説明

商業的肥育場の去勢ウシ及び若雌ウシにおけるレプチン遺伝子中のマーカーと屠体特性との間の連関

本発明は、遺伝子型に従って動物を部分集団に分ける方法であって、各部分集団の動物がレプチン遺伝子における類似の多型又は多型の組合せを有しており、上記一塩基多型が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB、及びE2JWから成る群から選択される方法を提供する。レプチン遺伝子の上記一塩基多型の組合せ、特にE2JW遺伝子座の対立遺伝子を含む組合せは、肉の柔らかさの増大を示すものでも、それらの動物の他の形質の質を示すものでもありうる。本発明は、その種の動物の一般的集団と比較して、ある種の飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体組成、並びに乳生産量に関する望ましい表現型を有する動物を同定する方法であって、上記動物のレプチン遺伝子における一塩基多型又は一塩基多型の組合せの存在を判定するステップを含む方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願/特許及び参照による援用
この出願は、2005年3月4日出願の米国特許仮出願第60/658625号に基づく優先権を主張し、これによりその内容を参照により明示的に本明細書に援用する。
【0002】
本明細書で引用された出願及び特許のそれぞれ、並びにそれら出願及び特許のそれぞれで引用された文書及び参考文献のそれぞれ(係争中の交付された特許を含める;「出願引用文書」)、並びに、これらの出願及び特許のいずれにも対応し、且つ/或いはそれに基づく優先権を主張するPCT及び外国出願又は外国特許のそれぞれ、並びに出願引用文書のそれぞれで引用又は参照された文書のそれぞれを、これによって参照により明示的に本明細書に援用する。より一般的に言えば、文書又は参考文献は、本明細書中、すなわち、明細書末部の参考文献リスト又は明細書本文それ自体に引用されており、これらの文書又は参考文献(「本明細書に引用の参考文献」)、並びに、本明細書に引用の参考文献のそれぞれで引用された文書及び参考文献(製造業者の仕様書、説明書などのいかなるものも含まれる)のそれぞれを、これによって明示的に参照により本明細書に援用する。
【0003】
本発明は、レプチン遺伝子すなわちob遺伝子における一塩基多型、並びに、単独又は組合せでのこれらのSNPの、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値、肉の柔らかさ、及び屠体構成など、家畜種で経済的に重要な特定の形質との連関に関する。
【背景技術】
【0004】
何年にもわたる、標準的な動物育種及び選抜技術の適用を介して、動物当たりの生産、動物効率、並びに屠体及び肉の品質がかなり改善されている。しかし、そのような古典的な動物育種法は、数年にわたる個々の動物及びそれらの類縁の実績記録の遺伝的評価を必要とし、したがって、極めて大きな費用を要する。生産性及び品質を改善するために、飼料添加物、動物ホルモンインプラント、及び化学療法剤の使用などの管理実践の適用を介した他の試みも行われている。しかし、そのような方法の導入及び使用には、政治上及び規制上のかなりの抵抗が存在する。また、そのような方法は、非遺伝的であるので、すべての生産システムで別途に適用する必要もある。
【0005】
循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値、及び屠体構成の遺伝可能な形質に関する利点を有する家畜の、比較的簡単で、より効率的な選抜及び育種を可能にする方法が必要である。したがって、家畜における経済的に重要な特定の形質(特に、遺伝率の低い形質)に連関した遺伝子マーカーを、マーカー補助による選択を介して使用することの経済的重要性は、評価しすぎることがないほど大きなものである。
【0006】
ob(obese)遺伝子のホルモン産物であるレプチンは、主として脂肪組織で合成及び発現されることが示されており(Zhang et al., 1994、Ji et al., 1998)、体重、エネルギー消費量、飼料摂取量、肥満症、生殖能力、及び免疫機能の調節において、強力な生理的シグナルとして機能する(Houseknecht et al., 1998、Load et al., 1998、Garcia et al., 2002)。レプチンは、表現型及び遺伝子型における、ウシの生産率及び効率の相違に寄与する主要な制御因子の1つであると提唱されている。
【0007】
ウシレプチン遺伝子のコード領域における多型は、乳の生産率及び組成(Liefers et al., 2002)、飼料摂取量(Liefers et al., 2002;Lagonigro et al., 2003)、並びに体脂(Buchanan et al., 2002;Lagonigro et al., 2003)と連関している。しかし、レプチン遺伝子のプロモーター領域(すなわち、それに随伴するエンハンサー及びサイレンサーエレメントを介してレプチン発現のレベルを調節する該遺伝子の領域)に位置する多型の方が、これらの経済的に重要な形質の調節に、より強い効果を有するかもしれず、したがって、予測を行う上で、より大きな価値を有すると思われる。
【0008】
例えば、ヒトにおける研究では、レプチンプロモーターのCCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP−α)領域における変異によって、C/EBP−αによるプロモーターの誘導能が消失することが示されている(Miller et al., 1996)。Masonら(1998)は、C/EBP−α及びTATAモチーフにおける変異、そして、レプチンのコンセンサスSp1部位における変異が、プロモーター活性をそれぞれ10倍、10倍、及び2.5倍低下させ、さらに、これらの因子の結合を消失させたことを示した。Masonら(1998)は、レプチン遺伝子発現の調節が、そのプロモーターにおけるLP1モチーフに結合する新規の因子に部分的に関連していることも示した。脂肪細胞分化におけるペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR−γ)の役割も、レプチンプロモーター機能に関連している(De Vos et al., 1996)。いくつかの多型がウシレプチンプロモーター中で検出されている(Liefers et al., 2003)が、これらのうちいずれかを経済的に重要な、ウシのなんらかの形質と連関させることはほとんど何もなされていない。
【非特許文献1】Zhang et al., 1994
【非特許文献2】Ji et al., 1998
【非特許文献3】Houseknecht et al., 1998
【非特許文献4】Load et al., 1998
【非特許文献5】Garcia et al., 2002
【非特許文献6】Liefers et al., 2002
【非特許文献7】Lagonigro et al., 2003
【非特許文献8】Buchanan et al., 2002
【非特許文献9】Miller et al., 1996
【非特許文献10】Mason et al., 1998
【非特許文献11】De Vos et al., 1996
【非特許文献12】Liefers et al., 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明において、驚くべきことに、レプチン遺伝子のプロモーター領域における、以前には知られていなかった3つの一塩基多型(SNP)と、レプチン遺伝子のエキソン2における、以前から知られていた1つのSNPとが、これらの経済的に重要な、ウシの形質のうちのいくつかと密接に連関していることが示された。本発明者らが知る限りでは、本発明の遺伝子マーカーは、体重及び飼料摂取量との直接的な関係を示すことが同定された初めてのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は概ね、レプチン遺伝子すなわちob遺伝子(配列番号1)のプロモーターにおける、以前には知られていなかった3つの一塩基多型(SNP)と、ob遺伝子(配列番号5)のエキソン2における、以前から知られていた1つのSNPと、家畜種の循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値、及び/又は屠体構成など、家畜種において経済的にかなり重要な特定の形質とのこれらSNPのそれぞれの連関とに関する。レプチン遺伝子プロモーターに位置する3つのSNPは、UASMS1、UASMS2、及びUASMS3と呼ばれる。これらの3つのSNPは、ob遺伝子プロモーター配列のコンテクストにおいて、それぞれ、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4に見ることができる。レプチン遺伝子のエキソン2に位置するSNPはEXON2−FBと呼ばれ、ob遺伝子のエキソン2のコンテクストにおいて、配列番号6に見ることができる。
【0011】
一態様において、本発明は、遺伝子型に従って動物を集団に分ける方法を提供し、その際、各部分集団の動物は、レプチン遺伝子における類似の多型を有する。そのような方法は、レプチン遺伝子におけるSNPの存在を判定することによって、部分集団に分けられる各動物の遺伝子型を判定するステップを含み、その際、上記SNPが、UASMS1、UASMS2、UASMS3、及びEXON2−FBから成る群から選択され、また、個々の動物が部分集団に分けられ、1つの部分集団における各動物は、レプチン遺伝子における類似の多型を有する。好ましい一実施形態では、集団に分けられる動物がウシであり、上記レプチン遺伝子がウシレプチン遺伝子である。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、その種の動物の一般的集団と比較して、循環レプチンレベル、飼料摂取、成長速度、体重、屠体価値、及び屠体構成に関する望ましい形質を有する動物を同定する方法を提供する。そのような方法は、その動物のレプチン遺伝子におけるSNPの存在を判定するステップを含み、上記多型が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、及びEXON2−FBから成る群から選択され、且つUASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、又はEXON2−FBのいずれかのSNPの存在が、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値、及び屠体構成に関する望ましい形質を示す。好ましい一実施形態では、集団に分けられる動物がウシであり、上記レプチン遺伝子がウシレプチン遺伝子である。
【0013】
さらなる実施形態では、本発明は、ob遺伝子におけるUASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及びEXON2−FB SNPを検出するのに有用な単離されたオリゴヌクレオチドプローブを提供する。本発明は、各SNPについて2つの二者択一のアレルを検出するためのオリゴヌクレオチドプローブを提供するのが有利である。例えば、UASMS1多型は、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置207におけるCからTへの置換を構成するが、この多型の場合、本発明は、C含有アレルとT含有アレルとを検出及び識別するのに使用できるオリゴヌクレオチドプローブを提供する。例えば、UASMS2多型は、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置528におけるCからTへの置換を構成するが、この多型の場合、本発明は、C含有アレルとT含有アレルとを検出及び識別するのに使用できるオリゴヌクレオチドプローブを提供する。例えば、UASMS3多型は、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置1759におけるCからGへの置換を構成するが、この多型の場合、本発明は、C含有アレルとG含有アレルとを検出及び識別するのに使用できるオリゴヌクレオチドプローブを提供する。同様に、EXON2−FB多型は、ob遺伝子のエキソン2のヌクレオチド位置305におけるCからTへの置換を構成するが、この多型の場合、本発明は、C含有アレルとT含有アレルとを検出及び識別するのに使用できるオリゴヌクレオチドプローブを提供する。好ましい一実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブが、例えば、ジゴキシゲニン−dUTP、ビオチン、蛍光部分、化学発光部分、電気化学発光部分、及び放射性部分など、検出可能な部分で標識される。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明は、UASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及びEXON2−FB SNPにまたがる(spanning)ob遺伝子断片の増幅に有用な単離されたプライマー及びプライマー対を提供する。一実施形態では、そのようなプライマーを用いて増幅されたob遺伝子断片を、続いて、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いて検出する。
【0015】
従って、本発明の一態様は、遺伝子型に従って動物を部分集団に分ける方法であって、各部分集団の動物がレプチン遺伝子における類似の多型又は多型の組合せを有する方法を提供し、この方法は、(a)レプチン(ob)遺伝子における一塩基多型又は一塩基多型の組合せの存在を判定することにより、部分集団に分けるべき各動物の遺伝子型を決定するステップであって、上記一塩基多型が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB、及びE2JWから成る群から選択されるステップと、個々の動物を部分集団に分けるステップであって、部分集団中の各動物が、レプチン遺伝子における類似の多型又は多型の組合せを有するステップとを含む。
【0016】
本発明のこの態様における様々な実施形態で、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せは、レプチン遺伝子のUASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択することができ、個々の動物は、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWの一塩基多型の組合せを、動物が有するか否かに応じて、部分集団に分けられる。
【0017】
一実施形態では、レプチンの遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含み、上記SNPの組合せが、肉の柔らかさの増大を示す。
【0018】
本発明による別の実施形態では、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含む。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態では、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、EXON2−FB/E2JWのマーカーを含む。
【0020】
本発明の他の実施形態では、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、又はUASMS3/EXON2−FBのマーカーを含む。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態では、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含む。
【0022】
本発明の別の態様は、その種の動物の一般的集団と比較して、一定の飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体組成、並びに乳生産量に関する望ましい表現型を有する動物を同定する方法を提供し、この方法は、上記動物のレプチン遺伝子における一塩基多型又は一塩基多型の組合せの存在を判定するステップであって、上記一塩基多型が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB及びE2JWから成る群から選択され、上記一塩基多型の組合せが、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択され、且つ上記UASMS1、UASMS2、UASMS3、若しくはEXON2−FB一塩基多型のいずれかの存在、又は上記UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、若しくはUASMS3/E2JWの一塩基多型の組合せの存在が、一定の飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体組成、肉品質、肉の柔らかさ、並びに乳生産量に関する望ましい表現型を示す。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWからなる群から選択されたob遺伝子多型の組合せを検出するための組成物であって、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドプローブを含み、各オリゴヌクレオチドプローブが単一多型を選択的に検出でき、各プローブが検出可能な部分で標識されていてもよい組成物を提供する。
【0024】
本発明のこの態様の一実施形態は、単離されたオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能な部分が、放射標識H、125I、35S、14C、32P、検出可能な酵素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、蛍光色素、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、Cy3、Cy5、Bodipy、Bodipy Far Red、ルシファーイエロー、Bodipy 630/650-X、Bodipy R6G-X、5-CR 6G、比色標識、金コロイド、ジゴキシゲニン−dUTP、及びビオチンから成る群から選択される。本発明の一実施形態では、オリゴヌクレオチドが固体支持体に固定される。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、ob遺伝子の多型遺伝子座における動物の遺伝子型を決定する方法を提供し、この方法は、(a)上記動物からDNA試料を取得するステップと、(b)上記DNA試料を少なくとも2対のオリゴヌクレオチドプライマー対と、上記DNA試料への上記オリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションを可能にするのに適した条件下で接触させるステップと、c)上記プライマー対を使用して、ob遺伝子の特定の領域を酵素的に増幅し、それにより少なくとも2種の核酸増幅産物産生するステップと、(d)ステップc)から得られる増幅産物を、検出可能な部分で標識された、ob遺伝子対立遺伝子特異的な標識プローブと、上記増幅産物への上記対立遺伝子特異的な標識プローブのハイブリダイゼーションを可能にするのに適した条件下で接触させるステップと、e)上記増幅産物にハイブリダイズさせた対立遺伝子特異的な標識プローブの上記検出可能な部分を検出することによって、上記増幅産物の存在を検出するステップとを含む。
【0026】
本発明のこの態様における様々な実施形態で、オリゴヌクレオチドプライマー対は、配列番号7及び配列番号8、配列番号11及び配列番号12、配列番号15及び配列番号16、配列番号19及び配列番号20、並びにE2JW多型遺伝子座にまたがる、ob遺伝子の領域の増幅を可能とするプライマーから成る群から選択できる。
【0027】
本発明のこの方法の他の実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマー対は、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB、及びE2JWからなる群から選択された少なくとも1箇所の多型ヌクレオチド遺伝子座、又はUASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択された上記多型ヌクレオチド遺伝子座の組合せを有する、ウシレプチン遺伝子の領域を増幅できる。
【0028】
他の実施形態では、上記遺伝子型が牛肉の柔らかさの増大を示す。
【0029】
本明細書に記載のオリゴヌクレオチドプローブ及びプライマーは、その種の動物の一般的集団と比較して、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値、及び屠体構成に関する望ましい形質と連関のあるSNPを有する動物を同定するのに有用である。これらのSNPを所持する個々の動物がひとたび同定されれば、次に、遺伝子型に従ってそれらの動物を集団に分けることができ、その際、各部分集団の動物は、レプチン遺伝子における類似の多型を有する。本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドプローブ及びプライマーを含む組成物及びキットも提供すると有利である。これらの実施形態、及び他の実施形態は、以下の「発明を実施するための最良の形態」に開示されているか、或いは、それから明らかであって、且つそれに包含される。
【0030】
以下の詳細な説明及び実施例では、参照により本明細書に援用する添付の図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
i.定義
本明細書で使用される場合、下記の用語は、別段に特定されない限り、それらに付与されている意味を有する。この開示では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」などは、米国特許法でそれらに付与されている意味を有し、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、及び同様のことを意味することができ、「本質的に〜から成る(consisting essentially of)」又は「本質的に成る(consists essentially)」も同様に、米国特許法で付与されている意味を有し、この用語は非制限的であって、列挙されたもの以外のものの存在によって、列挙されたものの基本的特徴又は新規の特徴が変化しない限り、列挙されたもの以外のものの存在も許容するが、従来技術の実施形態を除外する。
【0032】
本明細書では、「動物」という用語を、ヒトを含めたすべての脊椎動物を含むものとして使用する。この用語は、胚及び胎児ステージを含めたすべての発生段階の個々の動物を含む。本明細書で使用される場合、「生産動物」という用語は、「家畜動物」と同義的に使用され、主として食用に育てられた動物を全般的に指す。例えば、そのような動物には、牛(ウシ)、羊(ヒツジ)、豚(ブタ)、家禽(トリ)などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「雌ウシ」又は「ウシ」という用語は、任意の年齢のウシ起源の動物を指すのに一般的に使用される。同義的な用語には、「ウシ」、「子ウシ」、「去勢ウシ」、「雄ウシ」、「若雌ウシ」、「雌ウシ」などが含まれる。本明細書で使用される場合、「ブタ」という用語は、任意の年齢のブタ起源の動物を指すのに一般的に使用される。同義的な用語には、「子ブタ」、「雌ブタ」などが含まれる。
【0033】
本明細書又は特許請求の範囲で用いる場合、「相補性」又は「相補的な」という用語によって、その配列中の相補的な塩基対のオリゴヌクレオチドの数が、増幅又は検出するべきob遺伝子多型の標的核酸配列と特異的に相互作用する(ハイブリダイズさせる)のに十分であることを意味する。当業者ならば知っているように、ハイブリダイゼーションに要する特異性及び感度には、100%である必要はないが、非常に高度の相補性が必要である。したがって、例えば、本明細書に開示されたオリゴヌクレオチドに、ヌクレオチド配列が1塩基の変化又は置換を除いて同一であるオリゴヌクレオチドは、開示されたオリゴヌクレオチドと同等に機能しうる。「相補DNA」すなわち「cDNA」遺伝子は、メッセンジャーRNA(「mRNA」)の逆転写過程によって合成された組換え遺伝子を含む。
【0034】
「ポリメラーゼ媒介環状反応」は、その反応中に、鋳型分子又は鋳型分子の一群が定期的に繰り返してコピーされて、1種又は複数の相補的な鋳型分子が生成され、それによって、鋳型分子の数が経時的に増加する生化学反応を指す。
【0035】
鋳型分子の「変性」は、鋳型を複製できるようにする、鋳型のアンフォールディング又はその構造の他の変化を指す。DNAの場合、「変性」は、二重らせんにおける2本の相補鎖が分離して、それによって、2つの相補的な一本鎖鋳型分子が生成することを意味する。「変性」は、熱によるもの、又は、塩基若しくは他の変成剤でDNAを処理することによるものを含めた、様々な方法のうちの任意の方法で実現できる。
【0036】
「検出可能な量の産物」は、標準的な実験器具を用いて検出できる、増幅された核酸の量を意味する。「検出可能なマーカー」は、視覚的方法又は他の方法を用いて検出が可能となるヌクレオチド類似体を指す。例えば、ポリメラーゼ媒介環状反応の1つ又は複数のステップで、蛍光標識されたヌクレオチドを核酸に組み込むことができ、それによって、例えば、蛍光顕微鏡又は他の蛍光検出器具用いた反応産物の検出が可能となる。
【0037】
本明細書又は特許請求の範囲で用いる場合、「検出可能な部分」という用語によって、間接的又は直接的にオリゴヌクレオチドの中に組み込まれる標識分子(同位体又は非同位体)を意味し、この標識分子は、それが中に組み込まれているオリゴヌクレオチドの検出を、例えば、増幅されたob遺伝子多型配列にそのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズした際に容易にする。したがって、「検出可能な部分」は、「標識分子」と同じ意味で使用される。オリゴヌクレオチドの合成は、当業者に知られているいくつかの方法のうちのいずれか1つによって実現できる。検出に有用であることが当業者に知られている標識分子には、化学発光分子又は蛍光分子が含まれる。本発明の方法に用いる核酸を標識するために使用するのに適した様々な蛍光分子が当技術分野で知られている。そのような取込みのためのプロトコールは、使用する蛍光分子によって異なっている場合がある。そのようなプロトコールは、それぞれの蛍光分子について当技術分野で知られている。
【0038】
「検出可能に標識された」によって、断片又はオリゴヌクレオチドが、放射性のヌクレオチド、又は、蛍光色素で置換されたヌクレオチド、又は、物理的若しくは化学的反応を誘発する他の分子種で置換されたヌクレオチドを含有していることを意味し、その際、その反応は、肉眼で、若しくは、限定されるものではないが、シンチレーションカウンター、比色計、UV分光光度計などの計器を用いて観測若しくは検出できるものである。本明細書で使用される場合、「標識」又は「タグ」は、例えば、限定されるものではないが、共有結合又はハイブリダイゼーションによって、別の分子、例えば、限定されるものではないが、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド断片に付加された際に、もう一方の分子を検出する手段を提供又は強化する分子を指す。蛍光、又は蛍光標識若しくは蛍光タグは、特定の波長の検出可能な光を、それとは異なる波長で励起された場合に発する。放射性標識又は放射性タグは、限定されるものではないが、シンチレーションカウンターなどの測定器で検出可能な放射性粒子を放出する。他のシグナル発生検出法には、化学発光、電気化学ルミネセンス、ラマン、比色分析、ハイブリダイゼーション保護アッセイ、及び質量分析が含まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「DNA増幅」は、核酸配列を酵素的に増幅することによって、特定のDNA配列のコピー数を増加させるいかなる方法も意味する。様々な方法が知られている。最も一般的に使用されている方法の1つがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、この方法を下記に続くセクションで定義し、説明する。米国特許第4683195号及び第4683202号に、MullisのPCR法が記載されている。PCRは、熱安定性DNAポリメラーゼ、プライマーとしての既知の配列、及び加熱サイクルを用い、これが、複製を行っているデオキシリボ核酸(DNA)の鎖を分離し、対象の遺伝子を指数関数的に増幅する。定量的PCR、RT−PCR、ホットスタートPCR、LAPCR、複合PCR、タッチダウンPCRなど、いかなるタイプのPCRを用いてもよい。リアルタイムPCRを用いると有利である。通常、PCR増幅過程では、指数関数的な量の特定の核酸配列を調製するための酵素連鎖反応を行う。この反応は、連鎖反応を開始させるために、ある配列を少量必要とし、そして、その配列にハイブリダイズするであろうオリゴヌクレオチドプライマーを必要とする。PCRでは、変性した核酸にプライマーがアニールし、それに続いて、誘導物質(酵素)及びヌクレオチドを用いた伸長が起こる。この結果、新規に合成された伸長産物がもたらされる。これらの新規に合成された配列は、プライマーの鋳型となるので、変性、プライマーアニーリング、及び伸長のサイクルを反復することによって、増幅された特定の配列の指数関数的蓄積がもたらされる。連鎖反応の伸長産物は、用いられた特定のプライマーの端に対応する末端を有する個別の核酸二本鎖分子であろう。
【0040】
「DNA」は、一本鎖形態にあるか、或いは二本鎖ヘリックスとして存在するデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、又はシトシン)の重合体形態を指す。この用語は、分子の一次構造及び二次構造のみに言及し、いかなる特定の三次形態にも制限しない。したがってこの用語には、とりわけ、線状DNA分子(例えば制限断片)、ウイルス、プラスミド、及び染色体中に存在する二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造について論じる場合、本明細書では、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向の配列のみを示す通常の慣例に従って配列を記載することがある。
【0041】
本明細書又は特許請求の範囲で用いる場合、「酵素的に増幅する」又は「増幅する」という用語によって、DNA増幅、すなわち、それによって核酸配列がその数に関して増幅される過程を意味する。核酸配列を酵素的に増幅する方法がいくつかある。現在最も一般的に使用されている方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。他の増幅法には、DNAリガーゼ、増幅されるべきDNA配列に相補的なDNAセグメントの2つの半分から成るプローブ、酵素QBレプリカーゼ、及び、相補性RNAの指数関数的な産生に用いるDNA鋳型を生成するのに用いられる、コピーされるべきDNAに相補的なプローブに結合したリボ核酸(RNA)配列の鋳型を利用するLCR(リガーゼ連鎖反応);鎖置換増幅(SDA);Qβレプリカーゼ増幅(QβRA);自己持続型複製(3SR);並びに、増幅されるべき核酸配列がRNAでも、DNAでも行うことができるNASBA(核酸配列ベース増幅)が含まれる。
【0042】
タンパク質又は核酸などの分子の「断片」は、アミノ酸配列又はヌクレオチド遺伝子配列のうちの任意の部分を指すものとする。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ゲノム」という用語は、特定の生物の染色体の中にあるすべての遺伝物質を指す。その大きさは、通常、塩基対の総数で示す。ゲノムの中で、「遺伝子」という用語は、特定の機能的産物(例えばタンパク質又はRNA分子)をコードする、特定の染色体上の特定の位置に局在するヌクレオチドの順序付けられた配列を指す。例えば、レプチンタンパク質は、ob(obese)遺伝子によってコードされており、食欲、基礎代謝、及び脂肪沈着の調節に関与していると考えられることが知られている。一般に、ゲノムのヌクレオチド配列によって定義される動物の遺伝的特性は「遺伝子型」として知られ、動物の肉体的形質は「表現型」として記述される。
【0044】
「ヘテロ接合」又は「ヘテロ接合多型」は、二倍体細胞又は二倍体生物における所与の遺伝子座の2つのアレルが異なっていること、すなわち、それらは、それらの配列の同じ場所にある同じヌクレオチドが、異なったヌクレオチドで置換されていることを意味する。
【0045】
「ホモ接合」又は「ホモ接合多型」は、二倍体細胞又は二倍体生物における所与の遺伝子座の2つのアレルが同一であること、すなわち、それらは、それらの配列の同じ場所でのヌクレオチド置換に同じヌクレオチドを有することを意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」又は「ハイブリダイズする」とは、ポリヌクレオチドのセグメントの断片のヌクレオチド配列と、オリゴヌクレオチドの相補的なヌクレオチド配列との間でのA−T塩基対及びC−G塩基対の形成を意味する。相補的は、断片の配列におけるA、C、G、又はT(又は、リボヌクレオチド中のU)のそれぞれの遺伝子座で、オリゴヌクレオチド配列がそれぞれT、G、C、又はAを有することを意味する。ハイブリダイズした断片/オリゴヌクレオチドを「二本鎖分子」と呼ぶ。
【0047】
サンドイッチ法などにおける、「ハイブリダイゼーション複合体」は、少なくとも標的核酸及びセンサープローブを含む核酸分子の複合体を意味する。それにはアンカープローブも含まれることがある。
【0048】
「固体支持体上に固定された」は、固定された断片、プライマー、又はオリゴヌクレオチドを含有する系がその位置から取り除かれることなく、それを洗浄又は他の物理的若しくは化学的操作に供することができるように、断片、プライマー、又はオリゴヌクレオチドが特定の位置で物質に結合していることを意味する。多数の固体支持体、及びヌクレオチドを含有する分子をそれらに固定する手段が当技術分野で知られており、本発明の方法では、これらの支持体及び手段のいずれを用いてもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合、「体重増加の増大」は、体重増加が所与の集団の平均を超えて生物学的に有意に増大していることを意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「遺伝子座」という用語は、染色体上の遺伝子の場所を指す。各親からは、各遺伝子座から単一のアレルが遺伝される。各動物にける特定のアレルの組合せを「遺伝子型」と呼ぶ。両方のアレルが同一である場合、その個体は、その対のアレルによって制御される形質に関してホモ接合であると言われ、それらのアレルが異なる場合には、その個体はその形質に関してヘテロ接合であると言われる。
【0051】
