説明

哺乳動物由来グリア制限前駆細胞を増大、同定、特徴付けおよび能力増強するための方法および組成物

可能性のある意図しないまたは望まない細胞表現型が減少した、および/または細胞集団の細胞における標準偏差が減少した、ヒト由来のグリア制限前駆細胞(GRP)集団の生産方法が提供される。GRPを特徴付けるための抗体パネルおよび遺伝子発現プロファイルならびにGRP細胞の特徴付けにおけるその使用方法もまた提供される。加えて、アストロサイトおよび/またはオリゴデンドロサイトを生成するための、ニューロンを再ミエリン化するための、グリア細胞に関連するおよびその他の神経変性疾患または障害ならびに神経系への傷害または損傷を処置するための、これらGRP細胞の使用方法が提供される。A2B5陽性細胞を欠損した神経細胞の生産方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2010年4月22日に出願された米国仮出願番号61/326,799および2009年11月12日に出願された米国仮出願番号61/260,441の優先権の利益を主張し、それぞれの教示は、参照によって完全に本明細書に取り込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、哺乳動物由来のグリア制限前駆細胞(GRP)集団であって、可能性のある意図しない細胞表現型が減少した、および/または該集団の細胞における標準偏差が減少した集団の生産方法ならびにこれら細胞の使用方法を提供する。また、本発明では、GRPを特徴付けるための抗体パネルおよびGRP細胞の特徴付けにおけるその使用方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
グリア制限前駆細胞(GRP)は、C−シリーズガングリオシドのサブセットを認識する、A2B5抗体とそれらの反応性によって定義される(Dietrich et al., Glia 2002 40:65-77; Rao and Mayer-Proschel, Dev. Biol. 1997 188:48-63; Saito et al., J. Neurochem. 2001 78:64-74; Windrem et al., Nat. Med. 2004 10:93-97)。GRPの他の抗原性の特徴は、アストロサイトマーカーのグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の中程度の発現およびE−CAM(ポリシアル化N−CAMまたはPSA−NCAM)およびβ−IIIチューブリン(TuJ1)の神経細胞マーカーの低い発現を包含する(Dietrich et al., Glia 2002 40:65-77; Rao and Mayer-Proschel, Dev. Biol. 1997 188:48-63)。
【0004】
GRPが単離されたときには、それらは神経幹細胞を過ぎて、コミットした系列制限細胞に内因的にすでに分化している。GRPが、奇形腫を誘導または形成することは観察されたことがない。
脳および脊髄におけるニューロンの非常に重要なカテゴリーには、軸索がミエリンで覆われているニューロンが含まれる。このミエリン鞘が損傷した場合、その生きた突起がニューロンの軸索周辺の絶縁するミエリン層を構成するオリゴデンドロサイトが破壊される。脱髄した(demyelinated)ニューロンは、適切にシグナルを伝導することができず、最終的には死滅する。
【0005】
損傷が不完全である場合、内因性の修復メカニズムが活性化され、再ミエリン化および部分的または完全な機能の回復をもたらす(Lassmann et al., Mult. Scler. 1997 3:133-136; Prineas and Connell, Ann. Neurol. 1979 5:22-31)。これは、再ミエリン化が、実際に機能の復元を導くことができるという重要な点を実証する。しかしながら、多様な疾患や外傷が原因で脱髄を経験する患者の多数は、十分な内因性の再ミエリン化を経験しない(Prineas et al., Ann. Neurol. 1993 33:137-151)。そして、多くのニーズおよび努力にも拘らず、失われた機能の復元を助けることのできる製品の開発において、ほとんど進展がなされていない。これは、損傷したミエリン産生オリゴデンドロサイトのin vivoでの再生をもたらすために生じるはずの複数のシグナルおよび複雑な細胞間相互作用が、部分的な原因となり得る。再ミエリン化をもたらす細胞治療が、脱髄の動物モデルで有益であることが実証されたことは重要である。
【0006】
Totoiu et al. (Exp. Neurol. 2004 187:254-265)は、ウイルス誘導性のマウスMSモデルにおける脊髄損傷の治療において、マウスGRPの局所移植の有効性を報告した。GRPは遊走してオリゴデンドロサイトへ分化し、軸索回避(axonal sparing)に関連すると思われる再ミエリン化をもたらした。彼らはまた、改善された運動を観察した。その後の研究(Hardison et al. Exp. Neurol. 2006 197:420-429)は、マウスGRPが炎症性T細胞およびマクロファージの両方の存在下で、生存および再ミエリン化が可能であることを実証した。
【0007】
ミエリン塩基性タンパク質をコードする遺伝子の変異により、正常なミエリンの産生に欠損を示すシバラーマウス(shiverer mouse)は、ミエリン産生における外来細胞移植の効果を研究するためのモデルである。シバラーへの細胞移植によるミエリン産生の実証は、TMおよびMSを包含する多くの脱髄疾患ならびに髄鞘形成不全疾患に当てはまる。ヒトGRPは、周産期異種移植後のシバラーマウス脳の広範かつ高効率のミエリン化を可能にすることが示された(Windrem et al., Nat. Med. 2004 10:93-97)。部位的に(regionally)適切な細胞型(アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)への分化が、腫瘍のエビデンスなしに実証された。これら研究は、脳および脊髄の両方の再ミエリン化を示すことに広がり、それは、移植した動物のサブセットにおける実質的な表現型の回復を伴った(Windrem et al., Cell Stem Cell 2008 2:553-565)。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一側面は、哺乳動物のグリア制限前駆細胞(GRP)の生産方法に関する。
