説明

回路基板に電気素子を取り付ける方法及びその装置

【目的】回路基板上の電気部品の装着密度を高めるとともに、半導体装置から熱を有効に逃がすこと。
【構成】 複数の熱伝導層10を含むプリント回路基板6と、熱伝導層を貫通する複数の熱伝導チャネル12と、回路基板の上面に設けた熱パッド5を有する半導体装置としての電気素子4と、回路基板の底面に取付けた熱伝導層と熱伝導チャネルを通って熱を放散するためのヒートシンク8と、回路基板を押し付けるクランプ手段14,16 とを備える電気素子取り付け装置。電気素子は、ばねや固定具を使用することなく、リード線22をはんだパッド5にはんだ付けし、ヒートシンクと回路基板との間に加えられるべき比較的高いクランプ荷重により、熱伝導層とヒートシンクとの間の熱伝導率を高レベルにして放熱効率を良くする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基板の対向面に取付けた熱放散装置を有するプリント回路基板に電力用電気素子を取り付ける方法に関する。更に、本発明は回路基板に電力用電気素子を取付け、この素子から発生した熱を複数の熱伝導チャネルを通って回路基板の対向面に設けたヒートシンク(放熱器)に導き、さらに回路基板内の複数の熱伝導層によって熱を伝導かつ放散する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱放散装置は一般に使用されており、1つの形式はヒートシンクとして知られ、これは、例えば冷却機能を有効ならしめるために半導体装置等の電気素子の裏面に接触させて取付けられ、高い電力レベルでの作用時に装置の温度条件を越えるのを防止する。この電気素子は、複数の固定具を用いてヒートシンクに取付けられ、固定具は非常に正確な機械加工が必要で、多数の電気素子を順次取りつける場合には高度の組み立て作業が要求される。
【0003】熱の伝導は、熱パッドの取付け面につけるはんだや熱伝導ペーストの使用により改良されていて、この熱パッドは半導体装置の一部であり、通常、熱パッドのフランジに設けた孔を介してヒートシンクにボルトで固定される。熱パッドは半導体装置に取付けられ、熱伝導プレートとして機能し、このプレートは素子により発生した熱を伝導し、かつより効果の大きな熱放散器、例えばプリント回路基板上に大きなスペース空間を必要とするヒートシンクに直接取付けられる。
【0004】半導体装置を冷却するために冷却ジャケットを使用することが知られており、そこで、装置自体を冷却液に浸したり、または1つ以上の冷却通路を有するヒートシンクを装置に取付けるか熱的に接触させて冷却液が有効に循環するようにしている。
【0005】この電気素子、例えば電力用半導体装置の電気素子は、回路基板に取付けられ、熱伝導用の熱パッドを介して熱を伝導することによって冷却する場合に、また、電気素子から放射する複数の電気接続リードが、回路基板上のはんだパッドとして知られた接続用パッドに取付けられる場所において、これまで問題が発生している。
【0006】それゆえ、十分な冷却を得るために、補助ヒートシンクがある方法で付加されなければならず、これにより付加的な熱を電気素子の熱パッドから有効に導き、作業温度を制御する。半導体装置は、空気に晒されるように周囲に広がりかつ回路基板に取付けられるフィンを有するヒートシンクに直接取りつけることが知られているが、この方法では、ヒートシンクがより大きな面積を必要とするので、プリント回路基板自体の実装密度を高くすることができず、その結果、電気モジュールの全体の寸法をより大きくすることになる。
【0007】このように、最小の数の固定具を用いてかつ寸法公差もゆるい状態でプリント回路基板上の電気部品の装着密度を高めるとともに、半導体装置から熱を有効に逃がすことができるようなヒートシンクの取付け方法を提供することが望ましい。
【0008】従来の方法における厳格な寸法公差と高度の作業性は、プリント回路基板の大量の製造組み立てにとって役立つものではなく、そこでヒートシンクを半導体装置に直接取付けるようになると、多数の素子を順次取付ける場合には特に費用が増大する。
【0009】また、従来の方法では、熱伝導用の熱パッドとヒートシンクの間に良好な熱伝導性を持たせるように電気素子に十分なクランプ荷重を発生させることができなかった。熱パッドとヒートシンクの間に大きな接触面積を有して、熱の伝達および冷却効果を最大にすることが望ましい。
