説明

噴射装置の付着位置補正方法、溶射方法、タービン翼の製造方法、及び加工方法

【課題】ターゲット部材に対して噴射材を吹き付ける噴射装置について、作業者の力量や噴射装置を動作させるプログラムの違いによらず、短時間且つ高い精度でその付着位置を補正する手段を提供する。
【解決手段】本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法は、ターゲットプレート及び溶射ガン12の一方を他方に対して相対移動させることにより対向させる工程と、目標位置22に向かって溶射ガン12から噴射材を吹き付ける工程と、付着位置23から目標位置22までの射芯ズレ量を計測する工程と、射芯ズレ量及び離間距離に基づいて、ターゲットプレートに対して噴射材が垂直に吹き付けられるように溶射ガン12の角度補正量θを算出する工程と、溶射ガン12とターゲットプレートとの相対的な位置関係を、角度補正量θ及び射芯ズレ量の分だけ変更する工程と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット部材に対して噴射材を吹き付ける噴射装置について、その付着位置のズレを補正する方法、補正方法を使用した溶射ガンによる溶射方法、その溶射方法を用いたタービン翼の製造方法、及び加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンやガスタービンを構成するタービン動翼やタービン静翼等の翼体は、高温の作動流体に曝される。従って、翼体の製造に際しては、遮熱性や耐食性を確保すべく、その表面に金属もしくはセラミックスの皮膜を形成する。ここで、この皮膜を形成する手段としては、溶射と呼ばれる方法が広く用いられている。この溶射とは、噴射材と呼ばれる金属もしくはセラミックスの粉末を高温且つ高速のガス流に乗せて翼体の表面に吹き付けることによってその表面に皮膜を形成する手法である。そして、この溶射を行う際には、ガス流に乗せて噴射材を噴射する溶射ガンを産業用ロボットのアーム先端に取り付け、産業用ロボットを予め定めたプログラムに従って動作させることにより、翼体上の目標位置に向かって溶射ガンから噴射材を吹き付ける。
【0003】
ここで、本来噴射材を吹き付けたい翼体表面の位置を「目標位置」、噴射材が実際に吹き付けられる翼体表面の位置を「付着位置」と呼ぶこととすると、付着位置は目標位置から位置ズレする場合がある。溶射ガンが幾何学的に指向する翼体表面の位置を「指向位置」と呼ぶこととすると、この位置ズレは、大別して指向位置が目標位置からズレることと、付着位置が指向位置からズレることにより生ずる。目標位置に対する指向位置の位置ズレは、溶射ガン自体やその構成部品である電極等の脱着や、産業用ロボットの基準合わせの不十分さに起因して生じる。一方、指向位置に対する付着位置の位置ズレは、溶射ガンの特性に起因して生じる。より詳細に説明すると、溶射ガンでは、その噴射口から噴射される高速のガス流に対して外部から噴射材が投入されるため、噴射材はガス流の流れ方向と交差する方向への速度成分を有している。従って、噴射材が翼体に吹き付けられる位置は、ガス流が翼体に吹き付けられる位置から若干離間した位置となる。これにより、目標位置に対する付着位置の位置ズレが生じる。
【0004】
従って、噴射材を翼体上の目標位置に対して正確に吹き付けるためには、付着位置の位置ズレを補正する必要がある。そして、この補正作業は従来次のような手順で行われてきた。すなわち作業者は、例えば溶射ガンを産業用ロボットから脱着する作業が完了すると、産業用ロボットを予め定めた姿勢とした状態で溶射ガンから検査用の対象物に対して噴射材を吹き付けることにより、対象物の表面に射芯と呼ばれる噴射材の小さな山を形成する。次に作業者は、溶射ガンの先端に、射芯の中心を指すようにしてレーザポインタを取り付ける。そして作業者は、複数の教示点が表示された教示翼を前記対象物に代えてセットした上で、産業用ロボットを予め定めたプログラムに従って動作させながら、レーザポインタの指す位置が教示点に一致するように産業用ロボットを補正する。そして、この作業を全ての教示点について繰り返し行うことにより、付着位置の位置ズレを補正する。このような産業用ロボットの教示方法は、溶射ガンの付着位置の補正に限られず、塗装作業における塗装ガンの付着位置の補正においても同様に用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−015863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、溶射ガンや塗装ガンといった噴射装置についてその付着位置を補正する従来の方法によれば、全ての教示点について付着位置の位置ズレを補正する作業を作業者が手作業で繰り返し行う必要があるため、作業者の力量や産業用ロボットを動作させるプログラムによって作業時間や補正の精度にバラツキが生じるという問題があった。また、翼体から外れた位置に噴射材が噴射されることによって噴射材の無駄が発生するのを低減するためには、教示翼に多くの教示点を設けて産業用ロボットを細かく動作させる必要がある。