説明

噛合チェーンユニット

【課題】確実且つ強固に噛み合うとともにチェーン剛直化部分の座屈や捩れを回避する噛合チェーンユニットを提供すること。
【解決手段】プレート重なり領域Pが、接触部分面111aa、111aaと平坦な座屈規制端面112b、112bとで外縁を規定されているとともにフック状噛合端面111a、111a及び座屈規制端面112b、112bの交差点Cに対して相互に点対称な2つのプレート重なり部分Pa、Paの輪郭から構成されている噛合チェーンユニット100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被駆動体を進退動させる噛合チェーンユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動装置として、相互に噛み合って一体的に駆動される一対の噛合チェーン、所
謂、チャックチェーンを用いて重量物などの被駆動物を移動させる駆動装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
また、リンクプレートの内側フランクすなわちスプロケット歯に噛み合う面の形状を規定してチェーン駆動時の騒音及び振動を低減するサイレントチェーン伝動装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113872号公報(特許請求の範囲、図5参照。)
【特許文献2】実公平6−13399号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の噛合チェーンでは、内歯プレート同士及び外歯プレート同士を相互に噛み合わせる噛合端面や座屈を規制する座屈規制端面などの設計事項について具体的に言及していないため、内歯プレート同士及び外歯プレート同士を強固且つ確実に噛み合わせることを困難にさせてしまうという問題点があった。
また、上述の噛合チェーンでは、内歯プレート同士及び外歯プレート同士を相互に噛み合わせた際にこれらプレートに不均一な圧縮力を作用させてしまうため、相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンのチェーン剛直化部分に生じる座屈やチェーン剛直化部分の捩れを回避することを困難にさせてしまうという問題点があった。
すなわち、噛合後のチェーンにおいて、不可避に生じる部品間の隙間ガタツキが残ってしまうため、チェーン剛直化部分に生じる座屈やチェーン剛直化部分の捩れを噛合時の不均一な圧縮力の作用を抑制することによって回避することを困難にさせてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、内歯プレート同士および外歯プレート同士を確実且つ強固に噛み合わせるとともにチェーン剛直化部分の座屈や捩れを回避する噛合チェーンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本請求項1に係る発明は、内歯プレートと該内歯プレートの外側に隣接配置されて内歯プレートと部分的な重なり領域を有する外歯プレートとを前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結してそれぞれ構成された状態で相互に噛み合って剛直化チェーン進退方向に一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンを備えた噛合チェーンユニットであって、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせた際に相互に噛み合う2つの内歯プレートのフック状噛合端面が、前記内歯プレート及び外歯プレートのそれぞれのプレート主面に直交するプレート法線方向から前記一対の噛合チェーンを見た場合にプレート重なり領域を構成するように形成され、該プレート重なり領域が、前記2つの内歯プレートのフック状噛合端面のそれぞれを相互に接触させた接触部分面と相互に接触した2つの外歯プレートのそれぞれの平坦な座屈規制端面とで外縁を規定されている2つのプレート重なり部分の輪郭から構成され、前記2つの重なり部分の輪郭の概形が、前記フック状噛合端面及び座屈規制端面の交差点に対して相互に点対称であることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る噛合チェーンユニットにおいて、前記2つの外歯プレートのそれぞれの座屈規制端面が、前記剛直化チェーン進退方向に対する斜め方向に沿って相互に接触することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0008】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーンユニットにおいて、前記内歯プレートと前記外歯プレート及び前記連結ピンのいずれかまたは全てが、前記プレート重なり領域を形成する際に弾性変形することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0009】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに係る噛合チェーンユニットにおいて、前記一対の噛合チェーンが、該一対の噛合チェーンの動作を前記剛直化チェーン進退方向に沿って規制するチェーン動作規制手段によって相互に噛み合わせられることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
