説明

喫煙毒性解毒用組成物

【課題】喫煙毒性解毒用組成物を提供する。
【解決手段】喫煙毒性解毒用組成物であって、ニコチン除去活性及びタール解毒活性を有するトマト全草抽出物、白花蛇舌草抽出物、ナナカマド抽出物、ムラサキ抽出物、及び/又はハンノキ抽出物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙毒性を解毒するための組成物に関し、具体的には、トマト全草抽出物などを用いた喫煙毒性解毒用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、喫煙は全世界の八つの主要死亡原因のうち六つの疾病危険要因として知られており、2003年には喫煙による全体死亡が一年当たり8百万名を超えることが予測されている(非特許文献1)。
【0003】
韓国の喫煙率、特に成人男性の喫煙率は全世界と比較して高い方であって、2005年韓国の成人男性中の喫煙者は52.3%である。これはWHO会員国の中でも資料のある132ヶ国中の13位に該当する数値であり(非特許文献1)、経済協力開発機構(OECD)国家中の最高水準である(非特許文献2)。
【0004】
喫煙が起こす主要疾病としては、肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠状動脈疾患、脳卒中(脳血管疾患)、心臓麻痺、大動脈瘤、循環系疾患(抹消血管疾患など)、咽喉癌、口腔癌などを挙げることができる(非特許文献3)。
【0005】
タバコの煙の中には人体に有害な発癌物質など4000余種の毒性物質が含まれており、これらの中でも有害な主要成分は様々な毒性物質の混合物であるタールとニコチンである。
【0006】
タールには2000余種の毒性物質が含まれており、これらの中でもダイオキシン、ベンゾピレン(benzopyrene)、ジメチルニトロソアミン(dimethylnitrosamine)などの20余種が発癌物質として知られている(非特許文献4)。
【0007】
ニコチンは、肺癌誘発物質であるニトロソアミン−4−(メチルニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(nitrosamine-4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone)の前駆体であって、ニコチン吸入は、急性的には瞳孔縮小、視野混濁、嘔吐、呼吸困難、唾液及び呼吸器官における分泌物の増加、心臓拍動数の減少といった症状などを誘発し、慢性的には動脈硬化、高血圧各種循環系疾患を誘発する(非特許文献5、6及び7)。
【0008】
タールとニコチンによる喫煙の毒性を緩和・解毒させることが可能な物質としては、代表的に緑茶抽出物(非特許文献8及び9)が知られており、ドクダミ、タンポポ、甘草などの混合抽出物(特許文献1)、五味子抽出物、桔梗抽出物などの混合物(特許文献2)などを挙げることができる。
【0009】
本発明は、トマト全草抽出物などを用いてタールとニコチンによる喫煙毒性を緩和・解毒させることが可能な技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録特許第0494223号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第2004−0102690号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Mpower, 2008, WHO report on the global tobacco epidemic, WHO
【非特許文献2】OECD health data, 2006
【非特許文献3】ユンソクジュン等著、2001年、我が国の喫煙による早期死亡の疾病負担、予防医学会誌、第34巻第3号
【非特許文献4】シンドンチョン著、タバコの煙中の有害化学物質、韓国禁煙運動協議会発行、1999年
【非特許文献5】Brunneman, K. D. et al., J. Natl. Cancer Inst. 89: 868-73 (1996)
【非特許文献6】Carmella, S. G. et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 6 : 113-20 (1997)
【非特許文献7】Wynder, E. L. et al., Environ Health Perspect.103 Suppl 8:143-148(1995)
【非特許文献8】Chung. F. L. Proc. Soc. Exp. Viol. Med. 220: 244-248 (1999)
