回折光学素子及びそれを有する撮像光学系
【課題】 撮像光学系の色収差を軽減するために回折光学素子を用いたとき回折格子の格子壁面から生ずるフレアを軽減し、良好なる画像が得られる回折光学素子及びそれを有する撮像光学系を得ること。
【解決手段】 撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも小さく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いていること。
【解決手段】 撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも小さく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回折光学素子及びそれを用いた撮像光学系に関し、特に回折光学素子を形成する回折格子から生ずるフレア光を軽減し、良好なる光学性能が得られるデジタルカメラ、ビデオカメラ、TVカメラ、監視用カメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像光学系の色収差を減じる方法として撮像光学系の1部に回折作用を有する回折光学素子を設ける方法が知られている(非特許文献1)。回折光学素子を撮像光学系中に用いるときには使用波長域全域において設計次数の光線の回折効率が十分高いことが必要になる。回折効率が低いと、即ち設計次数以外の回折次数をもった光線が多く存在すると、これらの光線は、設計次数の光線とは別な所に結像するため結像に悪影響を与えるフレア光となる。
【0003】
回折効率の低下を防止するためには、回折格子を構成する格子面を格子壁面より成る回折面の格子ピッチを適切に設定することが重要である。この他、回折効率が低くなる要因として、回折格子の回折作用に寄与しない格子壁面で反射又は透過する光が多くなることがある。回折光学素子を撮像光学系に用いるとき、回折格子のうち回折作用に寄与しない格子壁面で光が反射又は透過した光が像面に到達するとフレア光となる。このため格子壁面で反射又は透過した光は像面に到達しないようにすることが重要である。
【0004】
回折格子の回折効率を高めるために回折格子の格子壁面の角度を適切に設定することで、格子壁面でのケラレを少なくし、有効画角内の光束に対して最適化した回折光学素子が知られている(特許文献1、2)。また、格子壁面の角度を格子頂角が、より鈍角方向となるように傾けることで、格子壁面からの反射フレアが像面に到達するのを軽減するといった回折光学素子が知られている(特許文献3)。また、複数の回折格子を密着した回折光学素子において格子壁面に遮光手段を設けた回折光学素子が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−294924号公報
【特許文献2】特開10−186118号公報
【特許文献3】特開2005−292571号公報
【特許文献4】特開2004−126394号公報
【非特許文献1】SPIE Vol.1354 International Lens Design Conference (1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回折光学素子を撮像光学系に用いたとき、回折格子より生ずるフレア光を軽減するのに有効画面内の光の回折効率を高める方法は、有効画面内の光に対する格子壁面から生ずるフレア光の抑制には有効である。しかしながら、有効画面外に太陽光等の強い輝度の物体があるような逆光シーンの実写においてはフレア光が増大してくる。
【0007】
一般に、回折格子に入射する光線の入射角度が格子壁面の角度からずれた場合には、格子壁面により反射され像面に到達した光はフレアとして画像に悪影響を及ぼす。この対策として、格子壁面の角度を格子頂角が、より鈍角方向となるように傾ければ、反射フレアが像面に到達するのを軽減することができる。しかしながら、格子壁面を格子頂角が鈍角方向となるように傾けることで透過光の位置を変えても不要光の影響を大きく減らすことが難しいということが本発明者の最近の検討で判明した。これは、不要光の発生の状況は幾何光学的な振る舞いだけでは無く、回折現象を起こすことで幾何光学的な光線の追跡では到達し得ない位置に光が到達することによる。また、回折格子の格子壁面に遮光手段を設ける方法は、加工が困難である。
【0008】
撮像光学系の光路中に回折光学素子を使用する場合には、多くの場合回折光学素子に、画像形成に使用される有効画角内の光束以外の有効画角外からの光が入射する。特に撮像光学系の絞りより物体側に回折光学素子を使用して色収差の補正を行う場合には、有効画角外からの光が回折光学素子に入射し易くなりフレアが多く発生する原因となる。特に、有効画面内のうち最大画角の外側の30度以下の比較的低い角度から入射する太陽光のような強い光が、回折光学素子に直接入射すると、回折光学素子を2次光源としたフレアが多く発生する原因となる。
【0009】
本発明は、撮像光学系の色収差を軽減するために回折光学素子を用いたとき回折格子の格子壁面から生ずるフレアを軽減し、良好なる画像が得られる回折光学素子及びそれを有する撮像光学系の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回折光学素子は、撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも小さく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いていることを特徴としている。
【0011】
この他本発明の回折光学素子は、撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも大きく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて大きくなる方向に傾いていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像光学系の色収差を軽減するために回折光学素子を用いたとき回折格子の格子壁面から生ずるフレアを軽減し、良好なる画像が得られる回折光学素子及びそれを有する撮像光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1の撮像光学系の説明図
【図2】本発明の実施例1の回折光学素子の断面図
【図3】本発明の実施例1を実施しなかった場合の回折格子の壁面角度の説明図
【図4】本発明の実施例1の回折格子の格子壁面の角度の説明図
【図5】回折光学素子への光線入射角度の説明図
【図6】本発明の実施例1を実施しない場合のフレア発生状況の説明図
【図7】本発明の実施例1の格子壁面の傾けの効果の説明図
【図8】本発明の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア説明図
【図9】本発明の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア発生状況説明図
【図10】本発明の実施例2の回折光学素子の説明図
【図11】本発明の実施例2を実施しない場合の回折光学素子の拡大図
【図12】本発明の実施例2を実施した場合の回折光学素子の拡大図
【図13】本発明の実施例2を実施しない場合のフレア発生状況の説明図
【図14】本発明の実施例2の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア説明図
【図15】本発明の実施例2の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア発生状況の説明図
【図16】回折光学素子に入射した角度に対する回折効率変化の説明図
【図17】本発明の実施例3の回折光学素子の説明図
