説明

哺乳動物ベータ・デフェンシンを用いた炎症性疾患の処置

本発明は、哺乳動物ベータ・デフェンシンを用いたTNF‐アルファ活性の抑制に関し、そしてそれは、腫瘍壊死因子アルファに関連する病的状態の処置において有用性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願には、コンピューターが読み取り可能な形式で配列表が含まれている。そのコンピューターが読み取り可能な形式を本明細書中に援用する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、哺乳動物ベータ・デフェンシンの投与による腫瘍壊死因子アルファ(TNF‐アルファ又はTNF‐α)活性の抑制に関し、そしてそれは、炎症に関連した病的状態の処置を含めた様々な障害の処置において有用性がある。
【背景技術】
【0003】
ヒト・デフェンシン
他の多くの要素の中でも、先天性免疫の重要な成分は、十分な選択性を個々に示す抗微生物性ペプチド(AMPs)であるが、まとめると、それらは共同で、広範囲の細菌、ウイルス、及び真菌を素早く殺滅することができる。AMPsの生物学的意味は、自然界の中でのそれらの遍在的分布によって強調され、そしてそれらはおそらくすべての多細胞生物によって産生されている。ヒトでは、主たるAMPsはデフェンシンである。ヒト・デフェンシンは、それらの3つの分子内システイン・ジスルフィド結合形成の位相に基づいてα‐及びβ‐デフェンシンに分類できるカチオン性小ペプチドである。α‐デフェンシンはさらに、好中性顆粒から最初に単離されたもの(HNP1〜4)と小腸の腺窩内のパネート細胞によって発現されるもの(HD5とHD6)に細分できる。β‐デフェンシンは主に、皮膚、気管、胃腸管、泌尿生殖器系、腎臓、膵臓、及び乳腺を含めた種々の組織並びに臓器の上皮細胞によって産生される。β‐デフェンシンファミリーの中で最もよく特徴づけされているメンバーは、hBD1〜3である。しかしながら、様々な生命情報工学ツールを使用すると、ヒトゲノムにおいて、推定上のβ‐デフェンシン相同体をコードする40近いオープン・リーディング・フレームには注釈が付されている。一部のヒト・デフェンシンは構成的に産生されているが、その他のものは炎症誘発性サイトカイン又は外因性微生物産物によって誘導される。
【0004】
それらの直接的な抗微生物活性に加え、ヒト・デフェンシンには様々な免疫調節性/代替特性があることもまた、次第に明らかになった。これらの中には、様々なケモカイン及びサイトカインの誘導、走化作用及びアポトーシス活性、プロスタグランジン、ヒスタミン及びロイコトリエン放出の誘導、補体の阻害、トール様受容体シグナル伝達を通じた樹状細胞成熟の刺激、並びに好中球による病原菌クリアランスの刺激が含まれる。さらに、ヒト・デフェンシンはまた、創傷治癒、上皮及び繊維芽細胞の増殖、血管新生、並びに脈管形成においても役割を果たしている。
【0005】
ヒト・デフェンシンが多くの感染性及び炎症性疾患において重要な役割を果たしていることが次第に明らかになっている。ヒト・デフェンシンの過剰発現は、おそらく微生物成分又は内因性炎症誘発性サイトカインによる局所的な誘導のため、炎症を起こした、及び/又は感染した皮膚において観察されることが多い。乾癬では、hBD2とhBD3が過剰であり、そして尋常性座瘡又は表在性毛嚢炎を患っている患者の病変上皮においては、hBD2の有意な上方制御が観察された。その一方、hBD2とhBD3の下方制御がアトピー性皮膚炎に関連した。回腸クローン病はHD5及びHD6の発現欠如に関連し、そしてクローン病において、結腸でのhBD2〜4の発現は下方制御された。
【0006】
サイトカイン
サイトカインは、細胞間のシグナル伝達に関与し、そして他の細胞の成長、分裂、及び機能に影響する高等真核生物から分泌される小さなポリペプチドである。それらは、例えば対応する受容体を介して局所的又は全身的な細胞間の調節因子として作用し、そのため多くの生物学的過程、例えば免疫、炎症、及び造血などにおいて極めて重要な役割を担っている強力な多機能ポリペプチドである。サイトカインは、繊維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、マクロファージ/単球、及びリンパ球を含めた様々な細胞型によって産生される。
【0007】
TNF‐αは、様々な病態生理学的過程に関与し、そして宿主防御などの場合には保護的になり得、又は自己免疫などの場合には有害になり得る。TNF‐αは炎症反応を引き起こし、維持する主要なサイトカインの1つであり、そしてTNF‐α不活性化が、自己免疫疾患に関連している炎症反応を下方制御する際に重要であることが立証された。感染時に、TNF‐αはマクロファージによって多量に分泌され、そしてそれは接着分子を産生するように内皮細胞を刺激することによって、及び(走化性サイトカインである)ケモカインを産生することによって感染部位への好中球及びマクロファージの動員を媒介する。TNF‐αは、白血球及びその他の炎症細胞を活性化し、そして傷害組織内での血管透過を増強するのを助ける。TNF‐αは主に、マクロファージ、単球、及び樹状細胞によって産生されるが、リンパ球系細胞、マスト細胞、内皮細胞、心筋細胞、脂肪組織、繊維芽細胞、及び神経組織を含めたその他の様々な細胞型によっても産生される。
【0008】
現在の抗炎症薬は、それがTNF‐αに結合し、それによりTNF‐αが細胞表面上のTNF‐αの受容体にシグナル伝達するのを防ぐことによってTNF‐αの作用を遮断する。このタイプの遮断には、一部の人々が結核、敗血症、及び真菌感染などに感染する、並びに癌発生率の上昇の可能性があるなどのいくつかの重大な副作用がある。
【0009】
ヒト・サイトカイン合成阻害因子(CSIF)としても知られるIL‐10はまた、抗炎症性サイトカインとして免疫調節において重要な役割を担っている。このサイトカインは、単球、マクロファージ、T細胞、B細胞、樹状細胞、及びマスト細胞を含めたいくつかの細胞型によって産生される。このサイトカインには、免疫調節と炎症において多面的な効果がある。それは、炎症誘発性サイトカイン、Th1/Th17細胞によって分泌されるサイトカイン、MHCのクラスII Ags、及び抗原提示細胞上の共刺激分子の発現を下方制御する。IL‐10はまた、制御性T細胞(Tregs)と呼ばれるT細胞の集団によっても分泌される。これらの細胞は初期のT細胞活性化を妨げず;むしろ、それらは、持続的な応答を阻害するので、慢性的、且つ、潜在的な損害を与える応答を抑制する。末梢では、一部のT細胞が、Tregsになるように抗原及びIL‐10若しくはTGF‐βのいずれかによって誘導される。IL‐10によって誘導されるTregsは、CD4+/CD25+/Foxp3−であり、Tr1細胞とも呼ばれる。これらの細胞は、IL‐10の分泌によって免疫応答を抑制する。最近の研究では、Th17細胞の識別を用いてTh1/Th2/Tregに比べてT細胞エフェクター・レパートリーのより高い多様性が明らかになった。これまで原因がTh1系統にあるとされていたいくつかの自己免疫疾患、例えばクローン病、潰瘍性結腸炎、乾癬、及び多発性硬化症などにおいて、この亜集団が病因であることが示された。Th17によって分泌されるサイトカインもまたIL‐10によって下方制御されるので、TNFの遮断がTh17細胞の不活性化によって乾癬を予防する。IL‐10の総合的な活性は抗炎症性であり、そしていくつかの動物研究において炎症及び傷害を予防することが示されたが、しかしながら、IL‐10投与の経路の難しさやその生物学的半減期のせいで、臨床的IL‐10処置は不十分なままである。
【0010】
炎症を治療するためのヒト・デフェンシンの使用
興味深いことに、小腸におけるクローン病がパネート細胞α‐デフェンシンHD5及びHD6のレベル低下に関連したのに対して、結腸におけるクローン病はβ‐デフェンシンhBD2及びhBD3の産生減少に関連した(Gersemann et al., 2008;Wehkamp et al., 2005)。さらに、クローン病の発症機序における、腸内微生物叢の関与が納得できるように実証された(Swidsinski et al., 2002)。蛍光in situハイブリダイゼーションを使用することで、これらの研究者らは、活性なクローン病において、粘液関連及び侵入性の細菌の劇的な増加が観察されたのに対して、これらの細菌が通常の大小腸管上皮に不在であることを示した。健康な人では、腸の上皮バリアーに従って適切なレベルのデフェンシンが、管腔の細菌の組成及び数を制御して、それらが炎症を引き起こすように粘液に接着し、そして浸潤するのを避けるように作用していることを示唆しているこれらの観察を一緒に仮説に統合した(Wang et al., 2007)。その一方、保護的なレベルの分泌型デフェンシンを産生するには不十分な能力しかない人々では、抗微生物防御と管腔細菌の間のバランスが変化している。結果として、これが炎症状態を引き起こす根本的な腸組織内への細菌侵入を許し、それが今度は、クローン病に進展することもある。
【0011】
この仮説に基づいて、WO2007/081486は、炎症性腸疾患の処置におけるいくつかのヒト・デフェンシンの使用を開示している。当該発明者らは、経口的にそれが腸管腔内の適切な位置でのデフェンシンの放出を可能にする製剤によりクローン病の患者に対して投与されたデフェンシンが、浸潤している細菌の数を減らし、正常な上皮バリアー機能を再構築するので、よって炎症性疾患の重症度を低減するであろうことを示唆している。
【発明の概要】
【0012】
WO2007/081486によると、デフェンシンの機能は、管腔内の細菌を直接標的とし、そして殺滅して、それらが表皮組織に浸潤するのを予防することである。すなわち、デフェンシンの機能は、純粋に抗感染症化合物としてのものである。WO/2007/081486と関連して、非経口的に投与されたhBD2が、この投与経路を使用することでペプチドが管腔細菌に遭遇することがないため、マウスにおいてDSS誘発結腸炎の重症度を低減することが可能であるというのは、驚くべきことである。さらに、我々は、hBD2の効果がPBMCsによって分泌される炎症誘発性サイトカインであるTNF‐α、IL‐1β、及びIL‐23のレベルの低減であることを本明細書において示す。これらのサイトカインは、炎症性腸疾患を含めた多くの炎症性疾患において中心的存在であることが知られている。デフェンシンはそれらの抗微生物機能と並んで、幅広い免疫調節機能も有することが10余年にわたり知られている。しかしながら、ヒト・デフェンシンの免疫調節特性に対する研究の大多数は、それらには主として炎症誘発性又は免疫促進機能があると記載している(例えば、Niyonsaba et al., 2007;Bowdish et al., 2006;Lehrer, 2004を参照のこと)。
【0013】
従って、非経口的に投与されたhBD2が炎症性腸疾患における疾病重症度を軽減することが可能であることは、全く予期されていない。まず、非経口的に投与した場合、hBD2は、疾患の誘発に関与する有害細菌に遭遇するように腸管腔に達することはないであろう。そのうえ、本明細書中に提示した研究において見られたように、刊行された文献の大多数に基づいて、当業者は血流に入ったデフェンシンが抗炎症応答よりむしろ炎症誘発応答を引き起こすと予想するだろう。
【0014】
発明の詳細な説明
好ましい実施形態を理解する手助けとして、特定の定義を本明細書中に提供する。
本明細書中で使用する場合、「TNF‐アルファ活性」という用語は、広義語であり、当業者にとって普通、且つ、通例の意味が与えられ(そして特別な又は特化した意味に制限されず)、そして、腫瘍壊死因子アルファによって少なくとも一部が媒介される活性又は作用を指すが、これだけに限定されるものではない。
【0015】
本明細書中で使用する場合、「抑制剤(suppressor)」という用語は、広義語であり、当業者にとって普通、且つ、通例の意味が与えられ(そして特別な又は特化した意味に制限されず)、そして、TNF‐アルファの活性の少なくとも1つを低減できる分子(例えば天然又は合成の化合物)を指すが、これだけに限定されるものではない。言い換えれば、抑制剤を用いないで実施したアッセイと比較して、抑制剤を用いて実施したアッセイにおいて計測されるTNF‐アルファの量、TNF‐アルファ活性、又は細胞外及び/又は細胞内で検出されるTNF‐アルファに統計的に有意な変化があれば、「抑制剤」が活性を変更している。
【0016】
一般に、TNF‐アルファ抑制剤は、例えばTNF‐アルファの分泌を低減することによって、TNF‐アルファの生理機能を低減するので、TNF‐アルファが直接的又は間接的な病因となり得る疾患の処置において有用である。
【0017】
本明細書中で使用する場合、「IL‐10活性」という用語は、広義語であり、当業者にとって普通、且つ、通例の意味が与えられ(そして特別な又は特化した意味に制限されず)、そして、インターロイキン‐10によって少なくとも一部が媒介される活性又は作用を指すが、これだけに限定されるものではない。
【0018】
本明細書中で使用する場合、「誘導因子」という用語は、広義語であり、当業者にとって普通、且つ、通例の意味が与えられ(そして特別な又は特化した意味に制限されず)、そして、IL‐10の活性の少なくとも1つを増強できる分子(例えば天然又は合成の化合物)を指すが、これだけに限定されるものではない。言い換えれば、誘導因子を用いないで実施したアッセイと比較して、誘導因子を用いて実施したアッセイにおいて計測されるIL‐10の量、IL‐10活性、細胞外及び/又は細胞内で検出されるIL‐10に統計的に有意な変化があれば、「誘導因子」が活性を変更している。
【0019】
一般に、IL‐10誘導因子は、IL‐10の生理機能を増強するので、IL‐10によって影響を受ける疾患の処置において有用である。
【0020】
「修飾」という用語は、本明細書中では、ヒト・ベータ・デフェンシン2のあらゆる化学修飾を意味する。(単数若しくは複数の)修飾は、(単数若しくは複数の)アミノ酸の(単数若しくは複数の)置換、(単数若しくは複数の)欠失、及び/又は(単数若しくは複数の)挿入、並びに(単数若しくは複数の)アミノ酸側鎖の(単数若しくは複数の)置換であるか;又はアミノ酸配列中で類似した特徴を有する非天然アミノ酸の使用であり得る。特に(単数若しくは複数の)修飾は、アミド化、例えばC末端のアミド化であり得る。
【0021】
本明細書中で使用する場合、「デフェンシン」という用語は、デフェンシン・クラスの抗微生物ペプチドに属すると当業者に認識されたポリペプチドを指す。あるポリペプチドが本発明によるデフェンシンであるかどうか確認するために、自由に入手可能なHMMERソフトウェアパッケージを使用することによってPFAMデータベースの隠れマルコフモデル特性とそのアミノ酸配列を比較してもよい。PFAMデフェンシンファミリーとしては、例えばデフェンシン_1又は「哺乳動物デフェンシン」(受入番号PF00323)、及びデフェンシン_2又はデフェンシン_ベータ又は「ベータ・デフェンシン」(受入番号PF00711)が挙げられる。
【0022】
本発明のデフェンシンは、ベータ・デフェンシンクラスに属する。ベータ・デフェンシンクラスのデフェンシンは、システインパターンなどの共通の構造特徴を共有する。
【0023】
本発明によるデフェンシンに関する例としては、ヒト・ベータ・デフェンシン1(hBD1;配列番号1を参照のこと)、ヒト・ベータ・デフェンシン2(hBD2;配列番号2を参照のこと)、ヒト・ベータ・デフェンシン3(hBD3;配列番号3を参照のこと)、ヒト・ベータ・デフェンシン4(hBD4;配列番号4を参照のこと)、及びマウス・ベータ・デフェンシン3(mBD3;配列番号6を参照のこと)が挙げられる。
【0024】
2つのアミノ酸配列又は2つのヌクレオチド配列の間の関連性は、「同一性」というパラメーターによって説明される。
【0025】
本発明の目的に対して、2つのアミノ酸配列の間の同一性の程度は、好ましくはバージョン3.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends in Genetics 16:276‐277;http://emboss.org)のニードルプログラムで実装されるニードルマン‐ウンシュ(Needleman‐Wunsch)アルゴリズムを使用することで決定される(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443‐453)。使用される任意パラメーターは、ギャップ開始ペナルティーが10、ギャップ伸長ペナルティーが0.5、及びEBLOSUM62(EMBOSSバージョンのBLOSUM62)置換マトリクスである。ニードル標識された「最長同一性(longest identity)」(−nobriefオプションを使用して得られた)の出力は、パーセント同一性として使用され、そして以下のとおり計算される:
(同一残基×100)/(アラインメントの長さ−アラインメント内のギャップの総数)
【0026】
本発明の目的に対して、2つのデオキシリボヌクレオチド配列の間の同一性の程度は、好ましくはバージョン3.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000、前掲;http://emboss.org)のニードルプログラムで実装されるニードルマン‐ウンシュ・アルゴリズムを使用することで決定している(Needleman and Wunsch,1970、前掲)。使用される任意パラメーターは、ギャップ開始ペナルティーが10、ギャップ伸長ペナルティーが0.5、及びEDNAFULL(EMBOSSバージョンのNCBI NUC4.4)置換マトリクスである。ニードル標識された「最長同一性」(−nobriefオプションを使用して得られた)の出力は、パーセント同一性として使用され、そして以下のとおり計算される:
