説明

哺乳動物細胞中で分泌型組換えタンパク質を高生産させるための分子シャペロンの使用方法

本発明は、哺乳動物宿主細胞に分子シャペロンを導入することにより、分泌型組換えタンパク質産物の生産量を増大させる方法に関する。また本発明は、少なくとも1種のシャペロンタンパク質と同時発現させることにより分泌型組換えタンパク質産物を高発現する哺乳動物宿主細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物宿主細胞における組換えタンパク質生産の一般分野に関する。具体的に言えば、本発明は、哺乳動物宿主細胞で少なくとも1つのシャペロンタンパク質と同時発現させることにより分泌型組換えタンパク質産物を高生産させることに関する。
【背景技術】
【0002】
[相互参照]
本願は、2003年6月27提出の米国仮出願第60/483,505号の利益を主張するものであり、この仮出願はそのまま本明細書に文献援用される。
【0003】
[発明の背景]
原核細胞においても真核細胞においても、分子シャペロンタンパク質は、ジスルフィド結合交換反応を触媒し、新規合成タンパク質の正しいフォールディングを支援する。この知見に基づき、これらの品質管理タンパク質に関して多くの研究が行われ、様々な使用法が提案されてきた。例えば、細菌、酵母および昆虫細胞発現系でのpDI(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ)活性の増大は、タンパク質の溶解性およびフォールディングに有効であり、場合によっては、異種タンパク質の分泌を増加させ得る(1〜7)。さらに他の研究で、分子シャペロン免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP、グルコース調節タンパク質とも称される)およびヒト熱ショックタンパク質70(Hsp 70)が昆虫細胞の発現系における組換えタンパク質の発現に有効であることが示されている(5、8〜12)。
【0004】
分子シャペロンは、哺乳動物細胞の系における組換えタンパク質の発現および分泌に関しては同レベルの成功を治めていない。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞でのpDIシャペロンの過剰発現は、IL−15の分泌レベルに効果がなかったばかりか、腫瘍壊死因子受容体−Fc融合タンパク質(TNFR:Fc)の分泌を減少させ、細胞内への停滞を増加させた(13)。他の研究は、哺乳動物細胞でのBiPシャペロンの過剰発現が、組換えタンパク質の細胞内停滞を増加させ、分泌を減少させ得ることを示している(14−15、および特許文献1参照)。哺乳動物細胞内でのタンパク質プロセシングに関与する調節機構は複雑であり、これらシャペロンタンパク質の多くの協同作用を必要とすると思われる。したがって、特定のシャペロンが特定の組換えタンパク質の生産を増加させるかどうかを予測することはできない。
【0005】
本分野では相反する教示が存在するために、分泌型組換えタンパク質産物の生産に及ぼすシャペロンタンパク質の効果は分っていないし、評価もされていない。特許文献2は、ウイルス粒子を高生産させる方法を記載しており、真核細胞における組換えタンパク質の収量増加に及ぼすシャペロンの効果を推測しているが、組換えタンパク質の実際の発現は開示していない。しかし、他の研究で、真核細胞株でのシャペロンの過剰発現が組換えタンパク質の収量に効果がなかったり、分泌を減少させたりすることが分った。例えば特許文献1も参照されたい。本分野における相反する教示を考えると、特許文献2に従って当業者がシャペロンを使って真核細胞で組換えタンパク質の生産および分泌を増加させることはできない。先端技術は、特定のシャペロンが本明細書に記載のものなどの細胞培養モデルにおける所与の組換えタンパク質の生産および分泌にどのような効果を及ぼすかを予測する方法を教示してはくれない。したがって、本出願人らは、分泌組換えタンパク質を発現する哺乳動物細胞株を本研究に記載されているシャペロンでトランスフェクションしたとき、得られた効果が分泌型タンパク質生産量の全般的な増加であることを発見して驚
いた。
【特許文献1】米国特許第4,912,040号明細書
【特許文献2】米国特許第6,451,597号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、哺乳動物宿主細胞で分泌型組換えタンパク質産物を高発現させるための哺乳動物細胞、方法および同方法のための試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、哺乳動物宿主細胞で分泌組換えタンパク質産物を高発現させるための哺乳動物細胞、方法および同方法のための試薬に関する。
本発明の1つの態様では、組換えタンパク質を高発現するための哺乳動物宿主細胞が提供され、この哺乳動物細胞は、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質を有し、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで形質転換されている。
【0008】
本発明の第1態様の1つの実施形態においては、組換えタンパク質産物が分泌される。
本発明の別の実施形態では、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞のDNAに組み込まれる。
【0009】
本発明の別の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される。
本発明の別の実施形態において、組換えタンパク質産物は、ビクニン、第VIII因子、IL2SA、またはそれらの断片を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態において、形質転換は、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される。
【0011】
本発明の別の実施形態において、形質転換は、カルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる第1の発現ベクターと、第2の発現ベクターとを用いて実施される。
本発明の第2態様では、目的の組換えタンパク質またはその断片を高発現させるための哺乳動物宿主細胞を生産する方法を提供し、この方法は、目的の組換えタンパク質またはその断片の発現をコードする遺伝物質を有する哺乳動物細胞を得るステップと、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで哺乳動物細胞を形質転換するステップとを含む。
【0012】
本発明の第2態様の1つの実施形態においては、組換えタンパク質産物が分泌される。
本発明の別の実施形態では、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれる。
【0013】
本発明の別の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される。
本発明の別の実施形態において、組換えタンパク質産物は、ビクニン、第VIII因子、IL2SA、またはそれらの断片を含む。
【0014】
本発明の別の実施形態において、形質転換は、カルネキシン、カルレティキュリン、E
rp57、Hsp40またはHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される。
【0015】
本発明の別の実施形態において、形質転換は、カルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる第1の発現ベクターと、Erp57をコードするDNAを含んでなる第2の発現ベクターとを用いて実施される。
【0016】
本発明の第3態様では、分泌型組換えタンパク質産物を生産する方法を提供し、この方法は、組換えタンパク質の発現をコードする遺伝物質を有し、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、そのようにして生産かつ分泌された組換えタンパク質産物を培地から回収するステップとを含む。