「融解温度」は、ハイブリダイズした二本鎖分子が、脱ハイブリダイズして、それらの一本鎖状態に戻る温度を意味する。同様に、ハイブリダイゼーションは、結果として生じる二本鎖分子の融解温度を超えた温度では、2つのオリゴヌクレオチド間で、又は、この場合、オリゴヌクレオチドと断片との間で最初から起こらないであろう。現在のところ、本発明のオリゴヌクレオチド−断片二本鎖分子の融点温度の相違は、容易に検出可能となるように、約1℃から約10℃までが有利である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えばcDNA又はゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、ヌクレオチド類似体、誘導体、断片、及びそれの相同体を用いて生成されたDNA又はRNAの類似体を含むことが意図されている。核酸分子は、一本鎖でも、二本鎖でもよいが、二本鎖DNAであると有利である。「単離された」核酸分子は、その核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子である。「ヌクレオシド」は、糖が連結した塩基を指す。塩基はアデニン(A)でも、グアニン(G)(又はその代用物イノシン(I))でも、シトシン(C)でも、チミン(T)(又はその代用物ウラシル(U))でもよい。糖は、リボース(RNA中の天然ヌクレオチドの糖)でも、2−デオキシリボース(DNA中の天然ヌクレオチドの糖)でもよい。「ヌクレオチド」は、単一のリン酸基に連結されたヌクレオシドを指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、一連の連結したヌクレオチド残基を指し、その際、オリゴヌクレオチドは、PCR反応で使用するのに十分な数のヌクレオチド塩基を有する。短鎖オリゴヌクレオチド配列は、ゲノム配列又はcDNA配列に基づいたものでも、それらから設計されたものでもよく、特定の細胞又は組織の中にある、同一、類似、又は、相補的なDNA又はRNAを増幅するか、その存在を確認するか、又は明らかにするのに用いられる。オリゴヌクレオチドは、化学的に合成してもよく、また、プライマー又はプローブとして用いてもよい。オリゴヌクレオチドは、プローブ及びプライマーを含めた、標的核酸の検出又は同定を容易にするのに使用される長さが3塩基を超えるいかなるヌクレオチドも意味する。
【0054】
「ポリメラーゼ連鎖反応」すなわち「PCR」は、温度サイクル式のポリメラーゼ媒介DNA増幅反応を指す。PCRは、通常、鋳型分子、鋳型分子の各鎖に相補的なオリゴヌクレオチドプライマー、熱安定性DNAポリメラーゼ、及びデオキシリボヌクレオチドを含有し、元の核酸の増幅を行うために複数回反復される3つの異なる過程を用いる。これら3つの過程(変性、ハイブリダイゼーション、及びプライマー伸長)は、しばしば異なった温度、及び異なった時間ステップで行われる。しかし、多くの実施形態で、ハイブリダイゼーション過程とプライマー伸長過程とを同時に行うことができる。分析されるヌクレオチド試料は、米国特許第6569672号、第6569627号、第6562298号、第6556940号、第6569672号、第6569627号、第6562298号、第6556940号、第6489112号、第6482615号、第6472156号、第6413766号、第6387621号、第6300124号、第6270723号、第6245514号、第6232079号、第6228634号、第6218193号、第6210882号、第6197520号、第6174670号、第6132996号、第6126899号、第6124138号、第6074868号、第6036923号、第5985651号、第5958763号、第5942432号、第5935522号、第5897842号、第5882918号、第5840573号、第5795784号、第5795547号、第5785926号、第5783439号、第5736106号、第5720923号、第5720406号、第5675700号、第5616301号、第5576218号、及び第5455175号に記載のラピッドサイクリング技法を用いて得られるPCR増幅産物でもよく、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する。他の増幅方法には、NASBR、SDA、3SR、TSA、及びローリングサークル複製が含まれるが、これらに限定されない。所与の修飾ヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを産生するための任意の方法で、1つ又はいくつかのポリメラーゼ又は増幅法が使用できることが理解されている。最適重合条件の選択は、適用に依存する。
【0055】
「ポリメラーゼ」は、重合体鎖へのモノマー単位の逐次付加を触媒するか、或いは2つ以上のモノマー単位を連結して、重合体鎖を開始する酵素である。本発明の有利な実施形態では、「ポリメラーゼ」は、特定配列の鋳型分子によってその同一性が決定され、且つ特定配列の鋳型分子に相補的なモノマー単位を付加することによって機能するであろう。例えば、DNA pol1及びTaqポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼは、鋳型依存的にデオキシリボヌクレオチドをポリヌクレオチド鎖の3’末端に付加し、それによって、鋳型分子に相補的な核酸を合成する。ポリメラーゼは、プライマーを一度又は反復的に伸長するのに、或いは、2つのプライマーを用いて2本の相補鎖に繰り返しプライミングすることによってポリヌクレオチドを増幅するのに使用できる。
【0056】
「ポリヌクレオチド」は、あるヌクレオシドの3’水酸基と、第2のヌクレオシドの5’水酸基との間のホスホジエステル結合で連結されたヌクレオチドの線状鎖を指し、第2のヌクレオシドは、次に、3’水酸基を介して第3のヌクレオシドの5’水酸基に連結され、以下同様にして、ホスホジエステルバックボーンによって連結されたヌクレオシドから成る重合体を形成する。「修飾ポリヌクレオチド」は、1つ又は複数の天然のヌクレオチドが部分的又は実質的に修飾ヌクレオチドで置換されているポリヌクレオチドを指す。
【0057】
「プライマー」は、その配列の少なくとも一部が、増幅又は複製されるべき鋳型DNAのセグメントに相補的なオリゴヌクレオチドである。通常、プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う際に用いられる。プライマーは、鋳型DNAとハイブリダイズ(すなわち、それに「アニール」)し、ポリメラーゼ酵素による複製/増幅過程のための開始点として用いられる。「相補的」によって、プライマーのヌクレオチド配列が、そのプライマーが鋳型と安定した水素結合複合体を形成できるような配列であること、すなわち、連続した少なくとも10塩基対の長さにわたって塩基対が形成することによって、そのプライマーが鋳型にハイブリダイズする、すなわちアニールすることができるような配列であることを意味する。
【0058】
本発明において、プライマーは、特定の標的DNA配列の異なった鎖に「実質的に」相補的であるように選択される。これは、それらのプライマーが、それらのそれぞれの鎖にハイブリダイズするのに十分に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プライマー配列は、鋳型の正確な配列を反映する必要はない。例えば、プライマーの5’末端に非相補的なヌクレオチド断片が連結され、プライマー配列の残りがその鎖に相補的であってもよい。或いは、プライマー配列が、それとハイブリダイズする鎖の配列と十分な相補性を有し、それによって、伸長産物を合成するための鋳型を形成する場合に、複数の非相補的な塩基、又はさらに長い配列をプライマー中に点在させることもできる。
【0059】
「プローブ」は、同一、類似、又は相補的核酸配列をハイブリダイゼーションによって検出する際に使用される長さが不定のオリゴヌクレオチド核酸配列を指す。検出プローブとして使用されるオリゴヌクレオチド配列を、検出可能な部分で標識してもよい。様々な標識部分が当技術分野で知られている。前記部分は、例えば、放射性化合物、検出可能な酵素(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP))、又は、熱量、蛍光、化学発光、若しくは電気化学発光シグナルなどの検出可能なシグナルを生成できる任意の他の部分でよい。検出可能な部分は、既知の方法を用いて検出できる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、特定の順序にある1つ又は複数のアミノ酸の鎖で構成された大きな分子を指す。この順序は、このタンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチドの塩基配列によって決定される。タンパク質は、身体の細胞、組織、及び臓器の、構造、機能、及び調節に必要である。各タンパク質は、特有の機能を有する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「品質形質」、「形質」、又は「身体特性」という用語は、遺伝学の結果生じた、動物の有利な特性を指す。品質形質には、動物の、エネルギー代謝する遺伝能力、乳を産生する遺伝能力、筋肉内脂肪を増やす遺伝能力、産卵する遺伝能力、子孫を産む遺伝能力、肉又は乳の中に特定のタンパク質を産生する遺伝能力、又は乳中にタンパク質を保有する遺伝能力が含まれるが、これらに限定されない。身体特性には、霜降りの肉であるか、或いは赤身の肉であるかが含まれる。これらの用語は、同義的に使用される。
【0062】
「制限酵素」は、DNA上の認識部位に反応してDNAを切断するエンドヌクレアーゼ(ポリヌクレオチド鎖のホスホジエステル結合を切断する酵素)を指す。認識部位(制限部位)は、通常、長さが4〜8ヌクレオチドの特定の配列のヌクレオチドから成る。
【0063】
「一塩基多型」すなわち「SNP」は、単一ヌクレオチド置換によって別のポリヌクレオチドから相違しているポリヌクレオチドを指す。例えば、限定されるものではないが、ポリヌクレオチドの全配列中で1残基のAを1残基のC、G、又はTに置換することによって、SNPが構成される。当然ながら、特定のポリヌクレオチドの中に複数のSNPを有することも可能である。例えば、ポリヌクレオチドの中のある遺伝子座では、CをTで置換することができ、別の遺伝子座では、GをAで置換することができ、以下同様である。SNPについて言及する場合、ほとんどの場合で、ポリヌクレオチドがDNAである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「鋳型」は、標的ポリヌクレオチド鎖を指し、例えば、限定されるものではないが、天然存在の鎖の相補鎖を重合させるために、成長中の鎖の中に、ポリメラーゼが次にどのヌクレオチドを組み込むべきか認識する手段として用いる天然存在の無修飾のDNA鎖を指す。そのようなDNA鎖は一本鎖であることも、二本鎖DNA鋳型の一部であることもある。重合のサイクルを繰り返す必要のある本発明の適用、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)では、修飾ヌクレオチドの取込みによって鋳型鎖自体が修飾される場合もあるが、それでもなお、ポリメラーゼがさらにポリヌクレオチドを合成するための鋳型として働く。
【0065】
「温度サイクル反応」は、反応の温度を変えることによって少なくとも2ステップが実行される多段階反応である。
【0066】
「耐熱性ポリメラーゼ」は、100℃に接近する温度など、非常に高い温度に対して耐性を有するDNA又はRNAポリメラーゼ酵素を指す。耐熱性ポリメラーゼは、しばしば、サームスアクアチクス(Thermus aquaticus)など、極限温度下に生息する生物に由来する。耐熱性ポリメラーゼの例には、Taq、Tth、Pfu、Vent(登録商標)、Deep Vent(登録商標)、UlTma(登録商標)、並びにこれらの変種及び誘導体が含まれる。
【0067】
「分散」は、関連したポリヌクレオチドの間にあるヌクレオチド配列の相違である。この相違は、関連したポリヌクレオチドの配列と比較したあるポリヌクレオチドの配列からの1つ又は複数のヌクレオチドの欠失でも、1つ又は複数のヌクレオチドの付加でも、或いはあるヌクレオチドから別のヌクレオチドへの置換でもよい。「変異」、「多型」、及び「分散」という用語は、本明細書で同義的に使用される。本明細書で使用される場合、単数形の「分散」という用語は、複数の分散、すなわち、同一のポリヌクレオチドにおける2つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、及び/又は置換も含むと解釈されることになっている。「点突然変異」は、あるヌクレオチドから別のヌクレオチドへの単一の置換を指す。
【0068】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、分子生物学分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法及び物質に類似又は同等の方法及び物質を本発明の実施又は試行に用いることもできるが、適切な方法及び物質は本明細書に記載するものである。
【0069】
さらに別の定義は、以下の文脈において提供する。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、分子生物学分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法及び物質に類似又は同等の方法及び物質を本発明の実施又は試行に用いることもできるが、適切な方法及び物質は本明細書に記載するものである。
【0070】
ii.本発明の一般的態様
本発明は、ob(obese)遺伝子、すなわちレプチンタンパク質をコードする遺伝子の中のSNPの存在に基づいて動物を同定及び選択する方法を提供する。レプチンは、食欲、基礎代謝、脂肪沈着、及び乳生産の調節に関与する16kDaの脂肪細胞特異的なポリペプチドである。ob遺伝子は、いくつかの異なった動物で特定の染色体上にマッピングされており、それによって、いくつかの異なった種で、遺伝子の配列決定が可能となった。ob DNA及びレプチンポリペプチドが種相互で有意に保存されていることが見出された。本発明のものと同一又は類似の表現型効果を有するSNPが多くの異なった動物種で存在する可能性がある。本発明の方法は、対象の種に由来する個々の動物が本明細書に記載のSNPを保持しているかどうか判定するのに用いることができる。好ましい一実施形態では、ウシのob遺伝子を、本発明のSNPの存在に関してスクリーニングする。
【0071】
一態様において、本発明は、レプチンプロモーター中の一塩基多型(SNP)の同定と、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値、及び屠体構成、並びに乳生産量に関連した、これらのSNPの特定のアレルを保持する動物を同定する方法とに関する。さらに別の態様では、本発明は、レプチン遺伝子のエキソン2における、以前に報告されているSNPの循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体構成、並びに乳生産量との連関に関する。本発明は、さらに、ob遺伝子の特定の核酸配列を増幅するプライマーとして使用できるオリゴヌクレオチドと、ob遺伝子の核酸配列を検出する際のプローブとして使用できるオリゴヌクレオチドとを提供する。
【0072】
図1は、「野生型」のウシob遺伝子の5’フランキングプロモーター領域及びエキソン1のヌクレオチド配列を図示する。この「野生型」配列は、GenBankアクセッション番号AB070368を有し、本明細書では配列番号1と呼ばれる。
【0073】
本発明において、驚くべきことに、ob遺伝子のプロモーター領域に位置する、以前には知られていなかった3つのSNP(すなわち、UASMS1、UASMS2、及びUASMS3)と、この遺伝子のエキソン2における、以前から知られていた1つのSNPとが、動物、特にウシ家畜における経済的に貴重な特定の形質と関連していることが示された。
【0074】
UASMS1と呼ばれるSNPは、ウシレプチン遺伝子プロモーターの位置207におけるシトシン(C)からチミン(T)への置換(C/T)を構成する。UASMS2と呼ばれるSNPは、ウシレプチン遺伝子プロモーターの位置528におけるシトシン(C)からチミン(T)への置換(C/T置換)を構成する。UASMS3と呼ばれるSNPは、ウシレプチン遺伝子プロモーターの位置1759におけるシトシン(C)からグアニン(G)への置換(C/G置換)を構成する。レプチンプロモーターのSNPであるUASMS1、UASMS2、及びUASMS3を同定するのに本明細書で使用するヌクレオチド番号つけシステムは、「野生型」ウシレプチンプロモーター配列である配列番号1に使用されたものである。
【0075】
UASMS1、UASMS2、及びUASMS3多型は、レプチン遺伝子のコード領域ではなく、この遺伝子の5’調節配列に位置しており、したがって、レプチン遺伝子産物のいかなるアミノ酸置換も起こさない。
【0076】
EXON2−FBと呼ばれる、本明細書に記載のSNPは、以前にBuchananら(2002)によって同定されたものであり、「野生型」ウシレプチン遺伝子(GenBankアクセッション番号AY138588、及び配列番号5)のコード領域のエキソン2の位置1759におけるシトシン(C)からチミン(T)へのミスセンス突然変異を構成する。EXON2−FB SNPを同定するのに本明細書で使用するヌクレオチド番号つけシステムは、「野生型」ウシレプチンエキソン2配列である配列番号5に使用されたものである。
【0077】
iii.組織及びDNA試料
本発明の方法に従って所与の動物の遺伝子型を決定するには、その動物からゲノムDNA試料を入手する必要がある。通常、そのゲノムDNA試料は、その動物から採取された組織又は細胞の試料から入手されるであろう。
【0078】
組織試料又は細胞試料は、動物の寿命内ならいつでも、ただし屠体アイデンティティーが失われる前に動物から採取することができる。この組織試料は、髪(毛根を含む)、皮、骨、頬側スワブ検体、血液、唾液、乳、精液、胚、筋肉、又は任意の内臓を含みうる。本発明の方法では、組織試料の供給源は重要でなく、したがって試験核酸試料の供給源も重要でない。例えば、試験核酸は、その動物の体液中の細胞から、或いはその動物の体組織を構成する細胞から得ることができる。そこから細胞が得られる特定の体液も、本発明には重要でない。例えば、この体液は、血液、腹水、胸水、及び脊髄液から成る群から選択されるものでよい。さらに、そこから細胞が得られる特定の体組織も、本発明には重要でない。例えば、この体組織は、皮膚、子宮内膜、子宮組織、及び頚部組織から成る群から選択されたものでよい。正常組織及び腫よう組織の両方が使用できる。
【0079】
通常、組織試料は、その試料が採取された個々の動物にその試料を関係づける識別番号又は他の表示で印が付けられる。本発明の方法を通して試料のアイデンティティーを一定のまま残し、それによって、抽出及び分析の間に試料の整合性及び連続性を確実にするのが有利である。別法として、データ、またいかなる他の関連データも、そのデータが得られた動物に再び関連付けできることを確実にする規則的な方法でしるしを変えてもよい。
【0080】
必要な試料の量/サイズは、当業者に知られている。理想的には、回収される組織試料のサイズ/容積は、その試料タイプ及びその動物種の中で可能な限り一貫しているべきである。例えば、ウシの場合、試料のサイズ/方法の非限定的な例には、脂肪質でない肉:0.0002gから0.0010g;皮:0.0004gから0.0010g;毛根:5本より多く、且つ20本未満;頬側スワブ検体:1本のCytosoft(登録商標)細胞診断ブラシを用いて、ひかえめな圧力で外唇と歯ぐきとの間の領域を15から20秒間摩擦;骨:0.0020gから0.0040g;及び、血液:30から70μLが含まれる。
【0081】
通常、組織試料は、その動物、例えばその動物の耳標に対応するコードを有する番号つけシステムを用いて標識された容器内に置かれる。したがって、特定の動物の遺伝子型はいつでも容易に確認できる。
【0082】
本発明の一実施形態では、試料採取装置及び/又は容器が、農場経営者、屠殺場、又は小売業者に供給されることがある。試料採取装置は、個々の動物からの再現可能で一貫した試料採取を、同時にいかなる組織の交差汚染も回避しながら行うものが有利である。それによって、個々の動物から得られた試料組織の大きさ及び容積が一貫したものとなろう。
【0083】
本発明によれば、ゲノムDNAの試料を、対象の家畜動物の組織試料から取得する。いかなる供給源の細胞若しくは組織を使用する場合も、分析用に十分な量のDNAを提供するのに十分な量の細胞を得なければならない。当業者ならば、この量を既に知っているか、或いは容易に決定できるであろう。
【0084】
DNAは、当業者に既知の技法で組織/細胞から単離される(例えば、米国特許第6548256号及び第5989431号、Hirota et al., Jinrui Idengaku Zasshi. 1989 Sep;34(3):217-23、並びに、John et al., Nucleic Acids Res. 1991 Jan 25;19(2):408を参照;これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)。例えば、高分子量DNAは、細胞又は組織からプロテナーゼK抽出及びエタノール沈殿を用いて精製できる。DNAは、当技術分野で知られているいかなる他の適切な方法を用いて動物標本から抽出してもよい。
【0085】
iv.対象の動物の遺伝子型の決定
本発明の目的は、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体構成、並びに乳生産量に関連した、本発明のSNPにおける特定のアレルを保持する動物を同定するために、所与の対象の動物の遺伝子型を決定することである。
【0086】
当技術分野には、動物の遺伝子型を決定するため、そして、所与のDNA試料が特定のSNPを含有するかどうかを同定するための既知の方法が多数ある。本発明では、ob遺伝子型を決定するのに、いかなる遺伝子型決定法を用いることもできる。限定されるものではないが、そのような方法には、アンプリマーシーケンシング、DNA配列決定、蛍光分光法、蛍光共鳴エネルギー移動(すなわち「FRET」)ベースのハイブリダイゼーション分析、高スループットスクリーニング、質量分光分析法、核酸ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RFLP分析、及びサイズクロマトグラフィー(例えば毛細管又はゲルクロマトグラフィー)が含まれ、これらはすべて当業者に周知の方法である。詳細には、米国特許第6514700号、第6503710号、第6468742号、第6448407号、第6410231号、第6383756号、第6358679号、第6322980号、第6316230号、及び第6287766号に記載されており、また、Chen and Sullivan、Pharmacogenomics J 2003;3(2):77-96に、ヌクレオチド多型、特に一塩基多型を決定する方法が概説されており、これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する。
【0087】
v.配列決定による遺伝子型の決定
一実施形態では、多型遺伝子座にまたがる、ゲノムDNA試料の領域を配列決定することによって、本発明のSNPの存在又は不在を決定する。ゲノムDNAの配列を決定する方法は当技術分野で多数知られており、そのようないかなる方法も用いることができる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d ed. (1989)を参照のこと。例えば、下記の通り、ポリメラーゼ連鎖反応又は他のポリメラーゼ媒介環状増幅反応を用いて、対象のSNPの位置にまたがるDNA断片を増幅することができる。増幅された領域のDNAは、その後、当技術分野で知られている任意の方法を用いて配列決定することができる。この核酸配列決定は、自動化法(Meldrum, Genome Res. 2000 Sep;10(9):1288-303に概説されており、この開示を参照により全体として本明細書に援用する)、例えば、Beckman社製CEQ 8000 Genetic Analysis System(Beckman Coulter Instruments社)を用いた自動化法が有利である。限定されるものではないが、核酸を配列決定する方法には、自動化蛍光DNAシーケンシング(例えば、Watts and MacBeath, Methods Mol Biol. 2001;167:153-70、及び、MacBeath et al., Methods Mol Biol. 2001;167:119-52を参照)、毛細管電気泳動(例えば、Bosserhoff et al., Comb Chem High Throughput Screen. 2000 Dec;3(6):455-66を参照)、DNAシーケンシングチップス(例えば、Jain, Pharmacogenomics. 2000 Aug;1(3):289-307を参照)、質量分光分析法(例えば、Yates, Trends Genet. 2000 Jan;16(1):5-8を参照)、Pyrosequencing(商標)法(例えば、Ronaghi, Genome Res. 2001 Jan;11(1):3-11を参照)、及び超薄膜層ゲル電気泳動(例えば、Guttman and Ronai, Electrophoresis. 2000 Dec;21(18):3952-64を参照)が含まれ、これによってこれらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する。配列決定は、任意の営利会社によって行うこともできる。そのような会社の例には、the University of Georgia Molecular Genetics Instrumentation Facility (ジョージア州Athens)、又は、SeqWright DNA Technologies Services社(テキサス州Houston)が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
vi.ポリメラーゼ媒介環状増幅を用いた遺伝子型決定
本発明の特定の実施形態では、所与のSNPの検出を、ポリメラーゼ媒介環状増幅を用いて行うことができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany, F., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88:189-193 (1991))、鎖置換アッセイ(SDA)、又はオリゴヌクレオチド結合アッセイ(「OLA」)(Landegren, U. et al., Science 241:1077-1080 (1988))など、当技術分野で既知のDNA増幅法のいずれか1つを用いてよい。Nickerson、D.A.らは、PCRの特性とOLAの特性とを併せた核酸検出アッセイを記述した(Nickerson, D. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 87:8923-8927 (1990))。転写ベースの増幅システム(Malek, L.T. et al., 米国特許第5130238号;Davey、C. et al., 欧州特許出願第329822号;Schuster et al., 米国特許第5169766号;Miller, H. I. et al., PCT出願第89/06700号;Kwoh, D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 86:1173 (1989);Gingeras、T.R. et al., PCT出願第88/10315号)、又は等温増幅法(Walker, G. T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 89:392-396 (1992))などの他の既知の核酸増幅操作法を用いてもよい。
【0089】
本発明のSNPを含有するDNA断片を増幅する最も有利な方法は、二本鎖形態で多型部位を限定又は挟み込む近位配列にハイブリダイズできるプライマー対を用いたPCRを利用したものである(例えば、米国特許第4965188号、第5066584号、第5338671号、第5348853号、第 5364790号、第5374553号、第5403707号、第5405774号、第5418149号、第5451512号、第5470724号、第5487993号、第5523225号、第5527510号、第5567583号、第5567809号、第5587287号、第5597910号、第5602011号、第5622820号、第5658764号、第5674679号、第5674738号、第5681741号、第5702901号、第5710381号、第5733751号、第5741640号、第5741676号、第5753467号、第5756285号、第5776686号、第5811295号、第5817797号、第5827657号、第5869249号、第5935522号、第6001645号、第6015534号、第6015666号、第6033854号、第6043028号、第6077664号、第6090553号、第6168918号、第6174668号、第6174670号、第6200747号、第6225093号、第6232079号、第6261431号、第6287769号、第6306593号、第6440668号、第6468743号、第6485909号、第6511805号、第6544782号、第6566067号、第6569627号、第6613560号、第6613560号、及び第6632645号を参照のこと;これらの開示を参照によりその全体において本明細書に援用する)。
【0090】
本発明に従ってポリメラーゼ媒介環状増幅反応を行うには、プライマーを標的DNAの反対の鎖にハイブリダイズ又はアニールさせ、その後、温度を上昇させ、その結果、熱安定性DNAポリメラーゼによるプライマーの伸長が可能となり、それによって、2つのプライマーの間の領域にまたがる特定のDNAセグメントが複製される。その後、反応を温度循環させ、それによって、2つのプライマーの間にある配列を示すDNAの量を各サイクルで2倍にし、その結果、ob遺伝子DNA配列が存在する場合には、その特異的増幅が起こる。
【0091】
本発明では、様々なポリメラーゼのいずれを用いることもできる。温度サイクル反応用には、そのポリメラーゼは、Taq、KlenTaq(登録商標)、ストッフェル断片、Deep Vent(登録商標)、Tth、Pfu、Vent(登録商標)、及びUlTma(登録商標)などの耐熱性ポリメラーゼであり、これらはそれぞれ販売会社から容易に購入できる。非温度サイクル反応用、及び特定の温度サイクル反応用には、多くの場合、ポリメラーゼは、DNA pol1、クレノウ断片、T7 DNAポリメラーゼ、及びT4 DNAポリメラーゼなど、当技術分野で一般的に使用されており、且つ市販されている多くのポリメラーゼのうちの1つであろう。そのようなポリメラーゼを使用するための手びきは、製品書類及び分子生物学の一般的手びきに容易に見出すことができる。
【0092】
通常、標的DNA配列へのプライマーのアニーリングは、約37〜55℃で約2分間行われ、ポリメラーゼ酵素(Taqポリメラーゼなどの)によるヌクレオチド三リン酸存在下でのプライマー配列の伸長は、約70〜75℃で約3分間行われ、そして、伸長したプライマーを遊離させるための変性ステップは、約90〜95℃で約1分間行われる。しかし、これらのパラメータは変更可能であり、当業者ならば、望ましい結果を実現するために、どのように反応の温度及び時間パラメータを調整するか容易に知ることであろう。例えば、サイクルは10、8、6、5、4.5、4、2、1、0.5分、又はそれ以下に短縮できる。
【0093】
また、「2温度」技法を用いることもでき、その場合、アニーリングステップ及び伸長ステップを両方とも同じ温度、通常約60℃から65℃の間で行うことができ、それによって、それぞれの増幅サイクルの長さが短縮され、アッセイ時間がさらに短くなる。
【0094】
通常は、本明細書に記載の反応を、検出可能な量の産物が生じるまで反復する。より多くの量、例えば、200ng、500ng、1mg、又はそれより多い量も、当然、検出できるが、しばしば、そのような検出可能な量の産物は、約10ngと約100ngとの間である。濃度に換算すれば、検出可能な産物の量は、約0.01pmol、0.1pmol、1pmol、10pmol、又はそれより高い濃度である。したがって、実施される反応のサイクル数を変更することができ、実施されるサイクルの数が多いほど、より多くの増幅産物が生成される。特定の実施形態では、反応が2、5、10、15、20、30、40、50、又はそれより多くのサイクルを含む。
【0095】
例えば、PCR反応は、約0.01〜1.0ngの鋳型増幅配列、それぞれ約10〜100pmolの汎用プライマー、約1.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Promega社製)、約0.2mM dDATP、約0.2mM dCTP、約0.2mM dGTP、約0.2mM dTTP、約15mM MgCl、約10mM Tris−HCl(pH9.0)、約50mM KCl、約1μg/mlゼラチン、及び約10μl/ml Triton X−100(Saiki, 1988)を含有する約25〜50μlの試料を用いて実施することができる。
【0096】
当業者は、ポリメラーゼ媒介環状反応での使用に利用可能なヌクレオチドの種類を知っている。通常、それらのヌクレオチドは、少なくとも部分的にデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)から成るであろう。dNTPは容易に購入できる。dNTPを最適に使用するためのパラメータも、当業者に知られており、さらに、文献にも記載されている。加えて、多くのヌクレオチド誘導体が、当業者に知られており、本発明の反応に使用できる。そのような誘導体には、蛍光標識されたヌクレオチドが含まれ、これは、以下に記述する通り、そのような標識されたヌクレオチドを含む産物の検出を可能にする。また、鎖終止ヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド、及びヌクレアーゼ抵抗性のホウ素化ヌクレオチドなど、そのようなヌクレオチドを含む核酸の配列決定を可能にするヌクレオチドも、このグループに含まれる。これらのDNA配列決定法で最も典型的に使用される試薬を含有する市販キットが販売されており、広く使用されている。他のヌクレオチド類似体には、ブロモ基、ヨード基、又は他の修飾基を有するヌクレオチドが含まれ、これらは、結果として得られる核酸の、免疫原性、複製可能性、融解温度、及び結合特性などを含めた多数の特性に影響を与える。加えて、特定のヌクレオチドは、スルフヒドリル基、アミノ基、N−ヒドロキシサクシニミジル基など、それらを含む核酸をさらに修飾するのを可能にする反応性の側鎖を含む。
【0097】
本発明は、PCR反応などのポリメラーゼ媒介環状増幅反応でob遺伝子の特定の核酸配列を増幅するためのプライマーとして使用できるオリゴヌクレオチドを提供する。これらのプライマーは、レプチンプロモーターにおけるUASMS1、UASMS2、又はUASMS3 SNPと、レプチン遺伝子のエキソン2におけるexon2−FB SNPとを検出するのに有用である。特定の実施形態では、これらのプライマーがオリゴヌクレオチド断片から成る。そのような断片は、核酸試料への特異的なアニーリング又はハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な長さのものであるべきである。これらの配列の長さは、通常、約8〜約44ヌクレオチドであろうが、それより長くてもよい。特定の実施形態では、さらに長い配列、例えば、約14〜約50ヌクレオチドのものが有利である。
【0098】
UASMS1、UASMS2、又はUASMS3 SNPを含むDNAの断片を増幅することが望ましい実施形態では、配列番号1(レプチンプロモーター配列)における約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24ヌクレオチドのひと続きの連続した領域を有するプライマーが企図されている。EXON2−FB SNPを含むDNAの断片を増幅することが望ましい実施形態では、配列番号5(レプチン遺伝子のエキソン2)における約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24ヌクレオチドのひと続きの連続した領域を有するプライマーが企図されている。
【0099】