【0010】米国特許第4,479,140 号および同第 5,089,936号明細書に記載のような従来の方法は、参考としてここに包含される。そして、ここには、ばねを用いて半導体装置とシートシンクとの間の接触を確実にする方法が開示されている。
【0011】このような方法は、有効ではあるが、ばね、取付けボルト、保持ブロック等の部品が必要である。従来の装置では、半導体装置を回路基板に直接取付けることができないため、電気リード線はパッドをはんだ付けしたプリント回路基板にはんだ付けができ、はんだパッドでまたは電気リード線に沿って誘導される応力を最小にするとともに、高いクランプ荷重を与えて、熱の伝導及びヒートシンクへの放熱を最大にしている。また、ヒートシンクは半導体装置と同じ側の回路基板に取りつけられるため、装着密度を高める電気部品の最適配置を阻害し、かつ組み立て工程を複雑にする。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】このような事情に鑑みて、本発明はプリント回路基板上の電気部品の装着密度を高めるとともに、半導体装置から熱を有効に逃がすことを可能にした回路基板に電気素子を取り付ける方法及びその装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、上面の第1層と、底面の第2層と、この両層間に位置して回路基板内に埋設した残りの熱伝導層とを有する、複数の熱伝導層を含んでいるプリント回路基板と、前記熱伝導層を横断して貫通し、前記第1層から第2層に伸びる、複数の熱伝導チャネルと、前記回路基板の上面に取り付けられる熱伝導用の熱パッドを有する電気素子と、前記回路基板の底面に取り付けられ、前記電気素子の半導体装置によって発生した熱を放散するために第2層に接触しており、前記熱は前記取り付けパッドを介して伝導し、さらに前記熱伝導層と熱伝導チャネルを通って熱を放散するための熱放散手段と、熱の移送を改善するために前記熱放散手段に対して前記回路基板を押し付けるクランプ手段とを備えていることを特徴としている。
【0014】このため、半導体装置から放射する電気リード線は、回路基板に配置された他の電気部品に電気的に接続される個々のはんだパッドに、はんだ付けされている。動作時に半導体装置から発生する熱は、複数の熱伝導層を介して伝達される。熱伝導層の1つは、回路基板の上面にあって、そこに熱パッドが取りつけられ、また底面にも1つの熱伝導層を配置し、この両層間に間隔を均等にとって回路基板に埋設された残りの熱伝導層が配置されている。
【0015】これらの熱伝導層を横断する複数の熱伝導チャネルが、熱伝導層から熱伝導層へ熱を伝達し、最後にプリント回路基板の底面に位置する熱伝導層へ熱を伝達するために用いられる。熱伝導チャネルを通ってプリント回路基板の底面に位置する熱伝導層に伝達される熱は、比較的高い熱伝導率を有する電気絶縁層を介してヒートシンクに伝達される。ヒートシンクは一般にアルミニュームブロックで作られ、フィンを備えて、放射熱が周囲の大気中に最大限放散されるようになっている。プリント回路基板は、半導体装置間に位置決められかつ熱伝導チャネルの中心軸に一致させて、比較的大きな取付けボルトでヒートシンクにクランプされる。その結果、熱の伝達を最大にするためのクランプ力が発生する。
【0016】
【作用】このような構成により、電気素子から発生した熱が複数の熱伝導層と熱伝導チャネルを通って、他の部品から離れたプリント回路基板の対向面に取付けられるヒートシンクに伝達される。そして、半導体装置は、ばねや固定具を使用することなく、プリント回路基板の上面に簡単に取付けることができ、またプリント回路基板上で電気リード線をはんだパッドに、はんだ付けできるようにして、高温度に到達した時に機械的応力を軽減する。
【0017】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1、図2に示す電気素子取付け装置2から明らかなように、半導体装置等の少なくとも1つの電気素子4が、熱伝導用パッド5とともにプリント回路基板6に取付けられている。この一体構造の組立体はアルミ製のヒートシンク8のような放散器に固定され、ヒートシンクが半導体装置4により発生した熱を放散させる機能を有する。