【0017】
本発明の第3態様の1つの実施形態においては、組換えタンパク質産物が分泌される。
本発明の別の実施形態では、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれる。
【0018】
本発明の別の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される。
本発明の別の実施形態において、組換えタンパク質産物は、ビクニン、第VIII因子、IL2SA、またはそれらの断片を含む。
【0019】
本発明の別の実施形態において、形質転換は、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40またはHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される。
【0020】
本発明の別の実施形態において、形質転換は、カルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる第1の発現ベクターと、Erp57をコードするDNAを含んでなる第2の発現ベクターとを用いて実施される。
【0021】
本発明の第4態様においては、哺乳動物細胞における組換えタンパク質またはその断片の収量を増加させる方法を提供し、この方法は、組換えタンパク質産物またはその断片の発現をコードする遺伝物質を有する第1の細胞株を得るステップと、改変細胞株を形成するために、第1の細胞株に少なくとも1種のシャペロンタンパク質発現ベクターを導入するステップと、改変細胞株から、組換えタンパク質またはその断片の収量が増加した少なくとも1種の第2の細胞株を選択するステップとを含む。
【0022】
本発明の第4態様の1つの実施形態においては、組換えタンパク質産物が分泌される。
本発明の別の実施形態では、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれる。
【0023】
本発明の別の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される。
本発明の別の実施形態において、組換えタンパク質産物は、ビクニン、第VIII因子、IL2SA、またはそれらの断片を含む。
【0024】
本発明の別の実施形態において、シャペロン発現ベクターは、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40またはHsp70をコードするDNAを含む。
本発明の別の実施形態において、導入は、カルレティキュリンをコードするDNAを含
んでなる第1のシャペロン発現ベクターと、Erp57をコードするDNAを含んでなる第2のシャペロン発現ベクターとを用いて実施される。
【0025】
本発明の別の実施形態では、シャペロンタンパク質発現ベクターが宿主DNAへ組み込まれている第1の細胞株の一部を選択することにより、第1の細胞株から少なくとも1種の第2の細胞株が作出される。
【0026】
本発明の第5態様においては、哺乳動物細胞における組換えタンパク質またはその断片の収量を増加させる方法を提供し、この方法は、シャペロンタンパク質の高発現を示す細胞株に組換えタンパク質またはその断片をコードする遺伝物質を導入するステップを含む。
【0027】
本発明のこの態様の1つの実施形態では、組換えタンパク質産物が分泌される。
本発明の別の実施形態では、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれる。
【0028】
本発明の別の実施形態において、細胞は、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される。
本発明の別の実施形態において、組換えタンパク質産物は、ビクニン、第VIII因子、IL2SA、またはそれらの断片を含む。
【0029】
本発明の別の実施形態において、シャペロンタンパク質は、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40またはHsp70を含む。
本発明の別の実施形態において、シャペロンタンパク質はカルレティキュリンおよびErp57を含む。
【0030】
本発明は、図面と併せて以下の詳細な説明および特許請求の範囲を検討すればより容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、哺乳動物宿主細胞で分泌組換えタンパク質産物を高発現させる方法および該方法のための試薬に関する。
本発明の1つの実施形態においては、組換えタンパク質産物を高発現させるための哺乳動物宿主細胞が提供され、この哺乳動物細胞は、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質を含み、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターでさらに形質転換されている。
【0032】
本発明の別の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質で安定に形質転換されている。
用語「哺乳動物宿主細胞」とは、核酸配列でトランスフェクションされているか、または核酸配列でトランスフェクション可能であり、その結果、選択された目的遺伝子を発現し得る哺乳動物細胞を指して用いられる。この用語は、親細胞の子孫を包含し、子孫は、選択された遺伝子が存在する限り、形態または遺伝学的構成が元の親と同一であるか否かを問わない。
【0033】
本発明に用いるのに適した哺乳動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、ヒトのHeLa細胞、サルのCOS−1細胞、ヒト胎児腎293細胞、マウス骨髄腫NSOおよびヒトHKB細胞(米国特許第6,136,599号)があるが、それらには限定されない。他の細胞株はATCCから容
易に入手できる。
【0034】
用語「トランスフェクション」とは、細胞による異種または外来DNAの取り込みを指すのに用いられ、細胞は、外来DNAが細胞膜の内側に導入されたとき「トランスフェクションされた」ことになる。当技術分野では多くのトランスフェクション技術が周知であり、本明細書にも開示されている。例えば、グラハムら(Graham et al)、Virology、1973年、第52巻、p.456;サムブルックら(Sambrook et al)、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual」、コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratories)、1989年;デイビスら(Davis et
al)、「Basic Methods in Molecular Biology」、エルゼビア社(Elsevier)、1986年;およびチューら(Chu et al)、Gene、1981年、第13巻、p.197を参照されたい。そのような技術は、1種以上の外来DNA部分を適当な宿主細胞に導入するのに用い得る。
【0035】
本発明に用いるのに適したトランスフェクション技術としては、リン酸カルシウムトランスフェクション法、DEAE−デキストラントランスフェクション法、およびエレクトロポレーション法があるが、それらには限定されない。ベーリンガー・マンハイムのトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim Transfection Reagent)〔N−>1−(2,3−ジオレオイロキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、米国インディアナ州インディアナポリス所在のベーリンガー・マンハイム社〕、またはLIPOFECTIN(登録商標)、LIPOFECTAMIN(登録商標)もしくはDMRIE(商標)試薬〔米国メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg)所在のギブコ・ビー・アール・エル(GIBCO BRL)社〕を含めた市販の試薬を用いたカチオン脂質トランスフェクション法も用い得る。
