説明

回路基板、半導体装置、電子タグの製造方法

【課題】
本発明の課題とするところは電子タグ等の回路基板の製造方法において、回路基板が備える配線回路のパターンの形成に当たり、高精度、短時間、低環境負荷かつ経済的な回路基板の製造方法を提供することである。
【解決手段】
本発明者らの検討によると、導電体上に所望の配線回路に対応するレジストパターン2を形成し、この導電体上のレジストパターン2の開口部に、電解めっきにより金属材料をめっきし、このめっきした部分をベース基材4に転写し配線回路とすることにより、回路基板を製造できることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配線回路を有する回路基板の製造方法、及びこの回路基板に半導体チップを搭載した半導体装置に関する。本発明の半導体装置として、例えば電子タグを挙げることができる。本発明は、商品の分類や物流に用いられるRFID等の電子タグに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、物流管理や商品管理の効率化が進み、今までバーコードなどで行っていた管理をRFIDとよばれる回路基板と半導体チップからなる電子タグにより行われている。電子タグは情報の伝達方式により大別すると接触方式と非接触方式に分けられる。接触方式では電子タグの外部端子と外部処理装置の端子を当接して情報の送受信を行う。非接触方式では、コイル状のアンテナを介して情報の送受信を行う。特に近年、無線式の非接触電子タグを用いて管理する方法が盛んに行われるようになってきた。非接触方式では半導体チップの駆動電力を電磁誘導によりまかなう方法が開発されている。
【0003】
非接触方式の電子タグは一般的にベース基材上に、配線回路と、半導体チップを備えた構造のものが開発されている。配線回路はアンテナとして機能する。配線回路は、金属線をコイル状に巻いたものをベース基材上に取り付ける方法が知られている。しかし、この方法は機械的精度に頼る部分が大きく、高精度のアンテナを求められる電子タグの製造には不向きである。また、ベース基材上に金属箔を貼り付け、この金属箔をエッチングによってパターニングしたりして形成していた(特許文献1、2)。ベース基材上に金属ペーストの印刷によって電子タグの配線回路を形成している方法も開発されている。
【0004】
また、半導体チップをベース基材上に実装することによる製造工程の複雑化、製造コストの増加を回避するため、半導体チップ上に直接配線回路を形成するコイルオンチップモジュール構造の電子タグが知られている(特許文献1、3)。
【0005】
ところで、一般的に電子タグは使い捨てが前提となり、製造コストの削減が望まれている状況である。しかし、前述した金属ペーストによる印刷法は、金属ペーストの値段が高く、印刷時に無駄になるインクの量が多いことから製造コスト削減が求められる電子タグの製造には向かない。
また、前記特許文献に記載の金属箔をエッチングにより形成する方法では、めっきの前や後に数種の工程が必要であり、それがいわゆる乾式(溶液を使わない)工程と湿式(溶液を使う)工程とタイプの異なる工程である。一般的にタイプの異なる工程は連続で処理にできないため、この方法による電子タグの製造は生産時間をかかりコスト高となった。
特にコイルオンチップモジュール構造の電子タグの場合、半導体チップに湿式工程を適用することになるため、精度、処理性がさらに悪化する。
また、前記特許文献のようなアンテナの製造においては、電子タグを製造する工程の度にフォトリソグラフィ法によりベース基材上に直接回路基板のパターンを形成して、その部分にめっきを付与しているが、この方法ではベース基材上にパターンを形成する度にフォトリソグラフィ法を適用する必要があるため、フォトレジスト、現像液など大量に無駄となり、工程的にも時間がかかる問題があった。
【特許文献1】特開2002−92566号公報
【特許文献2】特開2005−71144号公報
【特許文献3】特開2000−137779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは電子タグ等の回路基板及びこれを用いた半導体装置の製造において、回路基板が備える配線回路のパターンの形成に当たり、高精度、短時間、低環境負荷かつ経済的な回路基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ところで、本発明者らの検討によると、導電体上に所望の配線回路に対応するレジストパターンを形成し、この導電体上のレジストパターンの開口部に、電解めっきにより金属材料をめっきし、このめっきした部分をベース基材に転写し配線回路とすることにより、回路基板を製造できることを見出した。本発明の回路基板の製造方法は、このような知見に基づいて成されたもので、ベース基材上に設けられた配線回路を含む回路基板の製造方法において、
