説明

回動自在型携帯通信機器及び回動自在型携帯電話機

【課題】上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態を利用したサービスを提供する回動自在型携帯通信機器とする。
【解決手段】下側筐体部1と上側筐体部2とを蝶番部21を介して接合して電動モータ12の駆動により任意の回動状態に自在に回動させる構造とし、制御部11が要求されたサービスを実行する際に、当該サービスに対応して予め定めた下側筐体部1と上側筐体部2との間の回動状態に設定させるように電動モータ12を制御する。また、サービスごとに予め定めた下側筐体部1と上側筐体部2との間の回動状態に設定させるための電動モータ12に対する制御手順をスクリプトテーブルとして備え、要求されたサービスに対応する前記スクリプトテーブルに基づいて電動モータ12を制御する。ユーザからの要求により通信相手の携帯通信機器の下側筐体部1と上側筐体部2との回動状態を変更する指示を行う制御信号を前記通信相手に送信可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動自在型携帯通信機器及び回動自在型携帯電話機に関し、特に、回動自在型として1軸式の折り畳み式やフリップ式あるいは2軸式の回動自在型を採用した携帯通信機器や携帯電話機に好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機や携帯情報端末PDA(Personal Digital Assistannts)などに代表される携帯通信機器では、例えば、特許文献1に示す特開平9−200311号公報「折り畳み式電話機」にも記載されているように、使用していない場合の携帯性を向上させること、あるいは、より大きな表示部を備え得るようにすること、などの点を考慮して、非使用時では折り畳み、使用時には開いた状態で使用するという折り畳み機構を備えるような構造が採用されている。かかる折り畳み式携帯通信機器では、非使用時には上側筐体部と本体部が搭載された下側筐体部との各内面側を密着させるように折り畳み、使用時には、互いの一辺に設けられている支軸を軸として上側筐体部を下側筐体部から回動させることにより、上側筐体部を下側筐体部からほぼ同一平面上のほぼ180度にまで離隔させた完全な開放状態にすることができる。
【0003】
一般に、上側筐体部の内面側には、たとえば、液晶パネルを用いた表示部や受話用スピーカなどが配置され、一方、下側筐体部の内面側には、たとえば、各種操作用ボタンや送話用マイクなどが配置され、下側筐体部の内部には該折り畳み式携帯通信機器の各種機能を実現するための制御部を含む本体部が搭載されている。
【特許文献1】特開平9−200311号公報(第2−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、折り畳み式携帯通信機器は、携帯性の向上のみならず、操作性や利便性を向上させるために、より多くの機能を有するように、多機能化がますます図られるようになってきている。
【0005】
しかしながら、従来の折り畳み式携帯通信機器の場合、例えば非使用時における着信通知のように、使用されるサービス機能が、通常、折り畳まれた状態で提供されることが多く、ユーザに気付かれない場合が多く存在する。
【0006】
また、従来の折り畳み式携帯通信機器におけるユーザへのサービス機能は、表示部への表示や音声や振動を用いて実現されているが、携帯通信機器のユーザが視覚的により直感的に理解できるような、上側筐体部と下側筐体部との開放角度や繰返し開閉動作などを含む上側筐体部と下側筐体部との間の物理的な回動状態を積極的に利用したサービスは全く考慮されていないし、実際に提供されてもいない。
【0007】
さらには、1軸式の折り畳み式携帯通信機器のみならず、2軸式をも含む回動自在型の携帯通信機器においても、全く同様の状況にある。
【0008】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態を利用したサービスを積極的に提供することにあり、折り畳み式をも含む回動自在型携帯通信機器及び回動自在型携帯電話機におけるサービスを実施する際に、上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態を、各サービス毎にあらかじめ任意に定めた所定の状態に設定することを可能とすることにより、ユーザに対して提供される各サービスを、ユーザが容易に認識することができる回動自在型携帯通信機器及び回動自在型携帯電話機を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的とするところは、上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態をあらかじめ定めた状態に自在に設定することを可能とすることにより、回動自在型携帯通信機器を携帯するユーザに対して、もっと直感的に理解できて、楽しめるようなファッション性に富むサービス機能を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明による回動自在型携帯通信機器及び回動自在型携帯電話機は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0011】