【0036】
本明細書において、用語「重トランスフェクション(super transfection)」とは、すでに組換え遺伝子を発現している宿主細胞に2種以上の発現ベクターをトランスフェクションすることを指す。
【0037】
本明細書において、用語「形質転換」とは、細胞の遺伝学的特性の変化を指し、細胞は、新たなDNAを含むように改変されたとき形質転換されたことになる。例えば、細胞は、その天然状態から遺伝子組換えが行われた場合に形質転換される。トランスフェクション後、形質転換を担うDNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれてその細胞のDNAとの組換えを起こしてもよいし、複製されずにエピソームとして一時的に保持されてもよいし、またはプラスミドとして独立に複製してもよい。細胞は、そのDNAが細胞の分裂に伴って複製されたときに安定に形質転換されたと考えられる。
【0038】
本明細書において、用語「改変細胞株(modified cell line)」とは、1種以上のDNA構築物で一過性または安定に形質転換された細胞株を指す。
本発明の実施に用いるポリヌクレオチド、遺伝物質、組換えDNA分子、発現ベクターなどは、例えば、サムブルックら(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor(ニューヨーク)、1989年;本明細書に文献援用)により記載されたものなどの標準クローニング法を用いて単離し得る。あるいは、本発明の組換えタンパク質産物をコードするポリヌクレオチドは、当技術分野では周知の標準技術、例えば自動DNA合成装置などを用いて合成し得る。例えば、本発明の1つの実施形態では、図1に示すプライマーを用いたRT−PCRにより、カルネキシンタンパク質をコードするDNA配列を合成する。
【0039】
本明細書において、「発現ベクター」とは、天然には存在しないように組合せて並べたDNAセグメントを含むように人の手を介して改変されたDNA分子、またはそのような分子のクローンを指す。DNA構築物は、本発明のポリペプチドをコードする第1のDNAセグメントを、該第1のDNAセグメントの発現に必要な追加DNAセグメントに機能可能なように連結させて含むように設計することができる。本発明の文脈では、追加DNAセグメントには、一般的にはプロモーターや転写ターミネーターが挙げられるが、さらにエンハンサーや他の要素をも含まれ得る。さらに1種以上の選択マーカーも含まれ得る。多様な原核および真核宿主細胞中でクローニングDNAセグメントを発現させるのに有用なDNA構築物は、容易に入手し得る成分から調製するか、供給業者から購入し得る。
【0040】
DNA構築物は、目的のポリペプチドまたはタンパク質を分泌させるために必要なDNAセグメントをさらに含み得る。そのようなDNAセグメントは、少なくとも1種類の分泌シグナル配列を含み得る。リーダー配列、プレプロ配列および/またはプレ配列とも称される分泌シグナル配列は、細胞からの成熟ポリペプチドまたは成熟タンパク質の分泌を誘導する役割を果たすアミノ酸配列である。そのような配列は、疎水性アミノ酸コアを特徴とし、通常(但し、必須ではないが)、新規合成タンパク質のアミノ末端に見られる。非常に多くの場合、分泌ペプチドは分泌時に成熟タンパク質から切断される。そのような分泌ペプチドは、分泌経路を通過する際に成熟タンパク質から分泌ペプチドが切断されるのを可能にするプロセシング部位を含む。組換えタンパク質は、元のアミノ酸配列中に分泌シグナル配列を含んでいてもよいし、設計された分泌シグナル配列を元のアミノ酸配列中に挿入して分泌タンパク質になるように人為操作されてもよい。適当なプロモーター、ターミネーターおよび分泌シグナルの選択は、当業者のレベルで十分に対応できる範囲内である。例えば、哺乳動物培養細胞およびE.coliにおけるクローン遺伝子の発現については、サムブルックらの「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1989年(本明細書に文献援用)で詳細に論じられている。
【0041】
本明細書において、用語「組換えタンパク質産物」とは、宿主哺乳動物細胞に導入された遺伝物質から発現された組換えタンパク質またはその断片を指す。
トランスフェクション後、細胞は、DNA構築物によって一過性の形質転換状態または安定な形質転換状態に保持され得る。複数のDNA構築物の導入および複数のDNA構築物を含む細胞の選択は、同時に、より好ましくは連続的に、実施し得る。遺伝物質または発現ベクターで安定に形質転換された細胞株を確立する技術は当技術分野では周知である(「Current Protocols in Molecular Biology」)。一般に、トランスフェクション後、DNA構築物を含む細胞を増殖培地により選択するが、例えば、薬剤選択を行うか、または必須栄養素を欠乏させて、DNA構築物上の選択マーカーもしくはDNA構築物と共にトランスフェクションされた選択マーカーによって該栄養素を補足することによって選択する。哺乳動物培養細胞は、通常、市販の血清含有培地または無血清培地で培養する。使用される特定の宿主細胞に適した培地の選択は当業者のレベルの範囲内である。
【0042】
本発明において用いるのに適した薬剤選択用の選択マーカーとしては、ネオマイシン(G418)、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、ゼオシン、コルチン(Colchine)、メトトレキサート、およびメチオニンスルホキシミンがあるが、それらには限定されない。
【0043】
薬剤耐性細胞集団が確立されたら、個々のクローンを選択し、高発現クローンを選別し得る。クローニング細胞株を確立する方法は、当技術分野では周知であり、クローニングシリンダーの使用や限界希釈法が挙げられるが、それらには限定されない。各クローンからの目的の組換え産物の発現は、例えば、イムノアッセイ、酵素アッセイ、または発色ア
ッセイなどの方法で測定し得るが、それらの方法には限定されない。
【0044】
第1のDNA構築物で安定に形質転換された細胞株は、次いで、第2以降のDNA構築物によるトランスフェクション用宿主細胞として用いて、種々の薬剤選択に供することができる。
【0045】
本発明の1つの実施形態では、ビクニンタンパク質またはその断片を高発現かつ分泌する哺乳動物宿主細胞が提供され、この哺乳動物宿主細胞は、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターでさらに形質転換される。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態において、ビクニンを高発現かつ分泌する哺乳動物宿主細胞はCHO細胞である。
本明細書において、用語「ビクニン」とは、少なくとも1つのクニッツ(Kunitz)ドメインを有する任意のタンパク質を指す。クニッツドメインについては、例えば、ラスコウスキーら(Laskowski et al)、Ann Rev Biochem、1980年、第49巻、p.593−626、および米国特許第5,914,315号(1999年6月22日)などの文献に記載されている。1つの好ましい実施形態において、本明細書に使用されている用語「ビクニン」とは、図5に示すアミノ酸配列を指す。他のビクニンタンパク質およびその断片は、米国特許出願番号第09/144,428号、同第09/974,026号、同第09/218,913号および同第09/441,966号、ならびに国際出願公開公報第97/33996号として公開されたPCT出願番号US97/03894号および国際出願公開公報第00/37099号として公開された同US99/04381号に記載されており、これらの特許文献は本明細書に文献援用される。
【0047】
本発明の別の実施形態において、本発明は、第VIII因子タンパク質またはその断片を高発現かつ分泌する哺乳動物宿主細胞を提供し、この哺乳動物宿主細胞は、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターでさらに形質転換される。