本発明の別の側面は、GRP細胞集団における意図しない細胞の表現型を減少させる、および/またはGRP細胞集団の細胞における標準偏差を減少させる方法に関する。
本発明の別の側面は、(A2B5抗体を用いる)C−シリーズガングリオシドに対する抗体、GFAPに対する抗体、ならびにOlig1、Olig2、O1、PDGFR−α、ネスチン、NG2、PSA−NCAM、TuJ1、Ki−67およびNeuNからなる群から選択される1または2以上の抗体を含む、GRP細胞の特徴付けのための抗体パネル、およびこの抗体パネルで細胞をGRP細胞として特徴付ける方法に関する。
【0009】
本発明の別の側面は、GRP細胞の特徴付けに有用な遺伝子発現プロファイルに関する。
本発明の別の側面は、A2B5陽性細胞のない哺乳動物神経細胞の生産方法に関する。
本発明の別の側面は、これら生産された哺乳動物GRP細胞の、アストロサイトおよび/またはオリゴデンドロサイトの産生のための使用方法に関する。
【0010】
本発明の別の側面は、これら生産された哺乳動物GRP細胞の、ニューロンの脱髄に関連する疾患、障害、傷害または損傷を患う哺乳動物におけるニューロンの再ミエリン化を増加させるための使用方法に関する。
本発明の別の側面は、これら生産された哺乳動物GRP細胞の、グリア性瘢痕の形成を減少させるための、これら生産される哺乳動物GRP細胞の使用方法に関する。
さらに本発明の別の側面は、これら生産された哺乳動物GRP細胞の、哺乳動物における神経変性疾患もしくは障害または神経系もしくはその一部への損傷もしくは傷害の処置における使用方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、本発明に従って生産された3つの独立した細胞調製物(cell preparations)のパイロット規模の成長曲線を示す。
【図1B】図1Bは、本発明に従って生産された3つの独立した細胞調製物のパイロット規模の成長曲線を示す。
【図1C】図1Cは、本発明に従って生産された3つの独立した細胞調製物のパイロット規模の成長曲線を示す。
【図2A】図2Aは、本発明に従って生産された細胞の生産規模(production scale)の成長曲線を示す。
【図2B】図2Bは、本発明に従って生産された細胞の生産規模の成長曲線を示す。
【図3A】図3Aは、各継代時および最終的な回収時の生存率を示す。
【図3B】図3Bは、懸濁液対ポリ−L−オルニチン処理面の細胞生存率の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳動物グリア前駆細胞(GRP)の生産方法を提供する。GRPは、文献においてはグリア制限前駆細胞またはグリア前駆細胞とも呼ばれる。
本発明の哺乳動物GRP細胞は、A2B5陽性細胞を産生する能力があるあらゆる哺乳動物組織源に由来し得る。かかる哺乳動物組織源の例は、限定することなく、胚性/胎性、および(生後すべての年齢を包含する)成体の給源を含み、いずれも、限定することなく、神経組織、脳組織、脊髄組織、視神経組織、嗅上皮組織、内分泌組織、皮膚組織、筋肉組織、脂肪組織、結合組織、胎盤組織、臍帯血、血液、骨髄組織、骨組織、胚性幹細胞、および誘導多能性細胞(induced pluripotent cells)を包含する組織由来である。A2B5陽性細胞の産生能によって、A2B5陽性細胞に分化した哺乳動物組織源、A2B5陽性細胞に脱分化した哺乳動物組織源、および脱分化した後にA2B5陽性細胞に分化した哺乳動物組織源を包含することを意味する。
【0013】
哺乳動物のグリア制限前駆細胞(GRP)は、本発明に従って、A2B5陽性細胞を産生する能力がある哺乳動物の組織源から、A2B5抗体反応性細胞を単離することによって生産される。その後A2B5陽性細胞は、基質上で6日を超えるin vitro培養日数(DIV)培養される。培養された細胞は、その後回収される。
【0014】
本発明の一態様において、本方法は、例えば、限定されることなく、胎児死体の前脳組織、胎児死体の脊髄組織、哺乳動物の脳生検組織または脊髄生検組織などの哺乳動物の神経組織を細胞懸濁液に解離することを含む。一態様において、哺乳動物の神経組織は、神経管閉鎖後に得られる。ヒトGRPについては、例えば、妊娠約14〜24週の組織の神経管閉鎖後に得られた神経組織が、一貫した産物を産生することが実証された。分離は、既知の方法に従って、酵素的に、機械的に、または酵素的および機械的の両方で行われる。
【0015】
A2B5抗体反応性細胞は、当業者に知られる様々な手段によって単離することができる。例えば、一態様において、A2B5抗体反応性細胞は、磁気活性化細胞分離(magnetic activated cell sorting)を用いて単離される。例えば、細胞は、単一のA2B5抗体で標識後、Miltenyiの磁気ビーズ技術またはDynalの磁気ビーズ技術または既知の適切な抗体分離技術を用いて、カラムに通すことができる。代替的に、抗体陽性細胞は、標準的な方法を用いる蛍光活性化細胞分離またはイムノパニング(immunopanning)を用いて捕獲することができる。カラム(またはFACSまたはイムノパニングディッシュ)は、A2B5(+)細胞を濃縮し、A2B5(−)細胞を減少させる。追加の1または2以上のカラム(または追加のFACSまたは1または2以上のイムノパニングディッシュ)は、効果的に中程度に陽性な細胞を減少させ、高度に陽性な細胞を濃縮する。
【0016】
A2B5陽性集団は、その後6日を超えるin vitro培養日数(DIV)、例えば、約10〜20DIV、15〜20DIV、少なくとも20DIVおよび/または100DIVまで、またはそれを超えて、または少なくとも2回の継代で培養され、培養細胞は回収および凍結される。
【0017】
この生産工程は、単一の抗体で所望の細胞を選別する方法が使用され、成育が継代なしの6DIVから、2回の継代までの、または6DIVを超える、例えば、約10〜20DIV、15〜20DIV、少なくとも20DIVまたは100DIVまで、またはそれを超える成育に拡張される点で、以前に記載された生産工程と異なる。さらに、細胞は懸濁液ではなく、細胞の接着のための基質上で成育される。
