説明

回線割当装置および回線割当方法

【課題】単位伝送帯域幅を超える通信回線を、ピーク電力を端末局の最大送信電力を超えることなく、複数の分散する空き帯域に分割して割り当てる回線割当装置を提供する。
【解決手段】複数の端末局に対する通信回線の割り当てにおいて、通信回線の所要変調帯域幅を満たす、端末局の送信する変調信号の半値帯域幅に対応する単位周波数スロットの数を算出し(ステップ1)、所要変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出・生成し(ステップ2)、分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択し、選択した分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う(ステップ3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信衛星や移動通信のセルラ基地局(以下「ノード局」という)を介して端末局が通信を行う無線通信システムにおいて、通信回線を複数の帯域幅に分割して送信するための回線割当装置および回線割当方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノード局を介して端末局が通信を行う無線通信システムでは、各端末局に割り当てられる回線の総帯域は、ノード局が利用できる帯域(システム帯域)以下に制約される。システム帯域を有効利用するため、通信を開始する端末局に動的に回線を割り当て、通信終了時に回線を解放するデマンドアサイン方式(非特許文献1)が用いられる。
【0003】
デマンドアサイン方式では、各端末局が非同期に回線割当と回線開放を繰り返し、システム帯域上に空き帯域が分散する。そこで、回線を複数の帯域(サブスペクトラム)に分割し、各サブスペクトラムを分散した空き帯域に配置し、通信を行うことができる帯域分散伝送(非特許文献2)が用いられる。このような無線通信システムの回線割当方法として、First fit 法を用いた回線割当方法(非特許文献3)の適用が考えられ、これを以下では従来法と呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】自治体衛星通信機構(LASCOM):“DAMA回線制御方式”. LASCOM STD-401.
【非特許文献2】阿部, 山下, 小林:“高周波数利用効率を実現するスペクトラム編集型帯域分散伝送の提案( 移動衛星通信, 放送, 誤り訂正, 無線通信一般) ”, 電子情報通信学会技術研究報告. SAT,衛星通信, 109, 340, pp.7-12(2009-12-10).
【非特許文献3】中平, 小林, 大幡:“偏波無追尾型ku帯移動体衛星通信システムのためのチャネル割当アルゴリズムの検討(符号化, 変復調・信号処理技術及び一般) ”, 電子情報通信学会技術研究報告. SAT,衛星通信, 108, 58, pp.13-18 (2008-05-20).
【非特許文献4】阿部, 中平, 小林:“衛星通信に適した複数帯域を利用する伝送方式の比較検討”, 電子情報通信学会技術研究報告. SAT,衛星通信(2011-5).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来法では、図15に示すように、システム帯域の下限周波数に周波数固定ポイント(FP)を設定する。回線割当時には、FPに最も近い空き帯域から順番に、回線をサブスペクトラムに分割して配置し、配置したサブスペクトラムの合計帯域が、要求速度を満たすために必要な所要帯域に達するまで、上記を繰り返す。
【0006】
ここで、帯域分散伝送では、同一要求速度の回線でも、分割数が多いほど所要帯域が増加する。所要帯域が増加すれば、送信電力が増加することとなる。また、分割数や分割帯域幅の組合せに応じてピーク電力が変化し、ピーク電力が電力増幅器の最大送信電力を超えた場合、電力増幅器から出力される信号には非線形歪が発生し、通信品質が劣化する。これに対し、従来法は、空き帯域の情報だけを用いて分割数や分割帯域幅を決定するため、所要帯域の増加による周波数利用効率の低下や、ピーク電力の増加に対応する大電力増幅器が必要となることが課題となる。
【0007】
本願では、帯域分散伝送によりシステム帯域を有効利用し、かつ従来法の課題である所要帯域とピーク電力の増加を低減することができる回線割当装置および回線割当方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出手段と、変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成手段と、分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択手段と、分割パターン選択手段が選択した分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段とを備える。
【0009】
第2の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出手段と、変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成手段と、分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる分割パターンを選択する分割パターン選択手段と、分割パターン選択手段が選択した分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段とを備える。
【0010】
第3の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出手段と、変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成手段と、分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない分割パターンの中から分割数が最小となる分割パターンを選択する、あるいは分割数が最小となる分割パターンの中からピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択手段と、分割パターン選択手段が選択した分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段とを備える。
