説明

噴出器

【課題】正立でも倒立でも使用可能な噴出器において、倒立使用時に使用開始当初から確実に内容物を噴射可能とする。
【解決手段】容器10の口部10aからポンプハウジング16を挿入して該口部にポンプ式噴出装置12を取り付ける。そして、口部の内周面とポンプハウジングとの間に小さな環状の隙間Gを形成し、ポンプハウジングに空気導入孔16iを設けて隙間Gを通して外部と連通して容器内を大気圧に保持する。一方、正立でも倒立でも使用可能とし、正立使用時は、容器の底部寄りに位置する第1開口16hを通して、倒立使用時は、容器の口部寄りに位置する第2開口16dを通して容器から内容物を吸い上げ、その内容物を各々加圧室Aに流入する。また、隙間Gを介して容器の口部と対向するポンプハウジングの外周面には、ローレット33などを設けて空気流通溝34を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器の口部にポンプ式噴出装置を取り付け、その噴出装置のステムを押し込んで加圧室の圧力を上昇し、加圧室の内容物を噴出装置の噴出釦の噴出口から外部に向けて噴射するとともに、容器内の内容物を加圧室に吸い上げる、洗髪用、洗面用、化粧用、または薬用などの噴出器に関する。特に、正立でも倒立でも使用することができ、正立使用時は第1開口を通して、倒立使用時は第2開口を通して容器から内容物を吸い上げる噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の噴出器の中には、例えば図9に示すように、容器1の口部1aからポンプハウジング2を挿入して口部1aにポンプ式噴出装置3を取り付け、口部1aの内周面とポンプハウジング2との間に小さな環状の隙間gを形成し、ポンプハウジング2に空気導入孔4を設けて隙間gを通して外部と連通して容器1内を大気圧に保持するものがある。
【0003】
そして、正立使用時は、容器1の底部寄りに位置する第1開口5を通して、倒立使用時は、容器1の口部寄りに位置する第2開口6を通して容器1から内容物を吸い上げ、その内容物を各々加圧室aに流入していた。ポンプ式噴出装置3には、正立使用時、第2開口6を通して加圧室aに空気が流入することを防止する第2逆止弁7と、倒立使用時、第1開口5を通して加圧室aに空気が流入することを防止する第1逆止弁8とを設けていた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−288210号公報
【特許文献2】特開平11−262704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この種の噴出器では、口部1aの内周面とポンプハウジング2との間の隙間gが小さいことから、倒立使用時に逆さにしたとき、この隙間gに内容物が入りにくく、空気が残って図10(A)に示すようにエア溜まり9が発生し、口部1aの内周面とポンプハウジング2との間の小さな環状の隙間gに空気が残り、エア溜まり9の近くの第2開口6を通して容器1から内容物を吸い上げるとき、図10(B)に示すようにエア溜まり9の空気を吸い込んでしまう問題があった。
【0006】
このような問題の発生を防止すべく、この種の従来の噴出器では、倒立使用時の内容物吸い込み口である第2開口6を空気導入孔4の径方向の反対の側に設け、できるだけエア溜り9が発生しないように工夫していた。しかし、これでもなお不十分であり、使用開始当初に、内容物が出ないで、空気が吐出される問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、正立でも倒立でも使用可能な噴出器において、倒立使用時に使用開始当初から確実に内容物を噴射可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成すべく、この発明は、容器の口部からポンプハウジングを挿入して該口部にポンプ式噴出装置を取り付け、口部の内周面と前記ポンプハウジングとの間に小さな環状の隙間を形成し、ポンプハウジングに空気導入孔を設けて隙間を通して外部と連通して容器内を大気圧に保持する一方、
正立でも倒立でも使用可能とし、
正立使用時は、容器の底部寄りに位置する第1開口を通して、倒立使用時は、容器の口部寄りに位置する第2開口を通して容器から内容物を吸い上げ、その内容物を各々加圧室に流入する噴出器において、
