説明

噴出ヘッドのロック機構

【課題】 噴出ヘッドのロック機構をポンプの取付キャップに取着し、片手による廻動操作によってロック部材の係合、離脱が可能であるとともに、ロック部材が紛失することがないようにした噴出ヘッドのロック機構を提供することを目的とする。
【解決手段】 取付キャップと噴出ヘッドを具えたポンプと、取付キャップに取着され、噴出ヘッドの最上昇位置からの下降を防止するロック部材を備えた吐出容器において、取付キャップは、外周面に一対の軸受孔を穿設した噴出ヘッドの案内筒を具備し、ロック部材は、下端に軸片が嵌合する軸孔を具え、縦方向に延びる一対の縦杆の上端に、噴出ヘッドを最上昇位置に保持する円弧状の係止杆を有し、係止杆の正面に、噴出筒を覆う噴出カバーを設け、ロック部材の回動により噴出ヘッドのロックを切換え、噴出カバーで汚れの発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプー、リンス、化粧品等の液体容器を吐出するのに適したポンプの噴出ヘッドのロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容物吐出容器の噴出ヘッドのロック機構として、容器本体に対して上下動自在で、周面に内容物放出用ノズルを有する操作部に、横方向に押し広げられる開口部を有し、かつ、操作部の所定位置に係止するようにしたロック用部材を具えた噴出ヘッドのロック機構は、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2590902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のロック機構では、流通時、携帯時等において液体が不用意に吐出することは防止可能であるが、内容物吐出容器を継続して使用する場合には、ロック用部材を手元に置いておかなければならず、利便性に欠け、しかもロック用部材を紛失する等の問題もあった。
【0005】
また、ロック用部材の装着にあたっては、一方の手で吐出容器を支持し、他方の手でロック用部材を持って、ポンプの操作部と取付部の間に嵌挿しなければならないので、装着操作が片手ではできず、簡単でないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、噴出ヘッドのロック機構をポンプの取付キャップに取着し、片手による回動操作によってロック部材の係合、離脱が可能であるとともに、ロック部材が紛失することがないようにし、さらに衛生的な使用形態を得ることができるようにしたた噴出ヘッドのロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記技術的課題を解決するための、本発明の主たる構成は、
取付キャップと噴出ヘッドを具えたポンプと、取付キャップに取着されて噴出ヘッドの最上昇位置からの下降を防止するロック部材を備えた吐出容器において、
取付キャップは、外周面に一対の軸片を突設した案内筒を具備し、噴出ヘッドは、膨出突条を周設した外筒の外周面に、噴出口を開設した噴出筒を突設し、ロック部材は、下端に前記軸片が回動可能に嵌合する軸孔を開設し、縦方向に延びる一対の縦杆と、この縦杆の上端に、膨出突条に下方から突き当たって噴出ヘッドを最上昇位置に保持する円弧状の係止杆を有するものとし、
係止杆の正面には、噴出ヘッドを最上昇位置に保持した位置で、噴出ヘッドの噴出筒を覆う噴出筒カバーを設けたこと、
にある。
【0008】
内容液を収納した吐出容器に取付けられるポンプは、吐出容器に取付キャップで取付けられると共に、その内蔵したポンプ機能部から立ち上げたステムに噴出ヘッドを連通状態で結合しており、噴出ヘッドはステムの押上げ力により最上昇位置に保持されているが、押下げ外力の作用により下降して、ポンプ機能部の作用により、内容液を噴出筒の噴出口から吐出させる。
【0009】
ロック部材は、軸片を回動軸として起立姿勢に回動することにより、係止杆を膨出突条の下面に下方から係止させ、これにより噴出ヘッドの下降変位を不能とするロック状態、すなわち不使用状態となり、このロック状態で噴出筒カバーが噴出筒を覆うので、噴出筒に対するホコリの付着や、内容液の噴出口からの垂れ落ちが防止される。
【0010】
また、係止杆は、撓み変形して外筒に嵌め込み状に外嵌組付きするので、この係止杆の外筒に対する組付き弾力により、ロック部材による噴出ヘッドのロック状態は保持され、妄りに外れることがない。
【0011】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、ロック部材の縦杆の軸受下端部の円弧状となった外周面に、ロック部材が倒伏した際、取付キャップの螺合筒の頂壁上面に乗り越え係止するストッパー突片を設けた、ものである。
