説明

器具に装飾を備える方法

本発明は、光学干渉格子により器具に装飾を備える方法に関する。器具は、光学干渉格子を生成するため、柔軟なスタンプを用いてエンボスされたゾルゲル前駆物質を備える。干渉格子は、ゾルゲル層の屈折率よりも高い屈折率を持つ物質から成る第2の前駆物質を備えても良く、透明な非散乱性の上塗りを備えても良い。本発明は更に、光学干渉格子を備えたオルガノシラン層により被覆された、例えばアイロン又はシェーバーのような器具に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具に装飾を備える方法に関する。本願における装飾とは、飾り(ornament)であると理解されるものであるが、絵、図形又はテキストであっても良い。
【背景技術】
【0002】
器具、とりわけパーソナルケアのための器具は、ラッカのコーティングを備え得る。パーソナルケアのための多くの組成物が、ラッカのコーティングを腐食し得る成分を含むことが分かっている。特に、ひげ剃り前用及びひげ剃り後用のもののようなシェービングローションが、ラッカのコーティングに対して攻撃的であることが分かっている。加水分解で凝縮されたオルガノシラン化合物のネットワークを含むラッカのコーティングにより、酸、塩基及び溶媒に対する優れた耐性が得られる。加水分解で凝縮されたオルガノシラン化合物のネットワークを含むラッカのコーティングは、それ自体知られている。これらの物質は典型的には、ゾルゲル(sol-gel)法により得られる。
【0003】
器具に魅力的な(例えば金属的な)外見を与えるため、コーティングは所謂真珠顔料のような金属粒子を含んでも良い。スクリーン印刷により、斯かる顔料が装飾の形で塗布され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装飾を備えた、加水分解で凝縮されたオルガノシラン化合物のネットワークの他の用途は、アイロンにおいて見出される。アイロンは、ゾルゲル層をベースとした、保護性で低摩擦のコーティングにより被覆された、例えば陽極酸化アルミニウムの掛け面を有し得る。アイロンは一般に、高温に対する優れた耐性のため、ゾルゲルベースの層を持つ。保護コーティングはこのとき、一般に下塗りと上塗りとを有する。上塗りは、摩擦係数を減少させるため又は所望の視覚的効果のため、シリカ、PTFE(テフロン(登録商標))及び/又はイリオジン(登録商標、即ち雲母粒子)により満たされ得る。ここで、装飾が上塗りの下に下塗り上に印刷され得る。このことはまた、顔料インクを用いてゾルゲルをスクリーン印刷することによっても為され得る。しかしながら、スクリーン印刷の解像度は、約50乃至100ミクロンに制限され、装飾の品質を制限する。
【0005】
本発明の目的は、より高い解像度を持つ装飾を生成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的及び他の目的は、請求項1の特徴により達成される。
【0007】
本発明を用いると、数百ナノメートルのオーダーの解像度を持つ装飾が生成され得る。干渉格子は一般に、光の波長と同じオーダーの大きさを持つ梁状の特徴形状から成る。可視光については、これら大きさは100nmから数ミクロンの間である。該格子は特定の波長を特定の角度で屈折させ、鮮やかな色を与える。知られている干渉格子は、光リソグラフィ及び真空スパッタ蒸着法を利用して作成される。これらは効果な加工ステップであり、それ故アイロンの掛け面には適用されない。柔軟性のある(例えばゴムの)スタンプにより、100nmの特徴形状が高速且つ安価に複製されることができる。
【0008】
本発明の方法によって、他の幾つかの利点が達成される。第一に、干渉格子が、魅力的で偽造を防ぐ装飾を製造する新たな方法を提供する。
【0009】
本発明の他の利点は、装飾の色が、例えばアイロンの掛け面のような、高温度の用途においても限定されない点である。高温に晒される顔料インクを備えた知られている装飾においては、幾つかの顔料インクの不十分な熱安定性のため、色の選択が制限される。
【0010】
本発明の方法においては、器具が第1のゾルゲル前駆物質を備える。ゾルゲル前駆物質は一般に、オルガノシラン化合物と、シリカ粒子、とりわけコロイド状シリカ粒子とを有する。好適なオルガノシラン化合物は、混成ゾルゲル前駆物質を形成するシランである。オルガノシラン化合物を有する混成ゾルゲル前駆物質は、少なくとも1つの加水分解可能でない有機基及び2つ又は3つの加水分解可能な有機基と結合した、シリコンを有する化合物であると理解される。