【0011】
第1〜第3の発明の回線割当装置において、回線割当手段は、分割パターン選択手段が選択した分割パターンと空き帯域の分布により、当該分割パターンのサブスペクトラムを配置できる空き帯域の組合せが複数ある場合に、各空き帯域ごとに残留する空き帯域が最小となる分割パターンを選択する。
【0012】
第4の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出ステップと、変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成ステップと、分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択ステップと、分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップとを有する。
【0013】
第5の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出ステップと、変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成ステップと、分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる分割パターンを選択する分割パターン選択ステップと、分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップとを有する。
【0014】
第6の発明は、複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出ステップと、変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成ステップと、分割パターンのうち、ピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない分割パターンの中から分割数が最小となる分割パターンを選択する、あるいは分割数が最小となる分割パターンの中からピーク電力が端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択ステップと、分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと空き帯域の分布に基づいて、端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップとを有する。
【0015】
第4〜第6の発明の回線割当方法において、回線割当ステップは、分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと空き帯域の分布により、当該分割パターンのサブスペクトラムを配置できる空き帯域の組合せが複数ある場合に、各空き帯域ごとに残留する空き帯域が最小となる分割パターンを選択する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、分割パターンからピーク電力が端末の最大送信電力を超えないものを選択し、選択した分割パターンの各サブスペクトラムを空き帯域に割り当てる回線割当を行うことにより、歪のない信号伝送が可能となるとともに、端末局の最大送信電力を抑えて電力増幅器の小型化を図ることができる。
【0017】
また、空き帯域への回線割当を行う際に、サブスペクトラムを割り当てて残留する空き帯域が最小になる空き帯域を選択することにより、広く連続した空き帯域が残りやすくなり、以降の回線割当を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】帯域分散伝送の原理を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1の回線割当処理手順を示すフローチャートである。
【図3】分割パターンの第1の選択方法を示す図である。
【図4】Best fit配置によるサブスペクトラムの配置例を示す図である。
【図5】分割パターンの第2の選択方法を示す図である。
【図6】分割パターンの第3の選択方法を示す図である。
【図7】本発明の実施例2の回線割当処理手順を示すフローチャートである。
【図8】分割配置パターンの第1の選択方法を示す図である。
【図9】分割配置パターンの第2の選択方法を示す図である。
【図10】分割配置パターンの第3の選択方法を示す図である。
【図11】Best fit配置の分割配置パターンからの選択例を示す図である。
【図12】衛星通信システムの構成例を示す図である。
【図13】セルラ通信システムの構成例を示す図である。
【図14】回線割当装置の構成例を示す図である。
【図15】従来の回線割当例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(帯域分散伝送における回線割当の原理について)
回線割当の前提として、回線を一定帯域幅の周波数スロットに分けて、当該周波数スロット単位で制御する。また、変調方式と誤り訂正符号化率を固定する。
【0020】
図1は、帯域分散伝送の原理を示す。
図1(1) に示す初期スペクトラムは、要求速度を達成するために必要な分割前の信号形状であり、変調スロット数Wmod (変調信号の半値帯域幅に相当する周波数スロット数)と、一定帯域幅のロールオフスロット数Wroll(占有帯域幅に相当する周波数スロット数から変調スロット数を除いた数)からなる。初期スペクトラムは、送信側でN個(Nは2以上の整数)のサブスペクトラムに分割され、受信側で初期スペクトラムと同じ形状のスペクトラムに合成される。
【0021】
変調スロット数Wmod は、要求速度をRreq(bit/s)、周波数スロットの単位帯域幅をW0(Hz) 、スペクトラム利用効率(周波数あたりに伝送可能なビットレート)をη(bit/s/Hz)として、次式より求めることができる。ここで、演算子 <x> はx以上で最小の整数を返す。
