説明

噴射ヘッド、及びエアゾール噴射装置

【課題】内部に水が溜まるのを防止することができる噴射ヘッド、及びエアゾール噴射装置を提供する。
【解決手段】本発明は、エアゾール容器に取り付けられ、その内容物を噴射する噴射ヘッドであって、エアゾール容器上部の外周面に密着する環状の周縁部を有し、当該エアゾール容器の上部を覆うヘッド本体と、ヘッド本体に取り付けられ、エアゾール容器上部のバルブステムを押圧可能なボタンと、を備え、ヘッド本体とボタンとの間には、当該ヘッド本体の内部空間に通じる間隙が形成されており、周縁部とエアゾール容器上部の外周面との間には、ヘッド本体の内部空間と外部とを連通し、周縁部の下端部で開口する少なくとも1つの連通路が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に取り付けられ、その内容物を噴射する噴射ヘッド、及びエアゾール噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤、消臭剤などが充填された一般的なエアゾール容器は、上面にバルブステムが設けられ、このバルブステムを押圧することで、内容物が噴射される。通常、このようなエアゾール容器には、バルブステムの押圧を容易にするため、例えば特許文献1に示される噴射ヘッドが取り付けられている。すなわち、エアゾール容器に噴射ヘッドを取り付けたエアゾール噴射装置が広く用いられている。この装置では、噴射ヘッドに設けられたボタンを押すと、バルブステムが押圧され、内容物が噴射ヘッドから噴射される。
【特許文献1】特開2002−308360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような噴射ヘッドにおいては、噴射ヘッドの上面に開口を形成し、この開口にボタンを嵌め込んでいる。このとき、ボタンの動作をスムーズにするため、開口とボタンとの間は密着させるのではなく、隙間を形成している。このような隙間には水分が進入するおそれがあるため、噴射ヘッド内に水が溜まることがある。特に、エアゾール噴射装置を湿度の高い部屋に置いた場合、水が溜まりやすくなる。この状態でエアゾールの噴射を行うと、噴射ヘッドを対象物に向けて傾ける際に、ボタン周囲の隙間から水が流れ出し、対象物及びその周囲を不要に濡らすおそれがある。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、内部に水が溜まるのを防止することができる噴射ヘッド、及びエアゾール噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エアゾール容器に取り付けられ、その内容物を噴射する噴射ヘッドであって、エアゾール容器上部の外周面に密着する環状の周縁部を有し、当該エアゾール容器の上部を覆うヘッド本体と、前記ヘッド本体に取り付けられ、エアゾール容器上部のバルブステムを押圧可能なボタンと、を備え、前記ヘッド本体とボタンとの間には、当該ヘッド本体の内部空間に通じる間隙が形成されており、前記周縁部とエアゾール容器上部の外周面との間には、前記ヘッド本体の内部空間と外部とを連通し、周縁部の下端部に開口する少なくとも1つの連通路が形成されている。
【0006】
この構成によれば、ヘッド本体の周縁部とエアゾール容器上部の外周面との間に、ヘッド本体の内外を連通する少なくとも1つの連通路が形成されている。そのため、ヘッド本体とボタンとの間の間隙から水分が進入したとしても、ヘッド本体の内部空間の水分は、下方へ向く連通路を介して外部に排出される。そのため、従来例のように使用時にヘッド本体の間隙から水が流れ出すのを防止でき、ヘッド本体内に進入した水を逐次排出することができる。
【0007】
上記噴射ヘッドの連通路は、種々の態様が可能である。例えば、ヘッド本体の周縁部において、エアゾール容器の上部周縁と対向する内壁面に、少なくとも1つの突出部を形成することができる。この突出部がエアゾール容器上部の外周面に当接すると、突出部を挟む両側には隙間が形成される。この隙間が連通路となって水分の排出が行われる。特に、ヘッド本体を弾性変形可能なプラスチックなどで形成した場合、突出部を設けることで、周縁部が周方向に引っ張られるため、周縁部がエアゾール容器にさらに密着する。そのため、連通路が設けられている部分以外の箇所では、周縁部がエアゾール容器に対して強固に固定され、噴射ヘッドがエアゾール容器から容易に脱落するのを防止することができる。
