説明

噴霧可能な水性ゲル状組成物

【課題】噴霧性が良好で、噴霧後に液だれしない水性ゲル状組成物を提供する。
【解決手段】(a)水溶性金属塩、(b)層状ケイ酸塩鉱物の微粒子、(c)水溶性高分子、及び(d)水を含有してなり、噴霧手段による噴霧が可能な水性ゲル状組成物であって、層状ケイ酸塩鉱物の微粒子が平均粒子径2μm以下であり、かつ水溶性高分子が、エーテル化度が0.4〜2.0であり、B型粘度計により測定された25℃における1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sであるカルボキシルメチルセルロースナトリウムであるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧による噴霧手段を備えた噴霧器からの噴霧性が良好な水性ゲル状組成物に関する。特に、散布面を急速な乾燥から保護する、あるいは長期にわたり湿潤状態を保つ製剤に応用できる水性ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレー製品は広範な分野に適用されており、多くのスプレー装置に充填される液状組成物には多くの成分が使用されている。スプレー製品として望まれる特性には、様々な条件において噴霧性が良好なこと、吹き付けた組成物が垂直面や斜面に付着して液だれしないこと、付着面が乾燥しないことなどがある。
【0003】
これらの課題を解決するために種々の技術が提案されている。例えば、特開平9−241115号公報には、水膨潤性粘土鉱物と水からなる水性ゲル状組成物が開示されている。ここで開示されている水膨潤性粘土鉱物とは結晶構造が層状をなすケイ酸塩鉱物であり、特に膨潤が大きいスメクタイトがよいとされる。また層状ケイ酸塩鉱物は、層間が負に、層の端部は正に帯電し、水に分散された場合に層間で静電気的な結合を生じることにより、カードハウス構造と呼ばれる構造体を形成する。この構造体を形成する力が抵抗となり、粘性が生じてゲルが形成される。しかし、層状ケイ酸塩鉱物の水分散液で形成される水性ゲル状組成物に水溶性の金属塩を加えると均一なカードハウス構造が形成されず、凝集や沈殿を生じ、ゲルが形成されない、あるいはゾル状に変化する。
【0004】
また、特開2003−137729号公報には、水膨潤性粘土鉱物と水及び水溶性高分子からなる、特に水溶性高分子がエーテル化度0.6〜0.75、1重量%水溶液にしたときの粘度が100〜1000Pa・sのカルボキシメチルセルロースである水性ゲル状組成物が開示されている。これは特開平9−241115号公報で開示された発明における水性ゲル状組成物の不安定さを改善するものであるが、1重量%の粘度が100〜1000Pa・sのカルボキシメチルセルロースはその取扱いが難しいうえ、組成物の粘度を調整するのが難しく、噴霧できないほど高粘度のものになりやすい。
【0005】
また、これらの発明は主に医薬品・香粧品といった分野を想定しており、高度に脱塩した純水等を用いて分散させることでゲルを形成することになるが、例えば井水や河川水、海水を用いることは想定しておらず、そのような場合はゲルが形成されない、あるいは不安定であるなどの問題を生じ易く、その応用範囲は限られる。
【特許文献1】特開平9−241115号公報
【特許文献2】特開2003−137729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決すること、すなわち、水溶性の金属塩が含まれる場合も安定したゲル状を保つ、噴霧可能な水性ゲル状組成物を提供することを目的とし、また、金属塩の有無に関わらず、散布面が急速な乾燥から保護する、あるいは長期にわたり湿潤状態を保つ製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討し、水溶性金属塩の水溶液に層状ケイ酸塩鉱物の微粒子と、低粘度のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加えることにより、課題を克服し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の水性ゲル状組成物は、(a)水溶性金属塩、(b)層状ケイ酸塩鉱物の微粒子、(c)水溶性高分子、及び(d)水を含有してなり、噴霧手段による噴霧が可能な水性ゲル状組成物であって、上記層状ケイ酸塩鉱物の微粒子が平均粒子径2μm以下であり、かつ上記水溶性高分子が、エーテル化度が0.4〜2.0であり、B型粘度計により測定された25℃における1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sであるカルボキシルメチルセルロースナトリウムであるものとする。
【0009】
上記水性ゲル状組成物において、層状ケイ酸塩鉱物の微粒子が、平均粒子径が2μm以下の1種又は2種以上のスメクタイトであることが好ましい。
【0010】
また、B型粘度計を用い、ローター回転数60rpm、25℃で測定した粘度が2000〜10000mPa・sであり、かつローター回転数6rpmにおける粘度を60rpmにおける粘度で割った値(以下、TI値という)が11以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の水性ゲル状組成物は、加圧による噴霧手段を備えた噴霧器に充填して使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水溶性金属塩を含有する、噴霧性が良好で、噴霧後の液だれしない水性ゲル状組成物の提供が可能になる。また純水を用いず、例えば井水や河川水、海水のように塩分を含む水媒体を使用しても噴霧可能な水性ゲル状組成物の提供が可能になり、散布面を急速な乾燥から保護したり、あるいは長期にわたり湿潤状態を保持したりすることもできる製剤が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いる層状ケイ酸塩鉱物の微粒子は、天然由来のもの及び化学合成により得られるもののどちらでもよい。平均粒子径は2μm以下であることが好ましく、平均粒子径が2μmを越える場合は目詰まりを生じることがある。