(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程と、
(b)前記導電板のレジストパターンの開口部分に、金属材料をめっきして金属層を形成する工程と、
(c)ベース基材と、前記導電板の前記金属層とを接着層を介して貼り合わせる工程と、
(d)前記金属層を、ベース基材上に転写し配線回路とする工程と、を含むものである。
また、上記において、前記(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、
(a−1)導電板上に感光性樹脂を塗布する工程と、
(a−2)導電板の塗布面を露光して所定のパターンを形成する工程と、
(a−3)現像する工程と、を含むことを特徴とする回路基板の製造方法である。
また、上記において、前記(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、
(a−4)導電板上にレジストパターンを印刷により形成する工程と、
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法である。
そして、上記において、前記(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、
(a−5)導電板上に樹脂材料を塗布後、所定のパターンに機械的に削る工程と、
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法である。
また、上記において、(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UV−YAGレーザーのいずれかを用いて加工したことを特徴とする回路基板の製造方法である。
また、上記において、前記(a−2)導電板の塗布面を露光して所定のパターンを形成する工程が、マスクを通して、UV光を照射したことを特徴とする請求項2に記載の回路基板の製造方法である。
また、上記において、前記(c)ベース基材上と前記導電板の前記金属層とを貼り合わせる工程が、前記ベース基材上と前記金属層との間に接着層を介して行われることを特徴とする回路基板の製造方法である。
また、上記に於いて、前記(c)ベース基材上と前記導電板の前記金属層とを貼り合わせる工程が、前記金属層に磁力を加えて行われることを特徴とする回路基板の製造方法である。
また、さらに上記磁力を加えて金属層とベース基材を貼り合わせる場合において、前記金属材料に常磁性体金属を用いることを特徴とする回路基板の製造方法である。
そして、上記において挙げた回路基板の製造方法に加えて、(e)回路基板上に半導体チップを貼付する工程を含むことを特徴とする電子タグの製造方法である。
そしてまた、前記配線回路をアンテナとし、上記において挙げた回路基板の製造方法に加えて、(e)回路基板上に半導体チップを貼付する工程を含むことを特徴とする電子タグの製造方法である。
そして、上記に挙げた回路基板の製造方法において、前記配線回路をアンテナとし、
前記ベース基材として半導体チップを用い、この半導体チップと前記配線回路を電気的に接続することを特徴とする回路基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配線回路のパターンを形成するために行うフォトリソグラフィの回数を低減することができた。このため、フォトリソグラフィ工程により発生するフォトレジスト、現像液などの資源を節約することができ、同時に回路基板の生産時間を短くすることができた。
回路基板が備える配線回路のパターンの形成に当たり、高精度、短時間、低環境負荷かつ経済的な回路基板の製造方法を提供することできた。
また、チップオンモジュール構造の電子タグの製造においては、フォトリソグラフィ法によりパターンを形成し、処理性及び精度が高い電子タグを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に示す形態は本発明の一例であり、電子タグ以外の一般的な回路基板及び半導体装置等に適用できる。
<回路基板の実施形態>
本発明の実施形態の第1の例を、図1を用いて説明する。図1(e)には本発明の回路基板を使用して作成した電子タグの一例について、その断面図を示している。ベース基材4の片面に接着層5を設け、この接着層5の上に配線回路8及び半導体チップ10が設けられている。半導体チップ10及び配線回路8は、電極11で電気的に接続されている。電子タグは、配線回路8、半導体チップ10及び電極11を保護するように接着層13と最上部にカバー基材12が封止されている。図1(e)に示す電子タグを、ベース基材上の接着剤5を介して対象物に貼付することができる(図3)。