【0012】
ストッパー突片を設けたものにあっては、ロック状態を解除したロック部材が倒伏した際、螺合筒の頂壁上面に対する係止によりロック部材の倒伏姿勢を保持するので、ロックを解除したロック部材が、ポンプの使用の邪魔となることがない。
【0013】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、取付キャップの案内筒と、この案内筒に昇降変位可能に外嵌するロック部材の外筒の一方に、縦突条状のキーを設けると共に、他方にキーが係合するキー溝を設けた、ものである。
【0014】
キーとキー溝の組合せを設けたものにあっては、取付キャップの案内筒と噴出ヘッドの外筒の周方向に沿った位置合せを一定に保持することができるので、噴出ヘッドの噴出筒とロック部材の噴射筒カバーの周方向の位置合せが保たれ、これにより必ず噴出筒カバーを噴出筒に対向させることができる。
【発明の効果】
【0015】
ロック部材を取付キャップに回動自在として取着しているので、所望時に、噴出ヘッドに対してロック部材を係合、離脱させることが可能で、ロック部材を紛失する恐れをなくすことができる。また、ロック部材の操作にあたって、片手操作でロック部材の噴出ヘッドに対して係合、離脱させることができ、操作が簡単にできる。
【0016】
また、噴出筒に対するホコリの付着や、内容液の噴出口からの垂れ落ちが防止されるので、衛生的な使用状態を得ることができる。
【0017】
ストッパー突片を設けたものにあっては、ロックを解除したロック部材が、ポンプの使用の邪魔となることがないので、良好な内容液吐出動作を得ることができる。
【0018】
キーとキー溝の組合せを設けたものにあっては、必ず噴出筒カバーを噴出筒に対向させることができ、これにより噴出筒カバーを有効に作用させて衛生的な状態の確保が確実に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示す、正面図である。
【図2】図1に示した実施例の、一部破断した側面図である。
【図3】図1に示した実施例の、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の噴出ヘッドのロック機構について、実施例をあげ、図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜3において、Aはポンプの取付キャップ、Bはポンプに組付いた噴出ヘッド、Cはロック部材である。
【0022】
取付キャップAは、上部に噴出ヘッドBの上下動を案内する案内筒1を立設した螺着筒2によって形成され、案内筒1には、180度の角度を隔てて一対の軸片3が設けられている。
【0023】
噴出ヘッドBは、公知のシリンダーとピストンを有するポンプのステム4に取着されており、外筒5の外周面の上端位置に、内容液を吐出する噴出口8を開設した噴出筒7が配設され、外筒5の外周面の上端には、外鍔状の膨出突条9が周設されている。
【0024】
ロック部材Cは、合成樹脂、その他の素材からなり、下端に軸片3が回動可能に嵌合する軸孔13を開設した軸受下端部11を設けた2本の縦杆10と、この両縦杆10の上端に連結されて、噴出ヘッドBの最上昇位置において、噴出ヘッドBの膨出突条9に下方から突き当たって係止する円弧状の係止杆16とから構成されている。
【0025】
縦杆10の下端の軸受下端部11は半円弧状に構成されており、その螺着筒2の上面に対向する周面には、この螺着筒2の上面を乗り越えて係止するストッパー突片12が突設されており、このストッパー突片12は、螺着筒2の上面に対する係止作用により、ロック部材Cの倒伏姿勢(図2の二点鎖線を参照)を保持する。
【0026】
係止杆16は、半円以上の円弧状に構成されているので、外筒5に外嵌組付きする際には、弾力的に撓み変形し、その弾力により外筒5に対する組付き状態、すなわちロック状態を維持する。なお、係止杆16の両開放端には、相互間を外方に拡幅させた口鍔片18が付設されており、この口鍔片18のガイド作用により、係止杆16の外筒5に対する嵌合組付きが円滑に達成される。
【0027】
内筒1の外周面後側には縦突条状のキー14が突設されており、またこの案内筒1に外嵌する外筒5の内周面後側には縦溝状のキー溝15が設けられており、このキー14とキー溝15の係合により、取付キャップAに対する噴出ヘッドBの周方向に沿った位置合せが一定に確保され、これにより取付キャップAに取付けられたロック部材Cの噴出カバー17を、常に噴出筒7に正確に対向させることを可能としている。
【0028】