【図18】本発明の実施例4の回折光学素子の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の回折光学素子1は、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置の撮像光学系の光路中に設けられる。回折光学素子1は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料31と第2の材料32の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面46と格子壁面44を含む回折面を有している。第1の材料31と第2の材料32はレンズ部材のレンズ面上に積層して形成されている。第1の材料41側を光の入射側としたとき、第1の材料41の屈折率は第2の材料42の屈折率よりも小さい。格子壁面44が回折光学素子1の中心軸(光軸)21に対して平行となる位置を格子壁面44の基準位置とする。このとき、格子壁面44は回折面の少なくとも一部の範囲内で格子壁面44と格子面46とのなす格子頂角40が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いている。また第1の材料41の屈折率が第2の材料42の屈折率よりも大きいときは、格子頂角が基準位置のときに比べて大きくなる方向に傾いている。そして格子壁面44が基準位置に比べて、傾いている回折面の少なくとも一部は回折光学素子1の中心軸21を含む範囲内又は中心軸21を含まない範囲内である。また格子壁面44が傾いていない範囲における格子壁面の傾きは基準位置と同じである。
【0015】
図1は本発明の実施例1の回折光学素子を焦点距離400mmの望遠レンズ(撮像光学系)に適用したときのレンズ断面図である。図1において、1は回折光学素子、2は開口絞り、3aはCCD等の撮像素子3が配置される像面である。4は最大画角の光束、5は撮像光学系1の光軸、6は有効画角の外側(有効画角外)からの太陽光等の平行の有効画角外光の一部である。回折光学素子1は、正のパワーを有するように格子中央から外側かけて格子ピッチを狭くした回折格子をレンズ面に付加している。これにより撮像光学系の色収差を改善している。
【0016】
本実施例においては回折光学素子1は開口絞り2よりも物体側で第1レンズG1と第2レンズG2とその間に設けた回折光学部(回折格子)より成っている。このため、太陽光等の入射光は殆ど鏡筒で遮光されることなく、回折光学素子1に入射する。図1においては説明のため有効画角の外側からの有効画角外光6第1面の全面に入射している有効画角外の5度の入射光において、波長550nmの光が−30次の方向に回折する光を示している。実際の撮像光学系に入射する光は可視の波長域の光が、広い次数範囲に渡って回折光学素子1の回折格子で回折する。従って、像面3aに配置したCCD3上に形成される画像はこれらの光の積分により形成される。たとえば、図1の有効画角外光6は波長が異なると回折角度及び回折光の強度が変化するため、CCD3に到達する光束の幅及び位置及び強度が変化する。また、回折次数によって光の強度及び回折角度が変化し、CCD3に到達する光束の幅及び位置及び強度が変化する。
【0017】
図2は図1で用いている回折光学素子1の説明図である。図2において21は光軸(中心軸)、22は第1レンズ、23は第2レンズ、24は低屈折率高分散の第1の材料、25は高屈折率低分散の第2の材料である。第1の材料は第2の材料より低屈折率材料より成っている。24a、25aは回折格子である。このように低屈折率高分散の第1材料24と高屈折率低分散の第2の材料25を組み合わせて広い波長域で高い回折効率を得ている。ここで第1の材料側が光入射側である。また、26は光軸(中心軸)21より上側の回折格子24a、25aの輪帯の格子壁面24b1に入射する有効画面外(有効画角外)の光線、27は光軸(中心軸)21より下側の回折格子の輪帯の格子壁面24b2に入射する有効画面外の光線を示している。光線26と光線27は平行光束の一部を示している。光線が上から入射して回折光学素子1の上側に入射する場合と光線が上から入射して光軸21を超えて回折光学素子1の下側に入射する光では光線が格子壁面24b1、24b2に入射して反射する状況が異なっている。
【0018】
図3は従来の回折光学素子の回折格子の格子壁面34の角度の説明図である。図4は本実施例に係る回折格子の格子壁面44の角度の説明図である。図3、図4において31、41は低屈折率高分散の第1の材料(第1の回折格子)、32、42は高屈折率低分散の第2の材料(第2の回折格子)である。33、43は画像を形成する光線の有効画角内(有効画面内)の最大角度の光線39、49と最小角度光線38、48の平均角度を示した補助線(中心角度光線)である。35、45は有効画角の外(有効画角外)から回折格子の格子壁面34、44に入射する光線(有効画角外光)を示している。36、46は格子面である。
【0019】
上記の平均角度の決定方法としては、図5に示すように回折光学素子1に入射する光線角度を求めた上で決定する。図5は回折光学素子1の形成されている面(図2の面28)に対する入射角度を、横軸に回折光学素子1の中心(光軸)を0とした時の光線入射高さ、縦軸に光線角度を示している。51は有効画角内の最大角度の光線39、49である。52は有効画角内の最小角度の光線38、48である。53は平均角度の光線33、43を示している。有効画角内の光線の平均角度に対して回折効率を最も高くするためには、この平均角度の光線33と一致させた方向に回折格子31の格子壁面34を傾けた方が良い。図3はこの時の状態を示した説明図である。
【0020】
図3における格子壁面34の方向は回折格子31への入射光の有効画角内の最大角度の光線39と最小角度の光線38の平均値である補助線(平均角度の光線)33の方向に平行にしている。この時、回折光学素子1に入射した有効画角外光線35は低屈折率の第1の材料31を通過した後、高屈折率の第2の材料32に入射し、図3に示したように低い角度で回折格子に入射した時は格子壁面34において全反射する。この時のフレア発生状況を回折光学素子1への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量分布を図6に示す。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子1の面法線に対する角度であり図3に示したように+側を取る。
【0021】
図6において、10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、−10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面の全反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生していることが分かる。また、図6において像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近のフレアであり、-10度付近の全反射ピークは像面に到達していない。また、全反射光からの回折光は0度付近まで裾を引いた形状となっている。これを防止する方法として本実施例は図4に示すようにしている。回折格子の格子壁面44を有効画面内の光線のうち回折光学素子1への最大角度の光線49と最小角度の光線48の平均値の方向(中心角度の光線)43に対して鋭角方向に傾けている。即ち図3の格子頂角30が小さくなる方向に格子壁面44を傾けて図4の格子頂角40となるようにしている。
【0022】
図7は格子壁面44の傾け角度に対するフレア光量の変化を示した説明図である。図7において横軸は回折角、縦軸はフレア光量である。図7において、格子壁面44の壁面角度を方向43に対して−10度まで鋭角方向に変化させた時のフレア発生状況を示している。グラフから0度入射の時に−10度付近にあったフレアピークが0度から遠ざかり裾の部分によるフレアも減少している事が分かる。また、その効果は傾け角度を大きくすることでよりフレアにとっては良い方向となるが、傾け角度を大きくすると回折効率が劣化するという問題が発生する。
【0023】
回折効率の劣化量については格子のピッチや傾け角度に依存する。この劣化のメカニズムは回折格子の壁面に入射する光束が壁面で蹴られることにより、回折格子に入射する光束の入射角度が変化した場合と発生のメカニズムは同じである。従って、格子のピッチが大きくなると蹴られる比率が小さくなるため、同じ格子壁面の傾け角度であっても回折効率の劣化は少なくなる。図16にこの回折格子への入射角度に対する回折効率の劣化の状況を示したグラフを示した。図16に示したように回折光学素子への入射角度が大きくなった時の回折効率はピッチが50μm、100μm、350μmと広くなるに従って大幅に改善していく事が分かる。
