線検出装置を含む図1の赤外線イメージングカメラのブロック図である。
【図3】図3は、フレームを形成する光学素子アレーを含む図2の赤外線イメージカメラによって視覚可能な全視覚領域(tFOV)を表わすフレームの概略図である。
【図4】図4は、図2の赤外線イメージカメラを用いて得られた温度対時間の関係を表わす複数のフレームの概略図である。
【図5】図5は、図4に示した複数のフレームのそれぞれから同じ4つの光学素子によって受け取られた赤外線から決定した温度対時間の関係を表わす曲線グラフである。
【図6】図6は、加熱/冷却ポンプによって熱的ストレスにさらされた患者の赤外線イメージのフレームを得るために配置された図2の赤外線イメージカメラの概略図である。
【図7】図7は、図5に示した温度−時間曲線を作成するための赤外線が得られる、視覚領域内の、患者に当てられた4つの光学素子の位置を含むVII−VIIの線に沿った図6における患者の図である。
【図8】図8aは、患者の胸部のカラー勾配マップイメージの色を模様で区別した白黒描写図であり、複数のフレームにわたる視覚領域内におけるそれぞれの位置の光学素子に関連したそれぞれの温度−時間曲線が、温度−時間曲線の勾配の積分に基づいた色にマッピングされている。図8bは、図8aに示された患者の胸部のグレースケール・マップであり、赤色に関連した温度−時間曲線の積分よりも大きな積分を持つ温度−時間曲線が、それぞれの積分に応じて灰色の濃淡にマッピングされ、赤色は赤色の模様で区別されている。
【図9】図9は、ギザギザに曲がった形状の脈管構造を持つ別の患者の胸部のグレースケール・マップである。
【図10】図10は、患者の胸部下方の鏡と胸部の両側面の鏡とを含む、図7に示す患者の概略図である。
【図11】図11は、立体映像的イメージを得るための一対の検出装置と一対の赤外線レンズの独立した概略図である。
【図12】図12は、赤外線析出装置のステアリングアレーを含む、図1の赤外線イメージカメラのブロック図である。
【図13】図13は、立体映像的イメージを得るための一対の赤外線レンズと一対のステアリングアレーの独立した概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の赤外線(IR)イメージを作製する方法であって、
(a)赤外線イメージカメラにより視覚可能な視覚領域において、光学素子(オプテル)のアレーからの赤外線を受けるように構成された赤外線イメージカメラを配置する工程と、
(b)前記視覚領域におかれた患者からの複数の赤外線フレームを獲得する工程であって、それぞれのフレームが、対応するフレームサンプルインターバルの間に獲得され、かつ、それぞれのフレームが、そのフレームサンプルインターバルの間に、オプテルのアレーから取得した赤外線に対応するように、前記複数の赤外線フレームを獲得する工程と、
(c)前記アレーから受け取った赤外線の複数の積分を、それぞれの積分が、同じオプテルから少なくとも二つのフレームにおいて受け取られた赤外線に対応するように決定する工程と、
(d)それぞれの積分を彩色または灰色の濃淡にマッピングする工程と、
(e)前記それぞれの積分の彩色または灰色の濃淡を、前記視覚領域内の対応するオプテルの位置に対応するイメージ内の位置にマッピングする工程と、
を有する方法。
【請求項2】
前記複数のフレームがイメージングインターバルにわたって獲得され、 前記それぞれ
のフレームの獲得が固定されるか、または変動可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、絶対温度について、それぞれのオプテルから獲得された赤外線を調節する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)が、フレームサンプルインターバルの間に、視覚領域においてそれぞれのオプテルからの赤外線を連続的に獲得する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(b)が、視覚領域において全オプテルから実質的に同時に赤外線を獲得する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)が、
患者を周囲温度の空気にさらす工程と、
フレームの獲得を開始する工程と、
前記患者を、前記周囲温度とは異なる温度で調節された空気流にさらす工程と、
イメージングインターバルの後にフレームの獲得を終了する工程と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に接して、および前記視覚領域内に、少なくとも一つのマーカーを配置する工程であって、前記少なくとも一つのマーカーが、患者の放射率とは異なる放射率を有することを特徴とする工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのマーカーが、前記患者の固定された解剖学的な位置に配置されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者に隣接した視覚領域に、
少なくとも一つの鏡を配置する工程と、
前記少なくとも一つの鏡を、前記視覚領域内であるが、前記患者のもう一つの部分によって前記赤外線イメージカメラから隠された前記患者の部分から、前記赤外線イメージカ
メラへと赤外線を反射させるように向きを合わせる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記赤外線イメージカメラと前記患者との間にグリッドを配置する工程と、
熱的エネルギーを、前記グリッドを介して患者に伝達する工程と、
前記患者から、および前記少なくとも一つの鏡から、直接赤外線のフレームを獲得する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者から直接獲得した赤外線と、前記少なくとも一つの鏡から獲得した赤外線から、前記患者の三次元イメージを作製する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
(i)患者内の腫瘍性疾患プロセスの検出と、
(ii)患者内の血管形成の検出と、
(iii)患者内の痛み処理の治療モダリティのための処置部位の確認、のうちの一つま
