説明

四方弁

【課題】高温高圧の冷媒から低温低圧の冷媒への伝熱量を効果的に低減し得、もって、熱損失の低減を低コストで達成できるようにされた四方弁を提供する。
【解決手段】電磁弁50の開閉に応じて前記高圧冷媒導入口からの高圧冷媒を前記第1入出口11及び第2入出口のどちらかに導く主切換弁20が設けられた主弁本体部14と、低圧の冷媒を導出するための低圧冷媒導出口13が設けられ、前記主切換弁20の動作状態に応じて前記低圧冷媒導出口13と前記第1入出口11及び第2入出口のどちらかとを連通させる従切換弁120が設けられた従弁本体部15と、を備え、高圧冷媒を前記主切換弁20から前記従切換弁120へ導く通路61〜64を形成する通路形成部の一部がパイプ82、83もしくは薄肉筒状部81で構成され、前記主弁本体部14と前記従弁本体部15とが前記パイプ82、83もしくは薄肉筒状部81を介して離隔されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四方弁に係り、特に、冷凍サイクル等に用いられる圧縮機に一体的に付設される四方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気調和機、冷凍装置等の冷凍サイクルは、圧縮機、気液分離器、凝縮器(室外熱交換器)、蒸発器(室内熱交換器)、及び膨張弁等に加えて、下記特許文献1等にも見られるように、流路(流れ方向)切換手段としての四方弁を備えている。
【0003】
この四方弁を備えた冷凍サイクルの一例を図8を参照しながら説明する。図示例の冷凍サイクル300は、空気調和機のもので、運転モード(冷房運転と暖房運転)の切り換えを四方弁320で行うようになっている。すなわち、圧縮機310、気液分離器312、凝縮器(室外熱交換器)314、蒸発器(室内熱交換器)316、及び膨張弁318を備え、前記の圧縮機310、気液分離器312、凝縮器314、及び蒸発器316の四者の間に、第1〜第4の4つのポートa、b、c、d(図9参照)を有する四方弁320が配在されている。
【0004】
前記各機器類間は導管(パイプ)等で形成される流路で接続されている。具体的には、気液分離器312内の冷媒を圧縮機310に導く吸入流路321、圧縮機310から吐出された冷媒を四方弁320の第1ポートaに導く吐出流路322、四方弁320の第2ポートbと凝縮器314の第1流通口314aとを接続する凝縮器側送り戻し流路323、四方弁20の第3ポートcと蒸発器316の第1流通口316aとを接続する蒸発器側送り戻し流路324、四方弁320の第4ポートdと気液分離器312の戻し口312aとを接続する戻し流路325、凝縮器314の第2流通口314bと膨張弁318とを接続する流路326と、及び、膨張弁318と蒸発器316の第2流通口316bとを接続する流路327が設けられている。
【0005】
このような構成の冷凍サイクル300においては、冷房運転モードが選択されたときには、四方弁20が、図9(A)に示される如くに、吐出流路322と凝縮器側送り戻し流路323とを連通させるとともに、蒸発器側送り戻し流路324と戻し流路325とを連通させる状態に切り換えられる。このときには、図8において実線矢印で示される如くに、気液分離器312内の冷媒が吸入流路321を介して圧縮機310に吸入されるとともに、圧縮機310の吐出口310aから高温高圧の冷媒が吐出流路322、四方弁320、及び凝縮器側送り戻し流路323を介して凝縮器314に導かれ、凝縮器314において室外空気と熱交換して凝縮し、高圧の二相冷媒となって流路326を介して膨張弁318に導入される。この膨張弁318により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、流路327を介して蒸発器316に導入され、ここで室内空気と熱交換(冷房)して蒸発し、蒸発器316からは低温低圧の冷媒が蒸発器側送り戻し流路324、四方弁320、及び戻し流路325を介して気液分離器312に戻される。
【0006】
それに対し、暖房運転モードが選択されたときには、四方弁320が、図9(B)に示される如くに、吐出流路322と蒸発器側送り戻し流路324とを連通させるとともに、凝縮器側送り戻し流路323と戻し流路325とを連通させる状態に切り換えられる。このときには、図8において破線矢印で示される如くに、気液分離器312内の冷媒が吸入流路321を介して圧縮機310に吸入されるとともに、圧縮機310の吐出口310aから高温高圧の冷媒が吐出流路322、四方弁320、及び蒸発器側送り戻し流路324を介して蒸発器316に導かれ、蒸発器316において室内空気と熱交換(暖房)して蒸発し、高圧の二相冷媒となって流路327を介して膨張弁318に導入される。この膨張弁318により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、流路326を介して凝縮器314に導入され、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、凝縮器314からは低温低圧の冷媒が凝縮器側送り戻し流路323、四方弁320、及び戻し流路325を介して気液分離器312に戻される。
【0007】
前記した如くの従来の冷凍サイクルに使用される四方弁においては、該四方弁内で高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが近接して流動するため、高温高圧の冷媒から低温低圧の冷媒への熱伝導量(伝熱量)が大きくなり、無視できない熱損失が発生してしまうという問題があった。
【0008】
かかる問題を解消するための一つの方策として、例えば下記特許文献2等に見られるように、四方弁に断熱手段を組み込むことが考えられる。
【0009】
【特許文献1】特開2003−139430号公報
【特許文献2】特願2004−194895号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記四方弁に断熱手段を組み込むと、部品点数が増加して構成が複雑となり、コストが極めて高くなってしまう。
【0011】