しかし、このように教示点の数を増やすと、その分だけ付着位置の補正に要する時間が長くなるという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ターゲット部材に対して噴射材を吹き付ける噴射装置について、作業者の力量や噴射装置を動作させるプログラムの違いによらず、短時間且つ高い精度でその付着位置を補正する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法は、噴射材の皮膜を形成すべきターゲット部材、及び前記ターゲット部材に向かって噴射材を吹き付ける噴射装置の一方を他方に対して相対移動させる移動機構を操作することにより、前記噴射装置を前記ターゲット部材上の目標位置に指向させる工程と、前記目標位置に向かって前記噴射装置から噴射材を吹き付ける工程と、前記ターゲット部材に吹き付けられた噴射材の中心位置である付着位置から前記目標位置までのズレ量を計測する工程と、前記ズレ量、及び前記噴射装置から前記目標位置までの距離に基づいて、記噴射装置の指向方向と、前記噴射装置と前記付着位置とを結ぶ直線とがなす角度を算出する工程と、前記噴射装置と前記ターゲット部材との相対的な位置関係を、前記角度の分だけ変更する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような方法によれば、噴射装置の付着位置を補正するために作業者が行うべき作業は、付着位置から目標位置までのズレ量を計測する作業と、噴射装置とターゲット部材との相対的な位置関係が変化するように移動機構を操作する作業のみである。従って、教示翼の全ての教示点について付着位置の位置ズレを補正する作業を作業者が手作業で繰り返し行う場合と比較すると、短時間且つ高い精度で付着位置の補正を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法は、前記噴射装置が、噴射口からガス流を噴射するガン本体部と、前記噴射口の近傍に設けられて前記ガス流に対して外部から噴射材を投入する噴射材投入部と、を備える溶射ガンであることを特徴とする。
【0011】
このような方法によれば、ガス流に投入される噴射材がガス流の流れ方向と交差する方向への速度成分を有しているため、噴射材がターゲット部材に吹き付けられる位置は、ガス流が吹き付けられる位置から若干離間した位置となる。ここで、溶射ガンはその個体や電極状態などによって使用時ごとに離間距離が異なる。よって、目標位置に対する付着位置の位置ズレが生じやすい溶射ガンに付着位置の補正を適用すれば、補正作業にかかる時間をより有効に低減できる。
【0012】
また、本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法は、前記移動機構が、前記噴射装置又は前記ターゲット部材を保持するロボットであることを特徴とする。
【0013】
このような方法によれば、ロボットの噴射装置とターゲット部材との相対的な位置関係を、容易な操作によって且つ精度良く変化させることができる。
【0014】
また、本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法は、前記噴射装置と前記ターゲット部材との相対的な位置関係を変更する工程は、前記付着位置を支点として前記角度補正量の分だけ前記噴射装置を回動させるとともに、前記付着位置と前記目標位置とを結ぶ線分に平行して前記ズレ量の分だけ前記噴射装置を移動させることにより行うことを特徴とする。
【0015】
このような方法によれば、作業者は角度補正量とズレ量とを入力してロボットを操作するだけの簡略な作業により、噴射装置とターゲット部材との相対的な位置関係を変化させることができる。
【0016】
また、本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法は、前記噴射装置を前記ターゲット部材に対向させる工程に先立ち、予め定められたプログラムに従って既定の位置へ移動するよう前記噴射装置を補正することを特徴とする。
【0017】
このような方法によれば、目標位置に対する付着位置の位置ズレを補正するに先立って、目標位置自体の位置ズレを補正するので、付着位置の位置ズレを一層正確に補正することができる。
【0018】
また、本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法は、前記ズレ量が、レーザポインタを使用して計測されることを特徴とする。
【0019】
このような方法によれば、ターゲット部材を傷付けることなく、目標位置に対する付着位置のズレ量を計測することができる。
【0020】
また、本発明に係る溶射方法は、噴射装置の付着位置補正方法によって補正された溶射ガンを使用して、対象物の表面に噴射材を溶射することを特徴とする。
【0021】
このような方法によれば、溶射ガンを使用してターゲット部材の目標位置に対して正確に噴射材を吹き付けることができるので、ターゲット部材の表面に噴射材からなる皮膜を均一に形成することができる。
【0022】
また、本発明に係るタービン翼の製造方法は、溶射方法を使用して、タービンを構成する翼体の表面に噴射材の皮膜を形成することを特徴とする。
【0023】
このような製造方法によれば、翼体の表面に噴射材からなる皮膜を均一に形成することにより、遮熱性や耐食性に優れた翼体を製造することができる。
【0024】
また、本発明に係る加工方法は、請求項1に記載の噴射装置の付着位置補正方法によって補正された噴射装置を使用して、予め定められた加工動作に基づいて被加工部材を加工する加工方法であって、前記移動機構に、前記ターゲット部材に代えて前記被加工部材を設置する工程と、前記噴射装置から前記被加工部材の表面に噴射材を吹き付けて前記被加工部材を加工する工程と、を含むことを特徴とする。
【0025】