様々な異なった長さのプライマーが使用でき、また、プライマーを作製するのに使用される、レプチン遺伝子中の連続したひと続きのヌクレオチド領域の正確な位置は様々であり得るが、順方向プライマー及び逆方向プライマーがアニールする配列が、増幅されるSNPで置換されている特定のヌクレオチド位置のいずれかの側に位置していることが重要である。例えば、UASMS1多型を増幅するためのプライマーを設計する場合、一方のプライマーは、レプチンプロモーター(配列番号1又は2)のヌクレオチド位置207(と重ならない)の上流に位置しなければならず、また、もう一方のプライマーは、レプチンプロモーター(配列番号1又は2)のヌクレオチド位置207(と重ならない)の下流に位置しなければならない。UASMS2多型を増幅するためのプライマーを設計する場合、一方のプライマーは、レプチンプロモーター(配列番号1又は3)のヌクレオチド位置528(と重ならない)の上流に位置しなければならず、また、もう一方のプライマーは、レプチンプロモーター(配列番号1又は3)のヌクレオチド位置528(と重ならない)の下流に位置しなければならない。同様に、UASMS3多型を増幅するためのプライマーを設計する場合、一方のプライマーは、レプチンプロモーター(配列番号1又は4)のヌクレオチド位置1759(と重ならない)の上流に位置しなければならず、また、もう一方のプライマーは、ヌクレオチド位置1759(と重ならない)の下流に位置しなければならない。最後に、EXON2−FB多型を増幅するためのプライマーを設計する場合、一方のプライマーは、エキソン2(配列番号5)のヌクレオチド位置304(と重ならない)の上流に位置しなければならず、また、もう一方のプライマーは、エキソン2のヌクレオチド位置304(と重ならない)の下流に位置しなければならない。
【0100】
好ましい実施形態では、UASMS1多型の位置にまたがり、且つこれを含有するDNA断片を、配列5'-GGCACAATCCTGTGTATTGGTAAGA-3'(配列番号7)を有する順方向プライマーと、配列5'-GTCCATGTACCATTGCCCAATTT-3'(配列番号8)を有する逆方向プライマーとを用いて核酸試料から増幅する。
【0101】
同様に、好ましい一実施形態では、UASMS2多型の位置にまたがり、且つこれを含有するDNA断片を、配列5'-AGGTGCCCAGGGACTCA-3'(配列番号11)を有する順方向プライマーと、配列5'-CAACAAAGGCCGTGTGACA-3' (配列番号12)を有する逆方向プライマーとを用いて核酸試料から増幅する。
【0102】
UASMS3多型の位置にまたがるDNA断片を増幅するには、配列5'-ATGTATATTTGGTGTGAGAGTGTGTGT-3'(配列番号15)を有する順方向プライマーと、配列5'-AGCTGGAAAGAACGGATTATAAAATGGT-3' (配列番号16)を有する逆方向プライマーとを用いるのが好ましい。
【0103】
同様に、EXON2−FB多型の位置にまたがるDNA断片を増幅するには、配列5'-GGCTTTGGCCCTATCTGTCTTAC-3'(配列番号19)を有する順方向プライマーと、配列5'-CTTGATGAGGGTTTTGGTGTCA-3'(配列番号20)を有する逆方向プライマーと用いるのが好ましい。
【0104】
上述の方法は、SNPが位置するヌクレオチド位置を含むDNA断片を増幅するために、それぞれがSNPのいずれかの側に位置し、且つこれと重なっていないプライマーを利用する。そのような方法は、多型部位における遺伝子型を決定するために、その断片を配列決定するステップ、又はアレル特異的なプローブをその断片にハイブリダイズさせるステップなど、追加のステップを必要とする。しかし、本発明の一部の実施形態では、例えば「アレル特異的PCR」のように、増幅法がそれ自体、多型部位の遺伝子型を決定する方法である。アレル特異的PCRでは、増幅自体が対象の多型を含有する投入鋳型核酸に依存するようにプライマー対が選択される。そのような実施形態では、少なくとも1つのプライマーが、そのSNPの実際のヌクレオチド位置にまたがって、それによって、アレル特異的なオリゴヌクレオチドプライマーとなるようにプライマー対が選択される。通常、それらのプライマーは、単一のアレル特異的なヌクレオチドを3’末端に含有し、対象の遺伝子に相補的な塩基がそれに先行する。PCR反応条件は、DNAポリメラーゼによる増幅が、一致している3’プライマー末端からは進行するが、ミスマッチが存在する場合には進行しないように調整される。アレル特異的PCRは、それぞれが各アレルに特異的な2つの異なったアレル特異的プライマーの存在下で行うこともでき、その場合、各プライマーが異なった色素で標識され、例えば、一方のアレル特異的プライマーは緑色の色素(例えばフルオレセイン)で標識され、そして、もう一方のアレル特異的プライマーは赤色の色素(例えばスルホロダミン)で標識されることがある。増幅の後、緑色及び赤色の蛍光について産物を分析する。目標では、一方のホモ遺伝子型は緑色蛍光のみを生じ、もう一方のホモ接合遺伝子型は赤色蛍光のみを与え、そして、ヘテロ接合遺伝子型は赤色蛍光及び緑色蛍光の混合したものを与える。
【0105】
したがって、UASMS1多型を検出するためのアレル特異的PCRを行うには、1つのプライマーが配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド位置207と重なりあい、ヌクレオチド位置207がそのプライマーの3’末端となるようにしなければならない。同様に、UASMS2多型を検出するためのアレル特異的PCRを行うには、1つのプライマーが配列番号1又は配列番号3のヌクレオチド位置528と重なりあい、ヌクレオチド位置528がそのプライマーの3’末端となるようにしなければならない。UASMS3多型を検出するためのアレル特異的PCRを行うには、1つのプライマーが配列番号1又は配列番号4のヌクレオチド位置1759と重なりあい、ヌクレオチド位置1759がそのプライマーの3’末端となるようにしなければならない。最後に、EXON2−FB多型を検出するためのアレル特異的プライマーを設計する場合には、1つのプライマーが配列番号5又は配列番号6のヌクレオチド位置304と重なりあい、ヌクレオチド位置304がそのプライマーの3’末端となるようにしなければならない。
【0106】
アレル特異的PCRを行う方法は当技術分野で周知であり、そのような方法のいかなるものを用いてもよい。例えば、適切な方法は、Myakishev et al., Genome Research, vol 1, p163-169 (2001)、Alexander et al., Mol Biotechnol. vol 28(3), p171-174 (2004)、及び、Ruano et al., Nucleic Acids Res. vol 17(20), p8392 (1989)に教示されており、これらの内容を参照により本明細書に援用する。本発明の一部の実施形態では、増幅によって制限部位が生成し、それによって多型部位の同定が容易となるようにアレル特異的プライマーが選択される。アレル特異的PCRを行うには、アレル特異的プライマーが一方のアレルのみに結合し、もう一方のアレルには結合しないであろうように反応条件を慎重に調整しなければならず、例えば、一部の実施形態では、プライマー配列とDNAとの間で100%の一致がある場合にのみプライマーが結合し、1つでもヌクレオチドミスマッチがある場合には結合しないであろうように条件が調整される。
【0107】
vii)ハイブリダイゼーションベースの方法を用いた遺伝子型の決定
本発明の特定の実施形態では、所与のSNPの検出を、そのDNAに結合又はハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを用いて行うことができる。本発明は、ウシレプチンプロモーターにおけるUASMS1、UASMS2、又はUASMS3 SNP、又はウシレプチン遺伝子エキソン2におけるEXON2−FB SNPを検出するためのオリゴヌクレオチドプローブを提供する。
【0108】
特定の実施形態では、これらのプローブがオリゴヌクレオチド断片から成る。そのような断片は、核酸試料に特異的にハイブリダイズするのに十分な長さのものであるべきである。この配列は、通常、約8から50ヌクレオチドであろうが、これより長くてもよい。配列番号1(野生型ウシレプチンプロモーター)、配列番号2(UASMS1多型を有するウシレプチンプロモーター)、配列番号3(UASMS2多型を有するウシレプチンプロモーター)、配列番号4(UASMS3多型を有するウシレプチンプロモーター)、配列番号5(野生型ウシレプチンエキソン2)、又は配列番号6(EXON2−FB多型を有するレプチンエキソン2)から選択された配列における約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24ヌクレオチドのひと続きの連続した領域を有する核酸プローブが企図されている。
【0109】
異なった長さの様々なプローブが使用でき、また、プローブ配列が由来するレプチン遺伝子中の連続したひと続きのヌクレオチド領域の正確な位置は様々であり得るが、プローブ配列は、検出するべき特定のSNPにおいて置換されている特定のヌクレオチド位置にまたがっていなければならない。例えば、ウシUASMS1多型を検出するために設計されたプローブは、ウシレプチンプロモーター(配列番号2)のヌクレオチド位置207にまたがっていなければならない。ウシUASMS2多型を検出するために設計されたプローブは、ウシレプチンプロモーター(配列番号3)のヌクレオチド位置528にまたがっていなければならない。同様に、ウシUASMS3多型を検出するために設計されたプローブは、ウシレプチンプロモーター(配列番号4)のヌクレオチド位置1759にまたがっていなければならない。最後に、ウシexon2−FB多型を検出するために設計されたプローブは、ウシレプチン遺伝子(配列番号6)のエキソン2のヌクレオチド位置304にまたがっていなければならない。
【0110】
これらのプローブは、サザンブロット法、ノーザンブロット法、ハイブリダイゼーション破壊分析などの様々なハイブリダイゼーション実施形態で有用であろう。また、本発明のプローブは、上述したプライマーを用いて生成された増幅PCR産物など、増幅された配列におけるSNPを検出するのにも使用できる。例えば、一実施形態では、最初に、PCR又は鎖置換増幅(SDA)などによって標的核酸を増幅し、次に、増幅された二本鎖DNA産物を変性させて、プローブとハイブリダイズさせる。
【0111】
他の実施形態では、二本鎖DNA(増幅されたものでも、そうでないものでもよい)を変性させ、本発明のプローブをハイブリダイズさせ、そして、ハイブリダイゼーション複合体を不安定化条件又は破壊条件にさらす。別のアレルと比較して、あるアレルでそのプローブの破壊エネルギーが異なっている場合、必要となる破壊エネルギーのレベルを測定することによって、多型遺伝子座における、遺伝子の遺伝子型を決定することができる。一例では、多型遺伝子座にシトシン残基を有するアレルでは、破壊エネルギー、例えば融解温度が低く、その多型遺伝子座にチミン残基を有するアレルでは、より高いエネルギーが必要である場合がある。これは、プローブが一方のアレルに対して100%の相同性を有する(完全一致したプローブ)が、もう一方のアレルとは単一のミスマッチを有する場合に実現されうる。完全一致したプローブは、ミスマッチのあるプローブより標的DNAに強く結合するので、ハイブリダイズしたプローブの解離を引き起こすのに、より多くのエネルギーを必要とする。
【0112】
一実施形態では、不安定化条件が温度の上昇を含む。温度が高いほど、不安定化の程度がより大きくなる。別の一実施形態では、不安定化条件が、ハイブリダイゼーション複合体を温度勾配にかけることを含み、それによって、温度が上昇するに従って不安定化の程度が増大する。別の実施形態では、不安定化条件が不安定化化合物での処理を含み、或いは、勾配がそのような化合物の量の増大を含む。適当な不安定化化合物には、塩及び尿素が含まれるが、これらに限定されない。ハイブリダイゼーション複合体を不安定化又は変性させる方法は当技術分野で周知であり、そのような方法のいかなるものも、本発明に従って使用できる。例えば、ハイブリダイゼーション複合体を不安定化又は変性させる方法は、Sambrook et al., Molecular Cloning; A Laboratory Manual 2d ed. (1989)によって教示されている。
【0113】
一塩基対のミスマッチを最適に検出するには、一方のアレルに結合した際に、多型部位におけるもう一方のアレルに対して、プローブDNA複合体の融解温度が約1℃から約10℃相違していることが好ましい。それによって、アレルの一方に対応するプローブ:DNA2本鎖の融解温度を超えて温度を上昇させた場合、そのプローブが分離するであろう。
【0114】
上述の方法の一実施形態では、第2の(「アンカー」)プローブを用いることができる。通常、アンカープローブは、いずれのアレルにも特異的ではなく、多型遺伝子座にどのヌクレオチドが存在するかにかかわらずにハイブリダイズする。アンカープローブはハイブリダイゼーション複合体を分離するのに必要な破壊エネルギーに影響を与えないが、その代わりに、第1の(「センサー」)プローブと共に使用するため、例えば蛍光共鳴エネルギー移動、すなわち「FRET」で使用するための相補的標識を含有する。ひとたび、標的DNAとアンカープローブ及びセンサープローブとの間のハイブリダイゼーションに適した条件になれば、センサープローブがアンカープローブからエネルギーを獲得する。ひとたびハイブリダイゼーションが起これば、アンカープローブはその蛍光エネルギーをセンサープローブに移動させ、センサープローブは、アンカープローブからエネルギーを獲得した後でのみ特定の波長で発光する。温度を所定の速度で上昇させた際にSNPの検出が行われ、放出された蛍光から測定値が取得される。プローブと標的DNAと間に、代替の多型ヌクレオチドの存在によって引き起こされる一塩基のミスマッチ(すなわちSNP)が存在する場合、このゲノムDNAとセンサープローブとの間の相同性は、ヌクレオチド変化すなわちSNPをもたないゲノムDNAのものより低いであろうから、センサープローブがより早く、すなわちより低い温度で解離するであろう。したがって、検出可能な蛍光の減失があるだろう。野生型配列に結合するようにプローブが設計されている場合、そのプローブがSNPに結合する安定性は、野生型配列よりわずかに低いので、SNPが存在するならば、そのDNAからのプローブの解離(すなわち「融解」)がより低い温度で起こるであろう。これは、明らかに、両方の染色体上で同時に起こり、したがって、ホモ接合体では、同一の融解温度の読みだしが2つ生じ、或いは、ヘテロ接合体では、2つの異なった融解温度の読みだしが生じる。例えば、UASMS1多型のC含有アレルの配列をもつようにプローブが設計されている場合、このプローブは、この多型のT含有アレルを2コピー有する個体からのDNA試料中で、2コピーのC含有アレルを有する個体のものより低い温度で解離又は融解するであろう。
【0115】
他の実施形態では、1つのSNPの分析に2つの異なった「アレル特異的プローブ」を用いることができ、その際、第1のアレル特異的プローブは一方のアレルの検出用であり、第2のアレル特異的プローブはもう一方のアレルの検出用である。例えば、一実施形態では、UASMS1 ob多型の異なったアレルを、2つの異なったアレル特異的プローブを用いて検出することができ、1つは、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置207におけるT含有アレルの検出用であって、もう1つは、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置207におけるC含有アレルの検出用である。好ましい一実施形態では、T含有アレルを検出するのに、配列5'-CTTTCACCTAGTATATCTAG-3'(配列番号9)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用され、C含有アレルを検出するのに、配列5'-TCTTTCACCTAGTATGTCTAG-3'(配列番号10)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用される。
【0116】
別の一実施形態では、UASMS2 ob多型の異なったアレルを、2つの異なったアレル特異的プローブを用いて検出することができ、1つは、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置528におけるT含有アレルの検出用であって、もう1つは、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置528におけるC含有アレルの検出用である。好ましい一実施形態では、T含有アレルを検出するのに、配列5'-AAGCTCTAGAGCCTATGT-3'(配列番号13)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用され、C含有アレルを検出するのに、配列5'-CAAGCTCTAGAGCCTGTGT-3'(配列番号14)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用される。
【0117】
別の一実施形態では、UASMS3 ob多型の異なったアレルを、2つの異なったアレル特異的プローブを用いて検出することができ、1つは、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置1759におけるG含有アレルの検出用であって、もう1つは、ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置1759におけるC含有アレルの検出用である。好ましい一実施形態では、G含有アレルを検出するのに、配列5'-CACACATTCCAATCAA-3'(配列番号17)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用され、C含有アレルを検出するのに、配列5'-CACATTGCAATCAA-3'(配列番号18)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用される。
【0118】
さらに別の実施形態では、EXON2−FB ob多型の異なったアレルを、2つの異なったアレル特異的プローブを用いて検出することができ、1つは、ob遺伝子エキソン2のヌクレオチド位置305におけるT含有アレルの検出用であって、もう1つは、ob遺伝子エキソン2のヌクレオチド位置305におけるC含有アレルの検出用である。好ましい一実施形態では、T含有アレルを検出するのに、配列5'-CCTTGCAGATGGG-3'(配列番号21)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用され、C含有アレルを検出するのに、配列5'-CCTTGCGGATGGG-3'(配列番号22)を有するオリゴヌクレオチドプローブが使用される。
【0119】
いずれのプローブ配列及びハイブリダイゼーション法を使用する場合も、当業者ならば、温度や化学条件など、適当なハイブリダイゼーション条件を容易に決定することができる。そのようなハイブリダイゼーション法は当技術分野で周知である。例えば、高い選択性を必要とする適用には、通常、ハイブリダイゼーション反応に比較的厳密な条件を利用することが望まれるであろう。その場合、例えば、約0.02Mから約0.10MのNaCl、約50℃から約70℃までの温度によって得られる条件など、比較的低い塩濃度及び/又は高温の条件が選択されるであろう。そのような高ストリンジェンシー条件は、プローブと鋳型又は標的鎖との間に、もしあるとしても、ごくわずかなミスマッチしか許容せず、本発明に従って特定のSNPを検出するのに特に適している。添加するホルムアミドの量を増加させることによって、条件をより高ストリンジェントにできると一般に理解されている。ハイブリダイゼーション反応条件の他のバリエーションは当技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning; A Laboratory Manual 2d ed. (1989)を参照)。
【0120】
viii)他の適当なプライマー配列及びプローブ配列
上記のSNPに加えて、ob遺伝子の他のDNA配列多型が集団内に存在する可能性があることは、当分野の技術者によって認められるであろう。このような自然の対立遺伝子変異は通常、その遺伝子のヌクレオチド配列の約1〜5%の差異をもたらす可能性がある。例えば、配列番号2は、ヌクレオチド位置207で多型を含む(すなわちUASMS1 SNP)ob遺伝子プロモーターのある領域の配列を提供する。この断片内に他の多型座位も存在する可能性がある。ヌクレオチド配列の自然に生じる対立遺伝子変異体に加えて、当分野の技術者であれば、本明細書に記載のヌクレオチド配列のうちのヌクレオチド配列中に突然変異により変化を導入できることをさらに理解するであろう。このようなあらゆる追加のヌクレオチド変異は、本発明の範囲内にあるものとする。したがって、例えば、本発明によるプローブを、UASMS1多型だけでなく、同じ領域内に生じる可能性がある他のSNPを含むob遺伝子の配列に結合するように設計することができる。
【0121】
さらに、本明細書で開示するプライマー及びプローブの配列と異なる核酸分子も本発明の範囲内にあるものとする。このような配列と相補的な核酸配列、又は標準的な、若しくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本明細書に記載の配列とハイブリダイズする核酸配列、並びに類似体及び誘導体も本発明の範囲内にあるものとする。有利には、このような変異は、本明細書に記載の配列と少数のヌクレオチド、例えば1、2、又は3ヌクレオチド異なる。
【0122】
自然の対立遺伝子変異体に対応する核酸分子、本明細書に記載の配列の相同体(すなわち他の種に由来する核酸)、又は他の関連配列(例えばパラログ)は、本明細書で開示する核酸とのその相同性に基づいて、例えば、本発明の配列のすべて若しくは部分をプローブとして使用する標準的な、若しくはストリンジェントなハイブリダイゼーション反応を行うことによって単離することができる。このような核酸ハイブリダイゼーション及びクローニングの方法は当技術分野で周知である。
【0123】
同様に、本発明の核酸分子は、記載する特異的な配列のある断片のみを含むことができる。本明細書で提供する断片を、核酸プライマー又はプローブの特異的なハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な長さである少なくとも6つの(近接する)核酸の配列として定義し、最高でも完全長配列より短い一部分である。断片は、好ましい核酸配列の近接する部分に由来するものでよい。誘導体及び類似体は、下記の通り、修飾された核酸又はアミノ酸を含む場合、完全長であっても完全長以外であってもよい。
【0124】
本発明の核酸の誘導体、類似体、相同体、及び変異体には、それだけには限らないが、本発明の核酸に実質的な相同な領域、すなわち、様々な実施形態では、同一のサイズの核酸配列に比べて、或いは当技術分野で既知のコンピュータ相同性プログラムによりアラインメントが行われるアラインメント配列と比較すると、少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又はさらには99%の同一性(有利には80〜99%の同一性)がある領域を含む分子が含まれる。
【0125】
本発明の目的では、配列同一性又は相同性は、オーバーラップ及び同一性を最大化するが、配列ギャップを最少化するようにアラインメントを行うと、配列を比較することによって判定される。特に、配列同一性は、いくつかの任意の数学的アルゴリズムを使用して判定することができる。2つの配列を比較するのに使用する数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993;90: 5873-5877の通り修正されたKarlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990;87: 2264-2268のアルゴリズムである。
【0126】
配列を比較するのに使用される数学的アルゴリズムの別の例は、Myers & Miller, CABIOS 1988;4: 11-17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120ウェイト残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。しかし、ローカル配列類似性及びローカルアラインメントの領域を同定するのに有用な別のアルゴリズムは、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988;85: 2444-2448に記載のFASTAアルゴリズムである。
【0127】
WU−BLAST(ワシントン大学BLAST)バージョン2.0ソフトウェアは、本発明の使用に有利である。いくつかのUNIX(登録商標)プラットフォーム用のWU−BLASTバージョン2.0実行可能プログラムは、ftp ://blast. wustl. edu/blast/executablesからダウンロードすることができる。このプログラムはWU−BLASTバージョン1.4に基づき、次にこれはパブリックドメインNCBI−BLASTバージョン1.4に基づく(そのすべてを参照により本明細書に援用するAltschul & Gish, 1996, Local alignment statistics, Doolittle ed., Methods in Enzymology 266: 460-480、Altschul et al., Journal of Molecular Biology 1990;215: 403-410、Gish & States, 1993;Nature Genetics 3: 266-272、Karlin & Altschul, 1993;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877)。
【0128】
スイート中のすべての検索プログラムにおいて、ギャップ付きのアラインメントルーチンは、データベース検索自体に組み込まれている。所望の場合には、ギャップなしにすることができる。長さ1のギャップのデフォルトペナルティ(Q)は、タンパク質及びBLASTPではQ=9であり、BLASTNではQ=10であるが、任意の整数に変更してもよい。ギャップ延長の残基当たりデフォルトペナルティ(R)は、タンパク質及びBLASTPではR=2、BLASTNではR=10であるが、任意の整数に変更してもよい。Q及びRの値の任意の組合せを使用して、オーバーラップ及び同一性を最大化するが、配列ギャップを最少化するように配列のアラインメントを行うことができる。デフォルトアミノ酸比較行列は、BLOSUM62であるが、PAMなどの他のアミノ酸比較行列を利用することができる。
【0129】
その代わりに、又はそれに加えて、例えば、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に関する「相同性」又は「同一性」という用語は、2種の配列間の相同性の定量的測度を指すことができる。配列相同率(percent sequence homology)は、(Nref−Ndif)×100/Nrefと計算することができ、式中、Ndifは、アラインメント時の2種の配列中の同一でない残基の総数であり、Nrefは、両配列のうちの一方の残基数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと75%の配列同一性を有する(Nref=8、Ndif=2)。「相同性」又は「同一性」は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、2種の配列のうち短いほうの配列中のヌクレオチド数又はアミノ酸数で割って表すことができる。ここで、2種の配列のアラインメントをWilburとLipmanのアルゴリズム(参照により本明細書に援用するWilbur & Lipman, Proc Natl Acad Sci USA 1983;80:726)に従って、例えば、20ヌクレオチドのウィンドウサイズ、4ヌクレオチドの語長、及び4のギャップペナルティを使用して決定することができ、好都合には、市販のプログラム(例えば、Intelligenetics(商標)スイート、Intelligenetics社製、カリフォルニア州)を使用して、アラインメントを含む配列データのコンピュータ支援の解析及び解釈を行うことができる。RNA配列がDNA配列と類似するか、又はある程度配列同一性若しくは配列相同性を有すると言われる場合、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)に等しいとみなされる。したがって、RNA配列は、本発明の範囲内にあるが、DNA配列中のチミジン(T)をRNA配列中のウラシル(U)に等しいとみなすことによりDNA配列から導き出すことができる。当分野の技術者であれば過度の実験なしに、相同率を求めるための他の多数のプログラム又は参考文献を参考にすることができる。
【0130】
ix)本発明のプライマー及びプローブの作製
本明細書に記載のプライマー及びプローブは、例えば、化学的手段により断片を直接合成することによって、或いは選択された配列を組換え産生用の組換えベクター中に導入することによって容易に調製することができる。in vivo又はin vitroのいずれかで断片を増幅するためのベクター又は組換え体又はプラスミドを作製する方法は、所望の任意の方法、例えば、以下で開示される方法、又は以下で引用される文献で開示される方法によるか、或いはそれと類似する一方法とすることができる:米国特許第4603112号;第4769330号;第4394448号;第4722848号;第4745051号;第4769331号;第4945050号;第5494807号;第5514375号;第5744140号;第5744141号;第5756103号;第5762938号;第5766599号;第5990091号;第5174993号;第5505941号;第5338683号;第5494807号;第5591639号;第5589466号;第5677178号;第5591439号;第5552143号;第5580859号;第6130066号;第6004777号;第6130066号;第6497883号;第6464984号;第6451770号;第6391314号;第6387376号;第6376473号;第6368603号;第6348196号;第6306400号;第6228846号;第6221362号;第6217883号;第6207166号;第6207165号;第6159477号;第6153199号;第6090393号;第6074649号;第6045803号;第6033670号;第6485729号;第6103526号;第6224882号;第6312682号;第6348450号;第6312683号;1986年10月16日出願の米国特許出願公開第920197号;国際公開第90/01543号;国際公開第91/11525号;国際公開第94/16716号;国際公開第96/39491号;国際公開第98/33510号;EP265785;EP0370573;Andreansky et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11313-11318;Ballay et al., EMBO J. 1993;4:3861-65;Felgner et al., J. Biol. Chem. 1994;269:2550-2561;Frolov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11371-11377;Graham, Tibtech 1990;8:85-87;Grunhaus et al., Sem. Virol. 1992;3:237-52;Ju et al., Diabetologia 1998;41:736-739;Kitson et al., J. Virol. 1991;65:3068-3075;McClements et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11414-11420;Moss, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11341-11348;Paoletti, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11349-11353;Pennock et al., Mol. Cell. Biol. 1984;4:399-406;Richardson (Ed), Methods in Molecular Biology 1995;39, "Baculovirus Expression Protocols," Humana Press Inc.;Smith et al. (1983) Mol. Cell. Biol. 1983;3:2156-2165;Robertson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11334-11340;Robinson at al., Sem. Immunol. 1997;9:271;Roizman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11307-11312。
【0131】
x)本発明のプライマー及びプローブの標識及び検出
本発明によるプライマー又はプローブとして使用されるオリゴヌクレオチド配列は、検出可能な部分で標識することができる。本明細書では、「センサー」という用語は、検出可能な部分で標識されたこのようなプライマー又はプローブを指す。様々な標識部分が当技術分野で知られている。前記部分は、例えば、放射標識(例えば、H、125I、35S、14C、32Pなど);検出可能な酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼなど);蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、Cy3、Cy5、Bodipy、Bodipy Far Red、ルシファーイエロー、Bodipy 630/650-X、Bodipy R6G-X、5-CR 6Gなど);金コロイド、又は着色ガラス若しくはプラスチックなどの比色標識(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど);ビーズ;比色シグナル、蛍光シグナル、化学発光シグナル又は電気化学発光(ECL)シグナルなどの検出可能なシグナルを発生可能な他の任意の部分であってよい。
【0132】
プライマー又はプローブは、検出可能な部分で直接若しくは間接標識するか、又は検出可能な部分を組み込むように合成してもよい。一実施形態では、検出可能な標識は、ポリメラーゼによって媒介される周期的な増幅反応の少なくとも1サイクルの間に核酸中に組み込まれる。例えば、ポリメラーゼを使用して、ポリメラーゼによって媒介される増幅反応の過程で蛍光ヌクレオチドを組み込む。或いは、核酸のプライマー又はプローブの合成の間に蛍光ヌクレオチドを組み込んでもよい。オリゴヌクレオチドを蛍光色素で標識するために、従来から知られている標識法のうちの1つを使用することができる(Nature Biotechnology, 14, 303-308, 1996、Applied and Environmental Microbiology, 63, 1143-1147, 1997、Nucleic Acids Research, 24, 4532-4535, 1996)。有利なプローブは、3’若しくは5’末端を蛍光色素で標識し、標識末端に塩基としてG又はCを含むものである。5’末端を標識し、3’末端を標識しない場合、3’末端のリボース又はデオキシリボースの3’位にあるC原子のOH基をリン酸基などで修飾してもよいが、この点において制限されることはない。
【0133】
分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、又は化学的手段を使用して、このような標識を検出することができる。検出装置及び検出方法には、それだけには限らないが、光学イメージング、エレクトロニックイメージング、CCDカメラ、を用いたイメージング、集積光学イメージング、及び質量分析法が含まれ得る。さらに、標的に結合した標識若しくは非標識プローブの量を定量してよい。このような定量には統計分析が含まれ得る。他の実施形態では、この検出は、調和部位と不調和部位との間の伝導率の差、消光、蛍光摂動分析、又はドナー分子とアクセプター分子との間の電子伝達によるものでもよい。