隙間を介して容器の口部と対向するポンプハウジングの外周面に空気流通溝を形成することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の噴出器において、ポンプハウジングの外周面にローレットを設けて空気流通溝を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の噴出器において、ポンプ式噴出装置に、正立使用時、第2開口を通して加圧室に空気が流入することを防止する第2逆止弁と、倒立使用時、第1開口を通して加圧室に空気が流入することを防止する第1逆止弁とを設けることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3いずれか1に記載の噴出器において、噴出釦を押してステムを押し込み、加圧室の圧力を上昇して容器の内容物を噴出釦の噴出口から外部に向けて噴射することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3いずれか1に記載の噴出器において、トリガを引いてステムを押し込み、加圧室の圧力を上昇して容器の内容物を噴出釦の噴出口から外部に向けて噴射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、正立でも倒立でも使用可能な噴出器において、小さな環状の隙間を介して容器の口部の内周面と対向するポンプハウジングの外周面に空気流通溝を形成するので、倒立使用時に逆さにしたとき、容器の口部とポンプハウジングとの間の隙間に空気と入れ換えに内容物が入りやすくなり、倒立使用時に使用開始当初から確実に内容物を噴射可能とすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、正立使用時、第2開口を通して加圧室に空気が流入することを防止する第2逆止弁と、倒立使用時、第1開口を通して加圧室に空気が流入することを防止する第1逆止弁とを設けるので、倒立使用時、第1逆止弁を閉じて第1開口を通して加圧室に空気が流入することを防止しつつ、第2逆止弁を開き、第2開口を通して加圧室に内容物を流入することができる。
【0015】
よって、そのように加圧室に空気が流入することを防止しつつ第2開口を通して内容物を流入することができるので、吸上パイプのパイプ長さを長くする必要がなく、吸上パイプのパイプ長さを短くすることができる分、小さな大きさの容器にも使用することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明による噴出器の縦断面を示す。
図示噴出器は、洗髪用、洗面用、化粧用、または薬用などに使用するものであり、図中符号10の容器と、符号12のポンプ式噴出装置とで構成し、正立でも倒立でも使用可能とする。
【0017】
容器10は、例えばプラスチック材料でボトル形状につくり、上向きの口部10aの外周面に雄ネジを設ける。そして、図示省略するが、この例では、内部に、内容物として洗髪剤、せっけん水、化粧液、または薬品などを収納し、口部10aにねじ付けてポンプ式噴出装置12を取り付ける。
【0018】
噴出装置12には、ネジキャップ13、ポンプハウジング16、シリンダ17、噴出釦30などを設ける。
【0019】
ポンプハウジング16は、第1部材16a、ジョイント部材16b、第2部材16cなどで構成する。
【0020】
第1部材16aの上端にはフランジを設け、頂部中央には凹部を形成する。また、その凹部の中心には通水孔16fをあけ、一方、第1部材16aの側面には径方向に第2開口16dを設けて、それら通水孔16fと開口16dとを区画する。
【0021】
ジョイント部材16bは円筒状に形成し、側面のほぼ中央には、径方向に貫通する通水孔16eをあける。そして、中央から一方の開口に向かって径が大きくなるテーパ部と、中央から他方の開口に向かって径が大きくなるテーパ部とをそれぞれ設ける。
【0022】
第2部材16cには第1開口16hを設け、吸上パイプ20の基端を圧入して第2部材16cの下端には吸上パイプ20を取り付ける。
【0023】
そして、ジョイント部材16bの一方の開口よりボール状の第2逆止弁18を入れてから、そのジョイント部材16bの上部を第1部材16aの下部にはめ込んだ後、ジョイント部材16bの他方の開口よりボール状の第1逆止弁19を入れてから、そのジョイント部材16bの下部に第2部材16cの上部をはめ込んで、ポンプハウジング16を形成する。