【0011】
とりわけ、混成ゾルゲル前駆物質は、アルキルアルコキシシランの群からのオルガノシラン化合物を有しても良い。好ましくは、混成ゾルゲル前駆物質は、コロイド状のシリカ(例えばLudox(登録商標))及びメチルトリメトキシシラン(MTMS)及び/又はメチルトリエトキシシラン(MTES)を有しても良い。MTMS及びMTESのような混成ゾルゲル前駆物質は、少なくとも450℃まで、優れた温度安定性を持つことが知られている。吹き付けコーティングは、基板にゾルゲル前駆物質を塗布するための良く知られた方法である。
【0012】
しかしながら、層の厚さをより適切に制御するためには、スクリーン印刷がより正確な手法である。本発明においては、層は好ましくは高濃度のプレポリマー化されたゾルゲル前駆物質から得られる。斯様な高濃度のプレポリマー化されたゾルゲル前駆物質を利用することにより、硬化の間の収縮の量が、著しく低減される。低減された収縮の量は、基板に層を塗布するための、正確なスクリーン印刷手法の使用を可能とする。
【0013】
プレポリマー化されたオルガノシラン前駆物質は一般に、以下の単位即ちRSiO0.5、RSiO、RSiO1.5及びSiO4/2のうち1つ以上を有するネットワークである。ここで、R、R及びRは、水素及び1乃至20個の炭素原子から成る炭化水素から成る群から独立に選択される。炭化水素は、メチル、エチル、プロピル及びブチル等のようなアルキル、ビニル及びアリル等のようなアルケニル、並びにフェニルのようなアリルを含んでも良い。最終的な硬化生成物において、より高い程度の架橋結合が望ましいため、プレポリマー化されたゾルゲル前駆物質の珪素原子における炭化水素基の数の平均は、1に近づくべきである。種々の反応基を含む硬化性のオルガノシラン組成物は、本分野において知られている。プレポリマー化されたオルガノシラン前駆物質に存在する反応基のタイプは、該組成物を硬化させるために利用される反応により決定される。該組成物が放射物又はその他のフリーラジカル発生物の不在下で開始される化学反応により硬化する場合、反応基は一般にヒドロキシル基、アルコキシ基又はアルケニルラジカルであり、プレポリマー化されたオルガノシラン前駆物質の各分子の末端の珪素原子に一般に位置する。
【0014】
プレポリマーの混合物もまた、ここで有用である。本発明の好適な実施例においては、結果として得られる硬化されたオルガノシラン化合物の酸化に対する高い耐性のため、上述のRの基の少なくとも1つはメチルである。斯かる物質はしばしば優れたコーティングを形成し、高温において改善された特性を持つ。特に好適なシリコン樹脂は、MeSiO3/2、MePhSiO2/2、PhSiO3/2及びPhSiO2/2の構造の単位を含む。斯かる樹脂は本分野において知られており、市販されている(例えばWacker社のSilres(登録商標)610)。
【0015】
ゾルゲル前駆物質は一般に、ここでの処理のため溶媒中に希釈され溶解される。適切な溶媒は本分野において知られており、例えば芳香族炭化水素(例えばキシレン、ベンゼン又はトルエン)、アルカン(例えばn−ヘプタン、デカン又はドデカン)、アルコール、ケトン、エステル若しくはエーテルのような有機溶媒、又は低分子量のジメチルポリシロキサンのような無機溶媒を含み得る。利用される溶媒の量は樹脂、いずれかの添加物、及び処理に応じて変わるが、樹脂の重量に基づいて約10重量パーセントと約90重量パーセントの間の範囲となり得る。
【0016】
収縮の量の限界を定めるため、存在する溶媒の量は、40重量パーセントよりも少なくされる。更に好適な実施例においては、溶媒の量は15乃至25重量パーセントである。
【0017】
続いてゾルゲル前駆物質がエンボスされ、柔軟なスタンプの配置により光学干渉格子を生成する。該柔軟なスタンプは例えば、ゴム製のスタンプであっても良い。該スタンプに適した好適なゴムは、ポリジメチルシラン(PDMS)のようなシリコンベースのゴムである。シリコンベースのゴムは、前駆物質のために利用される溶媒の殆どが、該スタンプのシリコンゴムにより吸収され、スタンプが取り除かれる前に、ゾルゲル層が固化することを促進するという利点を持つ。ゾルゲル層がUVによって固化される場合、該スタンプもまた透光性であるべきである。スタンプからゾルゲル層にパターンを転写するための、幾つかの原理がある。
【0018】