(同一デオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ‐アラインメントのギャップの総数)
【0027】
本明細書中で使用する場合、「単離されたバリアント」又は「単離されたポリペプチド」という用語は、供給源から単離されたバリアント又はポリペプチドを指す。1つの側面において、バリアント又はポリペプチドは、SDS‐PAGEによって測定した場合、少なくとも1%純粋であり、好ましくは少なくとも5%純粋であり、より好ましくは少なくとも10%純粋であり、より好ましくは少なくとも20%純粋であり、より好ましくは少なくとも40%純粋であり、より好ましくは少なくとも60%純粋であり、よりいっそう好ましくは少なくとも80%純粋であり、そして最も好ましくは少なくとも90%純粋である。
【0028】
「実質的に純粋なポリペプチド」という用語は、本明細書中では、天然に又は遺伝子組み換えにより付随するその他のポリペプチド物質を最大10重量%、好ましくは最大8重量%、より好ましくは最大6重量%、より好ましくは最大5重量%、より好ましくは最大4重量%、より好ましくは最大3重量%、よりいっそう好ましくは最大2重量%、最も好ましくは最大1重量%、そしてさらに最も好ましくは最大0.5重量%含有するポリペプチド調製物を意味する。そのため、実質的に純粋なポリペプチドは、調製物中に存在する総ポリペプチド物質のうちの少なくとも92重量%純粋であり、好ましくは少なくとも94重量%純粋であり、より好ましくは少なくとも95重量%純粋であり、より好ましくは少なくとも96重量%純粋であり、より好ましくは少なくとも97重量%純粋であり、より好ましくは少なくとも98重量%純粋であり、よりいっそう好ましくは少なくとも99重量%純粋であり、最も好ましくは少なくとも99.5重量%純粋であり、そしてさらに最も好ましくは100重量%純粋であることが好ましい。本発明のポリペプチドは、好ましくは実質的に純粋な形態である。これは、例えばよく知られる遺伝子組み換え方法又は古典的な精製方法によってポリペプチドを調製することによって達成できる。
【0029】
哺乳動物ベータ・デフェンシン
本発明は、増強された(病因)レベルのTNF‐アルファに関連している疾患、例えば炎症性疾患などの処置における哺乳動物ベータ・デフェンシン、例えばヒト・ベータ・デフェンシン及び/又はマウス・ベータ・デフェンシンなどの医薬使用に関する。上記処置は、処置された組織において低減されたTNF‐アルファ活性に関連することが好ましい。よって、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンはまた、TNF‐アルファ抑制剤とも呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ある実施形態において、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び/又は配列番号6のアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも95%の同一性の程度を有する。好ましい実施形態において、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び/又は配列番号4のアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも95%の同一性の程度を有する。より好ましい実施形態において、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、ヒト・ベータ・デフェンシン1(配列番号1)、ヒト・ベータ・デフェンシン2(配列番号2)、ヒト・ベータ・デフェンシン3(配列番号3)、ヒト・ベータ・デフェンシン4(配列番号4)、ヒト・ベータ・デフェンシン4のバリアント(配列番号5)、及び/又はマウス・ベータ・デフェンシン3(配列番号6)から成る。よりいっそう好ましい実施形態において、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、ヒト・ベータ・デフェンシン1(配列番号1)、ヒト・ベータ・デフェンシン2(配列番号2)、ヒト・ベータ・デフェンシン3(配列番号3)、及び/又はヒト・ベータ・デフェンシン4(配列番号4)から成る。
【0031】
他の実施形態において、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも95%の同一性度を有する。好ましい実施形態において、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、ヒト・ベータ・デフェンシン2(配列番号2)から成る。
【0032】
さらに他の実施形態において、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、ヒト・ベータ・デフェンシン及び/又はマウス・ベータ・デフェンシン、並びに機能的に同等なそのバリアントから成る。好ましくは、哺乳動物ベータ・デフェンシンは、ヒト・ベータ・デフェンシン1、ヒト・ベータ・デフェンシン2、ヒト・ベータ・デフェンシン3、ヒト・ベータ・デフェンシン4、及びマウス・ベータ・デフェンシン3、並びに機能的に同等なそのバリアントから成る。より好ましくは、本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンは、ヒト・ベータ・デフェンシン2、及び機能的に同等なそのバリアントから成る。
【0033】
本発明の哺乳動物ベータ・デフェンシンはまた、好ましい実施形態の化合物とも呼ばれる。
【0034】
本発明との関連において、哺乳動物(例えばヒト)ベータ・デフェンシンの「機能的に同等なバリアント」は、TNF‐アルファ活性に対して哺乳動物(例えばヒト)ベータ・デフェンシン、例えばヒト・ベータ・デフェンシン2などと大体同じ効果を示す修飾哺乳動物(例えばヒト)ベータ・デフェンシンである。より好ましくは、それはまた、IL‐10活性に対しても哺乳動物(例えばヒト)ベータ・デフェンシン、例えばヒト・ベータ・デフェンシン2などと大体同じ効果を示す。
【0035】
本発明によると、哺乳動物(例えばヒト)ベータ・デフェンシン、例えばヒト・ベータ・デフェンシン2などの機能的に同等なバリアントは、哺乳動物(例えばヒト)ベータ・デフェンシン・アミノ酸配列、例えば配列番号2などと比較して、1〜5個のアミノ酸修飾、好ましくは1〜4個のアミノ酸修飾、より好ましくは1〜3個のアミノ酸修飾、最も好ましくは1〜2個のアミノ酸修飾、そして特に1個のアミノ酸修飾を含有していてもよい。
【0036】
好ましくは、アミノ酸修飾は、軽微な性質のものであり、それは、ポリペプチドの折りたたみ及び/又は活性に顕著に影響しない保存的なアミノ酸置換又は挿入;一つの欠失;小さなアミノ末端又はカルボキシル末端の伸長;最長約20〜25残基の小さなリンカーペプチド;あるいは、正味電荷又は別の機能を変えることによって精製を容易にする小さい伸長、例えばポリ‐ヒスチジンタグ、抗原エピトープ若しくは結合ドメインなどである。
【0037】
保存的置換に関する例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシン)、及び低分子アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、及びメチオニン)の群の中にある。全体として比活性を変更しないアミノ酸置換が、当該技術分野で知られており、例えばH.Neurath and R.L.Hill,1979,In,The Proteins,Academic Press,New Yorkによって記載されている。最も一般的に生じる変更は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、及びAsp/Glyである。
【0038】
20種類の標準的なアミノ酸に加えて、非標準的なアミノ酸(4‐ヒドロキシプロリン、6‐N‐メチルリシン、2‐アミノイソ酪酸、イソバリン、及びアルファ・メチルセリンなど)を、野生型ポリペプチドのアミノ酸残基と置換してもよい。限られた数の非保存性アミノ酸、遺伝コードによってコード化されていないアミノ酸、及び非天然アミノ酸を、アミノ酸残基と置換してもよい。「非天然アミノ酸」は、タンパク質合成後に修飾された、及び/又は標準的なアミノ酸のものと異なるそれらの側鎖の化学構造を持っている。非天然アミノ酸は、化学的に合成されることができ、好ましくは市販のものであり、そしてピペコリン酸、チアゾリジン・カルボン酸、デヒドロプロリン、3‐及び4‐メチルプロリン、並びに3,3‐ジメチルプロリンが挙げられる。
【0039】
哺乳動物ベータ・デフェンシンの必須アミノ酸は、当該技術分野で知られている手順、例えば部位特異的突然変異誘発又はアラニン‐スキャニング突然変異誘発などにより特定される(Cunningham and Wells,1989,Science 244:1081‐1085)。後者の技術では、1つのアラニン突然変異が分子内のあらゆる残基に導入され、そして得られた突然変異体分子が生物学的活性(すなわち、TNF‐アルファ活性の抑制)について試験されて、分子の活性に重要なアミノ酸残基を同定する。Hilton et al.,1996,J.Biol.Chem.271:4699‐4708もまた参照のこと。必須アミノ酸の同一性もまた、哺乳動物ベータ・デフェンシンに関連するポリペプチドとの同一性の分析から推測できる。
【0040】
単一又は複数のアミノ酸置換を、おこなうことができ、そして既知の突然変異誘発、遺伝子組み換え、及び/又はシャッフリングの方法を使用し、続いて関連スクリーニング手順、例えばReidhaar‐Olson and Sauer,1988,Science 241:53‐57;Bowie and Sauer,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152‐2156;WO95/17413;又はWO95/22625に開示されたものなどを使用して試験する。使用できるその他の方法としては、エラー‐プローンPCR、ファージ・ディスプレイ(例えばLowman et al.,1991,30:10832‐10837;米国特許番号第5,223,409号;WO92/06204)、及び領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,1986,Gene 46:145;Ner et al.,1988,DNA 7:127)が挙げられる。
【0041】
本発明のポリペプチドのN末端伸長は、1〜50個のアミノ酸、好ましくは2〜20個のアミノ酸、特に3〜15個のアミノ酸から適切に構成されることもできる。1つの実施形態において、N末端ペプチド伸長は、Arg(R)を含んでいない。他の実施形態において、N末端伸長は、以下でさらに規定されるように、kex2又はkex2様開裂部位を含んでなる。好ましい実施形態において、N末端伸長は、少なくとも2つのGlu(E)及び/又はAsp(D)アミノ酸残基を含んでなるペプチド、例えば以下の配列:EAE、EE、DE、及びDDのうちの1つを含んでなるN末端伸長などである。
【0042】
方法と使用
TNF‐アルファ抑制剤には、先に述べられたように、様々な適切な用途がある。当業者は、TNF‐アルファのコントロールレベルからの統計的に有意な変動(低減)が観察されたとき、抑制が起こったと認識するだろう。
【0043】
ヒト・ベータ・デフェンシン1、ヒト・ベータ・デフェンシン2、ヒト・ベータ・デフェンシン3、及びヒト・ベータ・デフェンシン4のバリアントが、LPS及びLTA抗原投与細胞においてTNF‐アルファ活性を低減し、且つ、IL‐10活性を誘導することがわかった。さらに、ヒト・ベータ・デフェンシン2が、LPS及びLTA抗原投与細胞においてIL‐23分泌を低減することがわかり;並びにマウス・ベータ・デフェンシン3が、マウス並びにヒトのLPS及びLTA抗原投与細胞の両方においてTNF活性を低減することがわかった。これらの知見は、試験した哺乳動物ベータ・デフェンシンが素晴らしい抗炎症活性、特に自己免疫疾患又は障害において抗炎症活性を示すことを裏付けている。
【0044】
好ましい実施形態の医薬組成物は、TNF‐アルファ活性によって媒介された障害の処置のために使用され得る。TNF‐アルファ活性によって媒介された障害を処置する方法もまた提供され、当該処置は、かかる処置を必要としている対象に、例えば医薬組成物の形態で、有効量の哺乳動物ベータ・デフェンシン、例えばヒト・ベータ・デフェンシン2を投与することを含んでなる。医薬の製造のための哺乳動物ベータ・デフェンシン、例えばヒト・ベータ・デフェンシン2、及びTNF‐アルファ活性によって媒介された障害の処置用の医薬、例えば医薬組成物の製造のための哺乳動物ベータ・デフェンシン、例えばヒト・ベータ・デフェンシン2の使用もまた提供される。処置は、既存の疾患又は障害の処置、並びに疾患又は障害の予防(防止)を含む。
【0045】
ある実施形態において、処置は、処置組織における低減されたTNF‐アルファ活性、好ましくは低減されたTNF‐アルファ活性と増強されたIL‐10活性を結果的にもたらす。
【0046】
(例えばTNF‐アルファ活性の阻害若しくは抑制によって、好ましい実施形態の化合物を用いて治療できる)疾患又は障害としては、TNF‐アルファ活性によって媒介されるものが挙げられる。好ましくは、これらの障害の処置は、低減されたTNF‐アルファ活性及び/又は増強されたIL‐10活性の恩恵を受けることができる。そのような疾患又は障害としては、炎症性疾患若しくは障害、アレルギー疾患、及び自己免疫疾患が挙げられる。より詳しく述べると、上記障害又は疾患としては、関節リウマチ、骨関節炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症(全身性硬化症)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス、(急性)糸球体腎炎、喘息、例えば気管支喘息など、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸窮迫症候群(ARDS)、炎症性腸疾患(例えばクローン病)、結腸炎(例えば潰瘍性結腸炎)、血管炎、ブドウ膜炎、皮膚炎(例えば炎症性皮膚炎)、アトピー性皮膚炎、脱毛症、(アレルギー性)鼻炎、アレルギー性結膜炎、重症筋無力症、硬化性皮膚炎(sclerodermitis)、サルコイドーシス、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、及びベーチェット病が挙げられる。
【0047】
TNF‐アルファ抑制剤は、経腸的なもの(例えば、頬側、経口、経鼻、直腸)、非経口的なもの(例えば、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下、若しくは筋肉内)、又は局所的なもの(例えば、経皮、鼻腔内、若しくは気管内)を含めたいずれかの従来の経路による投与のために処方された組成物で治療において利用され得る。他の実施形態の中で、本明細書中に記載した組成物は、徐放性インプラントの一部として投与されることもできる。
【0048】
さらに他の実施形態の中で、組成物、つまり好ましい実施形態の組成物は、凍結乾燥物として、そして再給水の後に安定性を提供する適当な賦形剤を利用して凍結乾燥物として処方されることもできる。
【0049】
好ましい実施形態のTNF‐アルファ抑制剤を含む医薬組成物は、従来の方法に従って、例えば、混合、顆粒化、コーティング、溶解、又は凍結乾燥の工程によって製造できる。
【0050】
他の実施形態において、1種類以上のTNF‐アルファ抑制剤を含む医薬組成物を提供する。投与目的に対して、好ましい実施形態の化合物を医薬組成物として処方することもできる。好ましい実施形態の医薬組成物は、1又は2以上の好ましい実施形態のTNF‐アルファ抑制剤、並びに医薬的に許容し得る担体及び/又は希釈剤を含んでなる。
【0051】
TNF‐アルファ抑制剤は、特定の障害を処置するのに有効である量、すなわち低減されたTNF‐アルファのレベル又は活性、及び症状を達成するのに十分な量で、及び/又は好ましくは患者に許容され得る毒性を有する医薬組成物の状態で利用されるのが好ましい。そのような処置に対して、適当な投薬量は、もちろん、例えば使用される本発明の化合物の化学的性質や薬物動力学データ、個々の受容者、投与の様式、及び処置される病態の性質や重症度に依存して変化する。しかしながら、一般に、より大きな哺乳動物、例えばヒトにおける満足できる結果のために、例えば1日あたり最大4回までの分割投与で投与される、指示される1日投与量は、好ましくは約0.001g〜約1.5g、より好ましくは約0.01g〜1.0g;又は約0.01mg/kg体重〜約20mg/kg体重、より好ましくは約0.1mg/kg体重〜約10mg/kg体重である。好ましい実施形態の化合物は、例えばTNF‐アルファ活性のその他の伝達物質、例えば低分子量の阻害剤と従来法で併用されるよりも類似した投薬量にて類似した投与様式によってより大型哺乳動物、例えばヒトに投与できる。
【0052】
