説明

四肢訓練装置

【課題】 機能回復度、訓練の進捗状況を使用者側が容易に把握でき、指導者側が訓練効果の分析、訓練内容の最適化などが容易にできる、四肢訓練装置を提供すること。
【解決手段】 回転角速度、加速度、傾斜、方位を検出するセンサで構成されるセンサユニット1を、四肢の関節に取り付け、センサユニット1で検出される検出データを付属の演算装置で演算処理し、演算結果を関節の運動機能を視認可能な信号として、付属の表示装置10で表示するとともに、検出データと演算結果を付属の記憶装置9に記録する。これによって、訓練の進捗状況の把握が容易になるので、使用者は訓練に取り組む意欲を維持向上でき、指導者は訓練の進捗状況に応じた適切な指導ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角速度、加速度、傾斜及び方位を検出するセンサを用いた、四肢麻痺患者のリハビリテーションを始めとする四肢の関節の運動機能回復訓練に用いられる、四肢訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事故や各種疾病などで四肢の一部または複数の部位が麻痺した患者のリハビリテーション用機器は、さまざまなものが考案され、実用化されている。しかし、その殆どが、健常者用トレーニング機器の負荷を軽減するなど、簡単な改造を施したものや、安全性重視のきわめて簡素な木製遊具のようなものが中心となっている。
【0003】
このような器具の一例として、特許文献1には、略長方形のフレームにゴムチューブを取り付けた筋力トレーニング補助具及びその使用方法が開示されている。これらの使用方法は反復動作が主であり、使用者が訓練の効果を感覚的に把握できるまでに長い期間を要するため、使用者の負担が大きい。
【0004】
また、麻痺部位の機能回復の度合いや訓練の進捗状況を、使用者が認識し難いため、回復に必要な回数や期間を消化するためには、使用者の訓練に対する意欲の維持や、理学療法士、医師などの専門家による継続的な指導や介助が不可欠である。
【0005】
このような課題に対処するため、近年になって高度なモニター機能を持ったリハビリテーション用機器が提案されている。このような例が、特許文献2、特許文献3に開示されている。
【0006】
特許文献2には、関節近傍に加速度センサを取り付けて、関節の角度を計測する方法及びその装置が開示されている。また、特許文献3には、回転角速度センサと加速度センサを、例えば腕時計型のセンシング装置として、身体の運動の種類や強度を判定、表示する装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されている装置は、関節の角度のみを検出するものであり、特許文献3に開示されている装置は、身体全体の運動の状態を検知する装置である。また、これらの装置は、需要が限定的であるため生産数が少なく量産効果が生じ難い。
【0008】
このため、これらの装置は、必然的に高価格となり用途も特化されているためコストパフォーマンスは低くなっている。価格に関する状況は、前述の簡素な木製機器なども同様であり、一般的な子供向け玩具と大差ない構造のものが、玩具の十倍以上の価格で販売されている例もある。
【0009】
【特許文献1】特開2002−52090号公報
【特許文献2】特開平11−325881号公報
【特許文献3】特開2002−78697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の訓練機器では、使用者にとって麻痺部位の機能回復度や訓練の進捗が把握し難く、反復動作が主体の訓練を使用者のみで必要量行うのは困難であった。このため専門の理学療法士や医師の指導が必要であり、指導者側の負担も少なくない。
【0011】
従って、本発明の課題は、センサにより麻痺部位の関節の屈曲状態を高精度に検出、記録することで、機能回復度、訓練の進捗状況を使用者側が容易に把握できるようにし、訓練に対する意欲の増進、負担の軽減を可能とするとともに、訓練時のデータの蓄積により、訓練効果の分析、内容の最適化などの作業を容易にし、指導者側の負担を軽減することが可能な四肢訓練装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するため、各種センサの構成、センサにより検知されるデータの処理方法、記録方法、表示方法を検討した結果なされたものである。
【0013】