第1の印刷原理は、スタンプとゾルゲル層を互いに対して押圧することを有し、ここで該スタンプ及びゾルゲル層は、面を通して互いと接触する。該第1の印刷原理の重要な利点は、該スタンプとゾルゲル層との互いに対する整合が非常に正確に為され得るという点である。該印刷原理の重要な欠点は、該スタンプ及びゾルゲル層を互いに向かって移動させると、シート間に空気が入り込み得る点である。結果として、パターンの転写は不完全となり得る。しかしながら該欠点は、上述した手順を減圧下で実行することにより克服され得る。圧力はこのとき、ゾルゲル層における溶媒の蒸気圧よりも僅かに高い圧力まで減少されるべきである。減圧下でのエンボスは、曲面において特に有利である。
【0019】
第2の印刷原理は国際特許出願公開WO03/099463に記載されたものであり、以下のステップを有する。スタンプ面と受容面とが互いに面するようにスタンプ及びゾルゲル層を互いに対して配置する。受容面が延在する方向における該スタンプ及びゾルゲル層の互いに対する位置を固定する。スタンプ面及び受容面の少なくとも一方の第1の部分を、受容面に略垂直な方向に移動させ、それにより第1の転写領域がスタンプ面と受容面との間に形成され、スタンプがパターンを局所的にゾルゲル層に転写することが可能となるようにする。次いで、スタンプ面及び受容面の少なくとも一方の第2の部分を、受容面に略垂直な方向に移動させ、それにより拡大された転写領域がスタンプ面と受容面との間に形成され、スタンプがパターンを局所的にゾルゲル層に転写することが可能となるようにする。該方法により、空気の包含なく受容面上にパターンが得られるように、スタンプ面の一部の動きを制御することが可能となる。該スタンプは、格子のエンボスされた構造が維持される程度に、エンボスされたゾルゲル層が固化された後に、逆方向に移動させられても良い。
【0020】
第3の印刷原理は、不均一な表面のエンボスに有利であり、円筒の周囲に巻き付けられたシートにより形成されるスタンプを、ゾルゲル層上で展開するものである。スタンプとゾルゲル層との十分な接触を実現するため、該円筒は好ましくは、不均一な表面に追従するために十分に柔軟な発泡物質から作られたものである。
【0021】
前記層が光学干渉格子によりエンボスされた後、該層が硬化される。該層が硬化される際の温度に依存して、スタンプは該硬化の前に取り除かれるか、又は後に取り除かれる。低温においては、スタンプは硬化の間存在していても良い。該硬化が高温で起こる場合には、硬化の前にスタンプを取り除くことが好ましい。このとき、スタンプが取り除かれたときに、光学干渉格子を維持する層へとゾルゲル層が固化される。該ゾルゲル層は次いで、スタンプが取り除かれた後に硬化される。
【0022】
屈折率を増大させるため、第1のゾルゲル前駆物質はオルトチタン酸又はアルミン酸テトラアルキルに基づくものであっても良いし、オルトチタン酸又はアルミン酸テトラアルキルを有しても良い。
【0023】
アイロンのような幾つかの器具においては、平らな表面が望ましい。格子の上部における平坦な表面のため、格子は第2のゾルゲル層により被覆されても良い。格子の屈折特性を失わないため、干渉格子は、第1のゾルゲル層の屈折率よりも高い屈折率を持つ物質から成る第2の前駆物質を備える。該前駆物質は次いで硬化され、かくして高い屈折率の格子を形成する。第2のゾルゲル前駆物質は、オルトチタン酸又はアルミン酸テトラアルキルに基づくものであっても良く、いずれの物質とも市販されている。
【0024】
第1のゾルゲル層の屈折率よりも高い屈折率を持つ物質を有する第2の前駆物質の適用は、第1のゾルゲル前駆物質が、干渉格子が屈折させるように設計された波長範囲における光を吸収する化合物を有することを可能とする。このことは、観測者へと戻ってくる光が、格子のみから到来することを確実とする。色は視角に依存する。高い屈折率のコーティングが、所望の平坦な表面を得るために透明で非散乱型の上塗りを備えても良く、力学的な損傷から格子構造を保護しても良い。該上塗りは好ましくは、格子に到達する光が干渉することができ、また格子から反射された光が散乱によりぼやけないことを確実とするため、可能な限り透明且つ非散乱性のものである。該上塗りが入射光を散乱させる場合には、格子の視覚的効果は小さくなる。
【0025】