【0048】
1つの好ましい実施形態において、第VIII因子タンパク質は、米国特許第4,965,199号(全体を本明細書に文献援用)に記載の配列を有する。
さらに別の好ましい実施形態において、第VIII因子を高発現かつ分泌する哺乳動物宿主細胞はBHK細胞である。
【0049】
本発明の別の実施形態において、本発明は、IL2SAタンパク質またはその断片を高発現かつ分泌する哺乳動物宿主細胞を提供し、この哺乳動物宿主細胞は、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1つの発現ベクターでさらに形質転換される。
【0050】
1つの好ましい実施形態において、IL2SAタンパク質は、米国特許第6,348,192号(全体を本明細書に文献援用)に記載の配列を有する。
さらに別の好ましい実施形態において、IL2SAタンパク質を高発現かつ分泌する哺乳動物宿主細胞はCHO細胞である。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、グルタミンシンセターゼ
タンパク質をコードする発現ベクターでさらに形質転換される。
また本発明は、目的の組換えタンパク質またはその断片を高発現させるための哺乳動物宿主細胞を作出する方法を提供し、この方法は、目的の組換えタンパク質またはその断片の発現をコードする遺伝物質を有する哺乳動物細胞を得るステップと、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで該哺乳動物細胞を形質転換するステップとを含む。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれる。
本発明の別の実施形態では、哺乳動物宿主細胞は、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される。
【0053】
本発明の1つの好ましい実施形態において、組換えタンパク質産物はビクニンまたはその断片であり、形質転換は、カルネキシン、Erp57、カルレティキュリン、またはHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される。
【0054】
本発明の別の好ましい実施形態において、組換えタンパク質産物は第VIII因子またはその断片であり、形質転換は、カルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる第1の発現ベクターと、Erp57をコードするDNAを含んでなる第2の発現ベクターとを用いて実施される。
【0055】
本発明の別の好ましい実施形態において、組換えタンパク質産物は第VIII因子またはその断片であり、形質転換は、カルネキシンまたはHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態において、組換えタンパク質産物はIL2SAまたはその断片であり、形質転換は、Hsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される。
【0057】
本発明はまた、分泌型組換えタンパク質産物を生産する方法を提供し、この方法は、組換え産物の発現をコードする遺伝物質を有し、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターでさらに形質転換された哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、そのようにして生産かつ分泌されたビクニンタンパク質またはその断片を培地から回収するステップとを含む。
【0058】
本発明の1つの実施形態において、分泌型組換えタンパク質産物を生産する方法は、組換え産物の発現をコードする遺伝物質で安定に形質転換された哺乳動物宿主細胞を培養するステップを含む。
【0059】
本発明の別の実施形態において、分泌型組換えタンパク質産を生産する方法は、哺乳動物宿主細胞を、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードする発現ベクターでトランスフェクションするステップをさらに含む。
【0060】
本発明の1つの実施形態は、ビクニンタンパク質またはその断片を生産する方法を提供し、この方法は、ビクニンタンパク質またはその断片と、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40およびHsp70からなる群から選択される少なくとも1種のシャペロンタンパク質とを発現する哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、そのようにして生産かつ分泌されたビクニンタンパク質またはその断片を培地から回収するステ
ップとを含む。
【0061】
本発明の1つの実施形態では、CHO細胞において組換えビクニンタンパク質の生産を増加させる方法を提供し、前記方法は、改変CHO細胞株を形成するために、少なくとも1種のシャペロンタンパク質発現ベクターを第1のCHO細胞株に挿入するステップと、改変CHO細胞株から、組換えビクニンタンパク質の収量が増加した少なくとも1種の第2の細胞を選択するステップとを含み、第1のCHO細胞株には(1999年11月12日に出願されたチャン(Chan)の米国特許出願番号第09/441,654号(本願に援用)に記載のように)組換えビクニンの発現をコードする遺伝物質があらかじめ導入されていることを特徴とする。
【0062】
本発明の別の実施形態において、CHO細胞株における組換えビクニン収量を増加させる方法は、組換えビクニンを得るための遺伝物質を、シャペロンタンパク質を高発現するCHO細胞株に導入するステップを含む。
【0063】
本発明のさらに別の実施形態では、BHK細胞において組換え第VIII因子タンパク質の生産を増加させる方法を提供し、前記方法は、改変BHK細胞株を形成するために、第1のBHK細胞株に少なくとも1種のシャペロンタンパク質発現ベクターを挿入するステップと、改変BHK細胞株から、組換え第VIII因子タンパク質の収量が増加した少なくとも1種の第2の細胞を選択するステップとを含み、第1のBHK細胞株には組換え第VIII因子の発現をコードする遺伝物質があらかじめ導入されていることを特徴とする。
【0064】
本発明のさらに別の実施形態において、BHK細胞株における組換え第VIII因子の収量を増加させる方法は、組換え第VIII因子を得るための遺伝物質を、シャペロンタンパク質を高発現するBHK細胞株に導入するステップを含む。
【0065】
また本発明は、CHO細胞において組換えIL2SAタンパク質を高生産させる方法を提供し、前記方法は、改変CHO細胞株を形成するために、第1のCHO細胞株に少なくとも1種のシャペロンタンパク質発現ベクターを挿入するステップと、改変CHO細胞株から、組換えIL2SAタンパク質の収量が増加した少なくとも1種の第2の細胞を選択するステップとを含み、第1のCHO細胞株には組換えIL2SAの発現をコードする遺伝物質があらかじめ導入されていることを特徴とする。
【0066】
本発明の別の実施形態において、CHO細胞株における組換えIL2SAの収量を増加させる方法は、組換えIL2SAを得るための遺伝物質を、シャペロンタンパク質を高発現するCHO細胞株に導入するステップを含む。
【0067】
以下の実施例は、例示目的のみを意図しており、したがって、本発明の範囲をどのようにも制限するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0068】
[シャペロンcDNAのクローニング]
すべてのシャペロン配列は、ヒトcDNAライブラリーからクローニングし、次いで、ヌクレオチド配列を確認した。ヒトcDNAライブラリーからRT−PCRにより3種のERシャペロンを表すDNA配列をクローニングした。これらの反応に用いたRT−PCRプライマーは、Genbankから得た適切な配列を用いて全コード領域を増幅するように設計した。各5’および3’プライマー対は、PCR産物を発現ベクターpCI−neo(プロメガ(Promega)社)にクローニングし易いようにEcoRI(5’プライマー)またはXbaI(3’プライマー)制限部位(図1)を含む。