このような方法によれば、実際に被加工部材を加工するのに先立って、仮設のターゲット部材を用いて噴射装置の指向方向と実際に噴射材が噴出される方向のズレ角度を算出し、これに基づく補正を施しながら被加工部材の加工を行うことができる。すなわち、噴射装置の部品交換などを行うことで前記ズレ角度が変わったとしても、付着位置の補正のために多数の教示点の教示を行う必要がない。よって多数の教示点を教示するためにかかる作業時間を短縮するために教示点の点数を減らす必要がなく、教示翼に多くの教示点を設けて産業用ロボットを細かく動作させることが可能となる。これによって、翼体から外れた位置に噴射材が噴射されることによって噴射材の無駄が発生するのを低減することができる。
【0026】
また、本発明に係る加工方法は、予め定められた加工動作に基づいて、噴射装置から噴射材を吹き付けて被加工部材を加工する加工方法であって、前記被加工部材と前記噴射装置を支持するとともに、それらの位置関係を変更する支持機構にターゲット部材を設置する工程と、前記支持機構を操作し、前記噴射装置を前記ターゲット部材上の目標位置に指向させる工程と、前記目標位置に向かって前記噴射装置から噴射材を吹き付ける工程と、前記噴射装置の指向する方向と、前記噴射装置と前記付着位置とを結ぶ直線とがなす角度を、前記ターゲット部材に吹き付けられた前記噴射材の中心位置である付着位置から前記目標位置までの第一距離、及び前記噴射装置から前記目標位置までの第二距離、に基づいて算出する工程と、前記支持機構から前記ターゲット部材を取り外して被加工部材を取り付ける工程と、噴射装置から噴射材を吹き付けて前記被加工部材を加工する工程であって、保持された前記角度だけ前記予め定められた加工動作を補正した加工動作によって、前記被加工部材と前記噴射装置を支持するとともにそれらの位置関係を変更しながら、加工する工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
このような方法によれば、実際に被加工部材を加工するのに先立って、仮設のターゲット部材を用いて噴射装置の指向方向と実際に噴射材が噴出される方向のズレ角度を算出し、これに基づく補正を施しながら被加工部材の加工を行うことができる。すなわち、噴射装置の部品交換などを行うことで前記ズレ角度が変わったとしても、付着位置の補正のために多数の教示点の教示を行う必要がない。よって多数の教示点を教示するためにかかる作業時間を短縮するために教示点の点数を減らす必要がなく、教示翼に多くの教示点を設けて産業用ロボットを細かく動作させることが可能となる。これによって、翼体から外れた位置に噴射材が噴射されることによって噴射材の無駄が発生するのを低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る噴射装置の付着位置補正方法によれば、ターゲット部材に対して噴射材を吹き付ける噴射装置について、作業者の力量や噴射装置を動作させるプログラムの違いによらず、短時間且つ高い精度でその付着位置を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る付着位置補正ユニットの外観を示す概略側面図である。
【図2】溶射ガンの構成を示す概略断面図である。
【図3】溶射ガンの先端部にアタッチメントを取り付けた状態を示す概略断面図である。
【図4】ターゲット台の構成を示す概略斜視図である。
【図5】溶射ガンの基準補正の手順を示す図である。
【図6】教示翼の構成を示す概略斜視図である。
【図7】溶射ガンの射芯補正の手順を示す図である。
【図8】溶射ガンの射芯補正の手順を示す図である。
【図9】補正後の溶射ガンを用いた翼体の製造を説明する概略側面図である。
【図10】移動機構の第一変形例を示す概略側面図である。
【図11】移動機構の第二変形例を示す概略側面図である。
【図12】移動機構の第三変形例を示す概略側面図である。
【図13】移動機構の第四変形例を示す概略側面図である。
【図14】移動機構の第五変形例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施形態に係る溶射ガンの付着位置補正方法に使用する付着位置補正ユニットの構成について説明する。図1は、本実施形態に係る付着位置補正ユニット10の外観を示す概略側面図である。付着位置補正ユニット10は、アームを有する6軸ロボット11(移動機構)と、この6軸ロボット11のアームの先端に保持された溶射ガン12(噴射装置)と、6軸ロボット11と対向して配置されたターゲット台13と、を備えるものである。
【0031】
6軸ロボット11は、溶射ガン12の位置及び姿勢を制御する役割を果たすものである。この6軸ロボット11は、図1に示すように、固定して設置された基部111と、この基部111に取り付けられて6つの軸の回りに回動可能に設けられたアーム部112と、このアーム部112の先端に設けられたガン保持部113と、を有している。尚、6つの自由度を有する6軸ロボット11に代えて、所定数の軸回りに回動可能ないわゆる多関節型ロボットを用いてもよい。
【0032】
溶射ガン12は、ターゲット台13に向かって噴射材を吹き付ける役割を果たすものである。ここで、図2は、溶射ガン12の構成を示す概略断面図である。溶射ガン12は、先端に噴射口が設けられたガン本体部121と、ガン本体部121の内部に相対向して設けられた一対の電極部122と、ガン本体部121の内部に通じるガス供給部123と、噴射口の外側に設けられた噴射材投入部124と、ガン本体を6軸ロボット11のガン保持部113に取り付けるための取付部125と、を有している。このように構成される溶射ガン12は、ガン本体部121の噴射口をターゲット台13の側に向けるようにして、その取付部125が6軸ロボット11のガン保持部113に取り付けられている。
