説明

回動つまみのトルク調整装置

【課題】回動つまみのトルク調整装置において、トルク調整範囲を所定範囲内に制限設定すると共に、トルク調整つまみの動作が安定した機構を提供する。
【解決手段】回動つまみ40のスリーブ部42-2とトルク調整つまみ50の中空筒部51とが嵌合し、回動つまみ40の環状端面に形成した複数の小突起とトルク調整つまみ50の外周側の環状溝52に形成した複数の傾斜面とがそれぞれ当接した状態で、両つまみ40,50をホルダブラケット80で弾性部90を介して連結し、そのアッセンブリがキャップ60と弾性部70を介して被操作部品30の回動軸31に取り付けられる。両つまみ40,50の相対的回動角度により弾性部70の圧縮量が変化して回動つまみ40の回動トルクが増減するが、ホルダブラケット80の脚部はトルク調整つまみ50の周方向開口領域内でしか旋回できないために、トルク調整範囲は制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に実装されたロータリーエンコーダや可変抵抗器等の部品を操作する回動つまみについて、その回動トルクを自在に増減設定させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の中には回動操作によって微妙な調整を行う部品が内蔵されているものが多いが、例えば、無線通信機の場合であれば、メインダイアルの回動つまみを操作して、内蔵部品であるロータリーエンコーダの軸の回動角度を小刻みに調整することで運用周波数を設定する。
そして、そのように微妙な角度調整が要求される回動つまみにおいては実際の操作感が極めて重要であり、適度な回動トルクが存在することにより、安定した手動感覚が得られ、微細な角度設定が容易になるとされている。
【0003】
そのため、従来から下記特許文献1及び2に見られるように、回動つまみに関して各種方式による回動トルクの調整装置が考案されている。
ここに、特許文献1では、図7に示すように、「パネル101の外側へ突出させた被駆動軸102の先端部に着脱自在に固着された第1のつまみ103と、前記第1のつまみ103に対して着脱自在に固着され、且つパネル101の表面に向かって開口した態様でほぼくの字状に形成された弾性板104と、前記パネル101の表面に対向するように前記弾性板104の先端部に固着された摩擦板105と、回動角度に対応して半径が変化する孔106が設けられており、前記弾性板104と前記第1のつまみ103との間に挿入され、且つ第1のつまみ103の一部が嵌入された第2のつまみ107とを備え、第1のつまみ103と第2のつまみ107との相対位置を変えてトルクを可変とするトルク可変つまみ装置」を提案している。
この装置によれば、第2のつまみ107の孔106が楕円状になっており、第1のつまみ103を固定した状態で第2のつまみ107を回動させると、弾性板104の位置において孔106の半径が変化する。例えば、図7(A)の状態での孔106の半径は、第2のつまみ107を回動させた後の同図(B)の状態では小さくなる。
それにより、弾性板104が下側へ押圧されて角度が変化して摩擦板105がパネル101の表面に強く押圧せしめられ、パネル101の表面と摩擦板105との間の摩擦が大きくなって、第1のつまみ103の回動トルクが大きくなる。
【0004】
また、特許文献2では、図8に示すように、「パネル111の外側へ突出させた被駆動軸112の先端部に取り付けられたつまみ113と、前記パネル111の表面の前記被駆動軸周辺部に設けられた傾斜部114と、回動自在に支持され、且つ前記傾斜部114を摺動する突起115と前記つまみ113に向けて突出し弾性的に前記つまみ113を押圧する突片116を具備したレバー117と、このレバー117と前記つまみ113の間に配置されてこのレバー117を前記パネル111側へ押圧する弾性部材118とを備え、前記レバー117の回動によりこのレバー117の突片116と前記つまみ113との押圧力が変化しトルクが変わるよう構成したつまみのトルク可変機構」が提案されている。
この機構によれば、図8(A)の状態からレバー117を回転させると、突起115がパネル111の表面の傾斜部114に沿って乗り上げてゆくことにより、弾性部材118を圧縮しながら突片116がつまみ113側へ移動する。
そして、図8(B)に示すように、突起115は凹部119に係合した状態となるが、摩擦板120を介してつまみ113を押圧することにより、つまみ113に対する摩擦力が大きくなってその回動トルクが大きくなる。