【0014】
層状ケイ酸塩鉱物の構造としては、成分の大部分を四個の酸素原子と一個のケイ素原子が存在するケイ酸四面体が作る平らな層とアルミニウムやマグネシウムなどを中心とした別の層とが、サンドイッチ状に積み重なった層状構造が一般的である。さらにその層の積み重なりの違いや層内の原子の種類とか配置などによって、カオリン鉱物、雲母系粘土鉱物、スメクタイト及び混合層鉱物などがある。本発明で用いられる層状ケイ酸塩鉱物は、1)カオリン鉱物として、ナクライト、ディッカイト、カオリナイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等、2)雲母系粘土鉱物として、イライト、セリサイト、3)スメクタイトとして、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、モンモリロナイト、ノントロナイ等が挙げられる。
【0015】
本発明の水性ゲル状組成物では、水膨潤性が良好なスメクタイトが特に好適に用いられ、これらを単一種含有させることも出来るし、二種以上組み合わせて含有させることも出来る。特に好ましいのは、天然か合成かにかかわらず、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイトである。
【0016】
本発明の水性ゲル状組成物に層状ケイ酸塩鉱物の量は、種類によって異なるが、通常0.1〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%である。これは、多すぎるとゲルの状態が堅くなり、少なすぎるとゲルが形成されないためである。市販されている天然のスメクタイトとしては、クニミネ工業株式会社のクニピア(登録商標)F、株式会社ホージュンのベンゲル(登録商標)シリーズが、合成したスメクタイトとしては、ロックウッド アディティブズのラポナイトRD、クニミネ工業株式会社のスメクトン(登録商標、以下同様)SAやコープケミカル株式会社のルーセンタイト(登録商標)SWN、SWF等が例示できるが、この限りではない。
【0017】
次に、本発明で用いる水溶性高分子には、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を必須成分として用いる。その物性としては、エーテル化度が、0.4〜2.0であり、B型粘度計により、ローター回転数60rpm、25℃で測定した1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sのものが好ましい。エーテル化度が0.4未満では水溶性が不十分であり、均一なゲル状にならず、例えば噴霧時の目詰まりの原因となり易い。また、エーテル化度が2.0を越えると価格的に高価になり経済的に不利となる。粘度は1〜1000mPa・sであるが、より好ましくは1〜100mPa・sであり、さらに好ましくは1〜10mPa・sである。100mPa・sを越えると曳糸性が強く出るために、スプレーを用いて散布する際に霧状にならない場合がある。また、粘度が小さいほど、水性ゲル状組成物の粘度を調製しやすくなる。
【0018】
本発明で用いる水溶性高分子には、上記カルボキシメチルセルロースナトリウム塩に以下のものを組み合わせて使用することもできる。天然由来のもの及び化学合成により得られるもののどちらを用いてもよいが、例えば、天然系のものでは、キサンタンガム、ジェランガム、ポリグルタミン酸、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、デンプン、キトサン、ペクチン、およびそれらの誘導体、また、セルロース誘導体や合成系有機高分子であるポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等が例示できる。また、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩以外の、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体も使用することができる。これらの水溶性高分子を併用する場合は、水溶性高分子全体の中で上記特定のエーテル化度及び粘度を有するカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の含有料が50重量%以上となるように使用することが好ましい。
【0019】
本発明の水性ゲル状組成物に含有させる水溶性高分子の好ましい含有量は0.1〜10重量%であり、さらに好ましい含有量は1〜5重量%である。ただし、組成中に含まれる層状ケイ酸塩鉱物よりも多くならないことが好ましい。水溶性高分子が組成中に含まれる層状ケイ酸塩鉱物よりも多い場合は、水溶性高分子に特有の性質が出やすくなり、特に曳糸性により、十分な噴霧性が得られなくなる傾向があるためである。
【0020】
本発明の水性ゲル状組成物は、B型粘度計により、ローター回転数60rpm、25℃で測定した粘度が2000〜10000mPa・sになるよう調整するのが好ましい。2000mPa・s未満ではゲル状とはならず、ゾル状になるか、あるいは均一分散されず、沈殿が生じるおそれがある。また、10000mPa・sを越えると散布性が低下する。また、TI値が11以下であることが好ましい。11を越えると、ゲル状組成物の流動性が悪く、ポンプによりゲル状組成物を吸い上げることができず、スプレーの吸い込み口付近が空洞になり、ゲル状組成物が噴霧できなくなるためである。
【0021】
本発明の水性ゲル状組成物に含まれる水溶性金属塩の濃度は特に限定されないが、通常は5%程度までで、それ以上ではゲルが形成され難くなる。
【0022】
また、本発明で用いる水溶性金属塩を、井水や河川水、海水等に含有されるもの以外に配合する場合、その例としては無機酸又は有機酸のカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0023】