【0033】
このように構成される溶射ガン12によれば、一対の電極部122の間に電圧を印加することで直流アークを発生させると、ガス供給部123から供給されるアルゴン等の作動ガスSGが電離することにより、プラズマジェットPJが発生する。そして、噴射口から噴射されるプラズマジェットPJに対し、金属材料からなる噴射材Fが噴射材投入部124から投入される。これにより、噴射材Fは、プラズマジェットPJに乗って加熱された状態で、図1に示すターゲット台13に対して吹き付けられる。そしてこの時、噴射材Fの投入方向は、プラズマジェットPJの流れ方向に対して略直交する方向となっている。従って、プラズマジェットPJに乗った噴射材Fは、図2に示すように、プラズマジェットPJの流れ方向と交差する方向への速度成分Faを有している。
【0034】
また、溶射ガン12は、その先端部に所定のアタッチメントを取り付け可能となっている。図3は、溶射ガン12の先端部にアタッチメントを取り付けた状態を示す概略断面図である。溶射ガン12には、図3(a)に示すセンターツール14と、図3(b)に示すレーザポインタ15が取り付け可能となっている。センターツール14は、後述する基準補正の工程で使用するものである。このセンターツール14は、金属等からなる長尺な棒状の部材であって、その先端部が先鋭に形成されている。このように構成されるセンターツール14は、図3(a)に示すように、その軸線を噴射口の中心に合わせるようにして、固定治具16を介して溶射ガン12の先端部に取り付けられている。
【0035】
一方、レーザポインタ15は、後述する射芯補正の工程で使用するものであって、その先端部からレーザ光線を射出する。このレーザポインタ15は、図3(b)に示すように、支持治具17を介して溶射ガン12の先端部に回動可能に取り付けられている。これにより、図3(b)に破線で示すようにレーザポインタ15の取り付け角度を調節することにより、レーザ光線Rの射出方向を任意に調節することが可能となっている。
【0036】
ターゲット台13は、噴射材Fを吹き付ける対象物としての役割を果たすものである。ここで、図4は、ターゲット台13の構成を示す概略斜視図である。ターゲット台13は、相対向する一対の嵌合溝181が形成された本体部18と、この本体部18の表面に突出して設けられた左右一対の基準ピン19と、本体部18の嵌合溝181に嵌合して着脱可能に取り付けられたターゲットプレート20と、を有している。ここで、ターゲットプレート20は、溶射ガン12から高熱の噴射材Fが吹き付けられるため、耐熱性に優れた素材で形成されている。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る溶射ガン12の付着位置補正方法の手順、及びその作用効果について説明する。尚、この溶射ガン12の付着位置補正は、溶射ガン12を交換した場合や、溶射ガン12を構成する電極部122を交換した場合や、溶射ガン12が取り付けられる6軸ロボット11のガン保持部113を交換した場合等に実行されるものである。
【0038】
溶射ガン12の付着位置を補正しようとする作業者は、まず溶射ガン12の基準補正を行う。この基準補正とは、溶射ガン12等の着脱に起因して生じる目標位置自体の位置ズレを補正することを意味する。ここで、図5は、溶射ガン12の基準補正の手順を示す図である。まず作業者は、図3(a)に示すように、溶射ガン12の先端部にセンターツール14を装着する。そして作業者は、図5(a)に示すようにセンターツール14がターゲット台13の基準ピン19から遠く離れた状態から、予め定めたプログラムに従って6軸ロボット11を動作させることにより、センターツール14の先端を基準ピン19の先端に接触させる。
【0039】
しかし、溶射ガン12や電極部122やガン保持部113を脱着したことに起因して、図5(b)に示すように、センターツール14の先端と基準ピン19の先端との間には若干の位置ズレが生じる。そこで作業者は、定規等の計測器具(不図示)を用いて両者の間の基準ズレ量d1を計測する。そして作業者は、この基準ズレ量d1の分だけ6軸ロボット11を移動させることにより、図5(c)に示すように、センターツール14の先端と基準ピン19の先端とを接触させる。この作業により基準ズレ量d1を6軸ロボット11に電磁的に保持させることで、溶射ガン12の基準補正が完了する。これ以降、6軸ロボット11は、ある目標位置を指向するように命令された場合、前記基準ズレ量d1を相殺する方向にオフセットするよう6軸ロボット11自身の動作を制御することにより、正確に前記目標位置を指向することができる。尚、図5(b)では、センターツール14の基準ピン19に対する位置ズレが、図5の紙面上下方向であるY軸方向にのみ生じた場合を示した。しかし、両者の間の位置ズレは、図5の紙面奥行き方向であるX軸方向や、図5の紙面左右方向であるZ軸方向にも発生し得るものである。また、6軸ロボット11が基準ズレ量d1を入力するだけで基準補正する機能を有している場合は、必ずしもセンターツール14の先端と基準ピン19の先端とを接触させなくてもよく、6軸ロボット11に基準ズレ量d1を入力すれば足りる。
【0040】
次に作業者は、基準補正が正しく行われたか否かを確認する。まず作業者は、前述のセンターツール14に代えて、図3(b)に示すレーザポインタ15を溶射ガン12の先端部に装着する。そして、ターゲットプレート20の上に設けられている目標位置22に対して溶射ガン12が垂直に正対する姿勢となるよう、6軸ロボット11を移動させる。その後、作業者は、レーザポインタ15から射出されるレーザ光線Rが溶射ガン12の指向方向にある目標位置22を照射するように、すなわち図3(b)に実線で示す状態で、レーザポインタ15の取り付け角度を固定する。