次に、本実施例の噴出ヘッドBのロック機構の使用形態と、作用効果について、説明する。
本実施例のポンプは、周知のものと同様に、噴出ヘッドBはポンプに装着されたスプリングの弾発力により最上昇位置に押上げられ、噴出ヘッドBの押下げ操作により噴出筒7から内容液を吐出することができるものである。
【0029】
図1、2に示すように、噴出ヘッドBの最上昇位置で、ロック部材Cを縦杆10が直立するように回動させると、係止杆16が噴出ヘッドB上端の膨出突条9に下方から突き当たり状に係合するので、噴出ヘッドBは最上昇位置に下降変位不能に保持され、ロック状態となる。この際、噴射筒カバー17が噴出筒7を覆うので、噴射口8へのホコリの付着とか噴射口8からの内容液の垂れ落ち等を防止して、噴出ヘッドBの衛生状態を高いレベルに保つ。
【0030】
また、係止杆16が、その弾力により外筒5に抱き付き状に組付くので、この抱き付き力によりロック部材Cのロック状態が保持され、ロック部材Cの妄りなロック状態の発生を確実に防止する。
【0031】
噴出ヘッドBの使用にあっては、図2の二点鎖線に示すように、ロック部材Cを倒伏方向に回動させると、係止杆16を膨出突条9との係合から外すことができ、噴出ヘッドBを押下げると、ポンプが作動され、噴出筒7より内容液を噴出することができる。
【0032】
この際、ロック部材Cの縦杆10の倒伏方向への回動により、ストッパー突片12が螺着筒2の上面を乗り越えて係止するので、ロック部材Cは、ロック解除姿勢に安定的に保持され、内容液の吐出使用の邪魔となることがない。反対に、ロック部材Cをロック解除姿勢からロック状態に切替える際には、ストッパー突片12が螺着筒2上面を乗り越えることになり、このストッパー突片12の螺着筒2上面に対する乗り越えの感触により、ロック部材Cのロック状態の切換え操作を、好ましいものとすることができる。
【0033】
このように、本実施例のロック機構は、ポンプの取付キャップAにロック部材Cを回動自在に取着したので、ロック部材Cを紛失することもなく、ロック部材Cの係脱が片手の操作で容易にできるようになり、衛生的な使用状況を得ることができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、噴出ヘッドのロック機構を取付キャップに取着し、所望に応じてロック部材を係合、離脱させることが可能であり、またロック部材を紛失する恐れがなくなったので、噴出ヘッドのロック機構として各種内容液の噴出容器、吐出容器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0035】
A ;取付キャップ
B ;噴出ヘッド
C ;ロック部材
1 ;案内筒
2 ;螺着筒
3 ;軸片
4 ;ステム
5 ;外筒
6 ;内筒
7 ;噴出筒
8 ;噴出口
9 ;膨出突条
10 ;縦杆
11 ;軸受下端部
12 ;ストッパー突片
13 ;軸孔
14 ;キー
15 ;キー溝
16 ;係止杆
17 ;噴出筒カバー
18 ;口鍔片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付キャップと噴出ヘッドを具えたポンプと、前記取付キャップに取着されて噴出ヘッドの最上昇位置からの下降を防止するロック部材を備えた吐出容器において、前記取付キャップは、外周面に一対の軸片を突設した案内筒を具備し、前記噴出ヘッドは、膨出突条を周設した外筒の外周面に、噴出口を開設した噴出筒を突設し、前記ロック部材は、下端に前記軸片が回動可能に嵌合する軸孔を開設し、縦方向に延びる一対の縦杆と、該縦杆の上端に、前記膨出突条に下方から突き当たって噴出ヘッドを最上昇位置に保持する円弧状の係止杆を有し、該係止杆の正面には、前記噴出ヘッドを最上昇位置に保持した位置で、前記噴出筒を覆う噴出筒カバーを設けた噴出ヘッドのロック機構。
【請求項2】
ロック部材の縦杆の軸受下端部の円弧状となった外周面に、ロック部材が倒伏した際、取付キャップの螺合筒の頂壁上面に乗り越え係止するストッパー突片を設けた請求項1に記載の噴出ヘッドのロック機構。
【請求項3】
取付キャップの案内筒と、該案内筒に昇降変位可能に外嵌する外筒の一方に、縦突条状のキーを設けると共に、他方に前記キーが係合するキー溝を設けた請求項1または2に記載の噴出ヘッドのロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−12078(P2012−12078A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150297(P2010−150297)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】