以下、第1の例で示した電子タグの製造方法の実施形態について図1を用いて説明する。
まず、図1(a)に示すように、導電板1の片面にレジストパターン2を形成する。この工程は導電板1にレジスト材料を塗布した後、フォトリソグラフィ法、レーザー加工法、印刷法、ルーター加工、その他機械的なエッチングによってパターニングするか、導電板1に直接レジストパターン2を印刷して形成する。
レジストパターン2をフォトリソグラフィ法で形成する場合は、導電板1上に感光性樹脂を塗布する工程、マスク等を介して塗布面を露光し所定のパターンを得る工程、パターンを現像する工程、熱硬化する工程を必要に応じて行なう。レジストパターン2を印刷法によって形成する場合は、導電板1上に凸版印刷機、凹版印刷機、平版印刷機、スクリーン印刷機、反転印刷機、その他公知印刷機等を用いることができる。レジストパターン2をルーター加工により形成する場合、導電板1上に樹脂材料を塗布した後、所定のパターンを機械的に削ることによりレジストパターン2を形成する。
続いて、(b)前記導電板1のレジストパターン2の開口部分に、金属材料をめっきして金属層3とする。めっき膜厚は、前記感光性樹脂の膜厚と同程度又はそれ以上とすることが好ましい。これにより、後工程においてベース基材上へ転写する場合の効率が向上する。めっきは電解めっき、無電解めっきを用いることができる。
続いて、(c)ベース基材4上と、前記導電板1の前記金属層3とを接着層5を介して貼り合わせる。接着層5はあらかじめベース基材4側又は導電板1側に形成しておくことが好ましい。貼り合わせはベース基材4と金属層3を圧着して行うことができる。
続いて、(d)前記金属層3を、ベース基材4上に転写し配線回路とする。ここでは、図1(d)に示すように、導電板1及びこれに付帯するレジストパターン2を、ベース基材4から引き離し金属層3をベース基材4側に転写する。
転写効率を最適化するため、ベース基材4の両面のうち、導電板1と向き合う面と反対側の面位置に磁石を配置することで、金属層3がベース基材4側に引き寄せられる引力が働き転写を補助することができる。この際金属層3を形成する金属材料は常磁性体であることが好ましい。以上より、半導体チップが未搭載の回路基板が得られる。
さらに(e)半導体チップ10を貼付し、接着層13及びカバー基材6で封止すると、第1の例で示した電子タグを得られる。
【0010】
本発明の実施形態の第2の例を、図2を用いて説明する。図2(f)には本発明の回路基板に半導体チップを搭載した電子タグの一例について、その断面図を示している。図2(d)まで第1の例と同様に回路基板を作成する。半導体チップを搭載し、接着層7とカバー基材6で封止した電子タグを得た。この電子タグは強度及び対候性が向上している。
【0011】
本発明の実施形態の第3の例を、図4を用いて説明する。図4には本発明の回路基板を使用して作成した電子タグの一例について、その平面図及び断面図を示している。電子タグには、ベース基材4の片面に接着層5を設け、この接着層5の上に配線回路8及び半導体チップ10が設けられている。半導体チップ10及び配線回路8は電極11で電気的に接続されている。電子タグには、配線回路8及び半導体チップ10及び電極11を保護するように接着層7が形成され、最上部にカバー基材6が設けられている。図4(平面図)に示すように配線回路はアンテナとして機能する。アンテナの形状は任意に選択することができる。また、図4(断面図)に示すように、電子タグは、配線回路8の両端部は半導体チップ10と電極11に示すワイヤボンディングにて接続している。
【0012】
本発明の実施形態の第4の例を説明する。本例では、配線回路をベース基材上に形成する代わりに半導体チップ上10上に設けチップオンモジュール構造とする。チップオンモジュール構造の電子タグを製造する場合、ベース基材4の代わりに半導体チップ10に金属層3を転写することができる。すなわち、
(a)導電板1上にレジストパターン2を形成する工程、
(b)前記導電板1のレジストパターン2の開口部分に、金属材料をめっきして金属層3を形成する工程、
及びさらに、
(f)半導体チップ10と、前記導電板1の前記金属層3とを接着層5を介して貼り合わせる工程、
(g)前記金属層3を、半導体チップ10上に転写し配線回路とする工程、
を順次行うことによりチップオンモジュール構造の半導体装置とすることができる。
【0013】
以下、本発明の実施形態について機能、素材の一例について詳述する。