【0041】
次に作業者は、図6に示す教示翼21を、図5に示すターゲット台13に代えて6軸ロボット11と対向する位置に配置する。そして作業者は、予め定められたプログラムに従って6軸ロボット11を動作させることにより、レーザポインタ15から射出されるレーザ光線Rを、図6に示すように教示翼21の表面に表示された複数の教示点211に沿って移動させる。その結果、図6に破線で示すようにレーザ光線Rが教示点211に沿って移動する時は、作業者は基準補正が正しく行われたものと判断する。一方、図6に詳細は示さないが、レーザ光線Rが教示点211から外れた位置を移動する時は、作業者は基準補正が不完全なものと判断し、基準補正のやり直し等の対処策を講じる。
【0042】
次に作業者は、溶射ガン12の射芯補正を行う。この射芯補正とは、前述のような溶射ガン12の特性に起因して生じる指向位置に対する付着位置の位置ズレを補正することを意味する。ここで、図7及び図8は、溶射ガン12の射芯補正の手順を示す図である。尚、図7及び図8では、図面の見易さを考慮して、6軸ロボット11及びターゲット台13の本体部18については図示を省略している。
【0043】
まず作業者は、図3(b)に示すように溶射ガン12の先端部に装着された状態のレーザポインタ15を溶射ガン12から取り外す。これにより、溶射ガン12はその先端部から噴射材Fを噴射可能な状態となる。また作業者は、6軸ロボット11を操作して、溶射ガン12を、図4に示すようにターゲット台13に取り付けられたターゲットプレート20上の目標位置22に垂直に対向させる。この操作により、溶射ガン12が指向するターゲットプレート20上の位置である指向位置は、目標位置22と一致する。
【0044】
次に作業者は、図7(a)に示すように、ターゲットプレート20の目標位置22に向かって溶射ガン12から噴射材Fを吹き付ける。この時、前述のように噴射材FはプラズマジェットPJの流れ方向と交差する方向への速度成分Faを有している。そのため、溶射ガン12は正しく目標位置22を指向しているにもかかわらず、付着位置23すなわちドーム状に吹き付けられた噴射材Fの中心位置は、目標位置22から若干位置ズレする。本実施形態では、目標位置22に対する付着位置23の位置ズレが、図7の紙面上下方向であるY軸方向にのみ生じた場合を示している。尚、目標位置22に対する付着位置23の位置ズレは、Y軸方向だけに限られず、図7の紙面奥行き方向であるX軸方向にも発生し得るものである。
【0045】
次に作業者は、図3(b)に示すレーザポインタ15を溶射ガン12の先端部に装着する。この時、作業者は、図7(b)に示すようにレーザポインタ15から射出されるレーザ光線Rが付着位置23を指すようにして、すなわち図3(b)に破線で示す状態で、レーザポインタ15の取り付け角度を固定する。
【0046】
更に作業者は、図7(b)に示すターゲットプレート20を図7(c)に示す基準プレート24に交換する。すなわち作業者は、ターゲット台13の嵌合溝181からターゲットプレート20を取り外した後、その嵌合溝181に基準プレート24を嵌合させて取り付ける。ここで、この基準プレート24は、ターゲットプレート20と略等しい形状を有し、ターゲットプレート20と同じ位置に目標位置22が表示されている。また図に詳細は示さないが、この基準プレート24には、目標位置22からの距離を計測しやすいように、目標位置22を通ってX軸方向及びY軸方向にそれぞれ延びるようにして、罫書き線がそれぞれ引かれている。そして、このようにターゲットプレート20を基準プレート24に交換することにより、基準プレート24の表面には、溶射ガン12の先端部に装着したレーザポインタ15から射出されるレーザ光線Rによって、付着位置23が指し示される。
【0047】
次に作業者は、定規等の計測器具(不図示)を用いることにより、図7(c)における目標位置22に対する付着位置23の射芯ズレ量d2を計測する。尚、本実施形態における射芯ズレ量d2の計測は、目標位置22と付着位置23とのY軸方向への離間距離を計測することによって行った。しかし、前述のように目標位置22に対する付着位置23の位置ズレがX軸方向にも生じる場合には、X軸方向に沿っても目標位置22と付着位置23との離間距離をそれぞれ計測すればよい。尚、本実施形態では、射芯ズレ量d2を容易に計測できるように、溶射ガン12にレーザポインタ15を装着するとともにターゲットプレート20に代えて基準プレート24を設置したが、図7(a)に示す状態において目標位置22と付着位置23との射芯ズレ量d2を計測してもよい。
【0048】
そして作業者は、図に詳細は示さないが、計測した射芯ズレ量d2を、6軸ロボット11を操作するための操作パネルに入力する。そうすると、6軸ロボット11の動作を制御する制御部が、図7(c)に示す溶射ガン12から目標位置22までの離間距離Lと入力された射芯ズレ量d2とに基づく幾何学的関係から、溶射ガン12の角度補正量θを算出する。この角度補正量θは、図7(c)に示すように、溶射ガン12から目標位置22へ延びる線分S1と、溶射ガン12から付着位置23へ延びる線分S2とのなす角度を意味している。
【0049】