【0024】
したがって、ポンプハウジング16には、第2開口16dを有する第1部材16aと、第1開口16hを有する第2部材16cと、それら第1部材16aと第2部材16cを連結し、第1逆止弁19および第2逆止弁18を設けるジョイント部材16bとを備えることとなる。
【0025】
このようにして形成したポンプハウジング16の形状は、上端にフランジを備え、途中に幾つかの段部を有して下方に向け順次小径としている。
【0026】
そして、そのポンプハウジング16の内部には、吸上パイプ20内および第1開口16hを通ってからジョイント部材16b内を通って後、通水孔16eへ至る正立時吸上流路、および第1部材16aの第2開口16dを通ってからジョイント部材16b内を通って後、通水孔16eへ至る倒立時吸上流路がある。
【0027】
また、ポンプハウジング16の内部には、ジョイント部材16bの通水孔16eから、ジョイント部材16bの外周と第1部材16aの内周との間を通って、第1部材16aの凹部の中心にあけた通水孔16fへ至るシリンダ吸上流路がある。
【0028】
シリンダ17は円筒状に形成する。そして、シリンダ17の下部内周には複数の縦溝17aを設け、それらの縦溝17aなどによって、一方の開口と他方の開口とを連通する。
【0029】
そのシリンダ17の一方の開口より、シリンダ入口弁22を設けるブッシング23を内部に入れる。そして、シリンダ17の一方の開口を、シリンダ入口弁22を取り付けたブッシング23で塞ぐ。
【0030】
シリンダ入口弁22は、弾性材料で円筒状に形成する。そして、そのシリンダ入口弁22で、ブッシング23の側面に設ける通水孔23aを塞ぐ。
【0031】
また、シリンダ17の他方の開口より、コイルスプリング25をシリンダ17内に入れる。その後、シリンダ出口弁27を取り付け、ピストンを兼ねるステム29をシリンダ17内に入れる。そして、シリンダ17の他方の開口を、シリンダ出口弁27を取り付けたステム29で塞ぐ。
【0032】
ステム29は、管状で、内部に排出通路29aを設ける。また、ステム29の下部外周には円周溝を形成する。そして、その円周溝には、径方向に幾つかの横孔29bをあけて、その横孔29bと排出通路29aとを連通する。
【0033】
一方、シリンダ出口弁27は、弾性材料で円筒状に形成し、上部に内面から内向きに突出する環状凸部27aを設ける。そして、その環状凸部27aを上述した円周溝にはめ付け、シリンダ出口弁27の外周上下部をシリンダ17の内周面に摺動自在に押し当てる。
【0034】
それから、そのシリンダ17を、上述したポンプハウジング16の頂部中央に形成した凹部にはめ込んで、シリンダ17にポンプハウジング16を取り付ける。
【0035】
次に、シリンダ出口弁27上にパッキン28を載せてから、シリンダ17にネジキャップ13を被せて、シリンダ出口弁27を上から押さえて、ピストンを兼ねるステム29をコイルスプリング25の付勢力に抗して少し押し下げ、シリンダ17内に圧力室Aを区画形成する。
【0036】
また、シリンダ17にネジキャップ13を被せたとき、ネジキャップ13の頂部中心に設けた開口より、ステム29の上端側をネジキャップ13から上向きに突出する。
【0037】
次いで、ステム29の上端には、噴出釦30を取り付ける。噴出釦30には、ノズル部材31を横向きに設け、そのノズル部材31の噴出口31aとステム29内とを内部の噴出通路30aを介して連通する。
【0038】
次に、噴出釦30を被って不図示のオーバーキャップを被せ、そのオーバーキャップをネジキャップ13の外周に取り付ける。
【0039】
次いで、容器10の口部10aから吸上パイプ20に続けてポンプハウジング16を挿入し、口部16a上にパッキン14を介して、ポンプハウジング16のフランジを載せ、下部内周に雌ネジを設けるネジキャップ13を容器10にねじ付けて口部10aにポンプ式噴出装置12を取り付ける。このとき、噴出装置12の吸上パイプ20は、容器10の底近くまで伸ばす。
【0040】