本発明の方法は更に、オルガノシラン層により被覆された器具であって、前記オルガノシラン層が光学干渉格子を備えることを特徴とする器具に関する。斯かる器具の例は、例えば掛け面に装飾を持つアイロン、シェーバー、装飾された電熱板を持つコーヒーメーカー、鍋及びその他のゾルゲル又はUV硬化コーティングを利用する製品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、マスタ格子から成型される柔軟なスタンプの製造を示す。図1Aは、例えばシリコンウェハのような、リトグラフにより生成されたマスタを示す。図1Bにおいて、液体ポリジメチルシロキサン(PDMS)前駆物質が、該マスタ上に注がれる。熱的に又はUVにより該液体が硬化された後、図1Cに示されるように柔軟なスタンプが剥がされる。エラストマーのマスタを作成するためPDMSが例示されたが、他のエラストマー物質が利用されても良い。好適なエラストマーは、成型されることが望ましい光記録媒体が著しく接着しないようなエラストマーである。
【0027】
器具が、第1のゾルゲル前駆物質を備えられる。基板に第1のゾルゲル前駆物質を吹き付けた後又はスクリーン印刷した後、層がゲル状態となる(図2A)。この状態の間、図2Bに示されるように、柔らかいゾルゲルに格子構造がエンボスされる。該ゾルゲルは次いで、スタンプが取り除かれたときに、光学干渉格子の形状を維持する層へと固化される(図2C)。このことは、例えば約60℃まで加熱することにより又はUVにより照射することによる、乾燥化によって為されても良い。後者の場合、ゾルゲル前駆物質にUV感応性のシリコン前駆物質が添加されるべきである。利用され得る斯かるUV感応性のシリコン前駆物質の例は、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)である。アイロンやホットプレートのような高温で使用される器具においては、MEMO物質の低い熱安定性のため、混合物におけるMEMOの量は、アルキルアルコキシシランの量に対して30重量パーセント以下であるべきである。該前駆物質がアルキルアルコキシシランに添加された場合、加水分解の間、アクリレート前駆物質がネットワークに組み込まれる。短い照射ステップの後、該構造が層中に維持される。
【0028】
図3Aは、スタンプが剥がされた後のゾルゲル層を示す。該格子は、格子の物質と空気とによる屈折率の周期的な差異のため、特定の波長の光を反射する。ゾルゲル層はシリカ粒子(MTMSマトリクスにおける所望の厚さを達成するために必要とされる)から成り、約1.4の屈折率を持つ。該格子が、好ましくは同様に約1.4の屈折率を持つシリカ、PTFE及びMTMSから成る上塗りにより該格子が直接被覆される場合には、屈折率の周期的な差異はもはやなくなり、反射光もなくなる。それ故、該格子(の一部)は、より高い屈折率を持つ物質により被覆される。図3Bは、例えばゾルゲル酸化チタン前駆物質を吹き付けられた格子を示す。図3Cは、より高い屈折率を持つ、硬化された酸化チタンのゾルゲル層を持つ格子を示す。
【0029】
酸化チタンのゾルゲルは、湿式化学的経路から容易に調製される。典型的な調製は、アルコール及び酸と結合された、チタン源としてのオルトチタン酸テトラアルキル前駆物質から開始される。適切な酸は、酢酸、蟻酸、マレイン酸及び塩酸である。該経路は、酸化チタンのゾルゲル層に、1.8と2.3との間の屈折率を与える。該屈折率は、硬化温度及び波長に依存する。硬化により酸化チタンのゾルゲルが形成された後に、図3に示されるように格子が上塗りに埋め込まれても良い。
【0030】
最適な視覚的効果のため、器具は滑らかである必要がある。白っぽい散乱であるアルミニウムのアイロン掛け面におけるように、器具が滑らかでない場合には、プレコートが塗布される必要がある。該プレコートは好ましくは、格子が反射させるように設計された波長範囲における光を吸収する。下にある層が光を観測者へと反射させる場合には、格子を通して、該格子の視覚的効果は背景ノイズ中に失われる。
【0031】
例1:
ガラスが充填されたポリアミドのシェーバーユニットが、本発明による装飾によりコーティングされる。それ故、11.8gの加水分解で凝縮された化合物3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Fluke社)と2.7gの水とが1時間攪拌され、それによりゾルゲル溶液を形成する。次いで、3.28gのAl(O−sec−Bu)3が、1.75gのアセト酢酸エチル(Aldrich社)と混合される。その結果のアルミニウム化合物が前記ゾルゲル溶液に加えられ、透明な溶液の形成に帰着する。その結果のラッカが、吹き付けにより筐体2に塗布される。光学格子は、PDMSスタンプを当てられた。コーティングは80℃で20分間硬化され、スタンプが剥がされた。