そして作業者は、図に詳細は示さないが、計測した射芯ズレ量d2を、6軸ロボット11を操作するための操作パネルに入力する。そうすると、6軸ロボット11の動作を制御する制御部が、図7(c)に示す溶射ガン12から目標位置22までの離間距離Lと入力された射芯ズレ量d2とに基づく幾何学的関係から、溶射ガン12の角度補正量θを算出する。この角度補正量θは、図7(c)に示すように、溶射ガン12から目標位置22へ延びる線分S1と、溶射ガン12から付着位置23へ延びる線分S2とのなす角度を意味している。なお、6軸ロボット11に角度補正量θを算出する機能がない場合であっても、電卓などを用いて直接に角度補正量θを算出することで同様の操作を行うことができる。
【0050】
そして作業者は、角度補正量θ及び射芯ズレ量d2に基づいて、溶射ガン12と基準プレート24との相対的な位置関係を変更する。すなわち作業者は、図8(a)に示すように、まず付着位置23を支点として溶射ガン12を反時計回りに角度補正量θだけ回動させる。これにより、レーザポインタ15から射出されるレーザ光線R、すなわち溶射ガン12から噴射される噴射材Fの移動軌跡Kが、基準プレート24に対して略垂直となる。尚、図8(a)では回動前の溶射ガン12の位置を破線で、回動後の溶射ガン12の位置を実線でそれぞれ示している。
【0051】
次に作業者は、図8(b)に示すように、溶射ガン12を上方へ平行移動させる。すなわち作業者は、目標位置22と付着位置23とを結ぶ線分S3に略平行する方向へ、射芯ズレ量d2だけ溶射ガン12を移動させる。これにより、レーザポインタ15から射出されるレーザ光線R、すなわち溶射ガン12から噴射される噴射材Fの移動軌跡Kは、基準プレート24に対して略垂直であって且つ目標位置22に向いた状態となる。この作業により角度補正量θと射芯ズレ量d2を6軸ロボット11に電磁的に保持させることで、溶射ガン12の射芯補正が完了する。これ以降、6軸ロボット11は、ある目標位置に対して溶射を行うように命令された場合、前記角度補正量θと射芯ズレ量d2を相殺する方向にオフセットするよう6軸ロボット11自身の動作を制御することにより、正確に目標位置に噴射材Fを付着させことができる。尚、図8(b)では平行移動前の溶射ガン12の位置を破線で、平行移動後の溶射ガン12の位置を実線でそれぞれ示している。
【0052】
尚、前述のように目標位置22に対する付着位置23の位置ズレがX軸方向に生じる場合には、溶射ガン12をX軸方向に平行移動させればよい。また、目標位置22に対する付着位置23の位置ズレがX軸方向及びY軸方向の両方に生じる場合には、溶射ガン12をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ平行移動させればよい。また、本実施形態では付着位置23を中心として溶射ガン12を回転させたが、例えば溶射ガン12をその場で反時計回りに角度補正量θだけ回転させてもよい。すなわち、最終的に溶射ガン12と基準プレート24の位置関係が図8(b)に示す位置関係となるように、溶射ガン12と基準プレート24との相対的な位置関係を変更すればよい。
【0053】
最後に作業者は、射芯補正が正しく行われたか否かを確認する。まず作業者は、図6に示す教示翼21を、図8に示す基準プレート24に代えて6軸ロボット11と対向する位置に配置する。そして作業者は、予め定められたプログラムに従って6軸ロボット11を動作させることにより、レーザポインタ15から射出されるレーザ光線Rを、図6に示すように教示翼21の表面に表示された複数の教示点211に沿って移動させる。その結果、図6に破線で示すようにレーザ光線Rが教示点211に沿って移動する時は、作業者は射芯補正が正しく行われたものと判断する。一方、図6に詳細は示さないが、レーザ光線Rが教示点211から外れた位置を移動する時は、作業者は射芯補正が不完全なものと判断し、射芯補正のやり直し等の対処策を講じる。
【0054】
以上により、基準補正及び射芯補正の両方が完了することにより、溶射ガン12の付着位置23の補正作業が終了する。
【0055】
その後作業者は、付着位置23の補正が完了した溶射ガン12を使用することにより、タービン動翼やタービン静翼等の翼体を製造する。図9は、補正後の溶射ガン12を用いた翼体25の製造を説明する概略側面図である。作業者は、補正後の溶射ガン12から翼体25の目標位置22を狙って噴射材Fを溶射する。この時、溶射ガン12の付着位置23が補正されているため、溶射ガン12から噴射される噴射材Fの移動軌跡Kが、プラズマジェットPJの噴射方向に対して角度補正量θの角度をなす方向となり、噴射材Fは目標位置22に吹き付けられる。このように、翼体25の狙い通りの位置に噴射材Fを吹き付けることができるので、翼体25の表面に噴射材Fからなる皮膜を均一に形成することにより、遮熱性や耐熱性に優れた翼体25を製造することができる。
【0056】
尚、以上説明した本実施形態では、本発明に係る「噴射装置」として溶射ガン12を例に説明したが、噴射装置はターゲット部材に何らかの噴射材Fを吹き付けるものであれば足り、溶射ガン12以外に例えばターゲット部材に塗装材を吹き付ける塗装ガンや、ショットブラストの噴射ノズルに対しても、本補正方法を適用することができる。なお、本願発明をショットブラストの噴射ノズルなどの噴射材Fがターゲット部材に付着しない構成に用いる場合、本願明細書及び特許請求の範囲における「付着位置」との語は、ショットブラストのグリッドがターゲット部材に衝突する位置であると理解すべきものである。
【0057】
また本実施形態では、溶射ガン12を移動させる手段すなわち本発明に係る「移動機構」として6軸ロボット11を用いたが、移動機構としては6軸ロボット11に限られず他の構成を採用することも可能である。図10及び図11は、移動機構の変形例を示す概略側面図である。
【0058】