本発明は、前記した如くの事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高温高圧の冷媒から低温低圧の冷媒への伝熱量を効果的に低減し得、もって、熱損失の低減を低コストで達成できるようにされた四方弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明に係る四方弁は、基本的には、冷凍サイクル等に用いられる四方弁であって、高圧冷媒の導出と低圧冷媒の導入に供される第1入出口及び第2入出口と、高圧の冷媒を導入するための高圧冷媒導入口と電磁弁が設けられ、前記電磁弁の開閉に応じて前記高圧冷媒導入口からの高圧冷媒を前記第1入出口及び第2入出口のどちらかに導く主切換弁が設けられた主弁本体部と、低圧の冷媒を導出するための低圧冷媒導出口が設けられ、前記主切換弁の動作状態に応じて前記低圧冷媒導出口と前記第1入出口及び第2入出口のどちらかとを連通させる従切換弁が設けられた従弁本体部と、を備え、高圧冷媒を前記主切換弁から前記従切換弁へ導く通路を形成する通路形成部の一部がパイプもしくは薄肉筒状部で構成され、前記主弁本体部と前記従弁本体部とが前記パイプもしくは薄肉筒状部を介して離隔されていることを特徴としている。
【0013】
以下に好ましい態様を列挙する。
高圧冷媒を前記主切換弁から前記第1入出口へ導く通路を形成する通路形成部の一部がパイプもしくは薄肉筒状部で構成される。
【0014】
高圧冷媒を前記主切換弁から前記第2入出口へ導く通路を形成する通路形成部の一部がパイプもしくは薄肉筒状部で構成される。
【0015】
前記従弁本体部に導かれた高圧冷媒は、そこで静止して滞留するようにされ前記主弁本体部に導かれた低圧冷媒は、そこで静止して滞留するようにされている。
【0016】
前記主切換弁は、高圧冷媒導入口と、該高圧冷媒導入口からの冷媒が第1主弁又は第2主弁を介して選択的に導かれる第1出口及び第2出口と、を有し、前記高圧冷媒導入口と前記第1出口との間に前記第1主弁が設けられるとともに、前記高圧冷媒導入口と前記第2出口との間に前記第2主弁が設けられ、前記第1主弁に作用する背圧と前記第1出口側の圧力との差圧を小さくするための電磁弁が設けられるとともに、前記差圧が小さくされたとき、前記第1主弁が開となるとともに前記第2主弁が閉、あるいは、前記第1主弁が閉となるとともに前記第2主弁が開、となるようにされる。
【0017】
前記第1主弁は、弁体部を有する第1スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第1出口との間を遮断連通すべく前記弁体部が接離する弁座が設けられた第1弁室と、前記第1スライド弁体における前記第1弁室とは反対側に設けられた第1背圧室と、前記弁体部が閉もしくは開となる方向に前記スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、前記第2主弁は、主弁体部及び副弁体部を有する第2スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第2出口との間を遮断連通すべく前記主弁体部が接離する主弁座が設けられた第2弁室と、前記副弁体部が接離する副弁座が設けられた第2背圧室と、前記主弁体部が閉、前記副弁体部が開となる方向に前記第2スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、前記第1主弁における前記第1背圧室と前記弁座より下流部分とを連通するパイロット通路が設けられるとともに、該パイロット通路を前記電磁弁で開閉するようにされ、かつ、前記弁座より下流部分の圧力を前記第2スライド弁体の副弁体部に作用させるようにされる。
【0018】
前記第1主弁は、弁体部を有する第1スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第1出口との間を遮断連通すべく前記弁体部が接離する弁座が設けられた第1弁室と、前記第1スライド弁体における前記第1弁室とは反対側に設けられた第1背圧室と、前記弁体部が閉となる方向に前記スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、前記第2主弁は、主弁体部及び副弁体部を有する第2スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第2出口との間を遮断連通すべく前記主弁体部が接離する主弁座が設けられた第2弁室と、前記副弁体部が接離する副弁座が設けられた第2背圧室と、前記主弁体部が閉、前記副弁体部が開となる方向に前記第2スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、前記第1スライド弁体に、前記第1背圧室と前記弁座より下流部分とを連通するパイロット通路が設けられるとともに、該パイロット通路を前記電磁弁で開閉するようにされ、かつ、前記弁座より下流部分の圧力を前記第2スライド弁体の副弁体部に作用させるようにされる。この場合、好ましくは、前記第1主弁、前記第2主弁、及び前記電磁弁が同一軸線上に配設される。
【0019】
前記従切換弁は、冷媒が導入される第1入口及び第2入口と、該第1入口及び第2入口からの低圧冷媒を選択的に導出する低圧冷媒導出口と、前記第1入口と前記低圧冷媒導出口との間に設けられた第1チェック弁と、前記第2入口と前記低圧冷媒導出口との間に設けられた第2チェック弁と、を備え、前記第1チェック弁及び第2チェック弁は、前記第1入口の冷媒圧力が前記第2入口の冷媒圧力より高いときには、前記第2入口と前記低圧冷媒導出口とを連通させるとともに、前記第1入口と前記低圧冷媒導出口との間を遮断し、前記第1入口の冷媒圧力が前記第2入口の冷媒圧力より低いときには、前記第1入口と前記低圧冷媒導出口とを連通させるとともに、前記第2入口と前記低圧冷媒導出口との間を遮断するようにされる。
【0020】
前記従切換弁の第1チェック弁は、前記第1入口に連通する第1弁穴と、該第1弁穴に摺動自在に嵌挿された第1弁体と、該第1弁体が接離する第1弁座が設けられるとともに、前記低圧冷媒導出口に連通する第1弁室と、を有し、前記第2チェック弁は、前記第2入口に連通する第2弁穴と、該第2弁穴に摺動自在に嵌挿された第2弁体と、該第2弁体が接離する第2弁座が設けられるとともに、前記低圧冷媒導出口に連通する第2弁室と、を有する。この場合、好ましくは、前記第1チェック弁と第2チェック弁とは、それらの先端部が対接するように同一軸線上に配設されて機械的に連動するようにされる。
【0021】
また、前記従切換弁における第1弁体と第1弁穴との間及び第2弁体と第2弁穴との間に、低圧冷媒を前記低圧冷媒導出口に導くための隙間が形成される。
【0022】