【0134】
さらに別の実施形態では、検出は、蛍光エネルギー移動(FET)又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるなど、PCR反応又はハイブリダイゼーション反応におけるハイブリダイゼーション複合体中の分子間のエネルギー移動によるものでもよい。FET法及びFRET法では、1種又は複数の核酸プローブを蛍光分子で標識することができ、そのうちの一方はエネルギードナーとして働くことができ、そのうちの他方はエネルギーアクセプター分子である。これらは、それぞれレポーター分子及びクエンチャー分子として知られることもある。ドナー分子は、特定の光波長で励起されるが、通常、その波長に対して蛍光発光波長を示す。アクセプター分子も、様々な距離依存性エネルギー移動機序によりドナー分子の発光エネルギーを受容することができるようなこの波長で励起される。通常、アクセプター分子は、近接している場合(例えば、同じ、若しくは隣接する分子)、ドナー分子の発光エネルギーを受容する。FET技術及びFRET技術は、当技術分野で周知であり、本発明のSNPを検出するのに容易に使用することができる。例えば、それぞれを参照により本明細書に組み込む、米国特許第5668648号、第5707804号、第5728528号、第5853992号、及び第5869255号(FRET色素についての記載)、Tyagi et al. Nature Biotech. vol. 14, p303-8 (1996)及びTyagi et al., Nature Biotech. vol 16, p49-53 (1998)(FET用の分子ビーコンについての記載)、並びにMergny et al. Nucleic Acid Res. vol 22, p920-928, (1994)及びWolf et al. PNAS vol 85, p8790-94 (1988)(FET及びFRETの一般的記載及び方法)を参照されたい。
【0135】
xi)本発明のSNP検出用の組成物及びキット
本発明のオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブは、家畜標本においてUASMS1、UASMS2、UASMS3、及びEXON2−FB ob遺伝子SNPを検出するための診断キットでの商用適用例がある。本発明による試験キットは、本発明による任意のオリゴヌクレオチドプライマー又はプローブを含むことができる。このような試験キットは、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド(dNTP)、緩衝液など、ポリメラーゼによって媒介される周期的な増幅反応に使用される1種又は複数の試薬を追加的に含むことができる。SNP検出キットは、標本中に含まれる細胞を溶解するための溶解緩衝液を含むこともできる。
【0136】
本発明による試験キットは、本発明による1対のオリゴヌクレオチドプライマーと、本発明によるオリゴヌクレオチドを含むプローブとを含むことができる。いくつかの実施形態では、このようなキットは、2種のアレル特異的オリゴヌクレオチドプローブを含む。有利には、このキットはさらに、本発明のプライマー及びプローブの結合を検出又は測定するための試薬などの追加の手段、並びに理想的には陽性及び陰性対照を含む。
【0137】
本発明はさらに、そのすべてが本発明の範囲内である、紙、ナイロン若しくは他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライド、マイクロチップ、マイクロビーズ、又はそのような他の任意の基質など固体の、若しくは柔軟な支持体上に固定化される、本発明によるプローブを包含する。この形のプローブは現在、「DNAチップ」と呼ばれている。これらDNAチップは、本発明のSNPを分析するのに使用することができる。本発明はさらに、本明細書に記載の1種又は複数の配列に基づく核酸分子のアレイ又はマイクロアレイを包含する。本明細書では、「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、紙、ナイロン若しくは他の種類のメンブレン、フィルター、チップ、ガラススライド、又は他の任意の適当な固体の支持体など固体の、若しくは柔軟な支持体上で合成される、ずらりと並んだ別個のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを指す。一実施形態では、このマイクロアレイは、その開示全体を参照により本明細書に援用する、米国特許第5446603号;第5545531号;第5807522号;第5837832号;第5874219号;第6114122号;第6238910号;第6365418号;第6410229号;第6420114号;第6432696号;第6475808号;第6489159号、及びPCT国際公開第01/45843号A2に記載の方法及び装置に従って調製及び使用される。
【0138】
xii)SNP遺伝子型による動物の分類及び選抜の方法
上で詳細に記載した通り、本発明は、個々の動物から得られたDNA試料においてUASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及びEXON2−FB SNPを検出するための試薬及び方法を提供する。例えば、本発明の方法を使用して、所与の動物が、多型UASMS1遺伝子座(ob遺伝子プロモーターのヌクレオチド位置207に位置する)でシトシン又はチミンを有するかどうかを判定することができる。本発明の方法を使用して、多型UASMS1、UASMS2、UASMS3、及び/又はEXON2−FB遺伝子座のいずれかで対象の動物の遺伝子型を決定した後、この遺伝子型情報を利用して、その遺伝子型に従って動物を選抜し、且つ/又は集団に分けることは、本発明のさらなる一目的である。
【0139】
実施例に記載する通り、UASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及びEXON2−FB SNPのある種のアレルは、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体構成、並びに乳生産量など、経済的に重要なある種の形質と連関している。例えば、本発明は、UASMS2遺伝子座のTアレルが、CC遺伝子型を有するホモ接合動物で最低であり、CT遺伝子型を有するヘテロ接合動物で中間であり、ホモ接合TT動物で最高である血清レプチン濃度に有意と連関していることを実証する。
【0140】
肉牛における、レプチン遺伝子のSNPと、屠体特性及び肉質特性との連関を検査した。5つのSNP(UASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及びE2FB)に関して、交雑種の雄ウシ、若雌ウシ、及び去勢ウシの遺伝子型決定を行った。測定特性には、部分的肋骨解剖による脂肪、赤身、及び骨の歩留まり(%)、脂肪厚度、最長筋(LM)領域、温屠体重量、品質等級、LM筋肉内脂肪、並びにLM及び半腱様筋の柔らかさ評価が含まれていた。UASMS1及びUASMS3は完全に連結されているので、4つのSNP(UASMS1、UASMS2、E2JW、及びE2FB)のみを分析した。一変量混合遺伝動物モデルを用いて、SNP遺伝子型又はハプロタイプと、これらの特性との連関を評価した。2つのレプチンエキソン2 SNPが、脂肪及び赤身の歩留まり、並びに脂肪厚度と連関しており(E2JW、P<0.01;E2FB、P<0.05)、それらは、LMの柔らかさへの影響において相互作用した(P<0.01)。レプチンプロモーターSNPは、いかなる特性とも連関しなかった(UASMS2)か、脂肪の歩留まりとのみ連関した(UASMS1)。3つのハプロタイプ(TCAC、CCAT、TTAC)は、集団内で高頻度に存在し(88%)、すべての特性に同様な影響を有していた。これらの一般的なハプロタイプと比較して、1つのハプロタイプ(CCTT)は、FATYL、GFAT、及びLEANYLへの影響(P<0.01)、1つのハプロタイプ(TTTT)はLMの柔らかさへの影響(P<0.03)に有意な相違を示した。従って、レプチン遺伝子内の一塩基多型と、赤身の歩留まり及び柔らかさとの間に、有意な連関が検出された。
【0141】
したがって、一実施形態では、循環レプチンレベル(例えば、食糧生産で使用するための、又は育種のための)に従って動物を集団に分けることが望ましい場合、多型遺伝子座UASMS1でその遺伝子型に従って動物を選抜し、且つ集団に分けることができる。多型UASMS1、UASMS2、UASMS3、及びEXON2−FB遺伝子座それぞれの遺伝子型と、他の経済的に重要な様々な形質との連関を実施例に記載する。したがって、こうした形質それぞれについて、遺伝子型に従って動物を集団に分けることができる。
【0142】
E2JW SNPについて記載した研究(Lagonigro et al., (2003))とは対照的に、E2JWと、FATYL、GFAT、及びLEANYLとの連関に関する証拠が、下記実施例7〜12に記載の通り、見出された。上記のオリジナル研究では、E2JWと、169頭のホルスタインシャロレーF雄子ウシにおける皮下脂肪厚及び超音波測定背脂肪厚の比率(月齢10カ月における)との連関が有意でないことが報告された。同じ著者らは、E2JWと、屠体筋肉内脂肪及び交雑スコアとの連関が有意でないことも報告した。これは、CF又はQGのいずれとも、E2JWとの連関を示さない本研究の結果と一致する。
【0143】
Lagonigroら(2003)は、E2JWと、月齢何カ月かまでの雄コウシの平均飼料摂取量との連関が有意であり、AT遺伝子型は、AA遺伝子型より高い一日当たり摂取量を有することを報告した。しかし、本発明の発見はその反対であり、AT動物は、AA動物より低いFATYL及びGFAT、並びに高いLEANYLを有することを示し、これから、AT動物は、より低い飼料摂取量を有するであろうと予測された。これらは、Lagonigroら(2003)の発見とは反対である。
【0144】
脂肪交雑と柔らかさ(剪断力評価又は食味パネル試験のいずれかで測定)との間における表現型及び遺伝子の関係は、好適な方向を示した(Bertrand et al.)。これは、より高い脂肪交雑が、より高い柔らかさとわずかに連関していることを示す。脂肪交雑の増大は、肉の結合組織(コラーゲン)への希釈効果をもたらし、それが柔らかさの向上を補助する。
【0145】
LMの柔らかさの分析を行い、モデル(1)への、CF又は虐殺年齢のいずれかに関する固定線形回帰の導入を介して、CF又は虐殺年齢のいずれかに関して記録を調整した。結果は、無調整の分析から得られたものと同様であった。例えば、合同E2JW.E2FB遺伝子型のLMAVGへの影響の、CF又は虐殺年齢のいずれかに関して調整したワルドF検定の確率は0.001に等しかった。CFに関して調節した、E2JW.E2FB遺伝子型(AA.CC、AA.CT、AATT、AT.CT、及びAT.TT)の最小二乗平均は、それぞれ、4.12kg、4.23kg、4.50kg、3.99kg、及び5.28kgであった。虐殺年齢に関して調節した同じ特性は、それぞれ、4.14kg、4.23kg、4.49kg、3.99kg、及び5.31kgであった。
【0146】
E2JWとE2FB多型は、背最長筋の柔らかさに連関し、それらの影響において相互作用する。E2JW T遺伝子座の追加効果が想定されている場合、これら2つのSNPは、個別に、柔らかさにおける表現型変異の約22%を説明する。
【0147】
レプチンプロモーター内の2つのSNP、すなわちUASMS1及びUASMS3は、集団内で完全に連結しており、脂肪の歩留まりと有意に連関している。別のレプチンプロモーター多型であるUASMS2は、分析されたいかなる屠体特性及び肉質特性とも、この集団内では有意に連関していない。これは、この多型に関して以前に報告されている2つの研究と不一致である。レプチン遺伝子内では、3つの特定のハプロタイプ(TCAC、CCAT、及びTTAC)が高頻度で集団内に存在し、これらは、異なった対立遺伝子を保持するが、屠体特性及び肉質特性への影響に差がない。これは、この研究で考慮された4つのSNPに連結した他のSNPの影響又は同じ染色体中のSNP間におけるなんらかの程度のエピスタシスを示しているのかもしれない。
【0148】
図7、8、9、10、及び23は、それぞれUASMS1、UASMS2、UASMS3、及びEXON2−FB SNP、並びにSNPの組合せE2JW/EXON2−FBについて動物をどのようにしてスクリーニングすることができるか流れ図を使用して示し、どのようにして遺伝子型情報を使用して、育種すべき動物を選抜し、且つ/又は食糧生産に使用することができるかを示す。こうした流れ図で概説する方法は、限定的なものとする意図はなく、当分野の技術者であれば、こうした方法の様々な態様を、全体の結果に影響を与えることなく変更できることを認識するであろう。図7〜10は、各遺伝子型と連関している表現型の特徴の一部を示す。各遺伝子型とのあるレベルの相関を示す他の表現型を実施例の項で示す。
【0149】
したがって、一実施形態では、本発明は、動物を集団に分ける方法、及び家畜生産を管理する方法を提供し、この方法は、ウシなどの家畜動物を、多型UASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及び/又はEXON2−FB遺伝子座の遺伝子型に従って集団に分けることを含む。本発明のさらに別の態様は、家畜を虐殺する前における、それらの品質の指標及び予測指標として、これらのレプチン遺伝子SNPを組み合わせることができるということである。従って、本発明の例示的一実施形態では、肉の柔らかさ(最長筋剪断力によって測定される)増大の指標として、UASMS1(3)のマーカーを組み合わせることができる。従って、本発明の方法は、家畜繁殖業者又は飼育者が、より高い信頼性をもって肉及び動物の品質を予測するのを可能にするマーカーの1つ又は組合せ、最も有利には、レプチン遺伝子座であるUASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及び/又はEXON2−FBマーカーから得られた遺伝子型データを提供するであろうと予期されている。本発明の遺伝子選抜法及び集団に分ける方法は、体重、体のサイズ、育種形質など目に見える特徴により動物を集団に分けるなど、表現型によって集団に分ける従来からの他の方法と併用することができる。
【0150】
本発明の方法は、改良された遺伝形質を有するウシの選抜を提供し、この方法を使用して、育種、飼料消費、屠体/肉の品質、乳生産など、区域での家畜の群れの生産を最適化することができる。本発明は、身体状態と相関があるob遺伝子における多型の有無を同定することにより、所望の身体状態を発達させる可能性がより高いものを決定するように家畜をスクリーニングする方法を提供する。
【0151】
上記の通り、また実施例では、本発明のSNPが連関している様々な表現形質がある。実施例に記載の方法を使用して、或いは当技術分野で知られている適当な任意の方法を使用して、各表現形質を試験することができる。本発明の方法を使用して、農場経営者又はフィードロットオペレーターなどが、集団に分けるのに通常使用する現在の基準に加え、SNP遺伝子型によって判定して、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体構成、並びに乳生産量などの所望の形質に関する、各動物の遺伝的特性に従って、ウシを集団に分けることができる。ウシを試験して、ob遺伝子のアレルUASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及びEXON2−FBに関してホモ接合性かヘテロ接合性かを判定し、その結果、各畜舎が同じ遺伝子型を有するウシを含むように集団に分けることができる。
【0152】
次いで、屠殺する前の食肉生産に理想的であるように、又は乳生産を最大限にするように、動物の各畜舎に飼料を与え、さもなければある方法でフィードロットオペレーターによって決められた時間維持する。したがって、農場経営者又はフィードロットオペレーターは、効率が相当高まる機会を提供される。現在、飼育者は、そのウシすべてに同じ飼料を与え、したがって各動物に対して同じ費用を負担し、優れた経営慣行では通常、おそらく40%がAAAの等級であり、嗜好等級に対して割増価格が付けられている(動物の年齢などいくつかの他の要素による、周知の通り、17〜24カ月齢のウシは、より若いその対応物に比べて脂肪交雑が増大している。およそ55%のウシは16カ月齢未満で屠殺され、45%は17カ月齢超で屠殺される)。もちろん、相当数が過剰の脂肪を有し、したがって歩留まり等級が低下する。ウシの残り、すなわち60%はAAA未満の等級であり、したがって価格が低下するが、経営者が負担するフィードロットの経費は同じである。遺伝子型によってウシを集団に分け、飼料を与えることにより、農場経営者は増益する目的で各群を別々に取り扱うことが可能となる。
【0153】
所与の任意の時点での肉の任意の特定の品質に払われる望ましさ及び割増にかかわらず、肉の予測可能な品質を有するより均一な群を経営者に提供すると、経営者に、現在利用可能なウシのより均一でない群に比べて割増を要求し受ける機会が提供されることが考えられる。
【0154】
本発明の方法はまた、循環レプチンレベル、飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体構成、並びに乳生産量など経済的に重要な様々な形質について望ましい表現型を有するこうした動物を育種計画において選抜するのに有用である。例えば、改良された屠体価値と連関している望ましい多型が少なくともヘテロ接合であり、有利にはホモ接合である家畜などの動物の連続的な選抜及び育種は、屠体価値が改良されたより多くの子孫を有する品種、系統、又は集団をもたらすはずである。したがって、農場経営者は、経済的に重要な形質と連関している、子ウシの特定のアレルの出現を増大させる本発明の方法を使用することにより、その子ウシの価値を増大させることができる。したがって、本発明のSNPは、育種計画において選抜ツールとして使用することができる。
【0155】
従って、本発明の一態様は、遺伝子型に従って動物を部分集団に分ける方法を提供し、この方法は、各部分集団の動物がレプチン遺伝子における類似の多型又は多型の組合せを有しており、(a)レプチン(ob)遺伝子における一塩基多型又は一塩基多型の組合せの存在を判定することにより、部分集団に分けるべき各動物の遺伝子型を決定するステップであって、上記一塩基多型が、UASMS1,UASMS2,UASMS3,EXON2−FB、及びE2JWから成る群から選択されるステップと、個々の動物を部分集団に分けるステップであって、部分集団中の各動物が、レプチン遺伝子における類似の多型又は多型の組合せを有するステップとを含む。
【0156】
この態様の一実施形態では、動物がウシであり、レプチン遺伝子がウシレプチン遺伝子である。
【0157】
本発明のこの態様における様々な実施形態で、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せは、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択することができ、個々の動物は、レプチン遺伝子のUASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWの一塩基多型の組合せを、動物が有するか否かに応じて、部分集団に分けられる。
【0158】
一実施形態では、レプチンの遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含み、上記SNPの組合せが、肉の柔らかさの増大を示す。
【0159】
本発明による別の実施形態では、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含む。
【0160】
本発明のさらに別の実施形態では、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、EXON2−FB/E2JWのマーカーを含む。
【0161】
本発明の他の実施形態では、レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、又はUASMS3/EXON2−FBのマーカーを含む。
【0162】
本発明のさらに他の実施形態では、レプチン遺伝子の上記一塩基多型の組合せが、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含む。
【0163】
本発明の別の態様は、その種の動物の一般的集団と比較して、特定の飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び組成、並びに乳生産量に関する望ましい表現型を有する動物を同定する方法であり、この方法は、上記動物のレプチン遺伝子における一塩基多型又は一塩基多型の組合せの存在を判定するステップであって、上記一塩基多型が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB及びE2JWから成る群から選択され、上記一塩基多型の組合せが、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択され、且つ上記UASMS1、UASMS2、UASMS3、若しくはEXON2−FB一塩基多型のいずれかの存在、又は上記UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、若しくはUASMS3/E2JWの一塩基多型の組合せの存在が、一定の飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体組成、肉品質、肉の柔らかさ、並びに乳生産量に関する望ましい表現型を示すステップを含む。
【0164】
本発明のさらに別の態様は、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、又はUASMS3/E2JWからなる群から選択されたob遺伝子多型の組合せを検出するための組成物であって、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドプローブを含み、各オリゴヌクレオチドプローブが単一の多型を選択的に検出でき、各プローブが検出可能な部分で標識されていてもよい組成物である。
【0165】
本発明のこの態様における一実施形態は、単離されたオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能な部分が、放射標識H、125I、35S、14C、32P、検出可能な酵素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、蛍光色素、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、Cy3、Cy5、Bodipy、Bodipy Far Red、ルシファーイエロー、Bodipy 630/650-X、Bodipy R6G-X、5-CR 6G、比色標識、金コロイド、ジゴキシゲニン−dUTP、又はビオチンから成る群から選択されるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0166】
本発明の一実施形態では、オリゴヌクレオチドが固体支持体に固定される。
【0167】
本発明のさらに別の態様は、ob遺伝子の多型遺伝子座における動物の遺伝子型を決定する方法であり、この方法は、(a)上記動物からDNA試料を取得するステップと、(b)上記DNA試料を少なくとも2対のオリゴヌクレオチドプライマー対と、上記DNA試料への上記オリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションを可能にするのに適した条件下で接触させるステップと、(c)上記プライマー対を使用して、ob遺伝子の特定の領域を酵素的に増幅し、それにより少なくとも2種の核酸増幅産物を産生するステップと、(d)ステップc)から得られる増幅産物を、検出可能な部分で標識された、ob遺伝子対立遺伝子特異的な標識プローブと、上記増幅産物への上記対立遺伝子特異的な標識プローブのハイブリダイゼーションを可能にするのに適した条件下で接触させるステップと、e)上記増幅産物にハイブリダイズした対立遺伝子特異的な標識プローブの上記検出可能な部分を検出することによって、上記増幅産物の存在を検出するステップとを含む。
【0168】
本発明のこの態様における様々な実施形態で、オリゴヌクレオチドプライマー対は、配列番号7及び配列番号8、配列番号11及び配列番号12、配列番号15及び配列番号16、配列番号19及び配列番号20、並びにE2JW多型遺伝子座にまたがる、ob遺伝子の領域の増幅を可能とするプライマーから成る群から選択できる。
【0169】
本発明のこの方法の他の実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマー対が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB、及びE2JWからなる群から選択された少なくとも1箇所の多型ヌクレオチド遺伝子座、又はUASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択された上記多型ヌクレオチド遺伝子座の組合せを有する、ウシレプチン遺伝子の領域を増幅できる。
【0170】
他の実施形態では、遺伝子型が牛肉の柔らかさの増大を示す。
【0171】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、分子生物学分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。ここで記載された方法及び物質に類似又は同等の方法及び物質を本発明の実施又は試行に用いることもできるが、適切な方法及び物質はここに記載されたものである。本明細書で言及したすべての出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献を、参照により全体として本明細書に援用する。加えて、物質、方法、及び例は、もっぱら例示的なものであり、限定的なものとは意図されていない。
【0172】
以下の実施例は、請求される本発明を説明及び例示するために提供するものであるが、それだけに限らない。当分野の技術者であれば、本質的に類似する結果が生じるように変更又は修正することができる重要でない様々なパラメータを容易に認識するであろう。
[実施例]
【実施例1】
【0173】
動物及び表現型データの収集
Angus Charolais又はアルバータ大学の雑種雄ウシを種雄とする計180頭のウシ(去勢ウシ139頭、雄ウシ41頭)を管理し、肥育場の条件下で成長及び飼料効率を試験した。飼料摂取量は、各動物について、GrowSafe(登録商標)自動飼料供給システム(GrowSafe(登録商標)、Systems社製、カナダ国アルバータ州Airdrie)を使用して測定した。
【0174】
計150頭の動物の完全な生産及び効率データを入手することができた。試験2の雄ウシすべて(計21頭)、それに加えて、死亡したか、健康及びその他の関連する問題のために試験から除外しなければならなかったその他の9頭は除外した。全動物の体重は毎週測定した。分析した生産データには、平均増体重(ADG)、供試代謝体重中間値(MWT)、飼料摂取残量(RFI)、飼料要求率(FCR)、平均1日当たり乾物摂取量(DMI)、単位代謝体重当たりの代謝可能エネルギー摂取量(MEWT0.75)及び成長の部分効率(PEG)がある。試験中の各動物のADGは、SAS(SAS Institute社製、ノースカロライナ州Cary、1999)の回帰手順を使用して、時間(日)に対する体重(kg)の線形回帰の係数として計算した。試験期間にわたる各動物のMWTは、中間体重0.75として計算した。70日間の試験期間にわたる各動物の総飼料摂取量を使用して、各動物の乾物摂取量(DMI)を計算した。代謝可能エネルギーは、DMIと飼料エネルギー含量(12.14 MJ ME/kg)との積を各動物の代謝体重で割ったものとして計算した。
【0175】
飼料摂取残量は、各動物について、試験期間にわたる各動物の実際の飼料摂取量と、各動物の平均増体重及び代謝体重に基づいて予測した予想1日当たり飼料摂取量との差として計算した。各動物の飼料要求率は、試験における平均増体重に対する試験における平均摂取量の比として計算した。各動物の維持を上回る成長の部分効率(PEG)は、平均飼料摂取量と維持のための飼料摂取量との間の差に対するADGの比として計算した。
(a)摂食行動データ:Growsafeシステムによる飼い葉桶での動物の検出は、摂食事象で開始し、同一の動物について最後の2回の記録の間の時間が300秒を超えたときに終了する。300秒以内の動物の検出は1つの連続した摂食事象と考えた。次いで、摂食事象データを使用して、平均終了時間から開始時間を引いた差である平均摂食継続時間(FD)を計算した。摂食継続時間には、把握、咀嚼、飼い葉桶から戻って咀嚼、社会化、ひっかき行動又は舐め行動に費やされる時間が含まれる。他方、摂食頭下げ時間(FHDには、食べることに使われる時間が主に含まれ、摂食事象時間、5.7秒のシステム検出時間の間の動物の平均検出数として決定した。
(b)超音波データ:第12/13肋骨間の脂肪厚、最長筋領域及び脂肪交雑スコアは、17cmの3.5MHzの線形アレイトランスデューサーを有するAloka 500Vリアルタイム超音波で約28日毎に超音波測定した。代謝調査の試験の終点前に除外した動物を除き、各動物について超音波測定を5回繰り返した。この場合、測定の近似値は、前回の測定からの特性における変化率から予測した。
(c)一定体重500kgにおける超音波測定値の予測:カナダ牛屠体評点方式では、Canadian Maturity I又は若い動物(最高級の若い屠体)の屠殺に要求される体重はなかった。平均屠殺時重量は一般に、去勢ウシで550から600kgであり、屠殺直後の屠体重は約350から400kgになる。動物の最終体重は、500kgの最低産業屠殺時重量未満であった。しかし、産業屠殺時重量時の背脂肪厚、最長筋胸郭領域及び脂肪交雑スコアの最終超音波測定値を決定することが所望されていた。回帰手順を使用して、一定体重500kgにおける背脂肪厚、脂肪交雑スコア及び最長筋胸郭領域を予測した。
【0176】
まず、5つの連続した期間に記録した各動物の測定値(超音波測定背脂肪厚、脂肪交雑スコア又は最長筋領域)を各動物について、これら上記の日付に測定した体重に対して回帰させた。これにより、各動物の回帰方程式Y=a+b(WT)が得られ、ここで、Yは予測される特性値であり(背脂肪、脂肪交雑又は最長筋胸郭領域)、α=回帰方程式の切片、b=回帰係数、WTは動物の体重(この場合、一定の500kgに設定されている)である。したがって、この方程式を使用して、各動物について一定体重500kgで各特長の値を予測した。これは結果として、予測の脂肪交雑、背脂肪又はリブアイ領域の新たなデータセットを生成した。次いで、この新たなデータセットを分析して、異なるマーカーの異なる遺伝子型間の差異を決定した。
(d)屠殺及び屠体データ:完全な生産データがある150頭の動物のうち、19頭は屠殺に出さなかった雄ウシであった。さらに、RFIに対して極端な表現型を有する20頭を代謝測定用に選抜し、これらの動物については屠体データを収集しなかった。屠体データが入手できたのは109頭のみであった。カナダ牛屠体評点方式に従って屠体の特性を評価した。このシステムで提供された標準の屠体データには、屠殺時重量(最終生体重)、屠体重、平均背脂肪厚、屠体の脂肪厚度、リブアイ領域、脂肪交雑品質又は品質等級、脂肪交雑レベル及び販売可能な肉の歩留まりがある。各動物の屠体重は、−4Cで24時間冷凍後の屠体の左半分及び右半分の重量として判定した。屠体の脂肪厚度は、各屠体の第12/13肋骨で測定した。平均背脂肪厚は、第12/13肋骨間以外の、リブアイ筋肉に沿った異なる2箇所で測定した。屠体品質等級(A、AA、AAA又は極上=それぞれ4、3、2、1)は、以下の基準に従って判定した:動物は生理学的に30月齢未満でなければならない;肉は、明るい赤色で堅く、きめが細かくなければならない;筋肉成長は良好(欠陥なし)から優良の範囲でなければならない;脂肪厚度は堅くて白色(又は琥珀色)であり、測定部位(第12/13肋骨)で2mm以上でなければならない。
【0177】
A、AA、AAA又は極上の評価は、脂肪交雑レベルに直接左右されない。これらの品質等級のそれぞれと連関しているのが脂肪交雑レベル(A0、A50、AA10、AAA0、AAA40などの0から90の範囲である)のスコアである。したがって、脂肪交雑の定量的な値を得るためには、各等級付けされた屠体の品質等級及び脂肪交雑レベルを合わせて、以下の方程式に従う脂肪交雑スコアの値を計算する:脂肪交雑スコア=(QG+ML)/100、ここで、QGは品質等級(A、AA、AAA及び極上に対してそれぞれ100、200、300及び400)であり、MLは脂肪交雑レベルであり、10単位で0から90の範囲である。脂肪交雑スコアはリブアイ筋肉の筋肉内脂肪の測定値であり、1から<2単位=痕跡量の脂肪交雑(カナダA品質等級);2から<3単位=わずかに脂肪交雑(カナダAA品質等級);3から<4単位=少しから中等度の脂肪交雑(カナダAAA品質等級)及び≧4単位=わずかに豊富又はより豊富な脂肪交雑(カナダ極上)として分類できる。赤身肉の歩留まりは、販売可能な肉の見積りであり、以下の方程式に従って計算した:赤身肉の歩留まり%=57.96+(0.202×最長筋胸郭領域、cm)−(0.027×温屠体重、kg)−(0.703×平均背脂肪厚、mm)。屠体の赤身肉の歩留まりを使用して、Y1=≧59%、Y2=54から<59%及びY3=<54%に従って、各動物に等級(歩留まり等級)を割り当てることができる。
【実施例2】
【0178】
血液サンプリング、DNA抽出及びSNP検出
血液サンプルを各動物から飼料摂取試験の開始時に採集し、そこから、飽和塩フェノール/クロロホルムの変形手順(Sambrook et al., 1989)を使用してゲノムDNAを抽出した。ウシレプチンプロモーターの多型の同定には、配列番号1(GenBankアクセッション番号AB070368、Taniguchi et al., 2002)を利用した。16頭の動物のパネルからのゲノムDNAを、ウシレプチンプロモーター領域全体をカバーするように設計された正プライマー及び逆プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応で増幅した。各動物からのPCR産物をBeckman CEQ 8000 Genetic Analysis System(Beckman Coulter Instruments社製)で配列決定した。各動物の配列データを分析して、推定の一塩基多型を同定した。
【0179】
この分析により、新たな一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)、すなわち、それぞれ位置207(C/T置換)、528(C/T置換)及び1759(C/G置換)(番号は配列番号1、GenBankアクセッション番号AB070368)に位置するUASMS1、UASMS2及びUASMS3を同定した。Buchanan et al.(2002)によって同定されたエキソン2 SNPは、位置305(C/Tミスセンス突然変異)(GenBankアクセッション番号AY138588)に位置している。各レプチン遺伝子特異的多型の遺伝子型決定は、5’ヌクレアーゼ対立遺伝子識別アッセイを使用してABI PRISM(登録商標)7700配列検出器(Applied Biosystems社製)で実施した。正プライマー及び逆プライマー(表1)は、各動物からのゲノムDNAを使用して各多型を増幅するように設計した。さらに、2つのABI TaqMan(登録商標)蛍光プローブ(各プローブは異なるレポーター色素を有する)は、各SNPの2つの対立遺伝子を標的にするように設計した(表1)。
【0180】
【表1】