【0069】
高精度のPFU酵素(ストラタジーン(Stratagene)社)を用いてPCR反応を実施した。予想サイズのバンドを精製し、EcoRIおよびXbaIで消化し、同じように消化したpCI−neoベクターにクローニングした。このステップから得た組換えベクターを大腸菌で増殖させた後、ベクター配列を単離、精製した。この配列のシャペロンを表すインサートを、ベクターのマルチクローニング部位のすぐ外側ならびにシャペロン配列内に結合するプライマーを用いて配列決定した。配列決定は、Big Dye(登録商標)ターミネーター法を用いて、エム・ジェイ・リサーチ(MJ Research)社のサーマルサイクラーで実施し、ABI社の310型ジェネティック・アナライザを用いて解析した。ヒトのカルネキシン、カルレティキュリンおよびErp57のcDNA配列を図2A〜2Cに示す。
【0070】
ヒト脳のポリA RNA(クロンテック(CLONTECH)社、カタログ番号6516−1〕と、2種のプライマーすなわちF−Hsp70=5’AGG GAA CCG
CAT GGC CAA AGおよびR−Hsp70=5’GAA AGG CCC CTA ATC TAC CTC CTC Aとを用いて、RT−PCRにより、完全長のヒトHsp70 cDNA断片を得た。Hsp70のプライマー配列は、ヒトの熱ショックタンパク質(Hsp70)遺伝子に関して先に公開された配列[9]に由来するものとした。F−Hsp70およびR−Hsp70プライマーには、それぞれEcoRIまたはXbaI配列を含めた。所望のPCR断片をアガロースゲル電気泳動で精製し、ヌクレオチドの塩基配列決定により確認した。次いで、この完全長のヒトHsp70 cDNA断片をpCI−neoベクターのEcoRIおよびXbaIクローニング部位に挿入してpCI−neo−Hsp70ベクターを作製した。pCI−neo−Hsp70ベクターを大腸菌で増殖させた後、ベクター配列を単離、精製した。pCI−neo−Hsp70プラスミドDNAをABI社のPRISM(登録商標)310型ジェネティック・アナライザで配列決定した。ヒトHsp70の配列を図2Dに示す。
【実施例2】
【0071】
[カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57またはHsp70などのERシャペロンでトランスフェクションした後ではCHO細胞におけるビクニン生産量が増加する]
組換えビクニンタンパク質を分泌するCHO細胞株(米国特許出願番号第09/441654号、本明細書に文献援用)を、ERシャペロン、カルネキシン(CNX)、カルレティキュリン(CRT)、Erp57またはHsp70の種々の組合せで重トランスフェクションした後、G418で選択した。細胞集団を取得し、カリクレインアッセイでスクリーニングした(米国特許出願番号第09/441,654号、本明細書に文献援用)。手短に述べれば、ビクニン標準液または培養液を系列希釈し、等容量のカリクレインと共に37℃で30分インキュベーションした後、発色基質N−ベンゾイル−Pro−Phe−Arg−pNAを加えた。反応液を15分インキュベーションしてから、50%酢酸を加えた。放出されたp−ニトロアニリドの量を405nmで測定した。次いで、ビクニン力価が最も高い集団から単細胞をクローニングし、数週間かけて増殖させた。コントロールのCF9−20細胞に比べて一貫して高いビクニン力価(2〜4×)を示すクローンを保持し、さらなる分析のために振盪フラスコで増殖させた。これらのクローンを、振盪フラスコ環境下での増殖中に示されたビクニン力価および増殖特性に基づいてさらに限定した。振盪フラスコの段階で数回詳細に分析した後、最終候補クローンを選択した。
【0072】
すべての細胞株の固有ビクニン生産率を、ビクニン(pg)/細胞/日(SPR)として表す。毎日細胞を収穫し、新鮮培地に移し、振盪フラスコ中37℃で24時間インキュベーションした。翌日、細胞を再度収穫、計数し、同量の新鮮培地に再懸濁し、同じ条件でさらに24時間インキュベーションした。使用済み培地試料のビクニン活性(pg/細胞/日)の測定を行った。細胞数および生存力が低下し始めるまで毎日同じ手順を繰り返
した。
【0073】
ビクニン発現に及ぼすシャペロンタンパク質の効果を図3および図4に示す。コントロール細胞株(CF9−20)は、ビクニンは発現するがシャペロンタンパク質は全く発現しない。ビクニン発現に及ぼすカルネキシン、カルレティキュリン、およびErp57の効果を以下の表1に要約する。
【0074】
【表1】

【0075】
表中、活性測定値の倍率(増加率)は、ビクニンは発現するがシャペロンタンパク質は全く発現しないコントロール細胞株との比較である。細胞は、無血清培地にて振盪フラスコ培養で増殖させた。
【実施例3】
【0076】
[ERシャペロンでトランスフェクションした後ではBHK細胞における組換え第VIII因子の生産量が増加する]
安定な第VIII因子産生細胞(MWCB1)(米国特許第4,965,199号;ATCC番号 CRL 8544)を、10:1比のシャペロン発現ベクターとpPUR(ピューロマイシン耐性遺伝子を含むベクター)でトランスフェクションした。約4×10個のMWCB1細胞を、6ウエルプレート中で、DMRIE−C(商標)試薬およびOPTI−MEM(登録商標)培地(米国メリーランド州所在のライフ・テクノロジー(Life Technology)社)を用いて合計5μgのDNAでトランスフェクションした。トランスフェクション3日後に、6ウエルプレートに100,000個の細胞を播種し、次いで、1〜2μg/mlのピューロマイシンの存在下、2%FBSを含むOPTI−MEM培地で2週間培養して選択した。ピューロマイシン耐性コロニーを手作業で採取し、96ウエルプレートに播種し、薬剤不在下で増殖させた。COATEST(登録商標)キット(イタリア国所在のクロモジェニックス(Chromogenix)社)を用い、製造業者の指示に従って、個々のクローン集団を第VIII因子の生産についてスクリーニングした。高生産クローンを6ウエルディッシュからT75フラスコまで順次増殖させた後、安定性および生産性をテストするために振盪フラスコの状態にした。次いで、カルネキシン(CNX)、カルレティキュリン(CRT)、Erp57、Hsp40およびHsp70シャペロンを個別に、または2種組合せて、細胞をトランスフェクションした。CNX、CRTおよびErp57、Hsp70、ならびにHsp40でトランスフェクションしたクローンでは第VIII因子の生産性に有意な2〜4倍の増大が観察されたのに対し、空のベクターコントロール(PCI−Neo)は、親株のMWCB1細胞に比べて差が認められなかった(表2)。
【0077】
【表2】

【0078】
表2に関して、細胞は、2日目に、振盪フラスコ中の15mlに対して1×10個/mlで播種した。
【実施例4】
【0079】
[BiPとPDIを同時発現させてもBHK細胞およびCHO細胞における第VIII因子および抗TNF抗体の発現は増大しない]
高レベルのビクニンを発現する組換えCHO細胞(実施例2に記載)と、高レベルの組換え第VIII因子(rFVIII)を発現する組換えBHK細胞(実施例3に記載)を、pHyg(ハイグロマイシン耐性を与えるプラスミド)およびpBiPで重トランスフェクションした。トランスフェクション条件および選択条件は実施例2と同じとした。ハイグロマイシン選択および限界希釈法によるクローニングの後、クローンをビクニン生産性およびrFVIII活性について評価した。コントロールベクター(pHyg)のみでトランスフェクションした細胞由来のクローンと、pBiPでトランスフェクションした細胞由来のクローンの固有生産率には有意な差がなかった。
【実施例5】
【0080】
[グルタミンシンセターゼ(GS)およびHsp70によるIL2SA生産クローンのトランスフェクション]