前記電磁弁が開及び閉のいずれか一方であるとき、高圧冷媒が前記第1入出口から外部に導出されるとともに、前記従切換弁の第1入口に導かれてそこで滞留せしめられ、かつ、低圧冷媒が前記第2入出口から前記従切換弁の第2入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出され、前記電磁弁が開及び閉のいずれか他方であるとき、高圧冷媒が前記第2入出口から外部に導出されるとともに、前記従切換弁の第2入口に導かれてそこで滞留せしめられ、かつ、低圧冷媒が前記第1入出口から前記従切換弁の第1入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出されるように構成される。
【0023】
前記従弁本体部に前記第1入出口が設けられ、前記電磁弁が開及び閉のいずれか一方であるとき、高圧冷媒が前記従切換弁に導かれてその第1入口を介して前記第1入出口から外部に導出され、かつ、低圧冷媒が前記第2入出口から前記従切換弁の第2入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出され、前記電磁弁が開及び閉のいずれか他方であるとき、高圧冷媒が前記第2入出口から外部に導出されるとともに、前記従切換弁の第2入口に導かれてそこで滞留せしめられ、かつ、低圧冷媒が前記第1入出口から前記従切換弁の第1入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出されとともに、前記主弁本体部に導入されて滞留せしめられるように構成される。前記通路形成部の内周に断熱部材が配在され、前記従切換弁の弁室から前記低圧冷媒導出口に至る導出通路の内周に断熱部材が配在される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る四方弁は、高圧冷媒を主切換弁から従切換弁へ導く通路を形成する通路形成部の一部がパイプもしくは薄肉筒状部で構成されるので、主弁本体部と従弁本体部との間の伝熱面積が小さくされ、さらに、主弁本体部と従弁本体部とが前記パイプもしくは薄肉筒状部を介して離隔されるので、高温高圧の冷媒(主弁本体部)から低温低圧の冷媒(従弁本体部)への伝熱量が従来の通常の四方弁に比して小さくなる。
【0025】
また、当該弁内(従弁本体部内)では、低圧冷媒は流動しているが高圧冷媒は従弁本体部内では実質的に静止せしめられて滞留しているので、高温高圧の冷媒から低温低圧の冷媒への伝熱量が、高圧冷媒及び低圧冷媒が弁内で共に流動している従来の通常の四方弁に比して小さくなる。そのため、四方弁に断熱手段を組み込んだ場合と同等以上の熱損失の低減を、より低コストで達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る四方弁の一実施形態の縦断面図、図2は、図1のC−C矢視断面図、図3(A)は、図1のA−A矢視断面図、図3(B)は、図1のB−B矢視断面図、図4は、図1のD−D矢視断面図である。
【0027】
図示の四方弁10は、高圧冷媒の導出と低圧冷媒の導入に供される第1入出口11(が設けられた第1入出口形成部16)及び第2入出口12(が設けられた第2入出口形成部17)と、高圧の冷媒を導入するための高圧冷媒導入口23と電磁弁50が設けられ、この電磁弁50の開閉に応じて高圧冷媒導入口23からの高圧冷媒を第1入出口11及び第2入出口12のどちらかに導く主切換弁20が設けられた主弁本体部14と、低圧の冷媒を導出するための低圧冷媒導出口13が設けられ、主切換弁20の動作状態に応じて低圧冷媒導出口13と第1入出口11及び第2入出口12のどちらかとを連通させる従切換弁120が設けられた従弁本体部15と、を備え、高圧冷媒を主切換弁20から従切換弁120へ導く通路61、62、63、64を形成する通路形成部の一部がパイプ82、83もしくは薄肉筒状部81、84で構成され、主弁本体部14と従弁本体部15とが前記パイプ82、83や薄肉筒状部81、84を介して離隔されている。なお、高圧冷媒を主切換弁20から第1入出口11へ導く通路61を形成する通路形成部の一部が薄肉筒状部81で構成され、高圧冷媒を主切換弁20から第2入出口12へ導く通路63を形成する通路形成部の一部がパイプ83で構成されている。なお、主弁本体部14、従弁本体部15、第1入出口形成部16、第2入出口形成部17には、それぞれ適宜に当該四方弁10の取り付け用のボルト穴(雌ねじ部)18、18、…が形成されている。
【0028】
前記主切換弁20が設けられた金属ブロックからなる主弁本体部14には、前記高圧冷媒導入口23が形成されるとともに、該高圧冷媒導入口23に直交するように、互い違いに、第1主弁40(パイロット式電磁弁)用の段付き第1弁穴41及び第2主弁30(差圧応動弁)用の段付き第2弁穴31が平行に設けられ、第1弁穴41の底部付近には第1出口26(通路61)が開口せしめられ、第2弁穴31の底部付近には第2出口25(通路63)が開口せしめられている。なお、高圧冷媒導入口23には、ストレーナ28が配在されている。
【0029】
前記主切換弁20は、高圧冷媒導入口23と第1出口26との間に第1主弁40が設けられるとともに、高圧冷媒導入口23と第2出口25との間に第2主弁30が設けられ、第1主弁40に作用する背圧と第1出口26側の圧力との差圧を小さくするための電磁弁50が設けられるとともに、前記差圧が小さくされたとき、前記第1主弁40が開、前記第2主弁30が閉となるようにされている。
【0030】
より具体的には、前記第1主弁40は、弁体部42A及び大径部42Cを有する第1スライド弁体42と、高圧冷媒導入口23と第1出口26との間を遮断連通すべく弁体部42Aが接離する弁座45が設けられた第1弁室44と、第1スライド弁体42における第1弁室44とは反対側に設けられた第1背圧室47と、前記弁体部42Aが閉となる方向にスライド弁体42を付勢する付勢部材としてのコイルばね48と、を備える。
【0031】
前記第2主弁30は、主弁体部32A、副弁体部32B、及び大径部32Cを有する第2スライド弁体32と、高圧冷媒導入口23と第2出口25との間を遮断連通すべく主弁体部32Aが接離する主弁座35が設けられた第2弁室34と、副弁体部32Bが接離する副弁座36が設けられた第2背圧室37と、主弁体部32Aが閉、副弁体部32Bが開となる方向に第2スライド弁体32を付勢する付勢部材としてのコイルばね38と、を備える。
【0032】
なお、前記高圧冷媒導入口23に導入された高圧の冷媒は、第2弁室34、連通路39、第1弁室44、及び第1スライド弁体42(の大径部42C)とその摺動壁面(第1弁穴41)との間を通って第1背圧室47にも導入されるとともに、第2スライド弁体32(の大径部32C)とその摺動壁面(第2弁穴31)との間を通って第2背圧室37にも導入される。また、第1主弁40及び第2主弁30の第1背圧室47側及び第2背圧室37側には、それぞれ前記コイルばね48、38のばね受けともなるねじ蓋24、29が螺合せしめられている。また、ねじ蓋24には副弁座36が設けられているが、該副弁座36は、ねじ蓋24と一体でも別体でも良い。