(1)上側筐体部と下側筐体部との互いの端部において回動自在に接合されて、前記上側筐体部と前記下側筐体部とのいずれか一方を他方に対して任意の回動状態に設定することができる回動自在型携帯通信機器において、前記上側筐体部と前記下側筐体部とのいずれか一方を他方に対して任意の回動状態に回動させることができる電動モータを備え、かつ、要求されたサービスを実行する際に、当該サービスに対応してあらかじめ定めた前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態に設定させるように前記電動モータを制御する制御部を備えている回動自在型携帯通信機器。
(2)前記制御部が、サービスごとにあらかじめ定めた前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態に設定させるための前記電動モータに対する制御手順を示すスクリプトテーブルを備え、前記制御部が、要求されたサービスに対応する前記スクリプトテーブルに基づいて、前記電動モータを制御する上記(1)の回動自在型携帯通信機器。
(3)前記制御部が、当該回動自在型携帯通信機器のユーザからの要求に応じて、通信相手の回動自在型携帯通信機器の前記上側筐体部と前記下側筐体部とのいずれか一方を他方に対して回動動作を行わせる制御信号を、前記通信相手の回動自在型携帯通信機器に対して送信する上記(1)または(2)の回動自在型携帯通信機器。
(4)前記制御部が、通信相手から前記制御信号を受信した場合、前記制御信号に指定されている回動動作に基づいて、前記電動モータを制御する上記(3)の回動自在型携帯通信機器。
(5)前記制御部が、それぞれのサービスに対応してあらかじめ定められた前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態に設定するための回動動作を、対応するそれぞれのサービスを示す表示、音声、振動のいずれか1乃至複数の出力とともに行う上記(1)乃至(4)のいずれかの回動自在型携帯通信機器。
(6)前記制御部が、実行中のアプリケーションに登場するキャラクタの表情または感情を解釈した結果に基づいて、前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態をあらかじめ定めた回動状態に設定するように前記電動モータを制御する上記(1)乃至(5)のいずれかの回動自在型携帯通信機器。
(7)前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態が、1軸式の折り畳み式またはフリップ式における開閉状態、あるいは、2軸式における回動状態である上記(1)乃至(6)のいずれかの回動自在型携帯通信機器。
(8)上記(1)乃至(7)のいずれかの回動自在型携帯通信機器が、携帯型の電話機である回動自在型携帯電話機。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回動自在型携帯通信機器及び回動自在型携帯電話機によれば、次のような効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、本発明による第1の効果として、上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態を、各サービス毎にあらかじめ任意に定めた所定の状態に設定することが可能であり、ユーザに対して提供される各サービスについて、音声や振動や表示部への表示のみならず、ユーザが上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態を視認することにより、それぞれのサービスを容易に認識することができる。
【0014】