【0181】
遺伝子型決定した動物のサブセットを各多型について配列決定し、配列結果を使用して、識別アッセイで得た遺伝子型を確認した。実験群に加えて、比較的無関係のウシの5種の市販系の計160頭(BeefBooster遺伝子選抜系M1、M2、M3、M4及びTX)も遺伝子型決定し、SNPの対立遺伝子頻度をこれらの動物で決定した。M1の原種はAngus、M2の原種はHereford、M3の原種は種々の小品種、M4の原種はLimousin及びGelbvieh、及びTXの原種はCharolaisであった(Kress et al.、1996)。
【0182】
カイ二乗検定を使用して、実験集団及び市販集団の両方のハーディ−ワインベルグ平衡からの逸脱について、各多型の遺伝子型頻度を検査した。市販群の種々の選抜系間の多型の対立遺伝子頻度の差異についても、SAS(SAS Institute社製、ノースカロライナ州Cary、1999)のカテゴリーモデル手順を使用してカイ二乗分析で試験した。次いで、シングルマーカー連関を実施して、各マーカーの異なるマーカー遺伝子型の関係を、血清レプチン濃度、成長速度、体重、飼料摂取量、飼料効率及び超音波特性について評価した。データは、SAS(SAS Institute社製、ノースカロライナ州Cary、1999)のPROC MIXEDを使用して分析した。使用した統計モデルとしては、SNP遺伝子型の固定効果、試験群(1及び2)、動物の性別(雄ウシ及び去勢ウシ)及び動物の追加の変量効果がある。動物は、背景遺伝子を明らかにするために変量効果とした。供試動物の開始体重、種雌の年齢又は供試動物の年齢をモデルに線形共変動として含めた。屠体データを分析するのに使用したモデルは、生きている動物のデータのモデルと同様であったが、去勢ウシのみを屠殺に出したので、性別の固定効果は除外した。異なる多型と屠体品質等級との間の連関は、SAS(SAS Institute社製、ノースカロライナ州Cary、1999)のカテゴリーモデル手順を使用してカイ二乗分析で試験した。
【0183】
異なるSNP遺伝子型を有する動物間で有意に異なる(P<0.10)特性について、追加の遺伝効果を推定した。2つのホモ接合体の遺伝子型の特性効果の推定値の解を引くことによって、有意な追加の遺伝(a)効果を計算した。本発明者らはまた、優性偏差(d)を、TT遺伝子型値とCC遺伝子型値との間の中間点からのCT遺伝子型値の偏差として推定した。
【実施例3】
【0184】
遺伝子型及び対立遺伝子頻度
表2及び3は、それぞれ実験集団及び市販集団の異なる多型についてのハーディ−ワインベルグ平衡の遺伝子型頻度及びカイ二乗検定を示す。遺伝子型を観察すると、UASMS1の遺伝子型CC、CT又はTTを有する動物はすべて、それぞれUASMS3の遺伝子型CC、CG又はGGも有することを示していた。したがって、その2つの多型は完全な連鎖不平衡にあり、一緒にUASMS1−3として構成した。UASMS1−3のT−G対立遺伝子はそれぞれ実験集団中59%であり、UASMS2のT対立遺伝子は21%であり、EXON2−FBは44%であった。同様に市販集団では、UASMS1−3、UASMS2及びEXON2−FBのT−G又はT対立遺伝子の頻度はそれぞれ、48%、20%及び53%であった。観察した遺伝子型と予想した遺伝子型との間のカイ二乗分析により、3つの多型すべての遺伝子型すべての頻度は、両方の集団においてハーディ−ワインベルグの割合から有意に偏差していないことが示された(P>0.10)。
【0185】
【表2】

