説明

回路保護デバイス

基板(19)に表面実装するのに適する回路保護デバイス(31)。このデバイスは導電性ポリマー組成物から構成されて第1および第2電極(5,7)間に挟持された層状PTC抵抗要素(3)を有する。第1電極に取り付けられているのは、第1結合部分(47)によって第1可撓性部分(39)に結合した第1取付部分(35)を有する電気伝導性材料を含んで成る第1電気ターミナル(33)である。第1可撓性部分の少なくとも一部は第1電極に取り付けられていない。第1取付部分は第1結合部分および第1可撓性部分の少なくとも一方と面一になっている。第1取付部分はスロット(49)および中実ヒンジ部分(51)を含んでいてよい。第1ターミナルから伸張した実装部材(41)によってデバイスを基板に実装する場合、実装部材を基板に堅固に取り付けていても、第1可撓性部分により導電性ポリマーの収縮および膨張が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
技術分野
本発明は基板に表面実装するのに適する回路保護デバイス、およびそのようなデバイスのアセンブリに関する。
【0002】
発明へのイントロダクション
抵抗に関して正の温度係数(positive temperature coefficient:PTC)挙動を示す回路保護デバイスはよく知られている。このPTC挙動により、所定の温度、即ちスイッチング温度Tにて、抵抗が異常増加して低抵抗低温状態から高抵抗高温状態となる。通常の動作条件下では、電気回路内に負荷と直列に配置された回路保護デバイスは比較的低い抵抗および低い温度を有する。しかしながら、例えば回路での過度な電流やデバイス内に過度の熱を生じさせる状態などによって故障が起こると、デバイスは「トリップ」、即ち高抵抗高温状態に変わる。これにより、回路内の電流は劇的に減少して、他の部品が保護される。故障状態および電力が除去されると、デバイスはリセットされ、即ち低抵抗低温状態に復帰する。故障状態は他の理由のなかでもとりわけ、回路のショート、回路への追加の電力の付与、電力サージ、または外部熱源によるデバイスの過熱により起こり得る。
【0003】
好ましい回路保護デバイスは導電性ポリマー組成物、即ちポリマー成分およびこの成分中に分散した粒状導電性フィラーを含む組成物を含む。好ましくはポリマー成分は結晶性ポリマーを含む。トリップの間、ポリマー中の結晶子が溶融するにつれてデバイスが膨張する。最適性能のためには、ポリマーの膨張は大幅に制限されるべきでなく、さもなくばPTC異常が損なわれるということが知られている。よって、PTC要素への電極、例えば金属箔の取付は注意深く行わなければならない。デバイスをプリント配線板などの基板上に、またはこれに通して実装する場合に余計な制限が加わると、ポリマーが膨張または収縮するときのいずれかで制限(または拘束)力が生じ得る。実質的に制限されるのを回避するため、常套のラジアル・リード付きデバイス(PTC要素を挟持する金属箔電極にワイヤリードが取り付けられている)はしばしばリードの一部に「キンク」または他の非剛性部分を備える。このことは、基板に接触しているリードの端部が堅固に拘束され得るとしても、非剛性部分により膨張および収縮できることを意味する。例えば米国特許第4,685、025号(Carlomagno)を参照のこと。この特許文献の開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0004】
また、表面実装デバイス(または表面実装部品、これは基板の表面に直接取り付けられる)も制限力を受け得る。例えばデバイスがプリント配線板または基板の表面に対して並行に配置され、頂部および/または底部リード(しばしば金属「ストラップ」の形態を有する)を基板にはんだ付けまたは溶接した構成を有する場合、膨張を制限しないようにリードを配置すべきである。このことは上部リードを、あらゆる制限力を最小限にするのに十分に長くまたは柔軟にすることによって実現できる。
【発明の簡単な要旨】
【0005】
デバイスが比較的高い電圧(例えば60ボルト以上)に曝され、および基板上の占有面積(またはフットプリント)が比較的小さいことが望ましいいくつかの用途に対しては、デバイスを基板に対して垂直な状態で表面実装することが好ましい。このようなデバイスは2つの金属箔電極間に挟持されたPTC抵抗要素により構成され、そして電極はリードフレームまたはターミナルと接触し、リードフレームまたはターミナル自体は、はんだ付け可能なパッドまたはターミナルからのタブまたは「脚」から伸張した「足」の形態をしばしば有する他の要素を含む実装部材により基板に取り付けられる。リードフレームまたはターミナルがしっかりと実装される場合、PTC要素に制限力が伝わって、ポリマーの膨張および/または収縮が制限され得る。このタイプのデバイスは電気通信用途に使用されることが多い。