【非特許文献9】Fujiki, H. et al., Mutat. Res. 18: 307-310 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の技術的課題は、喫煙毒性解毒用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のその他の技術的課題は、以下で提示されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、下記の実施例及び実験例から確認されるように、トマト全草、白花蛇舌草、ナナカマド、ムラサキ、及びハンノキの各エタノール水溶液抽出物を製造し、その抽出物のニコチン分解活性及びタール毒性除去活性を考察し、前記抽出物のいずれも上記の活性を有することを確認することができた。ここで、ニコチン分解活性はBarlow等の方法(Barlow R. D, Stone R. B., Clin. Chim. Acta., 165, pp45, 1987)による実験管(in vitro)実験と血中ニコチン濃度の変化を測定した動物実験によって確認した。また、タール毒性の除去活性はBrunnemann等の方法[Brunnemann, K.D. and Hoffiman D., Toxcol, 21, 235(91)]によって確認した。さらに、本発明者は、前記5種の抽出物を全て含む飲料を製造し、その飲料を飲ませて官能評価を実施し、実験参加者の大部分から口臭い、痰、咳及び吐き気が改善されたという回答を得ることができた。
【0015】
本発明は、このような実験結果に基づいて完成したものであって、喫煙毒性解毒用組成物として把握できる。
【0016】
本発明の喫煙毒性解毒用組成物は、トマト全草抽出物、白花蛇舌草抽出物、ナナカマド抽出物、ムラサキ抽出部、及びハンノキ抽出物の少なくとも一つを有効成分として含むことを特徴とする。
【0017】
本明細書において、「喫煙毒性」とは、ニコチン及び/又はタールが起こす毒性を意味する。よって、喫煙毒性はニコチン毒性及び/又はタール毒性と同一の意味として理解できる。
【0018】
また、本明細書において、「有効成分」とは、単独で目的の活性を示し、又はそれ自体では活性がない担体と共に活性を示すことが可能な成分を意味する。
【0019】
また、本明細書において、「トマト全草抽出物」とは、抽出方法を問わず、抽出対象であるトマトの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物と、その抽出物から前記列挙された溶媒で分離された抽出物を含む意味として理解される。抽出は、その方法を問わないので、抽出対象であるトマトの葉、茎、花、根又はこれらの混合物を抽出溶媒に浸漬する段階を通じて抽出される限り、抽出方法は冷浸、還流、加温、超音波などの任意の方式が全て適用できるものと理解されるべきである。それにも拘らず、前記「トマト全草抽出物」は、好ましくは抽出対象であるトマトの葉、茎、花、根又はこれらの混合物を水、エタノール又はこれらの混合溶媒で抽出して得られたものであって、抽出溶媒が除去された濃縮液相の抽出物又は固相の抽出物を含む意味である。
【0020】
また、本明細書において、「白花蛇舌草(Oldenlandia diffusa)抽出物」は、抽出対象が白花蛇舌草の葉、茎、花、根又はこれらの混合物であることを除いては前記「トマト全草抽出物」と同一に定義できる。
【0021】
また、本明細書において、「ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)抽出物」も同様に、抽出対象がムラサキの葉、茎、花、根又はこれらの混合物であることを除いては前記「トマト抽出物」と同様に定義でき、前記「ナナカマド」も同様に、その抽出対象がナナカマドの葉、茎、花、根又はこれらの混合物であることを除いては前記「トマト全草抽出物」と同一に定義でき、前記「ハンノキ抽出物」も同様に、その抽出対象がハンノキの葉、茎、花、根又はこれらの混合物であることを除いては前記「トマト全草抽出物」と同一に定義できる。
【0022】
本明細書で特に定義されない限り、その他の用語は辞書的な意味、又は当業界において一般な意味に従う。
【0023】
一方、本発明の喫煙毒性解毒用組成物は、その有効成分であるトマト全草抽出物などを喫煙毒性に対する解毒活性を示すものであれば、用途、剤形、配合目的などによって任意の量(有効量)を含むことができるが、通常の有効量は、組成物の全体重量に対して0.001重量%〜99.900重量%の範囲内で決定される。ここで、「有効量」とは、喫煙毒性の予防、改善、治療又は発現遅延を誘導することが可能な有効成分の量をいう。このような有効量は当業者の通常の能力の範囲内で実験的に決定できる。
【0024】
本発明の喫煙毒性解毒用組成物は、その有効成分であるトマト全草抽出物などを含む以外に、喫煙毒性の解毒を向上又は補強することができるように、喫煙毒性解毒活性があることが知られている公知の天然物又は化合物を含んでもよい。
【0025】