無機酸としては、炭酸、塩酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、三メタホウ酸、次ホウ酸、シアン酸、イソシアン酸、雷酸、硝酸、ペルオキソ硝酸、亜硝酸、ペルオキソ亜硝酸、ニトロキシル酸、次亜硝酸、(オルト)リン酸、ピロリン酸、三リン酸、メタリン酸、三メタリン酸、四メタリン酸、ペルオキソ一リン酸、ペルオキソ二リン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸、次亜リン酸、ホスフィン酸、硫酸、ピロ硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、チオ硫酸、二チオン酸、亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ亜硫酸、亜二チオン酸及びスルホキシル酸が挙げられる。
【0024】
有機酸としては、グリシンやアラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、リジン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、スレオニン、ヒスチジン等の各種アミノ酸、蟻酸、酢酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ニコチン酸、サリチル酸、アルギン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0025】
本発明の水性ゲル状組成物は、さらに樹脂エマルジョン、界面活性剤、油脂、アルコール類、有機酸およびその塩、顔料、防腐剤、抗菌剤等を1種類以上含むものとすることができる。
【0026】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが使用される。具体的にはアニオン性界面活性剤として、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、αオレフィンスルホン酸塩などが挙げられる。また、両性界面活性剤として、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインなどが、非イオン界面活性剤として、グリセリンやソルビタン、ショ糖の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロック共重合体、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
樹脂エマルジョンとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、アクリル酸−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等のエマルジョンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
油脂としては、オリーブ油、カカオ油、カルナバワックス、月桃油、ゴマ油、サフラワー油、シリコン油、スクワレン、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒノキ油、ヒバ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、綿実油、ヤシ油、ラノリン等の天然系動植物油のほか、トリグリセリド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素類、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸等の高級脂肪酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等のほか、トレハロース、マルトース、ショ糖、グルコース、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖および糖アルコール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
他に、有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、アミノ酸等があげられ、顔料としては、二酸化チタン、二酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック等が、防腐剤や抗菌剤としては、安息香酸およびその塩、パラオキシ安息香酸アルキルエステルおよびその塩、サリチル酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、フェノキシエタノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、農薬原体については特に限定されず、農薬登録されているものの有効成分が該当する。
【0031】
本発明の水性ゲル状組成物の噴霧手段としては、手動ポンプやアトマイザーのように物理的に加圧するものや噴射ガス組成中に混合したエアゾールタイプのものなどを用いることができ、噴霧手段としては特にこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
以下に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1,比較例1〜5]