【0006】
本発明者らは、金属箔電極の一方または双方に取り付けられたリードフレームまたはターミナルが可撓性(またはフレキシブルな)部分を含むとき、表面実装デバイスに対して高電圧条件下での性能を改善できることを見出した。この可撓性部分(これは抵抗要素の少なくとも一部と重なる)は「脚」の長さに亘って延在することが効果的であり、これによりデバイスの膨張および収縮に応じて自由に曲がったり動いたりできる。
【0007】
従って、第1の要旨において本発明は基板に表面実装するのに適する回路保護デバイスであって、以下を含む回路保護デバイスを提供する:
(1)次の層状PTC抵抗要素
(a)導電性ポリマー組成物より構成され、
(b)第1表面積を有する第1主要面と第2表面積を有する第2主要面とを有し、および
(c)周縁部(または周囲)を有する、層状PTC抵抗要素;
(2)PTC要素の第1面に取り付けられた第1電極;
(3)PTC要素の第2面に取り付けられた第2電極;および
(4)次の第1電気ターミナル
電気伝導性材料を含んで成り、第1周縁部および第1表面積を有し、および
(a)(i)第1表面積を有する取付面を有し、および(ii)少なくとも一部は第1電極に取り付けられる第1取付部分、
(b)(i)第1取付部分と結合し、(ii)少なくとも一部は第1電極に取り付けられておらず(または該電極への取付と無関係であり)、(iii)少なくとも一部は抵抗要素の周縁部内に在り、および(iv)第1表面積を有する第1可撓性部分、および
(c)第1取付部分と第1可撓性部分とを結合する第1結合部分
を含み、第1取付部分が第1可撓性部分および第1結合部分の少なくとも一方と実質的に面一になっている、第1電気ターミナル。
【0008】
本発明のデバイスは一般的に基板に実装されてアセンブリを形成する。よって、第2の要旨において本発明は以下を含むアセンブリを提供する:
(A)以下を含む回路保護デバイス
(1)次の層状PTC抵抗要素
(a)導電性ポリマー組成物より構成され、
(b)第1表面積を有する第1主要面と第2表面積を有する第2主要面とを有し、および
(c)周縁部を有する、層状PTC抵抗要素;
(2)PTC要素の第1面に取り付けられた第1電極;
(3)PTC要素の第2面に取り付けられた第2電極;および
(4)次の第1電気ターミナル
電気伝導性材料を含んで成り、第1周縁部を有し、および
(a)(i)第1表面積を有する取付面を有し、および(ii)少なくとも一部は第1電極に取り付けられる第1取付部分、
(b)(i)第1取付部分と結合し、(ii)少なくとも一部は第1電極に取り付けられておらず(または該電極への取付と無関係であり)、(iii)少なくとも一部は抵抗要素の周縁部内に在り、また、一部は抵抗要素の周縁部を越えて伸張(または延在)し、および(iv)周縁部を越えて伸張する部分に第1実装部材を含む第1可撓性部分、および
(c)第1取付部分と第1可撓性部分とを結合する第1結合部分
を含み、第1取付部分が第1可撓性部分および第1結合部分の少なくとも一方と実質的に面一になっている、第1電気ターミナル;および
(5)次の第2電気ターミナル
電気伝導性材料を含んで成り、第2周縁部を有し、および
(a)第2表面積を有する取付面を有し、少なくとも一部は第2電極に取り付けられる第2取付部分、および
(b)抵抗要素の周縁部を越えて伸張する部分であって、周縁部を越えて伸張する部分に第2実装部材を含む部分
を含む第2電気ターミナル;ならびに
(B)第1および第2実装部材によりデバイスが実装されているプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【0009】
本発明の回路保護デバイスは、PTC挙動を示す導電性ポリマー組成物から構成される層状PTC抵抗要素を含む。導電性ポリマー組成物はポリマー成分、およびその中に分散した粒状導電性フィラーを含む。ポリマー成分は1種またはそれより多いポリマーを含み、そのうちの1種はフィラーなし(unfilled)の状態にて示差走査熱量計により測定した場合に少なくとも10%の結晶度を有する結晶性ポリマーであることが好ましい。