そして、本請求項5に係る発明は、請求項4に係る噛合チェーンユニットにおいて、前記チェーン動作規制手段が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に設けられた駆動用スプロケットであることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る噛合チェーンユニットは、内歯プレートと該内歯プレートの外側に隣接配置されて内歯プレートと部分的な重なり領域を有する外歯プレートとを前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結してそれぞれ構成された状態で相互に噛み合って一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンを備えたことにより、一対の噛合チェーンの進退動作に応じてチェーンの剛直状態とチェーンの分岐状態とを相互に切り替えることができるばかりでなく、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0012】
すなわち、本請求項1に係る噛合チェーンユニットは、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせた際に相互に噛み合う2つの内歯プレートのフック状噛合端面が、前記内歯プレート及び外歯プレートのそれぞれのプレート主面に直交するプレート法線方向から前記一対の噛合チェーンを見た場合にプレート重なり領域を構成するように形成され、該プレート重なり領域が、前記2つの内歯プレートのフック状噛合端面のそれぞれを相互に接触させた接触部分面と相互に接触した2つの外歯プレートのそれぞれの平坦な座屈規制端面とで外縁を規定されている2つのプレート重なり部分の輪郭から構成され、前記2つのプレート重なり部分の輪郭の概形が、前記フック状噛合端面及び座屈規制端面の交差点に対して相互に点対称であることにより、噛合チェーンユニットの中心の両側で相互に座屈規制端面に作用する圧縮力の不均一さを無くした状態で相互に噛み合ったフック状噛合端面同士のチェーン噛み外れ方向に沿ったずれを回避して一対の噛合チェーンの噛み外れを回避するとともに相互に接触した座屈規制端面同士でこれら座屈規制端面に作用する圧縮力のそれぞれを同一面内すなわち外歯プレートを含む面内でつり合わせるため、内歯プレート同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに内歯プレート同士の噛み合いに伴う外歯プレート同士の強固且つ確実な噛み合わせを実現するとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分の座屈や捩れを回避することができる。
【0013】
そして、本請求項2に係る噛合チェーンユニットは、請求項1に係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記2つの外歯プレートのそれぞれの座屈規制端面が、前記剛直化チェーン進退方向に対する斜め方向に沿って相互に接触することにより、剛直化チェーン進退方向に沿って座屈規制端面に作用する圧縮力を上述の斜め方向に逃がすことと並行してフック状噛合端面同士が一対の噛合チェーンの噛み外れを規制するため、座屈規制端面の応力負担を回避した状態で内歯プレート同士及び外歯プレート同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分の座屈や捩れを確実に回避することができる。
【0014】
そして、本請求項3に係る噛合チェーンユニットは、請求項1又は請求項2に係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記内歯プレートと前記外歯プレート及び前記連結ピンのいずれかまたは全てが、前記プレート重なり領域を形成する際に弾性変形することにより、この弾性変形に伴って一対の噛合チェーンを剛直化させて部品間の遊びを無くした状態でガタツキをより一層低減するため、内歯プレート同士及び外歯プレート同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーンの剛直性を向上させてチェーン剛直化部分の座屈や捩れをより一層回避することができる。
【0015】
そして、本請求項4に係る噛合チェーンユニットは、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記一対の噛合チェーンが、該一対の噛合チェーンの動作を前記剛直化チェーン進退方向に沿って規制するチェーン動作規制手段によって相互に噛み合わせられることにより、外歯プレート及び内歯プレートを剛直化チェーン進退方向に誘導した状態で一対の噛合チェーンを相互に噛み合わすため、一対の噛合チェーンの確実な噛み合わせを実現することができる。
【0016】
そして、本請求項5に係る噛合チェーンユニットは、請求項4に係る噛合チェーンユニットが奏する効果に加えて、前記チェーン動作規制手段が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に設けられた駆動用スプロケットであることにより、剛直性を向上させたチェーン剛直化部分で被駆動体を進退駆動させるため、チェーン剛直化部分の座屈や捩れを回避して被駆動体を所定の位置まで正確に進退動させることを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る噛合チェーンユニットの分解組み立て状態を示す斜視図。
