説明

回動式アームレスト

【課題】回動式アームレストにおいて、使用者の使いやすさや安全性を向上させることを課題とする。
【解決手段】本発明では、支持部材の上部に回動可能に取り付けて、水平状態から、上方に回動させた状態に至るまで動作可能とした回動式アームレストにおいて、アームレストは、前記支持部材の上部に回動可能に取り付けるための支持枠と、この支持枠の上側に取り付ける弓形状の扁平なアームレスト本体20とから構成し、前記アームレスト本体は、弓形の弦に対応する直線状の端縁部21を、前記本体の両端部側を除いて、弓形の内側に形成することにより、前記本体の両端部側に、直線状の端縁部を越えて突出する握り部22を形成し、それらの両側の握り部と、それらの間の弓形の弧に対応する端縁部23の個所を高い面として形成すると共に、前記直線状の端縁部から前記弧に対応する端縁部に至る個所24を低い面として形成して上述した課題を解決したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老人や、その他の身体の不自由の人が使用する、例えば便器用手すり、歩行補助器、車いす等の機器に設けられたアームレスト、使用しない場合には跳ね上げることのできる回動式アームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば既設の洋式便器等に取り付けて使用する便器用手すりは、従来から各種の構成のものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1、特許文献2には、便器の前後方向に対応するアームレストを上部に設けた左右一対の側部部材の、前部の下側と後部を左右連結部材で連結して便器を囲むフレーム状に構成すると共に、側部部材を構成する前後連結部材から便器に向かって水平に回転操作ねじを設けて、この回転操作ねじにより便器の左右側壁を押圧して挟持する構成の便器用手すりが記載されている。
【0004】
また特許文献3、特許文献4には、便器の前後方向に対応するアームレストを上部に設けた左右一対の側部部材の、前部の下側と後部又は前部の下側のみを左右連結部材で連結してフレーム状に構成すると共に、側部部材のベースから斜め上方に便器に向かう固定部材を設け、この固定部材は、ベース側の下部アームと、端部にアジャスタ付きアタッチメントを設けた進退可能な上部アームとから構成され、上部アームを下部アームに対して長穴に沿って伸長させてアタッチメントを便器に当接させ、そしてノブボルトにより上部アームを固定した後、アジャスタを動作させることにより、アタッチメントを便器の左右側壁に押圧させて挟持する構成の便器用手すりが記載されている。そして特許文献4のアームレストは支柱に対して回動可能に固定されていて、不使用時には跳ね上げることができるように構成されている。
【0005】
以上の特許文献に記載された便器用手すりのアームレストは、概ね、上面が平坦な横棒形状であったり、単なるパイプで構成されているものであり、使用者の使いやすさや安全性等は余り考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3362846号公報
【特許文献2】特開平11−113802号公報
【特許文献3】特許第2981182号公報
【特許文献4】特開2009−297465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、回動式アームレストにおいて、使用者の使いやすさや安全性を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために本発明では、支持部材の上部に回動可能に取り付けて、水平状態から、上方に回動させた状態に至るまで動作可能とした回動式アームレストにおいて、アームレストは、前記支持部材の上部に回動可能に取り付けるための支持枠と、この支持枠の上側に取り付ける弓形状の扁平なアームレスト本体とから構成し、前記アームレスト本体は、弓形の弦に対応する直線状の端縁部を、前記本体の両端部側を除いて、弓形の内側に形成することにより、前記本体の両端部側に、直線状の端縁部を越えて突出する握り部を形成し、それらの両側の握り部と、それらの間の弓形の弧に対応する端縁部の個所を高い面として形成すると共に、前記直線状の端縁部から前記弧に対応する端縁部に至る個所を低い面として形成した回動式アームレストを提案する。
【0009】
また本発明では、上記の構成において、支持枠には、ロック部材と、それを移動操作する操作レバーを移動可能に支持し、支持部材の上部には、前記ロック部材の係合穴を設けた保持部材を設けると共に、ロック部材を、前記係合穴に係合する向きに付勢するバネを設けた回動式アームレストを提案する。
【0010】
そして本発明では、上記の構成において、ロック部材の下面は傾斜面として形成した回転式アームレストを提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアームレストは、本体が上述した構成であることから、老人や、その他の身体の不自由の人等の使用者が、立ち上がり等に際しては、前側又は後側の端部に形成された握り部を握ることにより、容易に、安定して体重を掛けることができ、安全性が高い。
【0012】
特に前側の端部に形成された握り部は、使用者がそれを握って持ち上げることにより、容易にアームレストを回動させて、跳ね上げた状態とすることができる。
【0013】