そのような天然物又は化合物としては、緑茶粉末又はその抽出物、黒豆粉末又はその抽出物、タンポポ粉末又はその抽出物、金銀花粉末又はその抽出物、三白草(半夏生)粉末又はその抽出物、決明子粉末又はその抽出物、甘草粉末又はその抽出物、山査子粉末又はその抽出物、藁本粉末又はその抽出物、五加皮粉末又はその抽出物、ツルドクダミ粉末又はその抽出物、前胡粉末又はその抽出物、丁香粉末又はその抽出物、陳皮粉末又はその抽出物、蘿蔔(だいこん)粉末又はその抽出物、桔梗粉末又はその抽出物、アロエ粉末又はその抽出物、五味子粉末又はその抽出物、皇耆粉末又はその抽出物、玉ねぎ粉末又はその抽出物、ステビア粉末又はその抽出物などが例示できる。前記において、抽出物の意味は、抽出対象を除いては、トマト全草抽出物と関連して前述したとおりである。このような抽出物は抽出対象を混合して得られるものでもよい。
【0026】
本発明の組成物は、具体的な様態において、飲料、チューインガム、ゼリーなどの食品組成物となることができる。
【0027】
本発明の食品組成物には、その有効成分以外に甘味料、風味料、生理活性成分、ミネラル成分などを含有してもよい。
【0028】
甘味料は、食品が適当な甘い味を出させる量を使用するとよく、天然のもの又は合成のものである。好ましくは天然甘味料を使用する。天然甘味料は、トウモロコシシロップ固形物、蜂蜜、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトースなどの糖甘味料がある。
【0029】
風味料は、食品の味又は香りを良くするために使用できるが、天然のものと合成のものの両方とも使用できる。好ましくは、天然のものを使用する。天然のものを使用する場合、風味以外に栄養強化の目的も持たせることができる。天然風味料は、リンゴ、レモン、ミカン、ブドウ、イチゴ、モモなどから得られたもの、又は、緑茶の葉、アマドコロ、竹の葉、桂皮、菊の葉、ジャスミンなどから得られたものであってもよい。さらに、高麗人参、筍、アロエベラ、イチョウなどから得られたものを使用することができる。天然風味料は、液相の濃縮液又は固相の抽出物であってもよい。場合によっては合成風味料が使用できるが、合成風味料はエステル、アルコール、アルデヒド、テルペンなどが使用できる。
【0030】
生理活性物質は、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンなどのカテキン類、又はレチノール、アスコルビン酸、トコフェロール、カルシフェロール、チアミン、リボフラビンなどのビタミン類などが使用できる。
【0031】
ミネラル成分は、カルシウム、マグネシウム、クロム、コバルト、銅、フッ素化物、ゲルマニウム、ヨウ素、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、セレニウム、珪素、ナトリウム、硫黄、バナジウム、亜鉛などが使用できる。
【0032】
また、本発明の食品組成物は、前記甘味料等以外にも、必要に応じて保存料、乳化剤、酸味料、粘増剤などを含むことができる。
【0033】
このような保存料、乳化剤などは、それが添加される用途を達成することができる範囲で、極微量で添加されて使用されることが好ましい。極微量とは、数値的に表現するとき、食品組成物の全体重量に対して0.0005重量%〜約0.5重量%の範囲を意味する。
【0034】
使用可能な保存剤としては、ソルビン酸カルシウムナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)などがある。
【0035】
使用可能な乳化剤としては、アカシアゴム、カルボキシメチルセルロース、キサンタンゴム、ペクチンなどがある。
【0036】
使用可能な酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸などがある。このような酸味料は、味を増進させる目的以外にも微生物の増殖を抑制する目的で、食品組成物が適正の酸度となるように添加できる。
【0037】
使用可能な粘増剤としては、懸濁剤、沈降剤、ゲル形成剤、膨化剤などがある。
【0038】
本発明の組成物は、具体的な様態においては薬学的組成物として使用できる。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、その有効成分以外に、薬学的に許容される担体、賦形剤などを含み、経口用剤形(錠剤、懸濁液、顆粒、エマルジョン、カプセル、シロップなど)、非経口用剤形(滅菌注射用水性又は油性懸濁液)、局所用剤形(溶液、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、パッチ)などに製造できる。
【0040】
ここまでの説明において、「薬学的に許容される」とは、有効成分の活性を抑制せず、処方対象に適応可能な以上の毒性であり、十分に低い毒性であるという意味である。
【0041】