適切な結晶性ポリマーには次のものが含まれる:1種またはそれより多いオレフィンのポリマー、特にポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン;少なくとも1種のオレフィンおよびこれと共重合可能な少なくとも1種のモノマーの共重合体、例えばエチレン/アクリル酸、エチレン/エチルアクリレート、エチレン/ビニルアセテート、およびエチレン/ブチルアクリレート共重合体;溶融成形可能なフルオロポリマー、例えばポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、ターポリマーを含む);およびそのようなポリマーの2種またはそれより多くのブレンド。いくつかの用途に対しては、特定の物理的または熱的性質、例えば柔軟性または最大曝露温度を実現するために、1種の結晶性ポリマーを別のポリマー、例えばエラストマーまたはアモルファス熱可塑性ポリマーとブレンドするのが望ましいことがあり得る。ポリマー成分は一般的に組成物の全体積の40〜90体積%、好ましくは45〜80体積%、特に50〜75体積%を占める。
【0010】
ポリマー成分中に分散する粒状導電性フィラーは任意の適切な材料であってよく、これにはカーボンブラック、グラファイト、金属、金属酸化物、導電体を被覆したガラスもしくはセラミックビーズ、粒状導電性ポリマー、またはこれらの組合せが含まれる。フィラーは粉末、ビーズ、フレーク、ファイバー、または他の任意の適切な形状の形態であってよい。必要な導電性フィラーの量は、必要とされる組成物の抵抗率および導電性フィラー自体の抵抗率に基づいて決まる。多くの組成物では、導電性フィラーは組成物の全体積の10〜60体積%、好ましくは20〜55体積%、特に25〜50体積%を占める。
【0011】
導電性ポリマー組成物には追加の成分、例えば酸化防止剤、不活性フィラー、非導電性フィラー、放射線架橋剤(しばしばプロラッドまたは架橋エンハンサ(もしくは促進剤)と呼ばれ、例えばトリアリルイソシアヌレートである)、安定化剤、分散剤、カップリング剤、酸スカベンジャ(例えばCaCO)、または他の成分が含まれ得る。これら成分は一般的に組成物全体の20%以下を占める。
【0012】
導電性ポリマー組成物は正の温度係数(PTC)挙動を示し、即ち、これは比較的狭い温度範囲において温度に対し急峻な抵抗率増加を示す。本出願において、用語「PTC」は少なくとも2.5のR14値および/または少なくとも10のR100値を有する組成物を意味するものとして用い、また組成物は少なくとも6のR30値を有すべきことが好ましい。ここで、R14とは14℃の範囲の最後と最初における抵抗率の比であり、R100とは100℃の範囲の最後と最初における抵抗率の比であり、およびR30とは30℃の範囲の最後と最初における抵抗率の比である。一般的に、本発明のデバイスに使用する組成物はその最小値よりはるかに大きな抵抗率増加を示す。
【0013】
本発明のデバイスに使用するのに適切な導電性ポリマー組成物は米国特許第4,237,441号(van Konynenburgら)、同第4,545,926号(Foutsら)、同第4,724,417号(Auら)、同第4,774,024号(Deepら)、同第4,935,156号(van Konynenburgら)、同第5,049,850号(Evansら)、同第5,250,228号(Baigrieら)、同第5,378,407号(Chandlerら)、同第5,451,919号(Chuら)、同第5,582,770号(Chuら)、同第5,701,285号(Chandlerら)、同第5,747,147号(Wartenbergら)、同第6,130,597号(Tothら)、同第6,358,438号(Isozakiら)、同第6,362,721号(Chenら)に開示されている。これら特許の各開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。特に好ましいのは、米国特許第4,724,417号(Auら)、同第4,774,024号(Deepら)、および同第5,049,850号(Evansら)に開示されるものを含む、高電圧用途を対象とする組成物である。
【0014】
導電性ポリマーは、第1および第2の平行な主要面(major surface)を有する層状PTC抵抗要素(または素子)の形態を有し、第1主要面は第1表面積を有し、および第2主要面は第2表面積を有する。この要素は第1および第2金属電極間に挟持されることが好ましく、第1電極はPTC要素の第1面に取り付けられ、また、第2電極は第2主要面に取り付けられる。好ましくは、電極は金属箔の形態を有するが、めっきまたは他の手段により適用された導電性インクまたは金属層を使用できる。特に適切な箔電極は微細な凹凸のある(microrough)金属箔電極であり、これには電着ニッケルおよびニッケル−銅箔、特に米国特許第4,689,475号(Matthiesen)、同第4,800,253号(Kleinerら)、および同第6,570,483号(Chandlerら)に開示されるようなものが含まれ、これらの各開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0015】