【0018】
基質の例は、限定されることなく、ポリ−L−オルニチン、ポリ−L−リジンおよび組み換えまたは天然の細胞外基質分子またはそれらの断片、例えば、限定されることなく、ラミニン、フィブロネクチンおよびCELLstartTM(ヒト胚性幹細胞、間葉系幹細胞および神経幹細胞の接着および増殖のための異種成分不含(xeno-free)基質、Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)を含む。
【0019】
本発明の方法に従って生産される細胞の成長曲線、生産量、および免疫学的に定義された表現型は、それらの治療上の能力を変化させることなく、狭いばらつき(tightened variability)および意図しない細胞表現型の減少を示す。
位相差顕微鏡観察は、最初の継代(6DIV)の前、2回目の継代(20DIV、回収)の終わり、および100日までのin vitro培養日数で、安定した形態学的表現型を明らかにした。この双極性から多極性の形態は、3つの独立した細胞調製物において調製物間で一定である。
【0020】
本発明に従って生産される細胞のパイロット規模の成長曲線を、図1A〜図1Cに示す。3つの独立した細胞調製物は、未処理のプラスチック上の成育(「懸濁」)とポリ−L−オルニチン処理した組織培養プラスチック上の成育との比較として、図1A、図1Bおよび図1Cにそれぞれ示す。基質でコートしたフラスコ上で成育した細胞の調製物は、増加した傾きおよび増加したプレーティング効率を示した。
【0021】
生産規模の成長曲線を、図2Aおよび図2Bに示す。これら曲線は、パイロット規模と同様であり、20DIVで回収された細胞は、老化に近くないことを実証する。
細胞生存率は、トリパンブルー色素排除試験法(trypan blue exclusion method)によって評価された。懸濁液対ポリ−L−オルニチン処理表面の生存率の比較を図3Bに示し、各継代および最終的な回収における生存率を図3Aに示す。すべての場合において、平均生存率の値は90%を超える。
【0022】
本発明に従って生産される細胞は、所望の表現型(グリア制限前駆細胞およびそれらの子孫)および混入する可能性のある意図しない表現型(神経前駆細胞、神経細胞、ミクログリア細胞および内皮細胞)を認識する抗体のパネルを用いて、免疫表現型分類された(immunophenotyped)。このパネル中の抗体は、A2B5、GFAP、PDGFR−α、Olig1、Olig2、O1、ネスチン、NG2、PSA−NCAM、TuJ1、Ki−67および/またはNeuNから選択される。この独特な抗体のパネルでの免疫表現型分類は、6DIV超対6DIVにおいて、可能性のある意図しない(potentially unintended)細胞表現型(PSA−NCAMおよびTuJ1)の減少、および本発明の方法に従って生産される細胞における標準偏差の減少を示した。
【0023】
したがって、本発明の別の側面は、6DIVを超えた細胞を回収することを含む、GRP細胞集団において、可能性のある意図しない細胞表現型を減少させる、および/またはGRP細胞集団の細胞における標準偏差を減少させる方法に関する。可能性のある意図しない細胞表現型の減少および/または細胞における標準偏差の減少は、6DIVで回収される細胞との比較によって決定される。
【0024】
GRP細胞集団の凍結および解凍が、意図しない表現型をさらに減少させることもわかった。所望のA2B5、GFAPおよびKi−67陽性表現型は、凍結/解凍で維持されるが、意図しない細胞表現型のマーカー(PSA−NCAMおよびTuJ1)は、>50%減少する。
したがって、本発明の別の側面は、GRP細胞集団の凍結および解凍を含む、GRP細胞集団における可能性のある意図しない細胞表現型を減少させる方法に関する。
【0025】
一態様において、GRP細胞集団は本発明に従って生産され、回収後さらに凍結および解凍される。
しかしながら、本開示を読んだ当業者が理解するように、凍結前のGRP細胞を生産する代替方法が使用できる。例えば、一態様において、A2B5陽性細胞が6DIVまたはそれ未満で培養される方法によって、GRP細胞集団が生産される。培養細胞は、その後回収および凍結される。解凍後、細胞数を増加させるために、細胞は3日または4日以上の追加のin vitro培養日数(DIV)培養することができる。
【0026】
さらに、本発明の選択された抗体パネルによる免疫表現型分類は、本発明の細胞治療を特徴付ける、有用で信頼できる手段を提供する。したがって、本発明の別の側面は、A2B5、GFAP、およびOlig1、Olig2、O1、PDGFR−α、ネスチン、NG2、PSA−NCAM、TuJ1、Ki−67およびNeuNからなる群から選択される1または2以上の抗体を含む、GRP細胞を特徴付けるための本発明の抗体パネル、および本発明の抗体パネルを用いて、細胞をGRP細胞として特徴付ける方法および/または細胞集団の純度を実証する(documenting)方法に関する。一態様において、最初にカバースリップ上またはマルチチャンバースライド(multichamber slides)中に標準的なプロトコルに従って細胞をプレートし、標準的な組織培養条件下においてオーバーナイトで成育させ、その後標準的な手順に従って固定および染色することにより、細胞は抗体パネルを用いて特徴付けられる。
【0027】
免疫陽性(immunopositive)細胞は、標準的な顕微鏡観察方法を用いて同定され、各抗体について陽性の細胞の百分率は、(pan nuclei stain:DAPIなどによって定義される)細胞の全数に対して相対的に定義される。以下の本発明の抗体パネルを用いる免疫表現型は、GRPである哺乳動物細胞の集団を示す:大部分の細胞は、A2B5と、GFAP、ネスチン、NG2、PDGFR−α、Olig1、Olig2およびO1の1または2以上とに陽性であり、大部分の細胞は、PSA−NCAM、TUJ1、PECAM、CD68およびNeuNの1または2以上に陰性である。本明細書で用いられる「大部分」は、50%を超える細胞が、選択される抗体について陽性または陰性であることを意味する。
【0028】