たはそれ以上に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
赤外線イメージング装置であって、
前記イメージング装置の視覚領域を形成する光学素子(オプテル)のアレーのそれぞれのオプテルから赤外線を検出する検出手段と、
複数の赤外線フレームのそれぞれのフレームが、一つのサンプルインターバルの間に、アレーの全部のオプテルから獲得した赤外線に対応するように、同様な複数のサンプルインターバルにて、前記アレーから前記複数の赤外線フレームを選択的に獲得するように、前記検出手段を制御するための制御手段と、
前記アレーから検出手段により受け取った赤外線の複数の積分を、それぞれの積分が、同じオプテルから少なくとも二つのフレームにおいて受け取られた赤外線に対応するように決定するための手段とを備え、
前記決定するための手段が、
それぞれの積分を色彩または灰色の濃淡にマッピングし、
それぞれの積分の色彩または灰色の濃淡を、前記視覚領域におけるオプテルに対応した位置に対応するイメージ内の位置に、マッピングするように構成されている
ことを特徴とする赤外線イメージング装置。
【請求項14】
それぞれのオプテルが、前記検出手段により処理可能な、視覚領域内における最も小さな素子に対応するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
それぞれのオプテルから獲得した赤外線を、対応するデータに変換する変換手段をさらに備え、前記決定手段が、それぞれのフレームのそれぞれのオプテルから獲得した赤外線に相当するデータから、少なくとも二つのフレームにおいて同様のオプテルに関する積分を決定するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記複数のフレームがイメージングインターバルにわたって獲得され、
前記それぞれのフレームの獲得が固定されるか、または変動可能であるように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
複数のフレームのそれぞれの獲得が、イメージングインターバルにわたって対数的に発生し、
前記獲得が、イメージングインターバルにおいて後に増加するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも二つのフレームが少なくとも一つのフレームにより分割されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記獲得フレームが、前記視覚領域に収容された患者の心拍サイクルと同期し、
前記少なくとも二つのフレームが、二つの異なる心拍サイクルの同様な部分の間に獲得されるように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記視覚領域に収容された患者に隣接して配置された少なくとも一つの鏡をさらに含み、
前記少なくとも一つの鏡が、前記視覚領域に収容され、
前記少なくとも一つの鏡が、前記視覚領域内であるが、患者のもう一つの部分により前記検出手段から隠された前記患者の部分から赤外線検出手段に向かって赤外線を反射させるように向けられていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項21】
(i)腫瘍性疾患プロセスの検出と、
(ii)血管形成の検出と、
(iii)痛み処理の治療モダリティのための処置部位の同定
のうちの一つまたはそれ以上のために患者に利用されることを特徴とする請求項14に記載の赤外線イメージング装置。
【請求項1】
患者の赤外線(IR)イメージを作製する方法であって、
(a)赤外線イメージカメラにより視覚可能な視覚領域において、光学素子(オプテル)のアレーからの赤外線を受けるように構成された赤外線イメージカメラを配置する工程と、
(b)前記視覚領域におかれた患者からの複数の赤外線フレームを獲得する工程であって、それぞれのフレームが、対応するフレームサンプルインターバルの間に獲得され、かつ、それぞれのフレームが、そのフレームサンプルインターバルの間に、オプテルのアレーから取得した赤外線に対応するように、前記複数の赤外線フレームを獲得する工程と、
(c)前記アレーから受け取った赤外線の複数の積分を、それぞれの積分が、同じオプテルから少なくとも二つのフレームにおいて受け取られた赤外線に対応するように決定する工程と、
(d)それぞれの積分を彩色または灰色の濃淡にマッピングする工程と、
(e)前記それぞれの積分の彩色または灰色の濃淡を、前記視覚領域内の対応するオプテルの位置に対応するイメージ内の位置にマッピングする工程と、
を有する方法。
【請求項2】
前記複数のフレームがイメージングインターバルにわたって獲得され、 前記それぞれ
のフレームの獲得が固定されるか、または変動可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、絶対温度について、それぞれのオプテルから獲得された赤外線を調節する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)が、フレームサンプルインターバルの間に、視覚領域においてそれぞれのオプテルからの赤外線を連続的に獲得する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(b)が、視覚領域において全オプテルから実質的に同時に赤外線を獲得する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)が、
患者を周囲温度の空気にさらす工程と、
フレームの獲得を開始する工程と、
前記患者を、前記周囲温度とは異なる温度で調節された空気流にさらす工程と、
イメージングインターバルの後にフレームの獲得を終了する工程と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に接して、および前記視覚領域内に、少なくとも一つのマーカーを配置する工程であって、前記少なくとも一つのマーカーが、患者の放射率とは異なる放射率を有することを特徴とする工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのマーカーが、前記患者の固定された解剖学的な位置に配置されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者に隣接した視覚領域に、