表1に記載の実施例1の水性ゲル状組成物および比較例1〜5の組成物を以下の方法で調製した。すなわち、約800gの蒸留水に塩化カルシウムを1g、防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)を1g溶解し、ディスパーで750rpmで攪拌しながらスメクタイト(スメクトンSA:クニミネ工業株式会社)と水溶性高分子を所定量投入し、均一の分散溶液となるまで攪拌を続けた。分散後の全重が最終的に1000gとなるように蒸留水を後添し、粘度測定用に500mLのビーカーに、また、散布性確認用に50mLのディスペンサー型スプレー容器一部を移し替え、25℃にて24時間静置した。比較例3には同じスメクタイトだが、平均粒径が2μmを超えるもの(スーパークレイ3F #80篩い実施:株式会社ホージュン)を用いた。実施例1と比較例3で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、25℃における1%粘度が5mPa・s、セルロース鎖の平均重合度が120〜150、平均分子量が27000〜33000のものを用いた。また、比較例4と5の水溶性高分子には、前記のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩と粘度が同等のポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを使用した。スメクタイトの平均粒径の測定は、株式会社島津製作所の島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200を使用し、粒径が1μm以下の場合はさらに日機装株式会社マイクロトラックUPA粒度分布計MODEL No.9340により再測定した。
【0034】
[実施例2,比較例6,7]
表2に記載の実施例2の水性ゲル状組成物および比較例6,7の組成物を以下の方法で調製した。すなわち、約800gの蒸留水に塩化ナトリウムを30g、防腐剤(ソルビン酸ナトリウム)を2g溶解し、ディスパーで750rpmで攪拌しながらスメクタイト(スメクトンSA:クニミネ工業株式会社)とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を所定量投入し、均一の分散溶液となるまで攪拌を続けた。分散後の全重が最終的に1000gとなるように蒸留水を後添し、粘度測定用に500mLのビーカーに、また、散布性確認用に50mLのディスペンサー型スプレー容器に一部を移し替え、25℃にて24時間静置した。実施例2で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、25℃における1%粘度が86mPa・s、セルロース鎖の平均重合度が460〜500、平均分子量が100000〜110000のものを用いた。比較例7で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウム塩は25℃における1%粘度が360mPa・s、セルロース鎖の平均重合度が800〜900、平均分子量が180000〜190000のものを使用した。
【0035】
[実施例3〜5,比較例8]
表3に記載の実施例3〜5の水性ゲル状組成物および比較例8の組成物を以下の方法で調製した。すなわち、約800gの蒸留水に塩化カルシウムを1g、防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)を1g溶解し、ディスパーで750rpmで攪拌しながらスメクタイト(スメクトンSA:クニミネ工業株式会社)とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、および界面活性剤、樹脂エマルジョン、香料を所定量投入し、均一の分散溶液となるまで攪拌を続けた。実施例5のみ香料を投入後、ディスパーの回転速度を7500rpmで攪拌した。分散後の全重が最終的に1000gとなるように蒸留水を後添し、粘度測定用に500mLのビーカーに、また、散布性確認用に500mLの霧吹きに一部を移し替え、25℃にて24時間静置した。実施例3〜5ではカルボキシメチルセルロースナトリウム塩として、実施例1と同じものを用いた。実施例3の界面活性剤には、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩を使用した。実施例4の樹脂エマルジョンには、ポリウレタン樹脂エマルジョンを使用した。実施例5の香料には、ヒノキオイルを使用した。
【0036】
上記各実施例及び比較例の評価は、ゲルの形成、散布性、散布した組成物の液だれの有無により行った。なお、散布性の評価は、均一なミスト状に散布されることと容器内の組成物が全て散布されることの2点に関し、散布した組成物が、両方に問題ない場合は「○」、一方に問題がある場合は「△」、いずれにも問題がある場合は「×」とした。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の水性ゲル状組成物は、化粧品やトイレタリー製品等に広く用いられ、さらには農業用途(肥料)や土木業用途(土木用薬剤)等にも好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶性金属塩、(b)層状ケイ酸塩鉱物の微粒子、(c)水溶性高分子、及び(d)水を含有してなり、噴霧手段による噴霧が可能な水性ゲル状組成物であって、
前記層状ケイ酸塩鉱物の微粒子が平均粒子径2μm以下であり、かつ
前記水溶性高分子が、エーテル化度が0.4〜2.0であり、B型粘度計により測定された25℃における1重量%水溶液の粘度が1〜1000mPa・sであるカルボキシルメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする
水性ゲル状組成物。
【請求項2】
前記層状ケイ酸塩鉱物の微粒子が1種又は2種以上のスメクタイトであることを特徴とする、請求項1に記載の水性ゲル状組成物。
【請求項3】
B型粘度計を用い、ローター回転数60rpm、25℃で測定した粘度が2000〜10000mPa・sであり、かつローター回転数6rpmにおける粘度を60rpmにおける粘度で割った値が11以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性ゲル状組成物
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性ゲル状組成物を加圧による噴霧手段を備えた噴霧器に充填したことを特徴とする製剤。

【公開番号】特開2009−96779(P2009−96779A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272293(P2007−272293)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】