【図2】一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛み合い部分の正面図。
【図3】本発明の噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置の斜視図。
【図4】図3から昇降テーブル及びパンタアームを除いた状態の斜視図。
【図5】図4に示す駆動用スプロケット近傍の一部拡大図。
【図6】チェーン誘導プレート及び噛合チェーンの接触状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の噛合チェーンユニットは、内歯プレートと該内歯プレートの外側に隣接配置されて内歯プレートと部分的な重なり領域を有する外歯プレートとを前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結してそれぞれ構成された状態で相互に噛み合って剛直化チェーン進退方向に一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンを備え、一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせた際に相互に噛み合う2つの内歯プレートのフック状噛合端面が、内歯プレート及び外歯プレートのそれぞれのプレート主面に直交するプレート法線方向から一対の噛合チェーンを見た場合にプレート重なり領域を構成するように形成され、このプレート重なり領域が、2つの内歯プレートのフック状噛合端面のそれぞれを相互に接触させた接触部分面と相互に接触した2つの外歯プレートのそれぞれの平坦な座屈規制端面とで外縁を規定されている2つのプレート重なり部分の輪郭から構成され、前記2つのプレート重なり部分の輪郭の概形が、前記フック状噛合端面及び座屈規制端面の交差点に対して相互に点対称であるものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
また、噛合チェーンユニットは、チェーン幅方向に対向する一対の内歯プレートとこれら内歯プレートの外側にそれぞれ配置された一対の外歯プレートとを有して構成されたリンクユニットをチェーン長手方向にそれぞれ多数連結してなる複数列のチェーンユニットから構成されていてもよいし、単列のチェーンユニットから構成されていてもよい。
また、上述の外歯プレートの座屈規制端面と内歯プレートのフック状噛合端面とによって奏される効果は、外歯プレート及び内歯プレートの関係を相互に入れ替えて考えた場合すなわち内歯プレートの座屈規制端面と外歯プレートのフック状噛合端面との相互関係によっても同様に奏される。
また、一対の噛合チェーンのうち片側の噛合チェーンのフック状噛合端面または座屈規制端面の一部に凹状の切り欠きを設けたとしても、上述と同様の効果が奏される。
【0019】
また、本発明の噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても進退動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した進退動作に何ら支障はない。
【実施例】
【0020】
以下、図1及び図2に基づいて本発明の実施例に係る噛合チェーンユニット100を説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例に係る噛合チェーンユニットの分解組み立て状態を示す斜視図であり、図2は、一対の噛合チェーンが相互に噛み合う噛み合い部分の正面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施例に係る噛合チェーンユニット100は、所謂、チャックチェーンと称するものであって、内歯プレート111とこの内歯プレート111の外側に隣接配置されて内歯プレート111と部分的な重なり領域を有する外歯プレート112とを前後一対の連結ピン113、113によりチェーン長手方向に多数連結してそれぞれ構成された状態で相互に噛み合って剛直化チェーン進退方向Aに一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーン110、110を備えている。
また、内歯プレート111に嵌合された状態で連結ピン113を遊嵌するブシュ114が、チェーン幅方向Wに沿って対向する一対の内歯プレート111、111の間に配置された状態でローラ115を外嵌している。
【0022】
次に、前述した本実施例の噛合チェーンユニット100が最も特徴とする構成の具体的な形態について、図1及び図2に基づいてより詳しく説明する。