【0005】
更に、パネル面を利用しない方式による回動つまみのトルク調整装置として、図9に示すような構成も実施されている。
同図において、121はパネル、122は部品実装用基板、123は被操作部品であるロータリーエンコーダ、124は回動つまみ、125はトルク調整つまみ、126はキャップ、127は平ワッシャ間に波ワッシャを介在させて構成した弾性部である。
【0006】
ロータリーエンコーダ123は回動軸123aの軸支部123bを部品実装用基板122にねじ止めして取り付けられており、その回動軸123aはパネル121に形成した孔121aを通じて前方へ突出しているが、軸支部123bにはその前端面と前方寄りの外周面を覆う態様でキャップ126が外嵌されている。
回動つまみ124は前面が閉じた中空円筒状の本体部124aとその内部に内嵌・接着されたウエイト124bとで構成されている。ウエイト124bは円板部124cとスリーブ部124dとからなり、ロータリーエンコーダ123の回動軸123aをスリーブ部124dを通じて内挿させる貫通孔が形成されている。
また、スリーブ部124dの外周面には雄ねじが形成されていると共に、円板部124cの側周面から肉厚内を通じて前記貫通孔へ達する横孔(貫通孔寄りの区間はねじ孔)124eが形成されている。尚、本体部124aにおける前記円板部124cの孔124eに対応する位置にも孔124fが形成されている。
トルク調整つまみ125は、片面側に回動つまみ124の開口端が浅く内嵌する環状凹部125aを形成した円板状の形態をなし、その環状凹部125aの外側壁が操作環部125bとして構成されている。また、トルク調整つまみ125の中心にはスリーブ部125cが形成されており、同スリーブ部125cの内周面には前記ウエイト124b側のスリーブ部124dの雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。
【0007】
以上の各機素の構成に基づいて、ロータリーエンコーダ123の軸支部123bにキャップ126を被嵌させ、回動軸123aに平ワッシャと波ワッシャと平ワッシャとを順次外嵌させて弾性部127を構成し、回動つまみ124のスリーブ部124dの雄ねじとトルク調整つまみ125のスリーブ部125cの雌ねじとを途中まで螺合させた状態で、ロータリーエンコーダ123の回動軸123aを回動つまみ124のスリーブ部124d内に挿入する。そして、回動つまみ124の孔124f,124eを通じてねじピン124gを挿入して締め付けることにより、ロータリーエンコーダ123の回動軸123aを回動つまみ124に固定すると、図9に示すような組み付け後の構成となる。
【0008】
この回動つまみのトルク調整装置では、回動つまみ124が回動せしめられるとトルク調整つまみ125と共に回動するが、弾性部127の波ワッシャと平ワッシャ間や同弾性部127とキャップ126又はトルク調整つまみ125に生じる回動摩擦抵抗によって、回動つまみ124に回動トルクを与えるようになっている。
そして、その回動トルクの大きさは回動つまみ124とトルク調整つまみ125の各スリーブ124d,125c間の螺合状態によって調整される。
即ち、回動つまみ124を回転しないように把持した状態でトルク調整つまみ125を回動させると、回動つまみ124がロータリーエンコーダ123の回動軸123aに固定されているのに対して、トルク調整つまみ125は回動しながら軸方向へ移動するため、トルク調整つまみ125とキャップ126との間隔を変化させて弾性部127の圧縮状態を変化させることができ、その結果、回動つまみ124を操作する際の回動トルクの大きさを増減できる。
【0009】
【特許文献1】実開昭61−126322号公報
【特許文献2】特開平6−202747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記特許文献1の回動トルクの調整装置では、パネル101の表面の面粗さが回動トルクの大きさに大きく影響するため、パネル101に対する特別な加工を必要とする場合が多い。また、湿度等によってパネル101の表面の状態(摩擦係数)が変化するため、第2のつまみ107で第1のつまみ103の回動トルクを調整設定しておいても、機器の運用環境や天候等により回動トルクが変化してしまうという問題がある。
前記特許文献2の回動トルクの調整機構においても、つまみ113の背面側が回動トルクを発生させるための摩擦面になっており、前記特許文献1の場合と同様の問題があり、また、パネル111の面に対して傾斜部114や凹部119等を形成しておく必要がある。