PTC要素は第1および第2電極間を測定した場合に概ね1〜2.5mm(0.040〜0.100インチ)の厚さを有する。これは高電圧(例えば250または600ボルト)の用途に使用するのに特に適する厚さ範囲である。また、この要素は概ね20〜50mm(0.79〜1.97インチ)の周縁部(または周囲もしくは周:periphery)を有する。この周縁部(または周囲もしくは周)は電極面に平行な面内で測定したものであり、(1)デバイス廻りの最小の外周(circumference)および(2)第1および第2電極間の中間(または中程)で測定した外周のうち、より小さい方である。周縁部の測定は、視認可能な凹部、クラックまたは含有物を含むものとすることが好ましい。
【0016】
第1電極に結合しているのは第1電気ターミナルである。第1ターミナルは電気伝導性材料、例えば真鍮、スズメッキした真鍮、ニッケル、銅またはニッケルメッキした銅から構成される。これはデバイスを基板に対して垂直な状態で実装するための手段を提供するように機能し、また、これが導電性ポリマーおよび/または電極と異なる熱的特性を有する場合は電気特性、例えば高抵抗状態にトリップするまでの時間に影響を及ぼし得る。第1ターミナルは第1周縁部および第1表面積を有し、そして、いくつかの態様ではPTC要素とほぼ同じ形状を有し、実装の際に使用するための伸張部分が付加されている。第1ターミナルは第1表面積を有する取付面を有する第1取付部分を有する。第1取付部分の少なくとも一部は第1電極に物理的および電気的に取り付けられる。加えて、第1ターミナルは第1可撓性部分を有し、第1可撓性部分は第1表面積を有し、および取付部分に結合する。可撓性部分の少なくとも一部、および好ましくは可撓性部分の全ては、第1電極への取付と無関係である(またはフリーである)。このことは、抵抗要素と重なっている、抵抗要素の周縁部を越えて伸張する手前のセクション全体に対してストラップまたはリードが、例えばはんだにより取り付けられている従来のほとんどの表面実装デバイスと対照的である。第1可撓性部分の表面積は、第1ターミナルの具体的形状によって様々ではあるが、第1ターミナルの表面積の少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、特に少なくとも20%を占める。
【0017】
第1ターミナルの第1取付部分を第1電極に取付材料、例えばはんだ、はんだペースト、導電性接着剤、導電性エポキシ、または他の適切な材料によって取り付けることができ、あるいはこれを溶接もしくはリベット接合または他の方法で取り付けてよい。第1電極の表面積は取付面の表面積より大きいことが好ましい。
【0018】
第1取付部分および第1可撓性部分は第1結合部分により互いに結合し、第1結合部分はこれら部分の間の具体的領域または抽象的(または観念的)セグメントであってよい。設置(例えば基板上への)に先立って、取付部分は結合部分とまたは可撓性部分と実質的に面一である。最も簡単なデバイスは、3つの部分の全てが実質的に面一である場合に得られる。しかしながら、結合部分は、例えばU字形などに曲がっていても、または取付部分および可撓性部分を実質的に面一としたままで取付部分の面から外れていてもよく、あるいは可撓性部分が取付部分および結合部分の面から幾分外れていてよい。
【0019】
1つの態様では、結合部分はスロット、例えば略矩形スロットと中実(または中空でないもしくは堅い:solid)部分とを含む。スロットは、取付部分を可撓性部分から分離するようにターミナルに一方の端部から切り込まれる。スロットの端部にある中実部分はヒンジ点として機能し、可撓性部分が自由に動けるようにする。別の態様では、スロットは「U」の形態であり、「U」の開口部が取付部分に面する。いずれのタイプのスロットもバリアとして機能することにより、はんだまたは他の取付材料が取付部分から可撓性部分に流れるのを防止できるという利点がある。取付部分および可撓性部分はしばしば具体的な個別のセクションとして構成され、例えば物理的な結合部分によって分離される場合である。しかしながら、上述のように、結合部分は観念的なセグメントであってよく、可撓性部分の一部として元々予定していた領域に取付材料がいくらか接触する場合、実際の可撓性部分は元々のデザインより小さくなり得る。