Wmod = <Rreq/ηW0> …(1)
【0022】
サブスペクトラムを劣化なく合成するため、合成時に隣接サブスペクトラムの和を1(平坦)にする必要がある。そこで、隣接するサブスペクトラムの半値周波数(中心周波数に対し電力が半分となる周波数)を一致させるように周波数フィルタで分割する。よって、n番目のサブスペクトラムの占有帯域幅に相当する周波数スロット数は、分割スロット数Wn (サブスペクトラムの半値帯域幅に相当する周波数スロット数)にWrollを加えた値となる。このとき、分割スロット数Wn の合計は、次式のように変調スロット数Wmod に一致する必要がある。
Wmod =W1 +W2 +…+WN …(2)
【0023】
以上により、帯域分散伝送において、要求速度を達成するために必要な所要スロット数Wreq は次式となり、分割数Nに応じて増加する。
Wreq =(W1+Wroll)+…+(Wn+Wroll)=Wmod +NWroll …(3)
【0024】
(回線割当方法)
式(2) を満たす分割スロット数Wn の組合せは複数あり、これを分割パターンと呼ぶ。表1には、変調スロット数Wmod =6の分割パターンを示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1において、Dx は、x番目の分割パターンであり、Wy は、y番目のサブスペクトラムの分割スロット数であり、表内の数字は、分割パターンDx における分割スロット数Wy を示す。帯域分散伝送では、分割パターンにより振幅分布が変わるため、PAPR(ピーク電力対平均電力比)が変化する(非特許文献4)。表1には分割パターンとPAPRの関係例も合わせて記載した。ただし、表1のPAPRの値は、本発明による回線割当方法を説明するための一例であり、実際とは異なる場合もありうる。
【0027】
変調スロット数Wmod から導かれるi番目の分割パターンをD(Wmod, i)とするとき、次式のようにPAPRが分割パターンをパラメータとする関数fで表されるものとする。
PAPR=f(D(Wmod, i)) …(4)
【0028】
よって、回線の平均電力をPavg とするとき、ピーク電力Ppeakは次式となり、分割パターンに応じて変化する。なお、Pavg は所要C/N(所要ビット誤り率を確保するために必要な受信電力Cに対する雑音電力Nの比)と要求速度Rreq から決まる。
Ppeak=Pavg ×PAPR=Pavg ×f(D(Wmod, i)) …(5)
【実施例1】
【0029】
図2は、本発明の実施例1の回線割当処理手順を示す。
図2において、ステップ1では、要求速度Rreq を特定し、当該要求速度Rreq から式(1) を用いて変調スロット数Wmod を算出する。ステップ2では、変調スロット数Wmod から分割パターンを導出する。ステップ3では、分割パターンの中から1つを選択し、各サブスペクトラムを空き帯域に配置する。選択した分割パターンの各サブスペクトラムが空き帯域に配置できない場合は、次の分割パターンを選択する。
【0030】
ここで、ステップ2で得られた分割パターンからステップ3で1つの分割パターンの選択する方法は、以下に示す3通りがある。
【0031】
(第1の選択方法)
図3は、分割パターンの第1の選択方法を示す。ここでは、変調スロット数Wmod =12と算出され、6種類の分割パターンが導出された例を示す。
【0032】
第1の選択方法は、6種類の分割パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となる分割パターン(5種類)を選択し、その中から任意の1つを選択し(以下選択パターンと呼ぶ)、選択パターンのサブスペクトラムを空き帯域に配置する。システム帯域内の空き帯域に選択パターンのサブスペクトラムを全て配置できない場合は、次の選択パターンを用い、配置できるまでこの操作を繰り返す。
【0033】
従来は、想定される全ての分割パターンのうち、最もPAPRの大きいパターンに対しても最大送信電力が不足しないよう、端末には大電力の電力増幅器が必要であった。一方、本発明では、ピーク電力≦最大送信電力となる分割パターンの1つを選択して回線割当を行うので、大電力の電力増幅器を用いなくても歪のない信号伝送が可能となり、ひいては電力増幅器の小型化を図ることができる。
【0034】
ここで、選択パターンのa番目のサブスペクトラムに対し、配置できる空き帯域の候補が複数ある場合は、a番目のサブスペクトラムをb番目の空き帯域に配置した後に、b番目の空き帯域内に残留する周波数軸上で連続した空きスロットの数が最小となる候補に配置してもよい(以下、Best fit配置と呼ぶ)。
【0035】
図4は、Best fit配置によるサブスペクトラムの配置例を示す。
図4において、選択パターンのサブスペクトラム1,2それぞれに含まれる変調スロット数が3,6であり、空き帯域A,B,C,Dのそれぞれに含まれる空きスロット数が、3,5,6,15とする。Best fit配置では、まず、サブスペクトラム1に含まれる変調スロット数と空き帯域Aに含まれる空きスロット数が同じ(=3)であることから、サブスペクトラム1を空き帯域Aに割り当てる。次に、サブスペクトラム2に含まれる変調スロット数と空き帯域Cに含まれる空きスロット数が同じ(=6)であることから、サブスペクトラム2を空き帯域Cに割り当てる。
【0036】
一方、ランダム配置した場合には、例えば空き帯域Bにサブスペクトラム1を割り当てると空きスロット数2が残り、空き帯域Dにサブスペクトラム2を適当に割り当てると空きスロット数2,7が残る。このように、Best fit配置は、配置後に空き帯域Dがそのまま残って広い連続空き帯域を確保できることが分かる。よって、それ以降のサブスペクトラムを配置できない確率を低減し、本発明の効果を増すことができる。
【0037】
(第2の選択方法)
図5は、分割パターンの第2の選択方法を示す。ここでは、変調スロット数Wmod =12と算出され、6種類の分割パターンが導出された例を示す。
【0038】