IL2SA(IL2選択的アゴニスト;米国特許第6,348,192号、全体を本明細書に文献援用)を生産するCHO細胞株、39−19−H42(ATCC寄託株 PTA−8をクローニングしたバリアント)をPCI−GSおよびPCI−neo−Hsp70で同時にトランスフェクションした。4×10個の細胞を、DMRIE−C試薬およびOPTI−MEM培地(米国メリーランド州所在のライフ・テクノロジー社)を用い、製造業者の指示に従って、6ウエルプレート中で、2.5μgのプラスミドDNAでトランスフェクションした。トランスフェクション3日後に、細胞を150mmの96ウエルプレートに播種し、次いで、10μMのMSX(メチオニンスルホキシミン)および250μg/mlのG418の存在下、2%の透析済FBSを含むグルタミン欠乏DME:F12(1:1)培地で2週間培養して選択した。単細胞コロニーを採取し、96ウエルに再播種した。これらのコロニーを、高濃度のMSX(20μM)およびG418(400μg/ml)でさらに1週間選択培養した。3週間の選択培養後、150mmプレートからのプールが得られる。このプールとクローンを徐々に振盪フラスコまで増殖させ、ELISAを用いてIL2生産性についてスクリーニングした。フローサイトメーターを用いたFACS分析によりGSおよびHsp70タンパク質の発現を確認した。「GS陽性」細胞を、5.6mMのグルタミン酸と4g/Lのグルコースを追加したグルタミン非含有
培地で培養した。これらのクローンの倍加時間は24〜84時間の間でさまざまであった。親株とクローンの生産性の比較を表3に示す。いずれの単細胞クローンにおいても、プールまたは親株と比較して、力価全体では2〜4倍、固有生産率では2〜3倍の増大が観察された。
【0081】
【表3】

【0082】
表3に関して、細胞は、0日目に、完全培地(親株の場合)またはグルタミン非含有培地15mlに対して、10個/mlで播種した。播種2日後に試料を採取し、ELISAを用いて分析した。GSおよびHsp70の発現を調べるために、細胞を70%EtOHで固定し、適切な抗体で標識し、FACSで分析した。
【0083】
表中、+++=全細胞がGSまたはHsp70を発現;+=30%の細胞がGSまたはHsp70を発現;(−)=発現なし、を意味する。
【0084】

【表4】


【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ヒトcDNAライブラリーからERシャペロンのcDNAを増幅するのに用いたRT−PCRプライマーの配列を示す図。下線部は、組み込まれているEcoRI制限部位(5’プライマー)またはXbaI制限部位(3’プライマー)を示す。CNX:カルネキシン;CRT:カルレティキュリン。
【図2A】RT−PCRによりクローニングされたカルネキシンのヌクレオチドおよびアミノ酸の全配列を示す図。プライマー内の5’EcoRI部位および3’XbaI部位には下線が付されている。開始コドンおよび停止コドンは太字で示されている。
【図2B】RT−PCRによりクローニングされたカルレティキュリンのヌクレオチドおよびアミノ酸の全配列を示す図。5’EcoRI部位および3’XbaI部位には下線が付されている。開始コドンおよび停止コドンは太字で示されている。
【図2C】RT−PCRによりクローニングされたErp57のヌクレオチドおよびアミノ酸の全配列を示す図。5’EcoRI部位および3’XbaI部位には下線が付されている。開始コドンおよび停止コドンは太字で示されている。
【図2D】ヒトHsp70遺伝子コード領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の全配列を示す図。
【図2E】ヒトHsp40遺伝子コード領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の全配列を示す図。開始コドンは太字かつ下線付き文字で示されている。
【図2F】グルタミンシンセターゼのコード領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の全配列を示す図。開始コドンは太字かつ下線付き文字で示されている。
【図3】カルネキシン(X4.14:5、X4/14:30)、Hsp70(7−3)またはErp57(X4/19:62)とともに重トランスフェクションされたクローンにおけるビクニンの過剰発現を示す図。いずれの細胞株に関する固有ビクニン生産率もビクニン(pg)/細胞/日(SPR)で示されている。毎日細胞を収穫し、新鮮培地に移し、振盪フラスコ中37℃で24時間インキュベートした。翌日、細胞を再度収穫し、計数し、同量の新鮮培地に再懸濁し、同じ条件でさらに24時間インキュベートした。使用済み培地試料のビクニン活性(pg/細胞/日)の測定を実施した。細胞数および生存力が低下し始めるまで毎日同じ手順を繰り返した。コントロール細胞株(CF9−20)は、ビクニンは発現するが、シャペロンタンパク質は全く発現しない。
【図4】Hsp70とともに重トランスフェクションしたクローンにおけるビクニンの過剰発現を示す図。CF9−20(コントロール細胞)を除くすべてのクローンをHsp70で重トランスフェクションする。実験手順は図3について記載したものと同じである。
【図5】ビクニンのアミノ酸配列を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えタンパク質産物を高発現させるための哺乳動物宿主細胞であって、組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質を有することと、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで形質転換されていることとを特徴とする哺乳動物宿主細胞。
【請求項2】
組換えタンパク質産物が分泌されることを特徴とする、請求項1に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項3】
前記組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれている、請求項2に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項4】
グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換された、請求項3に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項5】
組換えタンパク質産物がビクニンまたはその断片である、請求項2に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項6】
形質転換が、カルネキシンをコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項5に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項7】
形質転換が、Erp57をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項5に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項8】
形質転換が、カルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項5に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項9】
形質転換が、Hsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項5に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項10】
組換えタンパク質産物が第VIII因子またはその断片である、請求項2に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項11】