【0024】
一般に撮像光学系に使用する回折光学素子に用いられる回折格子は100μm以上のピッチを有しており、本実施例においては格子ピッチを200μm以上で構成している。さらに内側(光軸側)の輪帯に行くに従って格子ピッチはミリ単位まで大きくなる。したがって、格子壁面を10度程度傾けても回折効率の劣化は2%以下であり、十分許容範囲である。以上の説明については、有効画角外からの太陽光等の強い光(有効画角外光)が回折光学素子の上側に当たった図2の光線26についての説明であった。図2において光軸21を超えて回折光学素子1の下側の輪帯に入射した場合について以下に説明する。
【0025】
図8は図2において回折光学素子1の下側に入射した光線86が格子壁面89に入射した時の状況を示した説明図である。図8において81は低屈折率高分散の第1の材料(第1の回折格子)、82は高屈折率低分散の第2の材料(第2の回折格子)である。83は画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度を示した補助線である。86は有効画角の外から回折格子の格子壁面89に入射する光線を示している。図8に示したように低屈折率の第1の材料81を通過した光線86は高屈折率の第2の材料82との境界において、フレネル反射及び透過することで2つの光線87、88に分離する。可視域の光に対して回折効率を高めた密着タイプの回折光学素子においては、第1の材料81と第2の材料82との屈折率差は0.1以下となるのが普通であり、従って殆どの光については透過光となる。
【0026】
例えば格子壁面89の法線方向に対して80度で回折格子の格子壁面89に入射した場合に約94%は透過光であり、6%が反射光である。実際にCCD面に到達するフレア光は反射光の方向に進むフレアであり、また、この反射光自体ではなく、この反射光の周辺に発生する回折光である。従って光軸を横切って回折光学素子の下側に入射した光によるフレアの発生は非常に少なく画像の劣化に対しては問題を発生させないレベルである。
【0027】
図9はこの時の様子を回折光学素子への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量分布である。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子の面法線に対する角度であり図8に示したように+側を取る。
【0028】
図9において、−10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、+10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面のフレネル反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生しているが、いずれにしてもフレアの量としては微弱な光である。また、図9において像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近の光であり、フレアの量としては微弱で画像を劣化させるレベルではない。従って、本実施例において説明したように、有効画角外からの光の入射側即ち、本実施例においては回折光学素子の上側に入射する光線に対して、対策を行うことでフレアを十分抑制することができる。
【0029】
図10は本発明の実施例2の回折光学素子の説明図である。図10において101は光軸(中心軸)、102は第1レンズ、103は第2レンズ、106は高屈折率低分散の第1の材料、107は低屈折率高分散の第2の材料である。第1の材料は第2の材料より高屈折率材料より構成されている。このように低屈折率高分散の第2の材料107と高屈折率低分散の第1の材料106を組み合わせて広い波長域で高い回折効率を得ている。また、108は光軸101より上側の回折格子の輪帯の格子壁面106b1に入射する有効画面外の光線、109は光軸101より下側の回折格子の輪帯の格子壁面106b2に入射する有効画面外の光線を示している。光線108と光線109は平行光束の一部を示している。光線が上から入射して回折光学素子1の上側に当たる場合と光線が上から入射して光軸101を超えて回折光学素子1の下側に入射する光では光線が格子壁面106b1、106b2に入射して反射する状況が異なっている。
【0030】
図11は従来の回折光学素子の回折格子の格子壁面101b1の角度の説明図である。図12は本実施例に係る回折格子の格子壁面101b1の角度の説明図である。図11、図12において111、121は高屈折率低分散の第1の材料、112、122は低屈折率高分散の第2の材料である。113、123は画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線116、126と最小角度の光線117、127の平均角度を示した補助線(中心角度の光線)である。115、125は有効画角の外(有効画角外)から回折格子の格子壁面101b1に入射する光線(有効画角外光線)を示している。
【0031】
図11において、有効画面外の光線115は高屈折率の第1の材料111を通過し、高屈折率の第2の材料111と低屈折率の第1の材料112の回折格子の格子壁面101b1において全反射する。全反射のためこの時のフレアの光量は強い光となるが、角度的にCCD面には到達しない。この時の様子を回折光学素子1への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量としたグラフを図13に示す。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子1の面法線に対する角度であり図11に示したように+側を取る。
【0032】
図13において、−10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、+10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面の全反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生していることが分かる。また、図13のグラフにおいて像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近のフレアであり、+10度付近の全反射ピークは像面に到達していない。また、全反射光からの回折光は0度付近まで裾を引いた形状となっている。これを防止する方法として本実施例は回折格子の格子壁面を有効画面内の光線の回折光学素子1への最大角度の光線116、126と最小角度の光線117、127の平均値の方向113、123に対して鈍角方向に傾けている。
【0033】
即ち、格子頂角110が大きくなる方向に格子壁面101b1を傾けている。図12はこの格子頂角120が鈍角方向に傾けた回折格子の状態を示した説明図である。図12に示したように鈍角方向に回折格子の格子壁面101b1を傾けることで、光線125の格子壁面101b1で反射後の全反射光は図13の0度から遠ざかる方向に移動し、これに伴い発生する0度付近のフレア光も減少する。
【0034】
図14は図10において、回折光学素子1の下側に入射した光線が格子壁面106b2に入射した時の状況を示した説明図である。図14において141は高屈折率低分散の第1の材料、142は低屈折率高分散の第2の材料である。143は画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度を示した補助線である。145は有効画角の外から回折格子の格子壁面106b2に入射する光線を示している。図14に示したように高屈折率の第1の材料141を通過した光線は低屈折率の第2の材料142との境界を通過する。その後、再び高屈折率の第1の材料141との境界の回折格子の格子壁面106b2において、フレネル反射及び透過することで2つの光線146、147に分離する。
【0035】