特定の実施形態において、好ましい実施形態の医薬組成物は、投与経路によって単位剤形あたり約0.5mg以下〜約1500mg以上、好ましくは約0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9mg〜約150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、又は1000mg、そしてより好ましくは約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、又は25mg〜約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mgの量で(単数若しくは複数の)TNF‐アルファ抑制剤を含有できる。しかしながら、特定の実施形態において、先に言及したものより低い又は高い投薬量が好まれることもある。適当な濃度及び投薬量は、当業者によって容易に決定できる。
【0053】
医薬的に許容し得る担体及び/又は希釈剤は、当業者によく知られている。液体溶液として処方される組成物に対して、許容される担体及び/又は希釈剤としては、生理的食塩水や滅菌水が挙げられ、そして任意に抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及びその他の一般的な添加物を挙げることもできる。組成物はまた、丸薬、カプセル剤、顆粒剤、錠剤(コート若しくは無コート)、(注射用)溶液、固溶体、懸濁液、分散液、例えば、アンプル、バイアル、クリーム、ゲル、ペースト、吸入散剤、フォーム、チンキ、リップスティック、ドロップ、スプレー、又は坐剤の形態で)固体分散系としても処方できる。製剤は、(1種類以上のTNF‐アルファ抑制剤とその他の任意の有効成分に加えて)担体、充填剤、崩壊剤、流動調整剤、糖や甘味料、香料、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤、希釈剤、分散剤や界面活性剤、結合剤、滑沢剤、及び/又は当該技術分野で知られているその他の医薬賦形剤を含有できる。当業者はさらに、適当な手法、及び許容される実施方法で、例えばRemingtonのPharmaceutical Sciences,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA 1990に記載のものに従ってTNF‐アルファ抑制剤を製剤化し得る。
【0054】
TNF‐アルファ抑制剤は、単独で、又は1、2、若しくは3以上の他の医薬化合物若しくは薬剤物質との併用療法で、及び/又は1又は2以上の医薬的に許容し得る賦形剤と共に使用できる。
【0055】
好ましい実施形態において、TNF‐アルファ抑制剤は、TNF‐アルファが病因であるか、若しくはTNF‐アルファが疾患経過において中心的な若しくはその他の役割を果たしている疾患又は病態を処置するために使用される従来の薬物との組み合わせられた状態で存在する。特に好ましい実施形態において、これだけに限定されるものではないが、好ましい実施形態の化合物を含む1又は2以上のTNF‐アルファ抑制剤を含む医薬組成物が、これだけに限定されるものではないが、TNF‐アルファが病因である喘息若しくはその他の呼吸器疾患、糖尿病、関節炎若しくはその他の炎症性疾患、免疫障害、又はその他の疾患若しくは障害の処置のための薬物を含めた1又は2以上の追加の医薬化合物との併用で提供される。
【0056】
好ましい実施形態のTNF‐アルファ抑制剤は、単独で、又は1若しくは2以上のその他の医薬的に活性な薬剤、例えば炎症若しくは関連疾患を処置するために有用な薬剤と組み合わせて医薬処置のために使用できる。かかるその他の医薬的に活性な薬剤は、例えば、ステロイド、グルココルチコイド、その他の炎症性サイトカインの阻害剤(例えば、抗TNF‐アルファ抗体、抗IL‐1抗体、抗IFN‐ガンマ抗体)、及びその他のサイトカイン、例えばIL‐1RA若しくはIL‐10、並びにその他のTNF‐アルファ阻害剤を含む。
【0057】
併用療法としては、2又は3以上の医薬的に活性な薬剤が同じ製剤中に存在する固定された組み合わせ;別々の製剤である2又は3以上の医薬的に活性な薬剤が、例えば同時投与のための取扱説明書と共に同じパッケージで販売されているキット;医薬的に活性な薬剤が別々にパッケージされているが、同時又は連続投与のための取扱説明書が提供される自由な組み合わせを挙げることができる。その他のキット構成要素としては、診断器具、アッセイ器具、連続若しくは同時投与のための複数の剤形、凍結乾燥若しくは濃縮形態の医薬組成物を再構成するための取扱説明書及び材料、医薬的に活性な薬剤を投与するための装置等を挙げることができる。例えば、併用投与のための取扱説明書と一緒に、好ましい実施形態の化合物である第1の医薬品物質と少なくとも1種類の第2の医薬品物質を含んでなる医薬パッケージが提供される。少なくとも1種類の第2の医薬品物質との併用投与のための取扱説明書と一緒に、好ましい実施形態の化合物を含んでなる医薬パッケージもまた提供される。本発明の化合物との併用投与のための取扱説明書と一緒に、少なくとも1種類の第2の医薬品物質を含んでなる医薬パッケージもまた提供される。
【0058】
好ましい実施形態による組み合わせを用いた処置は、当該組み合わせのいずれかの成分単独による処置と比較して改善された又は優れた転帰を提供することもできる。例えば、ある量の好ましい実施形態の化合物と、ある量の第2の医薬品物質を含んでなる医薬の組み合わせを利用できるが、ここで、上記の量は相乗的な治療効果を生じるのに適当である。治療的有効量の好ましい実施形態の化合物と第2の医薬品物質を、例えば同時に又は連続して共投与することを含んでなる、好ましい実施形態の化合物の治療的有用性を改善するための方法もまた提供される。治療的有効量の好ましい実施形態の化合物と第2の医薬品物質を、例えば同時に又は連続して共投与することを含んでなる、第2の医薬品物質の治療的有用性を改善するための方法もまた提供される。本発明の組み合わせと、組み合わせパートナーとしての第2の医薬品物質は、例えば好ましい実施形態の化合物に関して上記に示したいずれかの従来の経路によって投与できる。第2の薬物は、適宜、例えば、単独処置に使用されるものと同様であるか、又は例えば相乗効果の場合には、従来の投薬量より低い用量域の投薬量で投与できる。
【0059】
好適な第2の医薬品物質としては、化学療法薬、特に好ましい実施形態のTNF‐アルファ抑制剤以外のいずれかの化学療法薬が挙げられる。かかる第2の医薬品物質としては、例えば、抗炎症薬、及び/又は免疫調節薬等が挙げられる。
【0060】
好ましい実施形態の化合物と組み合わせて使用することもできる抗炎症薬、及び/又は免疫調節薬としては、例えばmTOR阻害剤が挙げられる。そして、上記mTOR阻害剤としては、ラパマイシン、例えば40‐O‐(2‐ヒドロキシエチル)‐ラパマイシン、32‐デオキソラパマイシン、16‐O‐置換ラパマイシン、例えば16‐ペンタ‐2‐イニルオキシ‐32‐デオキソラパマイシン、16‐ペンタ‐2‐イニルオキシ‐32(S若しくはR)‐ジヒドロ‐ラパマイシン、16‐ペンタ‐2‐イニルオキシ‐32(S若しくはR)‐ジヒドロ‐40‐O‐(2‐ヒドロキシエチル)‐ラパマイシンなど、40‐[3‐ヒドロキシ‐2‐(ヒドロキシ‐メチル)‐2‐プロピオン酸メチル‐ラパマイシン(別名CCI779)、40‐エピ‐(テトラゾリル)‐ラパマイシン(別名ABT578)、例えばPCT国際出願番号WO98/02441、PCT国際出願番号WO01/14387、及びPCT国際出願番号WO03/64383に開示されている、いわゆるラパログ、例えばAP23573など、並びにTAFA‐93やバイオリムス(バイオリムスA9)という名称で開示されている化合物;
【0061】
カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンA又はFK506;免疫抑制性特性を有するアスコマイシン、例えばABT‐281、ASM981;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸又は塩;ミコフェノール酸モフェチル;15‐デオキシスペルガリン又は免疫抑制性のその相同体、類似体若しくは誘導体;bcr‐ablチロシンキナーゼ阻害剤;c‐kit受容体チロシンキナーゼ阻害剤;PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばグリベック(イマチニブ);p38MAPキナーゼ阻害剤、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、PKC阻害剤、例えばPCT国際出願番号WO02/38561又はPCT国際出願番号WO03/82859に開示される、例えば実施例56又は70の化合物;
【0062】
遊離形態若しくは医薬的に許容し得る塩の形態のJAK3キナーゼ阻害剤、例えばN‐ベンジル‐3,4‐ジヒドロキシ‐ベンジリデン‐シアノアセトアミド、アルファ‐シアノ‐(3,4‐ジヒドロキシ)‐N‐ベンジルシンナムアミド(チロホスチンAG490)、プロジギオシン25‐C(PNUI56804)、[4‐(4’‐ヒドロキシフェニル)‐アミノ‐6,7‐ジメトキシキナゾリン](WHI‐PI31)、[4‐(3’‐ブロモ‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐アミノ‐6,7‐ジメトキシキナゾリン](WHI‐PI54)、[4‐(3’,5‐ジブロモ‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐アミノ‐6,7‐ジメトキシキナゾリン]WHI‐P97、KRX‐211、3‐{(3R,4R)‐4‐メチル‐3‐[メチル‐(7H‐ピロロ[2,3‐d]ピリミジン‐4‐イル)‐アミノ‐ピペリジン‐1‐イル}‐3‐オキソ‐プロピオニトリル、例えばモノクエン酸(別名CP‐690,550)、又はPCT国際出願番号WO2004/052359若しくはPCT国際出願番号WO2005/066156で開示されている化合物;
【0063】
SIP受容体作動薬又はモジュレーター、例えば任意にリン酸化されたFTY720又はその類似体、例えば任意にリン酸化された2‐アミノ‐2‐[4‐(3‐ベンジルオキシフェニルチオ)‐2‐クロロフェニル]‐エチル‐1,3‐プロパンジオール若しくは1‐{4‐[1‐(4‐シクロヘキシル‐3‐トリフルオロメチル‐ベンジルオキシイミノ)‐エチル]‐2‐エチル‐ベンジル}‐アゼチジン‐3‐カルボン酸、又は医薬的に許容し得るその塩;免疫抑制モノクローナル抗体、例えば白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えばBlys/BAFF受容体、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86、IL‐12受容体、IL‐17受容体、IL‐23受容体、又はそれらのリガンド;
【0064】
その他の免疫調節化合物、例えばCTLA4又はその突然変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部を持つ遺伝子組み換え結合分子、例えば非CTLA4タンパク質配列とつながっているCTLA4又はその突然変異体の少なくとも細胞外領域部分、例えばCTLA4Ig(例えば指定されたATCC68629)又はその突然変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA‐I拮抗薬、ICAM‐1又は‐3拮抗薬、VCAM‐4拮抗薬又はVLA‐4拮抗薬、CCR9拮抗薬、MIF阻害剤、5‐アミノサリチル酸(5‐ASA)薬、例えばスルファサラジン、Azulfidine(登録商標)、Asacol(登録商標)、Dipentum(登録商標)、Pentasa(登録商標)、Rowasa(登録商標)、Canasa(登録商標)、Colazal(登録商標)など、例えばメサラミンを含む薬物;例えばヘパリンと組み合わせたメサラジン;
【0065】
TNF‐アルファ阻害剤又は抑制剤、例えばTNF‐アルファと結合した抗体などの本発明のもの以外のもの、例えばインフリキシマブ(Remicade(登録商標))、一酸化窒素放出非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、例えばCOX阻害性NO供与性薬物(CINOD)を含む;ホスホジエステラーゼ、例えばPDE4B阻害剤、カスパーゼ阻害剤、「多機能性抗炎症」薬(MFAIDs)、例えばグリコサミノグリカンに連結された膜に固定されたホスホリパーゼA2阻害薬のような細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2)阻害剤が挙げられる。
【0066】
他の好ましい実施形態において、好ましい実施形態の1又は2以上のTNF‐アルファ阻害化合物は、関節炎又は他の炎症性疾患の処置のための1又は2以上の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)又は他の医薬化合物と組み合わされて存在する。好ましい化合物としては、セレコキシブ;ロフェコキシブ;NSAIDS、例えば、アスピリン、セレコキシブ、トリサリチル酸コリンマグネシウム、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナックナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メレナミック酸、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサラート、スリンダク、及びトルメチン;並びにコルチコステロイド、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、デソニド、デソキシメタゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸クロベタゾール、及びデキサメタゾンが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
【0067】
特に好ましい実施形態において、1又は2以上のTNF‐アルファ阻害化合物は、喘息、急性呼吸窮迫疾患、又はその他の呼吸器疾患の処置のための1種類以上のベータ作動薬、吸入コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、ホルモン剤、又は他の医薬化合物と組み合わされて存在する。好ましい化合物としては、ベータ作動薬、例えば一般的に処方される気管支拡張剤;吸入コルチコステロイド、例えば、ベクロメタゾン、フルチカゾン、トリアムシノロン、モメタゾン、並びにプレドニゾン形態、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、及びメチルプレドニゾロンなど;抗ヒスタミン剤、例えば、アザタジン、カルビノキサミン、プソイドエフェドリン、セチリジン、シプロヘプタジン、デキスクロルフェニルアミン、フェキソフェナジン、ロラタジン、プロメタジン、トリペレナミン、ブロムフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン;そしてホルモン剤、例えばエピネフリンが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
【0068】
特に好ましい実施形態において、1又は2以上のTNF‐アルファ阻害化合物は、1又は2以上の麻酔薬、例えば、エタノール、ブピバカイン、クロロプロカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、ロピバカイン、テトラカイン、デスフルラン、イソフルラン、ケタミン、プロポフォール、セボフルラン、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、マーカイン、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、レミフェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ナルブフィン、トラマドール、ベンゾカイン、ジブカイン、塩化エチル、キシロカイン、及びフェナゾピリジンと組み合わされて存在する。
【0069】
特に好ましい実施形態において、1又は2以上のTNF‐アルファ阻害化合物は、医薬組成物中に、過敏性腸管疾患の処置のための医薬化合物、例えばアザチオプリン又はコルチコステロイドなどと組み合わされて存在する。
【0070】
特に好ましい実施形態において、1又は2以上のTNF‐アルファ阻害化合物は、医薬組成物中に、免疫抑制化合物と組み合わされて存在する。特に好ましい実施形態において、1種類以上のTNF‐アルファ阻害化合物は、自己免疫疾患を処置するための1種類以上の薬物、例えば生物学的反応修飾物質、例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、及び腫瘍壊死因子を阻害又は干渉する他の化合物と組み合わされて存在する。
【0071】
特に好ましい実施形態において、1又は2以上のTNF‐アルファ阻害化合物は、ステロイドと組み合わされて存在するが、上記ステロイドとしては、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、フルニソリド、プロピオン酸フルチカソン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、デソニド、デソキシメタゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸クロベタゾール、及びデキサメタゾンが挙げられる。
【0072】