前記形質転換が、カルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる第1の発現ベクターと、Erp57をコードするDNAを含んでなる第2の発現ベクターとを用いて実施される、請求項10に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項12】
前記形質転換が、カルネキシンをコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項10に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項13】
前記形質転換が、Hsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項10に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項14】
組換えタンパク質産物がIL2SAまたはその断片である、請求項2に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項15】
前記形質転換が、Hsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項14に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項16】
ビクニンまたはその断片を高発現させるための哺乳動物宿主細胞であって、ビクニンまたはその断片の発現をコードする遺伝物質を有することと、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで形質転換されていることとを特徴とする哺乳動物宿主細胞。
【請求項17】
ビクニンまたはその断片の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれている、請求項16に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項18】
グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換された、請求項16に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項19】
第VIII因子またはその断片を高発現させるための哺乳動物宿主細胞であって、第VIII因子またはその断片の発現をコードする遺伝物質を有することと、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで形質転換されていることとを特徴とする哺乳動物宿主細胞。
【請求項20】
第VIII因子またはその断片の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれている、請求項19に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項21】
グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換された、請求項20に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項22】
IL2SAまたはその断片を高発現させるための哺乳動物宿主細胞であって、IL2SAまたはその断片の発現をコードする遺伝物質を有することと、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで形質転換されていることとを特徴とする哺乳動物宿主細胞。
【請求項23】
IL2SAまたはその断片の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれている、請求項22に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項24】
グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換された、請求項23に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項25】
目的の組換えタンパク質またはその断片を高発現させるための哺乳動物宿主細胞を作出する方法であって、
目的の組換えタンパク質またはその断片の発現をコードする遺伝物質を有する哺乳動物細胞を得るステップと、
カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで該哺乳動物細胞を形質転換するステップと
を含んでなる方法。
【請求項26】
組換えタンパク質産物が分泌されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換を実施する、請求項28に記載の方法。
【請求項29】
組換えタンパク質産物がビクニンまたはその断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
形質転換がカルネキシンをコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項29に記載の方法1。
【請求項31】
形質転換がErp57をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
形質転換がカルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
形質転換がHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
組換えタンパク質産物が第VIII因子またはその断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記形質転換が、カルレティキュリンをコードするDNAを含んでなる第1の発現ベクターと、Erp57をコードするDNAを含んでなる第2の発現ベクターとを用いて実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記形質転換がカルネキシンをコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記形質転換がHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
組換えタンパク質産物がIL2SAまたはその断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記形質転換がHsp70をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを用いて実施される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
分泌組換えタンパク質産物を生産する方法であって、
前記組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質を有することと、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる少なくとも1種の発現ベクターで形質転換されていることとを特徴とする哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、
そのようにして生産かつ分泌された組換えタンパク質産物を培地から回収するステップと
を含んでなる方法。
【請求項41】
前記組換えタンパク質産物の発現をコードする遺伝物質が宿主細胞DNAに組み込まれる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記哺乳動物宿主細胞が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ビクニンタンパク質またはその断片を生産する方法であって、請求項5に記載の哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、そのようにして生産かつ分泌されたビクニンタンパク質またはその断片を培地から回収するステップとを含んでなる方法。