また、本発明による第2の効果として、上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態をあらかじめ定めた状態に自在に設定することを可能とすることにより、ユーザに対して視覚を通してより直感的に理解させることが可能で、かつ、ユーザが楽しめるようなファッション性に富むサービス機能を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による回動自在型携帯通信機器及び回動自在型携帯電話機の好適実施形態例について添付図を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、本発明による回動自在型携帯通信機器の一例として、表示部などを有する上側筐体部を、操作部などを有する下側筐体部に対して自在に開閉動作を行わせる1軸式の折り畳み式携帯電話機を例に採って説明するが、本発明はかかる場合のみに限るものではない。
【0016】
本発明による回動自在型携帯通信機器は、上側筐体部と下側筐体部との互いの端部において回動自在に接合されて、上側筐体部と下側筐体部とのいずれか一方を他方に対して任意の回動状態に設定することができる携帯通信機器であれば、如何なる形態のものであってもよい。例えば、上側筐体部ではなく、下側筐体部を上側筐体部に対して開閉動作を行わせるような1軸式の折り畳み型のものであってもよいし、上側筐体部を開いた後さらに左右に回転できるような2軸式の回動自在型のものであってもかまわない。また、本発明による携帯通信機器として、携帯電話機のみならず、携帯情報端末PDA(Personal Digital Assistannts)や、場合によっては、携帯型ノートPCであってもかまわない。
【0017】
図1は、本発明による回動自在型携帯通信機器の一例である折り畳み式携帯電話機についてその断面構造の一例を示す概略断面図である。図1に示す折り畳み式携帯電話機100は、下側筐体部1と上側筐体部2とから構成され、互いの一辺が、蝶番部21の支軸23により回動自在に接合されている。本体部を構成する下側筐体部1には、本折り畳み式携帯電話機100の全体の動作を制御するための制御部11が搭載されており、該制御部11からの駆動指示に基づいて指定された角度だけ回転駆動する電動モータ12も搭載されている。電動モータ12のモータシャフトには、歯車13の中心軸14が固定されており、歯車13は、電動モータ12の回転に応じて一体的に回転する。
【0018】
さらに、歯車13は、下側筐体部1と回動自在に接続されている上側筐体部2の蝶番部21の支軸23と中心軸が一致するように設けられている歯車22と嵌合している。したがって、制御部11からの駆動指示に指定された角度だけ回転する電動モータ12の回転動作に応じて、歯車13が指定された角度だけ回転すると、歯車13と嵌合している歯車22が回転し、上側筐体部2が、指定された角度まで下側筐体部1から離隔した方向に開放されたり、指定された角度まで下側筐体部1に近接した方向に閉成される。
【0019】
なお、上側筐体部2の内面側には、液晶パネルなどの表示部や受話用スピーカなどが配置されている。一方、下側筐体部1の内面側には、例えば、ユーザが操作するための各種操作ボタンや送話用マイクが配置されており、操作ボタンの操作を受け付けた制御部11により、折り畳み式携帯電話機100の各部の動作が制御される。この制御部11は、ハードウェア論理やソフトウェア論理などをはじめ如何なる制御機構を用いて構成してもかまわない。
【0020】
本実施形態においては、制御部11が、ソフトウェア論理を用いる場合の一例として、プログラムを実行可能な、例えば、MPU(Micro Processor Unit)などのプログラム制御装置により構成され、スクリプト言語を用いて記述された制御手順(すなわち、制御テーブル:以下、スクリプトテーブルと称する)に応じて、指定された処理を実行させることが可能な制御部を用いる場合について説明している。
【0021】
なお、このスクリプトテーブルは、サービスごとに、それぞれのサービスに対応してあらかじめ定められた上側筐体部2と下側筐体部1との間の回動状態を設定登録しているものであり、折り畳み式携帯電話機100の各サービスごとにそれぞれ設けられている。制御部11は、要求されたいずれかのサービスを実行する際に、要求されたサービスに応じて、対応する所定のスクリプトテーブルを参照して、該スクリプトテーブルに応じた折り畳み式携帯電話機100の動作を実行させることにより、該スクリプトテーブルに記述された制御手順に応じて上側筐体部2と下側筐体部1との間の回動状態を設定させるように電動モータ12を制御し、さらには、例えば着信処理などの要求されたサービスを実現している。
【0022】