特定の疾患の処置において、TNF‐アルファ抑制剤を麻酔薬、例えば、エタノール、ブピバカイン、クロロプロカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プロカイン、ロピバカイン、テトラカイン、デスフルラン、イソフルラン、ケタミン、プロポフォール、セボフルラン、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、マーカイン、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、レミフェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ナルブフィン、トラマドール、ベンゾカイン、ジブカイン、塩化エチル、キシロカイン、及びフェナゾピリジン、と組み合わせて用いて患者を処置することが有益であり得る。
【0073】
インビトロ合成
ヒト・ベータ・デフェンシン2などの哺乳動物ベータ・デフェンシンを、当該技術分野で知られている従来の方法を使用してインビトロ合成によって調製することもできる。様々な市販の合成装置、例えばApplied Biosystems Inc.、Beckmanなどによる自動合成装置が、利用可能である。合成装置を使用することによって、天然アミノ酸を、非天然アミノ酸、特にD‐異性体(又はD型)、例えばD‐アラニンやD‐イソロイシン、ジアステレオ異性体、異なる長さ又は機能性を持つ側鎖等で置換することもできる。調製の特定の順序や様式は、利便性、経済性、必要な純度等によって決定される。
【0074】
アミド又は置換アミン形成、例えば還元アミノ化のためのアミノ基、例えばチオエーテル又はジスルフィド形成のためのチオール基、アミド形成のためのカルボキシル基等の結合に都合のよい官能基を含めた化学的な結合が、様々なペプチド又はタンパク質に提供されてもよい。
【0075】
所望であれば、合成中又は発現中に様々な基をペプチド内に導入することもでき、それが他の分子又は表面に連結することを可能にする。よって、システインはチオエーテルを作るのに使用でき、ヒスチジンは金属イオン錯体に連結するために使用でき、カルボキシル基はアミド又はエステルを形成するために使用でき、アミノ基はアミドを形成するために使用できる等である。
【0076】
哺乳動物ベータ・デフェンシンはまた、組み換え合成の従来の方法に従って単離され、そして精製されることもできる。発現宿主の溶解物を調製し、そしてその溶解物をHPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、又は他の精製技術を使用して精製してもよい。
【0077】
本発明の更なる態様と実施形態を以下に概説する:
請求項10.関節リウマチ、骨関節炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症(全身性硬化症)、ループス、全身性エリテマトーデス(SLE)、(急性)糸球体腎炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸窮迫症候群(ARDS)、血管炎、ブドウ膜炎、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脱毛症、(アレルギー性)鼻炎、アレルギー性結膜炎、重症筋無力症、硬化性皮膚炎、サルコイドーシス、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、及びベーチェット病から成る群から選択される炎症性疾患又は障害の処置のための哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0078】
請求項11.非経口投与される、請求項10に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0079】
請求項12.静脈内又は皮下に投与される、請求項11に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0080】
請求項13.ヒト・ベータ・デフェンシンである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0081】
請求項14.配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0082】
請求項15.ヒト・ベータ・デフェンシン1、ヒト・ベータ・デフェンシン2、ヒト・ベータ・デフェンシン3、又はヒト・ベータ・デフェンシン4である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0083】
請求項16.配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項10〜15のいずれか1項に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0084】
請求項17.ヒト・ベータ・デフェンシン2である、請求項10〜16のいずれか1項に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0085】
請求項18.TNF‐アルファ活性が処置された組織において低減される、請求項10〜17のいずれか1項に記載の哺乳動物ベータ・デフェンシン。
【0086】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、その実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されるものではない。
【実施例】
【0087】
実施例1
ヒト・ベータ・デフェンシン2(hBD2)の抗炎症活性
免疫調節効果についてhBD2を試験している中で、hBD2に非常に高い抗炎症能力があることが思いがけず観察された。ヒトPBMC培養物において、hBD2による処理がLPS、LTA又はペプチドグリカンで刺激した培養物のサイトカイン特性に大きな影響をもたらすことが観察された。hBD2が炎症誘発性サイトカイン及びケモカイン、IL‐6、IL‐1β、RANTES、IP‐10及びIL‐8を誘導することができることはこれまでに観察されていた(Niyonsaba et al.,2007、Boniotto M.et al.,2006)。
【0088】
ここで、我々は、hBD2にはTNF及びIL‐1βの2種類の炎症誘発性サイトカインに対して下方制御能力があり;且つ、hBD2はまた、リポ多糖(LPS)、リポタイコ酸(LTA)又はペプチドグリカン(PGN)を用いた炎症刺激の誘導時にIL‐10を誘導することも示している。IL‐10は、潜在的抗炎症性サイトカインであるため、したがって、得られるhBD2の効果は抗炎症効果である。これはヒトPBMC、単球細胞系、及び樹枝状(dendritoid)細胞株に関して観察された。
【0089】
材料と方法
hBD2の製造
hBD2を組み換えによって製造した。hBD2をコード化した合成DNAフラグメント(DNA2.0)を、pET‐32(+)発現ベクター(Novagen)内にクローン化した。得られたプラスミドは、N末端チオレドキシン部分とそれに続くhis‐タグ、エンテロキナーゼ開裂部位、及び最後にhBD2ペプチドを含んでいる翻訳融合ペプチドをコード化していた。発現プラスミドをE.コリ(E.coli)株BL21内に形質転換した。
【0090】
この菌株の一晩培養物を、100μg/mlのアンピシリンを含有したTB‐グリセロール中で100倍まで希釈し、37℃にて約8のOD600まで培養し、そして0.5mMのIPTGで3時間誘導した後、細胞を遠心分離によって集菌した。his‐タグが付与されたtrx‐hBD2融合ペプチドを、標準的なプロトコールを使用したNi‐NTAビーズ(QIAGEN)により精製した。his‐タグ精製した融合ペプチドを、続いてエンテロキナーゼ・バッファー(50mMのtris‐HCl pH7.5、1mMのCaCl2)中で一晩透析し、そしてエンテロキナーゼによって開裂して、成熟hBD2を切り離した。hBD2ペプチドを、Source15Sマトリックス(Amersham Biosciences)を使用したカチオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製した。hBD2の正確な分子量を、MALDI‐TOF質量分析法を使用して確認した。
【0091】
mBD3(実施例4を参照のこと)の製造を、同一のプロトコールを使用して実施した。
【0092】
続いて、hBD2分子の適切な折りたたみ及びジスルフィド架橋形態を、LC‐MS及びNMR分光法に併せてトリプシン分解を使用して確認した。
【0093】
エンドトキシンをhBD2及びmBD3調製物から低pHの調製用RP‐HPLCによって取り除き、そしてエンドトキシンの含有量をLALアッセイ(Endosafe KTA2)によって測定すると、そのレベルがアッセイの検出限界(0.05EU/mg)より低いことがわかった。エンドトキシン・アッセイの検出限界より低いレベルがPBMCを刺激できないことを確かめるために、非常に強力なリポ多糖(E.コリ、O111:B4、Sigma L4391)を用いた刺激の滴定曲線を行った。非常に低いレベルのこのLPS(0.06ng/ml)は、検出可能なサイトカイン産生までPBMCを刺激できた。
【0094】
PBMCの分離と刺激
末梢血を、(デンマークの関連倫理委員会からの承認を受けた)健常ボランティアから採血した。ヘパリン添加血液を、RPMIで1/1 v/vに希釈し、そして採血後2時間以内に、それをFicoll密度遠心分離にかけた。個々のドナーからの血漿を上端部から回収し、そして培地(自家培地)中に2%で使用するまで、それを氷上に保持した。分離したPBMCを、自家培地中に再懸濁し、合計200μl中、1ウェルあたり255,000細胞で96ウェル培養プレート内に播種した。同じドナーからのPBMCを、100、10又は1μg/mlのhBD2で、単独で、あるいは0.6ng/ml又は20ng/mlのLPS(E.コリ、O111:B4、Sigma L4391)、1.25μg/mlのリポタイコ酸(LTA)(B.ズブチリス(B.subtilis)由来、Sigma L3265)又は40μg/mlのペプチドグリカン(PGN)(S.アウレウス(S.aureus)由来、Sigma 77140)と一緒に刺激した。刺激に使用する濃度は、最初の実験で3人の異なるドナーに対して最適化し、LPSに関しては、調節可能なサイトカイン・レベルにあることを確実にするために、2つの異なった濃度を使用した。いくつかの実験において、炎症誘発性サイトカインの下方制御におけるコントロールとしてデキサメタゾンとインドメタシン単独で、及びLPS又はLTAと一緒に、PBMCを処理した。上清を、37℃にて24時間のインキュベーション後に回収し、そして80℃にてサイトカイン測定まで保存した。生存率を、すべての実験でAlamar Blue(Biosource、DALL 1100)によって製造業者の取扱説明書に従って計測し、場合によってはMTS(Promega)によっても計測し、そしていくつかの実験においては、生存率をNucleocounterによる細胞のカウントによっても判断した。
【0095】
MUTZ‐3の培養と刺激
ヒト骨髄性白血病由来細胞株MUTZ‐3(DSMZ、Braunschweig、Germany)を、20%[容積/容積(v/v)]のウシ胎仔血清(Sigma F6178)及び40ng/mlのrhGM‐CSF(R&D System 215‐GM‐050)を補ったa‐MEM(Sigma M4526)中で維持した。これらの始原細胞は、以下に示された単球細胞株の状態にあるので、これらの単球を、100、10又は1μg/mlのhBD2で、単独で又はLPS若しくはLTAと一緒に刺激した。
【0096】
樹状細胞の分化
樹枝状細胞株を作出するために、ヒト骨髄性白血病細胞株MUTZ‐3(1×105細胞/ml)を、rhGM‐CSF(150ng/ml)及びrhIL‐4(50ng/ml)の存在下で7日間未成熟なDCsに分化させた。培地を2〜3日おきに交換した。分化細胞株を、hBD2を伴う及び伴わないLPS又はLTAのいずれかでさらに刺激して、樹状細胞に対するhBD2の効果について調査した。
【0097】
サイトカインの測定
上清におけるサイトカイン産生を、FACSアレイ・フローサイトメーターによる製造業者の取扱説明書に従ってヒト炎症Cytometric Bead Array(CBA)(BD)を用いたフローサイトメトリーによって計測した。以下のサイトカイン:IL‐8、IL‐1β、IL‐10、TNF、IL‐12p70、IL‐6について計測した。いくつかの実験において、サイトカインを、製造業者の取扱説明書に従ってR&D systems製のELISAキット(IL‐10、TNF‐α、IL‐1β)によって計測した。
【0098】
データ分析
すべての実験を、代表的な結果が示されている少なくとも2回実施した。提示されたデータは、平均プラス/マイナス標準偏差(SD)として表されている。統計的有意性を、表の説明文で説明されているとおり、処理(hBD2、デキサメタゾンなど)及び刺激(LPS、LTA、ペプチドグリカンなど)の変数を用いた2−way ANOVAとそれに続くBonferroniの事後検定よって判定した。差は、p<0.05の時に有意であるとみなした。
【0099】
結果
hBD2の効果を、LPS及びLTAを用いて、及び用いずに処理したヒトPBMCに対して試験した(表1、2、及び3)。hBD2での処理は、試験した3つの濃度すべてに関して刺激培養物におけるTNFの有意な下方制御をもたらし(表1)、その下方制御は0.6ng/mlのLPS及びLTAに関して用量依存的である。IL‐1βに関して、下方制御は、大部分が最も高い用量で観察された(表2)。興味深いことに、IL‐10は、有意に、そして用量依存的に上方制御された(表3)。炎症誘発性サイトカインの下方制御と抗炎症性サイトカインの誘導は、hBD2の非常に高い抗炎症能力を示している。生存率は、hBD2の抗炎症作用が細胞傷害効果に起因することを排除するために、2つの異なるアッセイによって計測された。表4及び5では、hBD2が細胞に対して細胞傷害効果を全く持っておらず、観察された効果が、細胞の増殖につながるLPS又はLTAでの刺激による刺激効果であることがわかった。従って、hBD2は、これらの細胞に対して細胞傷害効果を全く持っていない。
【0100】
表6、7、及び8では、別のドナーからの上清を、フローサイトメトリーによるCytometric Bead Arrayの代わりにELISAによってサイトカインについて分析し、そしてここで同じ結果を観察したが、アッセイの感度が低いうえに検出限界がとても高いので、そのため効果は有意でなかった。
【0101】
さらに別のToll様受容体リガンドを試験するために、ペプチドグリカン刺激PBMCに対するhBD2の効果を調査した(表9及び10)。同じ結果を観察した:TNFは用量依存的に下方制御され、そしてIL‐10は用量依存的に誘導される。
【0102】
TNFの下方制御に関するポジティブ・コントロールとして、2つの抗炎症性化合物、デキサメタゾン及びインドメタシンをアッセイで試験した。化合物が有毒にならず、且つ、培地中の溶解性によって達成可能な濃度であるように、濃度が選択されている。インドメタシンだけではLTAでの刺激後にTNFを阻害した(表11)のに対して、デキサメタゾンはTNF産生を効果的に下方制御し、同じ結果がIL‐1βに関しても観察された(表13)。インドメタシンは、COX‐1及びCOX‐2阻害剤であり、軽度〜中等度の疼痛を処置するため、及び関節炎の症状を取り除くのを助けるために使用される非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である、そしてデキサメタゾンは、主として炎症性疾患の処置に使用される合成グルココルチコイドであり、且つ、非常に少量でも炎症誘発性サイトカインに対して非常に強力な下方制御効果を有していて(Rowland et al.,1998)、そのことは、我々もまたTNF‐α及びIL‐1βに関して観察している。hBD2は、これらの2つの抗炎症性化合物くらい、又はそれらよりも有効である。
【0103】
表14及び15では、単球細胞株及び樹状細胞におけるTNFの下方制御に対するhBD2の効果が示されており、PBMCで観察されたのと同じ結果が観察されている。IL‐10はまた、hBD2及びLPS又はhBD2及びLTAで刺激した樹状細胞に関しても誘導された(結果未掲載)。
【0104】
hBD2のLPS又はLTAへの結合がTNF及びIL‐1βの下方制御を引き起こすのを排除するために、合成リガンド(Pam3CSK4(TLR2‐TLR1リガンド)、InvivoGen tlrt‐pms)でのPBMCの刺激に対するhBD2の効果を試験した。hBD2は、同じくこのリガンドでの刺激後でもTNFを下方制御することができ、LPS又はLTAの中和が観察された効果に関与していないことを示している(結果未掲載)。そのうえ、hBD2と一緒にTNF‐α及びIL‐αを含有しているサイトカイン・カクテルでの樹状細胞の刺激が、サイトカイン・カクテル単独での刺激と比較してIL‐1β、IL‐8、及びIL‐6に対する下方制御効果を有していた。明らかに、TNFに対して効果がないことを、TNF‐αでの刺激により分析できた(結果未掲載)。
【0105】
表1.hBD2を伴う若しくは伴わないLPS又はLTAによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのTNF産生、すべてのサンプルを同じドナー、つまり5人のドナーのうちの代表的な実験で試験した。TNF:FACSアレイによりCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001:それぞれのコントロール(太字)と比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析した。
【0106】
【表1】