ところで、ポンプハウジング16には、第1部材16aのフランジの内側を切り欠いて1つまたは複数の空気導入孔16iを設ける。また、図2(A)に示すように、口部10aの内周面とポンプハウジング16の第1部材16aの外周面との間に小さな環状の隙間Gを形成する。例えば図1に示すように、口部10aの内径D1をφ9.2とし、第1部材16aの外径D2をφ8.7として、0.25の隙間Gを形成する。
【0041】
この発明では、図2(A)に示すように、その隙間Gを介して容器10の口部10aと対向するポンプハウジングの第1部材16aの外周面にローレット33を設けて縦方向に平行な空気流通溝34を複数形成する。そして、その空気流通溝34を設けた隙間Gを通して外部と連通して、図2(B)に示すように容器10内を大気圧に保持する。
【0042】
さて、いまこの噴出器にあって、正立時は、重力の作用で、第1逆止弁19は第1テーパ部19aに落下し、第2逆止弁18は、第1テーパ部18aに落下している。そして、正立状態で使用するとき、先ず、噴出釦30を被っているオーバーキャップをネジキャップ13から取り外して使用可能状態とする。
【0043】
そして、噴出釦30に手を掛けて、コイルスプリング25の付勢力に抗してシリンダ出口弁27とともにステム29を押し込む。
【0044】
すると、シリンダ出口弁27がシリンダ17内面との摩擦抵抗によってそのままの位置を保とうとするのに対して、ステム29は移動してシリンダ出口弁27の環状凸部27aの上面にステム29の円周溝の上段部が接触する。
【0045】
そして、ステム29の押し込みとともに、シリンダ出口弁27が変形して横孔29bを開き、加圧室Aとステム29内の排出通路29aとを連通する。また、ステム29の押し込みとともに、加圧室A内の圧力を上昇して、加圧室A内の内容物を、横孔29bを通してステム29の排出通路29aに送り出し、排出通路29aを通して噴出釦30の噴出通路30aに入れ、その噴出通路30aを通してノズル部材31の噴出口31aから外部に向けて噴射する。
【0046】
その噴射を続けていると、やがて加圧室A内の圧力が低下して、噴出口31aから内容物が出なくなる。そして、噴出釦30をさらに押し込むと、やがてシリンダ出口弁27が、シリンダ17の内周面に設けた段部17bに突き当って変形し、図3に示すようになる。
【0047】
それから、噴出釦30より手を離すと、コイルスプリング25の付勢力に基づいてステム29を押し出して元の位置に復帰する。
【0048】
このとき、シリンダ出口弁27が、シリンダ17内面との摩擦抵抗によってそのままの位置を保とうとするのに対し、ステム29は移動して、環状凸部27aの内面で横孔29bを塞いでシリンダ出口弁27を閉じ、排出通路29aと加圧室A間の連通を遮断する。そして、シリンダ出口弁27の環状凸部27aの下面にステム29の円周溝の下段部を接触して内容物の噴出を完全に止める。
【0049】
このように、シリンダ出口弁27を閉じつつ、ステム29とともにシリンダ出口弁27をスライドすることで、加圧室A内の圧力を低下する。その加圧室A内の圧力の低下によって、図4に示すように、シリンダ入口弁22が弾性変形して通水孔23aを開く。すると、シリンダ吸上流路によって、加圧室Aとジョイント部材16b内とが連通し、ジョイント部材16b内の圧力が低下する。
【0050】
その圧力の低下によって、第2逆止弁18は第1テーパ部18aに突き当たったまま、第2開口16dを通して加圧室Aに空気が流入することを防止する一方、第1逆止弁19は浮き上がって開となり、加圧室Aと容器10内とを連通して容器10内の底部にある内容物を、正立時吸上流路およびシリンダ吸上流路を介し、容器10の底部寄りに位置する第1開口16hを通して通水孔23aから縦溝17aを経て、シリンダ17の加圧室Aに吸い上げてシリンダ17内に内容物を流入する。
【0051】
以上の繰り返しにより、正立使用時、噴出釦30を押してステム29を押し込み、加圧室Aの圧力を上昇して容器10の内容物を噴出釦30の噴出口31aから外部に向けて噴射するとともに、吸上パイプ20内および第1開口16hを通して容器10から内容物を吸い上げ、その内容物をシリンダ17内に流入する。
【0052】
使用後は、再び噴出釦30を被ってオーバーキャップを被せ、そのオーバーキャップをネジキャップ13の外周に取り付けて保管する。
【0053】