【0033】
また、図2に示されている如くに、前記第1主弁40における第1背圧室47と前記弁座45より下流部分41aとを電磁弁50を介して連通するパイロット通路55設けられるとともに、該パイロット通路55(の弁室側ポート55a)を、コイル部51、吸引子52、ボール53a付き弁体(プランジャ)53、付勢ばね54等からなる電磁弁50で開閉するようにされ、さらに、前記弁座45より下流部分41aと第2背圧室37とが連通路49及びねじ蓋24に形成された連通路24aを介して連通せしめられている。なお、前記電磁弁50は、それ自体はよく知られている汎用品であり、通電されていないときには、付勢ばね54により弁体53が押し下げられて前記パイロット通路55(の弁室側ポート55a)を閉じ、通電されると、前記弁体53が吸引子52側に引き上げられて前記パイロット通路55(の弁室側ポート55a)を開けるようにされる。
【0034】
一方、前記従切換弁120は、前記低圧冷媒導出口13に加えて、冷媒が導入される第1入口131(通路62)が設けられるとともに、第2入口132(通路64)が設けられ、該第1入口131及び第2入口131からの冷媒を選択的に前記低圧冷媒導出口13に導くようにされており、第1入口131と低圧冷媒導出口13との間に設けられた第1チェック弁121と、第2入口132と低圧冷媒導出口113との間に設けられた第2チェック弁122と、を備え、第1チェック弁121及び第2チェック弁122は、第1入口131の冷媒圧力が前記第2入口132の冷媒圧力より高いときには、第2入口132と低圧冷媒導出口13とを連通させるとともに、第1入口131と低圧冷媒導出口13との間を遮断し、第1入口131の冷媒圧力が第2入口132の冷媒圧力より低いときには、第1入口131と低圧冷媒導出口13とを連通させるとともに、第2入口132と低圧冷媒導出口113との間を遮断するようにされる。
【0035】
より具体的には、前記第1チェック弁121は、第1入口131に連通する第1弁穴125と、該第1弁穴125に摺動自在に嵌挿された第1弁体123と、該第1弁体123が接離する第1弁座127が設けられるとともに、低圧冷媒導出口13に連通する弁室130(第2チェック弁22と共通)と、を有し、前記第2チェック弁122は、第2入口132に連通する第2弁穴126と、該第2弁穴126に摺動自在に嵌挿された第2弁体124と、該第2弁体124が接離する第2弁座128が設けられるとともに、低圧冷媒導出口13に連通する弁室130(第1チェック弁121と共通)と、を有している。
【0036】
なお、第1弁穴125と第2弁穴126の端部には、前記第1弁体123及び第2弁体124の抜け止めともなる蓋部材137、138が固着されている。
【0037】
ここで、第1チェック弁121と第2チェック弁122とは、同一構造で左右対称的に同一軸線上に配設され、第1弁体123と第2弁体124の円柱状先端部が対接せしめられて、それらが機械的に連動するようにされている。また、第1弁体123及び第2弁体124は、それぞれ第1弁座127及び第2弁座128に接離する円錐面状の弁体部と、断面角丸付き正方形(非円形断面)の嵌挿部と、からなり、第1弁体123と第1弁穴125との間及び第2弁体124と第2弁穴126との間に、冷媒を低圧冷媒導出口13に導くための隙間S(図4参照)が形成されている。また、嵌挿部には後面側に開口する断面円形の穴が形成されている。
【0038】
このような構成とされた従切換弁120においては、第1入口131の冷媒圧力が第2入口132の冷媒圧力より高いときには、第1弁体123が第2弁体124を押しながら右行し、第1弁体123の弁体部が第1弁座127に接当するとともに、第2弁体124の弁体部が第2弁座128から離間し、第1チェック弁121が閉、第2チェック弁122が開となり、第1入口131と低圧冷媒導出口13との間が遮断されるとともに、第2入口132と低圧冷媒導出口13とが連通して、第2入口132の低圧の冷媒が弁室130を介して低圧冷媒導出口13から外部に導出(吸入)される。
【0039】
それに対し、第1入口131の冷媒圧力が第2入口132の冷媒圧力より低いときには、第2弁体124が第1弁体123を押しながら左行し、第2弁体124の弁体部が第2弁座128に接当するとともに、第1弁体123の弁体部が第1弁座27から離間し、第2チェック弁122が閉、第1チェック弁121が開となり、第2入口132と低圧冷媒導出口13との間が遮断されるとともに、第1入口131と低圧冷媒導出口13とが連通して、第1入口131の低圧の冷媒が弁室130を介して低圧冷媒導出口13から外部に導出(吸入)される。
【0040】
次に、前記主切換弁20の動作と本実施形態の四方弁10における冷媒の流れを説明する。
【0041】
前述した如くの構成とされた主切換弁20においては、冷凍サイクルが運転されていないとき(冷媒が圧縮されていないとき)には、第2主弁30は、コイルばね38の付勢力により、主弁体部32Aが閉、副弁体部32Bが開とされ、第1主弁40は、コイルばね48の付勢力により、弁体部42が閉とされ、電磁弁50は通電されていない(無通電)のでパイロット通路55は閉とされる。
【0042】
冷凍サイクルが運転され、かつ、電磁弁50が通電されていないとき(無通電時)には、高圧冷媒導入口23に高圧の冷媒が導入されるとともに、電磁弁50によりパイロット通路55(の弁室側ポート55a)が閉じられる。このときには、高圧冷媒導入口23に導入された高圧の冷媒の圧力が第2主弁30の第2スライド弁体32の大径部32Cに作用し、これにより、第2スライド弁体32がコイルばね38の付勢力に抗して移動し、主弁体部32Aが開となるとともに、副弁体部32Bが閉となり、また、第1主弁40の弁座45より下流部分41aの内圧より第1背圧室47の内圧(背圧)の方が高くなる(差圧が大となる)ので、第1スライド弁体42の弁体部42Aが閉となる。このため、高圧の冷媒は第2出口25(通路63)から第2入出口12に導かれて外部に吐出されるとともに、通路64を通って従切換弁120の第2入口132を介して第2弁穴126にも導かれる。一方、低圧の冷媒は、第1入出口11から通路62及び第1入口131を介して第1弁穴125に導入される。このため、第1入口131の冷媒圧力が第2入口132の冷媒圧力より低くなり、第2弁体124が第1弁体123を押しながら左行し、第2弁体124の弁体部が第2弁座128に接当するとともに、第1弁体123の弁体部が第1弁座27から離間し、第2チェック弁122が閉、第1チェック弁121が開となり、第2入口132と低圧冷媒導出口13との間が遮断されるとともに、第1入口131と低圧冷媒導出口13とが連通して、第1入口131に導入された低圧の冷媒が弁室130を介して低圧冷媒導出口13から外部に導出(吸入)される。このとき、第2弁穴126に導入された高圧の冷媒及び通路65、連通路33aに導入された低圧冷媒は、静止状態で滞留せしめられる。