<導電板>
本発明の導電板1は、ベース基材4に転写される配線回路が形成される媒体である。本発明の導電板1の材質として、電解めっきにより金属層3を形成できるものを用いることができる。例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム,ニッケルなどが使用できる。また、これらを板状にしたものの表面に金属をスパッタ,蒸着,めっきなどによってコーティングしたものを使用することができる。但し、導電板1の表面は、めっきにより形成した金属層3に対して不活性である必要がある。導電板1と金属層3が密着すると、金属層3がベース基材4に転写できなくなるためである。このため、導電板1の材質や表面状態を選択し、表面をなるべく平滑にすることが好ましい。例えば、金属板として、ステンレスを鏡面研摩したものが好適である。
【0014】
<レジストパターン>
本発明のレジストパターン2は、導電板1上に形成され配線回路のパターンを形成するために用いられるものであり、例えば、レジスト材料をフォトリソグラフィ法、レーザー加工法、印刷法、ルーター加工、その他機械的なエッチングによってパターニングすることで形成される。
このレジスト材料には、電解めっきによる金属材料の析出を防止するため、絶縁体を用いることが望ましい。例えば、フッ素樹脂組成物、アクリル樹脂組成物、ポリエチレン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ウレタン樹脂組成物、その他のドライフィルム、ポリマーシート、インキなどの有機物のほか、金属酸化物粉等の無機物も使用できる。特にポフッ素樹脂などの接着層5との密着が取りにくい材料を使用すると工程上の作業が行いやすい。
レジストパターン2の形成方法は、めっきレジストの種類やパターンの緻密さによって選択する。レジストパターン2の形成を、レーザー加工により行う場合は、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UV−YAGレーザーにより行うことができる。
レジストパターン2の形成をフォト法で行う場合は、微細な高精彩パターン(目安としてパターンピッチ<200μm)の形成に適している。一般的なパターン(目安のパターンピッチ>200μm)では、スクリーン印刷などの方法でのパターン形成を行うとコスト削減ができる。
導電板1上に形成するレジストパターン2は、ベース基材4に設ける所定の配線回路パターンと対応するように形成する。この際、導電板1に設けるレジストパターン2を1つの回路基板の配線回路パターンだけでなく、多面付けして生産性を向上させることが好ましい。
【0015】
<金属層>
本発明の金属層3は、ベース基材4に転写された後は配線回路となるものである。金属層3は、導電板1のうちレジストパターン2の開口部領域に金属材料をめっきすることにより形成される。金属層3の形成には電解めっきを好適に用いることができるが、無電解めっきを用いることもできる。回路基板を電子タグのアンテナとして用いる場合は、金属層3の電気伝導度及び膜厚は、配線回路の設計段階で考慮される。金属層3の膜厚は、レジストパターン2と同程度又はこれよりもやや大きくすると後工程で転写をする場合に効率がよい。
金属層3の表面を粗面化処理して、次の転写工程で金属層3が接着層5に転写されやすいように処理しておくことが好ましい。
上記金属材料としては、銅、ニッケル、鉄、クロム、マンガン、チタン、コバルト、亜鉛、スズ、鉛、その他貴金属およびこれらの合金が適当である。また、ニッケル,鉄など常磁性材料を用いると、金属層3をベース基材4に転写する際に磁力で補助することができる。なお、金属層3がベース基材4に転写された後は、金属層3は回路として機能するので便宜的に「配線回路」としている。
【0016】
<ベース基材>
本発明のベース基材4は配線回路の支持体となるものである。ベース基材4の材質は特に制限されないが、用途により材質や性状は選択される。例えば、樹脂シート、汎用ポリマーシート、コート紙、金属板、その他の材料を用いることができる。
ベース基材4として、樹脂シートを用いた場合、樹脂シートを半硬化の状態のまま金属層3をベース基材4に転写し、その後、硬化させる。ベース基材4として、コート紙や汎用ポリマーシートなどを使用する場合は、接着剤を予め貼り合わせ接着層5としてから、金属層3を転写する。また、半導体チップをベース基材として、これに直接配線回路を形成しチップオンモジュール構造とすると、工程の簡略化・コスト削減することができる。
【0017】
<接着層>