【0018】発生した熱は、プリント回路基板6を通りヒートシンク8に逃げ、ヒートシンクに形成された複数のフィンを介して通常大気中に放散される。熱を伝達するには他の方法を用いることもでき、例えば、放散器を介して液体を強制循環させるようにしてもよい。これらの放散器は、半導体装置4の適正な作動温度を維持する機能を有し、半導体装置4の性能を低下させるか、あるいは直ちにまたは一定時間の後に使用不能になるような最高温度には到達しないようにしている。
【0019】プリント回路基板6は、複数の熱伝導層10を有し、この層は銅などの熱伝導率の高い材料により作られる。熱伝導層の表面はプリント回路基板の上面及び底面にほぼ平行である。図1のプリント回路基板6は、その上面と底面に銅の層10を有し、さらに2つの層が互いに等しい間隔に配置されプリント回路基板に埋設される。プリント回路基板は熱を伝導する機能を有するとともに複数の熱伝導チャネルを介して一方から他方に熱を分配しており、この熱伝導チャネルの軸線が熱伝導層10の表面に対してほぼ垂直となっている。
【0020】熱伝導チャネル12は、プリント回路基板を貫通する複数の孔をドリルもしくはパンチにより形成することが望ましく、この孔にはんだ等の熱伝導性材料で孔を満たす。熱伝導チャネル12は1つの熱伝導層から別の層へ熱を伝達し、最終的にはヒートシンク8を介して熱を大気中に放散する。
【0021】図2は熱伝導チャネル12の直径をより明確に示すもので、チャネル12は半導体装置4から熱伝導パッド5に効果的に熱を伝達するために面積を最大にしている。このパッド5は半導体装置取付け用のはんだ20を用いてプリント回路基板6に取付けられ、最終的に第1の熱伝導層10に熱を伝達する。そこで、熱伝導チャネル12によって熱が各熱伝導層10に伝達され、さらに熱伝導性電気絶縁体19を通り、シートシンク8に伝達される。
【0022】プリント回路基板6は、熱伝導性電気絶縁体19を介してシートシンク9に固く保持され、絶縁体19は回路基板6とシートシンク8との間に機械的締結具16によりクランプされる。締結具はヒートシンク8に設けたねじ切りされた開口18に螺合するねじで構成できる。締結具16はまた締結プレート14を貫通する孔に係合し、これにより締結プレート14が締結具16により生じるクランプ荷重を分配するのに寄与する。締結具により非常に高いクランプ荷重がもたらされて有効な熱伝導が与えられることが望ましい。電気絶縁体19の機能は、プリント回路基板6をヒートシンク8から電気的に絶縁し、これらの2要素を異なる電位レベルにして電気的に絶縁するとともに、熱制御のために、プリント回路基板6からヒートシンク8に熱の伝達を可能にすることである。
【0023】半導体装置4はまた複数の電気リード線線22を含み、このリード線22はプリント回路基板6に設けた孔へと伸びそして係合する。そして、リード線22は、はんだパッド24にはんだ付けされ、回路基板上に位置する他の複数の電気素子に順次接続される。
【0024】本発明の方法を使用することにより、一列に並んだ半導体装置は、適宜回路基板6の上面に取付けられ、ヒートシンク8はプリント回路基板6の反対側底面に取付けられる。これにより、プリント回路基板6の寸法を最小にしてより高い装着密度を可能にする。
【0025】多数の半導体装置4が取付けられる場所には、締結具16が各対の半導体装置4間に配置されるのが好ましい。半導体装置は締結プレート14との組み合わせにより高いクランプ荷重が与えられ、このためプリント回路基板6および熱伝導層10からヒートシンク8への熱伝達が最大になる。締結具16は熱伝導チャネルを有する熱伝導層の一部分の中心軸線上にほぼ位置している。
【0026】上記実施例における多くの変更は、本発明の請求の範囲内で可能であることは当業者であれば明白となるであろう。本発明は、材料、形状、寸法、用途またはパラメータの範囲の選択が、ここで使用される好ましい実施例に限定されるべきものでもない。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、電気素子から発生した熱が複数の熱伝導層と熱伝導チャネルを通って、他の部品から離れたプリント回路基板の反対側の底面に取付けられるヒートシンクに伝達するので、電気部品をプリント回路基板の上面側に取付ける部品装着密度を高めると共に、少ない数の固定具を用いて電気素子が回路基板およびヒートシンクに取付けられ、この電気素子を冷却することができる。