【0020】
いくつかの態様では、電極への直接取付により可撓性部分が拘束される可能性を最小限にするため、電極に面する可撓性部分の一部または全部が、取付を困難にする材料、即ち非取付材料を含んでよい。この非取付材料には、はんだと接合しないはんだ付け不能材料、例えばステンレス鋼、または表面の滑りやすさを増大させる塗料、例えばポリテトラフルオロエチレン塗料が含まれる。デバイスを基板に取り付けるのに一般的に使用されるはんだリフロープロセス(または他の取付方法)に支障のないように、実装パッドにはそのような取付を最小限にするセクションおよび非取付材料が存在しないことが重要である。
【0021】
可撓性部分が抵抗要素の周縁部を越えて伸張すること、および、周縁部を越えて伸張する部分が基板に取り付けできる実装部材を含むことが好ましい。
【0022】
また、デバイスは第2電気ターミナルを含むことが好ましく、第2電気ターミナルは第1電気ターミナルと形状および組成の点で同じであっても、異なっていてもよい。基板への設置を容易にするため、第1および第2ターミナルは同様であること、即ち、双方が取付部分および可撓性部分を有することが好ましいであろう。しかしながら、用途および実装方法に応じて、可撓性部分を有する1つのターミナルと可撓性部分を有しないターミナルとを使用することにより、ポリマーの膨張および収縮に対する制限に抗する適切な保護を提供し得る。形状に拘わらず、第2電気ターミナルも電気伝導性材料から構成され、これは第2周縁部を有し、およびこれは第2取付部分を含む。上記第2取付部分は第2表面積を有する取付面を有し、および第2取付部分の少なくとも一部は第2電極に取り付けられる。第2ターミナルは第2可撓性部分を更に含んでいてよく、第2可撓性部分は第2表面積を有し、第2結合部分によって第2取付部分に結合し、および第2電極への取付と無関係である。第2可撓性部分の少なくとも一部は抵抗要素の周縁部内にある。第2ターミナルが第2可撓性部分を有するかどうかに拘わらず、抵抗要素の周縁部を越えて伸張し、および実装部材を含む部分を第2ターミナルもまた通常有する。第1および第2電気ターミナルの双方が可撓性部分を含む場合、可撓性部分の形状は同じであっても、異なっていてもよい。
【0023】
いくつかの態様では、PTC要素の周縁部の少なくとも一部に適合する(または沿う:conform)絶縁層が存在し得る。好ましくは、絶縁層はPTC要素の周縁部の厚さの少なくとも10%、とりわけ該厚さの少なくとも30%、特に該厚さの少なくとも50%、より特に該厚さの少なくとも70%に適合する。いくつかの態様では、第1絶縁層がPTC要素の周縁部の厚さの実質的に全部に適合することが好ましく、ここで「実質的に全部」とは少なくとも90%が第1絶縁層によって覆われることを意味する。いくつかの態様では、第1絶縁層は第1および第2電極との接触と実質的に無関係であり、好ましくは第1および第2電極との接触と全く無関係であり、ここで「実質的に無関係」とは第1および第2電極の全表面積のせいぜい10%しか第1絶縁層に覆われていないことを意味する。絶縁層は任意の適合可能な(conformable)コーティング材料を含み得るが、好ましくはポリマーである。適切な材料には、ポリエチレン、エチレンコポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、シリコーン、エラストマー、ゴム、ホットメルト接着剤、マスチック(mastic)、およびゲルが含まれる。この層がPTC要素の導電性ポリマー組成物に適合し、および付着すること、ならびにその適合および付着を動作中に導電性ポリマーが膨張する間に亘って維持することが重要である。第1絶縁層は任意の適切な技術によって適用でき、例えばこれを塗り、もしくは噴霧し、または圧力もしくは融解により適用(または塗布)し、またはディップコーティングにより適用できる。いくつかの態様では、基板への取付が依然として可能であるのに十分なターミナルの面積が覆われずに残っている限り、デバイス全体(PTC要素の周縁部および1つまたは双方のターミナルの大部分または全部を含む)を絶縁層で覆うことができる。
【0024】
露出した導電性ポリマー組成物と接触する絶縁層に加えて、またはこれに代えて、回路保護デバイスは環境的および電気的保護を提供するために外部絶縁、例えばボックスまたは他の筐体を含んでいてもよい。
【0025】