本体の中間部位に手を置いて力を掛けるような場合においては、両側の握り部と、それらの間の弓形の弧に対応する端縁部の個所が高い面として形成されており、そして直線状の端縁部から前記弧に対応する端縁部に至る個所を低い面として形成されていることから、高い面が抵抗となって、手が外側方向に滑ってしまうことを確実に防止することができる。
【0014】
本体を支持する支持枠には、ロック部材、操作レバー、ロック部材の係合穴を設けた保持部材及びバネからなるロック機構が構成されているため、使用者の何らかの動作において、水平状態の本体を上方に動かそうとする外力が加わったとしても、アームレストが回動してしまうことはない。
【0015】
また、ロック部材の下面は傾斜面として形成した場合には、アームレストを下降して水平状態にした際に、傾斜面によりロック部材が自動的に係合穴に係合するため、ロックのための操作が必要でない。
【0016】
以上に記載したように、本発明のアームレストは、いろいろな使用態様において、使用しやすく、また非常に安全である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明に係る回動式アームレストを適用した便器用手すり装置を、前方から見た外観斜視図である。
【図2】図2は本発明に係る回動式アームレストを適用した便器用手すり装置を、後方から見た外観斜視図である。
【図3】図3は図1、図2に示す便器用手すり装置を便器に取り付けた状態を前方からみた外観斜視図である。
【図4】図4は図1、図2に示す便器用手すり装置を便器に取り付けた状態を後方からみた外観斜視図である。
【図5】図5は便器用手すり装置に適用した本発明に係る回動式アームレストを跳ね上げた状態として示す斜視図である。
【図6】図6は本発明に係る回動式アームレストの本体の上方から見た斜視図である。
【図7】図7は本発明に係る回動式アームレストの本体の下方から見た斜視図である。
【図8】図8は本発明に係る回動式アームレストの本体の平面図である。
【図9】図9は図6のA−A線断面図である。
【図10】図10は本発明に係る回動式アームレストをロック状態で示す断面図である。
【図11】図11は本発明に係る回動式アームレストをロック解除状態で示す断面図である。
【図12】図12は回動上昇状態の回動式アームレストが水平状態に戻る状態、または逆の状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る回動式アームレストを適用した便器用手すり装置の実施の形態を図1〜図4を参照して説明する。
これらの図において、符号1は便器用手すり装置を概して示すもので、この便器用手すり装置1は、ベース2から立設された支柱3の上部に、便器4の前後方向に対応して長手方向に配置されたアームレスト5が設けられた左右一対の側部部材6と、これらの左右一対の側部部材6の支柱3間に連結されて、前記便器4の前部に対応する連結部材7と、この連結部材7から前記便器4の後部方向に離れた位置において、前記左右一対の側部部材6の前記支柱3側から夫々対向方向に突出され、且つ、前記便器4の前後方向を回転軸の方向として、回転操作ねじ8の螺進により上下方向に回転駆動可能に設けられた一対の固定用アーム9とから構成される。
【0019】
前記左右一対の側部部材6を構成するベース2は、横方向に配置される脚パイプ10の両端下側にアジャスター11を取り付けた構成であり、また支柱3は下側の外パイプ12内に上側の内パイプ13を伸縮可能に嵌合し、前記アームレスト5を取り付ける内パイプ13の高さを調節して、適宜の高さで締付ねじの操作ノブ14を操作して固定可能に構成している。
【0020】
固定用アーム9を回転駆動する機構は、この固定用アーム9を上下方向に回転可能に支持した支点よりも下方の位置において、固定用アーム9を便器4方向に押動するように、回転操作ねじ8をアーム支持部材15の外側から進退可能に設けた構成とし、操作ノブ16により操作する構成としている。
【0021】
以上の構成において、便器4に当接する連結部材7の個所及び固定用アーム9の先端部には、ゴム等の弾性材により構成した緩衝部17を設けている。
【0022】
次にアームレスト5を説明すると、実施の形態においては、アームレスト5は、支持部材、この実施の形態では、支柱3(内パイプ13)の上部に支点18において回動可能に取り付けて、水平状態から、上方に回動させた状態に至るまで動作可能としている。その構成は、前記支柱3の上部に回動可能に取り付けるための支持枠19と、この支持枠19の上側に取り付ける弓形状の扁平なアームレスト本体20とから構成している。
【0023】
アームレスト本体20は、図に示すように、上述したとおり、弓形状の扁平な形状であり、更に、弓形の弦に対応する直線状の端縁部21を、前記本体20の両端部側を除いて、弓形の内側に形成することにより、前記本体20の両端部側に、直線状の端縁部21を越えて突出する握り部22を形成し、それらの両側の握り部22と、それらの間の弓形の弧に対応する端縁部23の個所を高い面として形成すると共に、前記直線状の端縁部21から前記弧に対応する端縁部に至る個所24を低い面として形成している。そして本体20の下側には、支持枠19の取付部25を形成している。
【0024】
一方、支持枠19の下側には、ロック部材26と、それを移動操作する操作レバー27を移動可能に支持し、支柱3の上部には、前記ロック部材26の係合穴28を設けた保持部材29を設けると共に、ロック部材26を、前記係合穴28に係合する向きに付勢するバネ30を設けた構成としている。尚、この実施の形態においては、ロック部材26の下面は傾斜面31として形成しており、また操作レバー27はロック解除に際して指等を引っ掛ける側が凸となるように湾曲させている。