本発明の接着層5は金属層3をベース基材4に貼り合わせるものである。接着剤は、ベース基材4上に塗布、形成しておくことが望ましい。また、接着剤は金属層3側に形成することも可能である。ベース基材4に、樹脂シートなど予め接着能を有する材料を用いた場合、接着層5を別に設ける必要はない。接着剤の材料は特に制限されることはなく、公知の材料を用いることができる。例えば一般的なソルダーレジストを用いることができる。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
以下、本発明の電子タグ(電子タグ)の製造方法の実施例について図1、図3を用いて詳細に説明する。
300mm×400mm×1mmのステンレス板の表面を#2400のアルミナ研磨材を用いてバフ研摩を行い鏡面とし、さらに、薄いエッチング液(塩化第2鉄溶液3重量%)に浸漬して表面の加工層を除去し、希塩酸洗浄、水洗した。このステンレス板を導電板1とし、導電板1上に10μm厚の感光性ドライフィルム(日立化成 フォテックH−650)をラミネートした。さらに、フォトマスクを通してUV光を露光後、1%炭酸ナトリウム溶液で現像してレジストパターン2を形成した(図1(a)参照)。
レジストパターン2は、厚さ8μm×幅2mmの線からなり、外径が50mmであり線間0.5mmのギャップを有するコイル形状である。導電板1には複数のコイルパターンを多面付けにした。本実施例では導電板の一面に100のコイルパターンを設けた。
めっきの前処理として、レジストパターン2が形成された導電板1に酸性脱脂、希硫酸浸漬を行った。続いて、導電板1の裏面を絶縁テープで覆い、端部から電気接点を採って、導電板1のうちレジストパターン2の露出部分に下記電解めっき液を用いて、電流密度10A/dmで約5分間電解銅めっきを行った。液温は50℃とした。電解銅めっきにより、導電板1上に金属層3が12μmの厚みで形成された(図1(b)参照)。めっき後、導電板1を水洗、温風乾燥した。
<電解めっき液>
・硫酸銅5水塩 200g/L
・硫酸 100g/L
・塩酸 50mg/L
・ゼラチン 500mg/L
続いて、導電板1上に形成された金属層3を、過硫酸アンモニウム溶液 100g/Lに室温で30秒浸漬し、金属層3表面を粗面化処理した。その後、水洗、乾燥を行った。ベース基材4として、500μm厚のコート紙を用いた。このコート紙上に粘着層5を形成し、導電板1の金属層3に貼り合わせ、ゴムロールによるラミネーターを使用し、室温で0.2MPaの圧力で圧着を行った(図1(c)参照)。
コート紙と導電板1を引き剥がすと、金属層3が粘着層5に転写された(図1(d)参照)。これにより、ベース基材4上の粘着層5に配線回路が形成された。
ベース基材4上の配線回路に位置を合わせ、半導体チップ10を貼付した。その後、電極11をカバー基材6ならびに接着層513からなる半導体キャリアを貼り合せた(図2(e)(f)参照)。電極11と配線回路が確実に接触するように位置合わせする必要がある。以上の工程で、本発明の電子タグを形成することができた。そして、図1(e)の状態の電子タグの接着層55の未接着部分を用いて、図3のように、プラスチック製の対象物20に電子タグを貼付けることができた。
本発明によると、図1(a)の導電板1及びレジストパターン2を、繰り返し使用することが可能なので、無駄とする材料が少なく高精度の回路基板を有する電子タグを作製することができた。
【0019】
(実施例2)
導電板1上に0.05mm厚でウレタン樹脂のコートを塗布し、このウレタン樹脂をUV−YAGレーザー加工機を用いてレジストパターン2を形成した以外は実施例1と同様に電子タグを作製した。この方法によると、実施例1と同様に高精度の回路基板を有する電子タグを効率よく作製することができた。
【0020】
(実施例3)
導電板1上に、熱乾燥型のめっきレジストインキ(太陽インキM−85K)をスクリーン印刷して、レジストパターン2を形成した以外は実施例1と同様に電子タグを作製した。この方法によると、実施例1と同様に高精度の回路基板を有する電子タグを効率よく作製することができた。
【0021】
(実施例4)
導電板1上に10μm厚でフッ化樹脂コートを行った。このフッ化樹脂を300μmφのビットを使用したルーター加工によってアンテナとなる金属層3を形成する部分を削り取り、レジストパターン2を形成した以外は実施例1と同様に電子タグを作製した。この方法によると、実施例1と同様に高精度の回路基板を有する電子タグを効率よく作製することができた。
【0022】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で電子タグを製造した後、接着層57を介してカバー素材6を貼り合わせ、表面を保護した電子タグを作製した。この方法によると、実施例1と同様に高精度の回路基板を有する電子タグを効率よく作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の電子タグの製造方法を示す模式図