【0011】
一方、図9の回動つまみのトルク調整装置では、ロータリーエンコーダ123の軸支部123bを利用することで回動軸123a上に機構を集約させているため、パネル121や部品実装用基板122は回動トルクの発生に関与しておらず、また、回動トルクを発生させる弾性部127は平ワッシャの間に波ワッシャを介装したコンパクトな構成からなり、前記特許文献1や2の回動トルク調整装置や機構でみられるような不利はない。
しかし、回動つまみ124側とトルク調整つまみ125側の各スリーブ部124d,125cの螺合関係は、トルク調整つまみ125の締め付け方向(弾性部127を圧縮する方向)への回転についてみると、弾性部127を極限まで圧縮しても更に回転させることが可能な構成になっており、過剰に回転させるとロータリーエンコーダ123の回動軸123aに引き抜き方向への大きな力が作用して破損させてしまう可能性がある。
また、回動つまみ124とトルク調整つまみ125とは中央部分における各スリーブ部124d,125cの螺合関係だけで連結されているため、回動軸123aに対して垂直であるべきトルク調整つまみ125の角度が不安定化する傾向があり、回動させる際に傾斜して操作性が悪くなるという不具合がある。
【0012】
そこで、本発明は、図9に示した従来技術の問題点を合理的に解消し、回動操作部品の破損を招くような無理な操作がなされることなく、操作性にも優れた回動つまみのトルク調整装置を提供することを目的として創作された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、被操作部品における回動軸の軸支部の前端面と前記回動軸の先端側に固定される回動つまみとの間に、第1の環状弾性部とトルク調整つまみが前記回動軸に外嵌させて挟装されていると共に、前記回動つまみと前記トルク調整つまみの相対的回転角度に応じて前記回動つまみに対する前記トルク調整つまみの軸方向位置を変化させる調整作動機構を備え、前記相対的回転角度を変化させて前記第1の環状弾性部の回動摩擦を増減させることにより、前記回動つまみの回動操作に要するトルクを調整する回動つまみのトルク調整装置において、前記回動つまみは、前記トルク調整つまみとの対向側の軸心位置に前記被操作部品の回動軸を内挿させるスリーブ部が突出形成されていると共に、外周壁部の環状端面における同一中心角で区分される複数位置にそれぞれ突起が形成された構成を有し、一方、前記トルク調整つまみは、中央に前記回動つまみ側のスリーブ部に外嵌する中空円筒部が形成されており、また、前記回動つまみ側の各突起が摺接する周方向面に、前記中心角による区分区間毎に同一の傾斜面が形成されていると共に、前記中空筒部と前記周方向面との間の中間板面領域に、後記ホルダブラケットの各取り付け用脚部が所定中心角分だけ旋回できる周方向距離を確保した各開口領域が形成された構成を有し、環状板部と複数の取り付け用脚部とからなるホルダブラケットを用いて、環状板部により第2の環状弾性部を介して前記トルク調整つまみの前記中空筒部と前記各開口領域の間を係合し、前記各取り付け用脚部が前記各開口領域を貫通させて前記回動つまみ側へ固定されることにより、前記回動つまみと前記トルク調整つまみを連結して前記調整作動機構を構成したことを特徴とする回動つまみのトルク調整装置に係る。
【0014】
本発明の回動つまみのトルク調整装置における調整作動機構は次のように動作する。
回動つまみとトルク調整つまみは、被操作部品の回動軸を中心にスリーブ部と中空円筒部との嵌合関係を有すると共に、環状端面の各突起と周方向面に形成されている各傾斜面とが同一条件で当接するようになっており、その各当接圧はホルダブラケットで回動つまみとトルク調整つまみを連結させた状態での第2の環状弾性部の圧縮量に対応した反発力により供給されている。
従って、回動つまみとトルク調整つまみの相対的回転角度が変化した場合には、環状端面の各突起の各傾斜面への乗り上げ高さが変化し、回動つまみに対するトルク調整つまみの離隔距離が増減する。
その場合、回動つまみは回動軸に固定されているため、第1の環状弾性部がトルク調整つまみの中空円筒部と被操作部品における回動軸の軸支部の間で圧縮され、第1の環状弾性部には前記相対的回転角度の変化に対応した反発力が生じる。