【0043】
それに対し、電磁弁50が通電されたとき(通電時)には、高圧冷媒導入口23に高圧の冷媒が導入されるとともに、電磁弁50の弁体53が引き上げられてパイロット通路55(の弁室側ポート55a)が開かれる。これにより、第1主弁40の弁座45より下流部分41aの圧力が上昇して第1背圧室47との差圧が小さくなり、その上昇した前記弁座45より下流部分41aの圧力が連通路49、33aを介して第2スライド弁体32の副弁体部32Bに作用するので、第2主弁30の第2スライド弁体32が移動して、主弁体部32Aが閉となるとともに、副弁体部32Bが開となり、これによって、高圧の冷媒は、高圧冷媒導入口23から連通路39を介して第1主弁40の第1弁室44に導かれ、第1スライド弁体42の大径部42Cに作用し、これにより、第1スライド弁体42がコイルばね48の付勢力に抗して移動し、弁体部42Aが開となる。このため、高圧の冷媒は第1出口26に導かれて吐出されるとともに、通路62を通って従切換弁120の第1入口131を介して第1弁穴125にも導かれる。一方、低圧の冷媒は、第2入出口12から通路64及び第2入口132を介して第2弁穴126に導入される。このため、第2入口132の冷媒圧力が第1入口131の冷媒圧力より低くなり、第1弁体123が第2弁体124を押しながら右行し、第1弁体123の弁体部が第1弁座127に接当するとともに、第2弁体124の弁体部が第21弁座28から離間し、第1チェック弁121が閉、第2チェック弁122が開となり、第2入口132と低圧冷媒導出口13とが連通するとともに、第1入口131と低圧冷媒導出口13との間が遮断され、第2入口132に導入された低圧の冷媒が弁室130を介して低圧冷媒導出口13から外部に導出(吸入)される。このとき、第1弁穴125に導入された高圧の冷媒は、静止状態で滞留せしめられる。
【0044】
このような構成とされた本実施形態の四方弁10は、高圧冷媒を主切換弁20から従切換弁120へ導く通路61、62、63、64を形成する通路形成部の一部がパイプ82、84や薄肉筒状部81、84で構成されるので、主弁本体部14と従弁本体部15との間の伝熱面積が小さくされ、さらに、主弁本体部14と従弁本体部15とが前記パイプ82、83もしくは薄肉筒状部81、84を介して離隔されるので、高温高圧の冷媒(主弁本体部14)から低温低圧の冷媒(従弁本体部15)への伝熱量が従来の通常の四方弁に比して小さくなる。電磁弁50の通電時に伝熱量をより低減させたい場合は、通路61等の内周に断熱部材61aを配在すれば良い。
【0045】
また、当該弁10内(従弁本体部15内)では、低圧冷媒は流動しているが高圧冷媒は従弁本体部15内では実質的に静止せしめられて滞留しているので、主弁本体部14では低圧冷媒が静止せしめられ滞留しているので、高温高圧の冷媒から低温低圧の冷媒への伝熱量が、高圧冷媒及び低圧冷媒が弁内で共に流動している従来の通常の四方弁に比して小さくなる。そのため、四方弁に断熱手段を組み込んだ場合と同等以上の熱損失の低減を、より低コストで達成できる。
【0046】
図5は、本発明に係る四方弁の他の実施形態を示す縦断面図、図6は、図5のE−E矢視断面図、図7は、図5のF−F矢視断面図である。各図においては、図1〜図4に示される四方弁10の各部と同一構成ないし同一機能部分には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0047】
図5〜図7に示される四方弁10’は、主弁本体部14と従弁本体部15とを有し、主弁本体部14は、高圧の冷媒を導入するための高圧冷媒導入口23と、第2入出口12と、電磁弁50とが設けられ、この電磁弁50の開閉に応じて、高圧冷媒導入口23からの高圧冷媒を、第1出口26(通路65)、従切換弁120の第1弁穴125、第1入口131を介して第1入出口11に導くか、あるいは、第2出口25(通路66)を介して第2入出口12及び従切換弁120の第2入口132、第2弁穴126に導くようにされ、高圧冷媒を主切換弁20から従切換弁120へ導く通路65、66を形成する通路形成部の一部が薄肉筒状部85、86で構成され、主弁本体部14と従弁本体部15とが薄肉筒状部85、86を介して離隔されている。なお、主弁本体部14、従弁本体部15には、それぞれ適宜に当該四方弁10の取り付け用のボルト穴(雌ねじ部)18、18、…が形成されている。
【0048】
本実施形態では、主弁本体部14に前記実施形態とは構成が異なる主切換弁70が設けられ、この主切換弁70は、電磁弁50付き第1主弁40と第2主弁30とからなり、それらが同一軸線上に位置するように共通弁穴71を有している。
【0049】
かかる主切換弁70においても、高圧冷媒導入口23と第2出口25との間に第2主弁30が設けられるとともに、高圧冷媒導入口23と第1出口26との間に第1主弁40が設けられ、第1主弁40に作用する背圧と第1出口26側の圧力との差圧を小さくするための電磁弁50が設けられるとともに、前記差圧が小さくされたとき、前記第2主弁30が閉、前記第1主弁40が開となるようにされている。
【0050】
より具体的には、前記第1主弁40は、弁体部42A及び大径部42Cを有する第1スライド弁体42と、高圧冷媒導入口23と第1出口26との間を遮断連通すべく弁体部42Aが接離する弁座45が設けられた第1弁室44と、第1スライド弁体42における第1弁室44とは反対側に設けられた第1背圧室47と、前記弁体部42Aが閉となる方向にスライド弁体42を付勢する付勢部材としてのコイルばね48と、を備える。
【0051】
前記第2主弁30は、主弁体部32A、副弁体部32B、及び大径部32Cを有する第2スライド弁体32と、高圧冷媒導入口23と第2出口25との間を遮断連通すべく主弁体部32Aが接離する主弁座35が設けられた第2弁室34と、副弁体部32Bが接離する副弁座36が設けられた第2背圧室37と、主弁体部32Aが閉、副弁体部32Bが開となる方向に第2スライド弁体32を付勢する付勢部材としてのコイルばね38と、を備える。
【0052】