【0186】
【表3】

【0187】
表4は、市販集団の異なる株における異なる多型の頻度を示す。UASMS1−3のT−G対立遺伝子の頻度は市販集団の異なる系間で異なり(P<0.05、χ=9.17)、M1系(Angus)は、TX(Charolais)(P<0.004、χ=8.10)、M2(Hereford)(P<0.10、χ=2.86)、M3(種々の小品種)(P<0.02 χ=5.48)及びM4(Gelbvieh及びLimousin)(P<0.04、χ=4.10)と比較して低かった。
【0188】
【表4】

【0189】
UASMS2のT対立遺伝子の頻度は選抜系間で異なり(P<0.05、χ=5.71)、M1は、M2(P<0.05、χ=4.19)、M3(P<0.10、χ=2.71)及びTX(P<0.05、χ=3.79)と比較して高かった。その他の株のUASMS2の対立遺伝子頻度の差異は有意ではなかった(P>0.10)。市販集団の選抜系間にはEXON2−FBの対立遺伝子頻度に差異があった(P<0.041、χ=9.93)。Angusの選抜系(M1)は、Gelbvieh及びLimousinの系(M4)(χ=5.41、P<0.05)及びCharolais(TX)(χ=P<0.01)と比較してEXON2−FBのT対立遺伝子の頻度が高く、種々の小品種の系(M3)(χ=3.82、P<0.10)よりも高い傾向があるが、Hereford(M2)(P>0.10)よりは高くない。EXON2−FBの対立遺伝子頻度は、市販集団のその他の選抜系間で異なっていなかった(P>0.10)。
【実施例4】
【0190】
UASMS1−3の種々の表現型特性との連関
表5は、実験集団の血清レプチン濃度、生産、飼料効率及び摂食行動の測定値に対するUASMS1−3の異なる遺伝子型の効果を示す。代謝体重は、遺伝子型TT−GGの動物の方がCC−CCよりも高かった(P<0.01)(追加作用、α=−5.35±1.65kg.75)。平均増体重は、遺伝子型TT−GGを有する動物の方が遺伝子型CC−CCを有する動物よりも高い傾向があった(P<0.10)(追加作用、α=−0.12±0.04kg d−1)。乾物摂取量は有意に高く(追加作用、α=−0.88±0.24kg d−1)(P=0.001)、代謝体重当たりの代謝可能エネルギーは、UASMS1−3の異なる遺伝子型を有する動物間で異なる傾向があった(P<0.10)[追加作用、α=−49.06±23.60KJ(kg.75d)−1]。しかし、血清レプチン濃度、飼料要求率、飼料摂取残量及び成長の部分効率は、UASMS1−3の遺伝子型とはいかなる有意な連関も示さなかった(P>0.10)。摂食行動特性では、UASMS1−3の異なる遺伝子型を有する動物間で摂食継続時間は異なっていた(P=0.04)(追加作用、α=−7.66±2.58分 d−1)。他方、摂食頻度は、遺伝子型TT−GGを有する動物の方がCC−CCの動物よりも低い傾向があった(P<0.10)(追加作用、α=3.32±1.07事象 d−1)。
【0191】
【表5】

【0192】
表6は、異なるUASMS1−3遺伝子型を有する動物の体重測定値、超音波測定値及び屠体測定値を示す。平均体重(追加作用、α=−29.73±10.49kg)、最終生体重(追加作用、α=−33.39±11.80)(P<0.01)、屠殺時重量(追加作用、α=37.07±13.79kg)及び屠体重(追加作用、α=−18.49±8.59kg)(P=0.01)は、UASMS1−3のTT−GG遺伝子型を有する動物の方がCC−CC遺伝子型を有する動物よりも高かった。遺伝子型TT−GGを有する動物の方がCC−CCを有する動物よりも高かった最終超音波測定背脂肪厚を除き(P<0.05)、異なる超音波測定値について遺伝子型間に差異はなかった(P>0.10)。さらに、屠体の脂肪厚度、背脂肪厚、最長筋領域、脂肪交雑スコア及び赤身肉の歩留まりは、異なるUASMS1−3遺伝子型間で差異はなかった。UASMS1−3の遺伝子型間の屠体等級(A、AA、AAA)のカテゴリーデータを分析すると、品質等級と遺伝子型との間に有意な連関は示されなかった(χ=1.37、P=0.50)(表11)。
【0193】
【表6】

【実施例5】
【0194】
UASMS2の種々の表現型特性との連関
血清レプチン濃度、生産、飼料効率及び超音波及び屠体価値の測定値に対するUASMS2の異なる遺伝子型の作用を表7及び8に表す。UASMS2のT対立遺伝子は血清レプチン濃度と高度に有意に連関しており(P<0.0001)、遺伝子型TTを有する動物の方がCCを有する動物よりも高かった(追加作用、α=−11.79±2.76ng ml−1)。血清レプチンも、CT動物の方がCC動物よりも高かった(P=0.04)(優性偏差、d=−3.38±1.81 ng ml−1)。代謝体重は遺伝子型間で異なり(P<0.05)、遺伝子型TTを有する動物の方がCCを有する動物よりも高かった(追加作用、α=−6.01±2.50kg.75)。平均増体重は遺伝子型間で有意に異なり(P<0.01)、遺伝子型TTを有する動物の方が遺伝子型CCを有する動物よりも高かった(追加作用、α=−0.15±0.04kg d−1).
【0195】
【表7】