回動つまみを回動操作した場合、回動つまみからトルク調整つまみに作用する回動トルクの方が第1の環状弾性部からトルク調整つまみに作用する反作用トルクより大きいために回動つまみとトルク調整つまみとが一体で回転するが、第1の環状弾性部に発生した反発力により、被操作部品の軸支部に対するトルク調整つまみの回動トルクが大きくなり、結果的に、回動つまみの回動操作時に一定の負荷トルクが供給される。
また、本発明では、回動つまみ側に固定されたホルダブラケットの取り付け用脚部はトルク調整つまみに形成されている各開口領域内でしか旋回できない構造になっている。
従って、回動つまみとトルク調整つまみの相対的回転角度は所定範囲内に限定され、その範囲で回動つまみの回動トルクが最大値と最小値に設定される。例えば、前記相対的回転角度の範囲を、回動つまみ側の突起がトルク調整つまみ側の周方向傾斜面の最低位置から最高位置まで移動できるような範囲に設定すれば、傾斜面全体を利用したトルク調整機構が実現できることになる。
【0015】
本発明において、被操作部品における回動軸の軸支部の前端面を利用するが、その環状領域の面積が小さい場合には、第1の環状弾性部との当接条件が悪くなる。そのような場合には、回動軸の軸支部にその前端面と外周面を覆うキャップを被嵌させて良好な当接条件を確保させることが望ましい。
また、本発明における第1の環状弾性部には単体の波ワッシャ、又は平ワッシャと波ワッシャと平ワッシャの積層構成を適用でき、第2の環状弾性部には単体の波ワッシャが適用できる。
更に、トルク調整つまみの最外周部分を回動つまみの後部側外周面を覆う操作環部として構成しておけば、回動つまみの突起を外部から見えないようにすることができると共に、調整操作も容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回動つまみのトルク調整装置によると、回動つまみのスリーブ部とトルク調整つまみの中空円筒部とが嵌合関係にあり、回動つまみ側の各突起をトルク調整つまみ側の各傾斜面における同一高さに対応する位置に当接させた連結状態で調整作動機構を構成しているため、トルク調整つまみの安定した軸支状態を確保でき、その良好な操作性を実現できる。
また、回動つまみとトルク調整つまみの相対的回転角度を一定範囲に機構的に制限しており、その範囲で回動つまみの回転トルクの下限から上限までを傾斜面の角度で設定するため、従来技術(図9)のように被操作部品の回動軸に過度な引き抜き力を作用させて破損させるようなこともない。
更に、回転トルクの下限と上限はトルク調整つまみに形成する傾斜面の構成によって変更できるため、設計上の自由度が大きいという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の「回動つまみのトルク調整装置」の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。
先ず、図1の(A)は無線通信機におけるメインダイアル取り付け部分の正面図、同図の(B)は前記(A)におけるX-X矢視断面図、図2は前記(A)におけるY-Y矢視断面図、図3はメインダイアルを構成する各機素の分解斜視図である。
各図において、10はパネル、20は部品実装基板、30は被操作部品であるロータリーエンコーダ、40は回動つまみ、50はトルク調整つまみ、60はキャップ、70は弾性部、80はホルダブラケット、90は波ワッシャである。
【0018】
ここに、パネル10、部品実装基板20、ロータリーエンコーダ30、キャップ60、及び弾性部70については、従来技術(図9)の装置における対応する各機素と同様であり、それらの組み付け方に関しても同様である。即ち、ロータリーエンコーダ30はその回動軸31の軸支部32を部品実装用基板20にねじ止め固定して取り付けられており、回動軸31はパネル10に形成した孔11を通じて前方へ突出していると共に、軸支部32にはその前端面と前方寄りの外周面を覆う態様でキャップ60が被嵌されている。尚、この実施形態での弾性部70は、図3に示すように、2枚の平ワッシャ71と波ワッシャ72と2枚の平ワッシャ73を積層した構成になっているが、各平ワッシャは1枚ずつであってもよい。
【0019】
この実施形態の機構的特徴は回動つまみ40とトルク調整つまみ50との連結関係にある。
回動つまみ40は、図4(A)の断面図及び同図(B)の背面図に示されるように、一端が閉じた中空円筒状の本体部41とその内部に内嵌されるウエイト42とからなり、その点は従来技術(図9)の回動つまみ124と同様である。但し、本体部41の内部にはウエイト42を固定するために用いられるスタッド43-1,2が立設形成されており、ウエイト42にはスタッド43-1,2に対応する位置に孔44-1,2が形成されている。尚、本体部41に対するウエイト42の固定は、後述するように、ホルダブラケット80を用いて回動つまみ40にトルク調整つまみ50を取り付ける際に行われる。