なお、前記高圧冷媒導入口23に導入された高圧の冷媒は、連通路39、39(図6参照)、第1弁室44、及び第1スライド弁体42(の大径部42C)とその摺動壁面(共通弁穴71)との間を通って第1背圧室47にも導入されるとともに、第2スライド弁体32(の大径部32C)とその摺動壁面との間を通って第2背圧室37にも導入される。
【0053】
また、第1主弁40の第1スライド弁体42には、第1背圧室47と前記弁座45より下流部分(第1出口26及び第2主弁30側)とを連通するパイロット通路(連通路)55’が設けられるとともに、該パイロット通路55’を前記電磁弁50で開閉するようにされ、かつ、前記弁座45より下流部分の圧力を、共通弁穴71に螺合固定された段付き円筒状の弁座形成部材33の連通路33aを介して第2スライド弁体32の副弁体部32Bに作用させるようにされている。なお、前記電磁弁50は、それ自体はよく知られている汎用品であり、通電されていないときには、付勢ばね54により弁体53が押し下げられて前記パイロット通路55’を閉じ、通電されると、前記弁体53が吸引子52側に引き上げられて前記パイロット通路55’を開けるようにされる。
【0054】
一方、従切換弁120は、前記実施形態と略同じ構成であるが、第1弁体123及び第2弁体124が後退し過ぎないように(高圧冷媒の圧力が作用しなくなるのを避けるため)、それらを付勢部材141、142で相互に押し合う方向に付勢するようにされている。
【0055】
このような構成とされた主切換弁70においても、冷凍サイクルが運転されていないときには、第2主弁30は、コイルばね38の付勢力により、主弁体部32Aが閉、副弁体部32Bが開とされ、第1主弁40は、コイルばね48の付勢力により、弁体部42が閉とされ、電磁弁50は通電されていない(無通電)のでパイロット通路55’は閉とされる。
【0056】
冷凍サイクルが運転され、かつ、電磁弁50が通電されていないとき(無通電時)には、高圧冷媒導入口23に高圧の冷媒が導入されるとともに、電磁弁50によりパイロット通路55’が閉じられる。このときには、高圧冷媒導入口23に導入された高圧の冷媒の圧力が第2主弁30の第2スライド弁体32の大径部32Cに作用し、これにより、第2スライド弁体32がコイルばね38の付勢力に抗して移動し、主弁体部32Aが開となるとともに、副弁体部32Bが閉となり、また、第1主弁40の弁座45より下流部分の内圧より第1背圧室47の内圧(背圧)の方が高くなる(差圧が大となる)ので、第1スライド弁体42の弁体部42Aが閉となる。このため、高圧の冷媒は第2出口25(通路66)から第2入出口12に導かれて外部に吐出されるとともに、通路66を通って従切換弁120の第2入口132を介して第2弁穴126にも導かれる。一方、低圧の冷媒は、第1入出口11から第1入口131を介して第1弁穴125に導入される。このため、第1入口131の冷媒圧力が第2入口132の冷媒圧力より低くなり、第2弁体124が第1弁体123を押しながら移動し、第2弁体124の弁体部が第2弁座128に接当するとともに、第1弁体123の弁体部が第1弁座27から離間し、第2チェック弁122が閉、第1チェック弁121が開となり、第2入口132と低圧冷媒導出口13との間が遮断されるとともに、第1入口131と低圧冷媒導出口13とが連通して、第1入口131に導入された低圧の冷媒が弁室130を介して低圧冷媒導出口13から外部に導出(吸入)される。このとき、第2弁穴126に導入された高圧の冷媒は、静止状態で滞留せしめられる。
【0057】
それに対し、電磁弁50が通電されたとき(通電時)には、高圧冷媒導入口23に高圧の冷媒が導入されるとともに、電磁弁50の弁体53が引き上げられてパイロット通路55’が開かれる。これにより、第1主弁40の弁座45より下流部分の圧力が上昇して第1背圧室47との差圧が小さくなり、その上昇した前記弁座45より下流部分41aの圧力が弁座形成部材33の連通路33aを介して第2スライド弁体32の副弁体部32Bに作用するので、第2主弁30の第2スライド弁体32が移動して、主弁体部32Aが閉となるとともに、副弁体部32Bが開となり、これによって、高圧の冷媒は、高圧冷媒導入口23から連通路39を介して第1主弁40の第1弁室44に導かれ、第1スライド弁体42の大径部42Cに作用し、これにより、第1スライド弁体42がコイルばね48の付勢力に抗して移動し、弁体部42Aが開となる。このため、高圧の冷媒は第1出口26(通路65)を通って従切換弁120の第1弁穴125、第1入口131を介して第1入出口11から外部に吐出される。一方、低圧の冷媒は、第2入出口12から通路66及び第2入口132を介して第2弁穴126に導入される。このため、第2入口132の冷媒圧力が第1入口131の冷媒圧力より低くなり、第1弁体123が第2弁体124を押しながら移動し、第1弁体123の弁体部が第1弁座127に接当するとともに、第2弁体124の弁体部が第21弁座28から離間し、第1チェック弁121が閉、第2チェック弁122が開となり、第2入口132と低圧冷媒導出口13とが連通するとともに、第1入口131と低圧冷媒導出口13との間が遮断され、第2入口132に導入された低圧の冷媒が弁室130を介して低圧冷媒導出口13から外部に導出(吸入)される。このとき、第1弁穴125に導入された高圧の冷媒は、そこで滞留することなく、第1入出口11から外部に導出される。
【0058】
このような構成とされた本実施形態の四方弁10’においては、前記実施形態及び従来の四方弁に比べて、大幅に簡素化、コンパクト化され、コストダウンを図ることができる。それに加えて、本実施形態の四方弁10’においても、高圧冷媒を主切換弁20から従切換弁120へ導く通路65、66を形成する通路形成部の一部が薄肉筒状部85、86で構成されるので、主弁本体部14と従弁本体部15との間の伝熱面積が小さくされ、さらに、主弁本体部14と従弁本体部15とが前記薄肉筒状部85、86を介して離隔されるので、高温高圧の冷媒(主弁本体部14)から低温低圧の冷媒(従弁本体部15)への伝熱量が従来の通常の四方弁に比して小さくなる。
【0059】
また、電磁弁50が閉であるとき(無通電時)には、当該弁10内(従弁本体部15内)では、低圧冷媒は流動しているが高圧冷媒は従弁本体部15内では実質的に静止せしめられて滞留しているので、また、主弁本体部14では、低圧冷媒が静止せしめられ停留しているので、高温高圧の冷媒から低温低圧の冷媒への伝熱量が、高圧冷媒及び低圧冷媒が弁内で共に流動している従来の通常の四方弁に比して小さくなる。そのため、四方弁に断熱手段を組み込んだ場合と同等以上の熱損失の低減を、より低コストで達成できる。なお、電磁弁50が開であるとき(通電時)には、高圧冷媒も従弁本体部15内を通過流動しているので、前記無通電時の如くの熱損失低減効果は得られないが、それでも、簡素化、コンパクト化によるコストダウン効果、主弁本体部14と従弁本体部15との間の伝熱面積を小さくしたことによる熱損失低減効果、及び無通電時に高圧冷媒を滞留させることによる熱損失低減効果を考えれば、実用性が高い。