【0196】
【表8】

【0197】
乾物摂取量はUASMS2の遺伝子型間で有意に異なり(P=0.001)、TTを有する動物はCCと比較して(追加作用、α=−0.45±0.19kg d−1)、CTを有する動物はCCと比較して(優性効果、d=−0.69±0.26kg d−1)高かった。代謝体重当たりの代謝可能エネルギーもUASMS2の遺伝子型間で異なり(P=0.04)、CTの方がTT又はCCと比較して高かった(優性偏差、d=−56.11±25.24KJ(kg.75 d)−1 UASMS2。この調査で観察したT対立遺伝子を有する動物のより高いDM摂取量は驚くべきものであった。なぜなら、体脂肪がより高く、血清レプチンが有意により高い動物は飼料消費が低下していると一般的に予想されるからである。この結果は、比較用に入手できる遺伝子型TTを有する動物が非常にわずかしかいないという事実によるものといえよう(TT動物の特性値と連関した標準誤差が高いことから分かる通り)。しかし、この結果はまた、飼料摂取量がヘテロ接合体動物において、より高いことを示しており、UASMS2のT対立遺伝子が増大した飼料摂取量と実際に連関していることを示している。
【0198】
乳用ウシからの最近のデータ(Liefers et al.、2003)は、乾物摂取量のより高いウシは有意に重く、血清レプチン濃度が有意に高いことを示している。さらに、これらの著者らはまた、負のエネルギーバランスを有するウシ(低体重及び低体調と強く連関している)が正のエネルギーバランスのウシと比較して血清レプチン濃度が有意に低いことを示した。現在のデータでは、血清レプチン濃度は飼料摂取量(r=0.26)及び体重(r=0.25)と正に連関しており、したがってLiefers et al.(2003)の知見を確認している。マウスにおいて、血清レプチンがより高い明らかに肥満のマウスは、より多く食べ続けたことが観察されている(Houseknecht et al.、1998)。文献の証拠によれば、レプチンの抑制フィードバック効果に対する応答は、よりやせた動物の方が感受性があり、脂肪蓄積が大きい動物(他の種の肥満を連想させる、より高い体脂肪量を一般に有するウシ)は、後者の群のレプチンの循環濃度が高いにもかかわらず、感受性が大きく減少することを示している(Houseknecht et al.、1998)。おそらく、この調査の知見は、ウシにおけるレプチン抵抗性の基礎を形成しているであろう。ある肥満個体におけるレプチン抵抗性の現象はまだ明確に理解されていないが、一部のレプチン受容体形態がレプチン抵抗性の発生に関わっているであろうことは示唆されている(Houseknecht et al.、1998)。
【0199】
平均背脂肪厚(追加作用、α=−2.29±0.50mm);最終背脂肪厚(追加作用、α=−4.31±0.95mm);及び超音波測定背脂肪厚は、UASMS2のT対立遺伝子を有する動物の方がC対立遺伝子を有する動物よりも有意に高かった(P<0.001)。同様に、UASMS2のT対立遺伝子は、C対立遺伝子と比較して、より高い(P<0.01)平均超音波測定脂肪交雑スコア(追加作用、α=−0.61±0.21)及び最終脂肪交雑スコア(追加作用、α=−0.89±0.25、P<0.01)と有意に連関していた。これらの結果は当然である。なぜなら、このデータセットにおける超音波測定脂肪交雑と背脂肪厚との間の相関も高かったからである(r=0.54)(データ示さず)。線形回帰予測により動物の一定体重を500kgとすると、UASMS2のTT遺伝子型を有する動物はCC遺伝子型を有する動物と比較して、有意により高い超音波測定背脂肪厚(P<0.001)及び脂肪交雑スコア(P<0.01)を有していた。UASMS2のT対立遺伝子を有する動物の体脂肪の有意な増大は、最終(追加作用、α=5.60±2.50cm)及び平均(追加作用、α=4.03±1.58cm)最長筋胸郭領域のわずかな減少と連関していた。屠体重及び体脂肪の測定値は、C対立遺伝子と比較してT対立遺伝子を有する動物では一般により高い。しかし、比較用の屠体データを有するTT遺伝子型の動物はわずかのみであり、したがって、これらの屠体特性におけるUASMS2の遺伝子型間に統計的な差異はなかった。赤身肉の歩留まり及び最長筋領域の屠体測定値については、その反対のことがいえる。UASMS2の遺伝子型間の屠体等級(A、AA及びAAA)のカテゴリーデータ分析は、品質等級と遺伝子型との間に有意な連関を示さなかった(χ=1.14、P=0.56)(表11)。
【0200】
飼料摂取残量はUASMS2遺伝子型間で異なる傾向があり(P<0.10)、CTの方がホモ接合体よりも低かった(優性効果、d=0.42±0.21kg d−1)。飼料要求率及び成長の部分効率は、UASMS2の遺伝子型間で差異はなかった(P>0.30)。このデータはまた、異なるUASMS2遺伝子型を有する動物間で最終重量、平均体重、屠殺時重量及び屠体重に統計的有意性を示さなかった(明らかに、比較用に入手可能な、遺伝子型平均の高い標準誤差と連関したTT動物が非常に少ないため)。しかし、T対立遺伝子はより高い体重と一般に連関しており、TT動物とCC動物との間の差異は、平均体重、最終重量及び屠殺時重量でそれぞれ30.34kg、42.02kg及び36.37kgである。摂食継続時間(優性効果、d=5.07±2.61分 d−1)及び摂食頭下げ時間(優性効果、d=5.12±2.51分 d−1)は遺伝子型間で異なり、UASMS2のヘテロ接合体の方がホモ接合体よりも高い(P<0.05)。摂食頻度はUASMS2の遺伝子型間で異なる傾向があり(P<0.10)、CC動物の方がTT動物よりも高い(追加作用、α=4.47±2.86事象 d−1)。
【実施例6】
【0201】
EXON2−FBの種々の表現型特性との連関
血清レプチン濃度、生産、飼料効率、摂食行動及び超音波及び屠体価値の測定値に対するEXON2−FBの異なる遺伝子型の作用を表9及び10に表す。代謝中間重量は、遺伝子型TTを有する動物の方がCCよりも低かった(P<0.05)(追加作用、α=4.16±1.61kg.75)。平均増体重は遺伝子型間で異なる傾向があり(P<0.10)、TT動物はCC動物と比較して低かった(追加作用、α=0.12±0.05kg d−1)。平均背脂肪厚(追加作用、α=−0.56±0.19mm)及び最終超音波測定背脂肪厚(追加作用、α=−1.07±0.17mm)は、遺伝子型CCを有する動物の方がTTよりも低かった(P<0.05)(Buchanan et al.、2002)。摂食継続時間は、EXON2−FBの遺伝子型間で異なる傾向があり(P=0.08)、CC動物の方がCT動物よりも高かった(優性偏差、α=−2.71±1.63事象 d−1)。摂食頻度は、EXON2−FBの遺伝子型間で異なり(P=0.01)、TT動物の方がCT動物(優性偏差、α=−2.66±1.11事象 d−1)又はCC動物(追加作用、α=−3.30±1.51事象 d−1)よりも高かった。
【0202】
【表9】

【0203】
【表10】

【0204】
最終体重(追加作用、α=30.32±9.9kg)及び屠体重(追加作用、α=19.82±5.78kg)、P=0.01)は、EXON2−FBのTT動物の方がCC動物と比較して低かった(P<0.05)。EXON2−FBと、調査したその他の特性との間に有意な連関は検出されなかった。EXON2−FBのTT動物はCC動物と比較して屠体脂肪の測定値は一般に高く、屠体赤身肉の歩留まり及び最長筋領域の測定値は低いが、統計的有意性は検出されなかった。EXON2−FBの遺伝子型間の屠体等級(A、AA及びAAA)をカイ二乗分析すると、品質等級と遺伝子型との間に有意な連関は示されなかった(χ=0.95、P=0.62)(表11)。
【0205】
ウシレプチンプロモーターの3つの多型は、成長速度、体重、飼料摂取量、摂食行動及び超音波測定価値と連関している。屠体脂肪に多少の差異が検出されたが、統計的には有意でなく、それは、おそらく一部の代謝調査のために飼料摂取残量に基づいて一部の極端な動物を排除したためである(RFIと背脂肪との間の相関は、約r=0.25である)。さらに、マーカーの1つ、UASMS2はウシの血清レプチンレベルと連関している。このSNPの頻度は、調査したウシの実験集団及び5つの市販系の両方において非常に低かった。
【0206】
【表11】

【0207】
【表12】

【実施例7】
【0208】
(肉牛における、複数のレプチン遺伝子SNPと、屠体特性及び肉質特性との連関)
5つのSNP(UASMS1、UASMS2、UASMS3、E2JW、及びE2FB)に関して、1111頭の交雑種雄ウシ、若雌ウシ、及び去勢ウシの遺伝子型決定を行った。測定特性には、部分的肋骨解剖による脂肪、赤身、及び骨の歩留まり(%)、脂肪厚度、最長筋(LM)領域、温屠体重量、品質等級、LM筋肉内脂肪、並びにLM及び半腱様筋の柔らかさ評価が含まれていた。UASMS1及びUASMS3は完全に連結されていたので、4つのSNP(UASMS1、UASMS2、E2JW、及びE2FB)のみを分析した。一変量混合遺伝動物モデルを用いて、SNP遺伝子型又はハプロタイプと、これらの特性との連関を評価した。2つのレプチンエキソン2 SNPが、脂肪及び赤身の歩留まり、並びに脂肪厚度と連関しており(E2JW、P<0.01;E2FB、P<0.05)、それらは、LMの柔らかさへの影響において相互作用した(P<0.01)。レプチンプロモーターSNPは、いかなる特性とも連関しなかった(UASMS2)か、脂肪の歩留まりとのみ連関した(UASMS1)。3つのハプロタイプ(TCAC、CCAT、TTAC)は、集団内で高頻度に存在し(88%)、すべての特性に同様な影響を有していた。これらの一般的なハプロタイプと比較して、1つのハプロタイプ(CCTT)は、FATYL、GFAT、及びLEANYLへの影響(P<0.01)、1つのハプロタイプ(TTTT)はLMの柔らかさへの影響(P<0.03)に有意な相違を示した。従って、レプチン遺伝子内の一塩基多型と、赤身の歩留まり及び柔らかさとの間に有意な連関が検出された。
【0209】
ウシ:動物は、市販の飼料で育てられた、産業用雄親からの若雌ウシ(165)、去勢ウシ(231)、及び雄ウシ(61)、University of Guelph育種プロジェクトからの若雌ウシ(40)、去勢ウシ(375)、及び雄ウシ(48)、並びにRockwood, Ontarioの飼育場で行われたUniversity of Guelph食餌検査からの去勢ウシ()であった。3箇所のウシ供給源は、それぞれ、商用、Elora、及びRockwoodと特定した。動物は、いくつかの品種によって形成された品種組成を有する交雑種であった。主要な寄与品種は、アンガス(AN)、シャロレー(CH)、リムーザン(LM)、及びシンメタール(Sm)であった。任意の割合で上記の品種を有する動物の品種組成へのこれら4品種の平均寄与率は、AN、CH、LM、及びSMに関してそれぞれ、商用ウシでは0.46、0.50、0.50、及び0.50、Eloraウシでは0.24、0.36、0.38、及び0.41、そして、Rockwoodウシでは0.51、0.53、0.59、及び0.41であった。
【0210】
DNA単離、多型検出、及び遺伝子型決定:E2FB(Buchanan et al., 2002)及びE2JW(Lagonigro et al., (2003)、元々は252−SNPと呼ばれていた)は、ob遺伝子のエキソン2の中に存在した。各SNPの遺伝子型決定は、ABI PRISMS 7700配列検出器(Applied Biosystems社製)における5’ヌクレアーゼ対立遺伝子識別アッセイを用いて行った。手順の詳細は、参照により全体として本明細書に援用するNkrumah ら(2005)によって記載されている。遺伝子型決定された動物のサブセットに由来するDNAを各多型を通して配列決定し、その配列結果を、識別アッセイによって得られた遺伝子型を確認するのに用いた。
【0211】
表現型情報:下記表13に示す通り、死後2(LM2)、7(LM7)、14(LM14)、及び21(LM21)日目おける最長筋、並びに死後7日目(ST7)における半腱様筋の柔らかさ(剪断力)、化学脂肪(CF)、脂肪厚度(GFAT)、品質等級(QG)、最長筋領域(LMA)、赤身肉(LEANYL)、脂肪(FATYL)、及び骨(BONEYL)の歩留まり、並びに温屠体重量(HCW)に関する情報は、1111頭の遺伝子型決定された動物の大部分で利用可能であった。
【0212】
【表13】

【0213】
柔らかさを評価する客観的方法として、Warner-Bratzlerの剪断力測定(kg)を用いた(Shackelford et al., 1999)。剪断力は、調理された肉芯試料で行われる、筋繊維を切り離すのに必要な力(kg)を測定する物理試験である。脂肪厚度は、第12〜第13肋骨間で得られた背脂肪厚の測定値である。最長筋領域は、筋の追跡を用いた、第12〜第13肋骨間における背最長筋領域の測定値である。化学脂肪は、筋肉内脂肪パーセントを測定する肉芯試料の化学分析である。赤身、脂肪、及び骨の歩留まりは、4骨の肋骨切片の解剖によって測定された。品質等級は、カナダにおける等級付けに用いる脂肪交雑等級であり、ほとんどの屠体が3つの等級(A、AA、AAA)の1つに振り分けられる。極めてわずかな屠体しかプライム(Prime)と分類されなかったので、分析ではそれらの動物をAAA屠体に併せた。
【0214】
結果:それぞれ、合計1104、1111、1106、1068、及び1109頭の動物が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、E2FB、及びE2JW SNPに関して利用可能な遺伝子型を有していた。UASMS1及びUASMS3の遺伝子型はほぼ完全に連結していた。UASMS1及びUASMS3に関しては、1104の遺伝子型のうち、相互に一致しなかったのは3つのみであった(すなわち、若干3頭の動物のみで、UASMS1のC及びT対立遺伝子が、それぞれUASMS3のC及びG対立遺伝子と連関しなかった)。従って、UASM3Sは分析から除外し、UASMS1の対立遺伝子頻度及び特性との連関をUASMS3にまで拡張した。対立遺伝子の頻度を測定するのに、すべての動物の遺伝子型を用いた。ob遺伝子のSNPと、屠体特性及び肉質特性との間の連関の研究には、必要な表現型情報を有し、且つ4つのSNP(UASMS1、UASMS2、E2JW、及びE2FB)について利用可能な遺伝子型を有するもののみを用いた。この結果得られた記録数は、LM2の711からCFの920までの範囲であった。表13は、分析された特性の記録数、平均、SD、及び変動係数を示す。
【0215】
統計的分析:すべての分析を、統計ソフトウェアであるSAS(SAS Institute社製)及びASREML(Gilmour et al.)を用いて行った。記述的特徴の定量的特性は、SAS PROC MEANSを用いて取得した。対立遺伝子頻度は、SAS PROC FREQを用いて、カイ二乗分析によって作表及び比較した。
【0216】
第2バッチの試験動物では、遺伝子型の組合せの間における連関を検査した。データを図11〜20に示す。単一マーカーと、試験ウシの特性との連関を図21に要約する。
【実施例8】
【0217】
(遺伝子型分析)
遺伝子型と、特性との連関は、ASREMLを用いた遺伝子解析によって、混合遺伝モデル(SNP遺伝子型プラス多因子効果)に適合させて評価した。このモデルには、固定効果としてSNP遺伝子型が含まれていた。すなわち、
Yijklm =u + Σ4(j=1)Geni(j) + Sexk + Slgl + β1AN + β2LM + β3CH + β4SM + Polm+ eijklm (1)
式中:Yijklmは、第m動物、第k性別、第l屠殺群で測定された特性であり、uはその特性の全体的平均であり、Geni(j)は、レプチン遺伝子における、第j SNP(UASMS1、UASMS2、E2JW、及びE2FB)の第i遺伝子型であり、Sexkは、第k性別(雄ウシ、若雌ウシ、及び去勢ウシ)の固定効果であり、Slglは、第l屠殺群の固定効果(94レベル)であり、β1、β2、β3、β4は、それぞれAN、CH、LM、及びSMの品種組成の回帰係数であり、Polmは、第m動物のランダムな追加的遺伝(多因子)効果であり、Eijklmは、第m動物に連関した残留ランダム効果である。
【0218】
Fernandoら(1998)に従い、遺伝子型が既知であったので、モデル(1)に関するHenderson (1984)の混合モデル方程式を分析に用いた。多因子効果の共分散をモデル化するために、一般的な系統に基づいた相加関係マトリックスを用いた。125頭の雄親から生じた動物及びすべての雄親は既知であった。雌親に関しては、動物の43%の雌親が同定されていた。父方の半同胞家族の平均サイズは8.9であった。子孫が5頭未満、6〜10頭、及び15頭超のパーセントは、それぞれ、36%、26.4%、27.2%、及び10.4%であった。
【0219】
虐殺群は、供給源(商用又はRockwood)が同一であり、且つ屠殺日が同一である動物、又は同じ検査及び食餌処置から得られ、且つ同じ季節(12月〜2月、3月〜5月、6月〜8月、及び9月〜11月)に屠殺されたElora由来の動物と定義した。
【0220】
複数の死後期間を通したLM剪断力の反復測定値を、各期間内で個別に、複数の期間を通した平均剪断力(LMAVG)として、そして、死後日数に関する、剪断力測定値の個々の線形回帰の切片及び傾斜として分析した。モデル(1)を適用し、カイ二乗分析(PROC FREQ)によって、品質等級への、レプチン遺伝子の4つのSNPの影響を分析し、ASREMLを用いて線形特性を分析した。この場合、1、2、及び3のスコアをそれぞれ品質等級A、AA、及びAAAに割り当てた。
【0221】
第一種の過誤の確率値を妥当なものに保つため、2つのレベルの検定を行った。結果の初期評価には、P<0.05(α)の総合値を用いた。結果のより詳細な審査には、改変ボンフェローニ補正を用いて(a/√n, Mantel, 1980)、試験回数を考慮した。nの値は、タイプに応じた分類と併せた、SNPごとのアプローチを用いて測定した(Ye, 2003)。特性は、以下の通り2つの群に分類した。すなわち、屠体生産特性(LEANYL、FATYL、BONEYL、GFAT、LMA、及びHCW)及び肉質特性(CF、QG、LM、LM、LM、LM、LMAVG、及びST)である。4つのSNPが存在したので、屠体特性及び肉質特性のnは、それぞれ、24(4×6)及び32(4×8)であり、対応する改変ボンフェローニ修正の有意水準は0.010及び0.009であった。
【0222】
最初、SNP間の2元相互作用をモデルに適合させたが、有意な相互作用は、E2JW及びE2FB SNP間で、LMの剪断力に関して存在するのみであった。相互作用は、他のすべての特性でモデルから脱落した。LM剪断力に関しては、E2JW及びE2FBの共同遺伝子型効果がモデルに含まれた。
【0223】
分散をデータから推算し、推定及び検定の目的では既知なものと見なした。推定された固定効果を説明する自由の過誤の度合いを使用し、但しデータ分散を無視して、ASREMLによるワルドF統計結果と連関した確率を得た。しかし、すべての特性の記録数が比較的大きいものであったので、これは問題とはならないはずであり、分散は、REMLによるデータの平行移動不変関数によって推算した(Henderson, 1984)。
【実施例9】
【0224】
(ハプロタイプ分析)
遺伝子型効果をハプロタイプ確率の回帰で置換するモデル(1)を適用し、ASREMLを用いた遺伝子解析によって、レプチン遺伝子中のSNPのハプロタイプと、屠体特性及び肉質特性との連関を評価した。ハプロタイプ確率は、アルゴリズムとソフトウェア(HAPROB)を用いて再構築した(Boettcher et al., (2004))。このソフトウェアは、すべての同胞の遺伝子型は既知であるが、すべての両親の遺伝子型は未知であるものとして、半同胞家族のメンバーにおけるハプロタイプの組合せの確率を推算した。HAPROBソフトウェアによる半同胞ハプロタイプの再構成は、精度がかなり高い。例えば、3つの対立遺伝子を有する3箇所の遺伝子座を考慮した場合、子孫が2〜10頭のサイズの半同胞家族を出自とする個体のハプロタイプの再構成の精度は、64%から94%まで変動する(Boettcher et al., 2004)。表14は、可能な16のハプロタイプと、対応するそれらの確率とを示す。
【0225】
【表14】

【0226】
最も頻度の高い3つのハプロタイプは、合計で0.88の確率を有していた。従って、多数の希少ハプロタイプが存在し、それらの一部は、最も確率の低いハプロタイプを含有する1群にまとめられ、これはハプロタイプ10と呼ばれた。
【実施例10】
【0227】
(対立遺伝子頻度)
品種(所与の品種に関して≧5/8の品種組成を有する動物)間における対立遺伝子頻度の相違に関するカイ二乗検定は、表15に示す通り、レプチン遺伝子中のいかなるSNPに関しても有意でなかった。
【0228】
【表15】

【0229】
しかし、UASMS1では、シンメタールが、他の品種よりC対立遺伝子の頻度が低い傾向を有し(P=0.11)、E2FBでは、アンガスが、他の品種よりC対立遺伝子の頻度が低い傾向を有する(P=0.15)。
【0230】
UASMS1及びE2FBでは、T対立遺伝子の方がC対立遺伝子より支配的であった(それぞれ57.6%対42.4%、及び61.1%対38.9%)が、UASMS2では、TよりC対立遺伝子の方がはるかに一般的であった(73.8%対26.1%)。E2JW SNPは、集団内で最も大きい対立遺伝子頻度の相違を示した。このSNPでは、A対立遺伝子と比較して、T対立遺伝子は希少であった(4.0%対96.0%)。
【0231】
すべてのSNPの中で、遺伝子型頻度は、ハーディ−ヴァインベルク平衡(Falconer and Mackay, 1996)に一致していた(平衡からの偏差に関するカイ二乗検定の確率は、UASMS1、UASMS2、E2JW、及びE2FBについてそれぞれ、0.745、0.169、0.975、及び0.995と等しかった)。
【0232】
2つのSNPを併せて考えた場合の遺伝子型頻度の平衡を、予測された遺伝子型頻度及び観測された遺伝子型頻度のカイ二乗検定によって検定した(Falconer and Mackay, 1996)。その遺伝子型が共に平衡状態にあった若干2つのみのSNPが、UASMS1及びE2JWであった。対ごとに検定した他のすべてが有意な不均衡を示した(P<0.01)。
【実施例11】
【0233】
(遺伝子型分析)
表16に示す通り、遺伝子型は、LMA、BONEYL、CF、HCW、ST7、及びQGに有意な影響を与えなかった。
【0234】
【表16】