すなわち、図2に示すように、制御部11は、それぞれのサービスに対応するスクリプトテーブルを用いたソフトウェア制御によって、それぞれのサービスに対応する回動状態になるように、上側筐体部2を下側筐体部1に対して指定角度だけ回動したり、指定された開閉動作を繰り返したりする回動動作を電動モータ12に指示し、蝶番部21の支軸23を中心にして下側筐体部1に対して上側筐体部2を指定角度だけ回動させたり、繰り返し開閉動作させることにより、サービスの実行に当たって、折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2の下側筐体部1に対する折り畳み状態を変化させ、もって、ユーザに対してサービスの実行を通知したり、ユーザに対してより直感的に理解できるサービスを提供したりすることができる。
【0023】
ここに、図2は、図1の折り畳み式携帯電話機100の開閉動作の一例を説明するための概念図である。すなわち、制御部11にサービスごとにあらかじめ設定されたスクリプトテーブルに基づいて、ソフトウェア制御によって、折り畳み式携帯電話機100の折り畳み状態を変化させることにより、ユーザに対して、より明確に、例えば電話着信の旨を通知するサービスを行ったり、例えば、通信相手のうれしいとか申し訳ないとかの感情などを模して、より直感的に理解できるファッション性に富むサービスを提供したりすることができる。
【0024】
次に、図3のフローチャートを用いて、折り畳み式携帯電話機100の制御部11のソフトウェアの流れについて、その一例を説明する。図3は、図1の折り畳み式携帯電話機100の制御部11の制御プログラムの流れの一例を説明するためのフローチャートであり、折り畳み式携帯電話機100の折り畳み状態を制御するための開閉制御ルーチンの一例を示している。ここで、図3(A)は、前述したスクリプトテーブルの一例を示し、上側筐体部2の下側筐体部1に対する開閉状態を制御するための制御手順を示している。また、図3(B)は、該スクリプトテーブルを参照しながら上側筐体部2の開閉動作を制御する処理を行う制御プログラムの流れを示している。
【0025】
なお、図3(A)のスクリプトテーブルには、例えば、テレビ電話や音声電話の際に、通信相手から制御信号を受信して、該制御信号に基づいて、通信中の通信相手がうれしいという感情を、こちら側のユーザに対してより直感的に理解させるために、100ミリ秒間隔で、折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2を、下側筐体部1に対して、170度と180度との間の開閉動作を繰り返して行う場合を例示している。
【0026】
ここで、図3(A)のようなスクリプトテーブルの実行を、通信相手側から指示するための制御信号を送受信する手順として、まず、送信側の折り畳み式携帯電話機100においては、例えばうれしいという感情を通信相手に伝えたいと思うユーザからの要求(例えば、かかる感情を伝えることを指示する特定の操作ボタンの操作)に応じて、制御部11は、うれしいという感情を示す制御コードを含む制御信号を生成して、通信相手に対して送信する。この制御信号に含まれる制御コードは、うれしいという感情をより直感的に理解させるために、通信相手の折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2を下側筐体部1に対して開閉動作を繰り返して行わせることを指示する信号である。
【0027】
一方、前記制御信号を通信相手から受信した折り畳み式携帯電話機100においては、制御部11が、受信した前記制御信号に含まれる制御コード(すなわち、例えばうれしいという感情を模した繰返し開閉動作の指示)に基づいて、例えば、前述の図3(A)に示すようなスクリプトテーブルを読み出して、電動モータ12を制御し、うれしいという感情を表現するためにあらかじめ定めた開閉動作として上側筐体部2の下側筐体部1に対する繰返し開閉動作を行わせる。
【0028】
次に、図3(A)に例示したスクリプトテーブルについて説明する。スクリプトテーブルの第1行目の「MemoryAngle」とは、上側筐体部2の下側筐体部1に対する現在の角度を記憶することを指示するスクリプトである。また、「SetAngle d, s」とは、上側筐体部2の下側筐体部1に対する角度をd度(すなわち開放角度をd度)にsミリ秒で設定するように、電動モータ12を制御することを指示するスクリプトであり、第2行目の「SetAngle 170, 1000」は、1000ミリ秒すなわち1秒の間に現在の角度から170度に開閉することを、すなわち、通信中における現在の状態として例えば下側筐体部1に対して完全に開放した180度の開放角度から10度だけ近接した開放角度まで閉成することを指示している。
【0029】
なお、「SetAngle d, s」の他に、折り畳み式携帯電話機100の開閉状態を指示するスクリプトとして、異なる形態のものも用意することができる。例えば、「MoveAngle
+d,s」というスクリプトによって、sミリ秒で上側筐体部2の下側筐体部1に対する角度を更にd度開放する(マイナス指定の「-d」の場合は、逆に、現在の角度をd度だけ閉成する)ように設定することを、電動モータ12に対して指示することもできる。