【0107】
表2.hBD2を伴う若しくは伴わないLPS又はLTAによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIL‐1β産生、すべてのサンプルを同じドナー、つまり5人のドナーのうちの代表的な実験で試験した。IL‐1β:FACSアレイによりCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001:2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析した。
【0108】
【表2】

【0109】
表3.hBD2を伴う若しくは伴わないLPS又はLTAによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIL‐10産生、すべてのサンプルを同じドナー、つまり5人のドナーのうちの代表的な実験で試験した。IL‐10:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.5:2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析した。
【0110】
【表3】

【0111】
表4.24時間の刺激後のPBMC生存率をMTSアッセイによって計測した。異なる上付き文字を持つ行中の値には、2−way ANOVAとそれに続くBonferroni事後検定によって検定された有意差がある。
【0112】
【表4】

【0113】
表5.Alamar blueによって計測したPBMC生存率、5人の異なるドナーからの5つ実験のうちの1つの代表的な実験。異なる上付き文字を持つ行中の値及び異なる上付き文字を持つ列中の値には、2−way ANOVAとそれに続くBonferroni事後検定によって検定された有意差がある。
【0114】
【表5】

【0115】
表6.hBD2、LTA、LPS又はこの混合物での刺激後のPBMCからのTNF‐アルファ分泌。TNF‐アルファ:ELISAによって計測した、nd:不検出、アッセイにおける検出限界:0.01ng/ml、*p<0.05:それぞれのコントロールと比較した、**p<0.01:それぞれのコントロールと比較した。
【0116】
【表6】

【0117】
表7.hBD2、LTA、LPS又はこの混合物での刺激後のPBMCからのIL‐10分泌。TNF‐アルファ:ELISAによって計測した、nd:不検出、アッセイにおける検出限界:0.03ng/ml。
【0118】
【表7】

【0119】
表8.hBD2、LTA、LPS又はこの混合物での刺激後のPBMCからのIL‐1β分泌、TNF‐アルファ:ELISAによって計測した、nd:不検出、アッセイにおける検出限界:0.016ng/ml、**p<0.01:それぞれのコントロールと比較した。
【0120】
【表8】

【0121】
表9.hBD2を伴う若しくは伴わないPGNによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのTNF産生;すべてのサンプルを同じドナーで試験した。TNF:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001:それぞれのコントロールと比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析した。
【0122】
【表9】

【0123】
表10.hBD2を伴う若しくは伴わないPGNによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIL‐10産生;すべてのサンプルを同じドナーで試験した。TNF:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001:それぞれのコントロールと比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析した。
【0124】
【表10】

【0125】
表11.hBD2を伴う若しくは伴わないLPS又はLTA、あるいはTNFの阻害に関する2つの異なるコントロール(デキサメタゾンとインドメタシン)による処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのTNF産生;すべてのサンプルを同じドナーで試験した。TNF:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、下線を引いた値は、それぞれのコントロール(太字)と比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析すると有意に減少している。
【0126】
【表11】

【0127】
表12.hBD2を伴う若しくは伴わないLPS又はLTA、又は抗炎症作用に関する2つの異なるコントロール(デキサメタゾンとインドメタシン)による処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIL‐10産生;すべてのサンプルを同じドナーで試験した。IL‐10:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、下線を引いた値は、それぞれのコントロール(太字)と比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析すると有意に増加している。
【0128】
【表12】

【0129】
表13.hBD2を伴う若しくは伴わないLPS又はLTA、又は抗炎症作用に関する2つの異なるコントロール(デキサメタゾンとインドメタシン)による処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIL‐1β産生;すべてのサンプルを同じドナーで試験した。IL‐1β:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、下線を引いた値は、それぞれのコントロール(太字)と比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析すると有意に減少している。
【0130】
【表13】

【0131】
表14.hBD2を伴う若しくは伴わないLPS又はLTAによる処理後のヒト単球細胞株(MUTZ‐3)からの上清におけるTNF産生。TNF:FACSアレイによりCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、*p<0.05:それぞれのコントロールと比較し、**p<0.01:それぞれのコントロールと比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析した。
【0132】
【表14】