【0028】また、ヒートシンクと回路基板との間に加えられるべき比較的高いクランプ荷重により、熱伝導層とヒートシンクとの間の熱伝導率を高レベルにして放熱効率を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るヒートシンクに確実にクランプする回路基板に取付けた半導体装置の断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置を取付ける方法を示す図1の平面図である。
【符号の説明】
4 電気素子
5 熱パッド
6 プリント回路基板
8 ヒートシンク
10 熱伝導層
12 熱伝導チャネル
14 締結プレート
16 締結具
19 電気絶縁体
20 はんだ
22 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上面の第1層と、底面の第2層と、この両層間に位置して回路基板内に埋設した残りの熱伝導層とを有する、複数の熱伝導層を含んでいるプリント回路基板と、前記熱伝導層を横断して貫通し、前記第1層から第2層に伸びる、複数の熱伝導チャネルと、前記回路基板の上面に取り付けられる熱伝導用の熱パッドを有する電気素子と、前記回路基板の底面に取り付けられ、前記電気素子の半導体装置によって発生した熱を放散するために第2層に接触しており、前記熱は前記取り付けパッドを介して伝導し、さらに前記熱伝導層と熱伝導チャネルを通って熱を放散するための熱放散手段と、熱の移送を改善するために前記熱放散手段に対して前記回路基板を押し付けるクランプ手段と、を備えていることを特徴とする電気素子取り付け装置。
【請求項2】 熱伝導性電気絶縁体が、前記回路基板の底面と熱放散手段の間にクランプされていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項3】 熱伝導層は、実質的に銅材料から作られていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項4】 熱伝導チャネルは実質的に回路基板の上面に垂直に形成されていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項5】 熱伝導チャネルは円形状であることを特徴とする請求項4の装置。
【請求項6】 熱伝導チャネルははんだで形成されていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項7】 熱放散手段はヒートシンクであることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項8】 ヒートシンクはアルミニウムを主成分とする材料から作られていることを特徴とする請求項7の装置。
【請求項9】 ヒートシンクは熱を周囲の空気中により効果的に放散するためにそこから放熱する多数の冷却フィンを有していることを特徴とする請求項8の装置。
【請求項10】 電気素子は1つの半導体であることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項11】 プリント回路基板はセラミック基板で構成されていることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項12】 熱放散手段を用意し、複数の熱伝導チャネルにより熱を伝える複数の熱放散層を有し、この熱放散層がそれぞれ回路基板の上面及び底面に平行でかつ熱放散層を横断する平坦な面を有している、プリント回路基板を用意し、電気素子を前記回路基板の上面に取り付け、前記回路基板を熱放散手段にクランプし、前記熱放散手段が前記回路基板の底面に取りつけられる、各ステップを含んでいる電気素子の冷却方法。
【請求項13】 熱的伝導性電気絶縁層を用意し、前記絶縁層を回路基板とヒートシンクの間にクランプする、各ステップをさらに含んでいる請求項12の方法。
【請求項14】 半導体装置をプリント回路基板にはんだ付けするステップを含んでいる請求項12の方法。
【請求項15】 熱伝導チャネルをプリント回路基板の上面にほぼ垂直な複数の孔をドリルで加工し、その後、前記孔にはんだを満たすステップをさらに含んでいる請求項12の方法。

【図1】
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【図2】
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