【0025】
以上の構成の便器用手すり装置1では、回転操作ねじ8を操作ノブ16で回転操作して、回転操作ねじ8の先端部を後退させていて、固定用アーム9が下方に回転して位置している状態において、便器4の前部側から移動させ、そして側部部材6を便器4の左右側部に位置させ、連結部材7に設けている緩衝部17を便器4の前部に当接させる。
【0026】
次いで、操作ノブ16を操作して回転操作ねじ8を螺進させると、回転操作ねじ8の先端部が固定用アーム9を押動して上方に回転させ、その先端側の緩衝部17が下方から便器4の側壁に近付いて、それを圧接する。
【0027】
こうして便器用手すり装置1は便器4の左右側壁に圧接して挟持する固定用アーム9と、連結部材7とから、便器4に、強固に取り付けることができる。
【0028】
図3、図4に示す使用状態において、本発明に係るアームレスト5は、本体20が上述した構成であることから、老人や、その他の身体の不自由の人等の使用者が、立ち上がり等に際しては、前側又は後側の端部に形成された握り部22を握ることにより、容易に、安定して体重を掛けることができ、安全性が高い。
【0029】
本体20の中間部位に手を置いて力を掛けるような場合においては、両側の握り部22と、それらの間の弓形の弧に対応する端縁部23の個所が高い面として形成されており、そして直線状の端縁部21から前記弧に対応する端縁部23に至る個所24を低い面として形成されていることから、高い面が抵抗となって、手が外側方向に滑ってしまうことを確実に防止することができる。
【0030】
本体20の前側の端部に形成された握り部22は、使用者がそれを握って持ち上げることにより、容易にアームレスト5を回動させて、図5に示すように、跳ね上げた状態とすることができる。
【0031】
尚、この際、この実施の形態においては、操作レバー27はアームレスト5の下側に設けられていて、それをアームレスト5の前側方向に移動することによりロックの解除を行えるので、使用者が車いす等から便器4に、又は便器4から車いす等に移乗する際に、容易に解除操作を行うことができる。
【0032】
図5に示すように跳ね上げた状態のアームレスト5は、握り部22等を持って単に下げると、傾斜面31によりロック部材26が自動的に係合穴28に係合するため、ロックのための操作が必要でない。
【0033】
このように自動的にロックがされることから、使用者の何らかの動作において、水平状態の本体を上方に動かそうとする外力が加わったとしても、アームレスト5が回動してしまうことはない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の回動式アームレストは、以上のとおり、いろいろな使用態様において、使用しやすく、また非常に安全である。
【0035】
本発明の回動式アームレストは、実施の形態として示したように、便器用手すりに使用する他、車いすや歩行補助器等に適用して、老人や、その他の身体の不自由の人が安全に使用できるものであり、施設や家庭等の適所において非常に利用可能性大である。
【符号の説明】
【0036】
1 便器用手すり装置
2 ベース
3 支柱
4 便器
5 回動式アームレスト
6 側部部材
7 連結部材
8 回転操作ねじ
9 固定用アーム
10 脚パイプ
11 アジャスター
12 外パイプ
13 内パイプ
14 操作ノブ
15 アーム支持部材
16 操作ノブ
17 緩衝部
18 支点
19 支持枠
20 アームレストの本体
21 直線状の端縁部
22 握り部
23 弓形の弧の端縁部(高い面)
24 個所(低い面)
25 取付部
26 ロック部材
27 操作レバー
28 係合穴
29 保持部材
30 バネ
31 傾斜面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材の上部に回動可能に取り付けて、水平状態から、上方に回動させた状態に至るまで動作可能とした回動式アームレストにおいて、アームレストは、前記支持部材の上部に回動可能に取り付けるための支持枠と、この支持枠の上側に取り付ける弓形状の扁平なアームレスト本体とから構成し、前記アームレスト本体は、弓形の弦に対応する直線状の端縁部を、前記本体の両端部側を除いて、弓形の内側に形成することにより、前記本体の両端部側に、直線状の端縁部を越えて突出する握り部を形成し、それらの両側の握り部と、それらの間の弓形の弧に対応する端縁部の個所を高い面として形成すると共に、前記直線状の端縁部から前記弧に対応する端縁部に至る個所を低い面として形成したことを特徴とする回動式アームレスト。
【請求項2】
支持枠には、ロック部材と、それを移動操作する操作レバーを移動可能に支持し、支持部材の上部には、前記ロック部材の係合穴を設けた保持部材を設けると共に、ロック部材を、前記係合穴に係合する向きに付勢するバネを設けたことを特徴とする請求項1に記載の回動式アームレスト。
【請求項3】
ロック部材の下面は傾斜面として形成したことを特徴とする請求項2に記載の回転式アームレスト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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