可視域の光に対して回折効率を高めた密着タイプの回折光学素子においては、第1の材料141と第2の材料142との屈折率差は0.1以下となるのが普通であり、従って殆どの光については透過光となる。例えば格子壁面106b2の法線方向に対して80度で回折格子の格子壁面106b2に入射した場合に約94%は透過光であり、6%が反射光である。実際にCCD面に到達するフレア光は反射光の方向に進むフレアであり、また、この反射光自体ではなく、この反射光の周辺に発生する回折光である。従って光軸を横切って回折光学素子の下側に入射した光によるフレアの発生は非常に少なく画像の劣化に対しては問題を発生させないレベルである。
【0036】
図15はこの時の様子を回折光学素子への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量分布である。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子の面法線に対する角度であり図15に示したように−側を取る。図15において、+10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、−10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面のフレネル反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生しているが、いずれにしてもフレアの量としては微弱な光である。また、図15において像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近の光であり、フレアの量としては微弱で画像を劣化させるレベルではない。従って、本実施例において説明したように、有効画角外からの光の入射側即ち、本実施例においては回折光学素子の上側に入射する光線に対して、対策を行うことでフレアを抑制することができる。
【0037】
図17は本発明の実施例3の回折光学素子の説明図である。図17は回折格子を正面から見た説明図である。図17において171は回折格子の格子壁面を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度に対して傾けた範囲である。172は回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度とした範囲を示している。
【0038】
範囲171においては、回折格子の格子ピッチが大きいため比較的に大きな角度傾けても有効画角内の光に対して回折効率は殆ど悪化しない。一方、範囲172については比較的、回折格子の格子ピッチが小さく、大きく傾けると回折効率の劣化が懸念される。一方、範囲172は有効画角外の光が回折光学素子に入射する場合に光学鏡筒に蹴られて回折光学素子に光が入射しない領域が多く存在する。このため第1レンズよりCCD側にレンズを配置した場合、画面外の光が当たりにくくなりフレアの発生事態が少なくなる。従って、回折光学素子の光軸付近のみ回折格子の格子壁面を傾けることで、フレアの抑制した上で高い回折効率を維持することができる。
【0039】
図18は本発明の実施例4の回折光学素子の説明図である。図18において、181は回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度に対して傾けた範囲である。182は回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度から回折格子の格子壁面を傾けフレアを抑制する範囲である。また、範囲183については回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度として構成する。図17の回折光学素子と異なる部分は中央付近の回折格子の格子壁面の角度である。これは範囲181の回折格子のフレアは回折格子の格子ピッチが大きいことと、範囲182と比較して像面に到達するフレア光の次数が高次となるためフレアの発生は非常に少なく、回折効率の維持を優先させたためである。
【0040】
以上のように本発明の各実施例によれば、撮像光学系に回折光学素子を使用した場合に、最大画角に対して更に外側から入射する光束による回折格子の壁面に到達する光の像面への到達を防ぎカブリの少ない良好な撮影画像を得る事が出来る。
【符号の説明】
【0041】
1 回折光学素子、2 絞り、3 CCD等の像面、4 最大画角の光束、5 撮像光学系の光軸、6 有効画角の外側からの太陽光等の平行光の一部、21 光軸、22 第1レンズ、23 第2レンズ、24 低屈折率高分散の第1の材料、25 高屈折率低分散の第2の材料、31、41 低屈折率高分散の第1の材料、32、42 高屈折率低分散の第2の材料、33、43 画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均角度を示した補助線、35、45 有効画角の外から回折格子壁面に入射する光線、31、41 低屈折率高分散の第1の材料、32、42 高屈折率低分散の第2の材料、33、43 画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均角度を示した補助線、35、45 有効画角の外から回折格子壁面に入射する光線、51 有効画角内の最大角度、52 有効画角内の最小角度、53 平均角度
【技術分野】
【0001】
本発明は回折光学素子及びそれを用いた撮像光学系に関し、特に回折光学素子を形成する回折格子から生ずるフレア光を軽減し、良好なる光学性能が得られるデジタルカメラ、ビデオカメラ、TVカメラ、監視用カメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像光学系の色収差を減じる方法として撮像光学系の1部に回折作用を有する回折光学素子を設ける方法が知られている(非特許文献1)。回折光学素子を撮像光学系中に用いるときには使用波長域全域において設計次数の光線の回折効率が十分高いことが必要になる。回折効率が低いと、即ち設計次数以外の回折次数をもった光線が多く存在すると、これらの光線は、設計次数の光線とは別な所に結像するため結像に悪影響を与えるフレア光となる。
【0003】
回折効率の低下を防止するためには、回折格子を構成する格子面を格子壁面より成る回折面の格子ピッチを適切に設定することが重要である。この他、回折効率が低くなる要因として、回折格子の回折作用に寄与しない格子壁面で反射又は透過する光が多くなることがある。回折光学素子を撮像光学系に用いるとき、回折格子のうち回折作用に寄与しない格子壁面で光が反射又は透過した光が像面に到達するとフレア光となる。このため格子壁面で反射又は透過した光は像面に到達しないようにすることが重要である。
【0004】
回折格子の回折効率を高めるために回折格子の格子壁面の角度を適切に設定することで、格子壁面でのケラレを少なくし、有効画角内の光束に対して最適化した回折光学素子が知られている(特許文献1、2)。また、格子壁面の角度を格子頂角が、より鈍角方向となるように傾けることで、格子壁面からの反射フレアが像面に到達するのを軽減するといった回折光学素子が知られている(特許文献3)。また、複数の回折格子を密着した回折光学素子において格子壁面に遮光手段を設けた回折光学素子が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−294924号公報
【特許文献2】特開10−186118号公報
【特許文献3】特開2005−292571号公報
【特許文献4】特開2004−126394号公報
【非特許文献1】SPIE Vol.1354 International Lens Design Conference (1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回折光学素子を撮像光学系に用いたとき、回折格子より生ずるフレア光を軽減するのに有効画面内の光の回折効率を高める方法は、有効画面内の光に対する格子壁面から生ずるフレア光の抑制には有効である。しかしながら、有効画面外に太陽光等の強い輝度の物体があるような逆光シーンの実写においてはフレア光が増大してくる。
【0007】