第2の選択方法は、6種類の分割パターンのうち、ピーク電力が最小の分割パターンの1つを選択する。配置できる空き帯域の候補がない場合は、ピーク電力がその次に小さいものを選択し、配置できるまでこの操作を繰り返す。これにより、配置可能な分割パターンの中で、常に最小のピーク電力である回線割当が行われるので、ピーク電力の平均値を小さくできる。動作点を変えることで最大送信電力を制御可能な電力増幅器と組み合わせれば、割り当てられた回線のピーク電力に応じて最大送信電力を制御することで、端末の平均的な消費電力を抑えることができる。
【0039】
(第3の選択方法)
図6は、分割パターンの第3の選択方法を示す。ここでは、変調スロット数Wmod =12と算出され、6種類の分割パターンが導出された例を示す。
【0040】
第3の選択方法は、図6(1) に示すように、6種類の分割パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となる分割パターンの中から分割数N(所要スロット数Wreq )が最小となるものを選択する。配置できる空き帯域の候補がない場合は、分割数Nがその次に小さいものを選択し、配置できるまでこの操作を繰り返す。または、図6(2) に示すように、分割パターンの中から分割数N(所要スロット数Wreq )が最小のものを選択し、その中からピーク電力≦最大送信電力となる任意の1つの分割パターンを選択してもよい。これにより、第1の選択方法の効果に加え、所要スロット数Wreq が小さい(周波数利用効率が高い)回線割当を実施することができる。
【実施例2】
【0041】
図4に示すように、同じ分割パターンでも複数の配置パターンが存在する。そこで、変調スロット数Wmod のi番目の分割パターンのj番目の配置パターンをD(Wmod, i, j)とし、それぞれを分割配置パターンと呼ぶ。ここでは、次式のように分割配置パターンとPAPRの関係が関数gで表されるものとする。
PAPR=g(D(Wmod, i, j)) …(6)
【0042】
図7は、本発明の実施例2の回線割当処理手順を示す。
図7において、ステップ1では、要求速度Rreq を特定し、当該要求速度Rreq から式(1) を用いて変調スロット数Wmod を算出する。ステップ2では、変調スロット数Wmod から分割配置パターンを導出する。ステップ3では、分割配置パターンの中から1つを選択し、サブスペクトラムを空き帯域に配置する。本実施例は、分割パターンと配置パターンを合せた分割配置パターンであるので、分割パターンから選択する実施例1と異なり、1回の選択で空き帯域への配置が完了する。
【0043】
ここで、ステップ2で得られた分割配置パターンからステップ3で1つの分割配置パターンの選択する方法は、実施例1と同様に以下に示す3通りがある。
【0044】
第1の選択方法は、図8に示すように、5種類の分割配置パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となる分割パターンの中から任意の1つを選択し、選択配置パターンのサブスペクトラムを空き帯域に配置する。なお、図8において、矢印は配置選択パターンの各サブスペクトラムを示す。破線は空き帯域、ハッチングは既存回線を示す。以下に示す図9〜11においても同様である。
【0045】
第2の選択方法は、図9に示すように、5種類の分割配置パターンのうち、ピーク電力が最小のものを選択する。
【0046】
第3の選択方法は、図10に示すように、5種類の分割パターンのうち、ピーク電力≦最大送信電力となる分割配置パターンの中から分割数N(所要スロット数Wreq )が最小となるものを選択する。
【0047】
また、図11に示すように、分割配置パターンをBest fit配置であるものに限り、この中から上記の選択方法を用いて選択してもよい。
【0048】
以上の説明において、分割パターンや分割配置パターンの数が膨大となり、全てを求めることが困難な場合には、分割パターンや分割配置パターンの一部を求め、本発明の方法を用いてもよい。また、通信方式(変調方式と誤り訂正符号化率の組合せ)により、スペクトラム利用効率と所要C/Nの値を変えることができる。そこで、通信方式毎に分割パターンや分割配置パターンを求め、本発明の方法を用いてもよい。
【実施例3】
【0049】
図12に示す衛星通信システムではノード局は通信衛星であり、図13に示すセルラ通信システムではノード局はセルラ基地局である。端末局は、ノード局から制御回線を介して、回線割当装置から割り当てられた回線が通知され、当該回線を用いて別の端末局とノード局を介して無線通信を行う。
【0050】
ここで、回線割当装置は、(1) 選択可能な通信方式、(2) 最大送信電力、(3) 要求速度、により構成される情報を端末局毎に把握する必要がある。(1) 、(2) は予め知り得る端末局固有の情報であるので、端末局ID情報と関連付けて回線割当装置の端末管理DB部にデータベース化する。一方、(3) は回線要求毎に異なる。したがって、端末局は回線要求信号に端末局ID情報と要求速度を付与し制御回線を用いて回線割当装置に送信する。
【0051】
図14は、回線割当装置の構成例を示す。
図14において、回線割当装置は、制御回線送受信部11、アクセス制御部12、端末管理DB部13、回線管理DB部14、回線割当処理部15により構成される。制御回線送受信部11が回線要求信号を受信すると、アクセス制御部12が端末局IDと要求速度を取り出し、回線割当処理部15に通知する。回線割当処理部15では、要求速度と、回線管理DB部14の空き帯域の情報と、端末管理DB部13の端末情報とから、本発明の回線割当方法を用いて、要求速度を満足する分割パターンまたは分割配置パターンに応じて、(a) 分割数(サブスペクトラムの数)、(b) 各サブスペクトラムを構成する変調スロット数、(c) 各サブスペクトラムの中心周波数からなる回線要素を決定し、端末局IDを持つ端末局に回線要素を返信すると共に、回線管理DB部14の内容をアップデートする。一方で、端末局は通信が終了すると回線開放信号に端末局IDを付与して制御回線を用いて回線割当装置に送信する。回線割当装置は、制御回線送受信部11が回線開放信号を受信すると、アクセス制御部12が端末局IDを取り出し、回線管理DB部13から割当済み回線の内容を削除する。
【符号の説明】
【0052】
11 制御回線送受信部