【0030】
「Wait s」とは、次の行のスクリプトを実行するまでにs秒待ち合わせを行うことを指示するスクリプトであり、第3行目の「Wait 100」とは、100ミリ秒の待ち合わせを指示し、また、第4行目の「SetAngle 180, 1000」とは、第2行目の閉成動作とは逆に、1000ミリ秒すなわち1秒で上側筐体部2の下側筐体部1に対する角度を170度から180度まで完全に開放することを指示している。
【0031】
さらに、第5行目の「Wait 100」で、再び100ミリ秒の待ち合わせを指示し、第6行目の「SetAngle 170, 1000」で、再度、1秒で170度まで少し閉成することを指示した後、第7行目の「Wait 100」で、再び100ミリ秒の待ち合わせを指示する。しかる後、第8行目の「RecoverAngle」によって、第1行目の「MemoryAngle」で記憶しておいた元の開放角度に戻すことを指示している。
【0032】
次に、図3(B)に示す開閉制御ルーチンのフローチャートに従って、図3(A)に例示したスクリプトテーブルを参照しながら実行される開閉制御動作について更に説明する。ここで、前述したように、例えばテレビ電話の際に、通信相手から、当該通信相手がうれしいという感情をより直感的に示すために、折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2を170度と180度との間の繰返し開閉動作を行うように設定されている図3(A)のスクリプトテーブルの実行を指示する制御信号を受信することにより、図3(B)の開閉制御ルーチンが起動される。
【0033】
まず、例えばうれしいという感情を表現する制御コードを含む制御信号を通信相手から受信した折り畳み式携帯電話機100においては、折り畳み式携帯電話機100の開閉動作を制御する開閉制御ルーチンが制御部11に呼び出されて、折り畳み式携帯電話機100の開閉動作が起動される(ステップS1)。該開閉制御ルーチンは、受信した制御信号に含まれる制御コードに応じて参照すべきスクリプトテーブルとして、図3(A)に示すスクリプトテーブルを実行用の記憶装置に読み込む(ステップS2)。
【0034】
次に、読み込んだスクリプトテーブルの1行目を取得して(ステップS3)、1行目のスクリプト、図3(A)の場合は、「MemoryAngle」の処理を実行する(ステップS4)。この結果、図3(A)の場合、前述のように、上側筐体部2の下側筐体部1に対する現在の角度が記憶・保存される。
【0035】
次に、読み込んだスクリプトテーブルに次の行がまだ存在しているか否かを判定する(ステップS5)。まだ存在している場合(ステップS5のYES)、ステップS3に復帰して、次の1行を取得して実行する。図3(A)のスクリプトテーブルの場合は、第8行までに亘って複数の行が存在しているので、第8行目に達するまで、ステップS3からS5までの処理を繰り返す。この繰返し処理によって、図3(A)の各行のスクリプトを順次実行し、前述したように、上側筐体部2が下側筐体部1に対して170度と180度との間でぱたぱたする繰返し開閉動作が行われる。
【0036】
図3(A)おいて最終行の第8行目の「RecoverAngle」を実行すると、読み込んだスクリプトテーブルに次の行が存在しなくなるので(ステップS5のNO)、開閉制御ルーチンの動作が終了する。
【0037】
以上のような動作を行った結果、折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2は下側筐体部1に対して180度まで完全に開放された平行な状態と10度だけ少し閉成された170度の状態とを繰り返す。この結果、図4に示すように、上側筐体部2がぱたぱた動く繰返し開閉動作を行うことになり、通信相手側の喜びを表す「うれしい」という気持ちを模した動作を視覚的に表現することができる。ここに、図4は、折り畳み式携帯電話機100の開閉動作の一例としてうれしいという気持ちを模した動作を示す模式図である。
【0038】
また、例えば、図5に示すように、折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2を下側筐体部1に対して180度まで完全に開放された平行な状態から90度だけ閉成させた90度の開放状態まで折り畳む動作を、図3とは異なるスクリプトテーブルに基づいて行わせることにより、通信相手が深々と頭を垂れた申し訳なさを表す「ごめんなさい」あるいは「しょんぼり」や「恥ずかしい」という気持ちを模した動作を視覚的に表現することもできる。ここに、図5は、折り畳み式携帯電話機100の開閉動作の他の例として申し訳ないという気持ちを模した動作を示す模式図である。