【0008】
或いは、連通路を次のように構成することもできる。すなわち、周縁部において、エアゾール容器上部の外周面と対向する内壁面に、少なくとも1つの溝を形成する。この溝を連通路として、水の排出を行うことができる。
【0009】
エアゾール容器は種々の態様があり、例えば、上部周縁に、環状凹部が形成されているものがある。このようなエアゾール容器に対しては、ヘッド本体を次のように構成することができる。まず、ヘッド本体の周縁部に、環状凹部に嵌合する凸部を形成する。このとき、連通路と対応する位置には、凸部を形成しないでおく。この構成によれば、エアゾール容器の環状凹部とヘッド本体の凸部とが嵌合するため、両者を強固に固定することができる。このとき、連通路が形成される位置には凸部が形成されないため、水の排出が凸部によって妨げられるのを防止することができる。このような形態の例としては、例えば、複数の凸部を所定間隔をおいて周方向に形成し、凸部間に連通路を形成するという方法がある。
【0010】
本発明に係るエアゾール噴射装置は、上記問題を解決するためになされたものであり、エアゾール容器と、上述したいずれかの噴射ヘッドと、を備えている。この構成によれば、上述したように、使用時に噴射ヘッドから水が流れ出すのを防止でき、ヘッド本体内に進入した水を逐次排出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る噴射ヘッド及びエアゾール噴射装置によれば、内部に水が溜まるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るエアゾール噴射装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係るエアゾール噴射装置の斜視図、図2はエアゾール容器の上部斜視図及び側面図である。なお、エアゾールは、芳香剤、消臭剤、洗浄剤、殺虫剤用など種々のものが適用可能である。
【0013】
図1に示すように、このエアゾール噴射装置は、エアゾール容器1と、その上面に取り付けられエアゾールを噴射する噴射ヘッド2とで構成されている。図2に示すように、エアゾール容器1は、円筒状の容器本体11と、その上面に取り付けられた管状のバルブステム12とを有している。容器本体11は、金属などで形成され、内部にエアゾールが充填されている。また、容器本体11は、上面がドーム状に隆起し、その頂部にバルブステム12が取り付けられている。バルブステム12は、図示を省略するバネによって上方に付勢され、このバネに抗してバルブステム12を押圧すると、内容物であるエアゾールが噴射される。また、容器本体上部の周縁には環状の凹部111が形成されており、この環状凹部111に、後述する噴射ヘッド2の凸部が嵌合可能となっている。
【0014】
続いて、噴射ヘッドについて、図3を参照しつつ説明する。図3は噴射ヘッドの斜視図(a)及びそのA−A線断面図(b)である。噴射ヘッド2は、バルブステム12の押圧を容易にするために、エアゾール容器1の上面に取り付けられるものであり、プラスチックなどの樹脂で形成されている。図3に示すように、噴射ヘッド2は、筒状に形成されたヘッド本体21と、その上面に取り付けられるボタン22とで構成されている。ヘッド本体21は、下端が開口しており、その開口内壁面がエアゾール容器1の上部の外周面に密着する。一方、ヘッド本体21の上部には、径方向の全長に渡る窪み211(211a,211b)が形成されており、この窪み211の中央に開口212が形成されている。この開口212には、上述したボタン22が嵌め込まれており、上下動可能にヘッド本体21に支持されている。
【0015】
ボタン22の下部には、バルブステム12が差し込まれる挿入口が形成されており、この挿入口から上方に向かってエアゾールが通過する流路221が形成されている。流路221は、挿入口から上方に延びた後、水平方向に折れ曲がり、ボタン22の側面に取り付けられたノズル222まで延びている。したがって、バルブステム12から流出したエアゾールは流路221を介してノズル222から噴射される。なお、図3(b)に示すように、ヘッド本体21において、ボタン22を挟む位置にある一対の窪みのうち、ノズル222を向く側の窪み211aは、噴射されたエアゾールの通路となっている。他方の窪み211bは、ボタン22を指で押しやすくするための切欠部として機能する。
【0016】