【0060】
また、図7に示される如くに、従切換弁120の弁室130から低圧冷媒導出口13に至る導出通路68の内周に樹脂等で構成される断熱部材90を配設することにより、断熱性、熱損失低減効果をさらに高めることも可能である。
【0061】
電磁弁5が開であるとき(通電時)には、通電されていない時に比べて高圧から低圧への伝熱量が大きくなるが、補助的な暖房用途などでは、用途的に許容される場合もあり、また、通電時に伝熱量をより低減させたい場合は、通路65,66等の内周に断熱部材65a、66aを配在すれば良い。
【0062】
なお、前記実施形態では、第1主弁40の付勢部材であるコイルばね48は、第1背圧室47に配在されて第1スライド弁体42をその弁体部42Aが閉となる方向に付勢するようにされているが、これに代えて、第1主弁40の付勢部材であるコイルばね48を、第1弁室44に配在して第1スライド弁体42をその弁体部42Aが開となる方向に付勢するようにしてもよい。
【0063】
このようにすることにより、電磁弁50が通電されていないとき(無通電時)には、第1スライド弁体42に、入口23からの高圧の冷媒の圧力に加えてコイルばね48の付勢力が加えられるので、第1主弁40の弁体部42Aが開となり、それに伴い、第2主弁30の副弁体部32Bが開となるとともに主弁体部32Aが閉となり、これによって、高圧の冷媒は、入口23から第1弁室44を介して第1出口26(通路61)に導かれる。
【0064】
それに対し、電磁弁50が通電されたとき(通電時)には、パイロット通路55(の弁室側ポート55a)が開かれるので、第1主弁40の弁座45より下流部分41aと第1背圧室47との差圧が小さくなり、入口23に導入された高圧の冷媒の圧力により、第2スライド弁体32の主弁体部32Aが開となるとともに、副弁体部32Bが閉となり、高圧の冷媒は第2出口25(通路63)に導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る四方弁の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1のC−C矢視断面図。
【図3】(A)は、図1のA−A矢視断面図、(B)は、図1のB−B矢視断面図。
【図4】図1のD−D矢視断面図。
【図5】本発明に係る四方弁の他の実施形態を示す縦断面図。
【図6】図5のE−E矢視断面図。
【図7】図5のF−F矢視断面図。
【図8】従来の四方弁が用いられた冷凍サイクルの一例を示す図。
【図9】図8に示される従来の四方弁における熱損失の説明に供される図。
【符号の説明】
【0066】
10、10’…四方弁
11…第1入出口
12…第2入出口
13…低圧冷媒導出口
14…主弁本体部
15…従弁本体部
20、70…主切換弁
23…高圧冷媒導入口
25…第2出口
26…第1出口
30…第2主弁
32…第2スライド弁体
32A…主弁体部
32B…副弁体部
37…第2背圧室
40…第1主弁
42…第1スライド弁体
42A…弁体部
47…第1背圧室
50…電磁弁
55、55’…パイロット通路
120…従切換弁
121…第1チェック弁
122…第2チェック弁
123…第1弁体
124…第2弁体
125…第1弁穴
126…第2弁穴
127…第1弁座
128…第2弁座
131…第1入口
132…第2入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル等に用いられる四方弁であって、高圧冷媒の導出と低圧冷媒の導入に供される第1入出口及び第2入出口と、高圧の冷媒を導入するための高圧冷媒導入口と電磁弁が設けられ、前記電磁弁の開閉に応じて前記高圧冷媒導入口からの高圧冷媒を前記第1入出口及び第2入出口のどちらかに導く主切換弁が設けられた主弁本体部と、低圧の冷媒を導出するための低圧冷媒導出口が設けられ、前記主切換弁の動作状態に応じて前記低圧冷媒導出口と前記第1入出口及び第2入出口のどちらかとを連通させる従切換弁が設けられた従弁本体部と、を備え、高圧冷媒を前記主切換弁から前記従切換弁へ導く通路を形成する通路形成部の一部がパイプもしくは薄肉筒状部で構成され、前記主弁本体部と前記従弁本体部とが前記パイプもしくは薄肉筒状部を介して離隔されていることを特徴とする四方弁。
【請求項2】
高圧冷媒を前記主切換弁から前記第1入出口へ導く通路を形成する通路形成部の一部がパイプもしくは薄肉筒状部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項3】
高圧冷媒を前記主切換弁から前記第2入出口へ導く通路を形成する通路形成部の一部がパイプもしくは薄肉筒状部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項4】
前記従弁本体部に導かれた高圧冷媒は、そこで静止して滞留するようにされ、前記主弁本体部に導かれた低圧冷媒は、そこで静止して滞留するようにされていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項5】
前記主切換弁は、高圧冷媒導入口と、該高圧冷媒導入口からの冷媒が第1主弁又は第2主弁を介して選択的に導かれる第1出口及び第2出口と、を有し、前記高圧冷媒導入口と前記第1出口との間に前記第1主弁が設けられるとともに、前記高圧冷媒導入口と前記第2出口との間に前記第2主弁が設けられ、前記第1主弁に作用する背圧と前記第1出口側の圧力との差圧を小さくするための電磁弁が設けられるとともに、前記差圧が小さくされたとき、前記第1主弁が開となるとともに前記第2主弁が閉、あるいは、前記第1主弁が閉となるとともに前記第2主弁が開、となるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項6】
前記第1主弁は、弁体部を有する第1スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第1出口との間を遮断連通すべく前記弁体部が接離する弁座が設けられた第1弁室と、前記第1スライド弁体における前記第1弁室とは反対側に設けられた第1背圧室と、前記弁体部が閉もしくは開となる方向に前記スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、