一般に、回折格子に入射する光線の入射角度が格子壁面の角度からずれた場合には、格子壁面により反射され像面に到達した光はフレアとして画像に悪影響を及ぼす。この対策として、格子壁面の角度を格子頂角が、より鈍角方向となるように傾ければ、反射フレアが像面に到達するのを軽減することができる。しかしながら、格子壁面を格子頂角が鈍角方向となるように傾けることで透過光の位置を変えても不要光の影響を大きく減らすことが難しいということが本発明者の最近の検討で判明した。これは、不要光の発生の状況は幾何光学的な振る舞いだけでは無く、回折現象を起こすことで幾何光学的な光線の追跡では到達し得ない位置に光が到達することによる。また、回折格子の格子壁面に遮光手段を設ける方法は、加工が困難である。
【0008】
撮像光学系の光路中に回折光学素子を使用する場合には、多くの場合回折光学素子に、画像形成に使用される有効画角内の光束以外の有効画角外からの光が入射する。特に撮像光学系の絞りより物体側に回折光学素子を使用して色収差の補正を行う場合には、有効画角外からの光が回折光学素子に入射し易くなりフレアが多く発生する原因となる。特に、有効画面内のうち最大画角の外側の30度以下の比較的低い角度から入射する太陽光のような強い光が、回折光学素子に直接入射すると、回折光学素子を2次光源としたフレアが多く発生する原因となる。
【0009】
本発明は、撮像光学系の色収差を軽減するために回折光学素子を用いたとき回折格子の格子壁面から生ずるフレアを軽減し、良好なる画像が得られる回折光学素子及びそれを有する撮像光学系の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回折光学素子は、撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも小さく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いていることを特徴としている。
【0011】
この他本発明の回折光学素子は、撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも大きく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて大きくなる方向に傾いていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像光学系の色収差を軽減するために回折光学素子を用いたとき回折格子の格子壁面から生ずるフレアを軽減し、良好なる画像が得られる回折光学素子及びそれを有する撮像光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1の撮像光学系の説明図
【図2】本発明の実施例1の回折光学素子の断面図
【図3】本発明の実施例1を実施しなかった場合の回折格子の壁面角度の説明図
【図4】本発明の実施例1の回折格子の格子壁面の角度の説明図
【図5】回折光学素子への光線入射角度の説明図
【図6】本発明の実施例1を実施しない場合のフレア発生状況の説明図
【図7】本発明の実施例1の格子壁面の傾けの効果の説明図
【図8】本発明の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア説明図
【図9】本発明の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア発生状況説明図
【図10】本発明の実施例2の回折光学素子の説明図
【図11】本発明の実施例2を実施しない場合の回折光学素子の拡大図
【図12】本発明の実施例2を実施した場合の回折光学素子の拡大図
【図13】本発明の実施例2を実施しない場合のフレア発生状況の説明図
【図14】本発明の実施例2の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア説明図
【図15】本発明の実施例2の回折光学素子の下側に入射した光線のフレア発生状況の説明図
【図16】回折光学素子に入射した角度に対する回折効率変化の説明図
【図17】本発明の実施例3の回折光学素子の説明図
【図18】本発明の実施例4の回折光学素子の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の回折光学素子1は、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置の撮像光学系の光路中に設けられる。回折光学素子1は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料31と第2の材料32の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面46と格子壁面44を含む回折面を有している。第1の材料31と第2の材料32はレンズ部材のレンズ面上に積層して形成されている。第1の材料41側を光の入射側としたとき、第1の材料41の屈折率は第2の材料42の屈折率よりも小さい。格子壁面44が回折光学素子1の中心軸(光軸)21に対して平行となる位置を格子壁面44の基準位置とする。このとき、格子壁面44は回折面の少なくとも一部の範囲内で格子壁面44と格子面46とのなす格子頂角40が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いている。また第1の材料41の屈折率が第2の材料42の屈折率よりも大きいときは、格子頂角が基準位置のときに比べて大きくなる方向に傾いている。そして格子壁面44が基準位置に比べて、傾いている回折面の少なくとも一部は回折光学素子1の中心軸21を含む範囲内又は中心軸21を含まない範囲内である。また格子壁面44が傾いていない範囲における格子壁面の傾きは基準位置と同じである。
【0015】
図1は本発明の実施例1の回折光学素子を焦点距離400mmの望遠レンズ(撮像光学系)に適用したときのレンズ断面図である。図1において、1は回折光学素子、2は開口絞り、3aはCCD等の撮像素子3が配置される像面である。4は最大画角の光束、5は撮像光学系1の光軸、6は有効画角の外側(有効画角外)からの太陽光等の平行の有効画角外光の一部である。回折光学素子1は、正のパワーを有するように格子中央から外側かけて格子ピッチを狭くした回折格子をレンズ面に付加している。これにより撮像光学系の色収差を改善している。
【0016】
本実施例においては回折光学素子1は開口絞り2よりも物体側で第1レンズG1と第2レンズG2とその間に設けた回折光学部(回折格子)より成っている。このため、太陽光等の入射光は殆ど鏡筒で遮光されることなく、回折光学素子1に入射する。図1においては説明のため有効画角の外側からの有効画角外光6第1面の全面に入射している有効画角外の5度の入射光において、波長550nmの光が−30次の方向に回折する光を示している。実際の撮像光学系に入射する光は可視の波長域の光が、広い次数範囲に渡って回折光学素子1の回折格子で回折する。従って、像面3aに配置したCCD3上に形成される画像はこれらの光の積分により形成される。たとえば、図1の有効画角外光6は波長が異なると回折角度及び回折光の強度が変化するため、CCD3に到達する光束の幅及び位置及び強度が変化する。また、回折次数によって光の強度及び回折角度が変化し、CCD3に到達する光束の幅及び位置及び強度が変化する。
【0017】
図2は図1で用いている回折光学素子1の説明図である。図2において21は光軸(中心軸)、22は第1レンズ、23は第2レンズ、24は低屈折率高分散の第1の材料、25は高屈折率低分散の第2の材料である。第1の材料は第2の材料より低屈折率材料より成っている。24a、25aは回折格子である。このように低屈折率高分散の第1材料24と高屈折率低分散の第2の材料25を組み合わせて広い波長域で高い回折効率を得ている。ここで第1の材料側が光入射側である。また、26は光軸(中心軸)21より上側の回折格子24a、25aの輪帯の格子壁面24b1に入射する有効画面外(有効画角外)の光線、27は光軸(中心軸)21より下側の回折格子の輪帯の格子壁面24b2に入射する有効画面外の光線を示している。光線26と光線27は平行光束の一部を示している。光線が上から入射して回折光学素子1の上側に入射する場合と光線が上から入射して光軸21を超えて回折光学素子1の下側に入射する光では光線が格子壁面24b1、24b2に入射して反射する状況が異なっている。