【0133】
表15.hBD2を伴う若しくは伴わない(成熟DCを作出するための)LPS又はLTAで刺激した未成熟樹状細胞からの上清におけるTNF産生。TNF:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、*有意に減少したp<0.05:それぞれのコントロールと比較し、***有意に減少したp<0.01:それぞれのコントロールと比較し、2−way ANOVA(N=各データセットあたり約200)によって分析した。
【0134】
【表15】

【0135】
実施例2
hBD1、hBD2、hBD3、及びhBD4バリアントの抗炎症活性
実施例2を、実質的に実施例1に記載のとおり実施した。以下の表中に示されている化合物rhBD2は組み換えhBD2であるが、これは実施例1で使用されているhBD2と同一である。
【0136】
以下の表中に示されている化合物hBD1、hBD2、hBD3、及びhBD4バリアントは、化学合成を使用して調製されたもので、Peptide Institute Inc.から入手された。
組み換えhBD2(rhBD2)のアミノ酸配列は、化学合成によって調製したhBD2のアミノ酸配列と同一である。
【0137】
以下の表中に示されているhBD4バリアントは、hBD4の第3〜39アミノ酸から成っており、そしてそのアミノ酸配列は配列番号5として示されている。
【0138】
各表において、すべてのサンプルを同じドナーで試験した。SDは標準偏差を意味する。
【0139】
結果
表16.ヒト・ベータ・デフェンシン、デキサメタゾン、若しくはインフリキシマブを伴う又は伴わないLPSによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのTNF産生。TNF:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001:2−way ANOVAによって分析し、そしてBonferroni事後検定によって無処理細胞と比較した。
【0140】
【表16】

【0141】
表17.ヒト・ベータ・デフェンシン、デキサメタゾン、若しくはインフリキシマブを伴う又は伴わないLPSによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIL‐10産生。IL‐10:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001:2−way ANOVAによって分析し、そしてBonferroni事後検定によって無処理細胞と比較した。
【0142】
【表17】

【0143】
表18.ヒト・ベータ・デフェンシン、デキサメタゾン、若しくはインフリキシマブを伴う又は伴わないLPSによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIL‐1β産生。IL‐1β:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001:2−way ANOVAによって分析し、そしてBonferroni事後検定によって無処理細胞と比較した。
【0144】
【表18】

【0145】
hBD1、hBD2、hBD3、及びhBD4バリアントの効果を、LPSで処理したヒトPBMC、及びLPSなしで処理したヒトPBMCで試験した(表16、17、及び18)。比較のために、rhBD2を各構成に加えた。
【0146】
TNFは、すべてのデフェンシンに関して下方制御された。IL‐1β分泌の減少をTNFと比較したが、TNFほど顕著ではなかった。IL‐10の分泌は有意であり、そしてhBD2及びhBD4バリアントに関しては用量依存的に増強された。
【0147】
hBD3を10μg/ml及び40μg/mlにおいても試験し、そしてhBD4バリアントを40μg/mlにおいても試験した;しかしながら、両分子はこれらの濃度において細胞に対して有毒であったので、毒性と抗炎症作用を区別することは不可能であった。
TNFの下方制御に関するポジティブ・コントロールとして、2つの抗炎症性化合物、デキサメタゾン及びインフリキシマブを構成に加えた。
【0148】
結論
試験したヒト・ベータ・デフェンシンの全てが抗炎症能力を示した。
【0149】
実施例3
ヒト単球由来樹状細胞及びヒトPBMCからのIL‐23の減少
実施例3を、実質的にヒトPBMCに関して実施例1に記載されたとおり実施した;しかしながら、読み取りはTNF、IL‐1β、及びIL‐10ではなくIL‐23であった。そのうえ、ヒト単球由来樹状細胞に対するrhBD2の効果もまた調査した。
【0150】
単球由来樹状細胞(DCs)の作出
DCsを、最初にRomaniらによって記載された改良プロトコールに従って調製した。簡単に言えば、末梢血単核細胞(PBMCs)を、Ficoll‐pague(GE‐healthcare)勾配上での遠心分離によって健常ドナーの軟膜から精製した。単球を、製造業者の取扱説明書に従って磁性ビーズ(Dynal、Invitrogen)によるCD14+細胞の正の選択によってPBMCから単離した。CD14+単球を、6ウェルプレート内のRPMI/2%ヒトAB血清組み換えヒト組み換え顆粒球‐マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF、20ng/ml)及びIL‐4(20ng/ml)(PeproTech)中、2及び5日後に培地/サイトカインを補給して6日間培養した。6日間にわたる培養後に、未成熟DCsを、96ウェルプレート内で1×106細胞/mlの濃度にて再培養し、そして無処理のままにしておくか、又はカクテル及び/又はhBD2でさらに24時間処理する。hBD2を、四重反復試験において4種類の濃度で試験した。hBD2を、LPS(100ng/ml)及びIFN‐γ(20ng/ml)を含んだ炎症誘発カクテルを使用して炎症誘発性表現型へのhDCの成熟化を抑制する能力について分析した。デキサメタゾンを、臨床的抗炎症活性が証明された化合物のポジティブ・コントロールとしてカクテルに20時間前に加えた。hBD2とのインキュベーションを、カクテルの添加より4時間前におこなった。
【0151】
サイトカインELISA
細胞培養上清を、回収し、そして−80℃にて保存した。IL‐23の量を、製造業者のプロトコール(eBioscience)に従って市販の抗体と標準物質を使用した標準的なサンドイッチELISA法によって計測した。
【0152】
MTTアッセイ
MTTベースの細胞増殖測定キットを、細胞のいずれかがビヒクル、カクテル又はhBD2での処理によって重大な影響を受けているか評価するために48時間後の細胞生存の評価基準として使用し、そして製造業者のプロトコール(Sigma)に従ってそれをおこなった。
【0153】
統計的分析
すべての実験を、示されている代表的な結果を含めて少なくとも2回実施した。提示されたデータは、平均プラス/マイナス標準誤差(SEM)として表されている。統計的有意性は、表の説明文で説明されているとおり、処理(hBD2、デキサメタゾンなど)及び刺激(LPS、LTA、ペプチドグリカンなど)の変数を用いた2−way ANOVAとそれに続くBonferroni事後検定によって判定した。差は、p<0.05の時に有意であるとみなした。
【0154】
結果
表19.培地(未刺激)又はLPS及びIFN‐γのいずれかで刺激し、そして培地(無処理)、hBD2、又はデキサメタゾンのいずれかで処理したヒトCD14+単球由来樹状細胞の上清中のIL‐23(pg/ml)、平均(SEM)、N=4、3人のドナーのうちの1人の代表的なドナー。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001:2−way ANOVAによって分析し、そしてBonferroni事後検定によって無処理細胞と比較した。nd:不検出(検出限界以下)。
【0155】
【表19】

【0156】
表20.培地(コントロール)、0.6ng/mlのLPS、20ng/mlのLPS、又は5μg/mlのLTAのいずれかで刺激し、そしてhBD2、デキサメタゾン、又はインフリキシマブで処理したヒトPBMCの上清中のIL‐23(pg/ml)、平均(SEM)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001:1−way ANOVAによって分析し、そしてDunnett多重比較事後検定によって無処理細胞と比較した。
【0157】
【表20】

【0158】
表19中に示したとおり、hBD2は、ヒトCD14+単球由来樹状細胞からのIL‐23分泌を有意に、且つ、用量依存的に抑制する。
【0159】
ヒトPBMCに関して、IL‐23分泌もまた有意に抑制された(表20)。これらの細胞に対して逆用量依存性があり、それが低用量のhBD2を試験したときの釣鐘型用量‐応答阻害曲線であることがわかった(データ未掲載)。
【0160】
IL‐23が炎症反応の重要な部分であるので、これは、hBD2にはIL‐23分泌の抑制による慢性自己免疫性病態の抑制作用があるかもしれないことを示している。Th17細胞はそれらの生存と増殖に関してIL‐23に依存しているので、Th17細胞がクローン病、潰瘍性結腸炎、乾癬、及び多発性硬化症などのいくつかの自己免疫疾患における病因であることが示された。
【0161】
実施例4
マウス・ベータ・デフェンシン3(mBD3)を用いたPBMCsからのTNF分泌の減少
実施例4を、実質的にヒトPBMCに関して実施例1に記載されたとおり実施した。マウス・ベータ・デフェンシン3(mBD3)を、実施例1でhBD2の製造のために使用したものと同じプロトコールを使用して調製した。mBD3のアミノ酸配列を、配列番号6に示している。マウスPBMCsを以下に記載したとおり調製した。
【0162】
マウス末梢血単核細胞(PBMC)の分離と刺激
マウス末梢血単核細胞を10匹のNMRIマウスの血液から単離した。要するに、ヘパリン添加血液を、RPMIで1/1 v/vに希釈し、そして採血後2時間以内にFicoll密度遠心分離にかけた。血漿を上端部から回収し、そして処分した。単離したPBMCを、培地(1%のペニシリンとストレプトマイシン、及び1%のL‐グルタミンを含むRPMI1640(Gibco、42401))中に再懸濁し、そして合計200μl中、1ウェルあたり115,500細胞で96ウェル培養プレート内に播種した。同じドナーからのPBMCを、100、10、又は1μg/mlのhBD2又はmBD3(マウス・ベータ・デフェンシン3)で;単独で又は20ng/mlのLPS(E.コリ、O111:B4、Sigma L4391)と一緒に刺激した。デキサメタゾンを、LPS刺激を伴う又は伴っていない培養物に3.5ng/mlにて追加した。上清を、37℃にて24時間のインキュベーション後に回収し、そしてサイトカイン測定まで−80℃にて保存した。
【0163】
上清におけるサイトカイン産生を、FACSアレイ・フローサイトメーターによる製造業者の取扱説明書(BD)に従ったマウス炎症Cytometric Bead Array(CBA)を用いたフローサイトメトリーによって計測した。
【0164】
上清を回収した後に、生存率をAlamar Blue(Biosource DALL 1100)によって計測した。
【0165】
結果
表21.hBD2を伴う又は伴わないLPSによる処理後のヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのTNF産生、すべてのサンプルを同じドナー、つまり2人のドナーのうちの代表的な実験で試験した。TNF:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001:それぞれのコントロールと比較し、2−way ANOVA(N=2)によって分析した。
【0166】
【表21】

【0167】
表22.mBD3を伴う又は伴わないLPSによる処理後のマウス末梢血単核細胞(PBMC)からのTNF産生、すべてのサンプルを同じドナー、つまり2匹のドナーのうちの代表的な実験で試験した。TNF:FACSアレイによるCytometric Bead Array(CBA)によって計測した、***p<0.001:それぞれのコントロールと比較し、2−way ANOVA(N=2)によって分析した。
【0168】
【表22】