薬学的に許容される担体の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、澱粉(例えば、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉など)、セルロース、その誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースなど)、麦芽、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど)、硫酸カルシウム、植物性油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、胡麻油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリンなど)、アルギン酸、乳化剤(例えば、TWEEN)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色料、風味料、錠剤化剤、安定化剤、抗酸化剤、保存料、水、食塩水、リン酸塩緩衝溶液などを挙げることができる。このような担体は、本発明の薬学的組成物の剤形によって適当なものを少なくとも一つ選択して使用することができる。
【0042】
賦形剤も、本発明の薬学的組成物の剤形に応じて適したものを選択して使用することができるが、例えば、本発明の薬学的組成物が水性懸濁剤に製造される場合に適した賦形剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどの懸濁剤や分散剤などを挙げることができる。注射液に製造される場合に適した賦形剤としてはリンガー液、等張塩化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0043】
本発明の薬学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、場合によっては局所的に投与できる。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、その1日投与量が通常0.001〜150mg/kg体重の範囲であり、1回又は数回に分けて投与することができる。ところが、本発明の薬学的組成物の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、患者の重症度などの様々な関連因子に応じて決定される。よって、前記投与量はいずれの側面からも本発明の範囲を限定するものと理解されてはならない。
【発明の効果】
【0045】
前述したように、本発明によれば、トマト全草抽出物などを用いた喫煙毒性解毒用組成物を提供することができる。本発明の組成物は、チューインガム、飲料などの食品組成物又は薬学的組成物として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】トマト全草抽出物のニコチン除去活性を示す試験管実験結果である。
【図2】白花蛇舌草抽出物のニコチン除去活性を示す試験管実験結果である。
【図3】ナナカマド抽出物のニコチン除去活性を示す試験管実験結果である。
【図4】ムラサキ抽出物のニコチン除去活性を示す試験管実験結果である。
【図5】ハンノキ抽出物のニコチン除去活性を示す試験管実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を実施例及び実験例によって説明する。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0048】
<実施例>トマト全草、白花蛇舌草、ナナカマド、ムラサキ又はハンノキ抽出物の製造
<実施例1>トマト全草抽出物の製造
トマト全草(葉、茎及び根)細切物1kgを5リットルの50%エタノールに浸漬して50℃の温度で10時間抽出し、抽出残渣を除去した後、減圧濃縮して抽出溶媒を除去し、固相の抽出物を得た。
【0049】
<実施例2>白花蛇舌草抽出物の製造
白花蛇舌草(葉、茎及び根)細切物1kgを5リットルの50%エタノールに浸漬して50℃の温度で10時間抽出し、抽出残渣を除去した後、減圧濃縮して抽出溶媒を除去し、固相の抽出物を得た。
【0050】
<実施例3>ナナカマド抽出物の製造
ナナカマド(葉、茎及び根)細切物1kgを5リットルの50%エタノールに浸漬して50℃の温度で10時間抽出し、抽出残渣を除去した後、減圧濃縮して抽出溶媒を除去し、固相の抽出物を得た。
【0051】
<実施例4>ムラサキ抽出物の製造
ムラサキ(葉、茎及び根)細切物1kgを5リットルの50%エタノールに浸漬して50℃の温度で10時間抽出し、抽出残渣を除去した後、減圧濃縮して抽出溶媒を除去し、固相の抽出物を得た。
【0052】
<実施例5>ハンノキ抽出物の製造
ハンノキ(葉、茎及び根)細切物1kgを5リットルの50%エタノールに浸漬して50℃の温度で10時間抽出し、抽出残渣を除去した後、減圧濃縮して抽出溶媒を除去し、固相の抽出物を得た。
【0053】
<製造例>混合飲料の製造
下記表1のような成分及び組成で、前記実施例1〜5の抽出物を含む飲料を製造した。
【0054】
【表1】

【0055】
<実験例>ニコチン分解効果の実験、タール毒性除去効果の実験及び官能評価の実験
<実験例1>ニコチン分解効果の実験
<実験例1−1>試験管内の実験