【0018】
図3は従来の回折光学素子の回折格子の格子壁面34の角度の説明図である。図4は本実施例に係る回折格子の格子壁面44の角度の説明図である。図3、図4において31、41は低屈折率高分散の第1の材料(第1の回折格子)、32、42は高屈折率低分散の第2の材料(第2の回折格子)である。33、43は画像を形成する光線の有効画角内(有効画面内)の最大角度の光線39、49と最小角度光線38、48の平均角度を示した補助線(中心角度光線)である。35、45は有効画角の外(有効画角外)から回折格子の格子壁面34、44に入射する光線(有効画角外光)を示している。36、46は格子面である。
【0019】
上記の平均角度の決定方法としては、図5に示すように回折光学素子1に入射する光線角度を求めた上で決定する。図5は回折光学素子1の形成されている面(図2の面28)に対する入射角度を、横軸に回折光学素子1の中心(光軸)を0とした時の光線入射高さ、縦軸に光線角度を示している。51は有効画角内の最大角度の光線39、49である。52は有効画角内の最小角度の光線38、48である。53は平均角度の光線33、43を示している。有効画角内の光線の平均角度に対して回折効率を最も高くするためには、この平均角度の光線33と一致させた方向に回折格子31の格子壁面34を傾けた方が良い。図3はこの時の状態を示した説明図である。
【0020】
図3における格子壁面34の方向は回折格子31への入射光の有効画角内の最大角度の光線39と最小角度の光線38の平均値である補助線(平均角度の光線)33の方向に平行にしている。この時、回折光学素子1に入射した有効画角外光線35は低屈折率の第1の材料31を通過した後、高屈折率の第2の材料32に入射し、図3に示したように低い角度で回折格子に入射した時は格子壁面34において全反射する。この時のフレア発生状況を回折光学素子1への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量分布を図6に示す。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子1の面法線に対する角度であり図3に示したように+側を取る。
【0021】
図6において、10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、−10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面の全反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生していることが分かる。また、図6において像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近のフレアであり、-10度付近の全反射ピークは像面に到達していない。また、全反射光からの回折光は0度付近まで裾を引いた形状となっている。これを防止する方法として本実施例は図4に示すようにしている。回折格子の格子壁面44を有効画面内の光線のうち回折光学素子1への最大角度の光線49と最小角度の光線48の平均値の方向(中心角度の光線)43に対して鋭角方向に傾けている。即ち図3の格子頂角30が小さくなる方向に格子壁面44を傾けて図4の格子頂角40となるようにしている。
【0022】
図7は格子壁面44の傾け角度に対するフレア光量の変化を示した説明図である。図7において横軸は回折角、縦軸はフレア光量である。図7において、格子壁面44の壁面角度を方向43に対して−10度まで鋭角方向に変化させた時のフレア発生状況を示している。グラフから0度入射の時に−10度付近にあったフレアピークが0度から遠ざかり裾の部分によるフレアも減少している事が分かる。また、その効果は傾け角度を大きくすることでよりフレアにとっては良い方向となるが、傾け角度を大きくすると回折効率が劣化するという問題が発生する。
【0023】
回折効率の劣化量については格子のピッチや傾け角度に依存する。この劣化のメカニズムは回折格子の壁面に入射する光束が壁面で蹴られることにより、回折格子に入射する光束の入射角度が変化した場合と発生のメカニズムは同じである。従って、格子のピッチが大きくなると蹴られる比率が小さくなるため、同じ格子壁面の傾け角度であっても回折効率の劣化は少なくなる。図16にこの回折格子への入射角度に対する回折効率の劣化の状況を示したグラフを示した。図16に示したように回折光学素子への入射角度が大きくなった時の回折効率はピッチが50μm、100μm、350μmと広くなるに従って大幅に改善していく事が分かる。
【0024】
一般に撮像光学系に使用する回折光学素子に用いられる回折格子は100μm以上のピッチを有しており、本実施例においては格子ピッチを200μm以上で構成している。さらに内側(光軸側)の輪帯に行くに従って格子ピッチはミリ単位まで大きくなる。したがって、格子壁面を10度程度傾けても回折効率の劣化は2%以下であり、十分許容範囲である。以上の説明については、有効画角外からの太陽光等の強い光(有効画角外光)が回折光学素子の上側に当たった図2の光線26についての説明であった。図2において光軸21を超えて回折光学素子1の下側の輪帯に入射した場合について以下に説明する。
【0025】
図8は図2において回折光学素子1の下側に入射した光線86が格子壁面89に入射した時の状況を示した説明図である。図8において81は低屈折率高分散の第1の材料(第1の回折格子)、82は高屈折率低分散の第2の材料(第2の回折格子)である。83は画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度を示した補助線である。86は有効画角の外から回折格子の格子壁面89に入射する光線を示している。図8に示したように低屈折率の第1の材料81を通過した光線86は高屈折率の第2の材料82との境界において、フレネル反射及び透過することで2つの光線87、88に分離する。可視域の光に対して回折効率を高めた密着タイプの回折光学素子においては、第1の材料81と第2の材料82との屈折率差は0.1以下となるのが普通であり、従って殆どの光については透過光となる。
【0026】
例えば格子壁面89の法線方向に対して80度で回折格子の格子壁面89に入射した場合に約94%は透過光であり、6%が反射光である。実際にCCD面に到達するフレア光は反射光の方向に進むフレアであり、また、この反射光自体ではなく、この反射光の周辺に発生する回折光である。従って光軸を横切って回折光学素子の下側に入射した光によるフレアの発生は非常に少なく画像の劣化に対しては問題を発生させないレベルである。
【0027】
図9はこの時の様子を回折光学素子への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量分布である。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子の面法線に対する角度であり図8に示したように+側を取る。
【0028】
図9において、−10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、+10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面のフレネル反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生しているが、いずれにしてもフレアの量としては微弱な光である。また、図9において像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近の光であり、フレアの量としては微弱で画像を劣化させるレベルではない。従って、本実施例において説明したように、有効画角外からの光の入射側即ち、本実施例においては回折光学素子の上側に入射する光線に対して、対策を行うことでフレアを十分抑制することができる。
【0029】