即ち、本発明は、回転角速度、加速度、傾斜、方位を検出するセンサ、前記センサを固定し電気的に接続する配線を含む基板、前記センサ及び基板を収納する筐体で構成されたセンサユニットと、前記センサユニットに接続され、前記センサユニットにより検出された検出データの演算処理を行う演算装置と、前記演算装置に接続され前記検出データと前記演算処理の結果の記録を行う記憶装置と、前記演算処理の結果を視認可能な状態で表示する表示装置と、前記センサユニットと前記演算装置、前記演算装置と前記表示装置を接続するケーブルと、四肢の各関節及びその近傍に装着し、前記関節を中心に屈曲する機構を備え、前記センサユニットが取り付けられた固定器具とを有することを特徴とする四肢訓練装置である。
【0014】
また、本発明は、前記センサユニットがジャイロ、加速度センサ、地磁気センサの少なくも一つを備えることを特徴とする、前記の四肢訓練装置である。
【0015】
また、本発明は、前記センサユニットがジャイロ、加速度センサ、地磁気センサを備え、ジャイロによって検出された回転角速度、加速度センサによって検出された加速度、地磁気センサによって検出された傾斜、方位の各データから別個に算出された結果を相互に補正することで姿勢角度を算出する姿勢角度演算手段を備えることを特徴とする、前記の四肢訓練装置である。
【0016】
また、本発明は、2箇所以上の関節の屈曲に関するデータを、2個以上の前記センサユニットにより同時に検出することを特徴とする、前記の四肢訓練装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の四肢訓練装置においては、回転角速度センサ、加速度センサ、地磁気センサを適宜組み合わせてセンサユニットを構成するので、センサユニットの小型化が可能で、関節部への固定が容易である。このために使用者への負担が軽減される。
【0018】
また、演算装置と表示装置により、関節の運動状態、即ち訓練の効果や訓練の進捗度が、使用者が容易に認知できるので、訓練に対する意欲の維持増進を図ることができる。さらに、演算装置に取り付けた記憶装置により、訓練の履歴を記憶しておくことが可能なので、担当の医師や理学療法士は、訓練の進捗状況に応じた適切な指導を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明による四肢訓練装置の構成の一例を示すブロック図である。本装置は、肘の上下に固定された二つのセンサユニット1、固定装置2、演算装置を構成するパーソナルコンピュータ(以下、PCと記す)5、センサユニット1とPC5を接続するUSB(Universal Serial Bus)ハブ3、USBケーブル4、PC5内蔵のUSBインターフェース6、さらにPC5にインストールされたデバイスドライバ7、データの収集、記録、比較などを行うアプリケーションソフトウェア8、データの記録を行う記憶装置9、検出結果などを表示するCRT、液晶ディスプレイなどの表示装置10で構成される。
【0020】
ここでは、インターフェースにUSBを用いる例を示したが、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers)など他のインターフェースを用いることも可能である。また、記憶装置9には、ハードディスクや半導体メモリなど、繰り返しの書き込み、書き換えが可能なものを用いることができる。
【0021】
ここでは使用者が本発明の四肢訓練装置を、腕(肘関節)に装着して使用する場合を想定して基本的な動作原理を説明する。使用者が肘関節を屈曲させると、上腕部、前腕部のセンサユニット1のそれぞれに、回転角速度、傾斜、方位などの変化が入力される。
【0022】
これらの変化は、センサユニット1に内蔵されたセラミックジャイロ、加速度センサ、地磁気センサなどで検出され、USBハブ3及びUSBケーブル4を介して、ホストであるPC5に転送される。検出されたデータは、まずデバイスドライバ7に引き渡される。デバイスドライバ7内では、まず、各データのオフセットやゲインの調整が行われ、次に変換行列を用いてオイラー角表現の3軸の角度が算出される。
【0023】
さらに各データ間での比較、補正が行われ最終的な角度データとしてアプリケーションソフトウェア8に渡される。アプリケーションソフトウェア8内では、渡されたデータを指定された間隔で記録する。
【0024】
また、角度データや関節の屈曲を使用者の視認が容易な数字や、簡単なアニメーションで表示装置10に出力する。さらに、角度データを加工することで、屈曲の速度や屈曲運動の軌跡を求めて記録することも可能であり、これらの訓練データを記憶装置9に記録して、前後のデータとの比較、分析および訓練効果の確認ができる。