また、本発明は本発明の回路保護デバイスが基板、例えばプリント配線板に実装されているアセンブリを含む。いくつかの用途については、2つの回路保護デバイスを、基板に実装する前に、1つのパッケージに一緒にパッケージングすることが特に好ましい。これらのデバイスは同じであっても、異なっていてもよく、また、しばしば通信用途において使用され、この場合、一方のデバイスはチップを、他方のデバイスは回路の輪(ring)を保護するために使用される。
【0026】
本発明を図面により説明する。図1は従来の回路保護デバイス1の斜視図を示し、そして図2a〜2cはデバイス1を分解図にて示す。PTC要素3は第1および第2金属箔電極5、7の間に挟持されてチップを形成している。第1電気ターミナル9がはんだペースト(図示せず)により第1電極5に取り付けられ、また、第2電気ターミナル11がはんだペーストにより第2電極7に、第2ターミナル11の表面積の大部分に亘る領域29にて取り付けられる。第1ターミナル9は基板19、例えばプリント配線板に第1実装部材13を用いて取り付けられ、第1実装部材13はチップの周縁部から伸張した第1伸張部15およびリフローはんだ付けまたは他の方法で基板19に取付可能な第1実装パッド17を含む。第2ターミナル11は第2実装部材23を有し、これは第2伸張部25および第2実装パッド27を含む。
【0027】
本発明の実施態様を図3および図4a〜4cに示し、これらは回路保護デバイス31の斜視図および分解斜視図である。図4bに示すようなPTCチップが、第1取付面37を有する第1取付部分35と、結合部分47により第1取付部分35から概念上分離される第1可撓性部分39とを含む第1電気ターミナル33(図4a)に取り付けられる。第1可撓性部分39の端部から伸張するのは、第1伸張部43および第1実装パッド45を含む第1実装部材41である。第2ターミナル53(図4c)(本実施態様において第1ターミナル33と同様である)は、第2取付部分55および第2取付面(図示せず)を介して第2電極7に取り付けられる。第2可撓性部分59はその端部から伸張する第2実装部材61を有し、第2実装部材61は第2伸張部63および第2実装パッド65を含む。
【0028】
図5および図6a〜6c、ならびに図8a〜8cは、回路保護デバイス31の2つの更なる実施態様の斜視図および分解斜視図を示す。図7はアセンブリ73を形成するように基板19に実装された図8a〜8cのデバイス31の斜視図である。図6aおよび6cにおいて、第1結合部分47は第1スロット49および第1中実ヒンジ部分51を含み、他方、第2結合部分67は第2スロット69および第2中実ヒンジ部分71を含む。図7の実施態様において、結合部分はU字形スロットを含む。
【0029】
本実施態様を以下の例により説明し、このうち例1は比較例である。
【0030】
例1(比較)
37.1重量%高密度ポリエチレン(ペトロセン(Petrothene)(商標)LB832、エクイスター(Equistar)社から入手可能)、38重量%カーボンブラック(レイブン(Raven)(商標)430、コロンビアンケミカルズ(Columbian Chemicals)社から入手可能)、および24.9重量%水酸化マグネシウム(キスマ(Kisuma)(商標)5A、キスマ(Kisuma)社から入手可能)を混合してペレットを形成することにより、導電性ポリマー組成物を調製した。この組成物を押出して2.0mm(0.080インチ)厚さのシートとし、これを0.0025cm(0.001インチ)厚さの電着ニッケル/銅箔(フクダ(Fukuda)社から入手可能)の2枚のシートの間に重ねた。このプラック(plaque:シートまたは原板)から8.3×13.5mm(0.328×0.533インチ)の寸法を有するチップを切り出した。チップを熱処理し、および合計100Mradまで電子ビームで照射した。曝露した導電性ポリマーは、次にチップの端部をポリエステルによりコートした。約8.4×13.6mm(0.330×0.535インチ)の略矩形で、実装用の伸張タブを有する、押してスズメッキされた真鍮ターミナル(図2a〜2cに示すようなもの)を各デバイスに対して箔電極に、60:40のスズ/鉛はんだペーストを用いて取り付けた。得られたデバイスは約3.5オームの平均抵抗を有していた。
【0031】
その後、99個のデバイスを、ベルコア/テルコーディア(Bellcore/Telcordia)GR1089−CORE試験と同様に、次のようにして電源混触試験にて試験した。デバイスをスイッチ、600ボルト60HzのAC電源、1.6Aの線シミュレータヒューズ、および短絡状態にて60Aを与える固定抵抗(約10オーム)と直列にして回路に挿入した。この試験は、スイッチを閉にし、これによりデバイスをトリップさせ、そしてスイッチを5秒間閉じたまま維持することにより行った。その後、スイッチを開にし、デバイスを125秒間冷ました。線シミュレータヒューズがオープンにならず(または切れず)、デバイスが引き続き動作可能である場合、そのデバイスは試験をパスしたものと見なした。89%のデバイスが試験に耐え抜いた(または合格した)。