【図2】本発明の電子タグの製造方法を示す模式図
【図3】本発明の電子タグを対象物に貼付した状態を示す模式図
【図4】本発明の電子タグの一例を示す模式図
【符号の説明】
【0024】
1・・・・・・・・・・ 導電板
2・・・・・・・・・・ レジストパターン
3・・・・・・・・・・ 金属層
4・・・・・・・・・・ ベース基材
5・・・・・・・・・・ 接着層
6・・・・・・・・・・ カバー基材
7・・・・・・・・・・ 接着層
8・・・・・・・・・・ 配線回路
10・・・・・・・・・ 半導体チップ
11・・・・・・・・・ 電極
12・・・・・・・・・ カバー基材
13・・・・・・・・・ 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材上に設けられた配線回路を含む回路基板の製造方法において、
(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程と、
(b)前記導電板のレジストパターンの開口部分に、金属材料をめっきして金属層を形成する工程と、
(c)ベース基材と、前記導電板の前記金属層とを接着層を介して貼り合わせる工程と、
(d)前記金属層を、ベース基材上に転写し配線回路とする工程と、を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、
(a−1)導電板上に感光性樹脂を塗布する工程と、
(a−2)導電板の塗布面を露光して所定のパターンを形成する工程と、
(a−3)現像する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、
(a−4)導電板上にレジストパターンを印刷により形成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、
(a−5)導電板上に樹脂材料を塗布後、所定のパターンに機械的に削る工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記(c)ベース基材上と前記導電板の前記金属層とを貼り合わせる工程が、
前記ベース基材上と前記金属層との間に接着層を介して行われることを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記(c)ベース基材上と前記導電板の前記金属層とを貼り合わせる工程が、
前記金属層に磁力を加えて行われることを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記金属材料に常磁性体金属を用いることを特徴とする請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記(a)導電板上にレジストパターンを形成する工程が、導電板上に樹脂層を形成し、これにエキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UV−YAGレーザーのいずれかを用いて加工したことを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記(a−2)導電板の塗布面を露光して所定のパターンを形成する工程が、マスクを通して、UV光を照射したことを特徴とする請求項2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の回路基板の製造方法に加えて、
(e)回路基板上に半導体チップを貼付する工程を含むことを特徴とする電子タグの製造方法。
【請求項11】
前記配線回路をアンテナとし、
さらに請求項1〜9のいずれかに記載の回路基板の製造方法に加えて、
(e)回路基板上に半導体チップを貼付する工程を含むことを特徴とする電子タグの製造方法。
【請求項12】
前記配線回路をアンテナとし、
前記ベース基材として半導体チップを用い、この半導体チップと前記配線回路を電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−122572(P2007−122572A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316390(P2005−316390)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.コイル オン チップ
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】