【0235】
E2JW及びE2FBの遺伝子型は、LEANYL、FATYL、及びGFATに有意な影響を与えたが、UASMS1(或いはUASMS3)の遺伝子型は、FATYLに有意な影響を与えた。死後の特定の日それぞれにおけるLM剪断力、及びそれらの死後の日々を通した平均剪断力としてのLM剪断力の分析は、E2JW.E2FB遺伝子型の有意な影響を示した(E2FBによるE2JWとの相互作用は有意であった(表16))。
【0236】
表17は、LEANYL、FATYL、及びGFATに関する、UASMS1、E2JW、及びE2FB遺伝子型、並びに対応するワルドF検定の有意水準を有する品種の最小二乗平均を示す。
【0237】
【表17】

【0238】
同表は、これらの特性の推定多因子遺伝率も示す。FATYL、LEANYL、及びGFATの遺伝率は中程度から高率であった(それぞれ0.62、0.52、及び0.45)。これらは、諸文献からの予測値と一致している(Mrode et al., 1990; Burrow et al., 2001; Utrera et al., 2004)。
【0239】
E2JWでは、遺伝子型TTを有した動物は2頭のみであり、それらは分析から除外した。従って、遺伝子型AA及びATの解のみが得られた。T対立遺伝子は、A対立遺伝子と比較して、より少ないFATYL及びGFAT、並びにより多くのLEANYLと連関していた。ヘテロ接合体遺伝子型とホモ接合体遺伝子型との間の推定された相違は、FATYL、GFAT、及びLEANYLについてそれぞれ、−1.5%、−1.2mm、及び1.9%であった(すべての相違に関してP<0.05)。これらはそれぞれ、対応する特性の0.29、0.36、及び0.38表現型SDに相当する。
【0240】
E2FBでは、C遺伝子座は、T遺伝子座と比較して、より少ないFATYL及びGFAT、並びにより多くのLEANYLと連関していた。ホモ接合体遺伝子型であるCCとTTとの間の推定された相違は、FATYL、GFAT、及びLEANYLについてそれぞれ、−1.9%、−1.0mm、及び2.3%であった(P=0.09、P=0.19、及びP=0.05)。しかし、ヘテロ接合体遺伝子型は、ホモ接合体TT遺伝子型と同様なFATYL、LEANYL、及びGFATを有していた。これは、T対立遺伝子がC対立遺伝子より、大幅に支配的であることを示す。CC遺伝子型及びヘテロ接合体遺伝子型の相違はすべて有意であり(P<0.05)、それぞれ、対応する特性の0.43、0.44、及び0.40表現型SDに相当する。
【0241】
UASMS1では、C対立遺伝子は、T対立遺伝子より少ないFATYLと連関しており、ホモ接合体遺伝子型であるCC及びTTの推定された相違は、−1.5%に等しかった(P<0.05)。ヘテロ接合体遺伝子型は、ホモ接合体であるCC遺伝子型と同様なFATYLを有していた。これは、C対立遺伝子がT対立遺伝子より大幅に支配的であったことを示す。C対立遺伝子は、Tと比較して、より少ないGFAT及びより多くのLEANYLと連関しているかもしれないという傾向があった(P<0.15)。ホモ接合体遺伝子型であるCC及びTTの推定された相違は、GFAT及びLEANYLについてそれぞれ−0.6mm及び1.4%であった。
【0242】
複数の試験の改変ボンフェローニ補正を考慮すると、E2JWの遺伝子型間の相違も有意であった。これは、E2FB及びUASMSの場合には妥当しない。このことは、E2JW遺伝子型と、FATYL、GFAT、及びLEANYLとの連関の証拠が、E2FB及びUASMSのものより強いことを示す。
【0243】
表17は、品種が、FATYL、GFAT、及びLEANYLに有意な影響を有することを示す。アンガスは、最も脂肪が多く、LEANYLが最も少ない品種である。シンメタールは、FATYL及びGFATが最も低く、リムーザン及びシャロレーがこれに続く。しかし、リムーザンが最も高いLEANYLを示した。FATYL、GFAT、及びLEANYLへの性別の有意な影響はなかった(表17)。これはおそらく、この影響が、屠殺群と部分的に混同しているためである。屠殺群は極めて顕著な影響を有した。
死後のそれぞれの特定の日におけるLM剪断力の分析は、共同E2JW.E2FB遺伝子型が、柔らかさに有意な影響を有したことを示した。表18は、E2JW.E2FB遺伝子型の最小二乗平均を、対応するワルドF検定有意水準と共に示す。
【0244】
【表18】

【0245】
遺伝子型AT.TTは、より硬いLMと有意に連関していた。遺伝子型AT.TTとAT.CTとの間の剪断力の相違は実質的であった(LM2、LM7、LM14、及びLM21は、それぞれ1.98kg、1.12kg、1.05kg、及び0.69kg)。遺伝子型AT.CCの推定値は、この遺伝子型を有する動物が1頭しかいなかったので取得しなかった。遺伝子型AA.TTとAA.CTとの間の剪断力の相違は、より小さいものであり、大部分は有意でなかった。AT.TT対AT.CT遺伝子型及びAA.TT対AA.CT遺伝子型の相違の規模は、E2JW SNPとE2FB SNPとの間の相互作用を例証するものであり、より大きな相違がE2JW SNP遺伝子型に存在する。遺伝子型AA.CT及びAA.CCの推定値は有意に相違していなかった。表18も、推定された多因子遺伝を示し、それらは、LM7及びLM21のものが、他の死後日数のものより低かった。
【実施例12】
【0246】
(柔らかさへのSNP遺伝子型の影響)
死後4回の測定を通した平均剪断力(LMAVG)の結果を表19に示す。
【0247】
【表19】

【0248】
遺伝子型の最小二乗平均に加えて、品種の平均も示されている。E2JW.E2FB遺伝子型の結果は、様々な死後日数のものの中で見出されたものと一致しており、死後期間全体にわたって、遺伝子型AT.TTが、平均して最も硬いLMを有していた。
【0249】
各動物における剪断力の反復測定の、死後日数への線形回帰を推定し、モデル(1)によって、個々の切片(LMIN)及び傾斜(LMSL)を分析した。表19に示した結果は、E2JW.E2FB遺伝子型の、切片への影響は有意であるが、傾斜への影響は有意でないことを示している。これは、E2JW.E2FB遺伝子型が、牛肉軟化作用への熟成の効果に影響を与えなかったことを示す。熟成期間に対するLMの柔らかさの傾斜及び切片の遺伝率(表19)は、切片は中程度に遺伝性であり、一方、傾斜は低遺伝率を有することを示している。柔らかさへの品種効果も表19に示されており、シンメタールが最も硬いLMを有することを示している。屠殺群は、柔らかさに顕著な影響を有し、性別効果は有意でなかった。
【0250】
E2FB、E2JW、及びUASMSの推定対立遺伝子頻度又は等対立遺伝子頻度(P=q=0.05)を仮定し、対立遺伝子の推定追加効果(a=1/2ホモ接合体遺伝子型1−1/2ホモ接合体遺伝子型2)及び優性偏差効果(d=ヘテロ接合体遺伝子型−[1/2ホモ接合体遺伝子型1+1/2ホモ接合体遺伝子型2])を使用して、各多型によって説明される表現型変異の割合を、標準式((Falconer and Mackay, 1996):%V = 100* (2pq [a + d(q-p)]2 + [2pqd]2)/σ2p)を用いて計算した。式中、%Vは、多型によって説明される表現型変異の割合であり、σ2pは、特性の表現型分散である。E2JWでは、TT遺伝子型効果が推定されなかったので、T対立遺伝子はC対立遺伝子に対する完全な優勢を示すか、或いはT対立遺伝子は追加効果のみを有すると想定した。
【0251】
等対立遺伝子頻度を仮定した場合、E2FBは、それぞれ、FATYL、GFAT、LEANYL、及びLMAVGの表現型分散の3.2%、3.3%、3.2%、及び23.2%を説明した(表20)。
【0252】
【表20】

【0253】
同様に、T対立遺伝子の追加効果又は完全優勢効果を想定した場合、E2JWは、4.3%、6.3%、6.4%及び21.8%、並びに1.6%、2.4%、2.4%、及び8.2%を説明した。UASMS1は、FATYLの表現型分散の2.8%を説明した。表20に示す通り、T対立遺伝子は集団内で希少であるので、観測された対立遺伝子頻度を計算に用いた場合、E2JWによって説明される表現型変異の割合は、はるかに小さいものであった。FATYL、GFAT、LEANYL、及びLMAVGの多因子遺伝率は約50%(42%〜62%)であったので、各SNPによって説明される総遺伝分散の割合は、表現型分散に対して約2倍であろう。
【実施例13】
【0254】
(ハプロタイプ分析)
10種のハプロタイプの線形効果を推定した。ウシ集団には、3つの高頻度ハプロタイプ(全ハプロタイプの88%)が存在し、それらの影響は、対立遺伝子に関してはE27W以外全てのSNPが相違していたのにもかかわらず、分析されたいかなる特性に関しても相違しなかった。これは、これら4つのSNPに連結した別のSNPの影響、又は同一染色体内のSNP間にあるなんらかの程度のエピスタシスを示しているのかもしれない。3つの一般的なハプロタイプの平均効果を対照として用い、他のすべてのハプロタイプをこの平均に対比させた。
【0255】
所与のSNPの対立遺伝子1つのみが相違しているハプロタイプソリューション(haplotype solution)の線形対比を介して、各SNP内の対立遺伝子効果の相違を得た。ハプロタイプ10は、いくつかの希少ハプロタイプの連合効果を含んでいたので、これらの対比には用いなかった。
【0256】
ハプロタイプは、遺伝子型分析と一致して、最も頻度の高いハプロタイプと有意に相違しておらず、LMA、BONEYL、CF、HCW、ST7、及びQGのSNP内の対立遺伝子に関して、有意な相違を示さなかった(データは示されていない)。FATYL、GFAT、及びLEANYLでは、表21に示す通り、ハプロタイプ7(CCTT)の影響が、集団内で最も頻度の高い3つのハプロタイプと有意に相違していた。
【0257】
【表21】

【0258】
最も頻度の高い3つのハプロタイプをハプロタイプ7で置換すると、有意に、FATYL及びGFATがそれぞれ−2.26%及び−1.84mm減少し、LEANYLが+2.42%増大するであろう。これらはそれぞれ、対応する特性の0.44、0.55、及び0.48表現型SDに相当する。
【0259】
表21は、各SNP内における対立遺伝子座効果の相違の推定値も示す。遺伝子型分析と一致して、E2JWのT対立遺伝子は、A対立遺伝子と比較して、FATYL及びGFATを低下させ、LEANYLを増大させた。E2FBに関して、結果は遺伝子型分析に一致し、C対立遺伝子は、T対立遺伝子と比較して、FATYL及びGFATを低下させ、LEANYLを増大させた。
【0260】
FATYL、GFAT、及びLEANYLへの、UASMSの対立遺伝子効果の相違はすべて有意でなかった。それにもかかわらず、遺伝子型分析は、UASMS1遺伝子型がFATYLに有意に影響を与えたことを示した。しかし、ハプロタイプ効果相互の対比は、遺伝子座の追加線形効果のみを推定している。
【0261】
死後2及び14日目における最長筋剪断力、並びに死後21日間を通した平均剪断力に関しては、表22に示す通り、ハプロタイプ8(TTTT)の影響が、集団内で最も頻度の高い3つのハプロタイプと有意に相違していた。
【0262】
【表22】

【0263】
最も頻度の高い3つのハプロタイプをハプロタイプ8で置換すると、LM2、LM14、及びLMAVGが、それぞれ有意に1.06kg、0.58kg、及び0.55kg増大し、これらは、対応する測定値の0.62、0.46、及び0.53表現型SDに相当する。
【0264】
表22は、各SNP内における対立遺伝子効果の相違の推定値も示す。遺伝子型分析と一致して、E2JWのT対立遺伝子は、A対立遺伝子と比較して硬さを増大させた。E2FBの対立遺伝子間には、有意な相違がなかった。遺伝子型分析は、E2JW SNPと、E2FB SNPとの間の有意な相互作用を示したが、これは、ハプロタイプ効果相互の対比によって対立遺伝子効果を推定した場合には説明されないものである。他の2つのSNPに関しては、対立遺伝子の相違も有意でなかった。
【0265】
個々の剪断力測定値の、死後日数への回帰における切片及び傾斜によって、切片への、ハプロタイプ8(TTTT)の影響が、最も頻度の高いハプロタイプの影響と有意に相違していること(0.96kg±0.39kg)、及びE2JWの対立遺伝子TとAとの間には、有意な相違がある(0.57kg±0.30kg)が、他のSNPにはないことが示された。回帰の傾斜へのハプロタイプ効果には、有意な相違がなかった。
【図面の簡単な説明】
【0266】
【図1】「野生型」ウシob遺伝子の5’フランキングプロモーター領域及びエキソン1のヌクレオチド配列を示す図である。この「野生型」配列は、GenBankアクセッション番号AB070368(Taniguchi et al. IUBMB Life Vol 53、p131-135 (2002))を有し、本明細書で配列番号1と称する。
【図2】ウシob遺伝子プロモーターにおけるUASMS1一塩基多型のヌクレオチド配列を示す図である(配列番号2)。この多型配列は、「野生型」ウシob遺伝子配列(配列番号1)のものと、ヌクレオチド位置207がシトシンからチミンに置換されているという点で異なる。
【図3】ウシob遺伝子のUASMS2一塩基多型のヌクレオチド配列を示す図である(配列番号3)。この多型配列は、「野生型」ウシob遺伝子配列(配列番号1)のものと、ヌクレオチド位置528がシトシンからチミンに置換されているという点で異なる。
【図4】ウシob遺伝子のUASMS3一塩基多型のヌクレオチド配列を示す図である(配列番号4)。この多型配列は、「野生型」ウシob遺伝子配列(配列番号1)のものと、ヌクレオチド位置1759がシトシンからグアニンに置換されているという点で異なる。
【図5】「野生型」ウシob遺伝子のエキソン2のヌクレオチド配列を示す図である(配列番号5)。この「野生型」エキソン2配列は、GenBankアクセッション番号AY138588を有する。
【図6】ウシob遺伝子のヌクレオチド配列、EXON2−FB一塩基多型を示す図である(配列番号6)。この多型配列は、「野生型」ウシob遺伝子配列(配列番号5)のものと、ヌクレオチド位置305がシトシンからチミンに置換されているという点で異なる。
【図7】UASMS1 SNPについて動物をどのようにしてスクリーニングすることができるか、またどのようにして遺伝子型情報を使用して、育種すべき動物を選抜し、且つ/又は食糧生産に使用することができるか流れ図を使用して示す図である。
【図8】UASMS2 SNPについて動物をどのようにしてスクリーニングすることができるか、またどのようにして遺伝子型情報を使用して、育種すべき動物を選抜し、且つ/又は食糧生産に使用することができるか流れ図を使用して示す図である。
【図9】UASMS3 SNPについて動物をどのようにしてスクリーニングすることができるか、またどのようにして遺伝子型情報を使用して、育種すべき動物を選抜し、且つ/又は食糧生産に使用することができるか流れ図を使用して示す図である。
【図10】EXON2−FB SNPについて動物をどのようにしてスクリーニングすることができるか、またどのようにして遺伝子型情報を使用して、育種すべき動物を選抜し、且つ/又は食糧生産に使用することができるか流れ図を使用して示す図である。
【図11】試験ウシ集団におけるレプチン遺伝子SNPのマーカー遺伝子型及び記述統計を示す図である。
【図12】単一マーカー遺伝子型効果の推定を示す図である。
【図13】遺伝子型効果のF検定結果を示す図である。
【図14】UASMS2及びEXON2−FB SNPの遺伝子型効果、並びにUASMS2及びEXON2−FBの遺伝子型頻度を示す図である。
【図15】対立遺伝子数の回帰分析を示す図である。
【図16】UASMS1及びUASMS2のハプロタイプ頻度の回帰を示す図である。
【図17】UASMS1及びEXON2−FBのハプロタイプ頻度の回帰を示す図である。
【図18】UASMS2及びEXON2−FBのハプロタイプ頻度の回帰を示す図である。
【図19】UASMS1、UASMS2、及びEXON2−FBのハプロタイプ頻度の回帰を示す図である。
【図20】ハプロタイプ頻度によって回帰された牛肉形質に関する有意な係数の概要を示す図である。
【図21】屠体形質及び生産形質の、レプチン遺伝子座のSNPとの連関を示す図である。
【図22】ウシob遺伝子エキソン2のヌクレオチド配列である配列番号21を示す図である。エキソン2配列のこのE2JW SNPは、GenBankアクセッション番号AY138588を有する。
【図23】どのようにして、EXON2−FB/E2JWのSNPの組合せが得られるように動物をスクリーニングできるか、また、どのようにして、繁殖用及び/又は肉の柔らかさが増大した食物生産に使用するための動物を選択するのに、遺伝子型情報を使用できるかをフローチャートを用いて示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子型に従って動物を部分集団に分ける方法であって、各部分集団の動物がレプチン遺伝子における類似の多型又は多型の組合せを有しており、
(a)レプチン(ob)遺伝子における一塩基多型又は一塩基多型の組合せの存在を判定することにより、部分集団に分けるべき各動物の遺伝子型を決定するステップであって、前記一塩基多型が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB、及びE2JWから成る群から選択されるステップと、
(b)個々の動物を部分集団に分けるステップであって、部分集団中の各動物が、レプチン遺伝子における類似の多型又は多型の組合せを有するステップと
を含む方法。
【請求項2】
動物がウシであり、レプチン遺伝子がウシレプチン遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択され、
(b)レプチン遺伝子のUASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWの一塩基多型の組合せを、動物が有するか否かに応じて、個々の動物を部分集団に分ける、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
レプチンの遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含み、前記SNPの組合せが、肉の柔らかさの増大を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、EXON2−FB/E2JWのマーカーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/EXON2−FB、又はUASMS3/EXON2−FBのマーカーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
レプチン遺伝子の一塩基多型の組合せが、UASMS1/E2JW、又はUASMS3/E2JWのマーカーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
その種の動物の一般的集団と比較して、一定の飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体組成、並びに乳生産量に関する望ましい表現型を有する動物を同定する方法であって、前記動物のレプチン遺伝子における一塩基多型又は一塩基多型の組合せの存在を判定するステップであって、前記一塩基多型が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB、及びE2JWから成る群から選択され、前記一塩基多型の組合せが、UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択され、且つ前記UASMS1、UASMS2、UASMS3、若しくはEXON2−FB一塩基多型のいずれかの存在、又は前記UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、若しくはUASMS3/E2JWの一塩基多型の組合せの存在が、一定の飼料摂取量、成長速度、体重、屠体価値及び屠体組成、肉品質、肉の柔らかさ、並びに乳生産量に関する望ましい表現型を示すステップを含む方法。
【請求項10】
UASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWからなる群から選択されたob遺伝子多型の組合せを検出するための組成物であって、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドプローブを含み、各オリゴヌクレオチドプローブが単一多型を選択的に検出でき、各プローブが検出可能な部分で標識されていてもよい組成物。
【請求項11】
検出可能な部分が、放射標識H、125I、35S、14C、32P、検出可能な酵素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、蛍光色素、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、Cy3、Cy5、Bodipy、Bodipy Far Red、ルシファーイエロー、Bodipy 630/650-X、Bodipy R6G-X、5-CR 6G、比色標識、金コロイド、ジゴキシゲニン−dUTP、及びビオチンから成る群から選択される、請求項10に記載の単離されたオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが固体支持体に固定される、請求項10に記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
ob遺伝子の多型遺伝子座における動物の遺伝子型を決定する方法であって、
a)前記動物からDNA試料を取得するステップと、
b)前記DNA試料を少なくとも2対のオリゴヌクレオチドプライマー対と、前記DNA試料への前記オリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションを可能にするのに適した条件下で接触させるステップと、
c)前記プライマー対を使用して、ob遺伝子の特定の領域を酵素的に増幅し、それにより少なくとも2種の核酸増幅産物を産生するステップと、
d)ステップc)から得られる増幅産物を、検出可能な部分で標識された、ob遺伝子対立遺伝子特異的な標識プローブと、前記増幅産物への前記対立遺伝子特異的な標識プローブのハイブリダイゼーションを可能にするのに適した条件下で接触させるステップと、
e)前記増幅産物にハイブリダイズさせた対立遺伝子特異的な標識プローブの前記検出可能な部分を検出することによって、前記増幅産物の存在を検出するステップと
を含む方法。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、配列番号7及び配列番号8、配列番号11及び配列番号12、配列番号15及び配列番号16、配列番号19及び配列番号20、並びにE2JW多型遺伝子座にまたがる、ob遺伝子の領域の増幅を可能とするプライマーから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドプライマー対が、UASMS1、UASMS2、UASMS3、EXON2−FB、及びE2JWからなる群から選択された少なくとも1箇所の多型ヌクレオチド遺伝子座、又はUASMS1/UASMS2、USAMS1/UASMS3、UASMS2/UASMS3、UASMS1/EXON2−FB、USAMS2/EXON2−FB、UASMS3/EXON2−FB、EXON2−FB/E2JW、UASMS1/E2JW、USAMS2/E2JW、及びUASMS3/E2JWから成る群から選択された前記多型ヌクレオチド遺伝子座の組合せを有する、ウシレプチン遺伝子の領域を増幅できる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
遺伝子型が牛肉の柔らかさの増大を示す、請求項13に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2008−537674(P2008−537674A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558189(P2007−558189)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/007326
【国際公開番号】WO2006/096427
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】