【0020】
この実施形態の回動つまみ40における特徴的構成は、本体部41の開口側端面45に、120°の中心角毎に小突起46-1,2,3が形成されている点にある。尚、それら小突起46-46-1,2,3の高さHは、後述するトルク調整つまみ50の各傾斜区間57-1,2,3の最大高さΔhより大きく設定されている。
また、ウエイト42が円板部42-1とスリーブ部42-2とからなる点は従来技術(図9)の場合と同様であるが、後述するように、スリーブ部42-2はロータリーエンコーダ30の回動軸31を内嵌させると共に、トルク調整つまみ50の中空円筒部51を外嵌させるものであり、その外周面には従来技術(図9)の場合のように雄ねじは形成されていない。
【0021】
次に、トルク調整つまみ50の詳細な構成は図5に示される。但し、図5(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は(A)において矢印で示される周方向区間S1-S2の断面図である。
中心部分には回動つまみ40側のスリーブ部42-2が内嵌する中空円筒部51が形成されており、外周側にはその中空円筒部51と同心円上に回動つまみ40の開口側端面45が嵌る環状溝52が形成されていると共に、その外周側壁が操作環部53になっている。
そして、中空円筒部51と環状溝52の内周側壁との間は平板部54として形成されているが、中空円筒部51から一定距離だけ離隔した位置に円弧状スリット部分と方形孔部分とからなる1対の開口領域55-1,2が点対称な位置関係で形成されている。
【0022】
また、環状溝52の底部は平坦面にはなっておらず、周方向に関して中心角で120°に相当する間隔毎に中心角で10°相当の水平区間56-1,2,3があり、それらの水平区間56-1,2,3の間(中心角で110°相当)が傾斜区間[図5(A)のハッチング部分]57-1,2,3として形成されている。より具体的には、図5(C)に示すように、各傾斜区間57-1,2,3は中心角で110°に相当する周方向距離の間にΔhだけ高くなる傾斜面が形成されている。
【0023】
このような構成を備えた回動つまみ40とトルク調整用つまみ50は、最初に図1乃至図3で示したように、ロータリーエンコーダ30の軸支部32に被嵌させたキャップ60の前方に回動軸31を軸心として組み付けられる。
先ず、回動つまみ40の本体部41に対してウエイト42を内嵌させ、ウエイト42のスリーブ部42-2にトルク調整用つまみ50の中空円筒部51を外嵌させる。
そして、トルク調整用つまみ50の中空円筒部51に波ワッシャ90を外嵌させて、ホルダブラケット80で回動つまみ40とトルク調整用つまみ50とを連結する。
【0024】
ここに、ホルダブラケット80は、トルク調整用つまみ50の中空円筒部51に外嵌する環状板部81と、その中心に関する対称位置に形成されたL字状の各取り付け用脚部82-1,2とからなり、環状板部81で波ワッシャ90を介してトルク調整用つまみ50の中空円筒部51の近傍を係合した状態で、各取り付け用脚部82-1,2により回動つまみ40側にねじ止めされる。
より具体的には、ホルダブラケット80の各取り付け用脚部82-1,2をトルク調整用つまみ50の各開口領域55-1,2の方形孔部分を通じて回動つまみ40のウエイト42側へ差し込み、各取り付け用脚部82-1,2に形成した各孔と回動つまみ40側のウエイト42の各孔44-1,2と本体部41の各スタッド43-1,2に形成されている各ねじ孔とがそれぞれ一軸上に合致した状態で、ねじ83-1,2を挿入して締着することにより回動つまみ40とトルク調整用つまみ50が連結される。
【0025】
ところで、ねじ83-1,2を締着した連結後のアッセンブリ状態では、回動つまみ40の各小突起46-1,2,3がトルク調整用つまみ50の環状溝52の底部(この実施形態では水平区間56-1,2,3)と当接することになるが、その当接圧力はねじ83-1,2の締着により圧縮された波ワッシャ90の反発力により与えられる。即ち、機構設計の段階で、予め前記アッセンブリ状態における前記当接圧力が適当な大きさになるように設定されており、それにより回動つまみ40とトルク調整用つまみ50との間のバイアス回動トルクが設定されている。
【0026】