前記第2主弁は、主弁体部及び副弁体部を有する第2スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第2出口との間を遮断連通すべく前記主弁体部が接離する主弁座が設けられた第2弁室と、前記副弁体部が接離する副弁座が設けられた第2背圧室と、前記主弁体部が閉、前記副弁体部が開となる方向に前記第2スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、
前記第1主弁における前記第1背圧室と前記弁座より下流部分とを連通するパイロット通路が設けられるとともに、該パイロット通路を前記電磁弁で開閉するようにされ、かつ、前記弁座より下流部分の圧力を前記第2スライド弁体の副弁体部に作用させるようにされていることを特徴とする請求項5に記載の四方弁。
【請求項7】
前記第1主弁は、弁体部を有する第1スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第1出口との間を遮断連通すべく前記弁体部が接離する弁座が設けられた第1弁室と、前記第1スライド弁体における前記第1弁室とは反対側に設けられた第1背圧室と、前記弁体部が閉となる方向に前記スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、
前記第2主弁は、主弁体部及び副弁体部を有する第2スライド弁体と、前記高圧冷媒導入口と前記第2出口との間を遮断連通すべく前記主弁体部が接離する主弁座が設けられた第2弁室と、前記副弁体部が接離する副弁座が設けられた第2背圧室と、前記主弁体部が閉、前記副弁体部が開となる方向に前記第2スライド弁体を付勢する付勢部材と、を備え、
前記第1スライド弁体に、前記第1背圧室と前記弁座より下流部分とを連通するパイロット通路が設けられるとともに、該パイロット通路を前記電磁弁で開閉するようにされ、かつ、前記弁座より下流部分の圧力を前記第2スライド弁体の副弁体部に作用させるようにされていることを特徴とする請求項5に記載の四方弁。
【請求項8】
前記第1主弁、前記第2主弁、及び前記電磁弁が同一軸線上に配設されていることを特徴とする請求項7に記載の四方弁。
【請求項9】
前記従切換弁は、冷媒が導入される第1入口及び第2入口と、該第1入口及び第2入口からの低圧冷媒を選択的に導出する低圧冷媒導出口と、前記第1入口と前記低圧冷媒導出口との間に設けられた第1チェック弁と、前記第2入口と前記低圧冷媒導出口との間に設けられた第2チェック弁と、を備え、前記第1チェック弁及び第2チェック弁は、前記第1入口の冷媒圧力が前記第2入口の冷媒圧力より高いときには、前記第2入口と前記低圧冷媒導出口とを連通させるとともに、前記第1入口と前記低圧冷媒導出口との間を遮断し、前記第1入口の冷媒圧力が前記第2入口の冷媒圧力より低いときには、前記第1入口と前記低圧冷媒導出口とを連通させるとともに、前記第2入口と前記低圧冷媒導出口との間を遮断するようにされていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項10】
前記第1チェック弁は、前記第1入口に連通する第1弁穴と、該第1弁穴に摺動自在に嵌挿された第1弁体と、該第1弁体が接離する第1弁座が設けられるとともに、前記低圧冷媒導出口に連通する第1弁室と、を有し、前記第2チェック弁は、前記第2入口に連通する第2弁穴と、該第2弁穴に摺動自在に嵌挿された第2弁体と、該第2弁体が接離する第2弁座が設けられるとともに、前記低圧冷媒導出口に連通する第2弁室と、を有していることを特徴とする請求項9に記載の四方弁。
【請求項11】
前記第1チェック弁と第2チェック弁とは、それらの先端部が対接するように同一軸線上に配設されて機械的に連動するようにされていることを特徴とする請求項10に記載の四方弁。
【請求項12】
前記従切換弁における第1弁体と第1弁穴との間及び第2弁体と第2弁穴との間に、低圧冷媒を前記低圧冷媒導出口に導くための隙間が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の四方弁。
【請求項13】
前記電磁弁が開及び閉のいずれか一方であるとき、高圧冷媒が前記第1入出口から外部に導出されるとともに、前記従切換弁の第1入口に導かれてそこで滞留せしめられ、かつ、低圧冷媒が前記第2入出口から前記従切換弁の第2入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出され、前記電磁弁が開及び閉のいずれか他方であるとき、高圧冷媒が前記第2入出口から外部に導出されるとともに、前記従切換弁の第2入口に導かれてそこで滞留せしめられ、かつ、低圧冷媒が前記第1入出口から前記従切換弁の第1入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項14】
前記従弁本体部に前記第1入出口が設けられ、前記電磁弁が開及び閉のいずれか一方であるとき、高圧冷媒が前記従切換弁に導かれてその第1入口を介して前記第1入出口から外部に導出され、かつ、低圧冷媒が前記第2入出口から前記従切換弁の第2入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出され、前記電磁弁が開及び閉のいずれか他方であるとき、高圧冷媒が前記第2入出口から外部に導出されるとともに、前記従切換弁の第2入口に導かれてそこで滞留せしめられ、かつ、低圧冷媒が前記第1入出口から前記従切換弁の第1入口及び低圧冷媒導出口を介して外部に導出されるとともに、前記主弁本体部に導入されて滞留せしめられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項15】
前記通路形成部の内周に断熱部材が配在されていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。
【請求項16】
前記従切換弁の弁室から前記低圧冷媒導出口に至る導出通路の内周に断熱部材が配在されていることを特徴とする請求項1に記載の四方弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−177381(P2006−177381A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368161(P2004−368161)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】