【0169】
表21に示したとおり、マウス・ベータ・デフェンシン3(mBD3)は、hBD2及びデキサメタゾンと同程度までヒトPBMCからのTNF分泌を下方制御している。mBD3もまた、マウスPBMCからのTNF分泌を下方制御する(表22)。
【0170】
従って、この構成において、mBD3は優れた抗炎症活性を示す。
【0171】
実施例5
マウスにおける10日間デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発結腸炎モデル
下記の研究の目的は、マウスにおける経口デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与によって誘発した炎症性腸疾患(結腸炎)の急性(10日間)モデルにおけるヒト・ベータ・デフェンシン2の抗炎症活性を測定することであった。
【0172】
DSS結腸炎マウスモデルは、Kawada et al.“Insights from advances in research of chemically induced experimental models of human inflammatory bowel disease”,World J.Gastroenterol.,Vol.13(42),pp.5581−5593(2007);及びWirtz and Neurath“Mouse models of inflammatory bowel disease”,Advanced Drug Delivery Reviews,Vol.59(11),1073−1083(2007)に記載されているとおり、炎症性腸疾患を研究するための十分に認識されたモデルである。
【0173】
材料
試験品目
ヒト・ベータ・デフェンシン2(hBD2):上記実施例1を参照のこと
メチルプレドニゾロン21‐ヘミコハク酸塩(「プレドニゾロン」)
PBSバッファー(GIBCO)
【0174】
実験動物
雄C57BL/6マウス(Harlan Interfauna Iberica、Barcelona,Spain)を研究で使用した、これが10日間にわたり飲料水の状態で2%のDSS溶液を投与したときに顕著な結腸の炎症を発症することが実証された種及び性別であったためである。
【0175】
識別
動物を、それらの尾の数字及び文字表記によって識別した。さらに、各ケージを、動物の数と性別、試験品目、コード又は名称、投薬レベル、投与経路、処置期間、グループ番号、研究コード、及び試験責任者名を示す色分けしたカードによって識別した。
【0176】
体重
研究開始日の動物の平均体重は、22.4±0.16gであった。
【0177】
順化(隔離)
最低でも研究開始より7日前に、主要な研究の条件と同じ条件下においた。
【0178】
動物舎
到着次第、動物を、ステンレス製の蓋の付いたポリカーボネートのケージ(E‐Type、Charles River、255×405×197mm)内に無作為に分け、そして収容した。
【0179】
動物を、温度(22±2℃)、照明(12/12時間の明/暗)、空気圧、空気入れ替えの回数、及び相対湿度(30〜70%)の管理された動物部屋内に、それらの性別により1ケージあたり5匹の動物群で収容した。
【0180】
ケージにはすべて、リターとして床の上におがくず(Lignocel 3‐4;Harlan Interfauna Iberica、Spain)を備えていた。
【0181】
食餌及び給水
すべてのマウスが、乾燥した標準的な齧歯動物ペレット飼料(Teklad Global 2014;Harlan Interfauna Iberica、Spain)を任意に摂取した。
【0182】
水は、適宜ボトル内に用意した。動物部屋への水道水供給を定期的に分析して、組成物をチェックし、そして想定される(化学的と細菌学的)混入物を検出した。
【0183】
機材
機器:
・動物はかりSartorius BP2100
・外科用解剖機器
・Eppendorf 5415C遠心分離機
・Nikon Eclipse E600FN顕微鏡
・Hook & Tucker instruments rotamixer
・IKA Ultra Turrax Homogeniser
・Sartorius Mod.BP221S分析用天秤
・ELISAマイクロプレートリーダーLabsystems Multiskan EX
【0184】
材料と試薬:
・滅菌済みディスポーザブルシリンジ(1ml)
・滅菌済みButterfly25G輸液セット
・麻酔剤(ケタミン/キシラジン)
・局所麻酔剤クリーム(EMLA、Astra Zeneca)
・デキストラン硫酸ナトリウム30.000〜50.000Da(MP Biomedicals)
・リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Sigma)
・中性緩衝ホルマリン(VWR)
・ウシ血清アルブミン(Sigma)
・プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)
・マウスTNF‐α ELISAキット(GE Healthcare)
【0185】
実験プロトコール
研究設計
動物を5つの実験群に分けた。各群は10匹の雄から成った:
グループA:コントロール・ビヒクル(PBS)i.v.で処置した
グループB:hBD2(0.1mg/kg i.v.)で処置した
グループC:hBD2(1mg/kg i.v.)で処置した
グループD:hBD2(10mg/kg i.v.)で処置した
グループE:メチルプレドニゾロン(1mg/kg p.o.)で処置した。
すべての実験群への動物割り振りを、無作為様式でおこなった。(指令86/609/EECに従って)最大5匹のマウスを各ケージに収容した。すべての動物を、研究室に到着した時点、及び試験品目の投与前に計量した。
【0186】
試験物質の投与
コントロール・ビヒクル及びhBD2を、スロー・ボーラスで、5ml/kg体重の投薬容積で滅菌済み針(25G)を使用して尾静脈を通じて静脈内に投与した。動物には、連続した10日間、1日(24時間毎)の用量の対応する試験品目(hBD2、プレドニゾロン、又はコントロール・ビヒクル)を与えた。
【0187】
プレドニゾロンを、hBD2と同じ投薬計画により、5ml/kg体重の投薬容積で1mg/kgの用量で経口的に与えた。
【0188】
実験手順
結腸炎の誘発
7日間、DSS2%をそれらの飲料水に足すことによって、結腸炎をマウスにおいて誘発した。
1日目に、すべてのマウスを計量し、そしてそれらの実験群に従ってマークを付けた。それぞれのケージの飲用ボトルをDSS溶液で満たし、すべてのボトルの蓋が適切にはめ込まれたこと、及び何も詰まっていないことを確認した。
【0189】
3日目に、ボトル内の残っている溶液をすべて取り除き、そして新しいDSS溶液で詰め替えた。この手順を、5日目に再び繰り返した。
【0190】
8日目に、残っている溶液をすべて捨て、そしてオートクレーブ処理した水で置き換えた。
【0191】
動物を10日目の2日間後に屠殺した。
【0192】
臨床的評価(疾患活動性インデックス)
DSS処置動物の毎日の臨床的評価を、以下のパラメーター:便の硬さ、直腸出血の有無、及び体重減少、に従って0〜4の範囲を持つ有効な臨床疾患活動性インデックス(DAI)の計算を用いて実施した。
【0193】
【表23】

【0194】
体重減少を、最初の体重(1日目)とそれぞれの実験日(2〜10日目)の実際の体重との差の割合(パーセント)として計算した。
【0195】
下痢の様子を、肛門の被毛への粘液/排泄物の付着と規定する。直腸出血を、目に見える血液/粘液を含んでいる下痢、又は肉眼的直腸出血と規定する。1日の最高DAIスコアは12である。
【0196】
血液のサンプリング
2つの血液サンプルを、研究経過中の2回の別々の時期:1日目と5日目に各動物から得た。血液サンプルを、試験品目の投与の2時間後に伏在静脈の穿刺によってMicrovette CB‐300マイクロチューブ内に得た。この血液採取法は、麻酔剤又は鎮痛剤を必要としないので、動物に最小限のストレスしか生じさせない(Hem et al.,1998)。さらに、末梢血サンプルを、研究最後日にすべての動物から、試験品目投与の2時間後にも腹筋大静脈から得た。
【0197】
血液サンプルを、凝固させ、次に3000rpmにて10分間遠心分離し、そして得られた血清を保管のために−80℃にて冷凍した。
【0198】
安楽死と結腸サンプルの収集
10日目、コントロール・ビヒクル、hBD2、又はプレドニゾロンの最後の投与の2時間後に、動物を過剰量の麻酔剤によって死に至らしめた。それらの結腸を、取り出し、そして盲腸の除去後にそれらの長さと重さを計測した。
【0199】
結腸の2つの切片(近位及び遠位)を、各動物から採取し、そして以下の採点法によるその後の組織学的分析(ヘマトキシリン及びエオシン染色)のために中性緩衝ホルマリン中で保存した:
【0200】
【表24】

【0201】
結腸組織サンプル中のTNF‐アルファ濃度の測定
結腸の追加サンプルを、各動物から得、そして1%のウシ血清アルブミン(BSA)とプロテアーゼ阻害剤カクテル(1ml/20g組織)を含有するPBS(100mg組織/ml PBS)中でホモジナイズした。次に、ホモジネートを1400rpmにて10分間遠心分離し、そしてその後の特異的酵素免疫学的アッセイ(ELISA)によるTNF‐α濃度の測定のために、その上清を−20℃にて保存した。
【0202】
結果
疾患活動性インデックス・スコア
表23.1日目〜10日目の疾患活動性インデックス(DAI)スコアの進行。所定の期日のコントロール(ビヒクル)群の値からの有意差を、*p<0.05;**p<0.01(ノンパラメトリック・データに関するKruskal‐Wallis検定)として示す。
【0203】
【表25】

【0204】
組織学的評価
結腸の2つの切片(近位及び遠位)を、各動物から採取し、組織学的分析(ヘマトキシリン及びエオシン染色)のために処理し、そして先に記載した組織学採点法に従って盲検観察者によってスコア化した。
【0205】
結腸組織サンプル中のTNF‐α濃度の決定
結腸の追加サンプルを、各動物から得、そして1%のウシ血清アルブミン(BSA)とプロテアーゼ阻害剤カクテル(1ml/20g組織)を含有するPBS(100mg組織/ml PBS)中でホモジナイズした。次に、ホモジネートを1400rpmにて10分間遠心分離し、そしてその後の特異的酵素免疫学的アッセイ(ELISA)によるTNF‐α濃度の測定のために、その上清を−20℃にて保存した。
【0206】
表24.組織学的スコア、結腸の重さと長さ、及び結腸TNF‐α濃度。コントロール(ビヒクル)群の値との組織学的スコアの差を、*p<0.05;**p<0.01(ノンパラメトリック・データに関するKruskal‐Wallis検定)として示す。
【0207】
【表26】

【0208】
統計解析
結果の統計的有意性を、統計プログラムGraphpad Instat3を使用して評価した。疾患活動性インデックスと組織学的スコアに関する群間の差を、対応のないデータに関するKruskal‐Wallis検定と事後検定Dunnによって評価して、多重比較を可能にした。p<0.05の値を有意であるとみなした。
【0209】
結論
結果は、試験した中で最も低い用量(0.1mg/kg i.v.)にてhBD2が、7日目(1.44±0.38試験品目対4.1±0.69ビヒクル;p<0.01)、8日目(2.11±0.2試験品目対5.9±1.26ビヒクル;p<0.05)、9日目(3.89±0.35試験品目対8.9±1.02ビヒクル;p<0.01)、及び10日目(6.44±0.85試験品目対10.9±0.62ビヒクル;p<0.05)にDSS投与によって誘発された疾患活動性インデックスの上昇を有意に低下させることを実証している。
【0210】
中間用量のhBD2(1mg/kg i.v.)を用いた10日間の連続した処置は、疾患活動性インデックス・スコアの見かけ上の低下をもたらしたが、これは10日目においてのみ有意であった(6.44±1.08試験品目対10.9±0.62ビヒクル;p<0.05)。
【0211】
10日目の疾患活動性インデックスで得られた結果と同様に、それぞれの動物の近位結腸の組織学的分析は、低用量のhBD2を用いた処置による組織学的損傷スコアの非常に有意な低下を明らかにした(2.22±0.43試験品目対4.2±0.25ビヒクル;p<0.01)。そのうえ、組織学傷害の有意な低下はまた、中間用量及び高用量のhBD2、並びにプレドニゾロンでも観察された(2.89±0.35;2.89±0.39及び2.8±0.5、それぞれp<0.05)。対照的に、遠位結腸では、‐組織学傷害の見かけ上の減少が、低用量及び中間用量のhBD2、並びにプレドニゾロンによって処置した動物に関して観察できたが‐これは統計的に有意でなかった。高用量のhBD2で処置した動物において低下は観察できなかった。同様に、低用量及び中間用量のhBD2での処置は、結腸のTNF‐アルファ・レベルの見かけ上の低下をもたらしたが、この見かけ上の低下は統計的に有意でなかった。
【0212】
本研究において得られた結果は、10日間の処置期間後にマウスで誘発したDSS結腸炎のモデルにおけるhBD2の抗炎症活性を実証している。しかしながら、この抗炎症活性は、使用した中でもより低い用量のhBD2(0.1mg/kg/日 i.v.)にてより顕著であるように思われ、そして研究で使用した中で最も高い用量(10mg/kg/日 i.v.)まで用量が増加するにつれて徐々に失われる。そのうえ、最も低い用量のhBD2の抗炎症作用は、1mg/kg/日 p.o.の用量のプレドニゾロンの作用に匹敵するか、それよりさらに大きいことさえある(例えば組織学的スコア)。
【0213】
実施例6
マウスにおける10日間デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発結腸炎モデル
実施例6を、実質的に実施例5に記載されたとおり実施した。相違点を以下に示す。
【0214】
体重
研究開始日の動物の平均体重は、19.74±0.09g(平均±SEM)であった。
【0215】
研究設計
動物を9つの実験群に分けた。各群は10匹の雄から成った:
グループA:コントロール・ビヒクル(PBS)i.v.で処置した
グループB:hBD2(1mg/kg i.v.)で処置した‐1日1回
グループC:hBD2(0.1mg/kg i.v.)で処置した‐1日1回
グループD:hBD2(0.01mg/kg i.v.)で処置した‐1日1回
グループE:hBD2(0.001mg/kg i.v.)で処置した‐1日1回
グループF:hBD2(0.1mg/kg i.v.+s.c.)で処置した‐1日2回
グループG:hBD2(0.1mg/kg i.v.)で処置した‐2日に1回
グループH:メチルプレドニゾロン(1mg/kg p.o.)で処置した
グループJ:メチルプレドニゾロン(10mg/kg p.o.)で処置した。
【0216】
すべての実験群への動物割り振りを、無作為様式でおこなった。(指令86/609/EECに従って)最大5匹のマウスを各ケージに収容した。すべての動物を、研究室に到着した時点、及び試験化合物と基準化合物の投与前に計量した。
【0217】
試験品目の投与
コントロール・ビヒクル及びhBD2を、(15秒間かけて)スロー・ボーラスとして5ml/kg体重の投薬容積で滅菌済み針(25G)を使用して尾静脈を通じて静脈内に投与した。
【0218】
グループA〜グループEの動物には、連続した10日間、1日(24時間毎)用量の対応する試験品目(hBD2、プレドニゾロン、又はコントロール・ビヒクル)を与えた。
【0219】
グループFの動物には、連続した10日間、ある用量でi.v.及び別の用量でs.c(i.v.用量の12時間後)の対応する試験品目を与えた。
【0220】
グループGの動物には、連続した10日間、2日に1回1用量の対応する試験品目を与えた。
【0221】
メチルプレドニゾロンを、連続した10日間1日1回、5ml/kg体重の投薬容積で1mg/kg(グループH)及び10mg/kg(グループJ)の用量にて経口的に与えた。
【0222】
血液サンプリング
末梢血サンプルを、研究最後日にすべての動物から、試験品目投与の2時間後に腹筋大静脈から得た。
【0223】
血液サンプルを、凝固させ、次に3000rpmにて10分間遠心分離し、そして得られた血清をその後の分析のために−80℃にて冷凍した。
【0224】
結果
疾患活動性インデックス・スコア
表25.1日目〜10日目の疾患活動性インデックス(DAI)スコアの進行。所定の期日のコントロール(ビヒクル)群の値からの有意差を、*p<0.05;**p<0.01(ノンパラメトリック・データに関するKruskal‐Wallis検定)として示す。6日目〜10日目を次のページに示す。
【0225】
【表27】