前述した実施例の抽出物のニコチン分解効果に関する実験管実験をBarlow等が提示した方法(Barlow R. D, Stone R. B., Clin. Chim. Acta., 165, pp45, 1987)を応用して下記のとおり実施した。
【0056】
マイクロチューブ(5ミリリットル)に1mMのニコチン(Sigma Co., USA)200マイクロリットルと同量の10%(w/v)各実施例の抽出物(蒸留水に溶解させた)を入れ、25℃で経時的に(0、10、20、30、60及び90分)ニコチンの分解生成物であるコチニンの量を測定した。対照群としては、実施例の抽出物の代わりに200マイクロリットルの蒸留水を1mMのニコチン200マイクロリットルと混合したものを使用した。次に、4M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.7)100マイクロリットル、1.5Mシアン化カリウム(potassium cyanate)40マイクロリットル、0.4Mクロラミン−T(chloramine-T)40マイクロリットル、50%(v/v)アセトニトリルに溶解した78mMバルビツール酸(barbituric acid)200マイクロリットルを順次添加した後、10秒間混合し、その混合物を常温で15分間混合させ、1Mメタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulphite)40マイクロリットルで反応を中止させた後、490nmで吸光度を測定してコチニンの変化量を測定した。全ての実験はそれぞれ3回行った。結果は平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で、図1〜図5に示した。図1〜図5を参照すると、前記実施例の抽出物のいずれも経時的にニコチンをコチニンに転換させることが分かる。
【0057】
<実験例1−2>動物実験
実験動物は、体重260〜280gの6週齢のSprague-Dawley系特定病原菌不在ラット((株)中央実験動物、韓国)を購入して、動物飼育室で温度21±2℃、証明時間12L/12Dの明暗周期で実験開始前まで水と固体飼料を十分に提供し、5匹ずつ分離飼育して2週間試験環境に適応させた。
【0058】
実験動物を5匹ずつ6つのグループ(1つのグループは対照群、5つのグループは実験群)に分け、実験群は前記各実施例の抽出物を1.0g/kg/1日の用量で固体飼料と混ぜて水と共に7日間経口投与した後、3mg/kgのニコチンを腹腔投与し、対照群は実施例の抽出物を投与せず、3mg/kgのニコチンのみを腹腔投与した。次に、心臓から1ミリリットル採血して血中ニコチン濃度を測定した。ニコチン濃度の測定は血液を薄いアンモニア水でpH9.0に調節した後、Extrelut Column(Merck社)に15分間維持させ、15ミリリットル酢酸エチルで溶出させ、溶出した酢酸塩を減圧・蒸留除去した後、生成された粉末に100マイクロリットルの酢酸エチルを加えて溶解させることにより分析試料とした。分析はガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography-Mass Spectrometer、FISONS Instruments Co.)を用いた。
【0059】
血中ニコチン濃度を平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で下記表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
<実験例2>タール毒性除去効果の実験
前記各実施例の抽出物のタール毒性の除去効果実験をBrunnemann等の方法(Brunnemann, K.D. and Hoffiman D., Toxcol, 21, 235(91))を応用して下記のとおり実施した。
【0062】
5匹を1群の実験群とし、実験動物にタールを30mg/10ミリリットルの用量で腹腔投与した後、前記各実施例の抽出物を1.0g/kg/1日の用量で前記実験例1〜2のように7日間経口投与して生存有無を観察した。対照群は実施例の抽出物の代わりに蒸留水を投与した。
【0063】
7日間で死亡した個体数の結果を下記表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
<実験例3>官能評価の実験
前記製造例の飲料を用いて喫煙者の喫煙による症状の改善効果実験を下記のとおり実施した。
【0066】
成人男子及び成人女子のうち1日1箱以上の喫煙者100名を選定して前記製造例の飲料を1日2回ずつ1ヶ月間飲用させた。1回の飲用量は140ミリリットルとした。
【0067】
測定項目は、口臭、痰、咳及び吐き気などの4個の項目を5点尺度法を用いて「大幅な改善(5点)」、「目立った改善(4点)」、「普通に改善(3点)」、「やや改善(2点)」、「効果なし(0点)」などに区分して実施した。結果を下記表4に示す。
【0068】
【表4】

【0069】