細胞生産物の免疫細胞化学的な特徴付けに加えて、細胞単離物に見出され得る、異なる型の細胞と発現が相関する遺伝子標的を同定した。遺伝子発現データは、未精製細胞、15の脳組織に由来する6DIVで回収されたGRP細胞および本発明の方法に従って生産されたGRP細胞から収集した。約375遺伝子が、6DIVで回収されたGRP細胞と未精製細胞との間で、≦0.01のP値とともに発現レベル(増加および減少レベル)において、少なくとも5倍(5-fold)の変化を示した。これらデータを用いて、細胞集団を同定する手段として、チップ/アレイ解析、マルチプレックスRT−PCRおよびqPCRなどの技法を介して、遺伝子発現プロファイルが生成および評価されてもよい。
【0029】
本発明においては、A2B5陽性細胞を欠損した哺乳動物の神経細胞を生産する方法もまた提供される。この方法においては、A2B5抗体反応性細胞は、A2B5陽性細胞を産生する能力がある哺乳動物組織源から単離される。A2B5抗体反応性細胞を除去した後に残る細胞が、その後収集される。本方法の一態様において、細胞は基質上で1日または2日以上のin vitro培養日数(DIV)培養される。本方法において、収集された細胞は、細胞集団を凍結および解凍することによって、任意に一部の細胞型をさらに欠損させられてもよい。
【0030】
本発明の別の側面は、本発明の方法に従って生産されたGRPから、アストロサイトおよび/またはオリゴデンドロサイトを産生する方法に関する。この方法において、本発明に従って生産されたGRP細胞は、アストロサイトおよび/またはオリゴデンドロサイトへの分化を促進する条件下で培養される。
【0031】
一態様において、GRP細胞は、アストロサイトへの分化を促進する条件下で培養される。アストロサイト分化を促進する培地配合の2つの非限定的な例は、1)DMEM/F12、N1またはN2サプリメント、塩基性FGF、BMP4におけるGRPの成育(ここで、これら成長因子はng/mLの範囲または10〜100ng/mLの範囲で存在する);および2)DMEM/F12、N1またはN2サプリメント、1〜10%FBS、およびng/mLの範囲または10〜100ng/mLの範囲での塩基性FGFを包含する。
【0032】
別の態様において、GRP細胞はオリゴデンドロサイトへの分化を促進する条件下で培養される。オリゴデンドロサイトへの分化を促進する培地配合および条件の2つの非限定的な例は、1)成長因子を欠くDMEM/F12培地における2日間のGRPの成育、およびN2、ng/mLの範囲または10〜100ng/mLの範囲で存在するPDGF−AA、および1〜100nMの範囲のT3が添加されたDMEM/F12培地への細胞の移動;および2)N2、100台のnMの範囲のT3、数十μg/mLの範囲のNアセチルシステイン、およびng/mLの範囲または10〜100ng/mLの範囲のPDGF−AAおよびCNTFが添加されたDMEM/F12培地におけるGRPの成育を包含する。
【0033】
実験が行われ、本発明の方法に従って調製されたGRPが、定義された、再現可能な選択された抗原の発現パラメータを示し、in vivo設定においてもニューロンではなく、一貫してアストロサイトおよびオリゴデンドロサイトへ分化する能力があることを確認した。さらに実験は、これらGRPが、動物モデルにおいて、細胞生存、遊走およびミエリン生産オリゴデンドロサイトおよびアストロサイトへの分化の特徴を示すことを示した。合わせて、これら研究は、本発明の方法に従って生産されるGRPが、うまく均質化し(integrate)、オリゴデンドロサイトおよびアストロサイトへ分化し、脳および脊髄の脱髄した神経組織における軸索を再ミエリン化することを実証する。
【0034】
したがって、本発明はまた、哺乳動物においてin vivoでアストロサイトおよびオリゴデンドロサイトを生産するための、およびニューロンの脱髄と関連する疾患、障害、傷害または損傷を患う哺乳動物におけるニューロンの再ミエリン化を増加するための、本発明に従って生産されたGRP細胞を使用する方法に関する。0.01〜1億個の細胞を、1または2以上の注射を伴う、当該技術分野の神経外科医によく知られるカテーテルまたはニードルを用いる直接の実質移植(parenchymal transplantation)によって投与することができる。これら移植は、穿頭孔または椎弓切除によって、神経組織に直接アクセスした後に行うことができる。
【0035】
代替的に、移植は当該技術分野の介入放射線医(interventional radiologist)によって、神経標的組織の直接の視覚的アクセスを必要とせずに、CTガイド経皮送達(CT-guided percutaneous delivery)によって、脊髄内に行うことができる。さらに、細胞は、実質内に直接ではなく、腰椎穿刺または他の適した方法などを通じて、脳脊髄液(CSF)に投与することができる。細胞は、一部の病気については静脈投与によって投与することもできる。最後に、いくつかの臨床試験が、これら疾患のために他の神経細胞型で現在行われている。他の神経細胞によるこれら臨床試験において使用される同様のプロトコルおよび手順が、本発明に従って生産されるGRPで使用するために、当業者によって日常的に適応され得る。
【0036】
in vivoにおけるグリアの挙動のためのモデルであるシバラーマウス(Nave, J. Neurosci, Res. 1994 38:607-612)の脳に異種移植したときの、本発明に従って生産されたヒトGRPの生存、遊走、増殖および分化が実証された。シバラーマウスは、これらマウスが、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)を形成できなくなる常染色体の劣性変異を有する。シバラーマウスのCNSで形成された内在性のオリゴデンドロサイトは、コンパクトなミエリンのアセンブルに失敗する(Privat et al., Neurosci. Lett. 1979 12:107-112)。
【0037】
移植片生着を最大にするために、成熟のBおよびTリンパ細胞を産生するために必須のタンパク質をコードするRag2遺伝子における常染色体の劣性変異も保有し、それ故に細胞性免疫不全症を示すシバラーマウス系統が開発された(Shinkai et al. Cell 1992 68:855-867)。新生の二重ホモ接合体shiverer/rag2免疫不全マウスは、脳室下帯を標的とする単一部位に、100,000個のヒトGRPを移植された。移植から8または12週後、動物は屠殺され、ヒトGRPおよびそれらの子孫の生存および分布が、免疫細胞化学的に評価された。