【請求項44】
前記哺乳動物宿主細胞が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
第VIII因子タンパク質またはその断片を生産する方法であって、請求項10に記載の哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、そのようにして生産かつ分泌された第VIII因子タンパク質またはその断片を培地から回収するステップとを含んでなる方法。
【請求項46】
前記哺乳動物宿主細胞が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
IL2SAタンパク質またはその断片を生産する方法であって、請求項14に記載の哺乳動物宿主細胞を培養するステップと、そのようにして生産かつ分泌されたIL2SAタンパク質またはその断片を培地から回収するステップとを含んでなる方法。
【請求項48】
前記哺乳動物宿主細胞が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
CHO細胞株における組換えビクニンタンパク質の収量を増加させる方法であって、
改変CHO細胞株を形成するために、第1のCHO細胞に少なくとも1種のシャペロンタンパク質発現ベクターを挿入するステップと、
前記改変CHO細胞株から、組換えビクニンタンパク質の収量が増加した少なくとも1種の第2の細胞株を選択するステップと
を含んでなり、
前記第1のCHO細胞には前記組換えビクニンの発現をコードする遺伝物質があらかじめ導入されていることを特徴とする方法。
【請求項50】
第1のCHO細胞のDNAに前記組換えビクニンの発現をコードする遺伝物質が組み込まれている、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第2の細胞株が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
宿主DNAにシャペロンタンパク質発現ベクターが組み込まれている前記第1の細胞株の一部を選択することにより、前記第1の細胞株から少なくとも1種の第2の細胞株が作出される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記シャペロンタンパク質発現ベクターが、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記選択がG418の存在下で実施される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
ベビーハムスター腎(BHK)細胞株における組換え第VIII因子の収量を増加させる方法であって、
改変BHK細胞株を形成するために、第1のBHK細胞株に少なくとも1種のシャペロ
ンタンパク質発現ベクターを挿入するステップと、
前記改変BHK細胞株から、組換え第VIII因子産物の収量が増加した少なくとも1種の第2の細胞株を選択するステップと
を含んでなり、
前記第1のBHK細胞株には前記組換えVIII因子の発現をコードする遺伝物質があらかじめ導入されていることを特徴とする方法。
【請求項56】
第1のBHK細胞のDNAに前記組換え第VIII因子の発現をコードする遺伝物質が組み込まれている、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
第2の細胞株が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
宿主DNAにシャペロンタンパク質発現ベクターが組み込まれている前記第1の細胞株の一部を選択することにより、前記第1の細胞株から少なくとも1種の第2の細胞株が作出される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記シャペロンタンパク質発現ベクターが、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、またはHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記BHK細胞が、ピューロマイシン耐性遺伝子を含むベクターでさらに形質転換される、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
選択がピューロマイシンの存在下で実施される、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
CHO細胞株における組換えIL2SAタンパク質の収量を増加させる方法であって、
改変CHO細胞株を形成するために、第1のCHO細胞株に少なくとも1種のシャペロンタンパク質発現ベクターを挿入するステップと、
前記改変CHO細胞株から、組換えIL2SAタンパク質の収量が増加した少なくとも1種の第2の細胞株を選択するステップと
を含んでなり、
前記第1のCHO細胞株には前記組換えIL2SAの発現をコードする遺伝物質があらかじめ導入されていることを特徴とする方法。
【請求項63】
第1のCHO細胞のDNAに前記組換えIL2SAの発現をコードする遺伝物質が組み込まれている、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
第2の細胞株が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記シャペロンタンパク質発現ベクターが、カルネキシン、カルレティキュリン、Erp57、Hsp40、およびHsp70からなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードするDNAを含んでなる、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
CHO細胞株における組換えビクニンまたはその断片の収量を増加させる方法であって、ビクニンまたはその断片をコードする遺伝物質を、シャペロンタンパク質を高発現するCHO細胞株に導入するステップを含んでなる方法。
【請求項67】
CHO細胞株が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる
発現ベクターでさらに形質転換される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
BHK細胞株における組換え第VIII因子またはその断片の収量を増加させる方法であって、該組換え第VIII因子またはその断片をコードする遺伝物質を、シャペロンタンパク質を高発現するBHK細胞株に導入するステップを含んでなる方法。
【請求項69】
BHK細胞株が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
CHO細胞株における組換えIL2SAまたはその断片の収量を増加させる方法であって、該組換えIL2SAをコードする遺伝物質を、シャペロンタンパク質を高発現するCHO細胞株に導入するステップを含んでなる方法。
【請求項71】
CHO細胞株が、グルタミンシンセターゼタンパク質をコードするDNAを含んでなる発現ベクターでさらに形質転換される、請求項70に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−524381(P2007−524381A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517077(P2006−517077)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/007993
【国際公開番号】WO2005/010046
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505463386)バイエル ファーマシューティカルズ コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】BAYER PHARMACEUTICALS CORPORATION
【Fターム(参考)】