【0226】
【表28】

【0227】
組織学的評価
結腸の2つの切片(近位及び遠位)を、各動物から採取し、組織学的分析(ヘマトキシリン及びエオシン染色)のために処置し、そして先に記載した採点法に従って盲検観察者によってスコア化した。
【0228】
表26.組織学的スコア、結腸の重さと長さ、及び結腸TNF‐α濃度。コントロール(ビヒクル)群の値との組織学的スコアの差を、*p<0.05;**p<0.01(ノンパラメトリック・データに関するKruskal‐Wallis検定)として示す。
【0229】
【表29】

【0230】
統計解析
結果の統計的有意性を、統計プログラムGraphpad Instat3を使用して評価した。疾患活動性インデックスと組織学的スコアに関する群間の差を、対応のないデータに関するKruskal‐Wallis検定と事後検定Dunnによって評価して、多重比較を可能にした。p<0.05の値を有意であるとみなした。上記の表中では、対応するコントロール(ビヒクル)群に対する有意差を:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001で示す。
【0231】
結論
本研究の目的は、マウスで経口デキストラン硫酸ナトリウム(DSS、2%)投与によって誘発した炎症性腸疾患(結腸炎)の急性(10日間)モデルにおけるhBD2の抗炎症活性を測定することであった。
【0232】
本研究において得られた結果は、10日間の処置期間後にマウスで誘発したDSS結腸炎のモデルにおけるhBD2の抗炎症活性をさらに実証している。
【0233】
この抗炎症活性は、0.1mg/kgの用量にて静脈内と皮下の両方での1日2回(12時間毎)のhBD2投与後により顕著であるように思われた。そのうえ、この用量のhBD2で観察された抗炎症作用は、経口的に与えられた1mg/kg又は10mg/kgの用量のプレドニゾロンの作用に匹敵するか、(疾患活動性インデックスと組織学的スコアの両方では)それよりさらに大きいことさえある。
【0234】
実施例7
コラーゲン誘発関節リウマチモデルにおけるヒト・ベータ・デフェンシン2の評価
下記の研究の目的は、マウスでのコラーゲン誘発関節リウマチモデルにおけるヒト・ベータ・デフェンシン2の抗炎症活性を測定することであった。
【0235】
試験システム
種/系統:マウス/DBA/1
供給業者:Harlan、UK
性別:雄
動物数:n=50
年齢:若年成体、研究開始時点で6〜8週齢
体重:コラーゲン誘発時点での研究動物の体重のばらつきは平均体重の±20%を超えていなかった。
動物健康:この研究で使用した動物の健康状態は到着時点で検査した。良好な健康である動物だけを、研究室条件に順化し、そして研究に使用した。
順化:少なくとも7日間。
【0236】
動物舎:気候順化と次の投薬の間、動物を、立ち入りが制限された齧歯動物の施設内に収容し、そして丈夫な底を取り付け、そして床材としてかんな屑を詰め込んだポリプロピレン製ケージ(45cm×25cm×13cm)内に、最大10匹のマウスから成る群を入れておいた。ケージを1週間に1回変えた。
【0237】
食餌と給水:動物は、市販の齧歯動物飼料を任意に摂取し、そしてステンレス製の吸水管(sipper tubes)を備えたポリエチレン製ボトルによって各ケージに供給された飲料水を自由摂取した。給水ボトルを少なくとも3週間に1回交換した。水を1週間に3回交換した。
【0238】
環境:自動的制御環境条件を、30〜70%の相対湿度(RH)を持つ20〜24℃の温度、12/12時間の明/暗サイクル、及び研究室における10〜30回の換気/時間を維持するように設定した。温度とRHを、手作業の測定と制御コンピューターの両方で毎日観察した。明るさのサイクルを、制御コンピューターによって観察した。
【0239】
識別:動物には、固有な動物識別耳番号を付与した。この数はまた、それぞれのケージの前面に見えるケージ・カードにも載せた。ケージ・カードには研究番号も含まれた。
無作為化:動物を無作為に実験群に割り付けた。
終了:研究の終了時に、生き残った動物をO2/CO2吸入とそれに続く放血によって安楽死させた。
根拠:この実験的動物モデルにとって最適な種であってので、マウスを選択した。DBA/1系統のマウスは、コラーゲン誘発関節炎(CIA)に高い感受性を持っている。
【0240】
材料
ヒト・ベータ・デフェンシン2(hBD2);実施例1を参照のこと
デキサメタゾン(Sigma、カタログ番号D1756)
ウシII型コラーゲン(MD Biosciences、カタログ番号804001314)
完全フロイントアジュバント(CFA)(MD Biosciences、カタログ番号501009703)
PBS(PAA、カタログ番号H15‐002)
試験群の構成
表27.試験グループと処置。
【0241】
【表30】

【0242】
試験手順
関節炎誘発
すべての動物に、研究0日目(研究の開始)に、軽いイソフルラン麻酔下、プラスチック製シリンジを使用して0.1mlのII型コラーゲン/CFA乳濁液(マウス1匹あたり200μgのコラーゲン)の尾部への皮内注射を与えた。注射位置は、体の後端に近接した、尾の付け根から約1cmの距離であった。コラーゲン抗原投与(200μg/マウス)を、21日目にコラーゲン尾PBSのIP注射によって動物に与えた。
【0243】
処置
処置を、研究の14日目に開始し、そして1日1回でずっと続けた。すべての生き残ったマウスは、研究42日目に終了させた。
【0244】
投与経路:
(i)hBD2:静脈内
(ii)デキサメタゾン:腹腔内
(iii)ビヒクルコントロール:静脈内
【0245】
用量と投薬の容積(表27もまた参照のこと):
(i)hBD2:10、1、又は0.1mg/kg、5mL/kgにて
(ii)デキサメタゾン:1mg/kg、5mL/kgにて
(iii)ビヒクルコントロール:0mg/kg、5mL/kgにて
【0246】
鎮痛:研究中は、鎮痛剤を使用しなかった。
【0247】
観察と検査法
関節炎反応
マウスを、研究0、14、21日目とその後研究終了まで1週間に5回、末梢関節の関節炎誘発応答の兆候について検査した。関節炎反応を、下記に示したとおり重症度の低い順に0〜4の等級に従って各肢に関して記録した:
【0248】
【表31】

【0249】
臨床徴候
0、14、21日目に、そしてその後1週間に5回、慎重な臨床検査をおこない、そして記録した。観察には、皮膚、毛皮、目、粘膜、膜の変化、分泌物及び排泄物(例えば下痢)の存在、並びに自律神経活動(例えば、流涙、唾液分泌、立毛、瞳孔サイズ、異常な呼吸パターン)が含まれた。歩き方、姿勢、及び世話に対する応答の変化、並びに異常行動、震え、けいれん、睡眠、及び昏睡の存在にも言及した。
【0250】
14日目より前には、あらゆる異常行動について毎日マウスを観察した。
【0251】
体重
動物の個々の体重の測定を、0、14、21日目に、そしてその後研究終了まで1週間に5回、関節炎誘発の直前におこなった。
【0252】
実験的関節炎の計測
それぞれの動物の両後脚の厚さ(左右の、肉球のすぐ下、且つ、踵骨の上)の相対変化を、ダイヤル・キャリパー(Kroeplin、Munich Germany)を使用して研究0、14、21日目に、及びその後1週間に5回、mm単位で計測した。
【0253】
研究の終了
すべてのマウスを研究42日目に終了させた。
【0254】
サンプル収集
研究終了時に、O2/CO2吸入後に、末梢血サンプルを残ったすべての研究動物から得た。血清を各サンプルから調製し、そして−20℃にて保存した。加えて、左前肢と後肢を採取し、そしてホルマリン中に保存した、及び右前肢と後肢を採取し、そして可能な関節RNA分析のために急速冷凍した。
【0255】
人道的なエンドポイント
瀕死状態に見える動物、及び激痛と重度の苦痛の持続的兆候を示す動物を、人道的に安楽死させた。加えて、最初の体重測定から20%を超える体重減少を示す動物を、人道的に安楽死させた。12以上の総関節炎スコアを有するマウスもまた、人道的な理由で除外した。すべての動物を、O2/CO2吸入とそれに続く放血によって安楽死させた。すべての研究動物から肢サンプルと末梢血サンプルを得た。
【0256】
統計解析
評価は、主として関節炎スコアと肢の厚みの測定値の平均に基づいた。必要に応じて、適当な統計的方法によるデータの分析を適用して、処置効果の有意性を判定した。分散分析とそれに続くTukey事後解析(Excel用Winstat 2005.1)を使用して、処置群の統計的な差を評価した。
【0257】
内務省の規則に従って、12以上の総臨床スコアを有するマウスを、関節炎重症度を理由に除外した。高い採点のマウスの排除によってデータが人工的に歪曲されないように、終了時のこれらのマウスの臨床スコアを研究の残りの部分に関する分析に繰り越した。
【0258】
動物愛護と使用の記述
この研究を、科学的手順での動物の使用に関する英国内務省規則に従って実施した。
【0259】
結果
表28.コラーゲン誘発雄DBA/1関節炎マウスにおいて42日間の観察期間中に測定された平均臨床関節炎スコア。*p<0.05:ビヒクル群との有意差。
【0260】
【表32】

【0261】
【表33】

【0262】
結論
関節炎反応を、研究14日目からすべての群において認めた。ビヒクルで処置したマウスの平均総関節炎スコアは、研究41日目の8.5±0.72にて最高になった(表28)。10mg/kgのhBD2で処置したマウス(グループC)の平均総関節炎スコアは、研究40日目の5.0±1.04にて最高になった。この群の平均関節炎スコアは、23日目から研究終了までビヒクルで処置したマウスと比較して低かったが、研究41日目においてのみ有意であった。
【0263】
1mg/kgのhBD2で処置したマウス(グループD)における平均総関節炎スコアは、研究41日目の5.2±1.11にて最高になり、そして21日目から研究終了までビヒクル処置群と比較して一貫して低かったが、40日目においてのみ有意であった。0.1mg/kgのhBD2で処置したマウス(グループE)は、ビヒクル処置群と比較して平均総関節炎スコアを有意に下げなかった。この群の平均スコアは、研究40日目の9.0±0.77にて最高になった。デキサメタゾン処置群(グループB)のマウスは、研究26日目から研究終了までビヒクル処置群と比較して有意に低い関節炎スコアを示した。
【0264】
関節炎の重症度が原因で、研究において早期に除外したマウスの排除がデータを人工的に歪曲しないことを確実にするために、分析において、そのようなマウスからの関節炎スコアを研究終了まで持ち越した。
【0265】
【表34】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節リウマチ、骨関節炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症(全身性硬化症)、ループス、全身性エリテマトーデス(SLE)、(急性)糸球体腎炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸窮迫症候群(ARDS)、血管炎、ブドウ膜炎、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脱毛症、(アレルギー性)鼻炎、アレルギー性結膜炎、重症筋無力症、硬化性皮膚炎、サルコイドーシス、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、及びベーチェット病から成る群から選択される炎症性疾患又は障害の処置のための医薬の製造のための、哺乳動物ベータ・デフェンシンの使用。
【請求項2】
前記医薬が非経口投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬が、皮下、又は静脈内に投与される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、約0.001mg/kg体重〜約10mg/kg体重、好ましくは約0.01mg/kg体重〜約10mg/kg体重の1日投与量にて投与される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、ヒト・ベータ・デフェンシンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記ヒト・ベータ・デフェンシンが、ヒト・ベータ・デフェンシン1、ヒト・ベータ・デフェンシン2、ヒト・ベータ・デフェンシン3、又はヒト・ベータ・デフェンシン4である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、ヒト・ベータ・デフェンシン2である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
TNF‐アルファ活性が、処置した組織において低下する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
有効量の哺乳動物ベータ・デフェンシンを、それを必要としている哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物組織の炎症性疾患又は障害の処置方法であって、ここで、前記炎症性疾患又は障害が、関節リウマチ、骨関節炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、強皮症(全身性硬化症)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス、(急性)糸球体腎炎、喘息、例えば気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸窮迫症候群(ARDS)、炎症性腸疾患(例えばクローン病)、結腸炎(例えば潰瘍性結腸炎)、血管炎、ブドウ膜炎、皮膚炎(例えば炎症性皮膚炎)、アトピー性皮膚炎、脱毛症、(アレルギー性)鼻炎、アレルギー性結膜炎、重症筋無力症、硬化性皮膚炎、サルコイドーシス、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、及びベーチェット病から成る群から選択される、前記方法。
【請求項12】
前記有効量が、処置した組織においてTNF‐アルファ活性を低減するために有効である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒト・ベータ・デフェンシンが、非経口で、例えば皮下、又は静脈内に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、約0.01mg/kg体重〜約10mg/kg体重、好ましくは約0.1mg/kg体重〜約10mg/kg体重の1日投与量にて投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、ヒト・ベータ・デフェンシンである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記哺乳動物ベータ・デフェンシンが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒト・ベータ・デフェンシンが、ヒト・ベータ・デフェンシン1、ヒト・ベータ・デフェンシン2、ヒト・ベータ・デフェンシン3、又はヒト・ベータ・デフェンシン4である、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528332(P2011−528332A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517954(P2011−517954)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059251
【国際公開番号】WO2010/007165
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(510062398)ノボザイムス アデニウム バイオテック アクティーゼルスカブ (8)
【Fターム(参考)】