【0038】
この遺伝学的免疫不全(genetically immune compromised)モデルにおけるヒト細胞の広範な分布は、ヒトGRPの生存および遊走の能力を実証する。shiverer/rag2におけるin vivoでの生存、遊走および分化と同様の結果が、6DIVおよび20DIVの両方のGRPで観察された。
【0039】
in vivoにおけるヒトGRPの分化能力が、これらマウスからの脳切片において、免疫細胞化学的に評価された。1つの群のマウスは移植後8週で屠殺された一方で、別の群は、神経学的悪化が、著しく損なわれた歩行運動および(典型的に生後12〜18週の)持続的発作の頻繁な発症をもたらしたときに、人道的な理由のために屠殺した。脳切片は、抗ミエリン塩基性タンパク質抗体(MBP;この抗体によって認識されるインタクトなMBPの発現は、シバラーマウスでは観察されず、したがって、MBPの発現は、移植したヒトGRPのみに由来する)および(マウスGFAPを認識しない)抗ヒトGFAP抗体で染色した。
【0040】
アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトの数の定量は実行可能ではなかったが、屠殺後のin vivoでのMBPおよびGFAPの免疫反応性の領域を測定することによって、2つの細胞型がin vivoでヒトGRPから産生されたことが確認された。これらデータは、本発明のヒトGRPの適切な細胞表現型へ分化する能力を詳述する。
【0041】
大抵のニューロンで発現するタンパク質であるNeuN、およびヒト核抗原(HuNA)に対する抗体を用いて、脳切片の二重染色も実行した。これらデータは、MBPおよびGFAP発現の決定に使用された同一の動物から収集した。8週で屠殺された動物におけるヒトGRPは、脳梁の近くに集中しており、HuNA/NeuN二重陽性の細胞が0.3%未満観察された。ニューロンではなく、グリアに分化するこれら細胞の能力は、神経変性疾患における使用と関係し、ここで、(ニューロンおよびグリアの両方を生み出す)神経幹細胞が細胞治療として使用された場合に、アロディニア様過敏症と関連する異常な軸索新芽形成が報告されている(Hofstetter et al. Nat. Neurosci. 2005 8:346-353; Macias et al., Exp. Neurol. 2006 201:335-348)。
【0042】
ラットにおいて、脊髄内投与後のヒトGRPの細胞生存および分布も評価した。1μLの容量での6万(60,000)個のヒトGRPが、12頭の胸腺欠損ラットの脊髄内にC−4の位置で移植された。4頭の動物が、3つの時点(移植後1、4および12週)のそれぞれで屠殺された。動物は、屠殺時にパラホルムアルデヒドで灌流し、それらの脊髄は回収され、1cmの頸髄が、ヒトGRPの存在について、横断切片のHuNA抗体染色を用いて分析された。
【0043】
移植の1、4および12週後、ヒト細胞を移植した胸腺欠損ラットの脊髄中には、増殖塊(proliferating masses)は検出されなかった。移植したヒト細胞の生存は、4および12週の時点で観察された。ヒトGRPは脊髄の断面全体にわたって存在し、最大の細胞密度が、注射が行われた脊髄後柱で観察された。移植後1週において4頭の動物のうちの1頭が、移植後4および12週において4頭の動物のうちの4頭が、剖検にてヒトGRPが存在していた。4週においては、分析した切片の約2/3がヒトGRPを有しており(0.63cmの体軸方向の拡散)、12週においては、分析した切片のすべてが、ヒトGRPを有していた(1cmの体軸方向の拡散)。
【0044】
2つの異なる細胞投与量での脊髄内投与後の、本発明の工程に従って調製されたヒトGRPの細胞の生存および分布が決定された。移植後28日では、肉眼的な剖検によっては脊髄の異常は検出されなかった。HuNAおよびKi−67抗体を用いた免疫細胞化学的分析は、胸腺欠損ラットの脊髄内に、合計800,000個または1,200,000個のヒトGRP/動物の投与量のいずれにおいても、増殖塊がないことを明らかにした。
【0045】
ヒトGRPは脊髄の断面全体にわたって存在し、最大の細胞密度が、注射が行われた脊髄後柱で観察された。HuNA/Ki−67の共局在は、合計800,000個の細胞を注射した動物においては非常に低く、ヒトGRPは分析された1cmの脊髄セグメント全体にわたる、HuNA抗体で染色したすべての切片において検出された。合計1,200,000個の細胞を注射したラットの脊髄におけるヒトGRP細胞密度は、手作業で数えるには高すぎたが、HuNA/Ki−67共局在の視覚的評価は、低投与量の動物において観察されたものと同様であった。
【0046】
ルイスラットの脊髄上において、局所的な炎症性脱髄病変を誘導するための条件が確立された。この動物モデルは、ヒトにおける横断性脊髄炎の病理を模倣し、本発明に従って生産され、移植されたヒトGRPについて、誘導された局所的な脱髄病変の近傍で生存する能力を明らかにするために使用された。ラットモデルは、公表されたモデル(Kerschensteiner et al., Am. J. Pathol. 2004 164:1455-1469)に基づいており、これを局所的な炎症性脱髄の臨床学的なおよび組織学的な証拠をより確かに誘導するように改変した。
【0047】
成体ルイスラットは、フロイント不完全アジュバントに懸濁されたミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)で免疫され、その10日後、T9椎弓切除、および腫瘍壊死因子α、インターロイキン6、インターフェロンαおよびエチジウムブロマイド(EtBr)のカクテルの注射を行った。ルイスラットの脊髄後柱における局所的な炎症は、カクテルの注射の4日後に観察された。活発な炎症は、サイトカインおよびEtBrの注射後10〜14日で大部分が回復した。しかしながら、当該領域の広範な脱髄は持続した。この領域に移植されたヒトGRPは、13mmまでの体軸方向の拡散を伴って、移植後3、8および14週で検出され、それらは脱髄病変において生存できることが実証された。
【0048】