図10は、移動機構の第一変形例を示す概略側面図である。この第一変形例では、溶射ガン12を移動させる移動機構が、6軸ロボット11のガン保持部113に対する溶射ガン12の取り付け姿勢を調整することが可能な姿勢調整部30として構成されている。この第一変形例では、溶射ガン12を下方から支持する複数のネジ31が設けられ、これらネジ31を回してガン保持部113からの突出高さを変化させることによって溶射ガン12の取り付け姿勢を調整することができる。そして、このようにガン保持部113に対する溶射ガン12の取り付け姿勢を調整することにより、6軸ロボット11を動作させることなく、溶射ガン12と基準プレート24との相対的な位置関係を変更することができる。また本変形例によれば、ガン保持部113に対する溶射ガン12の取り付け姿勢を調整することによって、基準ズレ量d1や角度補正量θを姿勢調整部30に機械的に保持することができる。よって、6軸ロボット11が、予めプログラムにより定められた姿勢から所定量の変位や角度だけオフセットして動作する機能を備えていない場合であっても、基準補正および射芯補正を適用して翼体25の加工を行うことができる。尚、姿勢調整部30の構成は本実施形態に限定されず、適宜設計変更が可能である。
【0059】
図11は、移動機構の第二変形例を示す概略側面図である。この第二変形例では、溶射ガン12を移動させる移動機構が、圧電素子(不図示)によって3軸方向に移動可能に設けられた可動台40と、この可動台40に対する溶射ガン12の取り付け姿勢を3軸回りに調整可能な姿勢調整部41とを有している。このように構成される移動機構によれば、可動台40を動作させることによって溶射ガン12をXYZ軸方向に移動させるとともに、姿勢調整部41を調整することによって溶射ガン12をXYZ軸回り方向に移動させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、溶射ガン12と基準プレート24との相対的な位置関係を変更する手段として、溶射ガン12を移動させる移動機構を用いたが、これに代えてまたはこれと共に、基準プレート24を移動させる移動機構を採用することも可能である。図12から図14は、移動機構の変形例を示す概略側面図である。
【0061】
図12は、移動機構の第三変形例を示す概略側面図である。この第三変形例では、基準プレート24を移動させる移動機構が6軸ロボット11として構成され、そのガン保持部113に、基準プレート24がその基準ピン19を溶射ガン12の側に向けた状態で固定されている。一方、溶射ガン12は、この6軸ロボット11に対向する位置に固定して設置されている。このように構成される移動機構によれば、6軸ロボット11を動作させて基準プレート24を移動させることにより、溶射ガン12と基準プレート24との相対的な位置関係を変更することができる。この場合、図12に示す状態で基準補正および射芯補正を行った後に、6軸ロボット11から基準プレート24を取り外して翼体25を取り付け、溶射ガン12から翼体25に向けて噴射材Fを噴射する。これにより、翼体25の狙い通りの位置に噴射材Fを吹き付けることができ、翼体25の表面に噴射材Fからなる皮膜を均一に形成することにより、遮熱性や耐熱性に優れた翼体25を製造することができる。
【0062】
図13は、移動機構の第四変形例を示す概略側面図である。この第四変形例では、基準プレート24を移動させる移動機構が、6軸ロボット11のガン保持部113に対する基準プレート24の取り付け姿勢を調整することが可能な姿勢調整部50として構成されている。一方、溶射ガン12は、この6軸ロボット11に対向する位置に固定して設置されている。この第四変形例では、基準プレート24を下方から支持する複数のネジ51が設けられ、これらネジ51を回してガン保持部113からの突出高さを調整することによって基準プレート24の取り付け姿勢を調整することができる。そして、このようにガン保持部113に対する基準プレート24の取り付け姿勢を調整することにより、6軸ロボット11を動作させることなく、基準プレート24と溶射ガン12との相対的な位置関係を変更することができる。また本変形例によれば、ガン保持部113に対する基準プレート24の取り付け姿勢を調整することによって、基準ズレ量d1や角度補正量θを姿勢調整部50に機械的に保持することができる。よって、6軸ロボット11が、予めプログラムにより定められた姿勢から所定量の変位や角度だけオフセットして動作する機能を備えていない場合であっても、基準補正および射芯補正を適用して翼体25の加工を行うことができる。尚、姿勢調整部50の構成は本実施形態に限定されず、適宜設計変更が可能である。
【0063】
図14は、移動機構の第五変形例を示す概略側面図である。この第五変形例では、基準プレート24を移動させる移動機構が、圧電素子(不図示)によって3軸方向に移動可能に設けられた可動台60と、この可動台60に対する基準プレート24の取り付け姿勢をXYZ軸回り調整可能な姿勢調整部61とを有している。一方、溶射ガン12は、この可動台60に対向する位置に固定して設置されている。このように構成される移動機構によれば、可動台60を動作させることによって基準プレート24をXYZ軸方向に移動させるとともに、姿勢調整部61を調整することによって基準プレート24をXYZ軸回り方向に移動させることができる。
【0064】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 付着位置補正ユニット
11 6軸ロボット
12 溶射ガン
13 ターゲット台
14 センターツール
15 レーザポインタ
16 固定治具
17 支持治具