少なくとも一つの鏡を配置する工程と、
前記少なくとも一つの鏡を、前記視覚領域内であるが、前記患者のもう一つの部分によって前記赤外線イメージカメラから隠された前記患者の部分から、前記赤外線イメージカ
メラへと赤外線を反射させるように向きを合わせる工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記赤外線イメージカメラと前記患者との間にグリッドを配置する工程と、
熱的エネルギーを、前記グリッドを介して患者に伝達する工程と、
前記患者から、および前記少なくとも一つの鏡から、直接赤外線のフレームを獲得する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者から直接獲得した赤外線と、前記少なくとも一つの鏡から獲得した赤外線から、前記患者の三次元イメージを作製する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
(i)患者内の腫瘍性疾患プロセスの検出と、
(ii)患者内の血管形成の検出と、
(iii)患者内の痛み処理の治療モダリティのための処置部位の確認、のうちの一つま
たはそれ以上に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
赤外線イメージング装置であって、
前記イメージング装置の視覚領域を形成する光学素子(オプテル)のアレーのそれぞれのオプテルから赤外線を検出する検出手段と、
複数の赤外線フレームのそれぞれのフレームが、一つのサンプルインターバルの間に、アレーの全部のオプテルから獲得した赤外線に対応するように、同様な複数のサンプルインターバルにて、前記アレーから前記複数の赤外線フレームを選択的に獲得するように、前記検出手段を制御するための制御手段と、
前記アレーから検出手段により受け取った赤外線の複数の積分を、それぞれの積分が、同じオプテルから少なくとも二つのフレームにおいて受け取られた赤外線に対応するように決定するための手段とを備え、
前記決定するための手段が、
それぞれの積分を色彩または灰色の濃淡にマッピングし、
それぞれの積分の色彩または灰色の濃淡を、前記視覚領域におけるオプテルに対応した位置に対応するイメージ内の位置に、マッピングするように構成されている
ことを特徴とする赤外線イメージング装置。
【請求項14】
それぞれのオプテルが、前記検出手段により処理可能な、視覚領域内における最も小さな素子に対応するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
それぞれのオプテルから獲得した赤外線を、対応するデータに変換する変換手段をさらに備え、前記決定手段が、それぞれのフレームのそれぞれのオプテルから獲得した赤外線に相当するデータから、少なくとも二つのフレームにおいて同様のオプテルに関する積分を決定するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記複数のフレームがイメージングインターバルにわたって獲得され、
前記それぞれのフレームの獲得が固定されるか、または変動可能であるように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
複数のフレームのそれぞれの獲得が、イメージングインターバルにわたって対数的に発生し、
前記獲得が、イメージングインターバルにおいて後に増加するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも二つのフレームが少なくとも一つのフレームにより分割されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記獲得フレームが、前記視覚領域に収容された患者の心拍サイクルと同期し、
前記少なくとも二つのフレームが、二つの異なる心拍サイクルの同様な部分の間に獲得されるように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記視覚領域に収容された患者に隣接して配置された少なくとも一つの鏡をさらに含み、
前記少なくとも一つの鏡が、前記視覚領域に収容され、
前記少なくとも一つの鏡が、前記視覚領域内であるが、患者のもう一つの部分により前記検出手段から隠された前記患者の部分から赤外線検出手段に向かって赤外線を反射させるように向けられていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項21】
(i)腫瘍性疾患プロセスの検出と、
(ii)血管形成の検出と、
(iii)痛み処理の治療モダリティのための処置部位の同定
のうちの一つまたはそれ以上のために患者に利用されることを特徴とする請求項14に記載の赤外線イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【公表番号】特表2007−525244(P2007−525244A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514304(P2006−514304)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014110
【国際公開番号】WO2004/098392
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(501492867)
【出願人】(505413071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014110
【国際公開番号】WO2004/098392
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(501492867)
【出願人】(505413071)
【Fターム(参考)】
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