本発明に従って生産されるヒトGRPの、多発性硬化症の環境を模倣する炎症性の環境における生存も評価された。雌性ダークアグーチ(Dark Agouti)ラット(体重150〜175グラム)は、フロイント不完全アジュバント中10mgのMOGを尾の基部に注射された。ラットは免疫後10〜12日で、臨床学的疾患を発症した(2.5〜3.0のEAEスコア;後肢の不全麻痺)。ヒトGRP細胞の移植2日前に始め、その後毎日、ラットはシクロスポリンAを10mg/kgで腹腔内(IP)注射された。椎弓切除は胸椎の位置(T8〜T9)で行われ、それぞれの動物は、2μLの生理食塩水中の約150,000個のヒトGRPの単回投与を脊髄後柱に受けた。
【0049】
疾患の症状が現れた2日または7日後に、ヒトGRPが動物に移植された。動物は、移植後1週、2週および4週で屠殺した。移植したヒトGRP細胞は、移植部位近くの脊髄の40μmの横断切片において、HuNA抗体を用いて検出した。炎症性応答の間存在する宿主活性化(host activate)ミクログリア表面のCD11bを検出するために、OX42抗体を使用した。マクロファージおよびミクログリアの浸潤を決定するために、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を使用した。移植後1週間に、HuNA染色は、OX42による免疫染色部位の近くに局在した
【0050】
注射部位周辺の明白なH&E染色はまた、マクロファージおよびミクログリアの宿主浸潤を示す。移植後2週間までに、HuNAのOX42免疫染色との共局在は観察されなくなった一方で、H&E染色はまだ観察されたが、前より明白ではなくなった。移植したヒトGRPは、疾患発症後2日および7日のいずれの注射の後においても、評価した最も長い時点である12週まで、DA/EAEラット脊髄において生存可能であった。したがって、ヒトGRPは、ヒト多発性硬化症の炎症病変において見出される条件を模倣する条件において、生存可能である。
【0051】
本明細書において実証される、グリア細胞に関連する神経変性疾患または障害の複数の動物モデルにおける、本発明に従って生産されたGRP細胞の有効性は、これら神経変性疾患または障害の処置または緩和におけるそれらの有用性を示す。グリア細胞は、神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症において、重要な役割を担うことが示されている(Howland et al. PNAS 99, 1105, 1995; Clement et al. Science 302, 113, 2003; Rothstein et al. Ann. Neurol. 38, 73, 1995)。
【0052】
アストロサイトは、CNSにおいて、脳血管制御、シナプス伝達の調節(例えば、グルタミン酸輸送)および他の効果を包含する多くの重要な機能を担い、他の効果は成長因子の放出ならびにニューロンおよびグリアのための栄養支援(trophic support)の供給を包含する。グリア細胞はまた、多くの神経変性疾患において、有害な効果を起こす反応性アストロサイトの形成を低減または予防することができる。そして、グリア細胞は、脊髄損傷およびいくつかの神経変性疾患で起こるようなグリア性瘢痕のレベルを低減することができる。
【0053】
さらに、ALSのラットモデルへの正常グリア細胞(これは、その後アストロサイトに分化する)の移植は、このモデルにおいて神経を保護することが実証された(Lepore et al. Nature Med. 11, 1294, 2008)。これらデータは、モデルとなる神経変性疾患におけるグリア前駆細胞の治療上の有効性を示し、さらなる研究は、グリア前駆細胞治療が、限定することなく、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病およびアレキサンダー病(Maragakis and Rothstein Nature Clinical Practice Neurology 2, 679, 2006)、多発性硬化症(Windrem et.al. Cell Stem Cell. 2008 Jun 5;2(6):553-65, Hardison et.al Exp Neurol. 2006 Feb;197(2):420-9)、他の脱髄疾患(Duncan, J Inherit Metab Dis. 2005;28(3):357-68)および脊髄損傷(Keirstead et.al. J Neurosci. 2005 May 11;25(19):4694-705, Mitsui et.al. J Neurosci. 2005 Oct 19;25(42):9624-36.)を包含する、他の神経変性疾患または障害において有効であることを示す。
【0054】
したがって、本発明の別の側面は、哺乳動物におけるグリア細胞に関連する神経変性疾患または障害の治療および神経系またはその一部への傷害または損傷の処置における、本発明に従って生産される哺乳動物のGRP細胞の使用方法に関する。傷害または損傷は、限定されることなく、外傷、薬物、放射線、および免疫介在性の損傷または傷害を包含する原因によって誘導される損傷または傷害を包含することを意味する。
【0055】
加えて、関連する成長因子などを産生する健康なグリア細胞を供給することによって、本発明の細胞は、明確にはグリア細胞に関係しない、哺乳動物における神経変性疾患または障害および神経系の傷害の処置に有用であることが予期される。これら処置方法においては、1個〜1億個の本発明に従って生産される細胞を、当該技術分野の神経外科医によく知られるカテーテルまたはニードルを用いる直接の実質移植によって投与することができる。これら移植は、穿頭孔または椎弓切除によって、神経組織に直接アクセスした後に行うことができる。
【0056】
代替的に、移植は当該技術分野の介入放射線医によって、神経標的組織の直接の視覚的アクセスを必要とせずに、CTガイド経皮送達によって、脊髄内に行うことができる。さらに、細胞は実質内に直接ではなく、腰椎穿刺または他の適した方法などを通じて、脳脊髄液(CSF)に投与することができる。最後に、いくつかの臨床試験が、これら疾患のために他の神経細胞型で現在行われている。他の神経細胞によるこれら臨床試験において使用される同様のプロトコルおよび手順が、本発明に従って生産されるGRPで使用するために、当業者によって日常的に適応され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物のグリア制限前駆細胞(GRP)を生産する方法であって、該方法が