次に、噴射ヘッドとエアゾール容器との固定について図4及び図5も参照しつつ説明する。図4は噴射ヘッドを下方から見た斜視図であり、図5は図3(b)のB−B線断面図である。図3(b)に示すように、ヘッド本体21下部開口の内径は、エアゾール容器1の上部の外径とほぼ同じであり、これによって開口周縁部213がエアゾール容器1上部の外周面と液密に密着する。但し、後述するように、密着領域の一部には、水抜き用の連通路が形成されている。図4に示すように、ヘッド本体下部開口の内壁面には、周方向に延びる複数の凸部214が形成されている。これら凸部214は、所定間隔をおいて周方向に沿って並んでおり、上述したエアゾール容器1の上部に形成された環状凹部111に嵌合する(図3(b)参照)。このように、凸部214と環状凹部111とが嵌合することで、噴射ヘッド2がエアゾール容器1から離脱するのを防止している。また、これら凸部214のうち、隣接する一対の凸部214の間には、軸方向に延びる突出部215が形成されている。この突出部215は、凸部214よりも上方に配置されており、図5に示すように、エアゾール容器1上部の外周面に当接する。
【0017】
上記のように構成されたエアゾール噴射装置は、次のように使用される。まず、指でボタン22を押すことにより、ボタン22がバルブステム12を押圧する。これにより、バルブステム12からエアゾールが噴射され、ボタン内部の流路221に流れ込む。そして、流出したエアゾールは、流路221を通過してノズル222から外部へ噴射される。一方、ボタン22から指を離すと、バネによってバルブステム12が初期位置に戻され、エアゾールの噴射が終了する。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、ヘッド本体下部開口の内壁面に突出部215が形成されているため、次の効果を得ることができる。図5に示すように、突出部215はエアゾール容器1上部の外周面に当接するため、その両側には隙間Sが形成される。すなわち、突出部215がヘッド本体21の開口周縁部213とエアゾール容器1上部の外周面との間に挟まるので、ヘッド本体21の開口周縁部213は、周方向に弾性変形して引っ張られる。これにより、突出部215の周方向の両側には隙間Sが形成される。したがって、ヘッド本体21の開口周縁部213とエアゾール容器1上部の外周面とは密着しているのであるが、このような隙間Sが形成されるので、ヘッド本体21の内部は、下方に向かって外部と連通することになる。
【0019】
ところで、上記のように、ヘッド本体21の上部開口212にはボタン22が嵌め込まれているが、ボタン22の上下動をスムーズにするため、ボタン22と開口212の縁部との間には、間隙が生じている。このような間隙があると、例えば、エアゾール噴射装置を湿度の高い部屋に置いた場合には、間隙から水分が進入し、噴射ヘッド2内に水が溜まるおそれがある。これに対して、本実施形態では、ヘッド本体21の開口周縁部213とエアゾール容器1上部の外周面との間に隙間Sが形成されているので、溜まった水を逐次排出することができる。したがって、従来例のように、エアゾール噴射装置を使用する際に、ボタン22の間隙から水が流れ出て噴射対象物を不要に濡らすのを防止することができる。なお、この突出部215による隙間Sは、水の表面張力が作用しないで流れ出る程度の大きさであればよい。そのため、突出部215の高さは、例えば、0.3〜1mm程度にすることができる。
【0020】
特に、本実施形態では、突出部215によってヘッド本体21の周縁部213が引っ張られるため、周縁部213によりエアゾール容器1を締め付けることができる。その結果、周縁部213とエアゾール容器1とをさらに強固に密着させることができる。
【0021】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、噴射ヘッド2の周縁部213に突出部215を設けることで、周縁部213とエアゾール容器1との間に隙間Sを形成しているが、噴射ヘッド2の内部空間から下向きに外部へ通じる連通路が形成できるのであれば、その他の形態でもよい。例えば、図6に示すように、ヘッド本体下部開口の内壁面に軸方向に延びる溝216を形成する。この溝216は、開口内壁面とエアゾール容器1との密着領域を通過し開口の端部まで延びている。そのため、ヘッド本体内部の水を排出できるようになっている。
【0022】