次に、回動つまみ40とトルク調整用つまみ50を連結させたアッセンブリを、部品実装基板20に取り付けられたロータリーエンコーダ30の回動軸31に取り付ける。
上記のように、ロータリーエンコーダ30の軸支部32にはキャップ60が被嵌されており、回動軸31はパネル10に形成した孔11を通じて前方へ突出しているが、回動軸31に弾性部70を外嵌させておき、前記アッセンブリ状態での回動つまみ40のスリーブ部42-2に回動軸31を挿入してウエイト42内に押し込む。
【0027】
そして、弾性部70に負荷をかけない自然状態又は軽く負荷をかけて圧縮した状態で、図2に示すように、本体部41の側壁とウエイト42の円板部42-1に形成されている各孔47,48を通じてねじピン49を挿入し、円板部42-1の孔48に形成されている雌ねじに対してねじピン49を螺合させてロータリーエンコーダ30の回動軸31を固定する。
このようにして前記アッセンブリの取り付けが完了すると、その段階におけるアッセンブリの連結部分と弾性部70の介装部分の詳細は図6に示すような構成となり、トルク調整用つまみ50の中空円筒部51の端面とロータリーエンコーダ30の軸支部32に被嵌させたキャップ60との間に弾性部70が介装され、回動つまみ40のスリーブ部42-2の端面は弾性部70から僅かに離隔した状態になっている。
尚、ねじピン49による固定に際しては、回動軸31の一部が平坦に切り欠かれており、ねじピン49の先端がその平坦部分に強圧せしめられる。
【0028】
ロータリーエンコーダ30の回動軸31に対する回動つまみ40とトルク調整用つまみ50のアッセンブリの取り付け後においては、回動つまみ40とトルク調整用つまみ50との間、及び前記アッセンブリとロータリーエンコーダ30との間はそれぞれ回動自在な構成になっているが、前記アッセンブリとロータリーエンコーダ30側との間の回動トルクは、回動つまみ40とトルク調整用つまみ50との間の回動角度によって増減される。
【0029】
先ず、一方の手で回動つまみ40を回動しないように把持した状態で、他方の手でトルク調整用つまみ50の操作環部53を右方向へ回転させると、回動つまみ40側の各小突起46-1,2,3は、図5(C)に示すように、トルク調整用つまみ50の環状溝52に形成されている各傾斜区間57-1,2,3を摺動しながら乗り上げてゆく。
従って、回動つまみ40とトルク調整用つまみ50は、各小突起46-1,2,3の傾斜区間57-1,2,3への乗り上げ高さ分だけ軸方向へ離隔することになるが、回動つまみ40は上記のようにロータリーエンコーダ30の回動軸31に固定されており、回動つまみ40自体は軸方向へ移動できないためにトルク調整用つまみ50がロータリーエンコーダ30の軸支部32側へ移動する。
【0030】
一方、ロータリーエンコーダ30の軸支部32に被嵌させたキャップ60とトルク調整用つまみ50との間には弾性部70が介在させてあるため、トルク調整用つまみ50は前記移動分だけ弾性部70を圧縮し、波ワッシャ72による反発力を大きくする。
その場合、従来技術(図9)の場合と同様に、弾性部70は平ワッシャ71と波ワッシャ72と平ワッシャ73の積層構造であることから、トルク調整用つまみ50とロータリーエンコーダ30の軸支部32の間で滑り摩擦による回動トルク可変機構を構成しており、その滑り摩擦は弾性部70が圧縮されることによる波ワッシャ72の反発力に比例する。
従って、ロータリーエンコーダ30の軸支部32側に対するトルク調整用つまみ50の回転トルクは回動つまみ40に対するトルク調整用つまみ50の回動角度に依存する。
【0031】
そして、回動つまみ40とトルク調整用つまみ50の相互間には、波ワッシャ90による反発力に基づいて各小突起46-1,2,3とトルク調整用つまみ50の環状溝52との当接箇所で所定の回動摩擦があり、且つその各当接箇所は回動中心から大きく離れた位置にあるため、回動つまみ40を回動させた際に回動つまみ40からトルク調整用つまみ50に作用する回動トルクは、トルク調整用つまみ50とキャップ60との間での弾性部70を介した反作用トルクよりも大きく、回動つまみ40を回動させるとトルク調整用つまみ50も一体で回動する。
【0032】
この実施形態の場合、前記のように回動つまみ40に対してトルク調整用つまみ50を右回転させると前記回動トルクを大きくすることができ、逆に左回転させると小さくすることができ、図4と図5から明らかなように、回動つまみ40とトルク調整用つまみ50との相対的回動角度は0°〜120°の範囲内とされている。