前記結果は、本発明の飲料が喫煙による症状を大きく改善することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト全草抽出物、白花蛇舌草抽出物、ナナカマド抽出物、ムラサキ抽出物、及びハンノキ抽出物の少なくとも一つを有効成分として含むことを特徴とする喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項2】
前記トマト全草抽出物は、トマトの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項3】
前記トマト全草抽出物は、トマトの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をエタノール、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項4】
前記白花蛇舌草抽出物は、白花蛇舌草の葉、茎、花、根又はこれらの混合物をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項5】
前記白花蛇舌草抽出物は、白花蛇舌草の葉、茎、花、根又はこれらの混合物をエタノール、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項6】
前記ナナカマド抽出物は、ナナカマドの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項7】
前記ナナカマド抽出物は、ナナカマドの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をエタノール、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項8】
前記ムラサキ抽出物は、ムラサキの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項9】
前記ムラサキ抽出物は、ムラサキの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をエタノール、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項10】
前記ハンノキ抽出物は、ハンノキの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、飽和n−ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項11】
前記ハンノキ抽出物は、ハンノキの葉、茎、花、根又はこれらの混合物をエタノール、水又はこれらの混合溶媒で抽出して得られた抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項12】
前記喫煙毒性解毒用組成物は、有効成分としてトマト全草抽出物、白花蛇舌草抽出物、ナナカマド抽出物、ムラサキ抽出物、及びハンノキ抽出物を全て含むことを特徴とする請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項13】
前記組成物は、緑茶粉末又は抽出物、黒豆粉末又は抽出物、タンポポ粉末又は抽出物、金銀花粉末又は抽出物、三白草粉末又は抽出物、決明子粉末又は抽出物、甘草粉末又は抽出物、山査子粉末又は抽出物、藁本粉末又は抽出物、五加皮粉末又は抽出物、何首烏粉末又は抽出物、前胡粉末又は抽出物、丁香粉末又は抽出物、陳皮(陣橘皮)粉末又は抽出物、蘿蔔子粉末又は抽出物、桔梗粉末又は抽出物、アロエ粉末又は抽出物、五味子粉末又は抽出物、皇耆粉末又は抽出物、玉ねぎ粉末又は抽出物、ステビア粉末又は抽出物よりなる群から選ばれた粉末又は抽出物を少なくとも一つさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項14】
前記喫煙毒性解毒用組成物は食品組成物であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項15】
前記食品組成物は飲料、チューインガム又はゼリーであることを特徴とする請求項14に記載の喫煙毒性解毒用組成物。
【請求項16】
前記喫煙毒性解毒用組成物は薬学的組成物であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の喫煙毒性解毒用組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−510139(P2013−510139A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537792(P2012−537792)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002456
【国際公開番号】WO2011/059148
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512117339)
【Fターム(参考)】