噛合チェーンユニット100は、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合わせた際に相互に噛み合う2つの内歯プレート111、111のフック状噛合端面111a、111aが、内歯プレート111及び外歯プレート112のそれぞれのプレート主面111P、112Pに直交するプレート法線方向すなわちチェーン幅方向Wから一対の噛合チェーン110、110を見た場合にプレート重なり領域Pを構成するように形成され、このプレート重なり領域Pが、2つの内歯プレート111、111のフック状噛合端面111a、111aのそれぞれを相互に接触させた接触部分面111aa、111aaと相互に接触した2つの外歯プレート112、112のそれぞれの平坦な座屈規制端面112b、112bとで外縁を規定されている2つのプレート重なり部分Pa、Paの輪郭から構成され、2つのプレート重なり部分Pa、Paの輪郭の概形が、フック状噛合端面111a、111a及び座屈規制端面112b、112bの交差点Cに対して相互に点対称であることにより、噛合チェーンユニット100の中心の両側で相互に座屈規制端面112bに作用する圧縮力の不均一さを無くした状態で相互に噛み合ったフック状噛合端面111a、111a同士のチェーン噛み外れ方向Bに沿ったずれを回避して一対の噛合チェーン110、110の噛み外れを回避するとともに相互に接触した座屈規制端面112b、112b同士でこれら座屈規制端面112b、112bに作用する圧縮力のそれぞれを同一面内すなわち外歯プレート112を含む面内でつり合わせるため、内歯プレート111、111同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに内歯プレート111、111同士の噛み合いに伴う外歯プレート112、112同士の強固且つ確実な噛み合わせを実現するとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110、110の剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈や捩れを回避するようになっている。 なお、2つのプレート重なり部分Pa、Paの輪郭の概形全体が、フック状噛合端面111a、111a及び座屈規制端面112b、112bの交差点Cに対して相互に点対称である場合に限定されず、2つのプレート重なり部分Pa、Paの輪郭の概形の少なくとも一部が交差点Cに対して点対称であれば、上述した座屈や捩れを回避する効果は相応に得られる。
【0023】
また、噛合チェーンユニット100は、2つの外歯プレート112、112のそれぞれの座屈規制端面112b、112bが、剛直化チェーン進退方向Aに対する斜め方向Tに沿って相互に接触することにより、剛直化チェーン進退方向Aに沿って座屈規制端面112b、112bに作用する圧縮力を上述の斜め方向Tに逃がすことと並行してフック状噛合端面111a、111a同士が一対の噛合チェーン110、110の噛み外れを規制するため、座屈規制端面112b、112bの応力負担を回避した状態で内歯プレート111、111同士及び外歯プレート112、112同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110、110の剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈や捩れを確実に回避するようになっている。
【0024】
また、噛合チェーンユニット100は、内歯プレート111と外歯プレート112及び連結ピン113のいずれかまたは全てが、プレート重なり領域Pを形成する際に弾性変形することにより、この弾性変形に伴って一対の噛合チェーン110、110を剛直化させて部品間の遊びを無くした状態でガタツキをより一層低減するため、内歯プレート111、111同士及び外歯プレート112、112同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110、110の剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈や捩れをより一層回避するようになっている。
【0025】
また、噛合チェーンユニット100は、一対の噛合チェーン110、110が、これら一対の噛合チェーン110、110の動作を剛直化チェーン進退方向Aに沿って規制するチェーン動作規制手段M、Mによって相互に噛み合わせられることにより、外歯プレート112及び内歯プレート111を剛直化チェーン進退方向Aに誘導した状態で一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合わすため、一対の噛合チェーン110、110の確実な噛み合わせを実現するようになっている。
なお、チェーン動作規制手段M、Mは、噛合チェーンユニット100をその両側から押えてこれらチェーン動作規制手段M、Mの間の領域で剛直化チェーン進退方向Aに誘導するものであれば如何なるものでもよい。
【0026】
次に、図1乃至図6に基づいて、上述の噛合いチェーンユニット100を備えた噛合チェーン式進退作動装置200を説明する。
ここで、図3は、本発明の噛合チェーンユニットを備えた噛合チェーン式進退作動装置200の斜視図であり、図4は、図3から昇降テーブル及びパンタアームを除いた状態の斜視図であり、図5は、図4に示す駆動用スプロケット近傍の一部拡大図であり、図6は、チェーン誘導プレート及び噛合チェーンの接触状態を示した図である。
【0027】
上述の噛合チェーンユニット100を備えた噛合チェーン式進退作動装置200は、図3に示すように、重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル210を設置床面Gに対して平行に昇降させるものである。
【0028】