一方、この噴出器において、倒立状態で使用するときは、先ず、ネジキャップ13からオーバーキャップを取り外して使用可能状態とし、図5に示すように逆さにする。倒立時、重力の作用で、第1逆止弁19は第2テーパ部19bに落下し、第2逆止弁18は第2テーパ部18bに落下している。また、図示省略するが、内容物は、容器10の口部10a側に移動する。
【0054】
そして、噴出釦30に手を当てて、コイルスプリング25の付勢力に抗してシリンダ出口弁27とともにステム29を押し込む。すると、シリンダ出口弁27が、シリンダ17内面との摩擦抵抗によってそのままの位置を保とうとするのに対して、ステム29は移動してシリンダ出口弁27の環状凸部27aの下面にステム29の円周溝の下段部が接触する。
【0055】
そして、ステム29の押し込みとともに、シリンダ出口弁27が変形して横孔29bを開き、加圧室Aとステム29内の排出通路29aとを連通する。また、ステム29の押し込みとともに、加圧室A内の圧力を上昇して、加圧室A内の内容物を、横孔29bを通してステム29の排出通路29aに送り出し、排出通路29aを通して噴出釦30の噴出通路30aに入れ、その噴出通路30aを通してノズル部材31の噴出口31aから外部に向けて噴射する。
【0056】
その噴射を続けていると、やがて加圧室A内の圧力が低下して、噴出口31aから内容物が出なくなる。そして、噴出釦30をさらに押し込むと、シリンダ出口弁27が、シリンダ17の段部17bに突き当たって変形し、図6に示すようになる。
【0057】
それから、噴出釦30より手を離して、コイルスプリング25の付勢力に基づいてステム29を押し出して復帰する。すると、シリンダ出口弁27が、シリンダ17内面との摩擦抵抗によってそのままの位置を保とうとするのに対し、ステム29は移動して、環状凸部27aの内面で横孔29bを塞いでシリンダ出口弁27を閉じ、排出通路29aと加圧室A間の連通を遮断する。そして、シリンダ出口弁27の環状凸部27aの上面にステム29の円周溝の上段部を接触して内容物の噴出を完全に止める。
【0058】
このようにして、シリンダ出口弁27を閉じつつ、ステム29とともにシリンダ出口弁27をスライドすることで、加圧室A内の圧力を低下する。その加圧室A内の圧力の低下によって、図7に示すように、シリンダ入口弁22が弾性変形して通水孔23aを開く。すると、シリンダ吸上流路によって、加圧室Aとジョイント部材16b内とが連通し、ジョイント部材16b内の圧力が低下する。
【0059】
その圧力の低下によって、第1逆止弁19は第2テーパ部19bに突き当たったまま、吸上パイプ20内および第1開口16hを通して加圧室Aに空気が流入することを防止する一方、第2逆止弁18は浮き上がって開となり、加圧室Aと容器10内とを連通して倒立した容器10内の口部10a側にある内容物を、倒立時吸上流路およびシリンダ吸上流路を介し、容器10の口部10a寄りに位置する第2開口16dを通して通水孔23aから縦溝17aを経て、シリンダ17の加圧室Aに吸い上げてシリンダ17内に内容物を流入する。
【0060】
以上の繰り返しにより、倒立使用時、噴出釦30を押してステム29を押し込み、加圧室Aの圧力を上昇して容器10の内容物を噴出釦30の噴出口31aから外部に向けて噴射するとともに、第2開口16dを通して容器10から内容物を吸い上げてシリンダ17内に流入する。
【0061】
そして、使用後は、再び噴出釦30を被ってオーバーキャップを被せ、そのオーバーキャップをネジキャップ13の外周に取り付けて保管する。
【0062】
ところで、この例によれば、隙間Gを介して容器10の口部10aの内周面と対向するポンプハウジング16の第1部材16aの外周面にローレット33を設けて複数の空気流通溝34を形成し、空気の流通性を良くする。よって、倒立使用時に図6に示すように噴出器を逆さにしたとき、図8(A)に示すように容器10の口部10aとポンプハウジング16との間の隙間Gにエア溜りを発生することなく、図8(B)に示すように空気を流通して隙間Gに空気と入れ換えに内容物を入りやすくし、倒立使用時に使用開始当初から確実に内容物を噴射可能とすることができる。
【0063】
また、正立使用時、第2開口16dを通して加圧室Aに空気が流入することを防止する第2逆止弁18と、倒立使用時、第1開口16hを通して加圧室Aに空気が流入することを防止する第1逆止弁19とを設けるので、倒立使用時、第1逆止弁19を閉じて第1開口16hを通して加圧室Aに空気が流入することを防止しつつ、第2逆止弁18を開き、第2開口16dを通して加圧室Aに内容物を流入することができる。