図10は本発明の実施例2の回折光学素子の説明図である。図10において101は光軸(中心軸)、102は第1レンズ、103は第2レンズ、106は高屈折率低分散の第1の材料、107は低屈折率高分散の第2の材料である。第1の材料は第2の材料より高屈折率材料より構成されている。このように低屈折率高分散の第2の材料107と高屈折率低分散の第1の材料106を組み合わせて広い波長域で高い回折効率を得ている。また、108は光軸101より上側の回折格子の輪帯の格子壁面106b1に入射する有効画面外の光線、109は光軸101より下側の回折格子の輪帯の格子壁面106b2に入射する有効画面外の光線を示している。光線108と光線109は平行光束の一部を示している。光線が上から入射して回折光学素子1の上側に当たる場合と光線が上から入射して光軸101を超えて回折光学素子1の下側に入射する光では光線が格子壁面106b1、106b2に入射して反射する状況が異なっている。
【0030】
図11は従来の回折光学素子の回折格子の格子壁面101b1の角度の説明図である。図12は本実施例に係る回折格子の格子壁面101b1の角度の説明図である。図11、図12において111、121は高屈折率低分散の第1の材料、112、122は低屈折率高分散の第2の材料である。113、123は画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線116、126と最小角度の光線117、127の平均角度を示した補助線(中心角度の光線)である。115、125は有効画角の外(有効画角外)から回折格子の格子壁面101b1に入射する光線(有効画角外光線)を示している。
【0031】
図11において、有効画面外の光線115は高屈折率の第1の材料111を通過し、高屈折率の第2の材料111と低屈折率の第1の材料112の回折格子の格子壁面101b1において全反射する。全反射のためこの時のフレアの光量は強い光となるが、角度的にCCD面には到達しない。この時の様子を回折光学素子1への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量としたグラフを図13に示す。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子1の面法線に対する角度であり図11に示したように+側を取る。
【0032】
図13において、−10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、+10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面の全反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生していることが分かる。また、図13のグラフにおいて像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近のフレアであり、+10度付近の全反射ピークは像面に到達していない。また、全反射光からの回折光は0度付近まで裾を引いた形状となっている。これを防止する方法として本実施例は回折格子の格子壁面を有効画面内の光線の回折光学素子1への最大角度の光線116、126と最小角度の光線117、127の平均値の方向113、123に対して鈍角方向に傾けている。
【0033】
即ち、格子頂角110が大きくなる方向に格子壁面101b1を傾けている。図12はこの格子頂角120が鈍角方向に傾けた回折格子の状態を示した説明図である。図12に示したように鈍角方向に回折格子の格子壁面101b1を傾けることで、光線125の格子壁面101b1で反射後の全反射光は図13の0度から遠ざかる方向に移動し、これに伴い発生する0度付近のフレア光も減少する。
【0034】
図14は図10において、回折光学素子1の下側に入射した光線が格子壁面106b2に入射した時の状況を示した説明図である。図14において141は高屈折率低分散の第1の材料、142は低屈折率高分散の第2の材料である。143は画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度を示した補助線である。145は有効画角の外から回折格子の格子壁面106b2に入射する光線を示している。図14に示したように高屈折率の第1の材料141を通過した光線は低屈折率の第2の材料142との境界を通過する。その後、再び高屈折率の第1の材料141との境界の回折格子の格子壁面106b2において、フレネル反射及び透過することで2つの光線146、147に分離する。
【0035】
可視域の光に対して回折効率を高めた密着タイプの回折光学素子においては、第1の材料141と第2の材料142との屈折率差は0.1以下となるのが普通であり、従って殆どの光については透過光となる。例えば格子壁面106b2の法線方向に対して80度で回折格子の格子壁面106b2に入射した場合に約94%は透過光であり、6%が反射光である。実際にCCD面に到達するフレア光は反射光の方向に進むフレアであり、また、この反射光自体ではなく、この反射光の周辺に発生する回折光である。従って光軸を横切って回折光学素子の下側に入射した光によるフレアの発生は非常に少なく画像の劣化に対しては問題を発生させないレベルである。
【0036】
図15はこの時の様子を回折光学素子への入射角度が10°の場合について、横軸に回折角度、縦軸に全光量を100%とした時の光量分布である。また、計算に使用した回折格子は1次の回折効率が最も高くなるように最適化した回折格子として計算している。グラフの横軸の角度は回折光学素子の面法線に対する角度であり図15に示したように−側を取る。図15において、+10度付近に飽和しているピークを有しているが、これが1次の回折光の発生位置である。また、−10度付近に光量ピークがあるがこれが格子壁面のフレネル反射光により発生しているフレアである。このピークを中心に回折によるフレアが発生しているが、いずれにしてもフレアの量としては微弱な光である。また、図15において像面に光が到達する角度は0度±1度〜0度±2度付近の光であり、フレアの量としては微弱で画像を劣化させるレベルではない。従って、本実施例において説明したように、有効画角外からの光の入射側即ち、本実施例においては回折光学素子の上側に入射する光線に対して、対策を行うことでフレアを抑制することができる。
【0037】
図17は本発明の実施例3の回折光学素子の説明図である。図17は回折格子を正面から見た説明図である。図17において171は回折格子の格子壁面を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度に対して傾けた範囲である。172は回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度とした範囲を示している。
【0038】
範囲171においては、回折格子の格子ピッチが大きいため比較的に大きな角度傾けても有効画角内の光に対して回折効率は殆ど悪化しない。一方、範囲172については比較的、回折格子の格子ピッチが小さく、大きく傾けると回折効率の劣化が懸念される。一方、範囲172は有効画角外の光が回折光学素子に入射する場合に光学鏡筒に蹴られて回折光学素子に光が入射しない領域が多く存在する。このため第1レンズよりCCD側にレンズを配置した場合、画面外の光が当たりにくくなりフレアの発生事態が少なくなる。従って、回折光学素子の光軸付近のみ回折格子の格子壁面を傾けることで、フレアの抑制した上で高い回折効率を維持することができる。
【0039】
図18は本発明の実施例4の回折光学素子の説明図である。図18において、181は回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度に対して傾けた範囲である。182は回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度から回折格子の格子壁面を傾けフレアを抑制する範囲である。また、範囲183については回折格子の格子壁面の角度を画像を形成する光線の有効画角内の最大角度の光線と最小角度の光線の平均角度として構成する。図17の回折光学素子と異なる部分は中央付近の回折格子の格子壁面の角度である。これは範囲181の回折格子のフレアは回折格子の格子ピッチが大きいことと、範囲182と比較して像面に到達するフレア光の次数が高次となるためフレアの発生は非常に少なく、回折効率の維持を優先させたためである。