従って、0°の状態(回転つまみ40の各小突起46-1,2,3がトルク調整用つまみ50の水平区間56-1,2,3にある状態)では、弾性部70は無負荷又は軽い圧縮状態であるために、回転つまみ40を小さな回動トルクで回動させることができるが、120°の状態(回転つまみ40の各小突起46-1,2,3がトルク調整用つまみ50の傾斜区間57-1,2,3の最高位置にある状態)では、弾性部70は無負荷又は軽い圧縮状態からΔhだけ圧縮されるために、回転つまみ40を回動させるには大きな回動トルクが必要となり、当然にその中間角度とすることにより、所望の回動トルクに設定することができる。
【0033】
また、この実施形態の場合、上記のように回動つまみ40とトルク調整用つまみ50との相対的回動角度は0°〜120°の範囲に設定されており、機構的にそれ以上回転させることができないようになっている。
即ち、図1(B)に示したように、ホルダブラケット80は回動つまみ40にトルク調整つまみ50を取り付けているが、図5(A)に示すように、ホルダブラケット80の各取り付け用脚部82-1,2はトルク調整つまみ50の各開口領域55-1,2を通過して回動つまみ40側にねじ止めされており、トルク調整つまみ50の回動つまみ40に対する相対的回動角度を0°〜120°の範囲外にしようとすると、各取り付け用脚部82-1,2の回動が各開口領域55-1,2の孔壁によって制止されるようになっている。
従って、従来技術(図9)のようにトルク調整つまみ125を過剰に回転させてロータリーエンコーダ123を破損させてしまうようなことはなく、回動つまみ40の回動トルクを最大/最小とするトルク調整つまみ50の回動位置を簡単に確認でき、最適な回動トルクの作用状態を迅速に設定できる。
【0034】
また更には、この実施形態の場合、ロータリーエンコーダ30の回動軸31に対して回動つまみ40のスリーブ部42-2が外嵌していると共に、そのスリーブ部42-2に対して更にトルク調整用つまみ50の中空円筒部51が外嵌しており、回動つまみ40の開口側端面45の各小突起46-1,2,3がトルク調整用つまみ50の環状溝52の底面(水平区間56-1,2,3又は傾斜区間57-1,2,3)に常に同一条件で当接する構成になっている。
従って、従来技術(図9)のように回動つまみ124側とトルク調整つまみ125側の各スリーブ部124d,125cが螺合関係になっている場合と比較して、トルク調整用つまみ50の盤面はロータリーエンコーダ30の回動軸31に対して常に垂直な関係に維持され、回動トルクを調整するためにトルク調整用つまみ50を操作する際に操作環部53が不安定に傾斜するような不具合はなく、良好な操作性が得られる。
【0035】
尚、この実施形態では、弾性部70の弾性部材、及びホルダブラケット80とトルク調整用つまみ50の間の弾性部材として波ワッシャ72,90を用いているが、曲げワッシャや皿ばねを用いてもよい。
また、弾性部70に関しては、トルク調整用つまみ50側の中空円筒部51の端面及びロータリーエンコーダ30側のキャップ31の端面との当接面積が十分に確保できるようであれば、平ワッシャ71,72を用いないで、波ワッシャ72単体としてもよい。
更に、この実施形態では、ロータリーエンコーダ30の軸支部32にキャップ31を被嵌させているが、軸支部32の外径が波ワッシャ72の外径より大きいような場合には、必ずしもキャップ31を用いる必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、無線通信機等の電子機器に実装される回動操作部品のつまみに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(A)は本発明の実施形態に係る無線通信機のメインダイアル取り付け部分の正面図、(B)は(A)におけるX-X矢視断面図である。
【図2】図1(A)におけるY-Y矢視断面図である。
【図3】メインダイアルを構成する各機素の分解斜視図である。
【図4】(A)は回動つまみの断面図、(B)は同背面図である。
【図5】(A)はトルク調整つまみの平面図、(B)は同断面図、(C)は(A)における周方向区間S1-S2の断面図である。
【図6】回動つまみとトルク調整つまみの連結部分と弾性部の介装部分の拡大断面図である。
【図7】従来技術(特許文献1)に係る回動つまみのトルク調整装置の断面図であり、(A)は回動トルクを与えない状態、(B)は回動トルクを与えた状態を示す。