12 アクセス制御部
13 端末管理DB部
14 回線管理DB部
15 回線割当処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出手段と、
前記変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成手段と、
前記分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択手段と、
前記分割パターン選択手段が選択した分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段と
を備えたことを特徴とする回線割当装置。
【請求項2】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出手段と、
前記変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成手段と、
前記分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる分割パターンを選択する分割パターン選択手段と、
前記分割パターン選択手段が選択した分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段と
を備えたことを特徴とする回線割当装置。
【請求項3】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当装置において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出手段と、
前記変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成手段と、
前記分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない分割パターンの中から分割数が最小となる分割パターンを選択する、あるいは分割数が最小となる分割パターンの中からピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択手段と、
前記分割パターン選択手段が選択した分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当手段と
を備えたことを特徴とする回線割当装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の回線割当装置において、
前記回線割当手段は、前記分割パターン選択手段が選択した分割パターンと前記空き帯域の分布により、当該分割パターンのサブスペクトラムを配置できる空き帯域の組合せが複数ある場合に、各空き帯域ごとに残留する空き帯域が最小となる分割パターンを選択する
ことを特徴とする回線割当装置。
【請求項5】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出ステップと、
前記変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成ステップと、
前記分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択ステップと、
前記分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップと
を有することを特徴とする回線割当方法。
【請求項6】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出ステップと、
前記変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成ステップと、
前記分割パターンのうち、ピーク電力が最小となる分割パターンを選択する分割パターン選択ステップと、
前記分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップと
を有することを特徴とする回線割当方法。
【請求項7】
複数の端末局の間で、周波数領域で分割した信号(サブスペクトラム)を、分散した空き帯域を用いて伝送する帯域分散伝送を行うために、当該端末局に対する通信回線の割り当てを行う回線割当方法において、
前記端末局が送信する変調信号の半値帯域幅に対応し、単位周波数スロットの数で表される周波数スロット数を算出する変調スロット数算出ステップと、
前記変調スロット数を分割したサブスペクトラムの組合せである分割パターンを算出する分割パターン生成ステップと、
前記分割パターンのうち、ピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない分割パターンの中から分割数が最小となる分割パターンを選択する、あるいは分割数が最小となる分割パターンの中からピーク電力が前記端末局の最大送信電力を超えない分割パターンを選択する分割パターン選択ステップと、
前記分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと前記空き帯域の分布に基づいて、前記端末局に通信回線の割り当てを行う回線割当ステップと
を有することを特徴とする回線割当方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれかに記載の回線割当方法において、
前記回線割当ステップは、前記分割パターン選択ステップが選択した分割パターンと前記空き帯域の分布により、当該分割パターンのサブスペクトラムを配置できる空き帯域の組合せが複数ある場合に、各空き帯域ごとに残留する空き帯域が最小となる分割パターンを選択する
ことを特徴とする回線割当方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−34056(P2013−34056A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168233(P2011−168233)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】