【0064】
よって、そのように加圧室Aに空気が流入することを防止しつつ第2開口16dを通して内容物を流入することができるので、吸上パイプ20のパイプ長さを長くする必要がなく、吸上パイプ20のパイプ長さを短くすることができる分、小さな大きさの容器10にも使用することができる利点がある。
【0065】
なお、上述した例では、噴出釦30を押してステム29を押し込み、加圧室Aの圧力を上昇して容器10の内容物を噴出釦30の噴出口31aから外部に向けて噴射する押釦型のポンプ式噴出装置12で説明したが、この発明はそれに限られず、トリガを引いてステムを押し込み、加圧室の圧力を上昇して容器の内容物を噴出釦の噴出口から外部に向けて噴射するトリガ型のポンプ式噴出装置に使用しても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明による噴出器の縦断面図である。
【図2】その部分拡大図で、(A)はポンプハウジングを断面にしないで、(B)はそれも断面にして示す。
【図3】正立使用時のステム押し込み状態図である。
【図4】正立使用時に、押し込み後、手を離した状態図である。
【図5】その噴出器を逆さにした状態図である。
【図6】その噴出器の倒立使用時のステム押し込み状態図である。
【図7】倒立使用時に、押し込み後、手を離した状態図である。
【図8】その部分拡大図で、(A)はポンプハウジングを断面にしないで、(B)はそれも断面にして示す。
【図9】従来の噴出器の縦断面図である。
【図10】その部分拡大図で、(A)はポンプハウジングを断面にしないで、(B)はそれも断面にして示す。
【符号の説明】
【0067】
10 容器
10a 口部
12 ポンプ式噴出装置
16 ポンプハウジング
16i 空気導入孔
16d 第2開口
16h 第1開口
17 シリンダ
18 第2逆止弁
19 第1逆止弁
20 吸上パイプ
29 ステム
30 噴出釦
31a 噴出口
33 ローレット
34 空気流通溝
A 加圧室
G 隙間




【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部からポンプハウジングを挿入して該口部にポンプ式噴出装置を取り付け、該口部の内周面と前記ポンプハウジングとの間に小さな環状の隙間を形成し、該ポンプハウジングに空気導入孔を設けて前記隙間を通して外部と連通して前記容器内を大気圧に保持する一方、
正立でも倒立でも使用可能とし、
正立使用時は、前記容器の底部寄りに位置する第1開口を通して、倒立使用時は、前記容器の口部寄りに位置する第2開口を通して容器から内容物を吸い上げ、その内容物を各々加圧室に流入する噴出器において、
前記隙間を介して前記容器の口部と対向する前記ポンプハウジングの外周面に空気流通溝を形成することを特徴とする噴出器。
【請求項2】
前記ポンプハウジングの外周面にローレットを設けて前記空気流通溝を形成することを特徴とする、請求項1に記載の噴出器。
【請求項3】
前記ポンプ式噴出装置に、正立使用時、前記第2開口を通して前記加圧室に空気が流入することを防止する第2逆止弁と、倒立使用時、前記第1開口を通して前記加圧室に空気が流入することを防止する第1逆止弁とを設けることを特徴とする、請求項1または2に記載の噴出器。
【請求項4】
噴出釦を押してステムを押し込み、前記加圧室の圧力を上昇して前記容器の内容物を前記噴出釦の噴出口から外部に向けて噴射することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載の噴出器。
【請求項5】
トリガを引いてステムを押し込み、前記加圧室の圧力を上昇して前記容器の内容物を噴出釦の噴出口から外部に向けて噴射することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載の噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−132453(P2008−132453A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321349(P2006−321349)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】