噛合チェーン式進退作動装置200は、図3乃至図6に示すように、前述した昇降テーブル210が平行に昇降する設置床面Gに据え付けたベースプレート220と、このベースプレート220に対して平行に併置された一対の回転軸230を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の駆動用スプロケット240と、これらの一対の駆動用スプロケット240、240と噛み外れることによって昇降テーブル210を昇降する一対の噛合チェーン110、110からなる一対の噛合チェーンユニット100、100と、これら噛合チェーンユニット100、100の上端に設置されて一体に昇降する前述した昇降テーブル210と、一対の駆動用スプロケット240、240を回転させる変速ギア群253に動力を伝達する動力伝達チェーン252と、この動力伝達チェーン252を駆動する駆動モータ250と、一対の駆動用スプロケット240の股間領域に設けられて噛合チェーンユニット100を誘導移動させるチェーン誘導プレート260とを基本的な装置構成として備えている。
【0029】
また、チェーン収納手段270が、駆動モータ250と同様に、昇降テーブル210の最下降位置の周辺域、すなわち、昇降テーブル210の投影傘下の領域外に離間配置されている。
すなわち、相互に噛み外れて分岐した一対の噛合チェーン110、110の一方は、駆動モータ250側に配置した巻き取り型のチェーン収納ボックス271からなるチェーン収納手段270内に収納されるとともに、一対の噛合チェーン110、110の他方は、駆動モータ250と対向する反対側に配置した直線状収納レール272からなるチェーン収納手段270内に収納される。
【0030】
また、噛合チェーン式進退作動装置200は、昇降テーブル210と設置床面G側のベースプレート220との間にX字状のパンタアームと称するインナーアーム281とアウターアーム282からなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段280を介在させることにより、昇降テーブル210の安定した昇降動作をガイドするように構成されている。
なお、スライドレール283は、インナーアーム281の下端を昇降動作に応じて摺動させる。
【0031】
次に、本実施例に係る噛合チェーンユニット100を備えた噛合チェーン式進退作動装置200の昇降動作について図3及び図6に基づいて説明する。
図3及び図6に示すように、昇降テーブル210が最上昇位置に達する場合、ローラ115に係合する一対の駆動用スプロケット240、240によって一対の噛合チェーン110、110がチェーン収納ボックス271と直線状収納レール272とからなるチェーン収納手段270からそれぞれ繰り出され、この一対の噛合チェーン110、110が重量物からなる被昇降物(図示していない)を搭載する昇降テーブル210の全重量を支えながら駆動モータ250の出力に応じて出力ギア251に2本掛けされた動力伝達チェーン252により等速かつ迅速に上昇するようになっている。
なお、このとき、前述したX字状のパンタアームと称するインナーアーム281とアウターアーム282からなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段280が、昇降テーブル210の安定した上昇動作をガイドするようになっている。
【0032】
一方、昇降テーブル210が最下降位置に達する場合は、一対の噛合チェーン110、110が一対の駆動用スプロケット240、240によってチェーン収納ボックス271と直線状収納レール272からなるチェーン収納手段270へそれぞれ分岐しながら引き込まれ、一対の噛合チェーン110、110が重量物(図示していない)を搭載する昇降テーブル210の全重量を支えながら駆動モータ250の出力に応じて出力ギア271に2本掛けされた動力伝達チェーン272により等速かつ迅速に下降するようになっている。
なお、このとき、前述したX字状のインナーアーム281とアウターアーム282からなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段280が、折り畳まれながら昇降テーブル210の安定した下降動作をガイドするようになっている。
【0033】
特に、噛合チェーン式進退作動装置200では、本発明の「チェーン動作規制手段」の一例である駆動用スプロケット240が、一対の噛合チェーン110、110の噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて昇降テーブル210すなわち被駆動体を進退動させることにより、剛直性を向上させたチェーン剛直化部分100Aで昇降テーブル210を進退駆動させるため、噛合チェーンユニット100は、チェーン剛直化部分110Aの座屈や捩れを回避して昇降テーブル210を所定の位置まで正確に進退動させることを実現するようになっている。
【0034】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーンユニット100は、一対の噛合チェーン110、110を相互に噛み合わせた際に相互に噛み合う2つの内歯プレート111、111のフック状噛合端面111a、111aが、内歯プレート111及び外歯プレート112のそれぞれのプレート主面111P、112Pに直交するプレート法線方向すなわちチェーン幅方向Wから一対の噛合チェーン110、110を見た場合にプレート重なり領域Pを構成するように形成され、このプレート重なり領域Pが、2つの内歯プレート111、111のフック状噛合端面111a、111aのそれぞれを相互に接触させた接触部分面111aa、111aaと相互に接触した2つの外歯プレート112、112のそれぞれの平坦な座屈規制端面112b、112bとで外縁を規定されている2つのプレート重なり部分Pa、Paの輪郭から構成され、2つのプレート重なり部分Pa、Paの輪郭の概形が、フック状噛合端面111a、111a及び座屈規制端面112b、112bの交差点Cに対して相互に点対称であることにより、内歯プレート111、111同士を強固且つ確実に噛み合わせるとともに内歯プレート111、111同士の噛み合いに伴う外歯プレート112、112同士の強固且つ確実な噛み合わせを実現するとともに相互に噛み合って一体化した一対の噛合チェーン110、110の剛直性を向上させてチェーン剛直化部分100Aの座屈や捩れを回避することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0035】