【0040】
以上のように本発明の各実施例によれば、撮像光学系に回折光学素子を使用した場合に、最大画角に対して更に外側から入射する光束による回折格子の壁面に到達する光の像面への到達を防ぎカブリの少ない良好な撮影画像を得る事が出来る。
【符号の説明】
【0041】
1 回折光学素子、2 絞り、3 CCD等の像面、4 最大画角の光束、5 撮像光学系の光軸、6 有効画角の外側からの太陽光等の平行光の一部、21 光軸、22 第1レンズ、23 第2レンズ、24 低屈折率高分散の第1の材料、25 高屈折率低分散の第2の材料、31、41 低屈折率高分散の第1の材料、32、42 高屈折率低分散の第2の材料、33、43 画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均角度を示した補助線、35、45 有効画角の外から回折格子壁面に入射する光線、31、41 低屈折率高分散の第1の材料、32、42 高屈折率低分散の第2の材料、33、43 画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均角度を示した補助線、35、45 有効画角の外から回折格子壁面に入射する光線、51 有効画角内の最大角度、52 有効画角内の最小角度、53 平均角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも小さく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いていることを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも大きく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて大きくなる方向に傾いていることを特徴とする回折光学素子。
【請求項3】
前記格子壁面が基準位置に比べて、傾いている回折面の少なくとも一部は該回折光学素子の中心軸を含む範囲内であることを特徴とする請求項1又は2の回折光学素子。
【請求項4】
前記格子壁面が基準位置に比べて、傾いている回折面の少なくとも一部は該回折光学素子の中心軸を含まない範囲内であることを特徴とする請求項1又は2の回折光学素子。
【請求項5】
前記第1の材料と前記第2の材料はレンズ部材のレンズ面上に積層して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の回折光学素子。
【請求項6】
前記回折面のうち前記格子壁面が基準位置に比べて傾いていない範囲における該格子壁面の傾きは基準位置と同じであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項の回折光学素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項の回折光学素子を有することを特徴とする撮像光学系。
【請求項8】
前記回折光学素子は開口絞りよりも物体側に配置されていることを特徴とする請求項7の撮像光学系。
【請求項9】
互いに分散と屈折率の異なる第1の材料と第2の材料の境界に回折格子を設けた回折光学素子を光路中に有する撮像装置において、第1の材料は第2の材料より低屈折率材料にて構成され、該回折光学素子は画像を形成する光束の入射する格子面と格子壁面を有し、画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均である中心角度の光線に対して、格子壁面の角度を格子面と格子壁面で構成される格子頂角が小さくなる方向に傾けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
互いに分散と屈折率の異なる第1の材料と第2の材料の境界に回折格子を設けた回折光学素子を光路中に有する撮像装置において、第1の材料は第2の材料より高屈折率材料にて構成され、該回折光学素子は画像を形成する光束の入射する格子面と格子壁面を有し、画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均である中心角度の光線に対して、格子壁面の角度を格子面と格子壁面で構成される格子頂角が大きくなる方向に傾けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも小さく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて小さくなる方向に傾いていることを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
撮像光学系の光路中に設けられる回折光学素子であって、該回折光学素子は互いに分散と屈折率が異なる第1の材料と第2の材料の境界の少なくとも一部に所定の格子ピッチで配列された格子面と格子壁面を含む回折面を有し、該第1の材料側を光の入射側としたとき、該第1の材料の屈折率は該第2の材料の屈折率よりも大きく、該格子壁面が該回折光学素子の中心軸に対して平行となる位置を該格子壁面の基準位置とするとき、該格子壁面は該回折面の少なくとも一部の範囲内で該格子壁面と格子面とのなす格子頂角が基準位置の時に比べて大きくなる方向に傾いていることを特徴とする回折光学素子。
【請求項3】
前記格子壁面が基準位置に比べて、傾いている回折面の少なくとも一部は該回折光学素子の中心軸を含む範囲内であることを特徴とする請求項1又は2の回折光学素子。
【請求項4】
前記格子壁面が基準位置に比べて、傾いている回折面の少なくとも一部は該回折光学素子の中心軸を含まない範囲内であることを特徴とする請求項1又は2の回折光学素子。
【請求項5】
前記第1の材料と前記第2の材料はレンズ部材のレンズ面上に積層して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の回折光学素子。
【請求項6】
前記回折面のうち前記格子壁面が基準位置に比べて傾いていない範囲における該格子壁面の傾きは基準位置と同じであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項の回折光学素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項の回折光学素子を有することを特徴とする撮像光学系。
【請求項8】
前記回折光学素子は開口絞りよりも物体側に配置されていることを特徴とする請求項7の撮像光学系。
【請求項9】
互いに分散と屈折率の異なる第1の材料と第2の材料の境界に回折格子を設けた回折光学素子を光路中に有する撮像装置において、第1の材料は第2の材料より低屈折率材料にて構成され、該回折光学素子は画像を形成する光束の入射する格子面と格子壁面を有し、画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均である中心角度の光線に対して、格子壁面の角度を格子面と格子壁面で構成される格子頂角が小さくなる方向に傾けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
互いに分散と屈折率の異なる第1の材料と第2の材料の境界に回折格子を設けた回折光学素子を光路中に有する撮像装置において、第1の材料は第2の材料より高屈折率材料にて構成され、該回折光学素子は画像を形成する光束の入射する格子面と格子壁面を有し、画像を形成する光線の有効画角内の最大角度と最小角度の平均である中心角度の光線に対して、格子壁面の角度を格子面と格子壁面で構成される格子頂角が大きくなる方向に傾けられていることを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−170028(P2011−170028A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32413(P2010−32413)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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