【0039】
かくのごとく、折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2の開閉状態、さらに、2軸式の携帯通信機器のような一般的な回動自在型の携帯通信機器においては、上側筐体部の回動状態を、視覚的なサービス提供形態の一つとしてあらかじめ定めた任意の状態に自在に設定することにより、ユーザに対してもっと直感的に理解できて、楽しめるようなファッション性に富むサービス機能を提供することができる。
【0040】
さらには、折り畳み式携帯電話機100の上側筐体部2の開閉状態(または、一般的な回動自在型の携帯通信機器における上側筐体部の回動状態)を、折り畳み式携帯電話機100(または、回動自在型の携帯通信機器)に備えられた各種のサービス毎に、それぞれのサービスをより直感的にユーザが認識可能となるように、あらかじめ任意に定めることにより、いずれかのサービスを提供しようとする際に、当該サービスに対してあらかじめ定めた所定の開閉状態(または、回動状態)に設定することも可能であり、ユーザに対して提供される各サービスについて、音声や振動や表示部への表示のみならず、ユーザが下側筐体部1と上側筐体部2との間の開閉状態(または、回動状態)を視認することにより、それぞれのサービスをより容易に認識することも可能である。
【0041】
なお、それぞれのサービスに対応してあらかじめ定められた下側筐体部1と上側筐体部2との間の開閉動作(または、回動動作)を、対応するそれぞれのサービスを示す表示、音声、振動のいずれか1乃至複数の出力とともに行うようにしても、もちろんかまわない。
【0042】
次に、本発明による回動自在型携帯通信機器の他の応用形態について、さらに説明する。
【0043】
(1)回動自在型携帯通信機器の形状としてフリップ(上蓋)式の携帯通信機器を用いる場合、フリップ部を前述の上側筐体部と同様に本体側に備えられた電動モータにより駆動可能な構成とし、該フリップ部に対して電動モータによる自動的な開閉機構(回動動作機構)を備えるようにして、前述した上側筐体部の下側筐体部に対する開閉動作と同様の動作をフリップ部に行わせるようにしてもよい。
【0044】
(2)回動自在型携帯通信機器への電話着信やメール着信があった場合、前述したように、回動自在型携帯通信機器の上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態を、あらかじめ定めた所定の状態として、上側筐体部が下側筐体部から十分に離隔した完全な開放状態に自動的に設定することにより、ユーザがわざわざ上側筐体部を開いて着信を確認して、応答する手間を省略することができ、着信に対する操作性や応答性を向上させることができる。
【0045】
(3)回動自在型携帯通信機器による電話中(あるいはテレビ電話中)の会話において、「うれしい」とか「申し訳ない」とか「悲しい」などの感情を、通信相手に対してより直感的に伝達したい場合、例えば、図4や図5を用いて説明したように、通信相手の回動自在型携帯通信機器に対する制御信号として、当該通信相手の回動自在型携帯通信機器の上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態を、あらかじめ定めた状態に設定するための制御信号を、ユーザのボタン操作により送信可能とするようにし、該当する操作ボタンの操作があった場合に、前記制御信号を通信相手の回動自在型携帯通信機器に対して送信する制御手順を示すスクリプトテーブルを制御部のプログラム論理として実行するようにすることも可能である。
【0046】
(4)回動自在型携帯通信機器に搭載されたゲームなどの各種のアプリケーション(例えばJava(登録商標) Scriptなどにより記述されたアプリケーション)を実行させているような場合にも、当該アプリケーションに登場するキャラクタを画面表示する際に、該キャラクタの喜怒哀楽の表情や感情を制御部において解釈し、解釈した結果に合わせて、回動自在型携帯通信機器の上側筐体部と下側筐体部との間の回動状態をあらかじめ定めた回動状態に設定させるように電動モータを制御することにより、登場キャラクタの状況をより直感的に理解することができ、当該アプリケーションを一層楽しく実行させることができる。例えば、登場キャラクタがうれしいという表情を表示部に画面表示させようとした場合は、同時に、図4に例示したように、上側筐体部と下側筐体部との間の開閉状態をぱたぱたさせる動作を行わせることも可能である。
【0047】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による回動自在型携帯通信機器の一例である折り畳み式携帯電話機についてその断面構造の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1の折り畳み式携帯電話機の開閉動作の一例を説明するための概念図である。