また、上記実施形態では、噴射ヘッドの内壁面に複数の凸部214を設けているが、凸部の構成は、特には限定されない。例えば、周方向に連続する凸部を形成し、突出部や溝が形成されている領域のみ、不連続として凸部を形成しないようにすることもできる。また、噴射ヘッド2の内壁面に環状凹部を形成するとともに、エアゾール容器の外周面に凸部を形成し、これらを嵌合することで噴射ヘッド2をエアゾール容器に固定することもできる。この場合、上述した突出部や溝が形成されている領域のみ、環状凹部や凸部を形成しないようにする。
【0023】
また、噴射ヘッドの形態は、特には限定されず、水が浸入するような間隙が形成され、エアゾール容器の内容物を外部に噴射できるような形態であればよい。例えば、図7に示すような、いわゆるムースを噴射するような噴射ヘッドにも適用することができる。この噴射ヘッドのヘッド本体81には、上面に、揺動可能に連結された円形状の上面部82が設けられており、この上面部82にエアゾール容器1の内容物を噴射する噴射管83、及びボタン84が形成されている。この例では、ボタン84を押せば、上面部82が揺動し、これによってエアゾール容器1のステムバルブ12が押し込まれる。そして、ステムバルブ12から流れ出た内容物は、噴射管83から噴射される。また、このヘッド本体81の上面部82の周囲には、上面部82が揺動できるように間隙85が形成されており、この間隙85から水が浸入可能となっている。したがって、このような形態のヘッド本体81の開口周縁部86の内壁面に、上述した突出部215や溝216を形成すれば、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るエアゾール噴射装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】エアゾール容器の上部斜視図及び側面図である。
【図3】噴射ヘッドの斜視図(a)及びそのA−A線断面図(b)である。
【図4】図4は噴射ヘッドを下方から見た斜視図である。
【図5】図3(b)のB−B線断面図である。
【図6】本発明に係る噴射ヘッドの他の実施形態を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図7】本発明に係る噴射ヘッドに適用されるヘッド本体の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 エアゾール容器
2 噴射ヘッド
21 ヘッド本体
213 周縁部
214 凸部
215 突出部
216 溝
22 ボタン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に取り付けられ、その内容物を噴射する噴射ヘッドであって、
エアゾール容器上部の外周面に密着する環状の周縁部を有し、当該エアゾール容器の上部を覆うヘッド本体と、
前記ヘッド本体に取り付けられ、エアゾール容器上部のバルブステムを押圧可能なボタンと、を備え、
前記ヘッド本体とボタンとの間には、当該ヘッド本体の内部空間に通じる間隙が形成されており、
前記周縁部とエアゾール容器上部の外周面との間には、前記ヘッド本体の内部空間と外部とを連通し、前記周縁部の下端部で開口する少なくとも1つの連通路が形成されている、噴射ヘッド。
【請求項2】
前記周縁部において、エアゾール容器上部の外周面と対向する内壁面には少なくとも1つの突出部が形成されており、
当該突出部とエアゾール容器上部の外周面とが当接することで、前記突出部を挟む両側に隙間が形成され、
当該隙間が前記連通路を構成する、請求項1に記載の噴射ヘッド。
【請求項3】
前記連通路は、前記周縁部において、エアゾール容器上部の外周面と対向する内壁面に形成された少なくとも1つの溝によって構成されている、請求項1に記載の噴射ヘッド。
【請求項4】
エアゾール容器上部の外周面には、環状凹部が形成され、
前記ヘッド本体の周縁部には、前記環状凹部に嵌合する凸部が形成されており、
前記連通路と対応する位置には、前記凸部が形成されていない、請求項1から3のいずれかに記載の噴射ヘッド。
【請求項5】
エアゾール容器と、
請求項1から4のいずれかに記載の噴射ヘッドと、
を備えている、エアゾール噴射装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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