【0025】
これらの記録は、長期的に保存することで訓練開始時からの進捗状況を使用者が容易に把握できるほか、指導者、管理者にとっても、治療方法の効果分析や、訓練プログラムの調整などに応用することが可能である。
【0026】
図2は、腕部に本発明の四肢訓練装置を装着した状態を、模式的に示した図である。上腕固定部11と前腕固定部12の2箇所で固定し、それぞれの固定部にはセンサユニット14が、各1個設置されている。二つの固定部の中間にある屈曲回転部13は、上腕固定部11と前腕固定部12を、共通の軸を中心に回動可能なように接合していて、肘関節の屈曲に追従できる構成である。
【0027】
この屈曲回転部13は、屈曲方法をある程度自由に設定できるが、機能回復訓練に使用する場合は、設定外の方向には曲がらないように設定でき、常に一定の方向の運動を行うことで、機能回復度や訓練の進捗度の把握が容易にできる。
【0028】
図3は、脚部に本発明の四肢訓練装置を装着した状態を、模式的に示した図である。大腿固定部21と脛部固定部22の二つの固定部があり、それぞれの固定部には、センサユニット24が、各1個設置されている。二つの固定部の中間には膝関節の屈曲にあわせて任意の角度を取れるよう回動できる屈曲回転部23があり、図2に示した腕部用の場合と同じように、屈曲方向の固定、調整が可能である。
【0029】
また、図2及び図3に示した四肢訓練装置を同時に用いることが可能なことは勿論である。この際は、センサユニットのみ複数個用い、図1に示したPC5を切り替えスイッチにより、共用とすることもできる。
【0030】
以上に説明したように、本発明を用いれば、使用者が機能回復度や訓練の進捗を常に把握することができ、指導者側も同時に訓練効果の記録、分析を詳細かつ容易に行える実用性の高い四肢訓練装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による四肢訓練装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】腕部に本発明の四肢訓練装置を装着した状態を模式的に示した図。
【図3】脚部に本発明の四肢訓練装置を装着した状態を模式的に示した図。
【符号の説明】
【0032】
1,14,24 センサユニット
2 固定装置
3 USBハブ
4 USBケーブル
5 パーソナルコンピュータ(PC)
6 USBインターフェース
7 デバイスドライバ
8 アプリケーションソフトウェア
9 記憶装置
10 表示装置
11 上腕固定部
12 前腕固定部
13 屈曲回転部
21 大腿固定部
22 頸部固定部
23 屈曲回転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転角速度、加速度、傾斜、方位を検出するセンサ、前記センサを固定し電気的に接続する配線を含む基板、前記センサ及び基板を収納する筐体で構成されたセンサユニットと、前記センサユニットに接続され、前記センサユニットにより検出された検出データの演算処理を行う演算装置と、前記演算装置に接続され前記検出データと前記演算処理の結果の記録を行う記憶装置と、前記演算処理の結果を視認可能な状態で表示する表示装置と、前記センサユニットと前記演算装置、前記演算装置と前記表示装置を接続するケーブルと、四肢の各関節及びその近傍に装着し、前記関節を中心に屈曲する機構を備え、前記センサユニットが取り付けられた固定器具とを有することを特徴とする四肢訓練装置。
【請求項2】
前記センサユニットがジャイロ、加速度センサ、地磁気センサの少なくも一つを備えることを特徴とする、請求項1に記載の四肢訓練装置。
【請求項3】
前記センサユニットがジャイロ、加速度センサ、地磁気センサを備え、ジャイロによって検出された回転角速度、加速度センサによって検出された加速度、地磁気センサによって検出された傾斜、方位の各データから別個に算出された結果を相互に補正することで姿勢角度を算出する姿勢角度演算手段を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の四肢訓練装置。
【請求項4】
2箇所以上の関節の屈曲に関するデータを、2個以上の前記センサユニットにより同時に検出することを特徴とする、請求項1ないし請求項3に記載の四肢訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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