(a)A2B5陽性細胞を産生する能力がある哺乳動物組織源からA2B5抗体反応性細胞を単離すること;
(b)該A2B5陽性細胞を基質上で6日を超えるin vitro培養日数(DIV)培養すること;および
(c)該培養細胞を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
A2B5抗体反応性細胞が、磁気活性化細胞分離を用いて単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞が、A2B5抗体反応性細胞を単離するために、磁気ビーズを含むカラムに2回または3回以上通される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
A2B5抗体反応性細胞が、蛍光活性化細胞分離またはイムノパニングを用いて単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞が、蛍光活性化細胞分離またはイムノパニングディッシュに2回または3回以上通される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞が10〜20DIV培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
細胞が15〜20DIV培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
細胞が少なくとも20DIV培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
細胞が100DIVまたはそれを超えて培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物のグリア制限前駆細胞(GRP)を生産する方法であって、該方法が
(a)哺乳動物の神経組織を細胞懸濁液に解離すること;
(b)A2B5抗体反応性細胞を単離すること;
(c)該A2B5陽性細胞を基質上で6日を超えるin vitro培養日数(DIV)培養すること;および
(c)該培養細胞を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項11】
哺乳動物の神経組織が、神経管閉鎖後の哺乳動物から得られる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物の神経組織が、胎児死体の前脳組織、胎児死体の脊髄組織、哺乳動物の脳生検組織または脊髄生検組織である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物がヒトであり、神経組織が妊娠約14〜24週の胎児死体の前脳組織である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
神経組織を解離することが酵素的に行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
神経組織を解離することが機械的に行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
神経組織を解離することが酵素的および機械的に行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
A2B5抗体反応性細胞が、磁気活性化細胞分離を用いて単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
細胞が、A2B5抗体反応性細胞を単離するために、磁気ビーズを含むカラムに2回または3回以上通される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
A2B5抗体反応性細胞が、蛍光活性化細胞分離またはイムノパニングを用いて単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
細胞が、蛍光活性化細胞分離またはイムノパニングディッシュに2回または3回以上通される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
細胞が10〜20DIV培養される、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
細胞が15〜20DIV培養される、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
細胞が少なくとも20DIV培養される、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
細胞が100DIVまたはそれを超えて培養される、請求項10に記載の方法。
【請求項25】
GRP細胞集団における可能性のある意図しない細胞表現型を減少させる、および/またはGRP細胞集団の細胞における標準偏差を減少させる方法であって、該方法が、
(a)A2B5陽性細胞を産生する能力がある哺乳動物組織源からA2B5抗体反応性細胞を単離すること;および
(b)該A2B5陽性細胞を基質上で6日を超えるin vitro培養日数(DIV)培養すること
を含む、前記方法。
【請求項26】
回収した細胞を凍結および解凍することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
GRP細胞集団における可能性のある意図しない細胞表現型を減少させる、および/またはGRP細胞集団の細胞における標準偏差を減少させる方法であって、該方法が
(a)哺乳動物の神経組織を細胞懸濁液に解離すること;
(b)A2B5抗体反応性細胞を単離すること;
(c)該A2B5陽性細胞を基質上で6日を超えるin vitro培養日数(DIV)培養すること;および
(c)該培養細胞を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項28】
回収した細胞を凍結および解凍することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
GRP細胞集団における可能性のある意図しない細胞表現型を減少させる方法であって、GRP細胞集団を凍結および解凍することを含む、前記方法。