【0032】
例2
金属箔電極に取り付けるターミナルを図6a〜6cに示す形状を有するものとしたこと以外は、例1に従ってデバイスを作製し、試験した。ターミナルに切り込んだスロットは約1.0×5.54mm(0.040×0.218インチ)の寸法を有するものとし、ターミナルの端部から約3.0mm(0.118インチ)の位置に設けた。得られたデバイスは実装部材の近傍に可撓性部分を有していた。デバイスは約3.5オームの平均抵抗を有していた。試験の結果、これらデバイスの97%が試験に耐え抜き、従来のデバイスより極めて優れた性能を示した。
【0033】
上述の装置のアレンジメントは本発明の原理の適用の単なる例示に過ぎず、特許請求の範囲に規定するような本発明の概念および範囲から逸脱することなく多くの他の態様および改変が成され得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は従来の回路保護デバイスの斜視図を示す。
【図2a】図2aは図1のデバイスを分解斜視図にて示す。
【図2b】図2bは図1のデバイスを分解斜視図にて示す。
【図2c】図2cは図1のデバイスを分解斜視図にて示す。
【図3】図3は本発明の回路保護デバイスの斜視図を示す。
【図4a】図4aは本発明の回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図4b】図4bは本発明の回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図4c】図4cは本発明の回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図5】図5は本発明のもう1つの回路保護デバイスの斜視図を示す。
【図6a】図6aは本発明のもう1つの回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図6b】図6bは本発明のもう1つの回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図6c】図6cは本発明のもう1つの回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図7】図7は本発明のアセンブリの斜視図を示す。
【図8a】図8aは本発明の更なる回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図8b】図8bは本発明の更なる回路保護デバイスの分解斜視図を示す。
【図8c】図8cは本発明の更なる回路保護デバイスの分解斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に表面実装するのに適する回路保護デバイスであって、以下を含む回路保護デバイス:
(1)次の層状PTC抵抗要素
(a)導電性ポリマー組成物より構成され、
(b)第1表面積を有する第1主要面と第2表面積を有する第2主要面とを有し、および
(c)周縁部を有する、層状PTC抵抗要素;
(2)PTC要素の第1面に取り付けられた第1電極;
(3)PTC要素の第2面に取り付けられた第2電極;および
(4)次の第1電気ターミナル
電気伝導性材料を含んで成り、第1周縁部および第1表面積を有し、および
(a)(i)第1表面積を有する取付面を有し、および(ii)少なくとも一部は第1電極に取り付けられる第1取付部分、
(b)(i)第1取付部分と結合し、(ii)少なくとも一部は第1電極に取り付けられておらず、(iii)少なくとも一部は抵抗要素の周縁部内に在り、および(iv)第1表面積を有する第1可撓性部分、および
(c)第1取付部分と第1可撓性部分とを結合する第1結合部分
を含み、第1取付部分が第1可撓性部分および第1結合部分の少なくとも一方と実質的に面一になっている、第1電気ターミナル。
【請求項2】
第1可撓性部分の表面積が第1ターミナルの表面積の少なくとも10%を占める、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
結合部分がスロットおよび中実部分を有し、好ましくはスロットが略矩形形状またはU字形状を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