【図3】図1の折り畳み式携帯電話機の制御部の制御プログラムの流れの一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1の折り畳み式携帯電話機の開閉動作の一例としてうれしいという気持ちを模した動作を示す模式図である。
【図5】図1の折り畳み式携帯電話機の開閉動作の他の例として申し訳ないという気持ちを模した動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 下側筐体部
100 折り畳み式携帯電話機
11 制御部
12 電動モータ
13 歯車
14 中心軸
2 上側筐体部
21 蝶番部
22 歯車
23 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側筐体部と下側筐体部との互いの端部において回動自在に接合されて、前記上側筐体部と前記下側筐体部とのいずれか一方を他方に対して任意の回動状態に設定することができる回動自在型携帯通信機器において、前記上側筐体部と前記下側筐体部とのいずれか一方を他方に対して任意の回動状態に回動させることができる電動モータを備え、かつ、要求されたサービスを実行する際に、当該サービスに対応してあらかじめ定めた前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態に設定させるように前記電動モータを制御する制御部を備えていることを特徴とする回動自在型携帯通信機器。
【請求項2】
前記制御部が、サービスごとにあらかじめ定めた前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態に設定させるための前記電動モータに対する制御手順を示すスクリプトテーブルを備え、前記制御部が、要求されたサービスに対応する前記スクリプトテーブルに基づいて、前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1に記載の回動自在型携帯通信機器。
【請求項3】
前記制御部が、当該回動自在型携帯通信機器のユーザからの要求に応じて、通信相手の回動自在型携帯通信機器の前記上側筐体部と前記下側筐体部とのいずれか一方を他方に対して回動動作を行わせる制御信号を、前記通信相手の回動自在型携帯通信機器に対して送信することを特徴とする請求項1または2に記載の回動自在型携帯通信機器。
【請求項4】
前記制御部が、通信相手から前記制御信号を受信した場合、前記制御信号に指定されている回動動作に基づいて、前記電動モータを制御することを特徴とする請求項3に記載の回動自在型携帯通信機器。
【請求項5】
前記制御部が、それぞれのサービスに対応してあらかじめ定められた前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態に設定するための回動動作を、対応するそれぞれのサービスを示す表示、音声、振動のいずれか1乃至複数の出力とともに行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回動自在型携帯通信機器。
【請求項6】
前記制御部が、実行中のアプリケーションに登場するキャラクタの表情または感情を解釈した結果に基づいて、前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態をあらかじめ定めた回動状態に設定するように前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の回動自在型携帯通信機器。
【請求項7】
前記上側筐体部と前記下側筐体部との間の回動状態が、1軸式の折り畳み式またはフリップ式における開閉状態、あるいは、2軸式における回動状態であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の回動自在型携帯通信機器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の回動自在型携帯通信機器が、携帯型の電話機であることを特徴とする回動自在型携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−104275(P2007−104275A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291096(P2005−291096)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】