【請求項30】
GRP細胞集団が、凍結前に6DIVまたはそれ未満培養される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
解凍したGRP細胞集団を、3日または4日以上の追加のin vitro培養日数(DIV)培養することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
解凍したGRP細胞集団を、3日または4日以上の追加のin vitro培養日数(DIV)培養することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
A2B5陽性細胞が欠損した哺乳動物の神経細胞を生産する方法であって、該方法が
(a)A2B5陽性細胞を産生する能力がある哺乳動物組織源からA2B5抗体反応性細胞を単離すること;
(b)A2B5抗体反応性細胞を除去した後に残る細胞を回収すること、
を含む、前記方法。
【請求項34】
細胞が、基質上で1日または2日以上のin vitro培養日数(DIV)培養される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
細胞が、細胞集団の凍結および解凍によって、一部の細胞型をさらに欠損させられる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
A2B5抗体反応性細胞が、磁気活性化細胞分離を用いて単離される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
細胞が、A2B5抗体反応性細胞を単離するために、磁気ビーズを含むカラムに2回または3回以上通される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
A2B5抗体反応性細胞が、蛍光活性化細胞分離またはイムノパニングを用いて単離される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
細胞が、蛍光活性化細胞分離またはイムノパニングディッシュに2回または3回以上通される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
A2B5に対する抗体、GFAPに対する抗体、ならびにOlig1、Olig2、O1、PDGFR−α、ネスチン、NG2、PSA−NCAM、TuJ1、Ki−67およびNeuNからなる群から選択される1または2以上の抗体を含む、GRP細胞を特徴付けるための抗体パネル
【請求項41】
請求項40に記載の抗体パネルで細胞集団を免疫表現型分類することを含む、細胞をGRP細胞として同定または特徴付ける方法であって、大部分の細胞が、A2B5と、GFAP、ネスチン、NG2、PDGFR−α、Olig1、Olig2およびO1の1または2以上とに陽性であり、大部分の細胞が、PSA−NCAM、TUJ1、PECAM、CD68およびNeuNの1または2以上に陰性である、前記方法。
【請求項42】
アストロサイト前駆細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞および/またはオリゴデンドロサイトへの分化を促進する条件下で、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法に従って生産されたGRP細胞を培養することを含む、アストロサイト前駆細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞および/またはオリゴデンドロサイトを産生する方法。
【請求項43】
GRP細胞が、アストロサイト前駆細胞および/またはアストロサイトへの分化を促進する条件下で培養される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
GRP細胞が、オリゴデンドロサイト前駆細胞および/またはオリゴデンドロサイトへの分化を促進する条件下で培養される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
GRP細胞が、アストロサイトおよび/またはアストロサイト前駆細胞ならびにオリゴデンドロサイト前駆細胞および/またはオリゴデンドロサイトへの分化を促進する条件下で培養される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物においてアストロサイトおよびオリゴデンドロサイトを産生する方法であって、該方法が、該哺乳動物に請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法に従って生産された哺乳動物GRP細胞を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
ニューロンの脱髄に関連する疾患、障害、傷害または損傷を患う哺乳動物におけるニューロンの再ミエリン化を増加する方法であって、該方法が、該哺乳動物に請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法に従って生産された哺乳動物GRP細胞を投与することを含む、前記方法。
【請求項48】
哺乳動物における神経変性疾患もしくは障害または神経系もしくはその一部への傷害もしくは損傷を処置する方法であって、該方法が、該哺乳動物に請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法に従って生産された哺乳動物GRP細胞を投与することを含む、前記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2013−510570(P2013−510570A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538881(P2012−538881)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055956
【国際公開番号】WO2011/059952
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512123569)キュー セラピューティックス,インク. (1)
【Fターム(参考)】