100 ・・・ 噛合チェーンユニット
100A ・・・ チェーン剛直化部分
110 ・・・ 噛合チェーン
111 ・・・ 内歯プレート
111a ・・・ 内歯プレートのフック状噛合端面
111aa ・・・ 内歯プレートの接触部分面
112b ・・・ 外歯プレートの座屈規制端面
111P、112P ・・・ プレート主面
112 ・・・ 外歯プレート
113 ・・・ 連結ピン
114 ・・・ ブシュ
115 ・・・ ローラ
200 ・・・ 噛合チェーン式進退作動装置
210 ・・・ 昇降テーブル
220 ・・・ ベースプレート
230 ・・・ 駆動用スプロケットの回転軸
240 ・・・ 駆動用スプロケット
250 ・・・ 駆動モータ
251 ・・・ 出力ギア
252 ・・・ 動力伝達チェーン
253 ・・・ 変速ギア群
260 ・・・ チェーン誘導プレート
270 ・・・ チェーン収納手段
271 ・・・ チェーン収納ボックス
272 ・・・ 直線状収納レール
280 ・・・ 昇降補助ガイド手段
281 ・・・ インナーアーム
282 ・・・ アウターアーム
A ・・・ 剛直化チェーン進退方向
B ・・・ チェーン噛み外れ方向
C ・・・ 交差点
G ・・・ 設置面
M ・・・ チェーン動作規制手段
P ・・・ プレート重なり領域
Pa ・・・ プレート重なり部分
T ・・・ 斜め方向
W ・・・ チェーン幅方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯プレートと該内歯プレートの外側に隣接配置されて内歯プレートと部分的な重なり領域を有する外歯プレートとを前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結してそれぞれ構成された状態で相互に噛み合って剛直化チェーン進退方向に一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐する一対の噛合チェーンを備えた噛合チェーンユニットであって、
前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせた際に相互に噛み合う2つの内歯プレートのフック状噛合端面が、前記内歯プレート及び外歯プレートのそれぞれのプレート主面に直交するプレート法線方向から前記一対の噛合チェーンを見た場合にプレート重なり領域を構成するように形成され、
該プレート重なり領域が、前記2つの内歯プレートのフック状噛合端面のそれぞれを相互に接触させた接触部分面と相互に接触した2つの外歯プレートのそれぞれの平坦な座屈規制端面とで外縁を規定されている2つのプレート重なり部分の輪郭から構成され、
前記2つのプレート重なり部分の輪郭の概形が、前記フック状噛合端面及び座屈規制端面の交差点に対して相互に点対称であることを特徴とする噛合チェーンユニット。
【請求項2】
前記2つの外歯プレートのそれぞれの座屈規制端面が、前記剛直化チェーン進退方向に対する斜め方向に沿って相互に接触することを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーンユニット。
【請求項3】
前記内歯プレートと前記外歯プレート及び前記連結ピンのいずれかまたは全てが、前記プレート重なり領域を形成する際に弾性変形することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の噛合チェーンユニット。
【請求項4】
前記一対の噛合チェーンが、該一対の噛合チェーンの動作を前記剛直化チェーン進退方向に沿って規制するチェーン動作規制手段によって相互に噛み合わせられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の噛合チェーンユニット。
【請求項5】
前記チェーン動作規制手段が、前記一対の噛合チェーンの噛合動作及び噛み外れ動作に基づいたチェーン進退動作に応じて被駆動体を進退動させる噛合チェーン式進退作動装置に設けられた駆動用スプロケットであることを特徴とする請求項4に記載の噛合チェーンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225439(P2012−225439A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94434(P2011−94434)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【特許番号】特許第4865923号(P4865923)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】