【0032】
例2:
黒色のゾルゲルが、以下の方法により調製された。ゾルAが、7.9重量部のMTMSと36.5重量部のエタノールを混合し、該混合物を100重量部のLudox AS-40に加えて作られる。5分間のゾルAの加水分解の後、以下の組成物が加えられる:95.3重量部のMTMS、1.8重量部のTEOS、29.9重量部のアルミナCR-6、4.5重量部のHeucodor Black 100-9、及び18.3重量部のエタノール。かくして形成されたゾルBが、5分間加水分解される。ゾルCが、1.76重量部のマレイン酸をゾルBに加え、激しい攪拌の下で45分間加水分解され調製される。全ての数字は、重量部である。
【0033】
陽極酸化されたアルミニウム円盤が、かくして得られた黒色のプレコートによりコーティングされ、続いて250℃で硬化された。該黒色のコーティングは10分間UVオゾン処理を施され、表面を酸化し親水性にされた。このことは、次の層に対する優れた接着を確実とする。続いて、エンボスにより構成された透明なゾルゲル層が塗布された。透明なゾルゲル層は、以下の構成要素を持っていても良い:水中でコロイド状である8重量部のLudox TM 50、7.5重量部のMTMS、及び1.2重量部の蟻酸。該透明なゾルゲル層がエンボスされ、スタンプが取り外されたときに該ゾルゲル層が光学干渉格子を維持するまで乾燥させられた。該スタンプが取り外され、該層は250℃で硬化された。
【0034】
該エンボスされた層の硬化及びUVオゾン処理の後、屈折率の高い物質が塗布される。該物質は、安定化チタンイソプロポキシド溶液から成り、ゾルD及びゾルEから調製される。
【0035】
ゾルDは、6.15重量部のブトキシエタノールと、次いで3.67重量部のエチルアクテトアセトナートとを、4グラムのチタンイソプロポキシドに加え、均一な混合物が得られるまで攪拌することにより調製される。
【0036】
ゾルEは、6.15重量部のブトキシエタノールと0.0317重量部の水との混合物である。ゾルEは次いで、素早くゾルDに加えられる。チタンが、より湿気に耐性のあるエチルアクテトアセトナートを持つ錯体を形成する。
【0037】
TiOゾルゲル層が低い濃度を持つ溶液から塗布され、これにより、一度に塗布されたときに200nmよりも厚いTiO層に対する亀裂を防ぐ。典型的な濃度は、0.07MTiOと0.7MTiOとの間である。塗布されたTiOは、250℃で硬化される。図4Aは、結果として得られる、2つのTiOの層を持つエンボスされた下塗りを示し、図4Bは拡大図である。好ましくは、格子の表面を完全に被覆するため、2乃至3個の層が塗布される。
【0038】
次いで、光学格子が透明な上塗りにより被覆される。透明なPTFEが充填された上塗りが、以下の方法によって調製されても良い。ゾルFが、7.9重量部のMTMSと36.5重量部のエタノールを混合し、その後に100重量部のLudox AS-40が加えられることにより作られる。5分間の加水分解の後、ゾルGが、95.3重量部のMTMSをゾルFに加えることにより調製される。ゾルGは5分間加水分解され、1.76重量部のマレイン酸が加えられる。45分間の加水分解の後、該混合物に以下の構成要素が加えられた:51.5重量部の脱イオン水、3.86重量部のZonyl FS-300、水に懸濁した92.1重量部のPTFE、及び7.7重量部のZonyl FS-300。全ての数字は重量部であり、激しい攪拌の下で行われる。
【0039】
透明な上塗りの塗布の後、本系は250℃で硬化される。図4Dは、PTFE上塗りにより被覆された、2つのTiOの層を持つエンボスされた下塗りを示す。その拡大図が図4Cに示される。これらのステップは、図5に示される干渉効果を生成する。円盤上に種々の格子及び周期が示されている。
【0040】
本発明の保護の範囲は、以上に説明された実施例に限定されるものではない。本発明は、それぞれの新規な特徴及び特徴の全ての組み合わせにより定義される。請求項における参照番号は、請求の範囲を限定するものではない。動詞「有する(comprise)」及びその語形変化の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素の存在を除外するものではない。要素に先行する不定冠詞「1つの(a又はan)」の使用は、複数の斯かる要素の存在を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1(A)】マスタ格子からの柔軟なスタンプの製造を示す。