第1取付部分の第1電極への取付が取付材料によっており、好ましくは取付材料がはんだ、はんだペースト、導電性接着剤、または導電性エポキシを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
第1取付部分の第1電極への取付が溶接による、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
第1電極の表面積が取付面の表面積より大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
可撓性部分が抵抗要素の周縁部を越えて伸張し、好ましくは可撓性部分は周縁部を越えて伸張する部分に第1実装部材を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
可撓性部分が非取付材料を含んで成る、電極に面するセクションを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
(5)次の第2電気ターミナル
電気伝導性材料を含んで成り、第2周縁部を有し、および第2取付部分を含み、該第2取付部分が(i)第2表面積を有する取付面を有し、および(ii)少なくとも一部は第2電極に取り付けられる、第2電気ターミナル
を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
第2ターミナルが第2可撓性部分を更に含み、第2可撓性部分が(i)第2取付部分と結合し、(ii)少なくとも一部は第2電極に取り付けられておらず、(iii)少なくとも一部は抵抗要素の周縁部内に在り、および(iv)第2表面積を有する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
第1および第2ターミナルが同様の形状を有する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
第1ターミナルの第1周縁部は抵抗要素の周縁部より大きい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
以下を含むアセンブリ:
(A)請求項1に記載の回路保護デバイスであって、第1電気ターミナルの第1可撓性部分が(i)抵抗要素の周縁部を越えて伸張する部分を有し、および(ii)周縁部を越えて伸張する部分に第1実装部材を含み、および
(5)次の第2電気ターミナル
電気伝導性材料を含んで成り、第2周縁部を有し、および
(a)第2表面積を有する取付面を有し、少なくとも一部は第2電極に取り付けられる第2取付部分、および
(b)抵抗要素の周縁部を越えて伸張する部分であって、周縁部を越えて伸張する部分に第2実装部材を含む部分
を含む第2電気ターミナル
を更に含む回路保護デバイス;および
(B)第1および第2実装部材によりデバイスが実装されているプリント配線板。
【請求項14】
第2ターミナルが第2可撓性部分を更に含み、第2可撓性部分が(i)第2結合部分により第2取付部分と結合し、(ii)少なくとも一部は第2電極に取り付けられておらず、および(iii)抵抗要素の周縁部を越えて伸張する部分であって、第2実装部材を含む部分を含む、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
アセンブリが2つの回路保護デバイスを含む、請求項13に記載のアセンブリ。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図3】
image rotate

image rotate

【図5】
image rotate

image rotate

【図7】
image rotate

image rotate


【公表番号】特表2006−525680(P2006−525680A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513433(P2006−513433)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/013226
【国際公開番号】WO2004/100186
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(399132320)タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション (234)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
【Fターム(参考)】