18 本体部
19 基準ピン
20 ターゲットプレート
21 教示翼
22 目標位置
23 付着位置
24 基準プレート
25 翼体
30 姿勢調整部
31 ネジ
40 可動台
41 姿勢調整部
50 姿勢調整部
51 ネジ
60 可動台
61 姿勢調整部
111 基部
112 アーム部
113 ガン保持部
121 ガン本体部
122 電極部
123 ガス供給部
124 噴射材投入部
125 取付部
181 嵌合溝
211 教示点
d1 基準ズレ量
d2 射芯ズレ量
F 噴射材
Fa 速度成分
K 移動軌跡
L 離間距離
PJ プラズマジェット
R レーザ光線
S1 線分
S2 線分
S3 線分
SG 作動ガス
θ 角度補正量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット部材、及び前記ターゲット部材に向かって噴射材を吹き付ける噴射装置の一方を他方に対して相対移動させる移動機構を操作することにより、前記噴射装置を前記ターゲット部材上の目標位置に指向させる工程と、
前記目標位置に向かって前記噴射装置から噴射材を吹き付ける工程と、
前記ターゲット部材に吹き付けられた噴射材の中心位置である付着位置から前記目標位置までのズレ量を計測する工程と、
前記ズレ量、及び前記噴射装置から前記目標位置までの距離に基づいて、前記噴射装置の指向方向と、前記噴射装置と前記付着位置とを結ぶ直線とがなす角度を算出する工程と、
前記噴射装置と前記ターゲット部材との相対的な位置関係を、前記角度の分だけ変更する工程と、
を含むことを特徴とする噴射装置の付着位置補正方法。
【請求項2】
前記噴射装置が、噴射口からガス流を噴射するガン本体部と、前記噴射口の近傍に設けられて前記ガス流に交差する方向から噴射材を投入する噴射材投入部と、を備える溶射ガンであることを特徴とする請求項1に記載の噴射装置の付着位置補正方法。
【請求項3】
前記移動機構が、前記噴射装置又は前記ターゲット部材を保持するロボットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の噴射装置の付着位置補正方法。
【請求項4】
前記噴射装置と前記ターゲット部材との相対的な位置関係を変更する工程は、前記付着位置を支点として前記角度補正量の分だけ前記噴射装置を回動させるとともに、前記付着位置と前記目標位置とを結ぶ線分に平行して前記ズレ量の分だけ前記噴射装置を移動させることにより行うことを特徴とする請求項3に記載の噴射装置の噴射位置補正方法。
【請求項5】
前記噴射装置を前記ターゲット部材に対向させる工程に先立ち、予め定められたプログラムに従って既定の位置へ移動するよう前記噴射装置を補正することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の噴射装置の付着位置補正方法。
【請求項6】
前記ズレ量が、レーザポインタを使用して計測されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の噴射装置の付着位置補正方法。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の噴射装置の付着位置補正方法によって補正された溶射ガンを使用して、対象物の表面に噴射材を溶射することを特徴とする溶射方法。
【請求項8】
請求項7に記載の溶射方法を使用して、タービンを構成する翼体の表面に噴射材の皮膜を形成することを特徴とするタービン翼の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の噴射装置の付着位置補正方法によって補正された噴射装置を使用して、予め定められた加工動作に基づいて被加工部材を加工する加工方法であって、
前記移動機構に、前記ターゲット部材に代えて前記被加工部材を設置する工程と、
前記噴射装置から前記被加工部材の表面に噴射材を吹き付けて前記被加工部材を加工する工程と、
を含むことを特徴とする加工方法。
【請求項10】
予め定められた加工動作に基づいて、噴射装置から噴射材を吹き付けて被加工部材を加工する加工方法であって、
前記被加工部材と前記噴射装置を支持するとともに、それらの位置関係を変更する支持機構にターゲット部材を設置する工程と、
前記支持機構を操作し、前記噴射装置を前記ターゲット部材上の目標位置に指向させる工程と、
前記目標位置に向かって前記噴射装置から噴射材を吹き付ける工程と、
前記噴射装置の指向する方向と、前記噴射装置と前記付着位置とを結ぶ直線とがなす角度を、前記ターゲット部材に吹き付けられた前記噴射材の中心位置である付着位置から前記目標位置までの第一距離、及び前記噴射装置から前記目標位置までの第二距離、に基づいて算出する工程と、
前記支持機構から前記ターゲット部材を取り外して被加工部材を取り付ける工程と、
噴射装置から噴射材を吹き付けて前記被加工部材を加工する工程であって、保持された前記角度だけ前記予め定められた加工動作を補正した加工動作によって、前記被加工部材と前記噴射装置を支持するとともにそれらの位置関係を変更しながら、加工する工程と、
を含むことを特徴とする噴射装置の付着位置補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−224934(P2012−224934A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95994(P2011−95994)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】