【図1(B)】マスタ格子からの柔軟なスタンプの製造を示す。
【図1(C)】マスタ格子からの柔軟なスタンプの製造を示す。
【図2(A)】柔軟なスタンプの配置により光学干渉格子を生成するためのエンボスを示す。
【図2(B)】柔軟なスタンプの配置により光学干渉格子を生成するためのエンボスを示す。
【図2(C)】柔軟なスタンプの配置により光学干渉格子を生成するためのエンボスを示す。
【図3(A)】ゾルゲル層の屈折率よりも高い屈折率を持つ物質から成る第2の前駆物質の適用を示す。
【図3(B)】ゾルゲル層の屈折率よりも高い屈折率を持つ物質から成る第2の前駆物質の適用を示す。
【図3(C)】ゾルゲル層の屈折率よりも高い屈折率を持つ物質から成る第2の前駆物質の適用を示す。
【図3(D)】第2のゾルゲル層が、高い屈折率を持つ物質の上端に適用された状態を示す。
【図4(A)】屈折格子のSEM画像を示す。
【図4(B)】屈折格子のSEM画像を示す。
【図4(C)】透明な非散乱性の上塗りが備えられた状態を示す。
【図4(D)】透明な非散乱性の上塗りが備えられた状態を示す。
【図5(A)】黒色のゾルゲルプレコートを持つアルミニウムの円盤における干渉色の視覚的な図を示す。
【図5(B)】黒色のゾルゲルプレコートを持つアルミニウムの円盤における干渉色の視覚的な図を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図5A】

【図5B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具に装飾を備えるための方法であって、
前記器具は、柔軟なスタンプの配置により光学干渉格子を生成するためにエンボスされた第1のゾルゲル前駆物質を備え、
前記層が硬化される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記干渉格子は、ゾルゲル層の屈折率よりも高い屈折率を持つ物質から成る第2の前駆物質を備え、
前記第2の前駆物質が硬化されて高い屈折率の格子を形成し、
前記高い屈折率の格子が、任意に透明な非散乱性の上塗りを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のゾルゲル前駆物質は、前記干渉格子が屈折させるように設計された波長範囲における光を吸収する化合物を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のゾルゲル前駆物質は、オルガノシラン化合物を有する混成ゾルゲル前駆物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オルガノシラン化合物は、メチルトリメトキシシラン又はメチルトリエトキシシランを有する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のゾルゲル前駆物質はメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のゾルゲル前駆物質はオルトチタン酸テトラアルキルを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記上塗りは、シリカ及びPTFE懸濁液で満たされたオルガノシラン化合物を有する、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
オルガノシラン層により被覆された器具であって、前記オルガノシラン層が光学干渉格子を備えることを特徴とする器具。
【請求項10】
アイロン、シェーバー、コーヒーメーカー及び鍋から成る群に属する、請求項9に記載の器具。

【公表番号】特表2009−500190(P2009−500190A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519080(P2008−519080)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052133
【国際公開番号】WO2007/004128
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】