【図8】従来の回動つまみのトルク調整機構(特許文献2)を示す断面図であり、(A)は回動トルクを与えない状態、(B)は回動トルクを与えた状態を示す。
【図9】本願発明が改良対象とした従来の回動つまみのトルク調整装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10…パネル、11…孔、20…部品実装基板、30…ロータリーエンコーダ、31…回動軸、32…軸支部、40…回動つまみ、41…本体部、42…ウエイト、42-1…円板部、42-2…スリーブ部、43-1,2…スタッド、44-1,2…孔、45…開口側端面、46-1,2,3…小突起、47…孔、48…孔、49…ねじピン、50…トルク調整つまみ、51…中空円筒部、52…環状溝、53…操作環部、54…平板部、55-1,2…開口領域、56-1,2,3…水平区間、57-1,2,3…傾斜区間、60…キャップ、70…弾性部、71…平ワッシャ、72…波ワッシャ、73…平ワッシャ、80…ホルダブラケット、81…環状板部、82-1,2…取り付け用脚部、83-1,2…ねじ、90…波ワッシャ、101…パネル、102…被駆動軸、103…第1のつまみ、104…弾性板、105…摩擦板、106…孔、107…第2のつまみ、111…パネル、112…被駆動軸、113…つまみ、114…傾斜部、115…突起、116…突片、117…レバー、118…弾性部材、121…パネル、122…部品実装基板、123…ロータリーエンコーダ、123a…回動軸、123b…軸支部、124…回動つまみ、124a…本体部、124b…ウエイト、124c…円板部、124d…スリーブ部、124e…孔、124f…孔、124g…ねじピン、125…トルク調整つまみ、125a…環状凹部、125b…操作環部、125c…スリーブ部、126…キャップ、127…弾性部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被操作部品における回動軸の軸支部の前端面と前記回動軸の先端側に固定される回動つまみとの間に、第1の環状弾性部とトルク調整つまみが前記回動軸に外嵌させて挟装されていると共に、前記回動つまみと前記トルク調整つまみの相対的回転角度に応じて前記回動つまみに対する前記トルク調整つまみの軸方向位置を変化させる調整作動機構を備え、前記相対的回転角度を変化させて前記第1の環状弾性部の回動摩擦を増減させることにより、前記回動つまみの回動操作に要するトルクを調整する回動つまみのトルク調整装置において、
前記回動つまみは、前記トルク調整つまみとの対向側の軸心位置に前記被操作部品の回動軸を内挿させるスリーブ部が突出形成されていると共に、外周壁部の環状端面における同一中心角で区分される複数位置にそれぞれ突起が形成された構成を有し、
一方、前記トルク調整つまみは、中央に前記回動つまみ側のスリーブ部に外嵌する中空円筒部が形成されており、また、前記回動つまみ側の各突起が摺接する周方向面に、前記中心角による区分区間毎に同一の傾斜面が形成されていると共に、前記中空筒部と前記周方向面との間の中間板面領域に、後記ホルダブラケットの各取り付け用脚部が所定中心角分だけ旋回できる周方向距離を確保した各開口領域が形成された構成を有し、
環状板部と複数の取り付け用脚部とからなるホルダブラケットを用いて、環状板部により第2の環状弾性部を介して前記トルク調整つまみの前記中空筒部と前記各開口領域の間を係合し、前記各取り付け用脚部が前記各開口領域を貫通させて前記回動つまみ側へ固定されることにより、前記回動つまみと前記トルク調整つまみを連結して前記調整作動機構を構成したことを特徴とする回動つまみのトルク調整装置。
【請求項2】
前記被操作部品における回動軸の軸支部に、その前端面と外周面を覆うキャップを被嵌させた請求項1に記載の回動つまみのトルク調整装置。
【請求項3】
前記第1の環状弾性部が波ワッシャ単体、又は平ワッシャと波ワッシャと平ワッシャを積層した構成からなり、前記第2の環状弾性部が波ワッシャ単体からなる請求項1又は請求項2に記載の回動つまみのトルク調整装置。
【請求項4】
前記トルク調整つまみの最外周部分が前記回動つまみの後部側外周面を覆う操作環部として構成された請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の回動つまみのトルク調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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